白鳥警部射殺事件

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昭和27年01月29日 参議院  本会議
[023]
法務総裁 木村篤太郎
岩間君の要求によりまして札幌事件の取調べの経過を御報告いたします。

本年(「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)1月21日午後7時30分、札幌市警備課長の警部、白鳥一雄、満36年、この人が単身自転車で帰宅中に、同市内南六条西17丁目附近の路上を進行中に、背後から自転車で接近して来た犯人に拳銃で狙撃された。左肺上部を撃たれて即死したのであります。

この事件の発生直前の事情といたしまして、昨年12月27日、自由労働者多数が札幌市市役所に押寄せまして、高田市長に面会を求めて、市長室の前廊下に座り込んで喧騒を極めた。同日午後3時頃、同市長の退去要求に応じなかつたために、うち10名が札幌市警の警察官に検挙された。それで札幌地検の取調べの結果、うち7名が建造物侵入罪によつて起訴された事実があるのであります。この事件後、白鳥警部等に対しまして、再三同警部の生命に危害を加えるような脅迫状が送付された事実があるのであります。

又事件発生後、本年1月23日、札幌市内におきまして、日本共産党札幌委員会名義の同月22日付のビラが撒布された事実があります。(「怪文書だ」「確認したか」と呼ぶ者あり)このビラに、「見よ、天誅逐に下る、自由の凶敵白鳥警備課長の醜い末路こそ全フアツショ官吏の落ち行く運命だ、全官憲よ、第二の白鳥となるなかれ、他人事と思うな」云々の記事が煽情的に書かれてあつたのであります。(「それが確認されているか」と呼ぶ者あり)

この事件の内容といたしまして、(「証拠はあるのか」と呼ぶ者あり)只今申しましたような前後の状況によりまして、この事件は極めて悪質な重大事件と私は考えております。

只今関係当局を総動員いたしまして、何人がかような犯罪を犯したのか、背後関係はどうであるか、如何なる理由によつてかような犯罪が行われたかということを目下調査中であります。只今のところ、この詳細はわかりませんが、(「三鷹事件はどうした」と呼ぶ者あり)恐らく近い将来においてこの事実の真相が判明するであろうことをここに申上げる次第であります。(「第2の下山事件」と呼ぶ者あり)





昭和27年02月06日 衆議院 法務委員会
[002]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
本日国警の部長さん並びに法務府の関係長官、局長の御出席を得ておるのでございます。最近治安に関連いたしまして、警察官に対する暴行傷害等の事件が続出いたしております。この現状にかんがみまして、この真相をお尋ねいたし、これに基いて、国会といたしましても、これらに対する対策を立てようといたすものであります。昨年の12月を契機といたしまして、いろいろ全国的に警察官に対する暴行傷害事件が続出いたしておるのでありますが、これらの行為を、今まで国警に入りましたおわかりになつておる範囲においてお答えを願いたいと思います。

なおこれらの件は、新聞紙上の報道によりますと、いずれも背後に関係を持つ団体がある。この団体の名前といたしまして、日共というような言葉がちらほら出るのであります。これはまことに共産党に対しても御迷惑なことでございますので、この点をはつきりいたしておきますことは、われわれ国会にとりましても、公党として認められている共産党のためにも、私は必要なことだと考えるのであります。どうか詳しく御説明を願いたいと思います。

[003]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
田嶋委員の御質問に対してお答えを申し上げます。警察官に対しまする暴行事件についてのお尋ねでありますが、昨年の12月中におきましては、自由労務者関係において集団暴行事件として約10件ほど起つた事実がございます。1月に入りまして以来は、現在のところ札幌に起りました白鳥警備課長射殺事件、その後帯広におきまする巡査に対する暴行事件、また最近長野県の南佐久郡で起りました暴行傷害事件、この程度でございます。

これにつきましてただいまお尋ねの日本共産党との関係につきまして、新聞紙上にとかく大きく取上げられておりまするが、その背後の団体として日本共産党がはたしてそれらをあやつつてやつておるかどうかということにつきましては、現在までのところ確証を得ておらない次第であります。ただ日本共産党の非合法機関誌と考えられまする「球根栽培法」という雑誌の中に、軍事活動の方針、軍事組織の基本問題を取上げておるという事実がございますが、これは日本共産党の機関誌であるというふうに現在確認をいたすところまで至つておるわけではございません。なお白鳥事件の直後におきまして、日本共産党札幌地区委員会の名前におきまして、あの白鳥警備課長射殺事件を是認するごとき文書がまかれたことは、これまた事実でございます。以上お答えを申し上げます。

[004]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
そこで今度は今年起りましたこれらの3件の警官に対する暴行傷害事件の内容について、少しつつ込んでお聞きをいたしたいのであります。白鳥事件に対しましては、衆議院よりも現在調査団が派遣されておりまするので、いずれその結果は国会において発表せられることと思うのでありますが、この委員会はわが法務委員会とは多少目的を異にした委員会でございますので、法務委員会として一言白鳥事件についてなお。尋ねいたしておきたいと思います。

この白鳥事件は、白鳥警備課長射殺後、そうしたビラがまかれたということだけのお答えでございますが、新聞紙上では、捜査の線につきまして、日本共産党の党員であるという人たち、これを対象にして捜査が行われているようでございますが、この捜査の点について、秘密にわたる点はもちろんこれはお答え願うことはできないのでございますが、明らかに願える範囲で、ひとつもう少し現在の捜査段階、捜査の方向等についてお答え願いたいと思います。

[005]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
先ほどお答えのうちで、ちよつと字句の間違いがございましたので、訂正さしていただきます。札幌地区委員会と申し上げましたが、これは札幌委員会でございます。

ただいまの白鳥事件の捜査の過程につきましては、現在鋭意捜査中でございまして、詳細申し上げる段階に至つておりませんが、この犯人が党員であるかどうかということにつきましても、まだ明確にはいたされておらないのであります。およそ捜査にあたりましては、あらゆる角度から考えられまする問題をすべて追究いたしまして、合理的に、科学的にこれを判断する必要があると思うのでありまして、非常に容疑の濃いというものにつきましてのみ捜査を進めるということは、やはり捜査の堅実な道ではない。もちろん現在の段階において、共産党員であるということが断言できないと同時に、これでないということも断言できないような状況でございます。





昭和27年02月06日 衆議院 予算委員会
[016]
自由党(自由民主党) 上林山榮吉
まず次に質疑をいたしたいことは、治安対策、特に極左分子のテロ化に対しまして、法務総裁に対してこれから質疑をいたしたいと思います。いまや御承知の通りに共産党員の集団的暴力化や、あるいは右翼その他の集団的兇悪犯罪等の問題を無視することができなくなりました。またこれらの問題を論ずることなしに、自衛力の問題等を論ずることも、私は片手落ちのうらみがする者の1人でありまするが、私はこの問題は、政府としても、われわれ国会としても、真剣に考える時期に来ておるのじやないか、こういうふうに考えるのであります。

御承知のごとく、先には共産党員によるところの福島事件が起つておる。また極左分子によるところの三鷹事件の電車の転覆事件が起つておる。その他多数の事件が起つたが、最近はまた共産党のテロ化、あるいは組織化のはげしい北海道地区において、白鳥警部射殺事件のごとき重大な事件が起りまして、世間を非常に騒がせておるし、しかも間もなく長野に5警官に対して集団暴行を加えた事件が起つて、重傷を負わせ、しかもピストルを強奪しておる。こういうような実に恐るべき状態を呈しておるのであります。

しかも白鳥事件の直後において、北海道共産党の地区委員会は、何と言つておるかといいますと、全国に燃え上りつつある抵抗運動の一つのこれが現われだといつて、これを肯定し、はなはだしきは、この事件の殺人者を愛国者と呼んでほめそやしておる。こういうような状況であります。

また共産党の秘密指令書によりますと、白鳥事件に関する各地の反響並びにその後の宣伝工作に関する反響を詳細に集めて報告せよというような指令があつたと言つておりますが、はたしてこれは事実であつたかどうか。また日共党員のそれぞれの秘密指令がいろいろ当局の手に入つておるということが報ぜられておるが、はたしてこの点は事実であるか。私はまずその点を伺つておきたいのであります。

[017]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
お答えいたします。ただいま上林山君から、北海道の白鳥事件及び長野の事件、いずれも詳細な報告は参つておるのであります。但し、それがはたして共産党とつながりを持つておるかどうかということは、ただいま判明いたしておりません。これは共産党とつながりを持つておるというならば、事はなはだ重大であると考えておるのであります。その際における頒布書類、そういうものが手に入つておるかどうかというお尋ねでありまするが、それは当局の手に入つておるということを申し上げて、私の答弁といたしたいと思います。

[018]
自由党(自由民主党) 上林山榮吉
白鳥事件に対する内容を私はもう少し伺い、捜査中に属しておる事件でありますから、慎重を期さなければならぬという点についても論及したいのでありますが、これは一応さておいて、長野の5警官に対する集団暴行事件は、これも捜査中に属することであるから慎重を期さなければなりませんが、ただいままでの経過によると、共産党とは、あるいは極左分子とは何ら関係がないというような積極的な見通しか、あるいはこれに反して、共産党にやや、あるいは極左分子にやや近い方向に経過が向つておる、こういう状況であるか、捜査中の事件であるから、政府が答弁できなければ、それでよろしい。もし答弁できるとするならば、答弁を私は要求したいのであります。

[019]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
北海道の白鳥事件につきましてはまだ犯人があがつておりません。はたしていかなる背後関係があるかということも、今調査中であります。但し、その際に、共産党地区委員会の名をもちまして、はなはだしく破壊的な言動を記載された文書が頒布されておる、また一部においていろいろな記事を載せたものを貼付された事実は明瞭になつております。

長野の事件につきましては、ただいま犯人が一部逮捕されました。その者が共産党員であるかどうかということについては今言明はすることができませんが、おそらく共産党員ではなかろうかということだけは申し上げます。

[020]
自由党(自由民主党) 上林山榮吉
私はもう少しこの問題を追求して全貌を明らかにしたいという気持を持つておるのでありますが、それを差控えまして、ここに有力紙に書かれておる1つの意見がありまするが、私はこれを朗読いたしまして法務総裁の最後の意見を聞きたいと思うのであります。その文章というのは「北海道における警部の射殺事件を、国会が取り上げたことにより、いまや地方的ではなく中央の問題として重大視されるようになつた。前後の事情から、どうやら共産党のテロ行為らしいというのである。だが確たる証拠もなく、想像で殺人の罪を共産党になすりつけようとするのは、少くも民主的ではない。」こう前提して、そして「ところが今度北海道地区委員会の声明によると、彼等は党と事件との関係を否定しながら、関係のあるのを自ら白状しているようである。声明はこの事件を、全国に燃え上りつつある抵抗運動の一つの現われだと断言した。関係もなく証拠もないのに、どうして共産党は、この事件が抵抗運動であると知ることができたか。これ問うに落ちず、語るに落ちたものといわなければならない。」こういうふうに続け、「さらに聞き捨てならないのは、この事件の殺人者を「愛国者」として、称めそやしていることだ。およそヒユマニズムの行われる現代において、人殺しを愛国者とする国は、共産主義国家を除けば、世界のどこにもありはしないのだ。これは日本国を愛する者の行為ではない。多分お門違いのよそ国への忠誠なのであろう。よそ国への忠誠のために、日本人が日本人を殺すのを、日本人たる私たちが黙つてみていなければならないとは、私たちのそれこそ「愛国心」が許さないのである。共産党の声明は日本の国に宣戦し、私たちのヒユマニズムに挑戦したものだ。共産党が警部射殺に、関係あろうが、なかろうが、暴力によるテロ行為を是認しこれを以て愛国者なりと礼讃しているのだ。かような暴力政党を公党として認められるかを改めて考える必要のある時がきたようである。共産党の暴力化を外にして、いま国会で論議されている再軍備、自衛力の問題は考えられないことである」。

まことに適切な意見である、私はこう思うのでありまするが、事件に関係があつたかなかつたかということは、この次の段階で明瞭になることであります。これはその段階において明瞭になつたときに、それ相当の処置をなし得るのでありますが、この暴力行為を肯定する声明を出すようなところの政党をはたして公党として認めておいてよいかどうか。私は事件に直接間接関係あるなしにかかわらず、ただいま申し上げた通り、こういう暴力行為を礼讃し、愛国者であると言うがごとき政党を公党としておいてよいかどうか。法務総裁の所見を伺い、われわれは国民とともに愼重にこの問題を考えてみなければならない、こう思うのでありまするが、法務総裁の率直な、ひとつかけ引きでなく、お互いやおちようでなく、真剣な御所見を伺つておきたいのであります。

[021]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
ただいまの御議論は私は大いに耳を傾けなければならぬと考えております。一体民主国家において最も慎むべきは暴力の行使であります。われわれは暴力を絶対に否定するのであります。暴力のあるところ国家の治安は乱れるのであります。そこで暴力行使をする者は、その思想の背景が右たると左たるとを問わず、われわれは断固としてこれに戦わなければならぬという確信を持つております。

もし共産党が治安を撹乱し、暴力的行為を表に掲げて、堂々とさようなことをやるということが明らかになれば、これは国民が承知しないであろうと考えます、おそらく国民から、これに対して相当の処置をとるべしという声は、おのずから上つて来るだろうと思います。

現在共産党が暴力による革命を表に掲げ、実際的に行動に移すということになれば、これは当然非合法化という問題は明らかになると思うのでありますが、ただいまの段階においてはわれわれはまだじつとこれを見送るよりほかいたし方ないのでございまして、目下慎重に考慮中であるということを申し上げておきます。

[022]
自由党(自由民主党) 上林山榮吉
私がここで申し上げました北海道の地区委員会が出した声明の内容は、政府に入つておる資料も大体これに類似したものか、あるいはこれと同じものであるかどうか。この点を明瞭にせられたいのであります。

