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昭和33年04月02日 衆議院 法務委員会
[159]
日本共産党 志賀義雄
そういうように言われますけれども、実際にこちらが一つの軍とか艦隊とかいえば、これは大きいものでしょう。ドスやピストルとは違いますね。
去る3月23日に日本共産党が人民艦隊を編成しておったということが警視庁公安一課から発表されました。これはどの新聞にも出ておりました。放送もされました。調べてみますと、公安一課では一々記者会見をしておるひまがないので文書で配って出したというのです。
人民艦隊、一つの艦隊を持っておるということ、これは大へんなことであります。日本共産党はかって中核自衛隊という陸軍を持っておった、今度はそういうものを持っておるということを警察の方で言われ出した。そんなものは事実ありませんけれども、陸軍を持った、海軍を持った、これは選挙でもきてごらんなさい、今度は警視庁が、共産党は空軍を持っているということを言わないという保証はありませんよ。三軍そろえて共産党は持ってるという誹謗だってできます。
人民艦隊――艦隊というからにはこれは艦砲その他の兵器を持っておるものをいうのでしょう。どうして警視庁がそういう名前を出されたか。実は、こういう法案を通すために、選挙前に共産党にけちをつけるために、こういうことをすらやられているのです。そういうふうに竹内刑事局長が純真な意図を持っておいでになろうとも、もうこの法案の成立しない前からそういうことがやられているのですよ。それで、公安一課長の御答弁では、私どもは選挙妨害をやるとか共産党を誹謗するとか、主観的にそういうことは少しも考えておりません、こう言われましたけれども、客観的にはちゃんとそういうことになっているのですよ。
それと、今度は、船に乗った人が密出国の疑いがあるというのでつかまったのです。その中に一人小川原という共産党員がいます。これは長野県の共産党の組織の一役員であります。弁護人が面会して調べたところによりますと、自分は共産党の一地方組織の役員――これは唐澤法務大臣と同郷の長野県の人であります。それ以外に何の関係もないというのです。それを一人ぽこりと検挙しておいて、さあ共産党に関係がある、こういうふうなことを言われるのです。推定によって何でもできる。暴行・脅迫に至らないもの、ああいうようなものもやれるということになると、警察なり検察庁なりが推定すれば何でもやれるということになります。事件が起ったときに、ことに暴力行為を取り締るために、これは武器を持っているとあなた方が判定を下されれば、何でもできるということになるのですよ。そういう点の保証はこの法文ではちっともないじゃないですか。
[160]
政府委員(検事(刑事局長)) 竹内壽平
志賀委員のように、何でもとこうおっしゃれば、これは何でも言えるわけでございますが、この法案は、先ほど申しましたように、105条の2は、犯人蔵匿及び証憑隠滅の章に書きまして、これは証憑隠滅、そういう趣旨の規定であることを、私が言うのじゃございません。この105条のすわっております位置がそれを証明しておるのでございまして、そういう趣旨によって理解すべきものであるということが立法的に明らかにされるのでございますから、そのような御懸念は無用かと存じます。
[161]
日本共産党 志賀義雄
私は208条の2に関しても申しておるのであります。両方ひっかけて申しております。志賀委員は何でもと言われればと言われますが、菅生事件ということ、メーデー事件の蒲田署の警官、これは私は具体的事実について例証をみなあげているのです。
人民艦隊とか、これは警視庁の公安一課が名づけ親でございますが、ありもしないことまでも人民艦隊なんという名を警察が現につけておるでしょう。艦隊なんか持ってたら、これは内乱予備罪ですよ。そうでしょう。そういうことを広報活動が警視庁が現にやっている。
