外患誘致、外患援助、未遂、予備及び陰謀

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刑法 第3章 外患に関する罪

第81条[外患誘致]
外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。

第82条[外患援助]
日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは2年以上の懲役に処する。

第87条[未遂]
第81条及び第82条の罪の未遂は、罰する。

第88条[予備及び陰謀]
第81条又は第82条の罪の予備又は陰謀をした者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

改正
第81条[外患誘致]
外國ニ通謀シテ帝國ニ對シ戰端ヲ開カシメ又ハ敵國ニ與シテ帝國ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ處ス

第82条[外患援助]
要塞、陣營、軍隊、艦船其他軍用ニ供スル場所又ハ建造物ヲ敵國ニ交附シタル者ハ死刑ニ處ス
兵器、彈藥其他軍用ニ供スル物ヲ敵國ニ交附シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス

第87条[未遂]
前六條ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

第88条[外患予備・陰謀]
第八十一條乃至八十六條ニ記載シタル罪ノ豫備又ハ陰謀ヲ爲シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ處ス

削除
第83条[通謀利敵]
敵國ヲ利スル爲、要塞、陣營、艦船、兵器、彈藥、汽車、電車、鐵道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ處ス

第84条[通謀利敵]
帝國ノ軍用ニ供セサル兵器、彈藥其他直接ニ戰闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵國ニ交附シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ處ス

第85条[通謀利敵]
敵國ノ爲メニ間諜ヲ爲シ又ハ敵國ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ處ス
軍事上ノ機密ヲ敵國ニ漏泄シタル者亦同シ

第86条[通謀利敵]
前五條ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵國ニ軍事上ノ利益ヲ與ヘ又ハ帝國ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ處ス

第89条[戰時同盟國ニ対スル行爲]
本章ノ規定ハ戰時同盟國ニ對スル行爲ニ亦之ヲ適用ス





昭和22年08月06日 参議院 司法委員会
[002]
政府委員(司法事務官(刑事局長) 國宗榮
次は第3章の「外患ニ関スル罪」を改正いたしました。

これは第3章の「外患ニ関スル罪」は、戦争状態の発生並びに軍備の存在を前提とする規定でありまして、今次憲法におきまして戦争放棄を宣言いたしておるのでありまするから、この条章は当然に改正を加えなければならない、かように考えたのであります。

ただ併し戦争を放棄いたしましても、外国との関係におきまして処罰を要するものがございます。それを改めてこの度規定いたした次第でございます。

即ち81条を改正いたしまして「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ処ス」外国と通謀いたしまして、日本の国に対し武力を行使するに至らしめた者、外国が日本に対して武力を行使する、かような場合に、これを行使するに至らしめた者を死刑に処すと規定をしたのであります。

第82条「日本国ニ対シ外国ヨリノ武力ノ行使アリタルトキ之ニ与シテ其軍務ニ服シ其他之ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘタル者ハ死刑又ハ無期若クハ2年以上ノ懲役ニ処ス」、これも日本に対しまして、外国自体が武力の行使をして参りましたとき、これに対してその軍務に服したり、或いは軍事上の利益を与えるという行為がありました者は、死刑又は2年以上の懲役に処す、とこういう規定にいたしたのであります。

それから83条乃至86条は、いずれも戦争状態並に軍備の存在を前提といたしまする規定でありまするので、これは削除いたしました。そうして87条並に88条等におきましては、この削除等によりまするところの整理をいたしまして、89条をも、只今申上げましたように、軍備の存在並に戦争状態を前提といたしまする規定と解されまするので、これを削除いたしました。





昭和22年08月07日 参議院 司法委員会
[037]
無所属 小川友三
88条から86条までにつきましてお伺いいたします。「外患ニ関スル罪」が削除されておる点が多いのですが、特にこの81条につきましてお伺いいたします。

旧法では「外国ニ通謀シテ帝国ニ対シ戦端ヲ開カシメ又ハ敵国ニ与シテ帝国ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ処ス」、これでありますが、これは81条の方は「戦端」でなく「武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ処ス」というのでありますが、武力の範囲についてお伺いいたしますが、「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スル」範囲が、短刀を振廻しただけでも武力に入るというような解釈でしようか。又戦争までは行わないが、デモを行つて、そのときに竹槍を持つて大きなデモをやるとか、中型のデモをやつた、小型のデモをやつたという行為が、武力を行使した範囲に入りますか。竹槍というものは武器の一つでありますので、その見解を御答弁願いたいのであります。むしろこれは「武力」という言葉を使わないで「戦端」という工合におやりになつた方が適当でないかと思います。

[038]
政府委員(司法事務官(刑事局長) 國宗榮
新憲法は「第2章戦争の放棄」という章におきまして、第9条に「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」、かように戦争放棄の規定を設けておるのでありまして、その関係上この「外患ニ関スル罪」を改めたのでございまするが、只今御質問の「戦端」というのは、これは我が国の方に武力を存しておりまして、兵備を持つておりまして、そうして外国との戦に至らしめるという虞れがありますので、81条におきましては単に「武力ヲ行使スル」というふうに改めたのでございます。

そうしてこの「武力」と申しますのは、固より外国の軍隊による我が国の領土への侵入、我が領土の空襲というような、一つの外国から日本国に対してされる武力の行使でありまして、単に外国人が匕首を振つて、日本国民に対しまして危害を加えるというようなものは、この観念には包含しないのであります。従いましていわゆる軍隊の兵器等を武力行使と申すのでございます。

尚単なる外国人の集団が、日本国民たる個人に対しまして武力を行使する場合には、本条に該当しないものと考えるのでありまして、或る他国がその国として、日本国に対しまして兵器を以て武力を行使する手段に出た場合を81条で規定しておるわけであります。

[039]
委員長 伊藤修
小川委員は「武力」の意義を問うておるのですから、意義を明確にして頂きたい。

[040]
政府委員(司法事務官(刑事局長) 國宗榮
「武力」と申しまするのは、軍事行動に必要な実際の軍隊で使用するところの武器、従いまして銃器、火砲、或いは一切軍隊の機動に必要とするところの兵器、弾薬、貨車、電車、そういうものを「武力」と考えております。





昭和22年08月08日 衆議院 司法委員会
[081]
国民協同党 大島多藏
このたび外患に関する罪のところで82条にこれは新たにと申し上げた方がいいような規定ができております。

82条におきまして「軍事上ノ利益ヲ与ヘタル者ハ死刑又ハ無期若クハ2年以上ノ懲役ニ処ス」、こういうのでありますが、この軍事上の利益と言うのは、国内の混乱を来すような一部急進分子の思想的運動というようなものも、この軍事上の利益の中へはいるものであるかどうか。その点を御説明願いたいと思います。

[082]
政府委員(司法次官) 佐藤藤佐
従来軍事上の利益というのは非常に広く解釈せられておりまして、直接武力でなく、金品を与える、あるいは食糧を与える、あるいは輸送の便を与えるというようなことを例示せられておるのでありますが、ただいまお尋ねの思想の混乱を起さしめるというようなこと、単なる思想運動に止まると申しまするならば、あるいは問題はないだろうと思います。

けれどもそれが直接実行に関連しておる場合には、やはり軍事上の利益を与えたものと認定される場合が多いだろうと思うのであります。

[083]
国民協同党 大島多藏
それからもう一つこれは別のことでありますが、お伺いしておきたいことは、この間戦争中国外にありまして、そうしてわが国に対して非常な、日本人でありながらわが国の敗戦を希望し、あるいは希望するような方面に努力した人が遺憾ながらあつたわけであります。

そういう人たちが終戦後わが国に帰りまして、そうしてあたかも凱旋将軍のごとくふるまつておるということは、私たちとしては非常ににがにがしく思つておるわけであります。前の刑法というものが有效であるとすれば、もちろんこの外患に関するところの罪に相当するわけでありますが、そういう人たちがなぜ処罰の対象にならなかつたかということは、これはいかなる法的根拠によるものであるか、その点をお伺いしたい。

[084]
政府委員(司法次官) 佐藤藤佐
過去の戦争中外国においてある行動に出た者が、わが国に終戦後帰つて来てから、何ら処罰を受けないのはどういう理由に基くかというお尋ねのように拝承いたしたのでありますが、その外国に滞在中の行動が直接刑法その他の刑罰法令に触れる場合は、もちろん犯罪が成立しておるのでありまして、時效にかからない以上は、わが国に帰つて来てからもこれを処罰することができるのであります。

ただ御承知のように敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾することにいたしまして、また連合国最高司令部の覚書によりまして、過去の思想犯は一切これを釈放しなければならぬ。またすでに刑を受けた者、また刑を受けない者でも、みな過去における2囘の恩赦令により、大赦の恩典に浴しておる次第なのであります。具体的には存じませんが、お尋ねのようなものは、大抵この大赦によつて赦免せられた結果、処罰を免れておるものと解釈いたされるのであります。





昭和25年04月03日 衆議院 外務委員会
[087]
自由党(自由民主党) 佐々木盛雄
私は外務当局並びに法務当局に対して、千島にある残留同胞にして、ソ連軍の密令を受けて北海道、内地へ潜入して必要なる調査を終えたる後、再びソ連占領下の千島へ帰つて行く者があることを、北海道新聞その他において報道しておるのでありますが、この問題に関連して承りたいのであります。

