昭和29年02月24日 衆議院 外務委員会
[056]
改進党 並木芳雄
第1に伺いたいのは、韓国が日本の漁船を競売に付するという外電についてであります。22日京城発AP電報は、昨年秋に捕獲した42隻の日本漁船を韓国政府が競売に付するであろうと報じております。こういうことがあり得るのかどうか。
それからもう1つは、先般韓国に拿捕された海上保安庁の巡視船「さど」に対して、外務省はどのような抗議を行いましたか。
[057]
政府委員(外務政務次官) 小滝彬
第1の漁船を競売に付するということは、これはもともと拿捕したのが、不法な行為でありますので、あるいは単なる臆説かもしれませんが、このような情報が出ました以上、外務省としては厳重に抗議をいたしたいと考えております。ことに裁判においては、これを向うが没収するというようなことをきめましたにいたしましても、その根本が国際法上から見ましても、全然不法なものでありますから、先方の裁判に関してはすでにいろいろ抗議を提出いたしておりますが、さらに本件についても重ねて抗議をいたしたいと考えております。
次に「さど」を拿捕したことにつきましては、その当日奥村次官が金公使を招致いたしまして、その不当を責め、至急これを返還するように、また陳謝を求め、こういう事件が再発しないように、防止手段を講じなければならないこと、並びに日本としては損害賠償を請求する権利を留保するというような点を向うへ申し入れたのでありますが、幸いにして船そのものは帰つて参りました。がしかし、このような不法行為をいたしたのでありますから、文書をもつてさらに外務大臣の名前で先方へ抗議をし、陳謝を求めることになつております。なおこのようなことが再発しないように、十分防止の措置をとるように申し入れるということになつておる次第でございます。
[058]
改進党 並木芳雄
損害賠償は請求しませんか。
[059]
政府委員(外務政務次官) 小滝彬
損害賠償を要求する権利は、この種の問題が起りましたときにその都度先方へ申入れをしておりますが、損害額というものが、はたしてどれだけになるか、いろいろ具体的な問題もございますので、これまでのところ、損害賠償を請求するという措置はまだとつておらないのであります。
[060]
改進党 並木芳雄
意思はありますか。
[061]
政府委員(外務政務次官) 小滝彬
その意思がありますので、これまでも何べんとなく権利を留保したわけでありますから、いずれこの辺は水産庁とも連絡いたしまして適当な措置をとりたいと考えております。
昭和29年02月25日 衆議院 内閣委員会
[042]
無所属 辻政信
2月20日の朝、李ラインにおきまして海上保安庁の巡視船の「さど丸」が韓国の警備船金星号に拿捕された事件が起つておるのであります。新聞によつて見ただけでございますから、その様子は的確であるかどうかはわかりませんが、その新聞によつて知り得た状況を見ましてもこれはきわめて重大であり、日本の国家の権威を失墜した重大な問題と考えますので、以下それに関連しまして海上保安庁長官の山口さんと、また防衛に関して木村長官に若干御質問したいと思います。
山口長官は、昨年の9月以降今日に至るまで半年たつておりますが、その間あなたは直接現場においでになつて、李ラインの状況を御視察になつたことだろうと思いますが、その結果どういう御所感をお持ちになりましたか、まずもつて承りたいと思います。
[043]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
9月7日以来、いわゆる李承晩ラインの不祥事件が頻発して参つたのでありますが、御質問の李ラインそのものの現場の視察はいたしておりません。昨年の11月下旬であつたと思いますが、現場の基地、すなわち門司、下関、福岡等に参り、またその後、佐世保、長崎方面等に参りまして、こちらの地方の出先機関並びに水産業の方々と詳細懇談をいたして参りました。それだけでございます。
[044]
無所属 辻政信
私は10月にこの李ラインを見て参りまして、最も大きな欠陥と感ぜられたのは、最高責任者の首脳部が、志気高揚の点においても、現地指導の点においても、李ラインに乗り出して、巡視船にみずから乗つて、彼らのやつておることの現場を視察される必要があるということを痛切に申し上げておるわけです。にもかかわらずず、その最高責任者たるあなたが、この半年間身を挺してその現場を見てないというところに、この国家の権威を失墜した根本原因があるとお考えになりませんか。
[045]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
辻委員のおつしやる御意見もわかりますが、当時はわが日本の政府の方針といたしましては、無用な刺激はしたくないという方針を一応立てまして、いろいろの手配をいたしたわけでありまして、あの緊迫した状態のときに私自身が第一線の海上に出ることは一応差控えたわけでございます。
[046]
無所属 辻政信
それは非常な考え方の間違いではないかと思います。無用の刺激をしないためには、なおさらあなたが行かれて、その趣旨を現場に徹底しなければならぬはずであります。
以下具体的に御質問しますが、新聞の情報によりますと、2月20日の夜、450トンの日本の監視船「さど丸」が韓国の警備船金星号、これは220トンであります。日本の船の半分しかないのです。この船によつて拿捕されておる。それは朝の6時にまず機関銃でもつて霧の中から撃たれた。6時半には停船を命ぜられて、7時に接舷、そうして船長と機関長が相手の船に乗り込んで行つて海上会談をやつております。それが約1時間半、8時半に自動小銃を持つた7名の韓国兵が日本の監視船に乗り込んで参りまして、こちらの船員15名を人質にかつぱらつて行つて、銃でもつて船長以下をおどして連行して行つた事実であります。
この状態を見ましたときに、私はこれほどまでに無抵抗といいますか、無気力といいますか、無気魄といいますか、まことに恐るべき志気の弛緩、消極的態度であると見るのでありますが、こういう場合にあなたは、無抵抗で手をあげて捕虜になれというふうにふだんから指導されておるのか、それとも国家の権威を身をもつて守るようにふだんから指導されておるのか、その点を簡単に伺いたい。