私が頭の中で何かこの法案でやられるのじゃないかというおそれを抱いて言っているのじゃないのですよ。現に起っている事実、またこれまでの暴行行為取締りの実際の運用の面、こういう事実に基いて言っているのですよ。ですから、何でもというふうにごまかして言わないで、この法案が法律として制定したら――今だってそういうことはやっているのです。先ほど警察庁長官は、決して現在の警察にはそういうものはございませんと言われましたが、現にそういうことをやっているんだから、事実に基いて私は発言しているのですから、あなたの方で想像しないで、その事実に基いて言っていることに、はっきりした御答弁を願いたいのです。
[162]
政府委員(検事(刑事局長)) 竹内壽平
御設例の場合は、何か情報を提供したことを隠すとか、いろいろお話でございまして、208条の2についての御質問やら、105条の2について……。(志賀委員「両方ですよ」と呼ぶ)両方だというお話ですが、もし208条の2について申しますならば、私は、これは志賀委員は非常に安心しておられるのじゃないかと思っていたくらいなのでございまして、いかなる労働組合運動にも、あるいは大衆運動につきましても、他人に害を加える目的で2人以上の者が集まり、しかもその人たちが凶器を携えて、治安のおさまっておりますこの日本の現国情において、そのようなことをすることがあるはずがないので、もうそのこと自体が明白に暴力団を対象としたものだということでおわかりいただける、この点は私あまり説明を要しないのではないかというふうに思っておりました。
それから、105条につきましては先ほど申しましたように、ちゃんと証憑隠滅の章に書くことによりまして、この立法趣旨を明らかにしておるのでございまして、今のような御懸念はないと思っていただいて差しつかえないというふうに考えるのでございます。
昭和33年04月25日 衆議院 法務委員会
[085]
日本共産党 志賀義雄
最後に簡単に……。ただいま、日本では起訴が重大に考えれておるということですが、それは私も法務大臣と同意見でございます。国民が自分の権利について主張するという立場からすれば、そういう場合には堂々とやるべきであります。
ただ、困ったことには、近く選挙がありますから申しますけれども、唐澤さんも町村さんも選挙にお立ちになるわけであります。その選挙を前にして、日本人は起訴されたとか容疑を受けたとかいうことを重大なことに考える国民層がまだ多い、そういう盲点を利用して、選挙前に、共産党にいろいろと、去年の下半期から、トラック部隊事件、それから最近の官庁スパイ事件、人民艦隊事件――今度なんかのは内乱予備罪ですよ。中核自衛隊という陸軍をくれたり、人民艦隊という海軍をくれたり、いよいよ選挙になったら空軍さえ共産党にくれかねないのです。
そういうことがありますから、検察当局を指揮なさる法務大臣としては、警察が選挙を前にこういうことをやらないようにしていただきたい。
実は、これが警察だけの問題でなくて、自由民主党の反共政策との関係もあるのじゃなかろうかと思われますから、特にこの際これを要望しておきます。選挙前にこういうばかげた検挙をやって共産党にけちをつける。考えてもごらんなさい。自由民主党が290名衆議院では議席があるのです。共産党は私と川上君だけ。それがそんなにこわいのですか。よっぽどこわいらしい。(笑声)だから、そういう行き過ぎのないように御注意願いまして、きょうの私の質問を終ります。
[086]
法務大臣 唐澤俊樹
志賀さん、ちょっとお答えいたします。いろいろとお述べになりました事件につきましては、まだ私の手元まで報告も届いておりませんから、具体的には存じませんが、私として信じておりますことは、警察または検察は、法の一線を越えたものがありますれば、やはり捜査をし、検察権を発動するのでございまして、単に総選挙を控えて云々というような意図はなかろうと思うのでございます。
お言葉の通り、総選挙を前に控えまして、まだ犯罪があるかないかわからないというのに、いかにもあるように見せかけて選挙戦術に利するというようなことは、卑怯なことでございまして、これは私自身が最近において身をもって体験したことでございます。
そういうことは卑怯未練なことでございますから、私は、検察はさようなことはやっておらないとかたく信じておるところであります。
昭和33年07月17日 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会
[005]
自由民主党 長谷川峻
