第六あけぼの丸事件

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昭和30年05月24日 参議院 農林水産委員会
[001]
委員長 江田三郎
ただいまから農林水産委員会を開きます。

まず最初に第六あけぼの丸の沈没及び山田丸撃沈事件の件を議題といたします。

本年2月長崎沖において第六あけぼの丸が韓国フリゲート艦によって衝突沈没をせしめられ、乗組員21名が死亡しております。

また昨年11月シナ東海において第三十一山田丸、第三十二山田丸が国民政府所属の艦艇に銃砲撃を受け沈没し、乗組員7名が死傷しております。

いずれも賠償その他責任ある措置がとらるべきであると考えられますが、韓国並びに国民政府との交渉の状況についてまず外務省から説明を聞くことにいたします。

[002]
説明員(外務省アジア局第五課長) 鶴見清彦
それではただいま委員長から御指摘のありました第六あけぼの丸の衝突事件に関する韓国政府側との折衝状況につきまして御報告申し上げます。

ただいま委員長から申されましたように、本年2月の14日に長崎県の沖合におきまして、韓国の海軍フリゲート艦PF61号と日魯漁業の第六あけぼの丸が衝突いたしまして、第六あけぼの丸の25名の乗組員中21名の方が行方不明になられたわけであります。

この件につきましては、さっそく国内の関係諸官庁にも連絡いたしまして、いろいろ事件概要の調査その他もお願いいたしましたわけでありますが、事件直後におきまして、2月18日に在京の韓国代表部の金公使から外務大臣あてに被害者及びその家族に対して深い弔意を表するという趣旨の書簡が参っております。この書簡の中には、補償問題、あるいは賠償問題というのは全然触れておりませんが、取りあえず被害者の乗組員の方々に深厚の弔意を表するということを2月18日に大臣あての手紙で申し入れてきております。

ただいま申し上げましたように、海上保安庁あるいは水産庁にお願いいたしまして、当時のこの状況あるいは損害の程度というものにつきまして調査をお願いしておった次第でございますが、3月30日になりましてその調査結果が一応まとまりましたので、その調査結果を公文にいたしまして韓国の代表部の方を通じまして、韓国政府側の方に申し入れを行いました。

国内の関係当局の調査によりますと、当時のPF61号、第六あけぼの丸の衝突の、何と言いますか、直接なる真因あるいは原因というものが必ずしもはっきりしない。従って責任が明確に韓国側のPF61号に帰するかどうかという点が、先方のPF61号側のいろいろな状況を具体的に聞かないと、はっきり出てこないというような状況でございましたので、3月30日に申し入れの公文の中には、まず第1にPF61号の当時の行動状況につきまして具体的に韓国側の調査結果を知らしてもらいたいということが第1の段階に出ております。

第2の段階といたしまして、日本側水産庁その他で調査していただきました第六あけぼの丸に伴う損害というものが約1億8000万円になるということを、損害をあげまして、とにかくこういう損害が生じておるということを先方に通告いたしますとともに、衝突の事後処理におきまして韓国のPF61号の方でとりました措置が必ずしも十分でなかったと思われる節が多分にありましたので、たとえば衝突すぐに日本側に連絡をしなかったという点、それから救助のランチをおろしましたけれども、そのランチが1人ずつ救助してはまた本船に引返えして、また救助に来るといったような状況で、救助の措置が必ずしも万全の策が講ぜられていなかった点が認められるという点を指摘しまして、先ほど申し上げました1億8000万円の損害を提示いたしますとともに、そういう状況でありますので、適切なる補償が行われることを期待するという趣旨の申し入れになっております。

その申し入れが行われましたあと、韓国側からは正式には何らの意思表示もございません。

私どもといたしましては、とにかくまず韓国側の調査結果というものを知らしてもらいたいということを連絡いたしておりまするが、今までのところ正式な回答というものは参っておりません。

しかしながらその4月初め以来2、3回外電が伝えるところによりますると、韓国の海軍の方では韓国のPF61号は権利船であって全然法律的責任はないということを言っておりますが、これを裏付けする具体的資料といったものは全然わが方には正式には通知して参っておりません。

また4月の下旬あるいは本月5月の上旬の外電によりますると、韓国政府の方では見舞金といいますか、死亡乗組員に対する弔慰金として1人当り200ドルを支払う用意がある、もし日本側で韓国側の責任というものを追及しないならば、200ドルずつ1人あたりに弔慰金として支払う用意があるということが伝えられております。この点につきましても何ら韓国政府からこの韓国代表部を通じまして正式に日本政府に対して意思表示があったわけではございません、ただ外電がそういうふうに伝える程度だけでございます。