[047]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
ただいまお話になりました事件当時の経過につきましては、大体そのようであります。私の方に詳細報告が入つておりますが、これは大綱は一致しておりますから省略いたします。かねがねわれわれの方といたしましては、巡視船の行動について、相手国の艦船が、最悪の場合、巡視船に対して実力をもつて臨検し、あるいは拿捕しようとしました場合には、実力で来られた場合でありますので、そのときの状況を判断いたしました上で、待避不可能のときは、その場合に実力でこれを拒否するということは避けるように一応言つてあります。
しかしながら自己の生命等に危難が切迫する等、真にやむを得ない場合には、正当防衛の範囲におきまして実力を行使することはさしつかえないのでありますが、要は極力国際紛争を起さないよう自制する方針も一応頭の上に置いて慎重に対処してくれというように、かねがね指示をしてあつたわけであります。
[048]
無所属 辻政信
そうしますと、小田原船長以下が相手の船の2倍の船を持つて、乗組員は相手の35名に対して39名おつた。その船をもつてあのような侮辱を受けたことは、あなたの御希望通りの行動とお考えになりますか。
[049]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
私はその当時の報告を受けて、従来からやつておりまする接触状況、並びに当時巡視船「さど」の近くに2隻の日本漁船らしいものの操業をレーダーでつかまえておりますので、これらの船が拿捕されるようなことがあつてはいけないので、これまでの通り一応そこで会談をしようという態度に船長は判断して出かけたものと思います。
ところが、そこいらの判断についての御批評はいろいろあろうかと思いまするが、船長、機関長が金星号に乗り込んで折衝をしている間に、先方は計画的であつたかどうかわかりませんが、お話のように、7名の武装した先方の乗組員が「さど」に乗り込んで来、さらにこちらの方の乗組員の15名を金星号に移乗を命じた。そういうような状態になりましたので、それでいろいろとその拿捕について交渉しましたが、事態がそういうふうな進展を見て、遂にこちらとしては、それに対処する実力を行使すると申しましても、持つておりまする拳銃等はその当時用意しておりませんので、そういう事態になりましたので、やむを得ずかような連行が行われ、済州島に行つて交渉するつもりであつたと思うのであります。
[050]
無所属 辻政信
よけいな弁解はいりませんから、小田原船長以下のとつた態度があなたに満足なものか、不満足なものかということについてはつきりお答え願いたい。
[051]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
やむを得ない処置であつたと思います。
[052]
無所属 辻政信
ただいまのお話では、拳銃が間に合わなかつたというのですが、あの船には拳銃が何ちよう備えつけてあつて、どうしてあつたか。
[053]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
拳銃は20ちよう持たしてありました。その拳銃は一定の箇所にしまい込んであつたわけであります。
[054]
無所属 辻政信
私が直接見たところによると、20ちようの拳銃は金庫に入れてかぎをかけて封印してある。しかもあなたは昨年11月6日の本委員会の席上において、自由党の平井議員の、もし危険にさらされた場合に応戦していいのか、それとも逃げて帰れというのか、どう考えるかというこの質問に対して、あなたは、「うちの巡視船は警察船の性質でありますから、不法に向うから攻撃を受けて身に危険を感じ急迫状態になれば、正当防衛、緊急避難という範囲の応戦はむろんであります。こちらが積極的に撃つということいたしかねるのであります。」こう答えておりますね。その考え方は間違いありませんか。
[055]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
私はそのときの言葉を今……。
(辻(政)委員「速記録です」と呼ぶ)
ですから、それはその通り申上げたと思います。
[056]
無所属 辻政信
私はそういうことを聞いているのではない。言葉の端くれを言つているのではない。精神はそれでいいかと言つているのです。
[057]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
その通りであります。
[058]
無所属 辻政信
しからば、今度の場合も、拳銃20ちようをサロンに置いて、金庫の中に入れてかぎをかけて封印をしておつたと私は判断する。そういう拳銃ならば、なぜ持たしておく必要があるか。まさかのときに正当防衛をやる自衛の武器であるから持たしてある。
6時に撃たれて8時半です、向うが来たのは。その2時間半というものは、とつさの場合としても、39名のうちの20名はその自衛の拳銃によつて自衛ができたはずです。そうすればあのようなぶざまな侮辱を受けずに済んでいる。あちらは自動小銃を持つているけれども7名です。こちらが20名で拳銃を持つて自衛の態勢をとつたら、数において入つて来られません。
あなたはそういうことを答えて、その気持でおりながら、その拳銃をかくのごとくしている。これは長官としての責任ではないか。
[059]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
警察官と違いまして、ふだん日常の業務をやる場合には、むろん拳銃は間違いがあつてはいけないので、わが巡視船におきましては金庫に格納していることはその通りであります。
今回の場合におきましては、多少向うの出方について判断を誤つたと結果的に見れば見られるかもしれませんが、従来の通り会談に乗り込んで行き、そして話をつけて別れられるという判断でなかつたかと私は思うのであります。
[060]
無所属 辻政信
