ハニートラップ ~ 上海総領事館員自殺事件

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平成18年02月23日 衆議院 本会議
[005]
自由民主党 小野寺五典
次に、我が国が置かれた情報戦争の現状について伺います。

最近、我が国の防衛機密が脅かされている事件が相次いでいます。

上海の総領事館員が中国当局から暗号情報の提供を強要され自殺するという、いわゆるハニートラップ事件。この問題は、外務省が事件を隠ぺいした疑いや、他に同様な事件による機密漏えいがなかったかという疑念が国民の中で大きく広がっています。この問題に対する調査の徹底と再発防止について、外務大臣に伺います。

また同様に、陸上自衛隊のミサイル開発データが朝鮮総連傘下の在日本朝鮮人科学技術協会に漏えいしていた事件。昨日発覚した、海上自衛隊の機密データがネット上に流出した事件。民間においても、ヤマハ発動機による無人ヘリコプターの対中不正輸出事件など、外務省、防衛庁はもとより、民間企業においても、外交や防衛に関する機密に対して情報管理のずさんな実態は、危機的状況にあると言わざるを得ません。

我が国の機密情報管理がこのような状況では、同盟国である米国が我が国への情報提供をためらうことは想像にかたくなく、日米安保体制の信頼を揺るがすおそれさえあります。したがって、我が国は、これまでの機密保全体制を抜本的に見直し、機密保全のための法整備、さらに、相手方の情報収集に対抗するカウンターインテリジェンス、防諜部門の強化が必要不可欠であります。

我が国を取り巻く情報戦争の現状と、これに日本が勝ち残っていくための施策について、政府はどのような認識を持っていらっしゃるか、外務大臣及び防衛庁長官の答弁をお願いいたします。

[006]
外務大臣 麻生太郎
次に、上海総領事館館員の自殺問題に対する調査の徹底と再発防止についてのお尋ねがあっております。

本件につきましては、事件発生直後より、我が方としてできる限りの調査を行い、中国政府に対し、厳重な抗議を行うとともに、事実関係の究明を求めてきております。

また、本件における機密漏えいの可能性につき、本件の発生後、関係全公館に対し外務省より専門家を派遣し、徹底的な調査を行った結果、暗号システム等の情報が漏えいしたことはないことを確認いたしております。

再発防止策につきましては、情報防護を含みます秘密保全体制の点検及び周知徹底を図るために、研修等の強化をさらに行ってまいろうと思っております。

次に、議員の御指摘、いわゆる情報戦争に関しましては、我が国が行っている情報活動の内容につき具体的に述べることは差し控えさせていただきますが、外務省として、本省及び在外公館のさまざまなソースを最大限に活用して、広範な関連情報の収集並びに分析を行っております。

対外情報機能は、戦略的かつ強力な外交を展開していく上で重要な基盤であります。外務省として、本国及び在外公館の双方において、情報防護を含む秘密保全体制の強化に努めるとともに、対外情報収集・分析機能の強化をさらに行ってまいりたいと存じます。





平成18年03月01日 衆議院 予算委員会第三分科会
[260]
自由民主党 稲田朋美
自由民主党の稲田朋美でございます。本日は、平成16年5月6日、上海総領事館の電信官が領事館の中で自殺をしたという事件について、お伺いをいたしたいと存じております。

この問題が私たち国民の知るところとなりましたのは、昨年12月27日発売の週刊文春でしたが、衝撃的だったのは電信官自殺の理由でございます。その理由が、中国人女性と親しくなり、そのことを理由に中国公安から卑劣な脅迫を受け、暗号システムを教えろと強要されたことにあったと報じられたことです。

さらに、我が国の情報の危機管理のお粗末さ、また外交の不可解さは、このような重大な事件、ウィーン条約に違反する行為が中国からなされ、その結果、1人の人の命が奪われたことについて、外務省がまともな抗議もせず、首相官邸に報告もせず、外務省どまりで対応されたということにあらわれていると思います。