以上がこの第六あけぼの丸につきましての韓国側との折衝経過でございます。簡単でございまするが、御報告を終ります。



[012]
自由党(自由民主党) 秋山俊一郎
ただいまのお話の中に何か韓国の権利船というのですか、であるから韓国側に責任がないということを外電で報じておるということをおっしゃっておりますが、その点をもう一度……。

[013]
説明員(外務省アジア局第五課長) 鶴見清彦
外電では韓国側の海軍当局の発表という形で、あの際に韓国側が権利船の立場にあった、権利ですね、権利船の立場にあったので、むしろ漁船第六あけぼの丸の方が退避すべきであったという建前に立って、従って韓国側にはこの衝突事件については法的責任がないのだというふうに言っておるようです。





昭和30年07月16日 衆議院 農林水産委員会
[085]
無所属 久保田豊
私は李ライン問題とは別個の問題でありますが、しかし本質上李ライン問題に非常に大きな影響を持っている問題について2、3お尋ねをいたします。それはほかでもありませんが、本年の2月14日に長崎県の生月島沖合いで日魯漁業の下関の支店に所属する第六あけぼの丸が韓国のフリゲート艦に追突を受けて沈没をした事件がある。この事件についての措置は今日までどうなっておるか。

承わるところによりますと、先月末あたり外務省が出しましたこれに対する抗議書ですかあるいは照会書ですか、何かわかりませんが、それに対する韓国側の回答があったということでございますが、その内容はどうなっておるか。なおこれに対して、その後の外交折衝はどうなっておるかということをお伺いいたしたいと思うのであります。

[086]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
ただいま御質問のありました第六あけぼの丸の衝突沈没事件につきましては、事件が起りますと、さっそくこれにつきまして日本側で詳細な調査をいたしました。調査の結果を調書といたしまして、韓国代表部を通じて韓国政府にこれを送りますとともに、この事件の経緯にかんがみ、損害額等も明細に書きまして、韓国政府において適当な補償措置を講ずるようにということを申し入れたのでございます。これが3月でございます。

その後韓国側からは返事が来なかったのでありますが、その間新聞報道等におきまして、韓国側でも若干の弔慰金を準備しておるというような記事を散見したことがあるのでありますが、正式には先月の15日、6月15日付をもちまして韓国側から詳細な回答がございました。その詳細な回答の内容は、結局衝突事件については韓国側は万全の措置をとっていたのであって、むしろ沈没した第六あけぼの丸の方に過失があるということを結論として出すような調書でございます。それをよこしまして韓国側には責任はない、この事件はきわめてお気の毒ではあるけれども、責任がないから補償の責に応ずることはできないということを、公文をもって回答してきたのであります。

これに対しましては日本側におきましては、さらにその調書の内容につきまして逐一反駁の書類を、現在これは海上保安庁にお願いをいたしまして作っておるのであります。それができ次第さらに韓国側に対しまして、韓国側の理由のないことを反駁いたすとともにさらに補償の請求を継続して交渉したい、かように考えておるのでございます。

[087]
無所属 久保田豊
当時の遭難された者のうちの4名だけが生きており、21名が死んでおります。しかもその状況は、フリゲート艦がうしろから来てつっかけて、しかもその際に、韓国側としては無電機その他を持っておりながら、日本側の海上保安庁その他については何らの救助の連絡も何もしていない、また近くにたくさん漁船がおったにもかかわらず、それに対して何らの救命助の連絡もしていない。あるいは救艇を2隻韓国の船は積んでおったにもかかわらず、1隻おろして4名を救っただけで、あとはほったらかして、しかもその船がどうかというとそのまま帰って横須賀へ入っている、こういう事実のようであります。こういう点については韓国側は何と言ってきておるか、日本側の調査とどう食い違っておるのか、ここらにも非常に私は問題がある。

韓国全体の李承晩ラインを通じて韓国側が今示しておりまする態度を貫く基本的な向うの政策なり何なりというものが現われておると思う。こういう点に対しては、最後的なものは海難審判できめることでありましょうけれども、しかしながら相手は外国の軍艦だ、しかも海難審判所等で聞きますれば、横須賀へ入ったときに普通の国ならば、たとい相手はこういう場合の軍艦であろうと、海難審判所で出向いて調査をする場合は、不利なことはなかなか言わないが、少くとも乗船、それから調査には応ずるというのが、これは国際法上の通例だそうであります。しかるに当時は韓国側としては、乗船もこれを拒否し調査も拒否して、これに対しては日本側の海難審判所の調査を全然拒否しておる。

そしておそらく前月の15日かに来た向うの回答は、向うに部合のよいことだけだ、こういうことだろうと思います。こういう点については、外務省としてはどういう態度をとって今まで当ってきたか、今後さらに、今海上保安庁その他でいろいろ折衝されておるでありましょうが、どういうふうにやられるつもりか、この点をお聞きしておきたい。