大体の大ざつぱな内容を申し上げなければならぬと考えますが、この記事の中を拾い読みいたしますと、「南千島に抑留されていた同胞たちがソ連の密命を帯び、深夜あるいは濃霧にまぎれてソ連占領地に最も近いノサツプ岬付近から上陸し、命を終えてまたひそかに同地点から姿を消していた事実が判明、千島の残留同胞は現在一応全部引揚げたことになつており、スパイの役目を命ぜられた人も大半引揚げてはいるが、調査の結果まだ残つていると思われる人々がいる点、ゴヨマイ水道でマ・ライン越境の理由で拿捕された漁船の乗務員たちに情報提供を交換條件に帰還させている事実などから、その連絡をはかるスパイ活動は長期にわたり継続されたことが予想されるが、密命を終えて引揚げた人々の話を総合すると、ソ連側の命令で密入国させられたものの数は相当あつたらしく、記者が数日で調査した範囲だけでも根室町高橋昭一さん、同浅図與三さん、別海村片野潔さんを初め、浅沼某、宮下某、鈴木某、田中某など数名に及び、中には女もまじつており、これらの人人はソ連軍の甘言と、本人や家族の生命に対する威嚇におどらされ、道内地図、新聞、雑誌などの収集から、警備状態など種々諜報の調査を使命とされていたもので、中には密命を帯びて帰つた後、いずこともなく連れ去られて、家族たちの前に再び姿を現わさなかつたものもあるといわれている。以下は密命を強要され千島に帰り、一般引揚者として真岡から函館へ送還された高橋昭一さん、浅図與三さん等の語る密入国の真相である。」というのがありましてその当時そういう密命を帯びて北海道内でいわゆるスパイ行為なるものをやつたという高橋昭一さん、浅図與三さん、その他この船を運転したという高岩さん、またその他の村長などの証言が新聞に載つておるわけなのであります。これにつきまして、まず法務当局に承りたいのでありますけれども、法務当局はこういう事実についてよく知つておられるのかどうか、もし知つておられるならば、その真相を明らかにしてほしい。さらにまたもし御存じないならば、すみやかに真相を調査の上善処されんことを望みます。

それからさらにもう一つは、法理論上の問題でありますが、現在占領下に置かれておつて、しかも新憲法によりまして一切の軍備を放棄いたしました日本におきまして、いわゆるスパイ行為というようなものがあり得るのかどうか。従来のいわゆるスパイ行為なるものは、おそらくは軍機保護法であるとか、あるいは国防保安法であるとか、その他のことによつて軍の秘密、国の秘密というものがあつたのでありますけれども、こういう一連の法律がなくなりました今日におきまして、俗にいうスパイ行為などというものは、法律上あり得るのかどうか。もしあるとするならば、どういうような法律によつて取締りの対象とされるのかということも承りたいと思います。

さらにまた私はこの新聞に伝えておりまする行為が事実であるといたしますならば私はこれは今申しました軍機保護法であるとか、国防保安法というようなものがない今日でありましても、刑法によりまして、やはり第2編第3章の外患に関する罪というのがありますが、第81条から第88条までの間を読みますと、「外国二通謀シテ日本国二対シ武カヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑二処ス」とか、あるいは侵冠援助の規定であるとか、あるいは未遂の規定であるとか、ないしは予備陰謀の規定などがあるわけでありますが、私はこういうことを援用いたしますならば、今日ソ連は武力革命ということを明らかにしております以上、当然こういうものも援用的解釈を受けて、これを適用することができるのではなかろうかとも考えるわけでありますが、一体法務府はこれらに対して、どういうふうにお考えになつておるか、また現実どのようにし、またなさろうとしておるか、ということについて承りたいと存じます。

[088]
政府委員(検事(検務局長)) 高橋一郎
ただいまの御質問の法律の方の問題でございますが、現在いわゆるスパイの取締りといつたような法律がございません。前段にお尋ねの千島と北海道との間に、日本人でひそかに出入しておつたというようなことは耳にしておりますが、検察庁として今日までその種の事件の送致を実は受けておりませんので、詳しいことはよくわかりません。従いましてそれがはたしてソ連の密命を帯びて、スパイ活動をやつておるのかどうかということにつきましては、お答えができかねるところであります。今のようなものは、入国あるいは出国は、それぞれこれを制限するメモランダムが出ておりますので、それに違反するものとして、昭和21年の勅令311号、連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する件という勅令が出ておりますが、それによりまして当然処罰されるわけであります。従つてそのような事実がありとすれば、調査して善処いたしたいと思います。

それから刑法の外患罪でございますが、なおこれは研究してみようと思いますけれども、大体において外国をしてわが国に対して武力を行使するに至らしめたという場合であるとか、あるいは「武カノ行使アリタルトキ」云々というような規定全体から見ましても、武力の行使そのものに相当接着した場合でないと、これはむずかしいのではないか。

従つて現在問題にされておるような程度の、いわゆるスパイ活動というものについて、ただちに刑法の外患罪の適用があるかどうかということは、かなり疑問があるというふうに考えます。





昭和26年03月08日 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会
[067]
参考人(在外同胞帰還促進全国協議会情報部長) 津布久知男
私どもが三団体の方に対して、極刑に処してもらいたいということを言いましたのは、主として次のような考え方からであります。それは日本の刑法の第3章には、外患に関する罪というものを規定しております。その81条には「外国二通牒シテ日本国二対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル考ハ死刑ニ処ス」という言葉があるのであります。これを逆に考えまするならば、今や国際的な法とも考えられ、もしくは普遍的な通念であることに間違いのない人権に関する国際宣言というものが普遍的な人間の基本権を守るたてとなつております。しかるに日本の同胞30余万は、国連においてさえもソビエト側の妨害にあつてこれを究明することができない。しかもその妨害をさらに強くするために、私どもはこの三団体が、日本政府の数字がでたらめである、さらにまたタス通信は絶対に正しいというふうな行動にまで出たことは、これは明らかに外患に対する援助罪を構成するものであると考えるのであります。それは法の規定するところに従いまして、私どもは明らかに死を免れざる大きな犯罪であるというふうに考えたからであります

私どもはさらに申し上げておきたいことがあります。それはすなわちこの三団体の方々といえども、日本国内に留守家族があり、さればこそまだ帰つて来ていない人があるということははつきり認めておるのであります。三団体の人たちも、まだ在外同胞がいるということを認めておる、これは不幸中の幸いであります。しかしながらこの30余万の人たちがソビエトにいなくて、ソビエトの発表した通りに1400幾名しかおらない。そのほかの者は終戦時英、米、濠、これらの国々が管理しておつたところの諸国南方その他の地域に残つておるのだ、こう言つておるのであります。私どもは先ほど申し上げましたような実例によりまして、ソビエトがその後満州に入れたり出したりしておる事実をたくさん知つておりますから、ソビエトに今はつきり30何万という人が残つておるかどうかということにつきましては、大きな疑問をもちろん持つております。しかしながら三団体の人の言うように、それは日本政府が抑留しておるのではありませんから、日本政府に聞いてみてもいたし方ないことだと考えております。そこでわれわれはソ連当局に対しましては、みだりな政治的拡大を欲しなかつたので、われわれといたしましては、過去数10回、数100回にわたつて、あの代表団に直接われわれの要求を――われわれの要求というのは、せんじ詰めて申し上げますならば、残留者に関する一切の情報を提供してもらいたい、死亡に関する一切の情報を提供してもらいたい。そうして治療して送還する9名というところまではつきりわかつておるのならば、その9名の名前だけでも知らしてもらいたい。さらに戦犯ということであるならば、その容疑の事実その他について、国際的に普通行われております手続に従つてわれわれに知らしてもらいたいということをお願いをしたのであります。ところが今日までこれに関しては一片の通報も与えられておりません。これはもうすでに御承知の通りだと思います。しかし最後にわれわれが知ることができるのは、ソビエト地区から私どもの肉親のところにもたらされました俘虜通信と、それから昨年の4月17日と4月の22日に、ハバロフスク、カラガンダ、ナホトカ――ウラジオを含みますが、この3つの地区から帰つて参りました合計2840余名の人たちによつてもたらされた情報だけであります。そうしてこの3つの地区からの2840余名という限られた帰還者から得ておる数だけでも、すでに1万9000名に達しておることを、われわれはつきり申し上げられるのであります。今ここに、たとえばハバロフスクの16地区、あるいは13地区のウラジオ、そこにどれだけの人たちが残つておつて、それを証言した者はどういう人たちであるかというふうなことについて詳細申し上げることができますが、私は1つの例だけを申し上げておきたいのであります。それは受刑者以外の者で、信濃丸で帰国する予定になつておりまして、一度ナホトカまで出て来て、再びウラジオの第2分所――ウラジオの第2分所というのは、サマルカンドという船でありますが、この船の分所に帰された人たち、これらの人たちは明らかに戦犯者でも何でもない。信濃丸で当然返すつもりでナホトカまで引き出しておつたのに、またひつ込めてしまつた、こういう実例をわれわれ知るのであります。すなわち戦犯以外の者、病人以外の者の数は300名に達しております、これらの人たちが厳然として存在するのであります。これを報告いたしました人は、このウラジオの第2分所のサマルカンドから帰つて参りました石川実という愛知県の人でありますが、この人がはつきりこの事実を確認して証言いたしております。

さらにわれわれはこういう事実のあることも知つていただきたいのであります。それは徳田要請事件が、ちようどこの前後に非常に問題になりましたので、当然日本に返して徳田要請事件に不利な証言をすると思われる帰還者を一時延期さしたのではないかと考えられるのであります。この点につきましては、カラカンダから帰りました日高高綱という方が報告をいたしております。すなわち峯田という人を明優丸で帰国せしめ、次に信濃丸で帰るはずの泉田という方の出発直前に、突然収容所の門前においてさしとめておる事実があるのであります。こういうふうなことは、明らかに戦犯でもなく、戦犯容疑でもなくして残して置くということであると思います。それからこれは非常に古いあれになりますけれども、たとえば樺太から中央アジア、タシケントとかアンダレンとかカラカンダ付近に送り込まれておる人たちの中には、300名の婦人がおるということを証言しておる人たちがある。こういうことについてもわれわれは究明を願いたのであります。そうして一日も早く帰れるようにしていただきたいのであります。

以上2、3の点を指摘しただけでありますけれども、私は後ほど委員会に対して詳細なこれらの方々の口供書を添えまして、資料を提出いたしたい。そうしてその用意を進めておることだけを申し上げておきます。そういうふうな、事実今ソビエトに何人残つておるかということについては、これはソ連当局のみが知つておることだと思います。この点につきましては、われわれはさらに誠意を尽して要求を続けたい、かように今考えておる次第であります。