この事件以前でも、平成14年、瀋陽の日本総領事館に北朝鮮の男女5人が保護を求めて駆け込んだということがありました。そのとき、中国の武装警察官がそれを追って領事館に侵入し、男女を連れ去るという、中国から我が国に対する主権侵害がなされたことがあったのですけれども、これに対する外務省の対応もほとんど有効な抗議がなされず、幕引きがなされたと記憶しております。

一体日本の外交はどうなっているのか、また情報防衛はどのようになっているのかというのが、私を含めた国民の正直な感想ではないかというふうに思います。

そこで、まず外務大臣にお伺いいたします。

麻生外務大臣は、流暢な英語はもちろんのこと、御就任後、本当に毅然とした態度で外交に臨まれていて、大変頼もしく、また尊敬いたしております。

今回の中国が行った行為、外務省がおっしゃるところの領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為、さらにはそれに対する今までの外務省の対応について、大臣の御感想、御所見を伺いたいと存じます。

[261]
外務大臣 麻生太郎
これは、現地の中国側公安当局者によります、ウィーン条約接受国の義務に反する遺憾な行為が正確な法律用語だと思いますが、日本の外務省職員が自殺に追い込まれたというようなことは、これは、当然のこととして、話としては非常に深刻な話なんだと私どもは思っております。

発生後、いろいろなことを調査をさせて、いろいろなことをして、また同時にさまざまなレベルで抗議も行ったということが事実で、細かく全部知っているわけではありませんけれども、その中にあって、本人の無念なところもさることながら、基本的には、そこのところの重大な話が官邸まで上がっていかなかったというところが1点。

もう1点は、大事なところは、この方の決意、覚悟のおかげで、少なくとも機密に関するところは保たれたというところは、私どもとしてはそれなりに感謝をせにゃいかぬところ。この人が自分の身の保全を図って漏らしていたら、話はもっと込み入っていたことになったろうと思っておりますので。

私どもとしては、この種の話というのは、今後とも起こり得る話と覚悟しておかなければいけませんから、そういった意味では、この種の話が二度とないように、まず任地に赴くに当たってはそれ相当の覚悟が要る、そういったときの接触は必ずある、それに対してどう対応するか。かつ、それでも対応し切れず、気がついたらはめられていたというときには、妙にそれを隠し立てしないで、さっさと上に失敗しましたと言った方が早い。その方がよっぽど国全体としての被害が少なくて済むということも考えて対応をしなけりゃいかぬというような話を官房長ともども含めてしたところでもあります。

この種の話は、何もここだけの話じゃありません。今後とも、情報をとろうとする側の立場に立てば、ある面、当然のアプローチの仕方といえばアプローチの仕方として覚悟しておかなければいけませんから、そういったところも、何もこの国に限っただけの話じゃないので、いろいろな形のアプローチの仕方はあろうと思いますので、少なくとも外交官たるものという覚悟が要るんだという点なんだと思っております。

[262]
自由民主党 稲田朋美
ありがとうございます。

それでは、外務省に今回の事件についての事実関係についてお伺いしたいと思います。

まず、電信官が自殺した理由についてですけれども、外務省の御見解は資料2のとおりですね。「現地の中国側公安当局関係者による、領事関係に関するウィーン条約上の接受国の義務に反する遺憾な行為」というふうに表現されているんですけれども、それは具体的にどのような事実を指すのでしょうか。

[263]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
遺憾な行為の内容でございますけれども、これは、現地の中国側公安当局関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為があったというふうに判断しております。

[264]
自由民主党 稲田朋美
その背後に女性関係、いわゆるハニートラップであったという点についてはいかがでしょうか。

[265]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
具体的な背後関係については、インテリジェンスの関係の話もございますので差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、現地における公安当局関係者による恫喝、脅迫ないしそれに類する行為があったということでございます。