[088]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
事件の発生いたしました当時、日本側の関係機関が協力して詳細に状況を調べました結果は、ただいま御指摘のありましたように、たとえば韓国の船は、うしろの方から来てうしろにぶっつかった。それから、こちらの船が沈没をいたしましてから、救命艇が2つあったにかかわらず、1つしかおろしてこれの救助に当らなかった。なおその救助に当る方法につきましても、1人を救助してまた本船に帰り、またさらに繰り出して救助するというような迂遠なことをやっていた。それから通報につきましても、日本側の海上保安庁に通報がありましたのが非常におくれて、数時間おくれてから初めて通報があったというような事実がわれわれの調査の結果判明したのでありまして、これらの事情は、逐一その調書の中に書きまして先方に抗議したのであります。

先方からの回答は、この点につきましてはわれわれとしてはもちろん納得し得ないのでありますが、たとえば船の位置につきましては、韓国側の軍艦の方が権利船であり、日本側の沈没した船の方が義務船であったというようなこと、それから救命艇は1隻しかなかった。その1隻を大いに一生懸命に運転したのだというようなこと、なお通報についても、即刻韓国海軍及びアメリカ海軍に通報したというようなこと、日本側の被害船がもしほんとうに見張りをしていたならば当然うしろから来る韓国の船は見えたに違いないというようなこと、なお日本側の船は船尾に灯火をつけていたということが日本側の調書にあるのでありますが、その灯火は自分らとしては見えなかったというようなこと等が先方の調書に書いてあるのであります。これにつきましては、もちろん日本側の調査の結果が真実であるとわれわれ信じておるのでありますが、なお韓国側のその主張を論拠なきものとして反駁するための、資料を海上保安庁等にお願いしてただいま作っておるところでございます。従ってこの方法によってさらに韓国側の反省を促し、本問題について交渉を継続したい、こう考えております。

なお日本側の海難審判所からの審問要求に対しましては、ただいま御指摘の通り、当時日本の港に入っておりました韓国の軍艦の艦長はこれを拒否いたしました。日本側の審理に応じなかったのでございます。

海上保安庁からの要望によりまして、その後文書をもって日本側の海難審判事務のために必要な情報の提供を要求いたしております。これに対してはまだ回答が来ていないのが実情でございます。

[089]
無所属 久保田豊
今お話のような韓国側の態度であるといたしますと、この問題の最後的な責任の所在を明確にし、あるいはこれに要します補償として出ておるのはたしか1億8000万であると聞いておりますが、これらの問題の最後的な決定も非常に困難だと思う。

韓国側から出されるであろうところの海難審判所の調査の書類というようなものは、おそらく、少くとも当時の日本側の遭難した関係者の認めた事実とはかなり食い違って、韓国側には何らの責任のないような結論の出るような資料を出すほかにはなかろうかと一般には申されるわけであります。そういう場合に、日本側で海難審判の決定ができるのかどうか、できた場合にはその海難審判の決定が何らかの実効を持ち得るような措置があるのかどうか、この点をお伺いしたい。

なお、もしそういう海難審判の決定ができた場合に、これはただ単にそれだけで、相手が韓国でありますから、なかなか問題の解決は困難だと思うが、そういう場合には外務省といたしましては、別個にあるいは継続をして何らか強力な外交措置をおとりになるお考えがあるのかどうか、これらの点をもう一度お伺いしておきます。

[090]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
海難審判所から先方に要求いたしております各項目に、先方が真実を書いてこちらに通報してくれば、もちろんこれに基いて海難審判の処置がとれるわけでございますが、ただいま御質問になりましたように、向うがもしも真実なことを書かない場合、先方に都合のいい結論が出るようなことだけを返答してくる、あるいは全然返答しないというような場合には、海難審判が成立するのは困難であろうと考えます。

そういう場合に、それではどういう措置をとるかということでございますが、われわれとしましては、日本側の調査に基きまして、日本側の主張の利のあるところはこれを強く先方に主張する考えでございますが、一方的な主張のみではこういう問題はなかなか片づかないということも、御指摘の通りわれわれも懸念されるのでございまして、むしろそのような場合には、日韓関係の大局論ということから、韓国側でもそのような法律論で回避するようなことのみをしないで、大局的に本問題の解決をはかるということで折衝したい、かように考えておるのであります。

しかしながらその際にもやはり日本側の主張に利があるということを十分先方に納得のいくように説得しておくことが必要であると思いますので、やはりその調査を――ただいま第2回の調査をいたしておりますが、当時の実情に関する調査に主力を注いで、この点について十分納得のいく資料をそろえまして先方へ出すと同時に、その結果次第によりましては、さらにそういう政治的な解決方法をということで進めたい、かように考えております。いずれにせよ被害者の方にはお気の毒なことでございますので、何とか実効のある解決方法を講じたいと考えております。