昭和27年07月02日 参議院 本会議
[022]
日本社会党(社会民主党) 伊藤修
次に修正案第4条についてお尋ねいたします。修正案第4条におきまして、その第1項第1号「イ」において外患誘致罪及び外患援助罪、同未遂罪、同予備、陰謀罪、これを取入れまして、即ち原案の内乱と同様な位置に置いて、これを破壊活動の基本的な刑事罰則といたしたのであります。一体原案がこの外患罪を取入れなかつた基本的な考え方を緑風会の方々は御存じなのかどうか。一体、外患誘致罪又は援助罪、こうしたものが日本に曽つてあつたのかどうか。(「ちつとも答弁しない」と呼ぶ者あり)これを一体お調べになつてこういうものをお作りになつたのか。(「さつきから答弁できないのだ」「黙秘権」と呼ぶ者あり)およそ刑事法規を作る場合におきしましては、御承知の通り国家の非常な大典であるのですよ。(「ゆつくりやつて下さい」と呼ぶ者あり)大きな憲法附属の法規であるのですよ。この重要な法規を、漫然、御研究もなく、自己の観念によつて取入れてあるという不合理なことがなされてはならないと思います。

私が政府の手を以て調べさせたところによりますれば、日本の過去の例においては、昭和13年にこの予備罪が1件あつたのみです。これのみが今日までの日本におけるところの外患罪の実例であるのですよ。刑法施行以来数10年になるにかかわらず、(「30年」と呼ぶ者あり)この予備罪1件、而も昭和13年に1件あつたのみであるのを、何のためにこれをここに取入れなくちやならんかということを私は根本的に疑わざるを得ないのです。(「悪質だよ」と呼ぶ者あり)

外患罪というものは、御承知の通り、日本の刑法にこれを取入れた趣旨はですよ、大陸法系を以ていたしましたからこういうことになつたんです。私が申上げるまでもなく、大陸地方は国々が相接しておる。でありますから、外患誘致援助ということは容易に想像されるんです。従つてこうした条章を刑法に設ける必要も国家としてはあり得るんです。

日本は地域的に恵まれております。従つてこの自然地域のこの形態においては、外患罪は法典の上にありましても、実際は活用したことがないということは、この事実が証明しておるのです。かような点を考えますれば、政府は、本質的には或いは必要かもわからんが、事例がないからとしてこれを取入れなかつたということは、容易に推察し得るのです。

然らば、これが、今後果してこの外患誘致罪及び助勢罪というものか必要かどうかということは、これは外患罪を研究下さいますればすぐわかることであります。敵の武力、外国の武力を誘致したのです。犯罪の成立は、例えばソヴイエトの軍隊が日本に上陸したというときに犯罪が成立するのです。わかりますか。(笑声、拍手)してみますれば、成立したときには、日本の国土はすでに占拠されておるのですね。(「自己陶酔しておるな」と呼ぶ者あり)自己陶酔ではありません。占拠されておる。占拠されておりますれば、もうそれによつて日本政府の機構が果して動くか動かぬかもわからない。むしろ占領軍の力があつて、占領軍の統治下に置かれておる、すでに……。その場合にこの破壊活動防止法がどうして動くのですか。むしろ破壊活動防止法を適用しようという人が死刑になつてしまう、向うから……。(笑声、拍手)

又第82条の外患助勢罪の場合に、これは82条の外患助勢罪は、御承知の通り、日本国内に外国軍隊がおつて、それにくみして軍務に服し、利益を供与し、助勢する場合、まさに占領の実体があるのです。その場合に、その助勢をした者を破壊活動として掴まえる前に、向うから掴まえに来てしまう。

それだから、観念的には中山さんのお考え方も、私は何も無理ではないと思うのです。併し実際に、必要論として実際論としては、曽つてさような事件もない、今後においてもさような場合を想像し得ないとするならば、あえて以てここに取入れて、なお以上この法律の適用範囲を拡める必要は、毫末も認められないと私は断言して仰りません。(「吉田政府こそやつてるじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)



[097]
日本社会党(社会民主党) 吉田法晴
曽つて外患罪が実際に罪に問われたような例は、これは時間がございませんので正式に書類を取寄せて私ども見ることはできませんけれども、昭和12年に米国大使館の日本人の飜訳官が、米国大使館の上司の命によつて、日本の国力を表現するような統計文書を渡した。而もこれは未遂であつた。これが外患罪に問われたということであります。

当時は勿論旧刑法で、「外国二通謀シテ、帝国二対シ戦端ヲ開カシメ又ハ敵国二与シテ帝国二抗敵シタル者」という表現がなされておつたのでありますが、この米国大使館の日本人翻訳官が、恐らくこれは公刊せられた資料その他であろうかと思いますが、統計文書を渡したことが、或いは外国に通謀して戦端を開かしめる行為であつたかどうか、或いは敵国に与して帝国に抗敵したものであるかどうか、これは甚だ今日問題であることは、これは事態を聞かれる皆さんとして当然起される疑問でありますが、若しこの外患罪が、たつた一つ適用せられた場合のように、或いはこの資料を外国に提供するというようなことが、当時の軍機漏洩だとか、或いは今の刑事特別法の問題ではなくして、それが日本精神の欠除であるとか、或いは忠誠義務の欠除であるとか、こういう当時のこの空気、或いは観念で外患罪に問われるといたしますならば、これは外患罪が破壊活動防止法を通じて適用せられる場合には極めて危険であることは、これは何人も否定することはできないと思います。





昭和31年05月10日 参議院 法務委員会公聴会
[005]
参考人(最高裁判所判事) 垂水克己
それから最後に、私はこの死刑廃止の問題については、戦争犯罪人とかあるいは政治犯人については同様に論ずべきかどうかという問題があるだろうと思います。また殺人革命を肯定しつつ死刑廃止を主張するということも人命尊重論として是認さるべきかどうかという問題もあると思いますが、この問題は私は今日は論じません。

ただこんなことも考えられるのではないかと思います。たとえば今後は原水爆乱用罪といったような犯罪が規定されて、それについては死刑が定められるかもしれないということ、また現行刑法の81条、いわゆる外患誘致罪では「外国二通謀シテ日本ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ処ス」と書いてあります。必ず死刑に処すということになっておりますから、酌量減軽をしない限りは死刑を課さなければならないのであります。ところが外国に通謀して日本に爆撃を加えしめて日本国の一部を焦土と化せしめ、無辜の良民数万人、数100万人を死に至らしめたという場合に、死刑に処しなくてもいいんだということは、国民多数の感情が是認するかどうか、つまりそういう感情を離れて立法が先走りをすることができるかどうかということも問題になると思います。

けれども全体としまして、根本においては死刑廃止には賛成である、時期の問題としては今日はなお考慮せらるべきじゃないかと考えるわけであります。



[019]
公述人(弁護士) 小野清一郎
近代の刑罰組織は自由刑をもって主要のものといたしております。死刑はもはや主要な刑罰ではありません。しかし内乱、外患、殺人等について死刑の規定を削除し、いかなる場合にも自己の生命についてだけは絶対の安全を保障されつつ犯罪に着手することができるというのでは、現実の政治的社会的秩序は相当の危惧を感ぜざるを得ないでありましょう。死刑の威嚇力を過重に評価してはなりません。しかし死をおそれない政治犯人や、絶望的な強盗犯人に対して死刑が無意味であるからといって、その威嚇力または一般予防の作用を否定することはできないと思います。

死刑の存在が社会一般に対して抑制の作用を持つことは明らかな心理的事実であります。これを否定されるならば全刑法の組織を否定するほかないのであります。刑法は応報的な社会教育の機構であります。死刑の存在するということが意識下の意識として、いわば無意識的な抑制作用を営むことを、私は心理学的な事実として十分立証することができると思います。死刑を廃止した国における若干の刑事統計によって、死刑に予防作用がないということを立証しようとすることは、その方法自体に疑問があるのであります。私はもっと深い心理学的な研究を必要とすると思っているものであります。以上。(拍手)





昭和52年11月02日 衆議院 法務委員会
[031]
政府委員(法務省刑事局長) 伊藤榮樹
次に、今回の法定刑として死刑を規定しなかった理由でございますが、およそ新しい犯罪類型を設けます場合にどの程度の刑を規定すべきかということは、本来その罪に対する道義的責任の度合いに応じておのずと一定の刑量の範囲が想定されるべきものでありますが、その際一応想定される範囲を基礎としまして、他の同種犯罪の均衡でございますとか、刑罰の抑止力、威嚇力、その時点における国民感情など諸般の状況を考慮して、立法政策として許される限度においてこの範囲を決定していくというのが基本的な立法の態度であろうと思うわけでございます。

このような観点から死刑問題について考えますと、今日のわが国の法律上は、内乱でありますとか外患誘致など特殊の犯罪類型を除きまして、およそ死の結果発生を構成要件上予定していない罪について新たに死刑を設けるということにつきましては、責任主義に立脚するとともに人命を最大限に尊重しようとする近代刑法の立場から十分慎重を要することであろうと思うわけでございます。しかしながら、航空機強取等の犯人の実際の行動に徴しますと、それらの行為が本来死の発生と無縁とは言えない場合も想定されるわけでございまして、そういう意味では死刑ということを検討する余地もあろうと思っております。





昭和52年11月17日 参議院 法務委員会
[222]
政府委員(法務省刑事局長) 伊藤榮樹
死刑というのは申し上げるまでもなくきわめて限定的に規定すべきものだと思うわけでございます。そこで、最近の世界の刑事立法の趨勢を反映いたしました改正刑法草案におきましても、現行刑法よりも死刑の数を減らしております。原則として人が犯罪の結果として死んだような場合にこれを科することとし、例外的に内乱とか外患、こういうようなものについては人の死亡のいかんを問わないことにしております。





昭和53年04月11日 衆議院 法務委員会
[066]
日本社会党(社会民主党) 稲葉誠一
人質による強要罪を犯した者が人質にされている者を殺したときは死刑または無期懲役に処し、その未遂をも処罰するというのが第3の条件になっているわけですが、これはどうして無期懲役までもするという形になっておるのですか。これは法体系として死刑だけという法体系というものは現在の法律の中にはないわけですか。

[067]
政府委員(法務省刑事局長) 伊藤榮樹
現行刑法におきましては、死刑または無期禁錮とか、死刑または無期懲役というのが多うございますが、例外といたしまして外患誘致、「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ」ということで、これは死刑だけの規定になっておるようでございます。