そこの町のおまわりだつてふだん拳銃をつけているではないですか。李ラインに行く者は海賊のいるところに行くのですよ。それが拳銃を金庫に入れて封印をしている。そんな拳銃ならなぜ渡すか。渡してあるからには、応急の場合ただちにそれを持つて国の権威を守るように精神教育もやり、訓練もしなければならないのですが、あなたは先ほど小田原船長以下の行動は満足だと言い、今は状況判断を誤つたらしいと言つている。そこにすでに食い違いをいたしているではないですか。
あらためて承りますが、もしあのときに日本の巡視船に、相手は機関銃2ちようしか持つていない、それに相当するように、こちらの方も自衛の機関銃なり機関砲なり備えつけてあつたとしたならば、おそらく私は2分の1の小さな船がいどんで来ないと思うのですが、それはどうでしよう。
[061]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
まず第1点の極力国際紛争を起さないようにかねがねその点は強調しておりますから、さようなことが船長の頭にあつたと思いますし、先ほどから申し上げますように食い違いでなくて、従来から洋上で会談をやつて成功した場合もありますし、向うの術中に陥るというような結果に思われるかもしれませんが、その点は多少判断を誤つたかもしれませんが、事態がそうなつた場合の船長の処置としては、やむを得たかつたと私は考えるわけであります。
[062]
無所属 辻政信
じようだんじやないです。これは6時に機関銃で撃たれている。この前はそうでなかつた。平和裡に接舷をしてやつている。今度の場合は6時に機関銃で撃たれておるのですよ。それで判断を誤るの誤らぬの問題ではない。海上保安庁の長官として部下を統率する、国家の権威を守るというしつかりした信念があなたにあつたならばこんなことは起らない。
おそらく私の考えでは、あなたのそういう指導、どつちへやつていいかわからぬようなひようなまな、半年間もたつておるのに、みずから一回もその現場に飛び込んで行こうとする気魄のない長官、そういうあなたの気質と同じような気質が下まで行つている。そしてこの船員たちは、国家がはずかしめを受けて、船をとられても無抵抗で、2、3箇月の後には命を全うして帰れる、こういう気持を持つたら事ゆゆしい問題になる。
昭和29年03月06日 衆議院 外務委員会
[046]
自由党(自由民主党) 福田篤泰
次に先般日本の国内にも相当大きな反響を呼びましたわが国の巡視船「さど」に対する不法射撃事件であります。これは国際慣例からいつても、国際法の法的立場から申しましても、だれが見ても李承晩政権のきわめて不法なる射撃であり、拿捕であります。
これは昔から一つの国際間においての重大な紛争の種にもなり、公船に対する不法射撃あるいは拿捕は、過去の歴史におきましても、戦争開始の原因にもなつた実例があるのでありまして、重大な問題であります。
日本が占領下であるならばいざ知らず、独立をかち得た今日におきまして、このような他国による重大な侮辱を与えられたことは、われわれとしても、この処置につきまして、政府に対しましてもとうていなまぬるい態度では見ておられないのであります。
これについてはたして李承晩政権から正式の陳謝の意を表して来たかどうか、またわが外務省におきまして、正式に文書――これは重大な問題でありますから、おそらく口頭でないと思いますが、文書をもつて在日金公使あるいはその他正当なる機関に、厳重な抗議を申し込まれたかどうか、並びにこれに伴う損害賠償の要求権を留保されたかどうか。ただ返したからそのままほつておくというようなことは、長いものに巻かれろ、結局力の強いやつにはどんな無理をされても泣き寝入りをするというような、きわめて卑屈な国民感情を植えつけてしまいますので、本件は重大な問題であります。
李承晩ラインもまだほとんど解決の見込みがつかない今日におきまして、こういう明瞭なる不法行為に対しまして、独立国として日本の外交当局がとられた処置、並びに相手国の、加害国の李承晩政権のそれに対する回答その他の処置につきまして、御回答をいただきたいと思います。
[047]
政府委員(外務政務次官) 小滝彬
海上保安庁の巡視船が向うへ連れて行かれたという報かありました当日、さつそく午前中奥村次官が金公使を招致いたしまして、厳重な抗議をし、すみやかに船を返還すると同時に、今後こうした事件が再発しないような十分な措置をとるように申しつけ、かつまた損害賠償を請求する権利を留保する旨を申し渡したのであります、その結果、また同時に友好国の方であつせんをした関係もあつたかとも思いますが、韓国側におきましても、即日日本側へ返還するという措置をとつたわけであります。しかしまだ陳謝の意思表示というものはございません。
この事件の起りました当日も、衆議院の予算委員会で私から申し上げました通り、外務省といたしましては、ただ口頭で申し述べるのみならず、文書でもつて厳重な抗議をするということを申し述べたのでありますが、船及び乗組員の返還につきましては、即座に先方が当方の申入れを聞き入れたので、このあとに出すところの外務省の抗議は、もう少し捕えられたときの状況及びそのときにおける船舶の位置というものを詳細に調査した上で、その調査の結果に基いてする方がより有効であろうと考えましたので、そうした面を今日までいろいろ調査し、すでに先方に対して陳謝を要求し、またこうした事件が再発することを防止するのに万全の措置を講ずべきこと、及び日本側としては損害賠償要求の権利はまだこれを留保するものであるという趣旨の申入書も作成いたしておるのでありまして、これは近日中に韓国側に手交する手はずになつておる次第であります。
昭和29年04月05日 衆議院 内閣委員会
[064]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
この点は先般の「さど」事件ときわめて関連がありますが、「さど」事件の場合は、相手から機関銃の攻撃を受けたと聞いております。
相手が海上保安庁の巡視船を攻撃した場合は、もちろん砲は使用する、武力は行使する、こういうお考えでありますか。
[065]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