[266]
自由民主党 稲田朋美
それ以上具体的にはお答えいただけないんだと思いますので、それ以上は聞きませんけれども、もう既に報道では、背後に女性関係があったというふうに報道されておりますし、またお手元の資料3でございますけれども、麻生大臣が、「外務省主催のタウンミーティングで、一昨年5月に在上海日本総領事館員が自殺した問題に言及。中国側から女性問題に付け込まれ、領事館員が「暗号の乱数表を渡せ」と強要されたと明かした。その上で「追い込みをかけたみたいなもの。断固対応するのは当然だ」と述べた。」というふうに新聞にも報道されているところでございますので、大臣自身が既に、背後に女性関係がある、ハニートラップの事件であるというふうに述べられているところでもございます。

したがいまして、インテリジェンスの問題というふうにおっしゃいましたけれども、もう既にその問題は国民の中で知るところになっているのではないかというふうに思います。また、国益また国民の知る権利からも、こういった問題の具体的な背後関係についてはきちんと外務省の方で発表されるべきではないかというふうに私は思います。

次に進みます。この事件についての中国側の見解は資料1のとおりでございます。これについては訳文をつけておりますので、その訳文を見ていただきたいんですが、「2004年5月、日本国駐上海総領事館で館員の自殺事件が起こった。事後、日中双方は外交ルートを通じ、数回にわたり、やり取りを行った。日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表し、ご遺族の意思により中国側に公開しないよう要求した。中国側としては、人道主義に立ち、日本側及び遺族に協力し、善後策について適切な処理をした。」というふうに書かれているわけでございますが、この中の「日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表明した」というのは真実でしょうか。

[267]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
今委員が御指摘されましたように、中国側は死亡の原因として職務の重圧によりというふうに論じておりますけれども、我が方の判断は、先ほどお話ししたとおり、中国側関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為によって自殺に至ったというふうに判断しております。

[268]
自由民主党 稲田朋美
そうしますと、この「日本側は、仕事上の重圧により自殺に至ったと表明した」という部分はうそということでお伺いいたしておきます。よろしいですね。

[269]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
まさにそのとおりでございます。

[270]
自由民主党 稲田朋美
それでは、次の「ご遺族の意思により中国側に公開しないよう要求した。」という点については真実でしょうか、それともうそでしょうか。

[271]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
本件につきましては、御遺族の強い御意向もありまして、昨年12月に我が方で公表するまで公表を差し控えたというのはそのとおりでございます。

[272]
自由民主党 稲田朋美
私が聞きたいのは、中国側に公表しないように日本が要求したということが真実であるか否かの点でございます。

[273]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
失礼いたしました。他方、中国側に対して公表を差し控えるようにという要請をしたことはございません。

[274]
自由民主党 稲田朋美
この点につきましても、私は国家の名誉にかかわることだというふうに思います。つまり、日本側はこの件についていかなる意味におきましても被害者であり、そして中国側は加害者であるわけでございまして、被害者側から加害者側に公表しないように要求したなどというふうに中国側が表明していることについて、ぜひその点は真実に反するというふうに抗議をしていただきたいと思います。

次に、本件のように、他国、中国からウィーン条約違反行為があり、それにより外務省職員の命が奪われるというような重大な結果を生じた国益侵害行為について、当然、相手国に対し厳重な抗議をし、場合によっては何らかの報復処置も辞さないという強い姿勢で臨むべきであると思いますが、外務省が事件直後にとった対応が、資料4の質問主意書に対する答弁でございますけれども、この2枚目の答弁の3項を見てわかるんですが、「平成16年5月中旬に、在中国大使館公使から中国外交部アジア司副司長に対し、また、在上海総領事から現地当局の関係者に対し、それぞれ申し入れた。」という2回だけというのは余りにも抗議としては軽過ぎるのではないかと思いますが、その点、外務省の見解をお伺いいたします。