[023]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
お答えいたします。北海道札幌白鳥警部射殺事件につきまして、事件発生後の本年1月23日、札幌市内において、日本共産党札幌委員会名義の同月22日付のビラが散布された事実があります。その内容は相当広汎なものでありますが、一部にはかようなことが記載されております。「見よ、天ちゆうついに下る!自由の凶敵!白鳥課長のみにくい末路こそ全フアシスト官憲の落ち行く運命である。全官憲よ第二の白鳥となるような行為をするなかれ。白鳥課長のむごい末路を夢にも他人事と思うなかれ」というような煽情的な記載があるのであります。これ以外にも相当破壊的な記事が載つておることは事実であります。

[024]
自由党(自由民主党) 上林山榮吉
これでさらに明瞭になつたわけでありますが、同時に白鳥事件の影響がどういうふうであつたか、あるいは白鳥事件を利用して宣伝した効果がどういうふうであつたかという秘密指令を日本共産党員が全国地区に要求しておると言われております。その資料もまた入つておると報ぜられておるのでありますが、白鳥事件の反響を調査した日共の秘密指令があつたかどうか、この点をお尋ねしておきたいのであります。

[025]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
警察当局にはその情報は入つておるようであります。しかしそれがはたして何人の手から出ておるものであるか、それは明瞭になつておりません。





昭和27年02月07日 衆議院 予算委員会
[136]
日本共産党 風早八十二
松阪の放火事件だけでなく、練馬の巡査殺し事件、あるいは最近の白鳥警部の事件、こういつたような事件のたびに、これは単なる刑事事件であるにかかわらず、これをあたかも共産党がやつたかのごときデマを政府自身が飛ばしている。

松阪の放火事件のごときは、もうその事件が発生したらすぐ名古屋の高等検察庁は何を言つているか。これに対して、いやこれは共産党だ、共産党がやつたという趣旨でその捜査をやれ、検挙をやれとこう言つている。そういう事例が出ている。(「議事進行に関係ないじやないか」と呼び、その他発言する者多し)

こういう実に不都合きわまる謀略を政府は続けて来ておつたのでありますが、さらに今日われわれが問題にしようとするのは、最近わが党に対しても盛んに各地方から問合せが来ているが……。

[137]
委員長代理 西村久之
風早君に御注意いたします。議事の進行の要点をお述べください。あなたのは質疑になつているのでありまして、法務総裁の出席の際にお述べになつてもよろしい問題であります。議事の進行だというからお許しをしておるのでありますから、それで大臣の出席が悪いから出席をよくせいという意の議事の進行だと聞いたのでありますが、脱線されてほかの問題に移つておるようでありますから、従いまして議事の進行の要点をお述べくださいませんと、あなたの発言を中止いたします。あなたのは議事の進行にならない、議事の進行の要点をお述べくださつたらよろしい。

[138]
日本共産党 風早八十二
地方から盛んに問合せが来ている、その間合せによれば、今政府は系統的に来る2月の10日に共産党が暴動をやる、こういうまことにこつけい千万なるデマを盛んに系統的に振りまいておるというようなことがわかつて来ている。従つてわれわれはこの政府の意図に対してその責任を徹底的に追究せんとするものであります。

政府はこのデマを飛ばすことによつて、どうでもこうでも団規法を通そうとするその口実をでつち上げようとしておる。またこの10日前後に大検挙でもやつて、さあ共産党の暴動だなんということをでつち上げて、団規法をどうでもこうでも通すためにこれを使おうとしておるのであります。われわれはこの政府の重大なる責任、しかも合法的なる一党の存立に対して、重大な影響を及ぼすところの政府の重大な責任を追究したいと思う。

その大臣がここへさつぱり出て来ない。委員長がこの問題に対していろいろあつせんしてくれたにかかわらず、事実政府が出て来ない。また与党の一部の議員諸君が、大橋国務大臣が出て来ないということに対して協力しておるような事実もあるわけであります。私どもはこういう議事の進行の仕方に対しては、はなはだ遺憾の意を表せざるを得ない。きわめて公正なる委員長としては、この点は政府に対しても巖重にその出席を要求し、また出て来ないときには誠意をもつてこれに対して出席を求めてもらいたい、このことを私はお願いしたいわけであります。





昭和27年02月12日 衆議院 法務委員会
[010]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
国警長官がお見えになりましたから白鳥事件についてお聞きしたいと思います。これは北海道にもお行きになつたようでありますからよくおわかりと思いますが、事件の内容とその後の捜査の進展についてもお聞きしたいのでありますが、それよりも、私が最も憂うべき事実だと思うことの1つは、現地で調べた人の報告によりますと、北海道における共産党員は、間違いなくソ連軍が入つて来るのだ、入つて来ればわれわれの世界になるのだ、少くとも北海道だけはわれわれの世界になるのだ、この確信を持つていろいろの行動を起しておる。

さらにまたそれを非常に宣伝いたしまするがゆえに、北海道の一般民衆も、万一そういうことになると、われわれが今反抗しておるとしまいに行つてどんなひどい目にあうかもしれぬ。ゆえに今日は黙つて彼らの言うままになつていた方が身の安全だ、こういう不安感を持つて、警察その他捜査機関に対する協力をもたせない実情にある、かようなことを聞いたのでありますが、それが事実であるとすればまことにゆゆしきことだと思われるのであります。

まずこの点に対して長官の方でどのように見られたか、またいかなる情報が来ておるか、それを承りたいと思います。

[011]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
北海道において、共産党が、ソ連の兵隊が近く入つて来るという宣伝をし、またその確信に基いて行動をしておるのではないか、また一般住民もそれを信じておるのではないかというお尋ねだと思います。

私も2週間足らずでありましたが北海道をまわつて参りました。なるほど今のお話を伺いまして、あるいは共産党員の中にはそういうようなことを言つて、党勢の拡張といいますか、そういうようなことを言いふらしている者があるかもしれませんが、私は直接には耳にいたしませんでした。しかし何とはなしに、そういう場合もあり得るのじやないだろうかという道民の杞憂は皆無とは言えないであろうと考えます。しかしさように確実に入つて来るというふうに考えている者はむしろ少いのじやないか、私はかように考えております。

根室、釧路、網走、あの方面にも参りましたが、土地の市町村長あるいは責任者なども、さような懸念を持つておるようには見受けておりません。むしろ自由世界の強い連帯的な考えのもとに立つていると、私は頼もしく思つたような次第であります。

また白鳥事件にいたしましても、そういう関係から協力を惜しむというようなことは、私は考えられないように思います。実際面におきましても、最近相当市民の協力を得まして、いろいろな聞込みその他にも便宜を受けております。少し杞憂にすぎるのではないだろうか、かように感じております。

[012]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
そうであればよろしいのですが、またあとで承りますけれども、長野県の田口村の事件等も同様な感じがいたします。

そこで、ついでですから、白鳥事件のその後の捜査状況について、おさしつかえない限りの御報告を願いたいと思います。

[013]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
白鳥事件の捜査はその後着々と進んでおりますが、これは今非常にデリケートな捜査の段階にありますので、ちよつと具体的に申し上げますことはごかんべんを願いたいと考えます。札幌の市警、国警、検察庁一体になりまして、捜査は相当進んでおるということだけ申し上げます。



[092]
日本共産党 田中堯平
国警長官は先ほどの答弁の中で、国民の協力を得なければ警察事務の円滑なる執行もできないというふうな趣旨のことを言つた。それからまた鍛冶委員等からも盛んに言われていることは、北海道の白鳥事件にしても、あるいは長野の事件にしても、地元住民の協力が得られないということをかこつておつた。

そこでお聞きしたいのは、そういうふうに地元住民の大多数が政府の警察行為に対して至つて冷淡である、あるいは反感を持つているという事実があるならば、その原因はどこにあるとお考えですか。

[093]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
私は、国民の全面的な協力を得ておることを感謝しておると申し上げたのであります。





昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会
[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
いわゆる白鳥事件につきましては、只今鋭意捜査中でございまするが、この事件の発生は、今年の1月21日午後7時40分頃でありまして、その場所は札幌市の南六条西17丁目の道路上でございます。被害者は札幌市の中央警察署勤務の警備課長白鳥一雄であります。同人が自転車で帰宅の途中、只今申上げました場所に差しかかつた際にあとから同じく自転車で追尾して来た何者かに突然拳銃で狙撃されまして、左胸部に盲貫銃創を負つて現場で死亡をいたしたのでございます。中央警察署におきましては、事件発生に際しまして直ちに署員の非常招集を行いますると共に、国家地方警察の札幌方面本部に対しまして援助要請をいたしましたので、国警、自警合同の捜査本部を設けまして、以後鋭意捜査を進めて現在に至つておるのであります。

その経過の詳細につきましては只今捜査の過程にありまするので、具体的に申上げますることは差し控えたいと存じまするが、そして又この事件が共産党関係者が敢行した犯罪であるかどうかという点につきましても、只今予断を以て臨むことができないと考えておるのであります。併しながらこの事件後日本共産党札幌委員会の署名入で、この種の暴力行為を是認するような宣伝活動が行われておることは事実なのであります。その一例を挙げますと、御承知のように1月22日附に「見よ天誅遂に下る、自由の凶敵、白鳥市警課長の醜い末路こそ全フアシスト官憲共の落ゆく運命である。」云々というような表題の宣伝ビラを相当撒いたのでございます。その内容の一部を申上げますと「全警察官及その上級者と高田市長よ、諸君の生命とその家族の幸福のために今後一切の民主運動に対する弾圧を即時中止せよ。そして占領軍と反動政府の命令を拒否し日本人のために、市民のために良心ある役人となられよ。決して第二の白鳥となるような行為をするなかれ、白鳥課長のむごい末路を夢にも他人事と思うなかれ。1952年1月22日 日本共産党札幌委員会」というような署名入のビラを相当撒いたのであります。

又事件発生前に、特に昨年12月27日の自由労働者の検挙事件の発生以来、被害者の自宅宛に107通の脅迫状が送達をされております。又12月30日には白鳥課長自宅玄関口の障子に封印をするように「家族を皆殺しにする」という旨の脅迫状が貼られた。その他自宅周囲には多数の脅迫文書が貼られておるのであります。

この事前の脅迫状は被害者宛のもののほかに、高田札幌市長の自宅宛に60通、それから塩谷検事、これは札幌の地検の公安係の検事でありますが、自宅宛に90通出されておるのであります。

なお本件の捜査の過程におきまして、昨年12月19日発生の自由労働者の公務執行妨害並びに傷害事件の被疑者でありまする尾谷豊というのを2月4日札幌市におきまして又本事件発生後の先ほど申しましたアジ・ビラの配布者でありまする吉田哲、これも自由労働者でありますが、これも同じく札幌において暴力行為等処罰に関する法律並びに団体等規正令違反として2月8日検挙せられ取調中であるのであります。

このほかに事件発生後、北海道の検察官憲その他に対しまして相当数の脅迫状めいたものを発送をせられておるのであります。警察官17人、検事4人、その他の者7人に対して脅迫文書或いはビラというようなものが配布せられておるような状況であります。併しながらこういう脅迫状を受けた関係者は何ら意気沮喪することなく、極めて士気旺盛でありまする状況を、私が実際に出張して見て参つて心強く思つているのであります。

先ほども申しましたごとく、この事件はまだ捜査の過程でありまするので、被疑者は果して何者であるか判明をいたしておりません。又捜査過程において浮かび上つております各種いろいろな線がございますけれども、これらは非常にデリケートな関係を持ちまするので、御質問によりましては差支えのない範囲で申上げることができるかと思いますけれども、できるだけ事件の捜査に直接関係いたしまするものは、御説明は差し控えさして頂きたいと思つておるのであります。



[036]
日本社会党(社会民主党) 中田吉雄
斎藤長官にお伺いいたしますが、北海道の白鳥事件ですか、捜査の過程でいろいろのことがあると思うんですが、新聞に発表されました各紙を通じての印象では、やはり背後に共産党員のはつきりした関係があるように出ているんですが、あれは警察当局の発表から出たものではないのですか、この点をお伺いしたいと思うわけであります。



[038]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
白鳥事件或いはこれに類似するような事件の取扱い方でありまするが、これは只今お述べになりました御趣旨の通り又私が先ほど申上げました通りでありまして、又現地におきましても、これが共産党が犯行をしたのであろう、そう見える節があるというような発表は1つもしておらないと私は考えております。全然関係なしという発表もしておりませんが、関係ありという発表もいたしておりません。私はこういう事件はどこまでも真相を真実のままに洗い出すということが最も必要なことだと考えておるのであります。

あらゆる事件をつかまえてそうして反共運動に使うのじやないかという御注意に対しましては、私はさようなやり方は却つて国民を不安に陥れるものであつて、とるべき策ではないと考えております。

むしろこれは共産党の末端におきましては、一時ありましたように、今にも革命が成就するかのごとく、又今日でも北海道の或る一部では明日にもここに共産政権が樹立されるような言動をし、その暁には君らは皆おれらの傘下になるのだからというような、宣伝をする誤まつた者もあるのであります。

そういう手に乗せられるわけでありまするから、今日の段階における実情というものは、本当のままに知らせるということが必要なのじやないか、私は過大に宣伝することも非常に害がある、又過小にするということも害がある。どこまでも真実のままにこれを明らかにするということが必要だと、かように考えておるのでございます。



[045]
日本社会党(社会民主党) 原虎一
先ほど吉川局長とそれから斎藤国警長官のいわゆる反共を利用して云々という質問に対しての答弁は誠に政治的答弁です。情実の政党色彩を一切考えずにやるという御答弁をなされておりますが、先ほど北海道の白鳥事件を調査された御報告を聞いておりますと、あたかも共産党がやつたのだと判定するに都合のいい資料を提供されている。