お答えいたします。そのときの状況によつて、向うから積極的に攻撃を加えられるというような場合には、もちろんそれに対して応待せざるを得ないと思います。
しかしなるべくさような状態は避けたいとは思つておりますが、そういうような事態に当面すればやむを得ないことだと思つております。
[066]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
私は木村長官並びに山口長官、両長官の御答弁を承りまして、火器の使用に対しての方針がまだ明確に立つていないと思う。そこでこの問題はもちろん複雑なる国際問題を引起すこともありましようし、また部下をきわめてナーヴアスな、非常な苦しい判断の場面に押し出してしまう。そこでこれは、もちろんいろいろ複雑な事態がございましようが、遠く国を離れて日本の漁船あるいは日本人の保護に当つておる諸君が、ほんとうに安んじて国旗のもとに働き得る、こういう態勢を早く明確にされなければ、いたずらに部下を苦しめるだけである、かように私は考えるわけであります。この点はひとつ両長官が御協議になりまして、できるだけ早く態度を明確にされんことを希望する次第であります。
次に私は山口長官にお尋ねしたいことは、「さど」は李ラインに立ち入らないという誓約書をとられたということでありますが、これはほんとうでありますか。
[067]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
お答えいたします。釈放されることがきまつたあと、そういつた誓約書みたいなものを判を押しておることは事実でございます。
[068]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
これはとんでもないことでありまして、私は日本の公船が公海を航海することにおいて何の遠慮がいろうか、これは明確に韓国の日本の公船に対して強制した――あるいは釈放の際の不可抗力の強制であつたかもしれませんが、私はこれはとうてい容認できないと考える。
この点に関しまして、外務大臣はこれを否認された措置をおとりになつたと考えておりますが、いかなる措置をおとりになつたでございましようか。
[069]
外務大臣 岡崎勝男
外務省におきましては、この事実その他を調査しまして先方に対する申入れを行つております。
[070]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
私はこれは当然否認さるべき問題だと考えております。
昭和29年12月03日 衆議院 内閣委員会
[050]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
竹島におきまして11月21日の朝、海上保安庁の巡視船へくらが撃たれたという記事を新聞で見ましたが、このことについて山口海上保安庁長官からまずその景況を簡単に御説明願います。
[051]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
竹島につきましては、すでに御承知のように、今お示しの11月21日より前におきまして、8月にも1回射撃事件が起きておりますが、御質問の11月21日の状況を簡単に御説明いたします。
当日巡視船おき、へくら2はいが午前6時ごろ竹島の南西方12海里の地点に到着をいたしました際、両船はそこで2つにわかれまして、南北両側より調査をいたしたのでございますが、6時58分ごろへくらは西島の北西方約3.25海里程度に達しましたときに、突然5発の砲撃を受けまして、砲弾はいずれも船から約1海里離れた海上に落下したため、被害は別段なかつたのであります。
その際、東島の方の中央部分に無線柱が立つておりまして、その付近に14、5名の警備員らしき者が認められた、またその東側の無線柱には韓国旗が掲げられておつたのを認めました。さような状況でございます。
[052]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
今の問題を木村保安庁長官は武力によつて日本の領土が侵犯をされて不法の侵略を受けたとお考えになりますかなりませんか、それを承ります。
[053]
防衛庁長官 木村篤太郎
武力によつて不法侵略を受けたかどうか、これはちよつと疑問であろうと考えております。どういう状態において彼らが侵入して来たか。これは私どもの方でまだはつきり調査をいたしておりません。従いましてこの問題の処理については国内法に基いてやるべきであるか。国内法といいましても、自衛隊法を別にしてのことであります。
申すまでもなく自衛隊法76条におきましては、外部からの不当武力に対しては、わが国を防衛するために、内閣総理大臣は国会の承認を得てこれに対処することになつております。すなわちこのときには自衛隊が防衛出動することがあり得る。こういう場合に該当しないということは明瞭であります。
もうすでに何らか隠密の手段によつて彼らは上陸しておるのであります。前述の不当侵略には該当しない、こう私は考えております。
しかし、これをどう処置するかということについては、今後に残されておる問題であろうと考えております。すなわちこれを自衛隊法を別にした国内法的の方法によつて処置する。もちろん自衛隊に属するいわゆる自衛権は、不当に攻撃を受けた場合に対処するのは当然であります。隠密に上つて来て、今海上保安庁から説明のありましたように、すでにさような施設をした場合どう処置するかということについては、これは研究を要する問題だろう、こう考えております。
[054]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
ただいまの説明を聞いておりますと、竹島が日本の領土であるかないかわからぬような感じを受けるのですが、竹島が日本の領土であるということは、あなたははつきりお認めになりますか。
[055]
防衛庁長官 木村篤太郎
もとより竹島は日本領土であります。疑わないのであります。それでありまするから、不当の、つまり隠密な上陸、こう私は言つておるのであります。
[056]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