[275]
政府参考人(外務省大臣官房参事官) 梅田邦夫
お答え申し上げます。

本件につきましては、先生御指摘のとおり、中国側によるウィーン条約上の義務に違反する遺憾な行為があったということで、厳重な抗議を行うとともに、事実関係の究明、真相の究明を求めております。

実際に、今御説明のありましたように、事件直後の平成16年5月に在中国大使館の公使から外交部副司長に、また上海総領事からも現地の公安関係者に、それぞれ申し入れを行っております。

また、昨年の12月に3回、外務省の在中国大使館から中国外交部それから在京中国大使館にも申し入れを行っております。それから、ことしになりまして、1月に行われました局長レベルの日中非公式協議におきましても、アジア局長から先方のカウンターパートに申し入れを行っているところでございます。

[276]
自由民主党 稲田朋美
私が言いたいのは、昨年の12月は、文春による事件公表の前後に至るまでの間で、事件直後に2回しか抗議をしない、それをもって外務省が厳重な抗議を行ったと考えていることが、非常に私は国民の意識からもずれているのではないかなというふうに思うわけでございます。

また、昨年の暮れないしことしに入ってから、おっしゃいますように数回にわたって抗議をなさっているわけですけれども、その申し入れに対して中国は何ら誠実な対応をとっていないというふうに思います。反対に中国は、日本政府の悪質な行為に強烈な憤慨を表明する、既に結論づけた問題を意図を持って誇張し、中国のイメージを損なっている、日本にわずかな道理もない、中国警察当局は当時、日本の上海領事館関係職員から事情聴取し、事実を確認した、聴取記録や日本の職員の署名もあるなどと事実を全面否定した上で、日本を悪質だと非難しているわけでございます。

このような対応に対し、外務省は今後どのように対応なさるつもりでしょうか。単に真相究明を求めても私は平行線になるのではないかというふうに思っているわけでございます。

私は、20年間弁護士をしておりましたけれども、交渉において最も重要なことは背後の恐怖であるというふうに教えられていました。交渉が決裂したときの対抗手段なしで交渉するなということでございます。外務省はいわば日本国の弁護士のようなものだと思います。仮に中国が非を認めようとせず、現在のように反対に日本を非難するという立場を変えない場合には、どのような対抗手段を講ずるつもりなのかをお聞かせください。

[277]
政府参考人(外務省大臣官房参事官) 梅田邦夫
初めに先生から御指摘のありました、1年7カ月の間、間があったではないかという点につきましては、これは我々も反省すべき点はあったのではないかというふうに思っております。

それから、2点目につきましては、これは、引き続き中国側に対して遺憾の意を表明し続けるとともに、真相の究明について回答を求め続けるということではないかと考えております。

[278]
自由民主党 稲田朋美
私が言いたかったのは、そういう平行線の場合に何らかの報復処置を考えていらっしゃるかどうかという点なんですけれども、その点もぜひ考えていただきたいと思います。

次に、複数あると聞きますこの電信官の遺書をなぜ公開されないのか、その理由についてお伺いいたします。

[279]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
死亡した館員の遺書につきましては、複数存在しております。ただ、その内容というのは、インテリジェンスの問題があります。それから当該職員のプライバシーにかかわる問題もあります。それから御家族の意向もあるということを考えなければいけないというふうに思います。

他方、遺書には、現地の中国側公安当局関係者による脅迫、恫喝ないしそれに類する行為があったという趣旨のことが書かれております。

[280]
自由民主党 稲田朋美
しかし、中国側は何の関係もないというふうに主張して、現在も平行線の様相を呈しているわけでございますので、遺書を公表することは非常に重要なのではないかというふうに思います。

また、プライバシーとおっしゃいましたけれども、一体どなたのプライバシーをおっしゃっているのでしょうか。私は、亡くなった本人が遺書を複数残されたということの意味は、また領事館内で自殺されたということの意味は、それを公表することを望んでいらっしゃるのではないかというふうに思います。