それで私はお聞きしたいのですが、今中田君も言つておりましたが、我々は反共です。反資本主義であります。併しながら反共なるが故に共産党を如何なる手段を以ても弾圧すればいいというものではない。それは申すまでもなく国民生活の安定ということが前提にされ、確立されて、今言われたスカンジナビア半島におけるところの平和も、私は国民生活の安定に第一条件があると思うのです。武力によつて共産党を抑えつける、処理しているとは判断できないと思うのであります。

そこで反共なるが故に私どもはお聞きするのでありますが、一体白鳥事件にビラが撒かれた、白鳥事件があつた後に共産党の署名入りのビラが撒かれた、こういうことは事実であります。そこまでの調査はなされておりますが、これが共産党のやつたものであるか、誰がしたものであるかということの調査はないのです。あれだけの報告では、これは共産党がやつたと言わざるを得ない、斎藤長官が部下に調べさせた、みずから行つて調べた結果、共産党のビラが撒かれておつた、署名入りのビラが撒かれておつた。この撒いた人間は果して共産党員であつたか、取調はそういうふうになつている、その書いておる者に対する共産党員としての言動を取調べたという報告はないのです。如何にも共産党がやつたらしく、ビラを撒いておつた、それに署名があつたというだけです。

これは昔こういうことがありました。戦争前の労働組合を圧迫した時分に、或る紡績会社は優秀な労務課長をして圧迫をしたから、これは労働組合はできない、そうすると労務課長の仕事がなくなる、だから1、2の工員を煽動して、会社のああいう不当な事実、こういう不正な事実があるとか言つてビラを撒かしたということがたびたびありましたです。

そういうことが私は行われておるとは申しませんよ。併し今斎藤国警長官の報告を聞けば、誠に我々はそういう圧迫を受けた時代の経験から判断いたしまして、調査が物足りないんです。そこで私はこれを一体共産党がどういうビラを撒いたか、その内容は報告はありましたけれども、その個人の過去の経歴等が調べられてあるかどうか、この点をお伺いしたい。調べてなければ又調べてから……。そうして今中田君が言われておるように、そのことを挙げて全くあなたがたは真相を国民に知らしめるということが使命だ、そういうことが信念だと言われておるけれども、私に言わせれば、これは真相はまだ真相でない。私に言わせれば1つの作為を以て当局が発表しておると非難を受けても仕方がないんではないか。要するに逆に共産党から利用されるんじやないか。共産党がやつたと煽動して、そうして軍備拡張の具に供さんとしておるのではないかという懸念を共産党に今更与えるような調査しかしていなんじやないかということを言わざるを得ないということを一応申上げます。事実共産党がどれだけのことをしたのであるか、明確にされたいと思います。

それから特審局長にお伺いしたいのでありますが、これは今日は共産党問題で大分やられたと思いますが、共産党もいけませんが、右翼団体もいけない、右翼暴力団体もいけない。それから最近なかなか右翼暴力団体のビラが出て来ました。こういう問題に対するところの調査というものが今日一向にされていない。これはどういうわけでされないのか。資料がないのか、あれば時間がなくてされないのか。いつされますか。この点を1つお伺いしたいのであります。

[046]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
私が先ほどから申述べておりますように、白鳥事件は共産党がやつたというような印象を与えるような事柄は極力避けておるのであります。従いまして先ほどの御説明におきましても、白鳥事件については真相調査中であり、これは共産党というような予断を持つて臨んでおるものではない。

そこで区切りまして、それから北海道の治安といたしましては、こういうようなビラ、或いは脅迫状が相当出ておる。併しこれについてもそのために士気は沮喪もされていないという事実だけを申上げたのであります。先ほど申上げましたビラを撒いた吉田哲というのを逮捕いしておるのでありまするが、これは自由労務者でありまして、民主青年団体の関係者と認められるのでありますが、このビラは誰が起草しどこで印刷をしたとか、そこまでの調べはまだできておりません。

ただ先ほど申上げませんでしたが、これは私は事件と関係があるという意味で申しておるのではありませんが、翌24日に共産党の札幌地方委員である村上氏が新聞記者団と会見をいたしまして、この事件は共産党がやつたのではない。ないけれども白鳥のような人間は、これは民主自由を抑圧するものであり、こういう人間は国民からこういう制裁を受けるということは当然である。こういうようなことはまだ今後も起り得るであろうということを村上地方委員がはつきりと申しているのであります。ただそれだからそれと事件に関係があるというわけではありませんが、そういう事実がある。そういう事柄はこれもやはり1つの治安の問題であります。暴力を場合によつては肯定をするんだ、我々を抑圧するような者は、我々はやらないか知らんが、民主自由の陣営の者がこういう者をやつつけるのは当然のことであるということをはつきり言つておるということを申上げて置きたいと思うのであります。

ただ先ほどお答えいたしましたように、無用に共産党の脅威を宣伝をするということは今申上げましたように、却つて宣伝の手に乗ることである。我々といたしましては今御心配になると同じ理由によりまして十分その点は心得えておる次第でございます。



[049]
日本社会党(社会民主党) 原虎一
斎藤国警長官の御答弁は、御本人はそういうお気持で最初の報告をされたかは知りませんけれども、私は、速記を御覧になればわかると思います。誰が聞いてもこれは共産党がやつたと判断せざるを得ないような報告をなさつておつたと思います。

もう1つは、この事件で共産党の村上君が白鳥警部のごときは非民主主義者だからやつつけるべきだと言つたというその言葉は、それは嘘じやないと私は判断しますが、それは共産党という本質を御存じですから、いわゆる目的のためには手段を選ばんのでありまして、ギヤングでも人殺しでも目的のためにはやるのであります。そういうことはわかり切つておるのであります。

併しながら私はそうであるからと言つて白鳥事件が如何にも共産党がやつたごとく、確たる証拠なくしてそういうふうに国民に意識付けるごとき報告をされるということは、あなたの最初に答弁された公平無私にやるという、中正を誓つてやるというお言葉とはどうもぴつたり来ない。

だから共産党が、暴力を否定するような共産党は本物ではない、そのことはもうわかり切つているのであります。

併し白鳥事件と共産党との関係が明確にならないのに、共産党のやつたかのごとき印象を与えるような報告をされることは策を得たものではないと思うことを申上げておるわけです。この点だけは考え違いのないように……。あとはあなたの答弁が正しかつたかどうかということは、これは速記を見られればよくわかると思います。





昭和27年02月23日 衆議院 法務委員会
[005]
自由党(自由民主党) 押谷富三
21日の騒乱の関係はことごとく対象を警察官あるいは交番、警察署に置いておるのでありますが、こういう警察を対象とした1つの騒乱は、その以前にかつて行われました北海道の白鳥事件あるいは長野における警察の集団暴行事件、あるいは練馬の巡査殺し事件等に1つの関連を持つておると思うのでありますが、こういう関係について警視総監はどうお考えになつておりますか。

[006]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。現在の階段におきまして北海道の白鳥警部殺害事件並びに印藤巡査の殺害事件等は、私どもは明らかにこれは思想的背景を持つた犯罪であるということが考えられるのであります。

それから今回21日に集団不法行為が行われたのでありますが、この「球根栽培法」の中にもすでに労働者はいろいろな形で敵の武器を持ち出しており、大衆闘争の中でこれを意識的に計画すれば必ずとれることが明らかとなつておる、また札つきの反動警察官等を襲い武器を奪うこともできる、われわれはこれを行わなければならない、こういうことをはつきり言つておるのであります。

そうしてその使用する武器につきましては必ずしも近代的なものでなくともよろしい、大衆の持つている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹やりや簡単につくることもできる武器も使用することができる。特に敵を襲撃するために必要な――敵というのは、これはおそらく警察官を指しておるものと考えられるのでありますが、敵を襲撃するために必要な輸送、軍用自動車のパンク針、手榴弾、爆発物等のような簡単なものはただちに製作することが必要である。かように「球根栽培法」にはいつておるのでありますが、今回の集団暴行事件はこれを地のままに行つておりまして、明らかに国家権力に対する1つの反抗であるというようにその行動の様相から見てはつきり言えるのであります。

何にも罪のない警察官が忠実に警邏をしておる。その1人の若い警察官が警邏さしておる者を、数100名の者が取囲んで打つ、なぐる、あまつさえ武器まで――拳銃まで取上げるということは、これは明らかに権力に対する1つの反抗であると「球根栽培法」にいつておるところの方針をそのままに行つたのではないかというように私は考えるのであります。





昭和27年02月23日 参議院 法務委員会
[089]
日本社会党(社会民主党) 伊藤修
公務御多忙の折から御出席を煩わして恐縮に存じますが、最近の北海道におけるところの警官の射殺事件、或いは練馬におけるところの警察の射殺事件、射殺ですか殺人事件ですか、長野におけるところの警官に対する暴行事件、こういう事案が頻発しておる折から、一昨21日に全国に亘り、東京附近におきましても、いわゆる反植民地デーという名の下にいろいろな暴行行為が頻発しておる。これは曽つての平におけるところのいわゆる地域的な一つの騒擾事件を拡大されたようにも感ぜられるのです。若しこのことが糾明されておらんということになると、今後におけるところの我々の治安に対する対策について重大な一つの問題を提供するのではないかと思います。この際一つ長官が知り得る範囲内において詳細にこれらの一連の問題について御説明を先ずお伺いしたいと思います。

[090]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
只今お尋ねの各事件を通じて全体に亘つて見て、いわゆるどういう治安関係の結論を見付け出すかというお尋ねであつたと考えるのでありますが、札幌の白鳥事件は只今捜査中でございましてあの札幌における当時の前後の状況、或いは日傭労務者、或いは札幌における何と申しまするか、左翼的な考えに立つ社会運動その他が相当活溌であつたことは事実でありまするけれども、これと事件とが直接結び付くものであるかどうか、これは只今捜査中でありまするので、私はあの事件自身を捉えてどうという判断を只今下しますることは、これは却つてどうであるか、むしろ只今あの事件といたしましては地道な証拠による捜査というものを進めて行つたほうがよろしいと、かように考えておるのであります。

又練馬の事件は、犯人が、被疑者が一応検挙せられております。まだ最後の確定段階には至つておりませんが、一連の共謀をして殺人を行なつた。これは新聞等で御承知の通りでございまするが、ほぼその線が明らかになつております。併しこれはあの会社関係の労務者と当該警察官との感情の対立からあそこまで行つたものと見るか、全体の一連の指導に基くものであるか、この確証なかなかちよつと断定しがたいと思つております。

長野県の事件はこれ又捜査中でございます。捜査中ではございまするが、あの事件の性質に鑑みまして、又これは丁度昨日の21日の反植民地闘争デーにおきまして、特に東京その他1、2の個所において見ました今までに余り例を見なかつたような暴力事件、ああいうものが現われて参つたという、これらは先ほど特審局長から説明のありました秘密文書によつていろいろ教育或いは推進せられておりまするいわゆる共産党の軍事方針というものと全然無関係ではなかろうという、私は心証的な判断でありまするが、或いはこれはお前は証拠なしに言うことはけしからんとお叱りを受けるかも知れませんけれども、これは我々の今までの勘といたしましては、きように考えざるを得ない、こう考えておる次第でございます。





昭和27年02月25日 衆議院 行政監察特別委員会
[005]
委員長 内藤隆
次に札幌市警警備課長射殺事件について、派遣委員の報告を聴取することにいたします。篠田弘作君。

[006]
自由党(自由民主党) 篠田弘作
札幌市に起りました白鳥警部殺害事件につきまして、われわれ4名の委員は林衆議院議長の命を受けまして3日間にわたつて札幌において調査いたしました。その結果調査報告書ができ上りましたので、大体5つの項目にわけて御報告いたしたいと思います。

第1は、白鳥警部暗殺事件の概要であります。その第2は、事件発生前の札幌市における警備関係あるいはまたこれに対する日共の活躍の状況、第3は、事件発生後における札幌市の警備関係並びにこれに関連するいろいろな騒擾の状態、第4は、道内他地方の事件発生後の状態、第5は、総括的に日共とこの事件との関連性に対するわれわれ調査委員のいわゆる考察であります。この5つの問題にわけて御報告いたしたいと思います。

第1、白鳥警部暗殺事件の概要を申し上げますと、札幌市中央警察署警備課長、警部白鳥一雄君当年37歳は、本年1月21日午後7時40分ごろ、単身私服、自転車で帰宅の途中、札幌市南六条西17丁目路上で、自転車で追いついた氏名年齢不詳の男に突然背後から、約1メートルぐらいの距離と説明されておりますが、拳銃で狙撃され、左肺上部を貫通して即死しました。現場はバス路線、人家稠密、中央警察署から人家続きで約20丁、犯行の現場付近には2、3名の通行人がありましたが、暗夜のため犯人の人相、着衣等を確認した者はありませんでした。

同警部は昭和10年北海道巡査を拝命し、終戦前は外事係員、終戦後は警備係員として勤務し、昭和23年3月札幌市警の警備課長に就任、今日に至つた人であります。最近まで営業許可事項も担当しておりましたので、この方面の業者とも関係があり、また渉外事項の担当で第三国人との交渉もあつたが、何といつても昨秋来の日共系自由労組員検挙に関し、しばしば過激な脅迫を受けておりました。暗殺の予告も数10通の投書によつて受けておつたのでありまして、思想的背景を持つ計画的犯行と疑うに足る理由が相当濃厚であります。事件が発生いたしますやただちに市警本部長を中心といたしまして、国警の援助を要請し、市警、国警、検察庁が合体となりまして捜査本部を設置、なお小樽、函館、旭川、帯広その他自警の応援も受けまして、約600名を動員し、あらゆる面から刑事、警備、そういう面からもこの捜査を開始したのでありまして、私たちが参りましたときはまだ捜査を続行しておつたのであります。

