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昭和53年03月02日 衆議院 予算委員会第一分科会
[067]
公明党 小川新一郎
2番目は、徴兵制を実施する考えがあるのかないのか。いまの志願制度で、敵弾が飛んでき、戦死者が出る、補充をしなければならない。私も戦時中一兵隊としておりましたが、700万から1000万の国民に動員令がかかって、国民徴兵制をしいてわが国の防衛、安全ということで戦ったけれども敗れました。
わずか17万の陸上自衛隊の補充さえも、現在15万5000と聞いております。こういう中で、果たして一朝有事のときに志願制で間に合うのかどうか、そういうときには徴兵制、国民動員というものをしくのかどうか。
[068]
政府委員(防衛庁長官官房長) 竹岡勝美
それから、徴兵問題につきましても、徴兵制度につきましては現在の憲法を超えるものであるという従来からの政府答弁がございます。
また、われわれも別に徴兵制度まで考えなくても、一たん有事になれば多くの国民が自衛隊を応援すると思うのです。いまの陸上自衛隊が15万しかいないということでございますけれども、こんなものは完全に18万の定員は充足できると思っておりますから、別に徴兵制度を考えるようなこともわれわれはしておりません。
昭和53年04月11日 参議院 内閣委員会
[153]
政府委員(防衛庁長官官房長) 竹岡勝美
いままでたびたび政府が答えておりますとおり、いわゆるその徴兵制度というのは、これはもう憲法に反するということで当然われわれは考える段階ではございません。一般の徴用ということも、これはやはりいまの憲法制度からいかがなものか、われわれ考える段階のものではないと思います。
ただし、一部、現在の自衛隊法でも、有事の場合にいわゆる危険区域以外のその他の区域でございますが、その場合に内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限りまして、都道府県知事が医療、土木建築工事または輸送を業とする者に対して、その同じ業務についての従事することを命ずることができるという、いわゆる特定業種に対する従事命令というのがあります。医療なり土木なり、こういうものは有事のときですから大いに手伝えと、ただし、危険なところへ行くと危ないから、こちらの後方において必要なものは従事命令を都道府県知事が出す、ということは現行法でございます。
しかし、一般的に国民の徴用とか徴兵ということは、いま現在われわれの勉強の範囲内では前提にしておりません。
昭和53年09月29日 参議院 本会議
[019]
自由民主党 長田裕二
次は、防衛問題でありますが、まず有事法制について伺います。
緊急事態に際して自衛隊がその任務を円滑かつ効果的に遂行し得るために、法制上の問題を初め、各分野の国防上の検討を平素から進める必要があることは、防衛白書の指摘を待つばかりでなく、当然のことであります。不幸にしてわが国に対し武力侵略があるような非常事態に際し自衛隊が行動する場合の特別の措置については、現行の自衛隊法でかなり規定されているようでありますが、これを具体的に運用、施行するに必要な政令は、まだ制定されていないものもあるようであります。
栗栖前統幕議長が、防衛出動下令以前の奇襲に対処する法的根拠の問題を指摘して以来、自衛隊の奇襲対処と、昨年来防衛庁において研究している有事法制の問題をめぐり、目下各方面で論議が活発に行われており、防衛庁の研究は相当進み、立法化の段階にあるとか、言論統制や徴兵制がその内容になっているとかの報道もあります。その実情について、念のためお伺いいたします。
私としては、有事の際の問題点の検討は、国家民族安全確保の上から、絶えずしっかりとこれを進めるべきことは当然だと思います。これらの問題についての総理及び防衛庁長官の所信をお伺いいたします。
[020]
内閣総理大臣 福田赳夫
それから有事防衛体制についての基本姿勢はどうかと言うが、私は、有事防衛体制というのはこういうにぎやかな議論になるということは想像もできなかったことなんです。まあ、自衛隊にもう現に存在しているんですよ。
その自衛隊は何のために存在しているかと言えば、有事のために存在しているんです。その自衛隊が有事の際にどういうことをしなければならぬかという点、もし欠くるところがありますれば、これは補っていかなきゃならぬわけでありまして、その有事体制について検討を進めるということは、まさにこれは自衛隊の義務であり、政府の責任である、そのように考えております。
[022]
国務大臣(防衛庁長官) 金丸信
ただいま有事法制の研究の問題について、つまびらかに総理からお話がありましたが、私は、有事を仮定するから自衛隊があるということでありまして、有事がなければ自衛隊は要らないということであります。しかし、現実に27万の自衛隊がおる以上、この自衛隊が毎日のらくらして国民の負託にこたえられるかということであります。