今度の引き揚げは、報道機関によって大々的に取り上げられて、国民注目の的となっておったのですが、その最大なる原因は、中共からの引き揚げが、これをもって集団的なものとしては最後のものである、これが1つ。さらに、もう1つは、その間において、その引き揚げ船の中に、日共党員が密出国して、その人たちが変名で乗船して、途中で覆面を脱いで名乗りをあげた、こういうことが大きなセンセーションを呼び起していると私は思うのであります。そこで、この間について調査した結果を御報告申し上げようと思います。
今回の白山丸による第21次引き揚げによって帰国した者は、総数579名です。その内訳は、いわゆる引揚者のうち、一般邦人374名、旧軍人軍属75名でありまして、ほかに再渡航者と、すでに新聞で御承知の、いわゆる密出国者として戦後渡航し、今回の引き揚げ船に便乗して帰国した65名及び華僑2名となっております。そのうち男子は346名、女子は233名、そのうち8才以下の子供は男子90名、女子74名となっております。なお、そのほかに遺骨10柱が引き揚げてきております。引揚者が現地から持ち帰ったものといたしましては、金が香港ドルで55万8677ドル、ポンド小切手で1万8000ポンド、大体1人頭日本金で10万円見当、それだけ持って帰っておるということであります。荷物としては、総数948個でありまして、1人平均1.6個、こういうことであります。引き揚げ地点といたしましては、瀋陽地区、昔の奉天地区が一番多く、次いで上海、ハルピン、北京、重慶、成都その他少数なものが各地区から引き揚げてきております。落ちつき先を見ますと、大体東京が一番多く、次に大阪、神奈川の順となっておりますが、これは従来と同様に、比較的就職しやすい大都市に集中している傾向がここでも見られております。
次に、このたびの引き揚げの大きな特色といたしましては、第1は、すなわち先ほど申し上げましたように、今回の引き揚げが、おそらく最後の集団帰国になるであろうということであります。中国紅十字会は、引揚3団体の代表に対して、ことしの引き揚げは、今回で最後であると語ったのですが、さらに、集団帰国は今度をもって打ち切ると、はっきり申し入れたことが、われわれ引ま揚げに関係している委員並びに国民に大きな衝動を与えているゆえんであります。従って、今度の白山丸が最後の帰国船だということからいたしまして、何もかも捨てて、各地区から引き揚げ地に集中してきた、引揚者の持ち帰った荷物が少いというのも、こういう理由によっているのであります。ですから、いかに中共に残っている諸君が引き揚げというものに大きな関心を持っているかということは、ここでもわかるのであります。
第2は、いわゆる密出国者グループの乗船の問題です。すなわち、白山丸の吉田船長及び引揚3団体の代表に会いまして、塘沽出港から舞鶴入港までの経過その他の情勢を聞きましたが、これによりますと、白山丸が7月3日に塘沽港に着き、乗船代表が天津の繁華街にある国民大飯店に集結中の帰国者をたずねたときには、飯店に集まった者は470余名だった。ところが、中国紅十字会は、数日後に、帰国者の数は550人以上になると連絡してきたそうであります。そうして3団体代表が、中国紅十字会側と帰国打ち合せを済ませて、帰国者全員の集結を待って、8日塘沽に戻って参りましたのは午後4時半、3団体の代表が白山丸に乗船後、10分たたないうちに塘沽を出港する、こういうことなんです。これについては種々の事情もあるでしょうけれども、従来でありますと、3団体の代表が先に乗り込んで、引揚者が乗船して出帆しておった。ところが、今度はその逆なんです。そして塘沽出港後1時間ほど経過して、乗船者名簿の作成にかかったところに、密出国者65名の代表から、自分たちは偽名で乗ったんだということの了解を求めてきたのです。でありますから、船内では、この人々の取扱いについては非常に対策を協議した。しかしながら、今さら引き返すわけにはいきません。いわゆる向うにいた方々の引き揚げてきた船、それに対してこちらから密出国した人々がその船に便乗して帰ってきた。でありますから、法的にはとられる手段はいろいろあったでしょうけれども、何さま、65名を途中で舞鶴の港以外に下船させるというひまもなかったろうし、さらに、そのためには一般の日本に帰りたいという帰国者の上陸もおくれるということを考慮したことが1つと、それから、白山丸のチャーターの期限が、ちょうどもう13日で切れるのであります。そういう関係から、予定通り、その間に何ら手配せずに13日に舞鶴に入港した、こういう実情であります。