第2、事件発生前の札幌における警備関係事案の状況につきまして申し上げますと、第1、昭和26年10月17日、札幌市内におきまして「石炭不足は朝鮮戦線に使われる兵器の生産に使用されるからだ。日本人の血と汗の石炭を泥棒する帝国主義者を叩き出せ」というビラを散布した日共党員と思われる氏名不詳の男を逮捕したのであります。同月31日にこれを起訴し、11月28日より大通拘置支所に収容中、この男がハンストを始めました。これと呼応するように日共党員は12月7日まで前後4回にわたつて数名ないし20名ぐらいずつ札幌地方検察庁公安部長塩谷検事を同庁に訪れまして抗議し、執拗に即時釈放を要求しました。この間12月6日午後6時過ぎ塩谷検事の官舎に対しまして、官舎の前の塀、門柱、電柱等に「石炭下さいの弾圧やめろ」あるいは「獄中ハンストを救え日本共産党札電細胞」あるいは「市民を凍死さす殺人検事塩谷を葬れ」等のビラを多数貼付しました。

さらに12月7日婦人党員と思われる者3名が塩谷検事の留守中官舎を訪れ、同検事の夫人にハンスト被告人の即時釈放伝達方を要求いたしまして、居すわる気勢を示し、さらに登庁中の塩谷検事を北大細胞党員青木武雄等約20名の男女が訪れまして、釈放を要求し、拒絶せらるるや大挙して再び同検事宅前に集まり、扉を閉じている同家の門前に居すわり、塩谷検事の帰途を待ち伏せて要求を続け、警察官26名の出動を得て午後8時半ようやく退去いたしました。その当時の写真はこれであります。あとでごらん願います。次に男は12月8日刑務所における栄養剤不足のため拘留を解除されましたが、8日以来同月15日まで同検事官舎に抗議を提出、また脅迫文言を書いたはがき20数枚が郵送されて来たのであります。そのはがきの写しはこの写真であります。

次に尾谷豊の公訴取消要求示威運動、札幌市居住の元憲兵伍長で昭和25年2月シベリア引揚げ後札幌市内三田銃砲火薬店倉庫係を勤めた経歴を持つ自由労務者尾谷豊、大正8年12月3日生れは、昭和26年7月30日渡辺ハルと共謀「米兵を叩き出せ」その他のビラ32枚を張つたため、政令325号違反で8月31日起訴され、当時保釈中でありましたが、11月14日第1回公判が札幌地裁で開廷されることになりました。同日午前9時半ごろ自由労務者15、6名が尾谷を先頭に「俺達の団結で売国奴塩谷の陰謀を叩きつぶせ」等のビラを添付した造花、花輪3個を押し立てて、塩谷検事自宅前を示威行進した後、裁判所玄関前に並べて労働歌を歌い始めましたが、裁判所所員の制止によりまして解散、公判終了後これを持つて市庁におもむき、市長に面会を要求いたしました。これが裁判所前で示威運動をしている写真であります。

その次は札幌職業安定所分室における暴行傷害及び公務執行妨害事件であります。12月19日午前7時過ぎごろ札幌市内札幌職業安定所大通分室前におきまして道庁労働部職業安定課員佐々木一男外2名が労働部の弘報紙「職業安定」に登載するため、自由労務者の就労配置状況の写真を撮影いたしましたところ、警察に通報するものだと言いがかりをつけまして、尾谷豊及び山本武こと澁谷勇、党員中川二三夫の3名が右3名の職員を袋叩きにし、さらに通報を受けまして現場に急行した北一条東派出所菊地努巡査に対し尾谷豊は「お前らの来るところではない」と言つて集合所の表に出して殴打いたしました。菊地巡査は警邏隊本部に報告し、制服員10名出動したところ被疑者3名は逃走、所在不明となつたため公務執行妨害として捜査しておりましたが、尾谷豊を2月3日逮捕いたしまして目下取調中であります。

次に巡査に対する公務執行妨害事件、12月24日午後6時半ごろ、市内豊平三条4丁目付近の電柱に「日本の花嫁をパンパンにするアメ公を叩き出せ」等の反占領軍ビラを貼付中の数名の男を豊平町派出所伊藤文憲巡査以下3名が職務質問を行つたところ、関正夫外2名が同巡査に対して暴行を加え逃走しようといたしましたが、関正夫を逮捕し、さらに同人の取調べによつて共犯者3名も12月27日及び28日逮捕いたしました。

その次は市庁における不退去事件並びにその検挙に対する示威運動、12月27日午後1時ごろ自由労務者栗原義光、北大細胞党員小島正治、札幌診療所細胞党員小林英一等20数名が市庁におもむき市長に面会を求め、代表2名が市長に対し、1、石炭2トンをよこせ、2、労賃を300円にせよ、3、越冬資金5000円を支給せよ、4、年末年始有給休暇とせよ、5、アブレを出すな、の5項目につき要求いたしましたが、約40分面会の後拒否せられましたので、要求が通るまで帰らぬと市長室前の廊下にすわり込み、放歌喧騒をきわめておりました。かつ用意して来たプラカード「恐餓新年」「石炭よこせ」「馬鹿野郎、之で石炭が買えるか」等記したもの3本を持込んで気勢を上げたので、市長より口頭及び文書をもつて庁外への退去を要求いたしましたが、退去いたしません。そこで中央署に通報いたしまして白鳥警部が乗り込み、30分の余裕をもつて退去を命じたのでありますが、それでも退去しなかつたのであります。そこで最後まで居残つた栗原等10名が検挙されたものであります。うち3名は12月31日釈放され、うち7名は1月6名起訴となりました。翌28日、北大講師北大細胞党員太田嘉四夫、生活協同組合理事菱信吉等約30名が中央署並びに検察庁に押しかけまして、10名の検挙を不当であつたとして釈放を要求、引続き翌29日、30日も北大生数名を交えて抗議いたしました。

一方自由労務者党員吉田哲は、28日より10名の即時釈放を叫んで署名運動、資金カンパを行つておりましたが、さらに29日午後10時10分ごろ、塩谷検事官舎付近の板べいに「拘留即時釈放せよ、しないなら命を覚悟せよ、細胞」「国民を弾圧する警官一人一人を葬り去れ、細胞」「モチ代下さいを弾圧した高田、塩谷、白鳥を葬り去れ、細胞」等の墨で書きましたビラ約75枚を貼り、かつれんがの割れたもの5個を表玄関、ガラス戸より投げ込みまして、ガラスを5枚こわして逃走した事件が発生いたしました。その写省はこれであります。

さらに31日午後7時15分ごろ、高田札幌市長公舎に対しまして、中央細胞――この中央というのは札幌の中の中央というのでありますが――名のビラを7枚貼りまして、かつこぶし大の石2個を投げ込み、ガラス、障子等を破壊して逃走した事件が発生いたしました。12月30日、日共札幌委員会名にて「ああ血も涙もない、人非人高田市長、白鳥警備課長、塩谷検事を札幌から葬り去れ」と題する活版刷りビラが市内各所に配布され、この中には「非国民、人非人の高田と白鳥、塩谷に抗議文を送らう」「あなたの出す1枚の葉書は3人の鬼共をふるえ上らせ、悪魔の手から兄弟達をうばえかへします」と記載し、高田市長、白鳥市警警備課長、塩谷検事の住所を列記しているのであります。それはこれであります。爾来27年1月18日ごろまでに引続き郵便による脅迫状が白鳥警部あて105通くらい、高田市長あて72通、塩谷検事あて61通送付されましたが、その内容は左記の通りで、生命に対するテロ行為を通告したものが多数含まれているのであります。「祝、白鳥警備課長御家族一同の死、但しこの御通知は数日早くつくことになるかもしれません。」、はがきは黒わくであります。「売国奴、人非人、鬼、畜生!!どんな言葉を使つてもあきたらない程憎い白鳥、外人の殺人、放火、横暴にはヘラヘラして罪のない日本人を何百何千と牢屋にぶちこんだ貴様の罪状は決して私は忘れない。必らず復讐する。その時期はもう近いんだ。12月27日餅と石炭を要求した自由労働者を即時釈放せよ。」また「12月27日「モチ代を下さい」と市役所におしかけた俺達の兄弟をよくもつかまへたな。その御礼には今度は貴様の首をもらうから心得て置け。これは空言や「オドシ」ではないんだ。我々にはその用意は万端ととのつている。気の毒だが貴様の可感い可愛い、子供も殺してしまふからな、それがおそろしかつたらただちに釈放せよ。貴様が味方と思つてゐるものも、我々の手が入つてゐることを注意しておく」。その次は「禁賀新年」禁は禁ずるの禁であります。 (笑声) 「早いとこおれたちの兄弟達を釈放しねえとどてつばらに一発おみまいするぞ。まあ今年は十分気をつけたまえ、命をなくさぬやうに」。塩谷検事あて、札幌首尾取三署名、この写真がこれであります。1月4日午後8時ごろ、労働者風体の男4人、白鳥警備課長公舎を訪れ、ガリ版刷りビラを差出し逃走しました。このビラの内容には「魂まで占領者に売り、日本人を弾圧する亡国高田市政を打倒しよう。売国奴、人殺し、鬼の高田、白鳥、塩谷を実力をもつて葬らう!」等の記載があります。

「新年に当り警察官諸官に宣言す」と題する文書の配布。27年1月4日、5日「新年に当り警察官諸君に宣言す」と題し、「我々の行手を遮るものは何人といえども容赦はしない。準備はできた。売国奴国民の敵功罪表は整備された。高田、白鳥、堀内、塩谷、管井、和田、岩渕、その他弾圧を積極的にやつた外勤の巡査、及び警備課の諸君……警察官諸君、我々はこれらの敵、新しい敵を国民の名において一人一人葬り去ることを宣言する」等とテロ行為の実行を宣言した脅迫文書を「警官の友」(日共の対警工作用新聞型、宣伝紙)とともに白鳥警備課長、北田中央署長、市内各派出所等に郵送いたしました。これはその宣伝文の写しであります。

第3、事件発生後の札幌における警備関係であります。日共札幌委員会名義のアジビラが撒布せられました。1月23日早朝から27日までの間市内各所で1月22日付――これは白鳥事件が21日であります。日本共産党札幌委員会の名義で「見よ天誅訣遂に下る」と題した活版刷りのビラが多数配布されました。内容は白鳥警備課長の暗殺を是認し、「白鳥打倒の勇敢な行動を孤立させることなく、労働者を先頭に全市民が結束し団結して不屈の組織をつくり自由と平和のために嵐のような闘いをまき起そう」、こういう同種行為を助長するような記載があります。この印刷物は活版所で約1万枚刷られたと見られておりまして、市内各所に数1000枚撒布せられております。撒布者の中には北大生も参加しております。これが1万枚も刷られているということから、自由労働者の行為ではないというふうに判断されるのであります。

次に日共北海道地方委員会の声明発表並びに抗議。24日午後2時日共北海道地方委員会の実質的指導者党員村上由は道庁新聞記者クラブで記者団40名に対し、日本共産党北海道地方委員会の名で声明を行つております。それは口頭で発表いたしましたが、NHKの録音にとられておりますので、同君の発表は証拠が残つております。日共は個人テロは決して行わぬといいながら、白鳥の今日までの行動はフアッシヨ的弾圧に終始して、この野獣のごとき行動に対しては国民の自由と独立の立場から実力をもつて闘うべきで、かく闘うことは愛国的行動というべきであると暗殺テロ行為を賞揚し、しかもフアッシヨ政策が強行される限り、国民のそれに対する抵抗運動は一層強まるであろうと主張いたしております。さらに日共札幌委員会は25日午前11時30分党員岡垣千一郎外1名を札幌市警に派遣し、白鳥事件の捜査に便乗した一切の民主団体の弾圧をやめよと抗議し、また市内各派出所警察官にも同様もより細胞員が押しかけ執拗に抗議が行われております。この村上由君の声明の際に注目すべき事柄は、記者団のある人から、塩谷検事あるいは白鳥警部に対するあなた方の抵抗というものは、あるいはあなた方の言う通り、白鳥も憎いし、塩谷も憎いから、あなた方の言うような理由は成り立つかもしれないが、塩谷検事の家にほうり込まれたこぶし大の石が小さな赤ん坊の寝ている枕元に落ちているが、あの石が少しそれておれば赤ん坊は死んでおるはずだ。これに対しても、あなた方はやはり赤ん坊を殺してまでもこれを人権擁護というかという質問に対しまして、村上由君はちよつと考えた結果、それは死んでおらないのだから、死んでからでなければ答弁はできないということを申しておるのであります。

警察官に対する捜査非協力アジ、1月25日午前中、市内30箇所の各派出所に警官有志の署名のある葉書で、今回の捜査に協力するのはやめようと捜査妨害の目的と見らるる内容文書が送付されたのであります。これも写真にとつて来ております。

第4、道内他地方の事件発生後の動向、白鳥事件発生しまするや道内都市工場鉱山等においてビラ伝単による宣伝、検事、警察官に対する脅迫状の郵送等が行われましたが、おもなるものは次の通りであります。

白鳥警部暗殺事件の発生した翌1月22日夜釧路市春採大平洋炭鉱社宅の板塀に春採細胞名で駐在警察3名、炭鉱職員3名の名をあげて、白鳥の死は当然、われわれの敵はそばにもいる、われわれはこれを葬らなければならないとの脅迫ビラを貼布し、翌23日同趣旨のガリ版印刷物を本人あて郵送した事件がありました。

1月22日午前6時ごろ夕張二鉱安全灯前で夕張地区委員党員戸田重雄、武藤至誠外札幌から入山したと思われる氏名不詳者が、白鳥課長の射殺事件についての見解はこうだと題し、白鳥がやられたのは偶然のでき事ではない、警察の特高化に札幌の市民が全道民を代表して、道民の要求している平和と独立のがんになつている1つのじやまものを葬り去つたのである等の内容のガリ版刷りのビラを入坑せんとする者に配つたのであります。