昭和30年07月18日 衆議院 農林水産委員会
[120]
無所属 久保田豊
時間が非常に制約されておりますので、意を尽しませんが、要点だけ一つ質問さしていただきたい。それは李承晩ラインの問題にも非常に大きな影響を間接に持っておる問題ですが、去る2月14日に、長崎県の生月島の沖合で、日本の第六あけぼの丸という漁船が、韓国のフリゲート軍艦に追突を受けて沈没しております。そして21名の者が死亡しておる。

これに対する外交的な経過は局長からお伺いいたしました。これに連関して一番問題になるのは、過般もお伺いしたのでありますが、韓国の軍艦が、いわゆる日本のアメリカの占領治下に、占領というのは、アメリカの軍港へ、日本の許可なくして、占領時代と同様に入っておるという事実があります。これは過般質問した場合にも、中川局長も認めざるを得なくなって、認めておる。

日本の漁業者を追っ払うとか、あるいは拿捕する、それと同じような不当な行動を向うの軍艦などはしておるのであります。これは行政協定なり何なりに基いてそうなっておるのか。そういう不当な外国の軍艦が、公海であれ何であれ、日本の近海を通り、しかも日本の国土にあります港の中に入ってくるのに、日本政府に一言も断わりもなしにどしどし入ってくる。こういう扱いを受けておるということ自体に、問題の焦点が一つあると思う。

こういう点から改めなければならぬと思うのですが、これは日米行政協定上日本側の当然負うべき義務であるのか、それとも米軍の占領時代から引き続く慣習を、そのままこっちが容認をしておるのか、あるいはその間に別個の、国民に知らされない何らかの外交上のいろいろな問題があるのかどうか。これについて外務省としては、今までアメリカなり韓国に対してどのような措置をとって参ったか、この点をまず第一に明確に御答弁をいただきたいと思うのであります。

[121]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
お答えします。

従来占領時代は御承知の通りに、韓国の軍隊も米国側と申しますか、連合軍側の管理のもとにあって、そうしてそのために米国の管理する軍艦として日本の港に入っておったことは事実でございます。これは占領中のことであります。

しかしながらさようなことは、行政協定からいっても、継続すべきでないという結論に日本側は到達したのでございます。そこでそういうことをやめてもらいたいということを交渉いたしまして、大体米国側もそういう日本側の解釈は正当である、こういうふうにこれを認めて、そういうことは事実その後だんだんなくなってきておる状況でございます。今後はそういうことがありましたならば、ぜひこれはやめてもらうべく交渉をし、かつまたその交渉は、おそらくこちらの考え通りになる見込みを持っておる次第でございます。





昭和30年12月07日 衆議院 農林水産委員会
[117]
参考人(遺族) 大迫フミツ
事件当時の模様は、4人の方が助けられて1週間以内に下関に帰つて参りました。下関につきまして日魯の会社に帰りまして、その当時の模様をはつきりと聞かされました。

生存者と一緒に21名のなくなつた人々は、2月の14日のあの寒い雪空に、あなただれだと言つて名前を呼び合い、がんばろう言うて1時間ぐらいは泳いでいたありさまが目に映つたということをはつきりと聞きました。そのとき向うのフリゲート軍艦から、救いの手がせめてもう少し早く来ていただいたら、21名の者のうち、せめて半分でも助かつたろうにと言つてほんとうのことを聞かされました。主人も助かつた人の中の1人と一緒に、1枚の板に3人一緒に並んで泳いでいました。どうぞ船長もがんばつて下さいと言うて励まし合つていた。そこまでははつきりとしていましたが、時間のくるに従つてもう足も腰も自由がきかなくなつたんでしよう、救いも来ないのでそのまま姿を消したというありさまでございました。

それから、私同様なくなつたほかの船員の家族の方、若い子供を3人持つた方、5人持つた方、また新婚当時の方もいますけれども、それぞれにわずかばかりの退職金、一時金なりをいただいてその当時はしのぎましたけど、1年ぐらいになりますが、いまだに韓国側からは弔慰金すらも出ない。遺体も上らないありさまですから、ほんとうに死んだということがはつきり目に映らないので、主人なんかはどこか韓国の軍艦に連れられて行つたんじやなかろうか。みんながその気持で、帰つて来るんじやなかろうかという気分でおりましたけど、もうこんなに日にちがたちましたし、もうそんな希望の考えられる場合じやないからと皆が励まし合つて、元気な者は日雇いに出向いていこうという決心をしているようなありさまでございます。

[118]
自由民主党 田口長治郎
幸いに生存者がおられるのでございますから、この事件はどこで起つたものか、その位置について生存者からお聞きになつたことがありますか。