昭和53年04月28日 衆議院 法務委員会
[059]
政府委員(法務省刑事局長) 伊藤榮樹
ただいま御指摘の77条内乱罪、これにつきましては、死刑を除きますと懲役刑をもって臨まない、もっぱら禁錮刑で臨むということになっておりますので、現行刑法典におきましてはこの内乱罪は政治犯罪というふうな考え方をしておるように思います。

もう一つ御指摘のありました外患援助あるいは外患誘致、こういうものにつきましては、82条の外患援助をごらんいただきますと懲役の刑をもって臨むこととしておる、したがって外患の罪というものがおよそ日本国民として破廉恥な犯罪であるという考え方でこういう懲役刑の設けがある、すなわち原則として政治犯罪ではないという考え方でできておる、こういうふうに思うわけでございます。したがって、これが相対的政治犯の様相を呈することはともかく、純粋政治犯ではないという考え方であろうと思います。





平成02年10月29日 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会
[350]
公明党 山口那津男
共犯との関係はひとまずおいて、外患罪というのがあります、外患援助罪。これはどういう規定かといいますと、外国からの武力行使があったときに「之ニ与シテ其軍務ニ服シ其他之ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘタル者」、これは重罰に処せられる、死刑以下とあります。その軍事上の利益を与えた者というのはどういうことを言うかといいますと、武器、弾薬、糧食、医薬品などの支給、運搬、軍事情報の提供、部隊の誘導、兵員の輸送、このような外国の武力行使に有利な有形無形の手段の供与一切を言う、こういうふうに言われているわけです。これは一般的な理解ですよ。

そして、さらに共犯との関係でいえば、共同正犯というのはまさに正犯、武力行使をやった者と同じように評価されるわけです。どういう場合かといえば、武力行使が実行行為だとすれば、それをやることがわかっていて同じ目的のもとに協力した、支援した、こういうことになるわけですよ。だから、一体性という考え方を仮に言い張るのであれば、そのように理解するのが極めて筋の通った、素直な理解だと思いますが、いかがですか。





平成02年11月05日 衆議院 国際連合平和協力に関する特別委員会
[585]
公明党 山口那津男
弁護士のお三方と山口先生にお伺いいたします。

刑法には外患援助罪という規定がありまして、この規定によりますと、我が国に武力行使をなす勢力に軍事上の援助を与えた者は死刑以下の重罰に処す、こういう規定であります。

この軍事上の援助というのはかなり幅広く理解されておりまして、武器弾薬はもちろん、糧食、医薬品あるいは兵員の運搬輸送、軍事情報の提供等に至るまで広く処罰の対象となっております。こういう規定が我が国に存在する、そして平和憲法のもとに法体系ができ上がっている、こういう立場に立ちますと、この協力法が多国籍軍等の後方支援ができる、こう政府は解釈しているのですが、果たしてこれが整合性がありや否やという点について御意見を伺いたいと思います。

[586]
公述人(弁護士) 山根喬
外患援助罪というのは刑法の82条に規定されていますが、これは「日本国ニ対シ外国ヨリ武力ノ行使アリタルトキ之ニ与シテ其軍務ニ服シ」云々と、やはり武力の行使があったときに処罰されることを予定している。

後方援助が武力の行使と一体になるかどうか、あるいはそれに関連するかどうかということは非常に難しい問題だと思います。私は、通信だとか医薬だとかそういうものを提供すること、これはやはり武力の行使には直接には関係がない、そういう直接に関係のないような配慮をしてこの法案をまとめているのではないかなというふうに思います。

ちょっと直接のお答えにならなかったかもしれませんが……。

[587]
公述人(弁護士) 浅野元広
ちょっと、頭が悪いせいか、質問の趣旨がひとつわかりづらい点もあるのですけれども……。

[588]
公明党 山口那津男
では、もう一度補足して言いますが、この外患援助罪、予備罪等も処罰しているわけですね。つまりこれは国外犯、外国で行っても、あるいは行う人が外国人であっても処罰する、こういう規定なんですね。

あらゆる人々にどこでやってもいけないと我が国が言っておきながら、我が国が多国籍軍に協力することはいいですよという今回の協力法案になっているわけですね。これが平和憲法等の趣旨から法体系の上で整合性があるのかどうか。私はないと考えているわけですが、その点の御意見をということであります。

[589]
公述人(弁護士) 浅野元広
その前提の、外国による武力の行使が日本国に加えられたる場合というその要件を満たしているのかどうかという問題であろうというふうにさしあたり考えます。

それで、この関係が問題になり得るとすれば、強いて言うならば、さっき私の意見の中でも述べましたけれども、協力隊に対する攻撃があった場合に、いわば協力法とは別次元で、本来の自衛権行使が仮に認められるという立場に立てば、協力隊に対する攻撃それ自体が外国による武力の行使だということで、今の質問とはちょっとまた別なことになってきますけれども、外患に関する罪の適用という問題は論理としては出てくるのかなという気がいたします。

[590]
公述人(弁護士) 越前屋民雄
山口先生御指摘のとおり、私もやや整合性を欠く嫌いがあるのではないかなという感じを受けます。

刑法のその条項は、我が国、日本の国益を保護すると同時に、国際関係を破壊する行為、ひいてはそれが日本の国益にはね返ってくる、こういうことを保護法益としているのでありますから、その刑法の条項は、国際平和に対する加害、こういうものも考慮しようとする犯罪でありますから、それと今回の国連協力法案でねらっているところの実質後方支援とは必ずしも整合しない嫌いはあるというふうに考えます。

[591]
公述人(北海道大学法学部助教授) 山口二郎
先生の御指摘を私なりに解釈すると、つまり、一方において日本に対する武力の行使については非常に広い概念でとって、物資も情報も間接的な協力は全部武力の行使に含めるという法規定を一方で置きながら、他方で自分が出すときは後方支援は武力の行使とは別だという使い分けをするのがずるいという御趣旨だと思うので、それは私も全く同感であります。つまり、法的に論理的な一貫性、整合性がないというふうに思います。





平成03年03月13日 衆議院 予算委員会第二分科会
[124]
公明党 二見伸明
死刑を法定している犯罪、これは一般刑法犯で13、特別刑法犯で5罪、全部で18ですね。例えば内乱罪の首魁だとか外患誘致罪、外患援助罪等々一般刑法犯が13、特別刑法犯が5つでございますけれども、これらの法定犯罪のうち、すべての犯罪に対し同じ程度に死刑が宣告されているわけではないと思う。

最近2、30年間の傾向で結構でございますけれども、どのような犯罪について死刑宣告が多くなされているのか。また全く、あるいはほとんど死刑宣告がされていない犯罪もあるのではないかと思いますけれども、それもお示しいただきたいと思います。

[125]
政府委員(法務省刑事局長) 井嶋一友
それでは、昭和45年から平成元年までの20年間ということで調べました結果を御説明申し上げます。

統計によっておるわけでございますが、初めにお断りしておきますが、1人の被告人が死刑に当たる犯罪を幾つかやった場合、併合罪みたいな形でやった場合に、統計上主たる罪名ということで1つでとるものですから、個別に全部当たらなければどれだけの罪名を持っているかということが正確に出ないという点では、これから申し上げる数字は若干のそういう緻密性、細密性の点で問題がありますが、一応45年から平成元年までの20年間で、これは一審の言い渡しです、一審において死刑を言い渡された者の総数は122名でございます。そのうち、今申しましたように統計上主たる罪名として整理されておりますが、殺人罪が59、それから強盗致死罪が59、それから建造物放火が1、その他の罪名3、その他というのは爆発物取締罰則でございます。

それから、逆に適用されていない罪名ということでございますが、こういったことで統計上こうなるわけで、ほとんどの者が刑法の殺人あるいは強盗致死という罪名を持っておるのが多いということで、なお若干子細に見ましても、結局これにプラスされるのが放火罪あるいはごくまれに爆発物があるというようなことで、他の、今お示しになりました刑法13、特別法5つという罪名の関係からいえば、今申し上げました以外は逆に言えばほとんど適用がないということだと思います。

[126]
公明党 二見伸明
そうですね。例えば外患誘致罪は制定以来全く適用がないですね。それから現住建造物侵害罪、水道毒物混入罪もほとんど適用がないというふうに記憶いたしております。そうすると、明治40年現行刑法制定以来全く適用されていないものもある。それからほとんど適用されていないものもある。

そのために、昭和49年の改正刑法草案では、死刑犯罪を7種類に減らしてはどうかという案が示されましたね。このことについては、これは私は、むしろ死刑を廃止する方向への1つの大きなステップではないかなというふうに思うわけですけれども、そうした7種類に減らそうという刑法草案の考え方については、法務省はどういうふうにお考えになりますか。

[127]
政府委員(法務省刑事局長) 井嶋一友
今委員御指摘のように、刑法全面改正作業の際の法制審議会におきまして、死刑の存置について議論がなされております。しかし、その当時はまだ凶悪な犯罪が後を絶たなかった、それから当時のいわゆる世論調査によりますと、死刑制度の存置を可とする者、賛成する者が70%あったというような、国民の死刑存置の希望と申しますか、意思、そういった状況にかんがみまして、直ちに死刑を廃止することは適当でないという意見が結局大勢を占めたわけでございますので、死刑は存置することとなったわけでございますが、御指摘のように、存置をするとしても適用はなるべく制限していくのがよいという議論がありまして、結局草案におきましては、現在の18の罪から、実はこれは先ほど委員は7とおっしゃいましたけれども、私どもの整理では8になるわけでございますが、8罪種に限るということにされました。さらに、死刑の適用は特に慎重でなければならないという量刑上の指針を新たに規定するといったようなことも決められております。そういったことで、草案の検討の結果は、罪種の限定、それから量刑上慎重に扱え、こういったようなことで、方向としてはおっしゃるような方向に整理されたものでございます。

ただ、これはあくまで草案でございまして、現在こういったものを土台にして刑法全面改正作業を法務省として検討しておるわけでございますが、私どもといたしましては、このような改正草案の答申に至りました経緯、考え方、こういったものも十分尊重いたしまして、あとは今後の国民世論の動向といったようなことも注意を払いながら適切な対処をしなければならないということで、現在考えておるわけでございます。