次に、舞鶴における援護状況を申し上げますと、乗船者中の、いわゆる密出国者グループの大部分には、逮捕状が発せられておった。それで、13日の白山丸入港当日は、警視庁の公安部、京都府警の機動隊、並びに17都道府県の捜査官約600名が派遣されていたのであります。そして、従来円滑にやっておった引揚業務が、こういうことによって支障を来たすんじゃないかということを、一般の方々、係官、国民ひとしく非常に憂慮しておったのでありますが、関係者の十分な話し合いが続きまして、私たち委員が白山丸の船長室に午前11時に参りまして、船長と引揚3団体代表と今回の引き揚げ経過についていろいろ話をしている間に、一般の帰国者がまず次から次へと船をおりて祖国の土を踏み、そしてこの一般帰国者の方々は平桟橋に向って、無事に地方援護局に収容された、こういうことであります。
そこで残った問題は、密出国者の問題であります。この方々は、前晩から参りました、いわゆる共産党の本部の方々の折衝などが船で行われました関係から、なかなか手間どったのでありますが、その間話し合いが進みまして、家族とまず船の中で面会させ、そして警察権の介入もなく、船の中で帰国者業務を済ませる、こういう段取りがつきまして、予定よりも約数時間おくれて、夕方の午後6時過ぎに平桟橋に上陸を完了したのであります。われわれは国会より派遣された立場から、ことさらにこういう交渉ごとには介入しませんでした。そして薄暗い夕やみの中に、この65人の密出国者の方々が全部上陸するのを見届けることができたのであります。しかし、この諸君が上陸後、逮捕状を持っている各都道府県の警察官によって、そのうち59名が逮捕、連行、その後取調べを受けていることは御承知の通りであります。これが今度の2つの特徴の概要であります。
[007]
日本社会党(社会民主党) 受田新吉
私、もう一つ伝えておきたいことは、私個人としてもずいぶんたびたびお迎えに行きましたけれども、今度の出迎えに当って特異な現象は、密出国の皆さんを逮捕するために、沿岸に待ち受けておった600名の警察隊の群れでございました。この方々の存在が、いかに一般引揚者の方々に悲痛な感じを与え、衝撃をどのように与えたかということでございました。特に、援護局周辺は警察一色であったという点において、今回の帰国に、これほどまで強い警戒と措置をとらなければならなかったかという、民主主義国家としてのあり方について、自民党の長谷川君も井上君も、また、わが党の藤田藤太郎君も、大所高所から見て、この一点については共通の感想を持ったわけでございます。
以上、長谷川委員の御報告に一言口つけ加えまして、私の報告を申し上げます
[012]
自由民主党 長谷川峻
そうしますと、今からぼつぼつ帰るということになりますと、その方々は自費で帰ってくるわけですか。
[013]
説明員(厚生事務官(引揚援護局長)) 河野鎭雄
現在南方方面には、もう集団的な引き揚げはございませんので、主として個別の形で帰っていただいております。個別引き揚げの際につきましても、旅費は国でもって負担をしてお迎えするというふうな格好をとっております。また、受け入れの場所につきましても、帰ってくる方の便宜のところを選んでいただいて、検疫所がございますので、そこに援護局からもなれた人が行っているわけでありますから、そこで入国の手続あるいは検疫を行いまして、受け入れするというふうな形をとっております。今後もそういう方法でいきたいというふうに思っております。
[014]
自由民主党 長谷川峻
それを聞いて安心したのです。今まで集団引き揚げでくる場合には、船まで日本の船を出して、船の中から日本のにおいをかいでこられた。今から個別引き揚げになると、自分たちで旅費その他まで負担しなければならないという心配がみなあったのですが、今のあなたの御説明で了解しました。それは、引揚者だからそういうふうな国の恩典が与えられている。