また韓国のフリゲートが突つ切つたということでございますが、難破した後にこのフリゲートがどういう処置をしたか、知らぬ振りをして行つてしまつたか、そこらの点をはつきりさせていただきたいと思います。

[119]
参考人(遺族) 大迫フミツ
生存者の方でボースンをしていらつしやつた方が、詳しいことをはつきり私どもにお話をして下さいました。

長崎県の五島沖の生月島の付近でございましたそうでございます。その当時船長として船の見張りをしていましたそうでございますけれども、交代の時間も来ましたから、そのボースンの方とかわられたのでございます。そのときは14日の午後の10時半ごろでございました。雨も降り、風も吹き、海はずいぶんしけた模様でございました。そのときの模様をボースンの方が話されましたが、向うは大きな軍艦でもあり、サーチライトもありますし、日本漁船の第六あけぼの丸がここにいるということをはつきり見定めている。第六あけほの丸はその設備もないので、悲しいかな、向うのことは何もわかりませんけれども、軍艦の方ははつきりわかつていながら、またずいぶん速力も早く、第六あけほの丸とは速力もずいぶん違いますので、その当時のことははつきりわかりませんけれども、うしろの方から追突させられた模様でございます。それで当番の方が、一ぺん追突させられましたから、向うの軍艦に懐中電燈か何かでこういうふうに知らせた模様でございましたけれども、向うはそんなのには目もくれないで、二へん追突させられましたそうでございます。

船はそのときに1分か2分かの間に沈んで、船の中にいる方でも、波のために渦に巻かれて外に出て来られなかつたそうでございます。21名のうち10名くらいは船と運命をともにしましたのでございます。

10名だけはその当時飛び込んで泳ぎ、救いを求めたそうでございますけれども、向うの艦艇はそれを1人助けて、また1人助けに来るということで、1時間くらいひまを置いてしか救いに来なかつたそうでございます。日本の漁船民はせめて自分の遺体でも助けてもらいたいと思うて、バンドで板やボート切れなんかに自分の身をばくくつて待つていて、ここだ、助けてくれと叫んだそうでございますけれども、見向きもしなかつたそうでございます。

[120]
自由民主党 田口長治郎
あけぼの丸は日魯の船でございますか――そういたしますと、日魯として遺家族あるいは遭難者にどういうような手当を今日までされてきたか、その点をお聞かせ願いたい。

[121]
参考人(山口県日韓漁業対策本部実行委員) 江口次作
これは非常にお気の毒な事件でございますので、私どもの方といたしましても、でさるだけの措置をする。もちろんこの人たちに対しては、船員保険がかかつておりますから、こういう場合において普通の者はいわゆる37カ月の給与が出るわけでざごいます。これにプラスいたしまして、そのほかに弔慰金として船長から一番最後の、身分によつてそれぞれ違いますけれども、それに見合つて私どもとしてできるだけの処置をいたしました。そのほかに香典、一時金的なものを差し上げておるわけでございます。

ただ遺族の一番不満に思つておりますことは、韓国がぶつけまして、いわゆる韓国の船が追い越し船である。日本の第六あけぼの丸が権利船であつて向うが義務船である。従つてぶつけた責任は韓国側にあるのだ。これは助かつた者が当時当直をしておりました二等航海士でありますから、その辺の事情は一番よくわかるのです。そうして日本の門司の海難審判理事所で生存者が取調べを受けたわけでございます。責任者でありました二等航海士と甲板長が助かつております。しかもこれが当直員でございます。

そうしてみますと、あらゆる角度から検討された結果、明らかに韓国軍艦がうしろから追突したのだというような結論が出まして、そうしてこれを海上保安庁あるいは審判理事所の調書をつけて韓国側に提示をされたのでございます。これに対して韓国側としては、当時その韓国の軍艦は、釜山あるいは鎮南浦を出まして、横須賀へアメリカから引き渡しの軍艦を取りに行くために航行しておつた軍艦だつたそうでございます。フリゲートのP61という船だつたのですが、それが当時助かつた人間が本船で聞いたのでは、航法がふなれだから、瀬戸内海を通らずに、大回りをして九州の沖合を通つて、日本の近海に来て衝突した、こういう事件なのですが、横須賀に入りましたときに、審判理事所の方から船の損傷なりを調べ、あるいは向うの責任者から一応事情をお聞きしたい、こう言つていつたのでございますが、おれの方は軍艦だとばかりに、一言のもとに日本の官庁の調査を拒まれて、横須賀では向うから全然調書を出しておらないわけです。従つて帰つてから、今申し上げた門司の海難審判理事所の調書が向うに行きましたが、これに対して向うは沈黙の態度をとつておりました。