平成04年03月12日 衆議院 予算委員会第二分科会
[358]
社会民主連合 江田五月
私はやはり立法府のリーダーシップが必要だという感じがしておりまして、立法府で死刑廃止について積極的な問題提起ができるのではないか。そのため例えば、これは今度は提案なんですが、死刑停止法、議員立法の法案を検討してみたいと思うのです。

これは、法定刑の中の死刑という規定はそのまま残しておく。そして例えば本格的に法定刑から死刑をなくする方向へ向かうまで10年なら10年の時限つきの特別法で、処断刑として死刑が選択された場合に、もっとも刑法81条の外患誘致は法定刑が死刑しかないのでその場合は選択じゃないですが、死刑をもって処断する場合に少年法51条のように無期懲役を科すということにする。

そして、この規定によって無期懲役を宣告された者については刑法28条の仮出獄を適用しない、つまり仮出獄の余地のない終身刑という類型を1つつくる、こういうやり方があるのではないか。





平成09年02月20日 衆議院 法務委員会
[013]
新進党 西村眞悟
ちょっと重要なことなので。

今、尖閣列島に対する不法入国、領海侵犯の点については明確にお触れがなかったのです。あれは政治目的なんですか、それとも稼ぎに来ておるのですか、いずれですか。

[014]
法務大臣 松浦功
必ずしも私のお答えが当たっているかどうか知りませんけれども、あそこに経済的な目的というのはあり得ない、そうなるともう片一方の方だということにならざるを得ないと思います。



[019]
新進党 西村眞悟
昨年来、何隻の国籍不明船が我が領海に侵入したのか、何人が我が領土に上陸したのか把握しておられるか否か。

把握しておられたら、その具体的な人数、そしてできれば何月ごろということでお答えいただけますか。

[020]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
領海につきましては、海洋法条約におきまして、領海内を、他国の領海内でございますけれども、ただ単に通航するという無害通航権が認められてございます。したがいまして、あそこの領海に入ったという船、今現在そういう意味では実数はつかんでございません。

ただ、もう1つのお尋ねですが、上陸者につきましては、我が方で4名確認した事実がございます。

[021]
新進党 西村眞悟
何月ごろに4名確認しましたか。それから、先ほど無害通航権のことを触れられましたけれども、無害通航権のことを除外して、尖閣列島へ上陸するために、その意図を明確にあらわした船というのは把握しておられるのですか。

[022]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
昨年、国際関係の動きでいろいろな情勢がございましたが、明確に上陸するという意図を持って入った船というのは、実際にそうだったのかどうなのかはっきりわかっておりませんので、確認はしてございません。ただ、10月7日でございますか、約40隻の船舶が抗議行動と称して尖閣諸島周辺に入域した事実がございます。

[023]
新進党 西村眞悟
上陸した4名は、何月ごろですか。

[024]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
10月7日でございます。

[025]
新進党 西村眞悟
なぜそれら4名を逮捕しなかったのですか。逮捕する気はなかったのか、それとも逮捕する能力がなかったのか、いずれですか。

[026]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
尖閣諸島をめぐる事案につきましては、国際関係に与える影響あるいは邦人の安全に与える影響等を総合的に判断しまして冷静に対処するという政府の方針がございます。

海上保安庁といたしましても、関係省庁、関係機関と協議しつつ、人身事故等不測の事態を起こさないようにということで、細心の注意を払って領海警備に最大限努力してまいったわけでございます。

当時、あの現場につきましては、非常に急峻な、危険な岩場であるということから、相手が転倒したり、あるいは海中に転落する等の人身事故の発生する可能性がございました。また、高速で航走する船同士の衝突に伴う船舶の損傷、あるいは乗船者の負傷等の発生する可能性もございました。したがいまして、こういった上陸の阻止ということに当時全力を傾注していたということでございます。

[027]
新進党 西村眞悟
逮捕する意図はなかった、逮捕する気はなかったのだというふうにお聞きしてよろしいのですね。

[028]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
その場の状況によるものと考えてございますが、関係省庁と協議しつつ、私どもとしては最善の措置をとったと考えてございます。

[029]
新進党 西村眞悟
お答えに直截性がないのでわかりませんが、少なくとも、犯罪を現認して、犯罪に対処する意図がなければ法治国家の秩序は守れない。

また、後半の御答弁で警察比例の原則等々のことを触れておられたと思うのですが、伊豆半島下田で入ってきた人を逮捕する。そうであるならば、さらにそれ以上の犯罪が犯されていると私は思っておるんです。なぜなら、下田に入ってくる密入国者は、我が国が経済的に豊かであってそこで稼ぐという個人的な目的であり、ある意味では我が国に敵対の意思はないわけです。

しかし、尖閣列島に上陸してくる方の意図は、先ほど法務大臣も間接的に認められたように、我が国に対する挑戦なんだ。したがって、法秩序の維持、あの地は私有地なんだ、日本国民の所有地なんだ。それを放置して、逮捕する意図のない我が国政治が果たして独立国の政治なのか、私はそう思う。法務大臣、どう思われますか。

[030]
法務大臣 松浦功
どうもお答えにくい問題でございますけれども、私、感じとしては、お説のとおりではないかというふうに思います。



[035]
新進党 西村眞悟
先ほどから、本件問題に触れれば答えにくい問題である、また政治的配慮であるという問題が出てくる。我が国は法治の国であって人治の国ではないのです。

それで、原点に戻ってちょっと考え直す必要ありと思うんですが、この意図が、我が国領土を我が国領土でないと否定してそこに上陸して住みつこうとする行為、これは刑法77条、内乱罪で言う邦土を僣窃する行為ではないですか。首魁は死刑です。

また、外国政府と通謀して、仮に通謀があれば、我が国に対する武力を行使させる目的を持って通謀する行為、これは外患誘致罪。同じく死刑です。

少なくとも、本件上陸した者たちを私は見るに、被疑事実としては、その事実を被疑事実としてもいいのではないかと私は思うんですが、法務大臣、いかがですか。

[036]
政府委員(法務省刑事局長) 原田明夫
刑法の擬律に関することでございますので、とりあえず事務当局からお答えさせていただきたいと存じます。

ただいま委員御指摘の点は、ある仮定の問題を念頭に置かれまして、これについての擬律ということでございますが、それにつきましては、あくまでも一般論として申し上げますと、具体的事件につきましていかなる罰条を適用すべきかということにつきましては、具体的にその状況について、証拠によって認定いたしました事実に基づいて擬律するということが捜査当局また検察当局にも課せられた義務であり、また機能であると存じます。

そういうことで、ある一定事実と仮定してお答えを申し上げるということにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。

[037]
新進党 西村眞悟
私は、仮定の事実について申し上げておるのではありません。

我が国海上保安庁の先ほどの御努力にもかかわらず強行突破して上陸してくる、その人たちのいやしくも被疑事実としては、その意図において我が国領土を否定している、その行動において我が国官憲の制止を無視して上がっている、それによって内乱罪の要件に近いと私は思うんです。

刑法77条、「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僣窃シ」、これは邦土を僣窃です。「其他朝憲ヲ紊乱スル」行為、そして法定刑は「首魁ハ死刑又ハ無期禁錮ニ処ス」です。81条、「外国ニ通謀シテ日本国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ死刑ニ処ス」、これが外患誘致です。

こういうことに近いということは、私は、架空の問題ではなくて、我が国の治安を国民のために責任を持つ地位におられる方は、それに対して非常な警戒心を持ってこれに対処していただかねばならない。

治安の維持というものは、警察行政というものは、何も起こらないことを目的にするわけです。したがって、何も起こらないことを目的にしますから、何か起こらないように未然に万全の準備を整えねばならないことでございます。

架空の問題ではないんですが、事実の認定を、逮捕しないからできない。本来、国内で起こった犯罪なら、伊豆半島へ上陸した者もすべて逮捕して事実を認定して、その意図を認定して、そして法定法を適用する、これが法治国家のプロセスでございますけれども、尖閣列島に関しては政治的意図で逮捕しない。

したがって、ただ単に経済目的で入国してくるのではなくて、政治的、それも邦土を僣窃するという重大な政治的意図を持っておるという疑いに足る十分な根拠があるのに、逮捕しないからそれを確認できない。したがって、今年もまた来る、こういう事態になっているということを大臣、重々お心にとめておいていただかねば、あなたが今所信表明をされたけれども、これは官僚の書いたきれいごとをあなたが読まれたことになる。

今後、新聞報道によると、中国というところが、香港が返還されてまいります。そして香港には北京の軍が、言葉のわからない軍が入ります。ただ中国としては、天安門事件が終わってからもそうですけれども、常に中華ナショナリズムを刺激することによって国民の目を外に向けて内部を統一させようとする。12億の巨大な人口を抱えて、言葉も広東語も北京語も福建語もいろいろある国でございますからこういう傾向があって、鄧小平さんが亡くなられた。ファイナンシャル・タイムズを見ますと、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙を見ますと、鄧小平さんが亡くなられた後の反政府活動を抑える方策をまた北京がとるであろう。その絶好の標的が尖閣列島に対するナショナリズムの刺激なんです。ことしまた来ます。ことしまた来るんです。

そこで、我が国はもうぼつぼつ、いやしくも我が国領土なら、そして実効支配をしているなら、そして我が国が法治国家なら、ことし領海に入り、また上陸した者を逮捕する意図はありや否や。法務大臣からお聞きしたい。

[038]
法務大臣 松浦功
日本一国の存亡にかかわる問題でございますので、私からの答弁は差し控えさせていただきます。

[039]
新進党 西村眞悟
答弁されるとおっしゃったのですか。

[040]
法務大臣 松浦功
差し控えさせていただきたいと申し上げました。

[041]
新進党 西村眞悟
一国の存亡にかかわるという御認識のもとに大臣として答えねばなりません。一国の存亡という御認識を持たれるなら、答弁を逃げられては大臣の職務が務まりません。私はそう思います。

[042]
法務大臣 松浦功
一国の存亡にかかわる問題でございますので、総理のお考えに私は従いたいと思っております。それで、私の意見は控えさせていただきたいと申し上げておるわけでございます。