また、有事立法と奇襲の問題が一緒になって一人歩きをしたために、非常に国民の皆さんや政党の皆さんに御迷惑をかけましたが、私は、憲法の範囲内で、あくまでもこの範疇の中で研究するんだということでありまして、自衛隊、防衛庁の職員の中にも誤解を招くようなお話もありました、また、自民党の幹部の中にも誤解を招くような話もありましたけれども、私は全然そんなことを考えておらないということだけ御理解いただきたいと思うわけであります。
ことに、奇襲の問題につきましては、絶対奇襲というものはあり得ないということにすることが政治だという私は考え方を持っている。しかし、先ほども総理が申し上げましたように、万の万の万の一あるということがあるというのであれば、それはひとつ研究をしてみることもいいじゃないかと、こういうことでありまして、私は絶対ないことを踏まえながら、そう申し上げたいと思うわけであります。
昭和53年10月02日 衆議院 予算委員会
[203]
日本社会党(社会民主党) 石橋政嗣
そのほかに、今度の防衛庁見解によりますと、今回の研究は、憲法の範囲内で行うものであるから、旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ないし、言論統制などの措置も検討の対象としない。これはちゃんと書いているのですね、一応。機密保護法のこともこの中に含まれておるつもりかもしれませんけれども。
こういったものも、本当に有効に対処するためにそんなものは要らぬのだということなのですか、それとも憲法上無理があるからいまのところできないということなのですか。
[204]
政府委員(防衛庁防衛局長) 伊藤圭一
私どもは、戒厳令、徴兵令等につきましては、憲法上もできないと思っておりますし、また実際に自衛隊の有事の行動の面から見て必ずしもそういったものは必要ではないというふうにも考えているわけでございます。
昭和53年10月09日 参議院 予算委員会
[262]
内閣総理大臣 福田赳夫
あの統一見解では、徴兵法ですね、あるいは戒厳令、こういうのに触れておりますが、そういうことを研究する意図は先々といえども持っておりません。しかし、言論統制、言論統制と言いますが、言論統制が憲法違反になるというような程度のことはこれはもう断じて考えませんから、ひとつ御安心を願いたい。
ただ、言論統制の周辺にある機密保護法、こういうようなことになりますと、いまさっき私が申し上げたように、いま自衛隊の機密はどうやって守っているかと、こう言いますれば、自衛隊員の規律――自衛隊員が秘密を漏らしたと、そういう際に1年以下の懲役だ、あるいは3万円以下の罰金だというようなこと、これで守られておるわけですが、これは平時の話なんだと。
しかし、これが戦時になりました際、あるいは有事になりました際、そういう際にそういうようなことでいいのかどうかという問題だってまあちょっと考えてみればあるわけじゃありませんか。そういうようなことを含めまして機密保護をどうするか。まあどういう法制になるか、それはわかりませんけれども、いまの機密保護体制で一体有事に臨めるかどうかというような問題ですね、これは私は真剣に考えていい問題だと、こういうふうに考えますが、いま私どもは言論統制だ何だ、そんなようなことを全然考えておりませんから、そのように御理解願います。
昭和53年10月11日 参議院 予算委員会
[173]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
有事のときに、いまの月給をもらっている自衛官、予備自衛官約4万人、これ以上に志願をして集まる道理はないと思うんですよ、常識で考えて。鉄砲の弾が飛んでくる中へ志願していこうというようなことはあり得ないですよ。
そこで福田総理に伺いますが、一昨日も徴兵制について触れられておりましたが、考えてないということですが、徴兵制は考えていないというのはポリシーの問題で考えられていないのか、あるいは法律、憲法の上で、法律、憲法のどの条項で考えられていないんですか。
[174]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