ただ向うの新聞としては、当時これは外務省には正式に言つてないのですが、例によつて向う一方的のAPでしたかUPでしたかの記事によりますと、日本政府が六あけぼのの方が悪かつて、フリゲートに責任がないということを言うのならば、1人当り200ドルとたしかありましたが、200ドルだけ遺族に対して弔慰金をやろうということが韓国の閣議で決定した、こういう記事が出ました。

続いてしばらくたつと、日本側は自分の方がよくてフリゲートが悪いのだということで抗議を申し込んできたから、さきの遺族に弔慰金を出してやるということは取り消すのだ、こういうことを向うは一方的に発表しておりました。外務省の方には、そういう遺族の弔慰金を、過失を請求しないならば、出すのだというようなことは1回も来てない、こう承わつておりますが、向うの新聞記事は一方的にそういうようなことをいつておりました。

ところで実はその後向うから回答が来たんです。それによりますと、日本の審判理事所の方にもこれはお伺いしたんですが、こちらの調書をちようど裏返しにして、作り変えたような調書を持つてきておるんです。ところが肝心なところになりますると、ずいぶん苦しいと見えまして、おかしなことが書いてある。たとえば向うはレーダーを持つておりました。従つて六あけぼのが航海しておることは知つておつた。そして2分間前に完全な処置をとつた、こううたつてある。どういう処置をとつたかということは知りませんが、2分間前に完全な処置をとつたという。あの船は日本の方にも貸与されているのと同じ船ですから、当時のスピードは15くらいと想定されるわけでございます。そうしますると、2分間前に完全な処置をとれば、衝突は絶対にあり得ないんですが、おかしなことには、2分前に最善の処置をとつたという。

それから衝突後、日本側はこういうことを言つております。たとえば沿岸共通の緊急通信を500KCでなぜ打たなかつたか。緊急通信を実はやつておらないのであります。六あけぼのは瞬時に轟沈いたしましたので、六あけからは無線が打てるわけがございませんが、翌朝の6時ごろアメリカの佐世保の海軍基地から緊急通信が出て、初めて日本側の船、また私どもの船の全船あるいは海上保安庁の船が行つた。結局10時の事件が翌朝の6時になつてわかつたということなんです。そしてなぜその瞬時に500KCのSOSを出さなかつたか、こういうことに対しては一切黙殺しておるわけでございます。

それからもう一つは、今大迫参考人が申しましたように、当時部屋の中におりました人たち及び、機関部の方に激突しておりますから、そこの人たちは出るひまもなく、10名ばかりが即死の状態で船とともに運命をともにしたのでございますが、助かつた4人の証言を聞きますと、大迫船長と約10人くらいの者が、暗夜の海上にそれぞれ板切れにつかまつて浮いておつたのでございます。これに対して向うのボートが下されたのが5分くらいかかつている。これは聞きますと、日本海軍ですと、1分かそれ以内くらいにボートは下りるそうですが、それくらい時間がかかつている。

しかも大迫船長のごときは、若い船員と2人で1つの板切れにつかまつていたんですが、そこへボートが来て1人の甲板員が助けられたときに、あすこに船長が浮いているから助けてくれと言うと、わかつたと言つて、1人を救い上げる。上げられると、大体寒い海ですから、失心状態になつて、あとはよくわからないんですが、一人々々救つていつているわけです。結局4人しか助からなかつたというのは、なぜああいうときにすぐできるだけの海面を捜索して助けなかつたか、こういうことになるんですが、これは未熟なせいかどうか知りませんが、そういう助け方をしている。

これに対して私どもの方で、政府を通じて抗議を申し込んだのに対して、韓国海軍を侮辱するものであるという一言できております。これに対して私どもはさらに政府にお願いして、韓国側の答弁はおかしいじやないか、それじや韓国艦艇が通つてきたコースはどうなんだというふうに、技術的にチャートの上にいろいろ図面を書いて重ねて韓国に抗議を申し込んでおりますが、これに対しては全然返事が来ていない、こういうのが現況でございます。

[122]
自由民主党 田口長治郎
今江口さんの話によりまして、大体会社としての処置、それから韓国艦船の人命救助は不誠意だ、こういうことがはつきりいたしました。全く言語道断な国だ、こういうことを考えざるを得ないのでございますが、これらの折衝は外務省を通じてやつておられるわけでございますか。

次に岡田さんと栄さんにお伺いいたしたいと思うのでございますが、この源幸丸は17人乗つていて17人とも向うにとられておられる、こういうようなことであり、また浜吉丸は10人乗つていかれて10人向うにとられている、こういうことでございますが、船頭以外の乗組員の留守家族の現在の生活状態、それをごく簡単に。それともう一つは、先方から手紙か何か来ておりますれば……。





