社会主義幻想

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昭和29年05月06日 衆議院 内閣委員会
[083]
日本社会党(社会民主党) 田中稔男
政府は対米依存のMSA再軍備を理由づけるために、中ソ両国の侵略の危険をしきりに宣伝しております。国民の中にこの宣伝に乗つている者も少くありません。革命はこれを他国に輸出し得るものではないことは、マレンコフも毛沢東もよく知つているはずであります。また日本の改革を中ソの軍隊を迎えて遂行しようと考える者が万一ありましたならば、それは必ずや失敗するでありましよう。それは民族の誇りがこれを許さない、大衆の支持を得ることができないのであります。

さらに中ソ両国は人口は豊富であり、国土は広大であり、資源において大体自給自足が可能であるばかりでなく、恐慌と失業とのない社会主義体制の特徴として無限に拡大する国内市場を有しておりますから、あえてアメリカのごとく海外に帝国主義的進出を試みる経済的理由がありません。

もし中ソ両国に欧亜の人民民主主義諸国を加えますならば、それ自身一つの完成した世界経済を形成するのであります。もちろん日本の工業力は中ソ両国にとつて一つの大きな魅力たることを失わないといたしましても、侵略によつてこれを奪うことは、日米の共同防衛体制がしかれていなくても、アメリカとの戦争を誘発し、その結果日本の工業力そのものが壊滅に帰することは明らかに予想されるところであります。むしろ中ソ両国としては平和的な経済交流の方法によつて日本の工業力を両国のために利用する方がはるかに賢明であります。

さらにまた中ソ両国の国民は這般の悲惨きわまる戦争の体験から、何よりもまず平和を熱愛し、社会主義建設の成功は平和なくしてあり得ないことを知つています。この大衆の平和への熱望によつてささえられている限り、中ソ両国の平和政策の真実をわれわれは信用してしかるべきだと考えるものであります。