もちろん、プライバシー、インテリジェンスは守らなければならないし、遺族の人格権も守らなければならないと思いますけれども、一方で、国益というもの、また国民の知る権利、また世界に向けて日本の正当性を表明するという意味からも、真実究明の手段としてこの遺書しかない場合、私は遺書を公表すべきであるというふうに思います。

次の質問に参りますが、外務省はなぜこの問題を首相官邸に上げずに外務省で処理しようとされたのでしょうか、その理由についてお伺いいたします。

[281]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
先ほど来から御説明申し上げておりますとおり、外務省の方で種々調査をいたしております。それから、中国政府に対してもさまざまなレベルで抗議を行った、あるいは事実究明を求めたということです。それから、機密漏えいもないことを確認しております。他方、再発防止のために必要な措置をとってきたということで、そういう中で、官邸に報告しなかったということでございます。

[282]
自由民主党 稲田朋美
今の外務省の答弁を聞いておりますと、官邸に報告しなかったことが正当であったというふうに聞こえるわけでございますが、小泉総理自身も不快感を表明されておりましたし、今大臣の方からも、官邸の方もこういった情報については把握すべきであるというような感想を述べられたと思うんですが、それでも、現時点で振り返って、外務省で処理しようとして官邸に上げなかったという判断は誤っていたと思われるのか思われないのか、その点についてお伺いいたします。

[283]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
これは大臣も国会で一度答弁されておられるかと思いますけれども、現時点で振り返って考えてみますと、官邸に報告しておいてもよかったのではないかというふうに考えております。

今回のこの経験を踏まえまして、官邸への連絡については、主管部局長が必ず外務大臣に報告、相談し、その上で対応策を決定するということが現在外務省の中で徹底されているということでございます。

[284]
自由民主党 稲田朋美
ありがとうございます。

さらに、当時の川口順子大臣には報告したということでございますが、どの範囲で報告されたのでしょうか。自殺の背景、動機まで報告されたのでしょうか。

[285]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
当日、平成16年5月6日ですけれども、上海総領事館から電報の形で本省に報告されております。その報告が川口大臣にも上がっております。

それから、その後の中国に対する厳重な抗議あるいは事実関係の究明、こういったことについても川口大臣に報告、相談をして対応してきたところでございます。

[286]
自由民主党 稲田朋美
そうしますと、川口順子大臣も自殺の背景までも御存じであったというふうに伺っておきます。

さて、お聞きしましたところによりますと、昭和55年以降、国内で3人、国外で5人の外務省の職員が自殺されたというふうに聞いております。その背景についてはまたきちんと調べていただきたいと思うんですけれども、本件のようなハニートラップという古典的な諜報活動に対し、電信官の命を守れなかった外務省についての批判もあるところだと思うんですが、今後、外務省として、そういったことに対する外務省の内部での教育についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

[287]
政府参考人(外務省大臣官房長) 塩尻孝二郎
これまでもそういった体制をとり、研修、研さんをやっておりますけれども、今回の経験に立ってもう一度組み立て直すということで、情報防護について再確認をする、対処方針というものがありますけれども、それを再度徹底するということでございます。それと、必要な研修、研さんをさらに強化するということで対応したいというふうに思っております。

[288]
自由民主党 稲田朋美
ぜひよろしくお願い申し上げます。

最後に、インテリジェンス機関の設置の必要について外務大臣にお伺いいたします。

元内閣情報調査室長であり、昨年9月13日に「対外情報機能の強化に向けて」という提言を出した対外情報機能強化に関する懇談会の座長である大森義夫氏が、ウイルの3月号に、上海領事自殺事件はインテリジェンス戦争における1つの敗北であり、一個人を超えて日本として国家が敗北したのだというふうに述べられております。