[043]
新進党 西村眞悟
質問をまた違う観点に変えます。

今はそういう人々を逮捕もしてない、したがってわからない。しかし、明確にわかったことが、中国の海洋調査船海洋四号、大洋一号が昨年我が国の領海を侵犯して、ケーブルを曳航しながら海底資源調査をしておりました。

その事実はありやなしや、把握しておられるか否か、お聞きしたい。

[044]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
昨年の9月2日でございますが、中国の海洋調査船海洋四号が大正島、尖閣諸島の大正島でございますが、この領海内において私ども確認いたしております。

[045]
新進党 西村眞悟
お答えは聞かなくてもわかっておるのですけれども、明確な主権侵犯がある、こういうことでございます。この事実、大臣、総理の考えに従われるなら総理と早急にこの問題について協議していただきたい。これについては後にまた申し述べます。

尖閣列島、我が国の領土、また尖閣列島の周囲、我が国の領海、ここで我が国の漁民は操業ができる、これは当たり前のことでございます。日本国政府は操業する漁民を守る義務がある、これまた当たり前のことでございます。現在この周辺で漁民が操業できておるのかできていないのか、これについてお伺いしたい。

[046]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
水産行政の問題でございますので、制度的な話につきましては私から申し上げることはできませんが、哨戒中の海上保安庁の巡視船は日本漁船の操業を確認してございます。

[047]
新進党 西村眞悟
政府機関が宮古、与那国、石垣の各漁民に、どういう名目か知りませんが補償金を渡しながら、尖閣列島周辺で漁をしないでくれと頼んでおるらしい。こういう事実は海上保安庁の方は確認されておりませんか。

[048]
説明員(海上保安庁警備救難部警備第二課長) 小原正則
海上保安庁ではそういった事実は全く確認してございません。

[049]
新進党 西村眞悟
政治的配慮とか近隣諸国への配慮とか、ある意味では我が国外交というか、これは我が国外交ではない。我が国領土、領海に関することも何かに呪縛されておる。したがって我が国は、私から見たら、これでも国家かと言えるぐらいの消極的な姿勢に終始しているわけです。

そこで、法務大臣にちょっと御紹介したい。また、海上保安庁の現場で頑張っておる皆さんにも、私どもが先ほど来、非常に抑制的で、そして相手方の感情を害さずに、ただしその軸だけは失わずに努力してやっていることが中国ではどのように報じられているのかということを御紹介したい。

これは中国の昨年の「中国国防報」という機関紙、これが尖閣列島に関して発表した評論文でございます。
「日本軍国主義は強権と武力で他国を征服してきた。いまの日本は経済力によって、東から再起を図り、中国の領土をうかがって武力で占領し、軍国主義の復活を夢想しているのだ」「日本軍国主義の復活の証拠であり、日本政府の新拡張政策の宣言といえる」
そして最後は、
「寸土でも奪われるくらいなら、いっそ千金を失った方がましである」。
領土と主権の問題については、
このような原則で、12億中国人民は決して譲歩してはならない。
こういうふうに、私どもから見て非常に控え目な我が国のこの領土に対する姿勢を軍国主義の復活であると論評しておるわけです。

中国の今お読みした論評、最終的な要点だけ申し上げましたけれども、大臣、先ほど来私の質問で御答弁がございましたし、状況はおわかりのことでございますが、このように中国で論評されていることについて、大臣として納得できますか。

[050]
法務大臣 松浦功
お答え申し上げます。

その問題も非常にいろいろな問題が派生する問題だと思いますので、法務大臣という形では御答弁を差し控えさせていただきたい、こう思います。

[051]
新進党 西村眞悟
大臣がこの問題に答えなければ、我が日本国においてだれが答えるのですか。国民一人一人が防圧するのですか。尖閣列島に国籍不明船が押し寄せたときに、日本国民も同じように漁船に乗って海上でぶつかり合えばいいのですか。





平成11年05月13日 衆議院 安全保障委員会
[247]
自由党 西村眞悟
自由党は、長官の警備行動の命令を強く支持するものでございます。しかしながら、朝から事態の御報告を受けまして、腹に据えかねることが沸々と抑えることができない、このように思う根拠を今から申し上げて、将来の法改正に資するために質問させていただく。

まず、この船の確保は、我が国国益上、また国家と国民の安全上極めて重要なものでございました。なぜなら、拉致された日本人はこのような船に運ばれたものでありますし、この船を確保して、あの原発地帯に工作員が上がったのか否か、これを確認せねばならなかった事態でございました。新幹線の犬くぎが抜かれる、また送電線の鉄塔が倒される、我が国国内でこのようなことが起こって、我々はまだ、この犯人とその組織を突きとめることができない事態におるわけでございます。

それゆえ、先ほどからの御答弁で、この船を取り逃がした、この船を停船させて検査することができなかった、それは不可能であったと簡単に言っていただいては困るわけでございます。

(中略)

なぜなら、先ほど来問題になっております武器使用に関しては、船を撃破して停船さすことが現在の法体系でも可能でございます。密入国者は3年以下の懲役なんです。

先ほど来申し上げております、外国の不審船が日本の領海内にあるということは、日本において内乱の予備をしているのか、外患誘致の予備をしているのか、騒擾の予備をしているのか、原発攻撃の予備をしているのか、これはすべて警職法7条で言う重大な犯罪に当たる。

密入国自体でも、追跡してその者の足を撃ってもいいんです。したがって、その船を攻撃することができたわけです。この点について、私は、痛恨の思いを持って御報告を聞きました。





平成14年05月08日 衆議院 武力攻撃事態への対処に関する特別委員会
[018]
自由民主党 米田建三
次に、私は常々不思議に思っているんですが、我が国の安全保障体制の整備あるいは強化に反対する勢力ほど、中国や北朝鮮の軍事力強化については全く批判してこなかった。ほとんど批判しない。このことは私は常々不思議に思ってきたんです。

そこで、5月2日の産経新聞でありますが、アメリカの国立公文書館で見つかった、朝鮮戦争直後から日中国交正常化前後にかけての中国のスパイ機関の熾烈な対日工作についてのアメリカ国防総省機密文書の中身が報じられました。とりあえず紙面では実名は全部イニシアルになっておりましたが、実際には機密文書には実名が全部しっかり出ております。その中には、日本の政党、政治家、あるいは労組幹部らへの金品提供などの工作が具体的に記されているわけであります。

私は、戦後日本の表面上の平和の陰にこういった国際政治の厳しい現実があったことを示す資料の1つであろうというふうに思っているわけでありますが、関係当局はこの事実をどのように認識しておるのか。

また、あわせてもう1点。我が国はよくスパイ天国というふうに言われておりますが、諸外国の情報機関及びその協力者や協力団体の暗躍は今日でも日常的な現実ではないのか。事柄の性格上、言っていただく範囲というものは限られても結構ですが、警察庁の御答弁を願いたいと思います。

[019]
政府参考人(警察庁警備局長) 漆間巌
委員御指摘の5月2日付の記事につきましては、私も読んでおります。委員が御指摘のとおり、これはアメリカの国立公文書館に保管されている米国防総省の機密文書というものを引いて記事にしておるということでありまして、これについては直接警察としてコメントするという立場にはございません。

ただ、報道にあるような朝鮮戦争から日中国交回復、これまでの期間という時期に限らず、一般論として申し上げますと、複雑な国際情勢と我が国の枢要な国際的地位を背景として、国外から我が国に対する情報収集活動は巧妙かつ活発に行われているというふうに認識しております。

スパイ天国だと言われているということでございますが、戦後我が国で検挙されました諜報事件というのは70件余りに上っております。これを見ましても、対日有害活動について、その取り締まりのために関係法令を駆使して取り締まりをしてきたわけでございますが、このような摘発した諜報事件などから見ましても、対日有害活動は日常的に巧妙かつ活発に行われているということが言えると思います。

対日有害活動というのは、我が国の国益を害し、国民の生命、身体にも危険を及ぼすという治安上非常に重要な問題であると認識しておりまして、警察といたしましても、関係法令を駆使しながら今後とも取り締まりを徹底していきたいというふうに考えております。

[020]
自由民主党 米田建三
ただいま漆間さんから、官房長官、明確に諸外国の情報機関の活発な活動がある、国民の生命、安全を守るために重要な問題であるという答弁がありました。

そこで、私は、今度の法案に関連してのお尋ねになりますが、国民の中に残念ながら利敵行為を行う者、例えば、有事の際の政府の内定されたところの方針をいち早く敵国に通報する者、あるいは自衛隊の行動の詳細あるいはその予定を敵対国に通報した場合などに対する罰則がきちんと我が国にあるんだろうかということを考えてみたんですね。中国情報機関の暗躍の記事を見た後、考えてみた。ところが、どうもざるなんですよね。

昨年の秋の国会で、自衛隊法の改正として、秘密保全に係る罰則の強化が行われた。しかし、これは自衛隊の機密を知り得る立場にある出入りの業者等ということです、対象になる民間人は。これは1つはある。しかし、極めて限定されたものですね。例えば、陣地構築をここでやっておるらしいというようなことを敵方に知らせた場合も、それが出入りの業者でない場合にはなかなか、ではどういう根拠で捕まえるんだという話になるでしょう。大変難しいファジーな部分がある、たくさん出てくる。

一方で、これはもうほとんどレアレアケースで、極めてドラスチックなケースなんでしょうが、いろいろ調べてみると、刑法で外患に関する罪というのは一応はある。外患誘致罪、第81条「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。」、外患援助、第82条「日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは2年以上の懲役に処する。」というふうに外患に関する罪というのはあるんですが、これもまたドラスチックな大なたですよね。

今申し上げた2つの法規から外れる、その網から外れる、さまざまな情報をキャッチして、それを利敵行為に使う、こういうことを抑止する法制というものがない。

ちなみに、言うまでもなく、諸外国ではきちんと対処する法律があるわけであります。アメリカは連邦法で最高刑死刑の法律がある、フランスも最高刑死刑、ドイツは無期拘禁刑、イタリアは15年以上の懲役、戦時においては無期懲役とか、きちんと先進諸国もなっておりますが、我が国においてその辺のところの配慮が全くないと、幾ら立派な法体系をつくってもざるに水じゃないでしょうか。どうでしょうか。