そういうことになりますと、今度の引き揚げの中に、私が御報告申し上げましたように、2名の華僑が乗っておる。こういう人たちを、なぜ引揚船に乗せたか。聞くところによると、その中の1人の張立文というのは、ことしの2月に華僑送還で中共へ渡った人だという。それがまた今度帰ってきた。それでは、まるで引揚船が、日本海を自由にただで行ったり来たりできる定期船みたいなものになるだろうと思うんです。その船賃がどうなったかということが1つ。
もう1つは、今度の密出国者65名、行くときは日本の国法を犯して、人民艦隊でどかどか行って、帰るときには一般の引揚船の中に入ってきて、われわれはペン・ネームを使っていた、今からわれわれは本名にする、こう言うておりました。
私たちが代表に会ったところが、この本名でも、あなた方警察官はつかまえ切らぬでしょうと豪語しておりましたが、そういう方々の船賃はどうなっているか、引揚者との関係をあなた方はどうお考えになるか、これは明快に御答弁願いたい。
[015]
説明員(厚生事務官(引揚援護局長)) 河野鎭雄
全く私どももお話のような気持を持っておるわけであります。引揚船に引揚者でない方が乗ってくるということにつきましては、非常に遺憾に思っておるわけであります。その人たちは、本来引揚船に乗るときに、引揚者でないその人たちが乗ってきてしまったということで、日本人であるということであれば、送り帰すということもできないかと思っております。従いまして、船賃はちょうだいするということで話をいたしております。
[016]
自由民主党 中山マサ
ちょっと関連して……。今の御答弁を聞いておりますと、その運賃をちょうだいをすると、一体だれがちょうだいをなさるのですか。援護局がなさるのですか、それとも法務局が入国管理の違反者としてそれを取り調べた上で、それだけのお金をお取り立てになるのですか。これはどこの所管になるのでございましょうか。
[017]
説明員(厚生事務官(引揚援護局長)) 河野鎭雄
船は、実は国がチャーターをいたしまして、日赤にサブ・チャーターをして引き揚げ業務をやって参っておる、こういうふうな格好になっておりますので、終局には、国の収入に入れてもらうことになると思いますが、窓口としては、日赤を通じて取るというふうな格好にするのがいいんじゃないか、かように思っております。
[018]
自由民主党 中山マサ
日赤を通じて取るのがいいのじゃないかというようなクェスチョン・マークがついておるように思うのでございますが、もっとはっきりしていただきたいと思うのです。言いにくいことですけれども、たとえば、税金でも、超過したものはなかなか下げてくれないのです。私どもの自動車のお金も、5000円余分に取られたのですが、それも返すという通知があって取りにいったら、またいろいろな手続をさせられて、やっと半年ぶりか1年ぶり近くに返してもらったのでございます。そういう緩慢なやり方をこの問題でもやっていただきますと、私どもは、国会議員であると同時に国民であるのですから、国民の代表なんですから、国民から取った税金でもってチャーターしてあるものでそういうふうな不法な行為がある場合に、うやむやにされるということは、私は国民に対して相済まないことであると思うのであります。
聞けば、そういう人たちは非常にたくさんな金を持って帰ってきておられるという話でございますが、これは、一体赤十字を通じてやるのがいいのであろうなどというような不明瞭なことでは、私ども承知できないのです。一つはっきりと――きょうは日赤の代表者が来ていらっしゃらないのでございますが、日赤がそういうことをする責任を負わされておりますか。
[019]
説明員(厚生事務官(引揚援護局長)) 河野鎭雄
日赤には申しております。
[020]
自由民主党 中山マサ
申しておりますとおっしゃるだけでは、どうもはっきりと……。いよいよそれがどういう方式でもって取り立てられるか、もし、あなたがはっきりなさらないなら、一つ大臣からこの御答弁を願いたいと思います。最高責任者でいらっしゃいますから……。
[021]
厚生大臣 橋本龍伍
当然徴収をすべきものであると私考えております。ただ、今お話のございましたように、取って、それをどこでどういう処理をするかというようなことにつきましては、これは、まだおそらく政府部内で十分な相談をしてないと思いますので、その点は関係の当局に命じましてはっきりした形にさせたいと思います。