今回の事件を教訓として、日本でも専門のインテリジェンス組織をつくることが必要であるという意見がありますが、この点についての大臣の御所見をお伺いいたします。

[289]
外務大臣 麻生太郎
これがいわゆる機密保護法とかいろいろな法律と関係してくるところなんだとは思いますけれども、稲田先生、この種の話というのは、私は、今後さらに考えていかなければいかぬという雰囲気が少しずつおかげさまででき上がりつつあるんだと思うんですね。

私は、いいことだと正直思っております。少なくとも、ついこの間まで北朝鮮の拉致はないという話だったんだから。そう言う方もいっぱい野党にもいらっしゃいました、その当時は。しかし、今は、やった本人がおれのところでやったと、国家元首が国家犯罪を自分のところで認めておるわけですから、それは随分おかげで時代は変わったんだと思っております。

この種の話というのは、やはり長いこと忘れられている話なんですけれども、これは日露戦争にさかのぼってずうっと諜報というのはやってきたんですけれども、ただ、稲田先生、諜報とか情報とか謀略とかいう話は、何となく日本の世界じゃ余り評価は高くないんですよね。MI5とかMI6とか、あれはみんなサーがつくんですよ。サー何々。こちらは大体らっぱとか草とか、大名のお目見え以下みたいな形で、もともと地位が低いんですよ。こういう話を全然評価しない。だから、情報というのは暗い話になるんですよ。

これこそが国家の大問題なんだという意識というのは、やはり日露戦争の明石元二郎初め、やはりすごく大事なところなんだ、私もそう思っていますし、おかげさまで、やっと防衛庁も情報関係の人は佐官じゃなくて将官までいけるようになったのもつい最近の話ですから。

そういった意味では、この種の話に関してもう少し理解というものと大切さというものを外務省以外の人たちにもよくよく理解をさせるようにしないと、この種の話はいつまでたっても何となくスパイ小説の域を出ないみたいな話じゃこの国にとってはためにならぬと思いますので、今言われましたように、今後十分に検討されてしかるべき問題なんだと思っております。

[290]
自由民主党 稲田朋美
大変力強いお言葉、ありがとうございます。

今回の事件は、自殺された電信官にとっても不幸な出来事ですし、また我が国にとってもインテリジェンス戦争の敗北というべき不名誉な出来事だったと思うんですけれども、せっかく麻生大臣のような国益を守るという立場で外交を考えていらっしゃる大臣に恵まれているわけですから、この機会に日本としても専門のインテリジェンス組織をつくって、国家としての情報機能を真剣に考えるべきときではないかというふうに思います。

本日はどうもありがとうございました。





平成25年11月19日 衆議院 国家安全保障に関する特別委員会
[190]
参考人(評論家・ジャーナリスト/一般社団法人アジア自由民主連帯協議会副会長) 西村幸祐
西村幸祐と申します。

きょうは、このような場にお招きいただき、大変ありがとうございます。

私なりに、この特定秘密保護法案について所感を述べさせていただきたいと思います。

きょう述べるつもりであるものは、お手元の紙には書いてございますが、まず最初に、特定秘密保護法案、要するに国家機密ということだと思いますが、それを保護する法案が日本にないということ自体が異常な事態である、それがまず一番この法案で感じることなんですね。

それで、我が国は、昭和27年、1952年4月28日に独立をした、主権を回復した、つまり、敗戦後の6年8カ月の占領期が終わって、独立国家、主権を回復したということになっていますが、本当にそうだったんですか。この61年間の政治に携わってこられた方々に、私は強くそのことを申し上げたいですね。本当に主権国家だったのか。自分たちの国の国家機密も管理できる、保護しようという法律すらなければ、主権国家とは言えないではないですか。そんな当たり前のことがなぜ最初にこの法案を論議するときに問題にならないのかということは、まず大きな疑問として感じました。