昭和31年02月28日 衆議院 運輸委員会
[091]
日本社会党(社会民主党) 青野武一
そうすると、2月14日に追突事件が起って、そうして死者が21名も出た事件が、その年の暮れの11月17日に外務省を通じて抗議をした。

大体李承晩政権というものを相手にするのは一筋なわでいかぬと私どもも思いますが、大体これは韓国あたりの外国船が日本の船の航路を避けるのがほんとうですか、あるいは韓国の軍艦が通過している場合は、日本の漁船なんかはその航路からみずから避けなければならぬのか、どっちがほんとうの解釈になっておりますか。

[092]
説明員(海上保安監(警備救難部長)) 砂本周一
これは先ほど申し述べましたように国際条約に基きまして、国内法といたしましては海上衝突予防法がはっきり規定しておるのでありまして、相手の船の性格いかんにかかわらず、衝突予防法によって航海すべき状態でございます。

たとえ向うがフリゲートでございましても、日本船舶が海上衝突予防法によって航海している限り、過失は向うにある、かように考えております。





昭和31年03月23日 衆議院 運輸委員会
[120]
日本社会党(社会民主党) 青野武一
時間がありませんから、要点だけ2、3点御質問申し上げたいと思います。幸い運輸大臣がおいでになっておりますから、私は運輸大臣にきょう御答弁をしてくれというその目的のために質問するのではありませんが、関係の諸君がおいでになりまして、過ぐる運輸委員会で私が質問したことでありますが、どうも十分納得がいかないから、まあ再質問の形になりますが、御承知の通り韓国は、一方的に世界の公海に、広いところは約40マイルのラインを設けて、もしこれを強行して漁業をするような場合は砲撃する場合もあると、気違いに刃物を持たしたような宣言をしております。

ところが去年の2月の14日に、底びき網の漁船、これは日魯漁業の所有船ですが、御承知の通り海上衡突予防法によれば、韓国のフリゲート艦はよけて通らなければならないのに、日本の25人乗りの漁船に後から2回も追突して沈没させて21名の諸君が死んだ。これは海上保安庁の方から答弁を求めました。けれども私はそのときに納得がいかないままに運輸大臣の出席を実は待っておったのですが、去年の2月の14日の夜の10時過ぎなんです。佐世保港外約8マイルの地点です。21名死んだ。ところが連絡が十分でなかったために、海上保安庁の人々は驚いて捜索をしてくれたが、朝になって出動した。従って気の毒な21名の諸君の死骸は今日まで一つも上らない。

韓国に外交上日本の外務省から交渉したところが、それは日本の漁船が悪いのだ、この一点張りで遅々として話が進んでおらない。ところが日魯漁業の方も法で定められた通りの補償金もやっていない。外国の損害を受けた場合には、たとえばビキニ環礁のあの放射能をかぶって久保山さんがなくなって、100万とか300万とかもらえた。そういうことを例にとって外交上交渉をして、先方の国から、なるほど損害賠償しなければならぬということになって金がくるまでには相当の日数がかかる。そこで閣議を開いて、一時その弔慰金その他の見舞金等の立てかえをしてやろうじゃないかということで、そういう話がまとまった。

韓国所有のフリゲート艦に後から2回突っかけられて沈没して21名が死亡している。

これはラインの中に入れば砲撃するかもしれませんが、佐世保のアメリカの軍港に、アメリカとの打ち合せか何か、いろいろ重要な軍事上の機密でしょう、韓国の軍艦がやってくる。横須賀には年に8回も来て、佐世保には去年の統計をとってみると25、6回来ている。よその国の港に勝手に参って漁船に追突して殺しておいて、日本の漁船が悪いのだ、日本の近海、日本の陸上に近いところに韓国の軍艦がやってきて追突しておいて、日本の漁船が悪いのだ――日本の法律には海上衝突予防法というものがありますよ。大体米国の軍事基地になっておるところでも、日本の領土には変りはない。何がゆえに韓国所属のフリゲート艦が用事もないのに、政府の許可を受けずにやってくるのです。やってきた上に、こういう不当なことをやって、一銭の弁償金も払おうとする誠意を示さない。