1月28日午前6時ころ、三菱美唄炭鉱滝の沢撰炭機付近外2箇所で入坑せんとする一番方の坑夫に対し、党員宍戸定雄が「日本国民の自由を奪い、戦争屋に奉仕する売国奴の末路あわれ」と題し、「白鳥事件は吉田の反国民売国政策に対する国民の反撃である。白鳥の運命のようなことは札幌だけではない。第二、第三の白鳥が出ぬとたれが保障できようか」等の内容のガリ版ビラを配布した。

1月29日夕刻、幌内炭山養老二又路の線路上に、ガリ刷り「日本国民の自由の敵白鳥警備課長の末路こそ……」というビラ600枚撒布、なお炭鉱鈴木労務係長外数名三笠町警、鳥居警部補などを激しく弾劾しておるのであります。

旭川職業安定所職員に対する傷害事件、1月29日午後5時30分ころ、旭川公共職業安定所紹介係長橋本事務官が自宅への帰途、忠別川忠別橋上におきまして3名の暴漢に襲われ、背後から棒状のような兇器でなぐられ、卒倒したところを約1丈の橋下に投げ飛ばされた。幸いこれは生命に別状はなかつたのでありますが、この被疑者として自由労務者党員山口政一が2月1日に検挙されております。

帯広市におきまする巡査傷害事件、1月29日午後11時40分ごろ、帯広市東二条巡査派出所において勤務中の鈴木巡査は、休憩所で仮眠中、何者かに長さ4尺太さ1寸くらいの棍棒で殴打され、額に6センチくらいの裂傷を負い、血が目に入り目先が見えなくなつた間に被疑者は逃走いたしております。

第5、日共との関連性に対する考察。日共第五全協の綱領とこれに基く指針。前述の白鳥警部暗殺事件の前後に発生した各種事案はいずれも日共に関係するものであり、昨年10月行われた日共第五回全国協議会において、採択された新綱領並びにこれに基く指針「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」と題するものの具体的実践の観があるのであります。すなわち日共第五全協の綱領はその戦略目標を反米、民族解放に集中し「民族解放、民主政府が妨害なしに平和的方法で自然に生れると考えたり、あるいは反動的な吉田政府が新しい民主政府に自分の地位を譲るために、抵抗しないでみずから進んで政権を投げ出すと考えるのは重大な誤りである」とし、「彼らは武装しており、それによつて自分を守つているだけでなく、われわれを滅ぼそうとしているのである。これとの闘いには敵の武装力から味方を守り、敵を倒す手段が必要である。この手段はわれわれが軍事組織をつくり、武装し、行動する以外にない。」と、軍事組織と武装行動の必要を強調しております。さらに「われわれの軍事組織は敵の部隊や売国奴たちを襲撃し、それを打破つたり、軍事基地や軍需品倉庫、武器、施設、車両などを襲い、破壊したり爆発させたりするものである」と武力闘争を肯定し、「占領制度を除くためには、われわれはあらゆる手段をとらなければならないし、またそれは許されるのである。この場合には通常の支配者の道徳は適用されないのであり、それに影響されてはならないのである」と手段を選ばざる直接行動を是認し、現在の尖鋭化せる情勢では、「われわれはこの直接行動を意識的、計画的に組織するとともに、大衆の自発的な行動に対しても、進んでこれに協力し、指導し、軍事組織の行動と結合させて行かなければならない」と直接行動と大衆との結合、パルチザン活動への進展を指令しております。同時に反面治安機関等に対する内部工作の必要性をも高調し「敵の武装の中で最も重要なものは、アメリカ占領軍と日本の軍隊及び警察である、内部工作の基本的方針はすべての工作と同じように、彼らの正しい政治的、経済的要求を取上げて売国的な幹部に対する闘争を組織するとともに、階級的、政治的自覚を高めて、国民の側に立ち、アメリカ帝国主義と吉田政府に対する闘いに参加させることにある」と従来の対警工作の是正を行い、内部工作の方法を指示するとともに「敵にいかに大きな打撃を与えても、国民に犠牲をしいたり、国民の支持と信頼を失う行動は軍事的な敗北と考える。それゆえに敵の部隊や売国奴に対する襲撃は、われわれに敵対する明白なものに限られる。」と個人攻撃を是認し、かつその目標を明らかにしております。

次に綱領及び指針の実践。以上の綱領指針と前述の警備関係事件及び道内他地方の動向とを照合考察いたしますると、その間一連の関係が察知せられるのであります。すなわち「石炭の不足は朝鮮戦線に使われる兵器の生産に使用されるからだ」という反米ビラ、あるいは「日本の花嫁をパンパンにするアメリカ人兵を追い出せ」というような反米運動、そういうものの宣伝から、さらに日雇い労務者の越年闘争、拘留犠牲者の釈放運動に展開、同時に治安機関に対する抵抗闘争運動は、一面警察官の階級性の呼びかけ――ということは下級警察官に呼びかけまして、上級警察官との間を離反させる。そういう行動、そういうものから具体的なテロ行為の暗示を含む脅迫にまで発展し、その間の宣伝の内容、運動の方法をしさいに検討すると、まさに新綱領並びに指針の忠実なる実践と判断せられるのであります。

次に対治安機関抵抗闘争。特に治安機関に対する抵抗闘争に対しましては、昨年9月13日の中央連絡に基きまして、日共北海道地方委員会は10月23日下部機関に対し、中央並びに地方機関の15名の個人の住所氏名を記し「帝国主義者の走狗として個人的にも糺弾と抗議のため、投書、はがき、電話を集中し、住宅の周囲にビラをはりめぐらす等、その職と居住にとどまることができぬくらいに攻撃を集中すること」との連絡を発しておりますが、その中で警備課長白鳥一雄は、「白鳥は特高上りで共産党に対し最も悪辣である」と付記し、また「北海道においては悪質な村巡査に至るまで村八分を実行し、主婦や子供を仲間はずれにするまで徹底的にビラ伝単で攻撃を加えられたい」と指令いたしておるのであります。その指令の写しはこれであります。

さらに日共非合法機関紙と目せられる球根栽培法第23号、1951年11月22日付では「急速にフアツシヨ化した警察力に対し、フアツシヨ化せざるを得なくなつている本質を常に見誤ることなく対警工作を発展させねばならない」と前提し、従来日共が「警察の動静をつかみ情報を入手することによつてのみ味方の前進活動を有利にしようとしていたことは誤まりであつた」と自己批判した後「武装力を正面から攻撃し、内部へ混乱を起させるとともに、他方内部に民主組織を拡大する活動を通じて、内外から彼らの抵抗力を弱めて行くところにこそ目的がある」と新対警戦術を詳細に指令いたしております。また「弾圧後の抗議闘争も確かに必要だが、さらに徹底化しようとすれば、家庭における警官をねらい、彼らが精神的にいたたまらなくなるまで計画的な工作をする必要がある」とし、ビラ、はがきなどによる脅迫戦術と「敵の武装弾圧を実力で撃破する準備と行動」の必要を述べ、また今までの経験から見て、「金筋をねらつた方が効果的だ、内部にも外部にも反響がある」と効果の点にまで触れ「愛国者を敵の手に売り渡す悪質売国分子に対する非妥協的闘争はきわめて重要だ。五全協の軍事方針はこれら売国分子を襲撃する必要について述べている」ときわめて不穏当恐るべき警察工作の方法について指令いたしております。この指令が現地末端の日共党員を刺激したことは想像にかたくないのであります。

従つて日共はいかなる声明を行い、また白鳥事件の犯人が日共関係以外のいかなる線から出ましても、かかる事態、雰囲気を醸成した政治上、社会上、道徳上の責任は否定できないと考えられるのであります。

現に日共北海道地方委員会は「日共は個人的テロは決して行わぬ」と前提しながら、「今回の白鳥事件は全国的な抵抗的運動の1つの現われと見るべきである」と暴力を肯定し、さらに「かく闘うことは愛国的行動である」と直接行動を賞揚是認しているのであります。白鳥事件前後の札幌における日共の動きは、新綱領によつて一切の闘争を暴力闘争に向け、ひたすら驀進する日本共産党の本体を現わしたものと断定せざるを得ないのであります。

白鳥事件は必ず日共の煽動あるいは日共分子によつて起つたという断定を下すことに、調査委員は意見の一致を見た次第であります。

右御報告申し上げます。(拍手)





昭和27年03月06日 衆議院 運輸委員会
[093]
自由党(自由民主党) 山崎岩男
私は北海道におけるところの白鳥警部暗殺事件、あるいはまたこのごろ東京都内にありました印藤巡査の謀殺事件、こういう一連の血なまぐさいところの事件というものは、いわゆる共産党の五全協の指令に基くところの暴力革命の第一歩であると私は考えております。

そこでこれはなまなましい事実である本日の新聞紙上でありますから、総裁も多分お読みになつたと思うのでありますが、蒲田事件の全貌を分解して見ますと、バルチザン的戦術を用いましたところの、日共暴力革命の第一歩であると新聞は報道している。これは本日の新聞紙上でありますから、おそらく総裁もお読みになつたと思うのであります。

日共に軍事組織を持つている、その1つはどうだ。これはここにいる江崎委員はさだめし心の中ではかようかくかくと思つていることであろうと思うのでありますが、まず最高軍事委員会なるものを設けている。その下に地方軍事委員会なるものを置き、地区軍事委員会なるものがその下に配属されておりまして、その下には中核自衛隊というものがある。その中核自衛隊の中には抵抗自衛組織というものがありまして、これがただいまいろいろな問題を起しているところの中核になつているのであります。そうしてその下にはわれわれ8000万同胞をねらい討ちをかけます人民軍というものが置かれている。このように報道されているのであります。

そこで私は北海道の治安の状況につきまして、先ほど法務総裁に御質問を申し上げましたところが、今度の震災によりまして北海道の治安というものは、別段これという騒擾を発見することがない、まことに平穏無事であるという御答弁を承りましたので、胸をなでおろしたような次第であります。しかしながら日共は北海道にその本部を移すのだというようなことまでも豪語している。そうして徳田球一やなんぞがただいま逃げおおせまして、一体どこに隠れているか。

私は北海道こそ最も怪しいところであると考えているのであります。北海道にはあまたの炭鉱がある。その炭鉱にはダイナマイトが多数ある。また室蘭には製鋼所がある。製鋼所を押え、炭鉱から持つて参りましたダイナマイトに鉄片を与えて来たならば、ただちにこれは手榴弾になる。こういうようなものが一体どこをねらうかというと、まず北海道と本州とのつながりである連絡船をねらう。この点に対しまして総裁は、そういうような心配がないと御判断することができるかどうか、その点ひとつ承りたい。

[094]
説明員(日本国有鉄道総裁) 長崎惣之助
そういうことがあるかないかの判断等につきましては、私はきわめてしろうとでございまして、鉄道屋ではございますが、そういう治安の問題ということになると私何も経験ございませんが、その点は先ほど来申しましたように船と汽車とのつなぎ合せというところは、非常に弱い地点でございます。これは輸送上から申しましてもそうでございます。でありますからさような危険のないように十分な注意をいたして参るよう、私はかねがね指令はいたしてございます。





昭和27年03月19日 参議院 予算委員会
[002]
自由党(自由民主党) 左藤義詮
総理大臣にお尋ねすべきことでありますが、お見えになりませんので、取りあえず木村総裁にお尋ねをいたしますが、先日から自衛力の漸増のことがいろいろ問題なつているのも、結局は果して本当にそういう必要があるかないか、国内の治安というものが心配する必要がないものであるかどうか、かような私は認識の程度よつていろいろ議論が出ると思うのでありますが、私どもは現在のこの情勢が必らずしも楽観を許さない、特に極右極左分子の暴力行為というものか瀕々として繰返されているのでありまして、而もそれに対して殆んどその検挙がなされていない。国民としては非常な不安を持つておるわけでありまして、特に三鷹事件とか、松川事件或いは札幌の白鳥事件、長野の事件というような非常な兇悪なことが繰返されておる。

殊に白鳥事件のごとき、日本共産党の札幌委員会の名義でビラが撒かれておる。本会議でも質問がありましたが、その「見よ、天誅ついに下る。自由の強敵白鳥課長の醜い末路こそ、全フアツシスト官憲の陥り行く運命である。全官憲は白鳥となるような行為をするなかれ。白鳥のむごい末路を夢にも人ごとと思うなかれ」、かような殺人者を愛国者とほめる、これはもう主義の如何にかかわらず、いわゆるヒユーマニズムの敵である、こういうような暴力によるテロ行為を若し是認するような暴力政党があるとしまするならば、果してこれを公党として許して行かれるおつもりであるか、何らかの確証が上つた際には、これははつきり非合法化するだけの覚悟を持つておいでになるか、この白鳥事件後のいろいろな宣伝工作に関する反響を本部に報告しろ、こういう秘密指令を出したというような形跡も伺われるのでありますが、若し私は共産党が否定されるように、これが事実でないと、自分たちには関係のない捏造だと言われるならば、なぜそれをはつきりと取消されないか、或いは日本共産党の名前によつて全国の党員に、一切暴力行為はしてはいけないということを私は指令されたいと思う。

クレムリンから指令がありましたら、忽ちにして恐懼改心して自己清算をするくらい非常に統制のとれた党のはずであります。私は若し私の今申上げたようなことが事実でないとするならば、はつきりそれは天下に取消しをし、又一切そういう合法政党として疑われるようなことをしないと私ははつきり指令されたらいいと思うのでありまして、さようなこともないので、国民としては非常な疑いを持ち、又不安を持つておる。

若し今後かようなことが繰返されて、而もこれが日本共産党と何らかの関係があるということがはつきりいたしました場合には、これをヒユーマニズムの敵として、或いは私は国家再建に非常な害を流すものとして相当の処置をおとりになる覚悟があるかどうか、先ずその点を法務総裁に伺つておきます。