領土であるということを確信をもつて認めておりながらその手段方法がいかようであろうとも、現実の問題は竹島に他国の砲台が築かれ、それに接近した日本の船が5発の射撃を受けておる。これだけはつきりした事態を認めてもなお政府は侵略されたということをお考えにならないのですか。調査するとおつしやつておりますが、どういう方法で調査を進めておられますか。
[057]
防衛庁長官 木村篤太郎
これは国警において調査を進めております。私の方の直接の管轄ではありません。私の方の部隊の手においては調査を進めておりません。
しかし、申すまでもなく、今後われわれの国に対して不当な力をもつて侵略しようとするものについては、これに対処することはもちろん当然のことである。
[058]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
現実の事態は明らかに不当な力によつて侵されておるのであります。そうお認めになりませんか。
[059]
防衛庁長官 木村篤太郎
これは先ほど申し上げたように、不当に侵入して来ておるということは明らかな事実なんです。国民だれも見るところであります。
[060]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
今の点にちよつと関連してお尋ねいたしますが、不当に侵入して来ておる、侵略とは認められない、そういたしますと、すでに隠密の間に上つて来ているということでありましたならば、これは不当入国と考えるべき筋合いでありますかどうか。
[061]
防衛庁長官 木村篤太郎
もうすでに御研究になつておることと思いますが、自衛隊法76条の場合は不当な外部からの侵略行為があつた際に、日本の国を防衛するために、いわゆる防衛出勤をするのであります。
従いまして隠密の間に上陸をした、これは不当な行為であることはもとより当然であります。これを排除するということと、現実に起つて、これから防遏の処置をとらなくちやならぬということとは、私は明らかに相違しておると考えております。
[062]
自由党(自由民主党) 大久保武雄
そういたしますと、この問題は木村防衛庁長官の問題であるか、あるいは山口海上保安庁長官の問題であるか。防衛出動の問題であつたならば木村長官の問題である。もし密入国を排除するならば山口長官の問題である。一体どちらの所管であるのか、どちらが正面立つてこの問題を解決されるのか、この点をお尋ねいたしたい。
[063]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
韓国が単に漁業のみならず、警備員を駐在させ、あるいは灯台を建てたり旗を掲げたりする、かようなことになつて参りますると、そういうふうな既成事実をつくつて、韓国としては自分の領土権の主張を確保するために実力を使つておると見なければならぬのであります。
さような現状におきまして、わが方としては同島に対する従来からの主張である日本の領土権を保全するためにはいろいろの手段を講じなければならないのでありますが、現在の段階におきましては、同島の帰属問題を平和裡に、円満に解決するためには、まずもつて現状の確認が前提条件であります。そのことにつきましては海上保安庁として随時同島に巡視船を派遣しまして推移を確認し、でき得ることであれば、そこに不法に上つておる者を退去せしめる措置もとらなければなりませんし、また不法なる施設も撤去するのが建前でありまするが、現在のところ、さような向うの出方が実力行使式にやつておりまするので、結果的には事実の確認、それを根拠といたしまして、現在ではあらゆる外交的な手段は、外務省としていろいろのくふうをしていただいておる段階であります。
[064]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
山口さんにお伺いしますが、あなたの方の2そうの巡視船が行かれるときに、すでに竹島には韓国の砲台があるという情報を知つて行かれましたかどうか。
[065]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
灯台らしきものがあるやに認めたのは、10月2日、本年度における10数回目の――ちようど11月21日のもう1つ前の警戒に行きました際に発見をいたしております。その当時、「おき」「ながら」という2船が行きましたが、このときの調査では東方の突端に新しくすえつけられたと思われる砲らしきものがあるということが判明いたしました。
[066]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
そうしますと、砲台があるということ、危険があるということを予想されれば出さないはずであります。まる裸の巡視船が、相手が大砲を持つておるというところに出て行くときに、万一のことを考えて防衛庁に連絡をして行かれたか、それともあなたが独断で出させたか、それを伺います。
[067]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
こららとしては厳重にそのことを伝えて警戒させながら、危険を冒して突入するような指令はいたしておりませんが、さような危険があることは百も承知の上で十分気をつけて調査をして来いということを言つてあります。
[068]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
その際、出発の前にあなたが木村長官にこういう状況で行くということを連絡なさつたかどうかということを聞いておる。
[069]
説明員(海上保安庁長官) 山口伝
竹島の状況につきましては、その都度善後策についても防衛庁とは連絡をとつております。
[070]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
木村長官にお伺いしますが、その際に相手が大砲を持つてむちやをやるかもしれぬというところに山口保安庁長官のまる裸の巡視船を偵察に出して、軍艦で、大砲を持つた、自衛力を持つたフリゲートを、横須賀の港につないでおいて出さないという理由を承ります。
