内閣総理大臣による指揮権発動

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平成21年03月17日 衆議院 法務委員会
[042]
民主党(国民民主党) 古本伸一郎
そこで、解説が随分長くなりましたので、念のため、少し委員の先生方にも紹介させていただきましたが、この指揮権というのはそもそも内閣総理大臣も有しておる、こういう理解でいいでしょうか。きょうは法制局も来ていただいています。

[043]
政府参考人(内閣法制局第二部長) 横畠裕介
検察庁法14条の指揮権は、法律にあるとおり、法務大臣の固有の権限でございます。

ただし、内閣法6条によりますれば、閣議にかけて決定した方針に基づいて、内閣総理大臣が法務大臣に対して一定の指揮を行うことができるという制度にはなっております。

[044]
民主党(国民民主党) 古本伸一郎
つまりは、内閣総理大臣も、法務大臣に閣議決定し指示することにより、この指揮権というものを法務大臣を介して恐らく発動できる、そういうふうに承知をいたしました。

そういたしますと、当の法務大臣は、検察を全幅の信頼で、このことについて考えたこともない、毛頭ないということであるんですが、この14条の設置のねらいというのを少し御説明していただけますか。

[045]
政府参考人(法務省刑事局長) 大野恒太郎
検察庁法14条は、検察が行政権に属するということと、同時にまた司法権と密接不可分の関係にあるという、この特殊な性格から出てきている条文であるというように理解しております。

そもそも検察に関する事項は法務省の所管事項でありまして、法務大臣の管理のもとにあるわけであります。したがいまして、先ほど委員が御指摘になりましたように、国民に対する関係では、内閣の責任という形で検察はコントロールを受けるという形になるわけでございます。

ただ、冒頭に申し上げましたように、検察権は司法権と密接に関係しております。これをもう少し具体的に申し上げますと、司法権の独立といいますのは、司法権が独立、公正に行使されること、つまり、裁判官が個々の具体的な事件の裁判を行うに当たり、憲法や法律にのみ拘束され、一切の外部的な圧力や干渉等を受けない原則をいうわけであります。

ところで、刑事訴訟におきましては、我が国においては検察官が基本的に起訴を独占しておりますし、また、起訴に対して裁量権を行使することが認められております。したがいまして、裁判所は、検察が起訴しない事件を審判することはできないわけでありますし、また、起訴された事件につきましても、検察官の主張や立証に基づいて判断をするということになるわけであります。そんな意味で、検察権の行使は司法権の行使の前提になっていると言うことができると思います。

そこで、仮に検察権が不当な圧力によって公正を欠くような行使が行われたということになりますと、結果として司法権の行使も不公正なものとならざるを得ないわけでありまして、司法権の独立の趣旨が実質的に損なわれることになるわけであります。そうしたことから、司法権の独立を確保するためには検察権の独立性が要請されるということになるわけであります。

そこで、行政権に属するということで法務大臣の管理のもとにあります検察でありますけれども、法務大臣の指揮権に一定の制約を加えまして、個別の事件の捜査処理につきましては、個々の検察官に対する直接の指揮はなし得ず、検事総長に対する指揮ができるというような形に制度をつくったわけでございます。

このようにして、検察権が行政権に属することによる法務大臣の責任と、検察権の独立性の要請との調和が図られているものというように理解しております。

[046]
民主党(国民民主党) 古本伸一郎
今刑事局長がお答えになった話を要約しますと、大臣、これはやはり、一つに、要は内閣の責任において検察の独善を防止するという要素があると思うんですよ。一般に、政治家が検察に何か圧力をかけたんじゃないか、こういうふうなイメージがありますけれども、その逆目もありますね。

したがって、第一に、法務大臣は連帯責任を負うわけでありまして、公選を受けたわけではない検事総長以下の、準司法的機関である検察が行うことについて、連帯責任を負う法務大臣として、これはまさにその独善を防止するチェック機能が一つある、これが第一ですね。

もう一つは、検察が例えば政党の利害や都合により左右されるということがあったならば、今刑事局長がおっしゃったとおり、中正を失う、冒頭あったような不偏不党の精神を貫くことができないということになるんですね。

それをまさに、両者の相反するエネルギーを調和させるいわば調整弁的な役割としてこの14条があるわけでありまして、という理解で、今刑事局長、大きくうなずいていただきましたが、恐らくそうだと思うと、実は法務大臣というのは、党人が務めると、どうしても予断を与えるんじゃないかということがあると思うんですが、いかがでしょうか。

[047]
法務大臣 森英介
私は、私の職責を果たすについて、一切そういうことは考慮しておりませんで、先ほどから委員がおっしゃっておりますように、指揮権というのは持ちつつも、現時点において検察に全幅の信頼を置いているということを申し上げたわけでございます。