[003]
法務総裁 木村篤太郎
お答えいたします。危険分子が相当活躍しておるということは事実であります。只今御指摘になりました白鳥事件におきましても、相当過激な文書が頒布されております。又「内外評論」とか、或いは「パチンコ必勝法」とか、或いは「球根栽培法」とかいうような名の下に雑誌が相当数頒布されております。その内容を見ますると、実に戦慄すべきようなことが書かれておるのであります。その他いろいろな面で宣伝文書が頒布されておるという事実は左藤委員も御承知の通りであります。又実際テロ行為も相当数行われておること、これ又事実であります。誠に遺憾と存じます。民主平和国家を建設するという途上におきまして、かようなテロ行為が行われるということは、何としても我々はこれに対処して行かなければならない。治安確保の意味から申しましても、これらの行為の絶滅を期しなければならんと考えております。

併しながらこれらの過激な冊子の領布及びテロ行為が果して日本共産党と連絡があり、又その指導の下になされたものであるかということの確証は今挙つておりません。果してこれがその指導の下に行われておると仮定いたしますると、これは容易ならんことであると私は考えておる。各方面において、これが如何なるものの手において、或いは又如何なる団体の手においてかようなものが頒布され、又テロ行為が指導されておるかということについての実証を掴むべく、当局においては慎重に又果敢にこれをやつておることを申上げたいのであります。併しながら前申上げました通り、只今のところでは確証が挙つておりません。確証が挙りましたなら、我々は平和民主主義国家建設の途上におきまして、かような行為は許すべからざることでありますから、相当な処置はなさなければならんということの覚悟は持つておる次第であります。





昭和27年03月27日 衆議院 本会議
[005]
改進党 小川半次
私は、最近頻発する派出所あるいは税務署襲撃事件について、法務総裁並びにこれに関係ある各大臣にお尋ねしたいのであります。

北海道では白鳥警部が射殺され、東京では印藤巡査が惨殺され、長野県においては数名の警官が集団暴行を加えられた上に短銃を強奪されたという恐るべき事犯が起つて以来、各地において警察官に対する集団暴行や派出所の襲撃、あるいは鶴見、川崎、横須賀等を初め各地の税務署の破壊等が頻発して、国民の不安をつのらしておるのであります。

すでに伝えられておるごとく、この悪質な破壊的行動を煽動する最も根拠的なものは、日共の非合法機関紙と目されている球根栽培法32号の示すところにあると思うのであります。たとえば、その内容の一部には、警官の一人々々を居住地において各個に撃破して行くことであるとか、あるいは家庭における警察官を包囲し、彼らをして番犬であることにいたたまれなきまでに追い込んで行く意識的、計画的大衆工作が重要であるというような意味で煽動しておるのであります。

われわれの想像するところによりますと、おそらく今日までに発生した事犯は、ほんの初歩的なモデル・ケースにすぎないのであつて、今後はさらに大規模の集団的暴力行為が執拗に繰返されると思うのであります。これがため、警察官を萎縮せしめ、司法権を睡眠せしめ、国家の権力は無視され、やがて無政府状態にまで追い込まれて行くのではないかという恐るべき不安感が国民の間に流れていることを、政府は見のがしてはならぬのであります。

私は、このたび京都において行われた弾圧法粉碎総決起大会並びにデモ行進中の情景を見て、日共を背景とする集団暴行が今後さらに悪質化して来るのではないかという印象を強くしたのであります。実は京都では、今から1箇月前の2月23日にもデモ隊の集団暴行事件が発生し、3箇所の交番所と2箇所の税務署が襲撃され、その際目つぶし用のパチンコ玉、灰のつぶてを用いて、多数の警察官が傷害を受けたのであります。

この恐怖と戦慄のいまださめない1箇月後の今日、再びさらに悪質な集団暴行がデモ隊によつて行われたのであつて、しかも今回の場合は、単に警察官のみに対する暴行ではなく、一般民家に対しても、この家は反動の家だと称して破壊し、さらに報道の任にあつたところの京都新聞社の山形、井上両記者、大阪新聞の藤本記者らが集団暴行を加えられ、山形記者のごときは目下生命が案ぜられているという状態であつてわれわれは今回の事犯を単なるデモ騒ぎの余波として片づけるわけには行かないのであります。(拍手)

この事件は、労働組合総評議会に日共が合流したものであつて、暴力行為は主として日共党員によつてなされたということが、大体明らかになつておるのであります。(拍手)

われわれが今回の事件を特に重視するのは、報道関係者に対する暴行であります。民主主義の基礎に言論、報道の自由が存在することは、あらためて言うまでもないところであつて、報道の自由を奪うことは、国民の自由を奪うことであり、しかも多数が暴力をもつて取材中の新聞記者に暴行傷害を加えたことは、自由と民主主義を破壊するものであつて、もはや正気のさたとは言えないのであります。(拍手)

彼らの表面唱えるところは自由や解放などと申しておりますが、一歩裏にまわれば、暴力、フアツシヨにみずから道を開いているといわねばならぬのであります。わが国の集団的行動においては、諸外国に見られないような脅迫、侮辱、暴行、財産破壊等が発生するのであつて、今回の事件を見ましても、交通機関を妨げ、交番所を襲い、民家や自動車に投石するという悪質な行為であつて、これが労働運動の延長ででもあるかのごとく考えておる一部分子の行動は、昔の百姓のむしろ旗一揆にも劣る無統制、無秩序を暴露するものであつてわれわれはそのすべてを軽蔑するものでありますが、特に報道機関の取材を野蛮な暴行によつて妨害した事実に対しては、自由と文明の名において断固として容認し得ぬところであります。(拍手[その通り」)

以上、白鳥事件あるいは派出所襲撃事件、税務署破壊、報道関係者に対する暴行傷害事件は、すべて一連の関連があると思われるのであつて、今後さらに大規模の集団暴力が予想されるとき、政府においていかなる対策があるか、また白鳥事件や、その後頻発した暴力事件の結末が一体どうなつておるのか、国民はその結果を知りたいと思つているのであつて、この際明らかにしていただきたいのであります。また今回の京都の例を見ましても、警察官が萎縮してしまつて、報道記者が暴行されている現場を目撃しておりながら、それをとどめ得ずして傍観していたという事態も生じたのであつて、こうしたことは、今後の治安上にも影響あることと思いますので、こういう問題についても政府の態度を明らかにしておかなけおばならないと思うのであります。

私は、この機会に文部大臣にお尋ねしたいのであります。最近、労働組合のデモ隊の中に、高等学校生徒の参加が非常に多くなつて来たのであります。京都の例を見ましても、デモ隊の暴行者の中に、しばしば高等学校の生徒が含まれているのであります。逮捕された、ある高校生の手記によりますると、某党の幹部から、君たちは未成年者であるから、事件を犯して逮捕されても寛大で、少年として特別な保護を受けるし、また未成年者であるから新聞にも本名が出ない、たいてい仮名になる、だから恥にはならないから大いにあばれてくれと煽動されたということであります。

思想的に未完成であり、すべて一本立ちのできない高校生が、労働組合の集団行動に加わつて、はたしていいものであるかどうか。米国においては、未成年者がこうした種類の行動に参加することは禁じられているのでありますが、日本においてはいかなる解釈をとつておられるのか、この機会に明らかにしていただきたいのであります。

次に労働大臣にお尋ねします。聞くところによりますれば、本年のメーデーには各所に暴行事件が発生するのではないかとうわさされているのであります。われわれは、労働組合の健全な発展を祈るがために、秩序あるメーデーの行われることを望むものであります。最近、一部尖鋭分子のため、ややもすれば暴力闘争を主とする傾向に労働組合がなりつつあることは、まつたく遺憾なことであつて、権利とともに義務を、自己とともに他人を、不規律よりも秩序を尊ぶところの労働組合が生れることによつて、労働組合がその方向に進むことによつて、日本の産業の発展は労働組合の発展とともになし遂げられると私は思うものであります。(拍手)

このときにおいて、もはや1箇月後に迫るところのメーデーに対して、うわさされるところのこれらの問題に対して、政府は今のうちから何らかの方法を講じておかなければならぬと思うのであります。すなわち、労働組合の幹部とともに労働大臣が懇談して、本年のメーデーを秩序あるメーデーに持つて行かなければならぬと思うのでありまして、これらの点についても労働大臣の意見を承りたいのであります。

以上、私の緊急質問を終ります。(拍手)

[006]
法務総裁・行政管理庁長官 木村篤太郎
お答えいたします。

最近各所に暴力行為が行われることは、まことに遺憾であります。白鳥事件といい、印藤事件といい、かような暴力行為というものは、平和民主国家建設途上において許さるべきでないことはもちろんであります。ことに最近におきまする税務署襲撃事件、これはわれわれ最も重大視しておるのであります。

しかして、2月23日の京都騒擾事件、これにつきましても、われわれは、特審局、国警に、あらかじめ、左翼矯激なる破壊活動分子がある種の計画をしておるという情報が入りまして、京都市警当局に対して、これらの情報を伝えて、それに対処すべきことを要望しておつたのであります。従つて、市警におきましても、相当の警官を配置しまして、これに万全の策を講じておつたのでありまするが、たまたまかようなことになつたということは、まことに残念であります。

ことに労働組合が正常なる労働運動をやる途上において、一部の危険なる分子がこれを利用して、かようなことが起つたということについては、私はまことに遺憾に思つております。ことに学生がデモ行進に参加して、そうして極端なる破壊活動に出たということは、まことに遺憾に存ずる次第であります。そこで私が要望したいのは、労働組合が、かような破壊活動分子に利用されないということであります。われわれは労働組合の健全なる発達をこいねがつておるのであります。おそらく将来においては、さようなことはなかろうと思いますが、くれぐれもさような一部の破壊分子に利用されないようにということを、この機会に特にこいねがう次第であります。また学生については、ことに教育者に、これらの点について十分の反省をいただきたいと私は考えております。

そこで、これに対する対策いかんという問題でありますが、私は特審局、国警、自警、検察庁が互いに緊密な連絡をとりまして、あらかじめかようなことの起らないように、情報を十分に收集いたしまして、万一過激なことが起つたときには、断固としてこれを取締るという方針を持つておるのであります。ことに、この機会に申し上げたいのは、自警がいかにも勢力が薄弱であるということであります。予算の面から申しましても、人員の面から申しましても、はたして将来かような騒擾事件について十分対処できるかどうかということを苦慮しておるのであります。これにつきましては、各位の十分なる御研究をお願いしたいと考えております。私は責任を持つてこれらの点について、将来の機構の改革に当りたいと考えております。ことに国民諸君に対しましては、ぜひともこの左翼破壊分子の将来の活動に対して十分なる警戒を持つて、そうしてわれわれとともに平和国家をつくるように、将来の努力をこいねがいたいと思うのであります。(拍手)

[007]
文部大臣 天野貞祐
学生が一般の労働運動に参加することは、非常に好ましくないと思つております。ことに高等学校生に至つては、それは非常によくないことだと自分は考えております。しかし、過去のメーデー等に高等学校生が参加したということはまだ聞いておりませんが、今後高等学校生につきましては、教育委員会等にも連絡をし、また大学生につきましては、大学の学長に連絡をして、十分そういう点について警戒をし、またそういうことの起らないようにいたす考えでございます。(拍手)

[008]
厚生大臣・労働大臣 吉武恵市
お答えいたします。

最近における暴力行為につきましては、断じて許すべからざるものでございまして私どもは正常な労働組合運動は決して抑圧する考えはございませんが、限界を越えた行動に対しましては、法務総裁のお話のごとく、断固これを取締りたいと思います。

京都事件につきましては、総評の名のもとに決起大会が行われたのでありまするが、そのうちに、一部日雇い労務者の中の左翼分子の蠢動があつたようであります。

来るべきメーデーについてでありますが、今日メーデーの計画については、総同盟及び総評の幹部とも寄り寄り相談をいたしております。両方とも、幹部におきましては、御承知のごとく、今日は大体正常なる組合運動の線に沿つておりまするので、このメーデーにおいて左翼分子の蠢動なからしむるべく協議を進めておる次第であります。(拍手)





昭和27年04月21日 衆議院 行政監察特別委員会
[012]
自由党(自由民主党) 田渕光一
去る3月の27日、本会議におきまして、改進党の小川半次君より緊急質問があつたのであります。すなわち2月23日、3月20日に関連いたしまして京都が無警察状態であるというような緊急質問が出たのであります。翌28日の当委員会におきまして、この問題を調査の対象に取上げまして、治安行政の監察に京都事件の調査団が決定いたしたのであります。ちようど本国会が4月4日から9日まで自然休会に入りましたので、この機会を利用いたしまして、調査団は4月5日東京を出発、6、7、8の3日間にわたしまして、このいわゆる京都事件を調査いたして参つたのであります。派遣委員は、自由党所属野村議員、押谷議員と本員、改進党の高倉議員、社会党の井上議員の一行5名をもつて調査をいたして参りました。以上大要その御報告をいたします。

(中略)

1つの軍事行動としての計画性があるとき、みずから襲撃にあたつても軍事方針に従つた選定がなされる。すなわち襲撃派出所の選定には、
1、最も反動的、売国的警官のいる派出所。
2、党の影響力の強い地域の駐在所、派出所。
3、本部、署等大権力機関の所在地は避けること。
4、攻撃後、天誅下る等の宣伝を行うようビラ等を準備しておくこと。
これは白鳥事件ではつきりいたしております。白鳥事件では、やると同時に「天誅遂に下る」というビラを張つております。襲撃された個所は、この選定の条件にかなつた所であり、それが計画通りに実行されて騒擾事件となつたものであります。3・20事件の場合は、2・23事件が反植民地闘争を主眼としていたことよりさらに前進して、広汎な大衆動員と遊撃戦をねらつたものといえましよう。