[071]
防衛庁長官 木村篤太郎
山口長官の言われた実情に対して私の方に対し、船を出すから、護衛を頼むというような連絡は私の手元には来ておりません。
[072]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
そういうことは言わなくても、あなたは危険に対して武力を持つた、武力を統率される人なんだ。山口さんはまる裸なんですよ。まる裸の船を危険なところにやるというときに、相手が言つて来ても知らぬ顔をしているということが、防衛庁長官として許されるかどうかということなんです。
[073]
防衛庁長官 木村篤太郎
私はその当時はまだ大砲がすえつけられておるとか何とかいうことは聞き及んでおりません。どういう状況にあるかわかつておりません。従いまして、海上保安庁の方からおそらく私の方へ向つて、いわゆる護衛を依頼するようなことはなかつたのだ、こう考えます。
[074]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
今の山口長官の御答弁では10月2日に大砲らしいものがあるということを確認をして、そのことは防衛庁に連絡をなさつておるという御答弁に承つております。そうすれば11月の21日に、その状況確認に行くということも当然御連絡があるべきであり、またそれがないとしても防衛庁としてはそれに対して何らかの手を打たなければならぬのではございませんか。
[075]
防衛庁長官 木村篤太郎
どういう状況になつておるかまず判断しなくちやならぬのであります。しかしその当時においてはさような判断すべき資料はございません。従いましてわれわれとしてはフリゲートを出動させなかつたのであります。
[076]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
それではあなたは砲弾によつて日本の公船が撃たれたという事実を御認識になつておりますか。防衛庁としては日本の領土が侵犯されたかどうかというはつきりした判断の根拠にしなければならぬのですが、最近の機会において防衛庁自体がそれを確認されるという御用意はありますか。
[077]
防衛庁長官 木村篤太郎
すでにその事実は認めております。不法にもわが方の巡視船に対して発砲したということ、これに対しては将来大いに注意をしなければならぬと考えております。
[078]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
将来注意するだけでは済まされない問題でありまして、安保条約の第1条には、在日米軍は大規模の内乱鎮圧に対する援助をも含めて、外部からする武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用するとはつきり書いてあります。そうするとすでに現実の事態は外部からの武力攻撃にさらされておる。これを解決するためにこの安保条約の第1条を適用されて、アメリカにその協力なりないしは調停なりを御依頼なさつた事実がありますか。
[079]
防衛庁長官 木村篤太郎
私の手元ではアメリカに対して協力を頼んでおりません。私は万一の場合はみずからの手によつてやろうと考えております。
[080]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
みずからの手によつてやるという御趣旨でありますが、すでに侵されておる現実の事態をいつまで黙つて見ておかれるのですか。
[081]
防衛庁長官 木村篤太郎
ただいま外交交渉によつてまず解決をしたいと考えております。
[082]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
日本の政府は、国際裁判に訴えて黒白をきめようといたしましたが、御承知の通りこれは韓国の拒否にあつて不可能となつております。そこでやむを得ず朝鮮が出した郵便切手を拒むということしかできておらない。郵便切手を拒むということで竹島問題の結末をつけようとなさるのでしようか。
[083]
防衛庁長官 木村篤太郎
郵便切手だけで解決しようとは毛頭考えておりません。あらゆる外交手段によつて外務省で現実にやつておるのであります。
[084]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
自衛隊の任務は、自衛隊法の第3条によりますと、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛するを主たる任務とし」と書いてあります。そうしますと、今目前に起つておる竹島問題はその直接侵略の対象とお考えになりませんか。
[085]
防衛庁長官 木村篤太郎
現在は自衛隊法によつて、現実の武力攻撃があつた場合に、日本の国を防衛する必要ありと認めた場合においては、内閣総理大臣が国会の承認を得てこの防衛に出勤する建前になつております。そこでまず直接に防衛する必要があるかどうかということの判断をしなければならぬのであります。
今後外部からの不当侵略があつて、日本の国を直接に防衛する必要が差迫つたという場合においては、第76条の規定によつて処置をすべきであろうと考えております。
[086]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
今後ではありません。もう現実において、過去において日本の領土が侵されておる。韓国の軍艦によつて大砲が撃たれ、占領されているという過去の事実です。将来ではありません。
これを見のがすのか見のがさないのか。手続きをとつて国会に要求されるかされぬか。
[087]
防衛庁長官 木村篤太郎
ただいまのところでは、国会に対して防衛出動を要求する意思はありません。まず外交交渉によつて問題を解決したいと考えております。
[088]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
長官は、直接侵略に対して日本を守る自衛隊の最高責任者である。それが竹島の現状をみずから視察をするか、少くとも有力なる責任ある幕僚をもつて確認なさるべきであります。この手段をおとりになるかどうか。