[022]
自由民主党 中山マサ
とにかく、このごろは敗戦といううき目を見たためでございますか、日本国は外国からなめられておるというような格好が見えております。しかも、このいわゆる人民艦隊というものはどうしてできたかと申しますれば、結局国内の会社に共産主義者が入っていって、尼崎の尼鋼でもそうですが、ここでもって会社を破壊したその金、あるいはほかの会社も破壊して、そこにある品物を横流しをしてもうけた金でもって人民艦隊を仕立てて、それに乗って、しかも、北海道の白鳥事件の容疑者なども、これに乗って向うへ行っているのですが、そんなものがぬくぬくと、時間的にもういいだろうというようなことで帰ってくるとしたら、法務省もまるでなめられ切っておる。(「法務省はおらぬ」と呼ぶ者あり)
きょうはおらないが、入国管理局の方がいらっしゃっておると思うのですが、そういうわけですから、この際、私ははっきりさせていただきたいと思います。われわれの国の尊厳のために、私は、これはぜひ申し上げて、はっきりさせていただかないと、われわれ国民の前に、あまりにもだらしがないというようなことでは、どうにもならぬ。今後もまだ引揚者が何らかの形でもって帰れる、運賃は見てやるのだという今の御答弁でしたが、今度のようなことでもって、ペン・ネームを使ったりしてまたやらぬということも断言できないと思いますから、この際、一つ厳然たる態度でこれを処分して、そういうことは通らないのだということを見せていただきたいということを、私はぜひお願いをいたしておきます。
[096]
自由民主党 長谷川峻
それでは青木国務大臣に御答弁をお願いいたします。というのは、本日の委員会は、13日舞鶴に集団最後の引き揚げといわれた中共からの引揚船を迎えに行って帰ってきたその報告をし、そのあと、質疑を午前中から続行しているのです。午前中の委員会の模様が御了解いただけないと思いますが、今度の引き揚げの大きな特徴は、1つは、中共からの集団引き揚げの最後であったといわれていることであります。さらに、その引き揚げを迎えに行きますに当って、65名の密出国者が乗っておりまして、一般引揚船に便乗してきて、覆面を脱いで、自分たちは日本共産党の者である、こう発表して、それに対する逮捕の問題などについて非常にセンセーショナルに国民の間で注目を浴びた、こういうことだろうと思うのです。
そこで、私たち一般引き揚げ問題については、午前中に話が大体終ったのでありますが、ここに問題になっております密出国の問題、すなわち、今度帰ってくるに当っていろいろ巷間伝えられているところによりますと、この方々は、いずれも終戦直後党活動に従事し、そうして法に触れておりながら、行くときには、昭和23年から6年の間に、いわゆる人民艦隊を組織して、これは出入国管理庁があったけれども、何ら役に立たずして、堂々と日本海を行って、今日まで向うで変名で党活動をやってきた人、こういうふうに言われておるのです。しかしながら、近く21日から党大会が行われるに当って、それに新風を吹き込む意味で送ったともいわれるし、あるいは日中貿易協定打ち切りの声明を中国が出すのに、その原動力になったともいわれますし、まあいろいろ揣摩憶測されているのであります。これに対して、当然法治国家として逮捕がなされるということについては、この委員会の午前中の質疑を通じますと、だれも不当と言う人はありませんでした。ただしかしながら、その方法において、一般帰国者の中に入ってきておる。この方々は、長い者は20数年、短かい者においても、10数年も日本の土を踏まなかった人たちで、なつかしの祖国に帰ろうとして胸のふくらむ思いをしておるところに、逮捕する警察官が、警視庁公安部あるいは京都府機動隊、あるいは17都道府県の捜査官約600名も来て、それがものものしい警戒に当ったものだから非常に暗い印象を受けたというふうなことなどが、午前中論議されております。
そこで、要約してお尋ねをいたしますが、まず第1に、出入国管理に対しまして、こういうふうな60数名――今まで伝え聞くところによると、164名の方々が日本の国から密出国をしておった、こういうことになっておるが、果して一体警察が手薄なのか、そういう問題に対するところの態度は一体どうなっているのか、これが1つ。