徴兵制度と憲法との関係につきましては、従来からしばしば国会の御論議の対象になっております。まずその徴兵制度とは一体何かという定義から始めないと実は議論がはっきりしないわけなんですけれども、従来の政府側の説明によりますと、徴兵制度というのは国民として兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であろうと思うと。つまり軍隊を平時において常設いたしまして、これに要する兵員を毎年徴集して一定の期間訓練をして新陳交代をさせる。それによって戦時編成の要員として備えるという制度を言うものであろうと思うというような定義をまず考えまして、そういうような意味の徴兵制度はいまの憲法に照らせば、これはしかく明確にはいままで言っておりませんが、18条とか13条とかいろいろ問題があると。いずれにしてもそれは現行の憲法では認めるところではないと思うということをはっきり政府側は従来答弁しております。
[175]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
長官は平時ということをいま2、3回言われたわけですが、有事のときは別だという意味なんですか、平時というところを強調されたということは。
[176]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
先ほど申しましたのは従来からの政府の説明ぶりの定義でございますが、つまり平時において訓練しておいて、そして有事の際に新陳交代して要員として補充すると、そういうのはできない。まして、いわんや戦時の際に新たに強制的に軍務につかせると、兵隊として――兵隊と言っては語弊があるようですが、自衛隊員として強制的に役務につかせるということは、これはだから制度としてはできないというふうに考えております。
[177]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
有事でもできないと、こういうことですか。
[178]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
そのとおりでございます。ただ、ちょっと一言補充して申しますと、現在103条に先ほど来問題になっておりますような一定の業務に従事する、たとえば運送とか医療とかそういう業務に従事する人に対して、103条の政令をつくって、あれを発動すれば、あの条文を発動すれば有事の際にそういう医療の業務とかあるいは運送の業務につかせることはできます。これと徴兵制度とは話が違うものであるというふうに考えます。
[179]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
その徴兵制ができないのは、なぜできないのかはっきり言ってください。13条ですか、18条ですか、9条ですか。
[180]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
9条を根拠にして自衛隊そのものが違憲だからというようなお考えの方から見れば当然9条だということになろうかと思いますけれども、政府はそうは思っておりませんので、つまり9条は必要最小限度の自衛力を持つことは認めておるという前提でございますから、9条に抵触するがゆえに徴兵制度はできないんだ、憲法がいや許していないんだとは言っておりません。
先ほど申しましたように、憲法の条文として徴兵制度に絡んで問題になるものとしては、18条の例の苦役の禁止とか、あるいは13条の幸福追求の国政の上で尊重しなさいというような条文とか、そういう条文がいろいろ問題になるんだろうが、いずれにしても現行の憲法上は認められるとは言いがたいという考えでございます。
[181]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
有事の際でもできないということと、それから憲法上の13条、18条でできないと、こういうふうにおっしゃったというふうに理解しておきますが、そこで、自衛隊法の103条でこの有事の際下令があったときに輸送機関、医療機関等についての特例が定めてありますけれども、この輸送機関や医療機関に従事する人たちは、そういう措置に該当したときには18条に抵触をすることにはなりませんか、いかがですか。
[182]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
103条の規定をごらんになるとおわかりだと思いますけれども、その運送なり医療に従事している人に対して103条によって従事命令をかけるという場合のその従事命令の中身は、防衛出勤が発令されて戦火がそこで行われて弾が飛んでくるというような地域のことではないわけなんで、それのまた外側なんですね。外側なんでして、ですから、先ほど申しましたように、自衛官として鉄砲を撃てというような意味の徴兵制度は、これは苦役に当たるかもしれませんが、その周りの方でお医者さんに医療に従事しなさいと、あるいは運送業者に運送に従事しなさいという命令をかけることが憲法18条の苦役に抵触するというふうには考えておらないのです。