[089]
防衛庁長官 木村篤太郎
現在のところではその情報収集に努めておるだけであります。
[090]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
情報収集を、はだかの海上保安庁にやらせて自衛力を持つた軍艦がやろうとしないのですか。
[091]
防衛庁長官 木村篤太郎
時期が来ればやります。
[092]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
その時期はいつですか。
[093]
防衛庁長官 木村篤太郎
それは今はつきり申し上げることができません。
[094]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
国民がこの苦しい生活の財布の中から1000億円に近い税金を出して保安隊を養つておるのは、自分の国を守つてくれるというその気持から出しておるのでございませんか。そういうことをやらないで――明らかに侵された国土に対してその国土を守ろうというためにつくつたものではないのですか。
[095]
防衛庁長官 木村篤太郎
もとより自衛隊はわが国を防衛し、国民の自由と平和を守るためにある。しかしそのときの情勢いかんによつていつでも出勤するということであります。私は自衛隊が出動するときは、ほんとうに国民が決心すべきときである。そういうことがなければただちに自衛隊が防衛出動に出かけるというようなことがあつてはならぬと考えております。
[096]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
私はこの竹島問題に関連をして起るものは対馬の防衛だと思うのであります。朝鮮ははつきり対馬は朝鮮の領土であると宣言しておるのであります。
この対馬問題につきまして、私が昨年視察をした直後に長官も行かれまして、帰つて来られてからこの部屋の中で私の質問に対してお答えになつたことがあります。これは2月25日の速記録であります。
「お説ごもつともであります。私も親しく対馬の島民諸君と接触いたしまして、その人々の切々たる様子を涙をもつて見て参りました。まことにもつともです。不幸にして東京付近に住んでおる人たちはあの地方の情勢を知らない、同情がないのです。私は不敏ながらかの島民たちの気持がまことによくわかつて参りました。そこで今辻委員の仰せになりましたような幾多の方法がありましよう」
以下略しまして、
「これは知事も賛成の意を表しており、この人は熱心な人であります。おそらくわれわれの希望に沿うてある程度の援助はされるものと確信いたします。私は警備隊、保安隊につきましても、今対馬に対してどう配置し、またどういうぐあいにすべきかということについて、幕僚と相談いたしまして、この問題の早急の解決をはかるように努力いたしたい、こう考えております。」
このお答えは今もかわりございませんか。
[097]
防衛庁長官 木村篤太郎
もとよりかわりはありません。
[098]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
しからばこの前のこの委員会で問題になりました昭和30年度の配置予算の際に私が念を押しております。あなたがごらんになつた通り対馬は今日本の直接侵略の可能性の最も多い地点であり、住民がおちおち眠れない。この不安を除くということが自衛隊の大きな任務であろう。そうすればほかのところに兵隊をふやすよりも、この島民の不安にこたえる意味におきまして、あなたがお答えになつたことをなぜ誠意をもつて少くとも30年度の計画にお入れにならないのであるか、これをお伺いいたします。
[099]
防衛庁長官 木村篤太郎
いろいろの点からわれわれは研究しなければならないのであります。そこに陸上の自衛隊を配置することがいいか、海の方で守らせるのがいいかということを研究しなければならない。そこでわれわれといたしましては、さしあたり海の方でもつて十分守ることができると思います。御承知の通り対馬は道路も完全にできておりません。これらの点からにらみ合せて、われわれは十二分の手当をすることを考えております。しかし30年度においては、とりあえず海上自衛隊の連絡場所を設置し、終始佐世保の総監部と連絡をとつて、海上からの防衛に努めたい、こうさしあたり考えております。
[100]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
私は今日の日本の防衛の上におきまして、一番大事な点は対馬である。対馬にすきをつくつたならば竹島問題がやがて対馬において再燃をするのであります。発生するのであります。対馬に事が起りましたら、これは救うことのできないような大事件になります。今のうちに一石を打つて相手にばかにされないだけの態勢をおつくりになることが、日韓の紛争を竹島以上に拡大しない最も賢明な策ではないかと思うのであります。
そういうことに目をおおうて、30年度においては海上自衛隊の無線機1機を対馬に出す、こういうことでごまかされようとしておりますが、ほかのところに置くよりも、向うの島民はあげて来てくれといつて頼んでおるのではありませんか。経費の点からも、気候の点から申しましても、北海道あたりと比べてよほど安上りになる。兵力も少くてよろしい。しかも30年度におきましては、2万の陸上自衛隊を増そうとしておられる。その戦闘団を北海道と九州に置こうとしておられる。なぜその一部をもつて対馬の不安をまじめになくするような御努力をなさらぬかというのであります。もう一度承ります。
[101]
防衛庁長官 木村篤太郎
われわれは決して対馬を閑却しておるのではございません。今仰せの通り対馬はわが国の防衛上最も必要な場所と考えております。そこでどういう手を打つかということについては、慎重にわれわれも研究いたしておるのであります。そこでさしあたり海の方でもつてまずこれを固めるということを先決問題に考えて幸い来年度において増強されれば、そのときにわれくはまたひとつ考えを新たにして計画を立ててみたいとも考えておるのであります。