さらにまた、一般引き揚げの方々には、国の財政乏しいところであるけれども、13年間にわたって船賃も用意をし、あるいは援護の上において1万円の金も差し上げもし、いろいろお手当もした。しかしながら、里帰りさえも船賃を徴収することになっているにもかかわらず、こういう密出国の方々が公々然と、行きは人民艦隊、帰りは、人工衛星が飛ぶ時代に、どこの国へ行こうと勝手じゃないか、しかも、自分たちは中国で平和のために戦ってきた、今から先も平和のために堂々と戦うのに、逮捕するとはけしからぬということを揚言させながら、その船賃などが、全然今のところ徴収されておらないというふうなことは、やはり私は税金を払っておる国民として、さらに法治国家の国民感情としても、これは許せないという気持が、少くとも日本国民の中に9割以上はあると思う。
こういう問題に対するところの公安委員長としての、また国務大臣としての御答弁をお願いしたいと思います。
[097]
国家公安委員会委員長・自治庁長官 青木正
先般の白山丸の引揚者の帰国に当りまして、たまたま密出国者がおりましたために、せっかく故国に帰りましたのに、密出国者を逮捕する必要上、警察官がおったということで、多勢の引揚者の方々に不愉快な気持を与えたことは、私もまことに残念に思う次第でございます。ただしかし、密出国者がおります以上、やはりこれに対する適当の処置をいたさなければなりませんので、警察としては、結果から見ればあるいは大げさだというような御非難もあろうかと思うのでありますが、どういう事態になるかわかりませんし、やはり万全の措置を講ずる必要もありましたので、やむなくとったということを了承していただきたいと思うのであります。
それから密出国の取締りの問題でありますが、申し上げるまでもなく、密出入国の問題につきましては、入国管理局におきましていろいろやっておるわけでございますから、これに協力いたしまして、警察といたしましても万全の措置を講じておるわけであります。ただ御承知のように、人民艦隊事件というようなこともありましてなかなか警察の力だけでも捕捉しがたい点もありましてこういう事態になっておることは、まことに法治国として残念に思っておるのであります。いろいろ内情等を承わってみますると、出入国管理に関しまして、いろいろ船舶の問題その他あるいは機構上、警察の方と入国管理局の方と提携する問題等、いろいろあろうと思うのであります。これを監視する船の問題等につきましても、現在のところ若干不足じゃないかということも私ども聞いておるのでありまして、御指摘のように、法治国家として、こういうような状態を放任しておくことは、まことに残念に思っているような次第であります。私どもできるだけ今後こういうことのないように最善の努力をいたしまして、人的にも、また船とかいうような点におきましても、できるだけの措置を講じていかなければならぬ、かように存じているわけであります。
それから、密出国者の船賃を払わぬという問題でありますが、これは、私どもの所管と申すよりは、あるいは厚生省の関係になるかと思うのであります。考え方といたしまして、お話のように、密出国ということ、つまり違法のことをやっておってしかも、その人たちが堂々と帰ってきておる、さらに、その人たちは船賃も払わぬで、国民に負担をかけておるということは、どなたがお考えになりましても、そういう形は私は許すべきでない、かように存ずるのであります。違法のことをした上、さらに国民に迷惑をかけておる、こういう姿は決してとるべきものでない、私も、さように考えております。
[098]
自由民主党 長谷川峻
青木国務大臣の前段の答弁、了承いたします。
そこで、もう一つお尋ねしたいのは、青木国務大臣は、15日の閣議で、白山丸で帰国した中共からの引揚者の状況を報告しておるようであります。それの内容を仄聞するところによりますと、白山丸に乗船した密出国者58名はすでに逮捕した、これは私も現地に参りまして、逮捕したところを見ることができたのであります。ところが、一般の引揚者の中の40人ほど、国籍を明らかにしない者があった。これらの引揚者は逮捕していないが、近く日共の大会もあることであるので、その動向を厳重に調査しているというふうな発言があったように了承しているのであります。