もし、それが憲法18条の苦役だなんということになりますと、103条に類似するそういう従事命令の制度は、これは自衛隊法のみならず、ほかの水防法とか消防法だとか、あるいは災害救助法とか災害対策基本法とか、類似してはいろいろあるわけなんで、これが皆憲法違反かということになると、そうは毛頭考えておらないということをつけ加えておきます。
[183]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
この「野外令」によると、具体的に戦傷者の扱い等が出ているわけです。それで、103条にある輸送機関、医療機関というのは、これはつまり具体的な戦場に近接したところで部外医療機関を利用するということが「野外令」に書いてあるわけですから、いわゆる硝煙の漂うようなところへ行って輸送機関あるいは戦傷者の治療に従事しろと、こういう意味で103条が書かれてあるわけです。そういうところへ行くのはいやだと、こういう人がいるとすれば、これはそれを強制するということは憲法の18条苦役の禁止という条項に該当しませんかと、こういうふうに具体的に聞いているのです。
[184]
政府委員(内閣法制局長官) 真田秀夫
繰り返して申し上げますけれども、103条の規定は、先ほど申しましたように、戦闘がまさしく行われているそのさなかへ行けということじゃなくて、その周辺の地域で医療業務に従事しなさいということなんだから、それはあたかも災害対策基本法で、洪水が起こりまして堤防が切れそうだと、そのときにその周りの住民なり一定の人にそこで働きなさいというのだって、これも小なり危険を伴うわけなんですね。
しかしそれが苦役だというふうには実は考えておらないわけなんで、そこでわざわざ103条の規定は、内閣総理大臣が告示をするときに地域を決めまして、その中はこれは非常に危険なところであるから自衛官が鉄砲を撃ってそこで戦争をすると、そして、民間の人に従事命令を課して働いていただくのは、そんな危険なところじゃなくて、それよりも外側であるというふうに実は規定がしぼってあるわけです。
[185]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
具体的に厚生大臣に伺いますが、昭和30年6月20日に、日赤の副社長名で、日赤の各支部長あてに「救護規則施行に関する件」という通達が出ております。
この通達の冒頭は、本規則は、戦時、事変等において、戦傷者や捕虜抑留者等の救護に従事しと、こういう書き出しで日赤の通達が出ているわけです。それに基づいて特殊救護班員ということで、日赤でそういう勤務に従事する者についての登録がされているわけです。
そういう状態は、これは憲法18条の苦役の禁止という条項に該当しませんか。
[186]
厚生大臣 小沢辰男
弾が飛んでくることを全然――御通告もなかったものですから、私資料を全然持ち合わせございませんが、日本赤十字社が世界的にやはりそういうような人道的な勤めに従事するということは、これはもう当然考えておかなければいけないことでございますので、それについて特に赤十字社の方で一定の枠内で準備をしておくということは、これはもう赤十字社の本来の任務ではないかと、かように思います。
ただ、具体的ないまの御指摘の文書等について私よく拝見をいたしておりませんので正確にはお答えできませんけれども、私はいま突然の御質問についての考え方を述べれば以上のようなものでございます。
[187]
日本社会党(社会民主党) 野田哲
すでに日赤はそういう通達が出されて必要な要員の登録が行われていると、戦時体制の準備がされているということだけ私は指摘をしておきたいと思うんです。そこで、いろいろ有事立法の問題で問答をしたんですが、政府側の方は明確な答えがなかったわけです。
昭和53年10月16日 衆議院 内閣委員会
[054]
日本社会党(社会民主党) 栂野泰二
そこで、この有事法制研究の3項には、「今回の研究は、むろん現行憲法の範囲内で行うものであるから、旧憲法下の戒厳令や徴兵制のような制度を考えることはあり得ないし、また、言論統制などの措置も検討の対象としない。」こうあります。
これは当然そうあるべきなんですけれども、防衛庁としては、先ほど来申し上げましたように、自衛隊の行動に関しない、自衛隊の運用に関しないものは自衛隊の権限外だから、それは憲法違反であろうとなかろうと、そういう権限外のものは一切タッチしない、研究対象にしない、こういうふうに私は理解したいが、いかがでしょうか。
[055]
政府委員(防衛庁防衛局長) 伊藤圭一
自衛隊の権限外のことを直接研究の対象とする考えはございません。しかしながら、関係各省との間で、あるいは適用除外の問題、あるいは特例をつくるような場合、そういう場合には当然のことながら協議、調整しなければならぬ分野もあろうかと考えているわけでございます。