(中略)

次に監察の結果を述べます。2・23、3・20両事件の背後関係は、すでに明らかになつたごとく、いずれも日本共産党が昨年10月、第五回全国協議会で武力革命を指令して以来、東京練馬区の印藤巡査撲殺事件を初め、北海道札幌市における白鳥警部射殺事件、引続き長野県南佐久郡田口村の数名の警官に対する暴行事件、2月21日の全国的に起つた反植民地闘争デーの襲撃事件、さらに3・1記念日をめぐる各所の襲撃暴行事件等、全国的に続発している対警察その他の機関に対する軍事行動の現われであると考えられます。

すなわち2・23事件は京都における軍事組織の立遅れを克服しようとして強行手段に出たものであると見られるのであります。2・23のため特別に行動隊が組織され、計画された通り警察その他を襲撃した事件であり、12月越年闘争の失敗から大衆闘争を高めようと動員し、2・21における全国の反植民地デーの闘争、特にその2日前の東京におけるかの蒲田事件に範をとつたものと見るのであります。

3・20事件は、2・23事件の遊撃戦の経験を生かし、総評の撹乱と総評に対する労働大衆の離反工作をはかり、大会を通じて主導権を奪取しようとはかつた日共系労組その他の策動によつて惹起した事件であると考えられます。



[014]
日本共産党 山口武秀
ただいま長い報告を、私はきわめて静かに聞いておりましたが、数点について御質問をしたいと思います。

この報告書作成に当られました5名の派遣委員は、基本的にはアメリカと日本の吉田政府に対して、きわめて忠実な考え方によつてつくられたものであります。従いましてこの報告書はきわめて片寄つたものがある。問題の本質をついていないという印象を受けました。



[026]
日本共産党 竹村奈良一
それからもう1つは、この報告書を見ておりますと、非常に推定、思考するという言葉が多いのであります。調査団というものは、少くとも完全な立場において、いろいろな角度から調査されるのでありますが、推定する、思考するという言葉を使いながら、その一方においては、あたかもわが日本共産党に対していろいろ誹謗的なことを報告しながら、そのあとには、推定であり、あるいは思考するというような書き方をされておる。このことは最も悪質な考え方ではないか。思考し、推定するということは、昔の特高警察と1つもかわらない。昔の特高警察は、少くとも思想警察は、大体推定する、思考するということにおいてあの治安維持法を拡大したことは、御承知の通りであります。従つて、このいわゆる行政監察の調査団というものは、特高的、思想的な監察の面から、治安維持法的な建前から調査されたようなにおいが、全部にあふれておる。このことについても伺つておきたい。

もう1つ聞きたいのは、調査の結果書かれていることには、たとえば日本共産党が昨年何とかして、それから東京練馬、あるいは北海道札幌における白鳥警部事件、こういうようなこともあたかも日本共産党によつて行われたことく書かれておる。しかし北海道の白鳥事件につきましても、現在これはそれ以外の者によつて行われたということはほぼはつきりしかけておる。それにこういう断定的な考え方をもつて調査されるということ自体、私は超党派的な行政監察委員会の面から考えましても、この点はいかに一方的な考え方からやられている調査であるかということがはつきりしている。この点もひとつお答え願いたい。従つてこういう一連の報告書をつくり上げるために調査をするにあたりましては、共産党の委員を加えるべきである。それを加えなかつたということ自体が、すでに調査以前から、こういう推定あるいは思考に基く、しかも当然憲法に保障された一連の行動をやるということを阻害したことの調査を抜きにしようという考えがあつたのではないかと考えるのでありますけれども、団長からこれに対して明確な御答弁をお願いいたします。

[027]
自由党(自由民主党) 田渕光一
お答えいたします。われわれ権威ある調査団に向つて非常に誹謗的な竹村君のお言葉でありましたが、私ども自由党、改進党、社会党のこの5名の調査団は、衆議院議員の公職を汚すことなく、あやまちなく、国家再建のために最も公平無私に監察をいたして参つたことをお答えいたしておきます。





昭和27年04月25日 衆議院 行政監察特別委員会
[086]
自由党(自由民主党) 田渕光一
とにかく1人歩かせることは危うい。彼らのねらうところはそこなんですから、費用をふやしても2人ないし3人でやらせなければならぬ。

矢口でも巡査1人のところに行つてやつた。あるいは練馬の印藤巡査も1人でいたときにおびき出されてやられた。北海道の札幌の白鳥警部も1人歩きをしていてやられた。

まことに危険な状態になつて来つつあるのでありますから、こういう1人歩き、単独行動をさせないというようなことにするようお考え願いたいと思うのでありますが、これらのことをするについての費用は相当増すかどうか、伺つておきたいと思います。

[087]
証人(警視総監) 田中榮一
先般衆議院の第一面会所において起つた事件は、まことに遺憾なことでありまして、議員の方々にも御迷惑をおかけしましたことをおわびする次第であります。中村警部補は非常に責任感の強い男でございまして、何か騒動でも起つて他の者にけがをさしては申し訳ないというような気持から中に入つたのでありますが、出ろというので出ようとしたところが、押しもどされて、遂に、そこに犬が一匹いるということで非常に暴行を受けまして、ただいま入院加療中でございます。

今後、警備員の身辺警戒については、みずからも十分注意してもらうと同時に、またわれわれといたしましても、警邏員はもちろんのこと、交番の勤務の者及び今の警備係の連中にも細心の注意を払うように注意をいたすと同時に、何らかの対策を考えておる次第であります。



[089]
自由党(自由民主党) 中川俊思
なお先ほどこういう集団暴行事件なんかは共産党じやないかという質問を高木君が発せられたように私は伺つたのでありまするが、それに対するあなたの御答弁ははなはだあいまいである。先日も法務委員会において木村総裁が同様の質問に対してお答えになつたことは、はつきり共産党ということを言われなかつたけれども、それはあえて否認しない、こういうことを言つておる。否認しないということは、ある意味においては肯定していることになるのでありまして、共産党がやつておるということをはつきり木村法務総裁が認めておられる。しかるにあなたの先ほどの御答弁を拝聴しておりますと、どうもその点あいまいである。

共産党がやつておることははつきりしておる。広島事件を見ても、三鷹問題を見ても、北海道の白鳥事件を見ても、どれを見ても背後には共産党がおることははつきりしておる。ゆえにあなたとしては、もうはつきり共産党がその背後におるという御確信を持つて当つていただきたいということを、私どもは希望するのであります。

先ほど来伺つておると、いろいろな法律の改正、治安立法、さらに待遇上の問題、そういうことにつきましては、大蔵省や関係方面に対して善処しておられるということでありまするが、私どもから申しますと、善処のされ方が手ぬるい。何といつてもあなた方は第一線に立つて一番よく事情を知つておられるのでありますから、こういう点はこういうようにしてくれ、こういう点はこういうようにしなければわれわれとしてはやれないじやないか、こういう点をもつと率直に大胆にしつこいくらいに言つてもらわないと、国家の財政も非常に貧困でありまするから、せつかくあなた方のお申出があつても、その申出に応ずることができないようになる。ただ一片の書類を出されて、それで大蔵省に連絡しておる、関係方面に連絡しておるということはりくつになりません。ゆえにそういう点につきましては十分に緊密な連絡をとつていただいて、日本共産党が現在やつておる――そこらにおるのは雑魚だから問題じやない、こういう点につきましては……(発言する者多し)

[090]
委員長 内藤隆
静粛に願います。

[091]
自由党(自由民主党) 中川俊思
緊密な連絡をとつていただきたい。実は先ほども帝都の警視総監が見えておるというので、制服をきていかめしいかつこうをしておられるだろうと思つてここへ入つたら、そういう瀟洒なかつこうで来ておられる。あれはどなたかというと警視総監だ、――民主国家における民主警察として瀟洒なかつこうをしておいでになることもけつこうかもしれませんが、とにかくそういう服装の問題のことは別として、要するに精神の面において緊張した気持を持つてやつていただきたい。

これは私いつかも話したのでありますけれども、食うか食われるかの段階に来ておる。あなたなんか共産党の天上になつたら首なんかありやしない。実際のんきに考えておられるけれども、われわれもむろんそうなんだ。自由党の代議士なんというものは、全部銀座を引きずりまわされたり代々木の原でやられてしまう。(笑声)

食うか食われるかの段階に来ておる。

この際ちつとも遠慮する必要はない。やつておることは全部共産党だというはつきりした確信を持つてやつてもらいたい。共産党かどうかよくわからないというような、そんなことで帝都の治安が守れるか。そういう点については笑いごとじやなく、実際私は重大な段階に来ておると思う。

だから、どうか緊密な連絡をとつていただいて、法律でも改正すべきものは大いにこういう点を改正せい、こういう法律をつくらなければいかぬじやないか、また待遇もこういうようにしてもらわなければわれわれとしてもできない、こういう点につきましては政府を鞭撻していただかなければならぬ。また国会に対しても、あなた方の経験に基いて十分なる注意を喚起してもらつて、そうしてあなた方の職務が完全に行えるようにしていただきたい。これは帝都の治安を守る責任者としてのあなたの当然の義務だと考えております。私はあえてあなたの御答弁を要求しようとは思いません。そういう点についてはつきりした気持を持つてやつてもらいたいということをここで要望しておきます。



[123]
無所属 浦口鉄男
その点われわれも検討いたすことにいたしまして、次に今1つの問題は、先ほど警視総監から御答弁があつたのでありますが、警察官に対する不法行為が頻発しておりますので、警察官が一身を犠牲にしてその尊い職責に対して敢然と士気が上つておる、こういうことを承りましてたいへん心強く思うわけであります。

ところが最近の傾向といたしましては、札幌の白鳥事件などの事実を見ましても、警察官自身に対する脅迫、迫害というものよりも、むしろ家族に対する脅迫あるいはそうしたものが非常に多くなつて参りました。これは非常に私は問題だと思うのであります。警察官自身は非常にみずからを犠牲にしてこうしたことに当ろうという確信を持つておりましても、家族が牽制されるということは、非常に士気が落ちる大きな原因だと思うのであります。今軍隊がないから、軍隊のことを言えばおかしいようでありますが、結局軍人も家庭にいろいろ悩みがあり、家庭に後顧の憂いがあつた場合には十分にその働きが発揮できなかつた。ましてや警察官は日夜家族と起居をともにしておられるのでありますから、その家族が非常に恐怖心に襲われるということは、私は大きな士気を落す原因だと思うのであります。

聞くところによりますれば、吉河特審局長夫人はこのごろ神経衰弱になつているということを聞いておるのでありますが、そうしたことは末端の警察官には非常に大きな影響があると存じます。実は白鳥事件は私の地元でありまして、私の家から5、6町のところに起きた事件でありますので、私は私の立場において、いろいろそうした問題を研究してみたのでありますが、札幌市の自治警察の相当責任ある方のお話を承りましても、でき得ればやはり集団的な警察官のアパートあるいは集団的な官舎というふうなものをつくつてもらうことが好ましい。それでなければ非常招集をかけた場合に、家族に対する憂いによつてなかなかはかばかしく招集の実が上らない、こういうことを率直に申し述べられたのでありますが、これもわれわれ大いに聞くべきところがあると思うのであります。警視庁管下にそうした事態があるか、またそうしたことに対して警視総監はどういうお考えと対策をお講じになつているか、それを伺います。

[124]
証人(警視総監) 田中榮一
まつたくお説の通りであります。警察官そのものはこうした事件があるたびに、いよいよ士気は上つて、一種の憤激をもつて臨んでいるのでありますが、やはり何と言いましても、女子供の家族に対しまして、あるいはいやがらせ的な行動があつたり、あるいは脅迫がありますると、やはり家族の面からある程度士気が沮喪するということも一応考えられないことはないのでありまして、これらに対しましては、民衆の方々が警察官の職務をよく御認識願い、またそれとともに警察官の家族に対して、同情ある態度をもつて臨んでいただくということが必要であろうと思うのであります。

それからいま1つは、やはりできれば今お説のように集団アパートをつくる、またはなるべく集団的に住居させることが非常時の招集等の場合におきましても適切な処置であろうと考えまして、現在警視庁におきましては、できる限り集団家族アパートを現在相当つくつております。これになるべく集団的に住居させるというようなこともやつておりますし、また必要があるならば、特定の警察官の住む付近において、警邏警察官を頻繁に警邏させるとか、あるいは必要によつては特別警備の警察官をさらにつけるとか、あるいは往復等におきましても、十分に警察側において警戒させるとか、そうした警戒的な措置も現在十分にわれわれのところでも講じております。

そのほか家族によつては中には親戚のところへ移住するとか、そういうふうな者もなきにしもあらずでありますが、私どもとしては、郷里に帰るとか、移住するというようなことを避けて、なるべくそこに住んで安心して生活をさせるためには、警察自体が十分に警戒してやる、あるいはパトロール警察官が絶えずまわるとか、夜中でもまわつてやるというようなことで、安心してそこに生活させるというような方法を現在講じております。そのほかまだ研究が不十分でお答えができないのでありますが、現在ではそうしたこともやつております。ときには上司なり警察署長なり幹部が絶えずその警察官の家庭をまわりまして、異常がないかどうかということを確めるというようなことも現在やつております、



[150]
委員長 内藤隆
それから天下の耳目を騒がした北海道の札幌の白鳥事件のその後の捜査の状況はどうなつておりまするか、簡単に御説明願います。

[151]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
白鳥事件の捜査が相当難渋をきわめておりまして、いまだ最後的の解決に至つておりませんのは、きわめて残念に存ずる次第でありますが、現在までに、これらに関係したと見られるいわゆる脅迫文書の送付者、あるいはビラの頒布者等18名を検挙して、ただいま取調中でございます。これらの被検挙者は、自由労組員でありまするとか、あるいは札幌大学の共産党の細胞員でありまするとか、どうも共産党関係の方から指導をせられている人たちと見られるのであります。