翻ってみれば、先ほど青山参考人からもお話があったように、実は、昭和60年、1985年に、スパイ防止法というものが一度成立させるべく上程されましたが、廃案になっております。もし、あの時点でスパイ防止法ができていたら、ひょっとしたら拉致事件の進行はかなり防ぐことができていたのではないか、そういう類推も可能になるわけです。つまり、この25年間以上、そのままの状態でずっと来ているのが我が日本という国であるわけです。

実は、冷戦崩壊後、ソ連が崩壊した後にKGBの秘密文書が流れました。そして、KGBの職員であったミトロヒンの文書が1冊の本となってイギリスでは出版されておりますが、驚くべきことに、その本の中を見れば、昭和30年代からの日本の与党、野党を問わず、政治家の実名が列記されていて、つまり、それはKGBのエージェントとして働いていたということですね。それと同時に、各メディアの中には、多くのメディアですよ、コードネームで呼ばれる人物が存在していたんですね。これはもう歴然たる事実なわけです。そして、その状況は今も続いているということなんです。

だから、どこかで歯どめをかけなければ日本はますます独立国家としての歩みを確保することができなくなってくる、そういう瀬戸際のぎりぎりの状況にあるということを最近は多くの国民も肌で感じてきています。それは、この10年間の政治の流れ、日本を取り巻く外交の変化、そして北東アジアの情勢、そういったものを見れば国民はわかるわけですね。

まさに今申し上げた北東アジアの例ということで申し上げますと、具体的に言うと、今から9年前、上海の日本領事館で1人の職員が首をつって亡くなりました。その方は当時46歳、もし御存命なら55歳です。その自殺した方の遺書を発見した読売新聞はこう伝えていますね。

自殺した館員は、総領事館と外務省本省との間でやり取りされる機密性の高い文書の通信を担当する「電信官」。

遺書は総領事と家族、同僚にあてた計5通があり、パソコンで作成されていた。

総領事あての遺書は計5枚の長文で、中国側の接近から自殺を決意するまでの経緯が個条書きで記され、最後に「2004年5月5日」の日付と名前が自筆で書き込まれている。

それによると、情報当局は、まず03年6月、館員と交際していたカラオケ店の女性を売春容疑で拘束。処罰をせずに釈放し、館員への連絡役に仕立てた。

というように、要するに、完全に、よく言われるハニートラップの工作が上海領事館の職員に対して、しかも機密文書を扱う電信官に対して、明らかに組織的そして計画的に、中国共産党によって日本に対する対日工作の一環として行われているわけですね。しかし、これは氷山の一角にすぎないではないですか。

なぜこういう悲劇を生んだのか。この職員は遺書に残した言葉で、「日本を売らない限り私は出国できそうにありませんので、この道を選びました。」という言葉を残してこの領事館員は自殺されているわけです。

しかし、この領事館員とは別に、日本を平気で売っている政治家あるいは企業の経営者たち、そういう人たちは一体何人いたのか。そういう人たちのオンパレードが今のこの日本の状況をつくっているのではないでしょうか。

そういう意味でいえば、この特定秘密保護法案は、こういった善良な、国のために働いている一公務員を守る機能も果たさなければいけないわけですね。

特定秘密を保護するという、その保護ということは、相手国つまり日本以外の外国、あるいは敵国、戦後68年間、日本では敵国という概念はなくなって、敵国という言葉を恐らく使いませんね、外国、敵国の特定秘密をとる能力もなければ実は保護する能力もできないんですね。

これは、最近盛んに言われております、今防衛省でも進められておりますサイバー攻撃に対する防衛の体制が整えられています。しかし、何人かの方を取材して私もはっきりわかっているんですが、サイバー攻撃に対して防衛の能力を高めるためには、実はサイバー攻撃で相手を攻撃する能力がなければちゃんとした防御もできないんですね。

こういった二律背反性といいますか、そういったものを全て備えた上で今回の法案を、修正審議を進めるのであれば、そういった部分をもっともっと見詰めていただきたいというのが私の願いであります。