[102]
日本民主党(自由民主党) 辻政信
これはまだ民主党の党としての意見はまとめる段階に至つておりませんが、そのところはつきり責任をお持ちにならない限り、私はただいま提出されている法案は民主党といたしましては保留いたします。個人としては大反対であります。
昭和29年12月06日 参議院 本会議
[018]
日本民主党(自由民主党) 團伊能
私は、最近問題になつております日本領竹島の問題につきまして緊急質問をいたします。
竹島は、従来日本領であることは歴史に徴しまして疑いないばかりでなく、更に最近、平和会議の条項、第2条におきましても、日本と韓国が分離した際に、韓国に所属する島嶼は明瞭に記載されておりまして、済州島、巨文島、鬱陵島の3島が韓国に所属し、他の諸島は日本に属することになつているのであります。
日本政府から韓国に抗議をいたした抗議文に対する韓国側の回答を読みますと、あたかもこれが鬱陵島の付属島嶼のごとく受取れる感がいたしますが、韓国の歴史においても、すでにこの島を独島、一つの島、独りの島と書きます。独島と称しているばかりでなく、56カイリを隔てるこの島が、鬱陵島の付属島嶼でないことは極めて明瞭であります。
今日、政府及び国民の一部の竹島に対する誤解、これが渺たる日本海の一小島であり、この問題について種々国際紛争を起すことは、国家として非常に不利であるという考えもありますが、最近の遠洋漁業その他の科学的な漁獲方法により、この島は急に重大性を持つていることは、日本よりも韓国側のほうが、よくこれを了解しているようであります。
又、非常に災害の多い日本における気象通報のためにこれを用い、又、世界に二つよりない非常な貴重な海獣「あしか」の集合地でありまして、日本は曽つて「おつとせい」条約に入つておりましたが、この「おつとせい」の保護と同様に海獣保護の文化的責任を持つているものであります。
然るにこの竹島は、昨年の春以来韓国側が非常な巧妙な手を打ちまして、或いはここに軍隊を送り、又最近は灯台を作つて、これを米国の国際航路局に登録いたし、又予算を通して、ここに築港する計画をいたしております。殊に最近、韓国では、郵便切手に竹島の図を載せまして、これを頒布し、且つ世界的に竹島の領有を宣伝して、外交における事実をここに作ろうとしていることは、皆様すでに御承知の通りであります。
これに対し、日本政府は、ただ文書的な抗議を送るにとどまりまして、今日まで何ら積極的なこの解決をしなかつたことにつきましては、私は非常な遺憾の意を表するものであります。(拍手)
私はこれにつきまして、先ず副総理にお伺いいたしたいと思いますが、日本政府は、とかくこの問題を、或いは国民の注意を避けるような方法において解決しようといたし、ここに参りました韓国人をいわゆる密入国者としてこれを取扱い、日本の巡視船を送つてこれを収容し、長崎県の南風崎からこれを韓国に送還する、いわゆる密入国者の取扱いをいたしております。
併しながら今日、すでに昨年以来数回に亘つて日本の巡視船が参りましたときに、これが銃撃を受け、或いは砲弾を受けまして、巡視船のへくら、おき等の船は、いずれも優秀な鉄船でありますが、200発の銃弾を受けて、それは鉄板を貫通しておるような損害を受けております。このために竹島に近寄れないで引返しておるのでありまして、今日、これを密入国者として取扱い、警察処分で取扱うことは、もはやその域を遙かに脱しているものであります。
昭和33年07月08日 参議院 農林水産委員会
[048]
委員長 重政庸徳
李ライン外でも警備船に撃ってくればやっはり逃げねばならぬのだな……。
[049]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 松野清秀
現在ではそういう考え方でやっております。
[050]
自由民主党 秋山俊一郎
今のその点ですが、まあこっちが発砲できないにしても、向うに接近していって接舷するというようなことは、船員の心がまえ一つではできぬことはないのじゃないかと思いますが、人命に危険があるから接近してはならぬというようなことに相なっておるのでありますか。
先ほどのお話では威脅射撃のようなことを言われたが、威脅射撃なら何もおそれることはないと思いますが、向うの船にあくまでも接近していって、接舷するくらいのところまで行くということは、必ずしも平和交渉を乱すものではないと思うのですが、そこいらの実態ですね。
ただ日本の監視船なり何なりは、1発撃ちさえすれば逃げてしまうのだからということになれば、幾らあの辺で遊よくしておっても何にもならぬじゃないかという感じがするのですが、私はもう向うの船に近づいて、ぐっと200メートル、100メートルどころじゃない、もっと接近していく、あるは引っぱっておられる日本の漁船に、もっと接近していくといったようなことができないものか。
[051]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 松野清秀
昭和28年の秋ごろから29年の春にかけてであったと思いますが、当時いわゆる洋上会談というものをしばしばやっております。そのころには拿捕現場に行きまして向うの警備艇に接舷しまして、こちらから船長が向うの警備艇に乗り移って行きまして釈放の交渉をやりました。
そうして、これはたしか30回以上に及んだと思いますが、しかもそのうち10何回かはたしか成功しておる。こういうふうに今記憶しておりますが、たまたま29年の2月20日だったと思いますが、私どもの巡視船のさどがやはり接舷して交渉に参りましたところ、向うの警備艇に乗り移った船長を乗せたままあとから巡視船もついて来いということで、済州島に連行された、そしてまあこれは2日ばかり向うにとめ置かれまして釈放されたのですが、それ以後、巡視船が近づきますとどんどん射撃してくる。こういうような事態になりましたので、その後はいわゆるそういう接舷しての交渉はいたしておりません。
それで、もちろん今回の例もそうなんですが、100メーターくらいではなしに、さらに曳航されて行った第二星丸には、今回も50メートルくらいまでは近づいておると思います。そういうような実情になっておりますので御了承いただきたいと思います。