白鳥警部を射殺いたしました真犯人がこの中にありまするか、あるいは外部でありまするかは、今まだ決定的な段階として申し上げる域に達しておらないのでありますが、これらと全然無関係とは考えられない、私はさような心証を持つております。

[152]
委員長 内藤隆
かように昨年12月以降からでも、全国186件のこういう暴動あるいは襲撃という問題が起つておりまするが、第一線に働いておる警察官に与えたこれらの事件の影響というようなものについて、少しくお述べを願いたいと思います。

[153]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
第一線警察官といたしましては、直接身体に危険を感ずる脅迫文書を受取るとか、あるいは石を投げ込まれるとか、いろいろな事件がたくさん起つておるのでありまするが、幸い全体的といたしましては、第一線の警察官はむしろ志気が高揚していると私は考えるのであります。

ただ家族たちがこのためにおびえるということも相当ありまするが、先ほど申し述べました小河内村の事件を検挙いたしました直後に、駐在巡査が警邏に出ておりまする際に、留守中に夜数名の者がやつて参りまして、お前のおやじにああいうことをやらせないように誓約書を書けというようなことを言われたりして、相当脅迫されたのでありますが、この細君のごときも敢然としてこれをしりぞけておるのであります。

従いまして私らの見ておりまするところでは、むしろ志気が高揚していると考えるのであります。ただ中には気の弱い者も生ずると思うのであります。私らといたしましては、本来気の弱い者は、こういつた事態に警察官として不適当でありますから、適当なポストにかえるとか、あるいは他に職を求めさせるとかいうふうにして行くしかないと考えております。一面志気の高揚をはかりまするとともに、さらにまた危害を加えられて死亡をいたしますとか、あるいは不具廃疾になるというような場合に、その遺族なり、不具廃疾になつたあとのめんどうを相当見るという措置がありませんと、ただお説教だけでは必ずしも十分でありませんので、先般政府の御方針を受けまして、一般の法律による公務災害の場合の扶助のほかに、死亡した場合には50万円以上100万円以下、不具廃疾になつた場合には、その程度いかんによつて20万円以上100万円以下の見舞金を与えるというように、先般われわれの方の規則としてきめまして、今後こういう事態には、そういつた本人なり遺家族の援護に欠くるところのないようにいたしたい、かようにいたしておる次第であります。



[160]
委員長 内藤隆
第一線に立つておられる警察官の諸君の行政上あるいは司法上の不始末、あるいはまたその人の素質の不適格性からこの種の事件が利用されているというようなことはありませんか。

[161]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
本人の不始末とか何とかいいますよりも、たとえば白鳥警部のごとく、敢然として職務を遂行し、そのために自由労組の人たちが検挙をされて恨みに思つている、そういう恨みでありまするとか、あるいは税金が高いという声によつて、税務署をやれば何か喜ぶ者がありはしないかというような点を利用するようなことが、あるいは考えられるのではなかろか、かように思うのでありますが、しかし最近の事例を見ますると、必ずしもそればかりではなしに、いわゆる権力機関といいますか、治安担当機関といいますか、警察とか検察とかいうものに畏怖の念を与えて執行力を弱める、それによつて治安に関しての一般の信頼感をなくするというようなことがねらいであるようにわれわれには思えるのであります。



[198]
日本共産党 山口武秀
それからなお白鳥事件でありますが、この白鳥事件につきまして、現在被検挙者が相当数あるという先ほどのお話でありました。ところがなお証人の証言によりますると、真犯人がその被検挙者の内にあるか外にあるかについてはいまだなお判明しない、このように言つておられる。そうすると、この被検挙者というものは、真犯人の容疑で検挙されているものであるかどうか。それともそれ以外の問題で検挙されているのか。

もしもこれが真犯人という容疑で検挙されたとしまするならば、その内にあるか外にあるか確信がないということになりますと、基本的人権の重大な侵害の問題がありますので……。

[199]
証人(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
先ほども申しました通り、白鳥警部殺人容疑者として検挙はいたしておらぬのであります。

ただいま検挙をいたしておりますのは、事前の暴行事件でありますとか、あるいはこれに関連した脅迫文書の頒布、これらによつて検挙をいたしておるのであります。犯人としてはまだ検挙はいたしておりません。

[200]
日本共産党 山口武秀
だとすると、白鳥事件というのは、現在なお真相かいもくわからないというのが、少くとも現われた実情なのである。それなのに、ここに共産党の関係があるということ自体は、これは国警長官としてはなはだ軽率ではないだろうか。



[301]
自由党(自由民主党) 中川俊思
時間が切迫しておりますからごく簡単にお伺いいたします。昨日の法務委員会における破防法の審議の過程で、最近頻発する集団暴行事件の背後に、共産党があるかどうかというような質問があり、これに対して総裁は、そういうことは否認しないというような御答弁をなされたということを聞いたのでありますが、否認しないということは是認されることでございますか。

実は最近頻発しておるところの集団暴行事件の背後には共産党が扇動しておるということは、これは明々白々たる事実であります。これはもう広島の日鋼争議の事件を見ましても、北海道の白鳥事件を見ましても、またその他いろいろな問題を見ましても、その背後にはみな共産党が動いておる。

きのうなぜ法務総裁ははつきりと共産党がやつておるということをおつしやらなかつたか、こういうことに対して私は実に不満を持つておるのであります。実際にやつておられることは、総裁はそういうような非合法運動に対しては相当な決意を持つておやりになつておられることは、私ども認めておるのでありますが、同時にそういう決意をああいう席上においてはつきり表明していただきたかつたのであります、今もなお総裁はそういう点についてははつきり明言をされようとしないのかどうか、この点を伺つておきます。

[302]
証人(法務総裁) 木村篤太郎
これは実に臆病のようでありますが、私は法律家なのであります。確実な実証をあげて、そこに提供をいたしたいと考えます。疑いは十分あるということを申し上げます。そこで私はこれを否認しないというのはその点であります。

[303]
自由党(自由民主党) 中川俊思
今日まで、ただいま私申し上げましたような問題について、確実な証拠は上つていないのでありますか。

[304]
証人(法務総裁) 木村篤太郎
現在のところでは、これは何とも申し上げかねるのであります。





昭和33年07月17日 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会
[022]
自由民主党 中山マサ
とにかく、このごろは敗戦といううき目を見たためでございますか、日本国は外国からなめられておるというような格好が見えております。

しかも、このいわゆる人民艦隊というものはどうしてできたかと申しますれば、結局国内の会社に共産主義者が入っていって、尼崎の尼鋼でもそうですが、ここでもって会社を破壊したその金、あるいはほかの会社も破壊して、そこにある品物を横流しをしてもうけた金でもって人民艦隊を仕立てて、それに乗って、しかも、北海道の白鳥事件の容疑者なども、これに乗って向うへ行っているのですが、そんなものがぬくぬくと、時間的にもういいだろうというようなことで帰ってくるとしたら、法務省もまるでなめられ切っておる。(「法務省はおらぬ」と呼ぶ者あり)きょうはおらないが、入国管理局の方がいらっしゃっておると思うのですが、そういうわけですから、この際、私ははっきりさせていただきたいと思います。

われわれの国の尊厳のために、私は、これはぜひ申し上げて、はっきりさせていただかないと、われわれ国民の前に、あまりにもだらしがないというようなことでは、どうにもならぬ。今後もまだ引揚者が何らかの形でもって帰れる、運賃は見てやるのだという今の御答弁でしたが、今度のようなことでもって、ペン・ネームを使ったりしてまたやらぬということも断言できないと思いますから、この際、一つ厳然たる態度でこれを処分して、そういうことは通らないのだということを見せていただきたいということを、私はぜひお願いをいたしておきます。





昭和51年05月13日 衆議院 内閣委員会
[311]
民社党 受田新吉
白鳥警部殺害事件、北海道の道警の警備部は、昭和27年の白鳥警部殺害事件の直後に中国へなぞの密出国をして、ほとぼりのさめた最近に至ってひそかに帰国した同事件の容疑者を書類送検したという新聞報道を見たのです。

このことがもし事実とすれば、同事件が持つあの陰惨な記録は、いまもって継続中であるということを示すものですね。国民としても重大な関心を寄せざるを得ない問題であります。そこで具体的な事実経過と現在の捜査状況について御説明を願いたい。

[312]
説明員(法務省刑事局公安課長) 石山陽
ただいま先生お話しの白鳥事件と申しますのは、昭和27年の1月21日夜に、当時札幌市警察署の警備課長をいたしておりました白鳥一雄警部が自転車で帰宅の途中、背後から何者かに拳銃で撃たれて殺されたという事件でございます。この件につきましては、共犯者といたしまして、当時の日共札幌委員長でありました村上国治なる者が犯人であるということになりまして、一審、二審、三審と公判審理が進みまして、38年に有罪裁判が確定いたしました。それに対します共犯者の一部の者が当時中国に逃亡しておったということがわかりましたので、最近それに関します共犯者の数名を目下札幌地検において捜査中であるという状況でございます。

その捜査の状況を簡単に申し上げますと、大体新聞報道等に出ております主犯と申しますか、現在の捜査の中心になっている者を事例的に申し上げますと、植野という者がおりまして、この人につきましては現在3つの被疑事実、すなわち昭和26年の12月中ごろから27年の2月初めごろまでの間に、先ほど申し上げました当時の村上委員長らと共謀して米国製の拳銃1丁を不法に所持しておったという事実。2番目といたしまして、27年の1月上旬ごろから中旬ごろまでの間に、同じく村上委員長らと共謀いたしまして、人の財産、身体を害する目的で爆発物3個を所持しておったという爆発物取締罰則違反の被疑事実。3番目に、昭和30年ごろに中国に密出国をしたという事実。

以上の3点につきまして、現在札幌地検が、ただいま申しましたように捜査中であるという経過でございます。



[319]
民社党 受田新吉
この事件に対してもうちょっとだけ、一口で答えていただきたいと思うのですが、当時の日本共産党札幌軍事委員会というのは一体どういうような性格を持っておったものか、それが白鳥警部殺害事件と何のかかわりがあったのかという点をちょっとお答え願いたい。

[320]
説明員(法務省刑事局公安課長) 石山陽
日本共産党軍事委員会と申しますのは、私どもがただいままでの資料で承知しておりますところによりますと、昭和20年(※26年)の10月ごろに日本共産党の第五回全国協議会、略称五全協という大会がございました際に、革命間近しという見地から武装方針が指示されました。それに基づきまして各地に軍事組織がつくられたという事実がございます。それに即応しまして設けられました委員会の中枢的な機関であるというふうに理解いたしております。

[321]
民社党 受田新吉
これは国民が1つの疑惑を持っているわけですから、あいまいな処理の仕方でなくして、きちっとした処理をして国民の疑惑を一掃してほしいと要望しておきます。





昭和55年11月05日 衆議院 外務委員会
[131]
自由民主党 中山正暉
外務大臣、まだほかにあるのです。白鳥事件というので、人殺しをした人たちが中国にたくさんいるのです。これなんかも人道上でしょうか。もういっぱいおります。桂川、川口、川口栄子、植野、斉藤和夫、門脇、大林。もうとにかく上海へ行くための共産党の船団というのがあったわけでございます。





昭和55年11月21日 衆議院 地方行政委員会
[046]
自由民主党 小澤潔
時間がございませんので、次に3つの事件についてお尋ねをし終わりたいと存じます。

その1つは白鳥事件でありますが、事件の容疑者数名が中国に渡っているとのうわさがありますが、その真偽をお聞かせ願いたいわけです。そしてあわせて経過も報告願いたいと存じます。その経過の中には、中国大使館を通じまして中国政府に捜査依頼をした事実があるかどうか、こういった点も踏まえてお願いいたしたい。

その2は、シンガポールにおける石油タンク爆破事件は日本人のしわざとされておりますが、その後の経過はどうなっていますか。シンガポール政府より本事件について損害賠償等の請求がされているようなことはあるか、それともないのか、外務省にお伺いいたします。

そしてその3、簡単に申し上げます。クアラルンプールの米大使館占拠事件についてでありますが、これについてもその後の経過をお知らせいただきたいと存じます。

[047]
政府委員(警察庁警備局長) 鈴木貞敏
大変盛りだくさんの御質疑でございますが、順を追って申し上げたいと思います。

(中略)

それから次の白鳥事件の関係でございますが、この事件は、ちょうちょう申し上げませんが、昭和27年1月21日、非常に古い事件でございまして、当時札幌市警察本部警備課長の白鳥一雄警部が勤務を終わりまして自転車で帰宅途中に、市内路上で背後から拳銃で射殺されたという事件でございまして、捜査の結果、犯人は当時日本共産党札幌委員会委員長あるいは同委員会軍事委員長であります村上及び同委員会所属の中核自衛隊員7人の計8名による犯行と判明いたしまして、27年に1人、28年に2人を逮捕いたしております。この3人につきましては、殺人罪あるいは殺人幇助ですでに有罪判決が確定しております。

その後52年に1人、53年に1人が中国から帰国いたしましたので、殺人幇助容疑で逮捕、取り調べの上検察庁に送致しておるというふうな状況でございます。

残り3名につきましては外国に逃亡中と認められますので、引き続き捜査中でございますが、御質疑の中国に残っているかどうかということにつきましては、残り3人の被疑者は中国にいるもの、こう思っておるわけでございますが、詳細につきましては捜査中ということで御了承願いたいと思います。

またこのケースにつきまして、中国に捜査依頼をした事実があるかどうかということでございますが、この事件の経緯あるいは中国との捜査共助関係の経緯、そういったものを勘案いたしまして、現在までのところ中国に捜査を依頼したという事実はございません。が、将来につきましては、また進展を見ていろいろ考えてまいりたい、かように思っております。