[021]
政府参考人(防衛庁防衛局長) 守屋武昌
先生の御指摘の問題でございます。防衛庁としましては、やはりそのような防衛上の秘密、これを保全していくということは重要な問題でございまして、まず防衛庁としてその秘密保全の万全を期してまいりたいということが基本でございます。

それで、今先生の御指摘のような問題につきまして、確かに現行法の自衛隊法には、そのような違反行為を罰する規定はございません。

自衛隊法の改正や新規の立法によりまして、先生の御指摘のような防衛庁・自衛隊の秘密を探知、収集する行為、これを罰則の対象とすること、それから、一般の民間人までこれを対象者として拡大するということにつきましては、表現の自由など国民の基本的権利などにかかわる問題でございまして、私どもとしましては、国民の十分な理解が得られるということが望ましいと考えておりまして、こういう観点から、広く国会等の場において議論され、検討されるべきものと考えております。

[022]
自由民主党 米田建三
官房長官、防衛庁に答えさせるとああいうふうにしか言わざるを得ないんでしょうが、私が指摘した、重要な情報が有事前後に、あるいはその最中に、いわゆる敵対国側に漏れることを抑止できない、阻止できない、法整備上、その辺に穴があるということはお認めになりますか。

[023]
内閣官房長官・男女共同参画担当大臣 福田康夫
御指摘のような懸念というのは、これはあると思っております。戦争とかそういうような場面におきますれば、これはもとよりのことでございまして、その戦争に有利になるために必死になって、血眼になって情報を求め合うということは、これは過去にもうずっとやってきておるわけでございますし、今でもそれは存在しているだろうというように思っております。

そういう場合に、今回こういうような法律をつくるわけでございますけれども、この法律を万全なものにするという意味においては、やはり必要最小限度の秘匿というものを、特に国家的なものについてはこれは考えていかなければいけないということは、これは私の意見というだけでなくて、国家的利益ということを考えた場合には当然のことだというように皆さんお考えになるだろうと思います。

そのためにどうしたらいいかということになるわけでありますけれども、それが罰則とかそういうことになるかどうかということにつきまして、これはその組織体の問題もあるかもしれぬということもありますので、総合的に考えていかなきゃいかぬ問題であるかもしれませんけれども、いずれにしましても、今答弁ありましたとおり、国会における議論等も踏まえて考えていくべき問題だろうというように考えております。

[024]
自由民主党 米田建三
極めて深刻な課題であるということを改めて申し述べて、次の質問に移ります。





平成25年05月29日 衆議院 法務委員会
[079]
日本維新の会 西田譲
維新の会の西田譲です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、きょうは、余りなじみがない法律でございます。なじみがあってはよくないのでございますけれども、刑法外患罪についてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

外患罪、今、81条の外患誘致、そして82条が外患援助、87条が未遂で、88条が予備、陰謀という4条から成るわけでございますけれども、まずはこの81条についてでございます。

外国と通謀して武力行使をさせた者というふうにあるわけでございますけれども、この要件について、まず刑事局長にお伺いをさせていただきたいと思います。

[080]
政府参考人(法務省刑事局長) 稲田伸夫
刑法81条の外患誘致罪におけます「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた」という要件でございますが、一般に、これは物の本に書かれているような解釈でございますけれども、我が国に対しまして、外国政府と意思を連絡した上で、軍事力を用いて国際法上の敵対行為と見られるような攻撃行為をさせることをいうものと解されているところでございます。

[081]
日本維新の会 西田譲
ありがとうございます。

敵対行為をさせる者というふうに今御答弁をいただきました。これは大事なところかなと思っておりまして、条文上は武力行使をさせたということになるわけでございますけれども、当然これは、させるという現在形でなければならないというふうに思うわけでございます。

と申しますのも、この81条の趣旨というのは、敵性国家からの侵略や占領を未然に防ぐという趣旨でなければならないわけでございまして、武力行使をさせた、つまり、武力行使が起こった後ということでは遅いわけでございます。

例えば尖閣にしても、侵攻、占領された後では既に時遅しということになるわけでございますし、歴史を振り返れば、例えば1945年に旧ソ連が満州に侵攻するわけでございます。その際に、例えば我が国側に旧ソ連と通謀しておった者がいたかどうか、捜査をしようにも、もう主権がなくなっているわけでございまして、刑法を適用しようにも適用できない状況になるわけでございます。

ですので、この武力行使をさせたというのは、させるというふうに解釈をするということでいいわけでございますけれども、むしろ武力行使をさせたは、させるというふうに改正してもいいというふうに思うわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。

[082]
政府参考人(法務省刑事局長) 稲田伸夫
今の点につきまして、私の方から、まず解釈につきまして若干御説明させていただきたいんです。

今御指摘のありました外患誘致罪における「日本国に対し武力を行使させた」ということの意義そのものにつきましては、これも一般に言われているところでございますが、我が国に対して壊滅的打撃を与えた場合に限らず、例えば我が国の領土の一部に外国の軍隊を不法に侵入させたときもこれに当たるというふうに解されているところでございます。

その上で、今御指摘のような話につきましても、外国との通謀があって、しかし武力行使に至らなかった場合でありますとか、さらには、外国との通謀を開始いたしましたが合意に達せず、通謀自体が未完成な場合であっても、それは外患誘致罪の未遂犯として処罰の対象となると解されているところでございます。

先ほど委員御指摘もございましたように、この罪につきましては、予備罪、陰謀罪もございますので、ただいま申しました未遂に至らないような予備、陰謀の段階でも処罰の対象となっているというところでございまして、重大な打撃を我が国に与えた後でなければ罪を問うことができないというものではないというものであるというふうに考えております。

[083]
日本維新の会 西田譲
ありがとうございます。

これは国連憲章の自衛権の明記、たしか国連憲章51条でございましたか、これも、侵略が発生した時点ではなく、侵略の発生する時点で自衛権は発生するというふうに明記されているわけでございますから、武力行使の発生、武力行使をさせたという過去形の解釈ではなくて、させるという解釈での適用を考えるべきだというふうに申し添えたいと思います。

きょうも、前回、前々回に引き続き、情報国防という観点から実はこの外患罪を取り上げさせていただいているわけでございます。これまでも、諜報の必要性、対外諜報機関の必要性、そして防諜体制の構築ということについては、もう盲腸組織となってしまった公安審査委員会、これで形骸化している破防法の復権という委員会での質問もさせていただきました。あるいは、これは防諜というのは主権国家において情報国防のかなめでございますから、法整備そして体制づくりが急務であるということも指摘をさせていただいております。

例えば軍事機密の保護法であったり、外交機密の保護法、もしくはそれ以外の国家機密の保護法、あるいはハイテク技術等の不正な流出を防止するための施策であったり、さまざまな法整備、こういう法整備を行って体制をつくっていくこと、これが防諜体制の構築ということでございます。

今国会では、例えば自衛隊法の改正が審議をされておりますけれども、これはもう邦人保護についての職務の拡大でございますね。あわせて予算では、もう衆議院を通しましたが、防衛予算は久方ぶりに前年度アップでございます。この軍事国防については、まさに安倍政権になってから非常に強化されているわけでございますが、国防というのは、何度も申しますように、軍事国防と情報国防の両輪がかみ合わなければならないわけでございます。

これまで情報国防について、諜報機関もしくは防諜等についてやってまいりましたけれども、もう1つの観点、これは、敵性国家からのいわゆる積極工作もしくは謀略に対してどう対処するかということが非常に大事になってくるわけでございます。その点について、きょうは実は外患罪ということを質問させていただいているわけでございます。

まさしく平時における戦いという中にあって、まず第1に、情報戦なわけでございます。我が国に侵略を準備しているような国にしてみますれば、被侵略国に対して、これは必ず脅威があるにもかかわらず脅威がないというような偽った情報、にせの情報を宣伝、プロパガンダしてくるわけでございます。そして、我が国の防衛意識を弛緩させるというやり方をとるわけでございますけれども、これはもう孫子のころから変わらないやり方でございます。

ですからこそ、平時の国防、情報国防といったときに、脅威があることをきちんと脅威があると認識して対処していかなければならないわけでございます。

つまりは、我が国においてそういう情報工作をするような諜報員、あるいは機密を持っていくような、盗んでしまうような諜報員、そういった者をきちんと取り締まらなければならないわけですし、あわせて、そこに協力する日本人、そういうけしからぬ日本人がいるようであれば、厳罰に処すような体制をとっていかなければならないわけでございます。

そういった中で、きょうは外患罪というものについて聞いているわけでございますが、これは今4条でございますけれども、旧刑法だと81条から89条までの9条の構成になっていたわけでございますが、戦後、刑法改正で大幅に削除、改正されているわけでございます。

この旧刑法の削除、そして改正の経緯並びに背景等につきまして、きょうは余り時間もありませんので、簡単にお知らせいただければと思います。
[084]
政府参考人(法務省刑事局長) 稲田伸夫
ただいま御指摘ございましたように、昭和22年の改正以前には、刑法には83条から86条までと、及び89条という条文がございました。これらは我が国と外国との戦争を前提とする、いわゆる通謀利敵罪として規定されたものなどでございましたが、これにつきましては昭和22年の刑法の一部改正により削除されたところでございます。

その趣旨でございますが、これはもう何分にも60年以上前のことでございますので、当時の政府委員による提案理由説明によるわけでございますが、その提案理由説明を読みますと、戦争の放棄に関するものとして、戦争状態の発生並びに軍備の存在を前提とする現行の外患罪の規定を改め、外国よりの武力侵略に関する規定としたというものであったということでございます。

[085]
日本維新の会 西田譲
ありがとうございます。

私も、当時の議事録を見てみました。すごいんですね、これは第1回国会なんですね。当時は司法委員会というようになっていたわけでございますけれども、衆議院でも参議院でもこの刑法外患罪について審議がなされておりまして、今局長御答弁のとおりの、政府委員からの答弁がなされているわけでございます。