われわれは、何も思想を調査する役割も何もありません。しかしながら、今までの帰国者の中においてさえも、向うの方に参って、また今度帰ってきたというふうな華僑の者もある。そこで、58名を逮捕されて、そして国民の非常な注目の的でありましたから、それらが一体ただ単に密出国というふうな軽い罪だけで今やっているものやら、それからほかの事件、人民艦隊だあるいは火炎びんの問題だ、そのほか白鳥事件の問題等々があるやに私どもは拝承しておりますが、そういうふうな事件に関連している58名などのお取調べの模様などをお聞きしたいことが一つ。
もう一つは、一般の引揚者も、なにさま本名を名乗ってきているとは思われない方々が多いやに、私は現地において了承したのであります。ですから、そういうところについての御調査がどの程度に進んでおるのか。ということは、今まで新聞などで伝えられるところによりますと、いわゆる三天皇の一人が一般帰国者の中に入っておるとか等々いわれておるのであります。果してそういうものがあるかどうかはいざ知らず、警察の立場においてお取調べになっておることを、結論はまだついていないでしょうけれども、閣議で御発表になり、そうして新聞にも出ていることですから、この委員会が調査に行った関係上、ここにおいて了解のできる範囲において御説明いただいたならば、非常にけっこうだと思います。
[099]
国家公安委員会委員長・自治庁長官 青木正
閣議で私が報告いたした内容についての新聞記事の問題でありますが、私は、引揚者のうち密出国者として逮捕された者は何名とか、こういう御報告を申し上げまして、さらに、当時警察庁の方に参っておった報告によりますと、その当時の報告として、40名ほど本籍の不明な者がある、こういう報告があったのであります。その報告をそのまま、私閣議で申し上げたのであります。ところが、その後事情を聞きますと、管理局におきまして、翌14日、この40名の身元につきまして本籍等いろいろ調べました結果、全部わかりまして、そしてその40名につきましては、警察として、これに対して警察関係において処理を必要とする方は一人もいないという報告を承わったのであります。
それから、密出国者として逮捕した方々のその後の取調べの模様につきましては、まだ詳細な報告がありませんので、石井警察庁長官から詳細申し上げます。
[100]
説明員(警察庁長官) 石井榮三
65名のいわゆる密出国者グループのうち、逮捕いたしました者59名でありますが、そのうち1名は、当日でしたか翌日でしたか、間もなく釈放になっております。残り58名のうち、私が先ほど報告に接したところによりますと、52名の者が勾留請求が認められまして引き続き勾留して取調べを続行しており、差し引き6名の者は勾留請求いたしましたが却下された、こういうことになっております。
却下されましたものは、理由はいろいろありますが、その本人が病身であるというもの、あるいは今までの捜査において相当供述を得られ、これ以上強制捜査をしなくても、あとは任意捜査等によって目的が達し得られるのではないかというものがあるのであります。まだ詳細な報告に接しておるわけではありませんが、一応大まかに先ほど報告に接したところによりますと、現状はそういうふうになっております。
昭和34年03月12日 参議院 地方行政委員会
[257]
政府委員(警察庁長官) 柏村信雄
調査活動、先ほど調査はやむを得ない、協力者による調査もやむを得ないということを申し上げましたが、これはあくまでも任意な形におきまして、しかも正当にして必要な限度ということを守っていくべきだと存じます。
たとえばこの前のトラック部隊の場合であるとか、人民艦隊の場合であるとかいうときには、ずいぶん長きにわたって容疑者またそれにつながる者というふうなものの尾行とか張り込みとかいたしまして、そうしてずいぶん長い期間かかってあそこまで解明したわけで、そういう事態が深刻なものであり、悪質なものであるものについては非常に精細にやらなければならぬ。
しかしながらそういうことでなくて、ただどんなことをしておるだろうということで、別に犯罪と関係ないような人についての調査をやるというようなことは、私は適当なことではないと思います。