しかし、この旧刑法をきちんと見てみますと、旧刑法の81条というのは、これはいわゆる平時の定めであるわけですね。82条と83条、4条、これは、おっしゃったとおり、まさしく戦時の定めであるわけでございます。

旧刑法85条をちょっと読み上げさせていただきますけれども、「敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ5年以上ノ懲役ニ処ス 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ」というふうにあるわけでございますけれども、この旧85条というのは、戦時と平時、両方の定めとして旧刑法であったわけでございます。ですから、当時の政府委員の答弁しかり、今の局長の答弁しかり、戦時と平時の定めである85条を戦時の定めとして削除するのは余りにも乱暴ではないかというふうに思うわけです。

結果、私からの提案でございますけれども、この旧85条、復活をさせて、今の81条と85条、つまり、平時の81条、85条、あわせて戦時の82条、85条ということで、この外患罪をもう一度整理し直す必要があるというふうに思うわけでございます。

確かに、文言は現代風に直していかなければなりません。間諜といいましてもなかなかぴんとこないわけでございますから、例えば、敵性国のために機密漏えいあるいは情報工作をなし、または敵性国の諜報員あるいは情報工作員を幇助した者というような言い方で変えて、刑法旧85条の復活をするべきではないかと思います。

これについては、大臣、いかがでございましょうか。

[086]
法務大臣 谷垣禎一
国の安全の基礎をどうつくっていくかというのは、これは十分に議論しなければいけないところだと思います。

ただ、今委員がおっしゃった昔の85条、文言も、極めて、確かに防諜というような言葉で今若い方が理解できるとは思いませんし、それだけではなく、現在の観点から見るとかなり言葉の限定も、つまり、何がこれに当たるのかということも明確にならない構成要件になっている面がありはしないかということを私は感じます。

例えば、今は非常に科学技術等も発達しておりますね。今あなたがおっしゃったような軍事的な問題を考えるにも、いろいろな技術的な問題点がある。そうすると、それをどういうものとして条文を構成していったらいいのかというのは、恐らく、委員の事前にこういうことを質問するというのを拝見しましても、昔、昭和40年代に刑法改正の議論がありましたときに、やはりこういった議論がございました。その中で相当いろいろな御議論があったように聞いておりますが、1つは、やはり刑法の条文の中で決めるにはそういった十分な検討がないと実際には使えない法律になってしまうというような観点があったのではないかと、私、昔のことですから十分記憶しておりませんが、そういう御議論があったように私は思います。

したがいまして、この点は余り、簡単に考えるのは難しいので、慎重な議論をしていかなければいけないと思っております。

[087]
日本維新の会 西田譲
ありがとうございます。

大臣、今のお話、まさしく40年代の議論の中で、機密探知罪ということで審議会等で議論をされておったというふうに私も資料を読ませていただいておりました。おっしゃったとおり、では、何をもって機密に当たるのか、そしてそれをまたどういうふうにして取り締まっていくのかということに対して、なかなか難しいという議論がされていたことも記されております。

しかし、やはり、大臣、戦時というのは突然戦時になるわけでは決してございませんで、戦争という状態は平和のときに芽吹くものでございます。そういったことを考えれば、今の平時にどれだけ私たち日本人が汗と知恵を振り絞って努力をすることができるかということが大事なわけでございます。

法律を考えるといったときに非常に難しいというのは、これまでの議論の経過からしても十分承知をしておるわけでございますけれども、ここは、日本の情報国防体制の構築に向けて努力を惜しんではならない分野だと思います。

時間が参りましたので、また引き続き議論をさせていただければと思います。ありがとうございました。





平成25年06月14日 衆議院 法務委員会
[052]
日本維新の会 西田譲
さて、きょうは質疑時間15分で、残り5分でございますので、この間のやり残しでございます情報国防、外患罪、大臣、またかということでございますけれども、この間ちょっと質問できなかった項目を何点か残しておりますから、質問させていただきたいと思います。

前回は、いわゆる外患罪の条文の解釈、そして85条の復活の検討ということを提案させていただいたわけでございます。

繰り返しになりますけれども、この情報国防というのは、対外諜報がありまして、インテリジェンスですね、それに対して防諜、カウンターインテリジェンスがあります。そして、前回から外患罪を取り上げているのは、外国、特に敵性国家からのいわゆる情報工作、逆情報であったりにせ情報、そういったものにどう対抗していくか、いわゆるカウンターディスインフォメーションと申しましょうか、ここに対する整備というものが必要になってくるわけでございます。

しかし、このいわゆるカウンターディスインフォメーションというのは、単純な防諜と違って非常に法整備が難しい分野だというふうに思うわけでございます。と申しますのも、例えばにせ情報の流布、もしくは逆情報を流したというだけで、では罪に問えるかといったら、なかなか問えないわけでございますし、逆に言えば、言論の自由とのバランスというのも非常に大事になってくるわけでございます。

しかし、この外患罪の81条というのは外国と通謀して武力行使をさせたということで定められているわけでございますので、外国と通謀して我が国ににせ情報、逆情報を流す、流布させるといった情報工作を行った場合に関しては、そういった場合に限れば立証できる可能性があろうかというふうに思うわけでございます。まさしくこれが刑法の外患罪、外患誘致罪ということになろうかと思うわけでございます。

そこでなんですが、実際に、これまで、この刑法の外患罪が適用されたことがあるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

[053]
政府参考人(法務省刑事局長) 稲田伸夫
お答え申し上げます。

適用というのが、検察官が公訴提起をして裁判になったかということであれば、そういう事例は余り承知をしているところではございません。

それで、検察庁の方でどういう処理状況になっているかということについて若干申し上げますと、近年、最近5年間で、刑法の外患罪についての検察統計上の数字で見ますと、平成19年に、外患誘致による検察官認知、直受ということで受理が5件ございます。5名5件です。処理状況は、不起訴、罪とならずということにいずれもなっております。

それから、平成22年にやはり、外患予備、陰謀により、検察官認知、直受の受理が2名ございます。これにつきましても、処理状況としては、不起訴、嫌疑なし2名となっておるところでございます。

平成20年、21年及び23年につきましては、検察庁における受理、処理はないという状況でございます。

[054]
日本維新の会 西田譲
ありがとうございます。

いわゆる私人による告発のみという状況だというふうに理解いたします。つまり、いわゆる司法警察が捜査をして送致をした案件はこれまでないということでございます。

ただ一方で、特に近年でもそうでございますけれども、我が国が明らかな武力行使を受けているということはあるわけでございますね。例えばロシアの戦略爆撃機が我が国の領空を侵犯したり領土上空まで来たりということもあるわけでございますし、軍艦からのレーダー照射、これも立派な武力行使と言えるわけでございます。

つまり、武力行使の事実はあるけれども、外国と通謀したという形跡はないので捜査はしなかったということになるんでしょうか。その辺、いかがお考えでしょうか。

[055]
政府参考人(法務省刑事局長) 稲田伸夫
ただいまのお尋ねが、警察から検察庁に対して送致がなかったかということについてのことでありますれば、事実としてはなかったのは、先ほど申し上げましたように過去5年間ないんですけれども、ただ、どういう理由で警察が捜査をせず送致されなかったのかということにつきましては、私どもの方で承知するところではございませんので、お答えすることはできないということを御理解いただきたいと思います。

[056]
日本維新の会 西田譲
早くも質問時間が終了してしまいましたが、殺人が起こってから捜査をするいわゆる一般の殺人事件と違って、外患誘致罪というのは常日ごろから捜査員を張りつけておかなければならないものでございます。根本的に違うわけでございますので、日ごろから捜査をしているのかしていないのか、これが非常に大事になってくると思います。こういった点についてもまた引き続き議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

ありがとうございました。





平成25年12月03日 衆議院 総務委員会
[126]
日本維新の会 三宅博
NHKは、中国中央電視台、CCTVと非常にじっこんといいますか、仲のいい関係にあるんですね。NHKの社屋内にCCTVがあるということなんですね。このCCTVにNHKは多くの情報、映像というものを提供していると思います。

この国会審議、こういうふうな各委員会の全審議内容も中国、CCTVに提供しているんでしょう。

あるいは、尖閣諸島の空から撮影した映像、こういったものも中国に対して提供をしている。それに対して自衛隊が、以前、全国のレーダーサイトの映像とか軍事機密を大量に撮影して放映している、これをやめてくださいとNHKに申し入れたということなんですけれども、これに対しても、NHKは全く無視をしてきたということなんですね。

NHKがやっていることは、これは本当に、言い方をかえれば、スパイ行為に加担しているといいますか、ひょっとしたら外患誘致罪にも該当するんじゃないかな。外患誘致罪、「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。」このような行為に近いような行為を、外国の要求に応じて、向こうが欲しがっている情報を公共放送たるNHKがずっと提供していると思うんですけれども、中国とNHKはどういう関係なんですか。ちょっと聞かせてください。

[127]
参考人(日本放送協会専務理事) 石田研一
お答えします。

NHKは、外国の放送機関との間で友好協力関係促進を目的とした協定を結んでいます。25年3月現在で48カ国、65の放送機関と協定を結んで、これに基づいていろいろ協力をやっています。

CCTVもその1つということで、NHKでは、CCTVにスペースを貸しているとか、同じように、アメリカのABCとかKBS、オーストラリア放送協会からも、同じような協定に基づいて、スペースをお貸ししています。賃料を含めて、必要経費については賃貸契約を結び、先方が負担しているということです。

また、NHKは、同じように、国内放送を充実させるために、各国の放送局とニュース映像を交換する覚書を結んでおりまして、CCTVもその1つということです。

それから、先ほど委員のお話の中で、国会の各委員会の審議を全部提供しているというふうなお話がありましたが、そういう事実はありません。

[128]
日本維新の会 三宅博
日本と中国は、先日の防空識別圏のこともそう、あるいは、中国は、尖閣諸島は我々のものだといって、日本の神聖な領土を強欲で奪い取ろうとしているんですね。中国とNHKは非常に、特に、ほかの国々の放送局と違って、CCTVとはじっこんの仲じゃないのかなというふうな印象を私は持ちましたので、このような質問をさせていただきました。