御承知の通り19日に首相官邸で相当有力な与党の幹部、一部の大臣の諸君が鳩山首相と一緒にダレスさんに会うたが、案外強くはないけれども、軍事力と経済力を背景に持ったダレスというネコが、重光さんというこまかいネズミを天井裏に追い込めて、そこへすくんでしまっておる日本の外交では、アメリカに気がねするならいいけれども、韓国の李承晩なんという人は、これは保安庁も御承知の通り、ずっと前長官だった木村篤太郎さんと並べたら、どっちがどっちだかわからないような顔をしておる。話をしても、相手が正常な人間で常識を備えておるならわかるけれども、外務省も、頭が狂うた、柱時計で申しますと歯車が4、5枚欠けてゼンマイがはずれてしまっておる、そういうものを相手にするときには相手にする方法があるのです、もう1年たっておる。しかも日本の領海、佐世保の近くです。そこへ勝手にやってきて、船を沈没させて、21名を殺しておいて、とにかく一銭の弔慰金も払おうとしない。日本の外務省も何かよその国の問題のようなつもりで一つも解決のために努力しておらぬ。1年もたったら――尋常6年卒業生くらいの頭があったら、これは半年くらいで解決できるのです。だからこういう天井裏ですくみ上っておるような外務大臣はかえろというて、私ども不信任案を出したのですが、この問題について所管の関係もあるから、重光外務大臣なり外務省の諸君と話をしてどうなっておるのか。

それは連絡が非常に悪かった点もありますよ。夜の10時ごろに衝突をしておいて向うの船は逃げてしまって、いまだにつかまらぬ。そのフリゲート艦の番号はわかっておるのです。そういうことがあるのです。遺族の諸君は路頭に迷うておるのです。みなお年寄りや乳飲み子をかかえてきゅうきゅう言うておる。船長や機関長くらいになればもらう金額も少しは多いのですが、下級船員に至っては二目と見られない非常に苦しい生活状態に追い込められているのに、だれも救済してやる人も保護してやる人もない。外務省は腰が抜けておる。これでは話が進まない。相手は気違いに刃物を持たしたような、大体頭のゼンマイのゆるんでおる男である。もう少しはっきりした交渉をして、適当なときに中間報告を遺族の人にしてやるくらいな気持を持ってもらいたい。それから政府は、韓国から賠償金、弔慰金をとったときには――一律に7万5000円の見舞金を支給しておりますが、7万5000円が大体何カ月くらいの生活費にあたりますか。日魯漁業からもらっておるのが12万4000円、1カ月に割ったら1万円ちょっとです。今1万円では子供3人をかかえ、年寄りをかかえてやっていけませんよ。どろぼうをするか親子心中をするか、どっちかを選ばなければならぬという状態になっておるときに、もう少し真剣に交渉を進めてもらわなければいけないのじゃないか。その推進方を運輸大臣は一つ外務大臣と話し合って――これはお調べになったらわかりますが、詳細な話はこの間の運輸委員会でやっております。記録も全部とってありますが、その大ざっぱなところを私は運輸大臣にお願いするのでありますから、この点については外務大臣と話し合うて、どうなっておるのだ、弔慰金であったら、久保山愛吉さんがもらったくらいの金額をもらってくれなければ承服できないと思う。同じ日本で赤字だらけの日航でも、もく星号が伊豆の大島に突っかけて落ちたら、20万円の葬式費、10万円の弔慰金、それで100万円を別に出しておる。日本の赤字だらけの航空会社でも、あのあやまちによって130万円の金を出しておる。

相手は韓国です。それは戦争に負けて20万の軍隊を連れて九州へ逃げてきて、九州を根拠地として北鮮と戦うなんといって、上級将校の宿舎を至急5000ほど建てろ。自民党の田中龍夫君は、当時山口の県知事でしたが、さすがは田中義一のむすこです。よけいなことを言うな、金がないのだといってはねつけた。ああいう危急なときには、九州を自分たちの戦争をする根拠地にしようとして、将校の宿舎まで作れと命令したことがあるのですよ。そういうやつだから一つ腰を据えて交渉をてしもらわなければいかぬ。がんと一つ私たちが申し上げたことをお伝え願って、その半分は運輸大臣も責任を持って話を進めてもらいたいということを私は希望しておきます。この次の委員会のときでけっこうでございますから、その経過を一つ御報告願いたい。





昭和31年04月19日 衆議院 運輸委員会
[004]
日本社会党(社会民主党) 青野武一
問題が問題ですからそう簡単に解決つくとは私も考えておりませんが、日本政府の承認を得ないで――新聞の報ずるところによりますると、横須賀港に対して韓国所有のフリゲート艦が、日本政府に無断で、昨年1年だけでも大体7回か8回来ている。

それから九州は近い関係でしょうが、佐世保あたりにはどういう用事があるのか、アメリカ海軍の軍港ですが、私も一ぺん時局批判の演説会に行って佐世保港その他十分に視察したことがありますが、あの佐世保のごときはおそらく10回から20回ではないかと思うのです。大体確実な情報というわけにはいきませんから私は回数を申し上げるわけではないが、大体20回をおそらくこしておる。日本政府の承認を得ずに、無断で佐世保港に入ってくる。米軍が使っておってもおらなくても、これは日本政府の承認なしに韓国の軍艦が勝手に日本の港にあるいは領土附近にやってくるということは、これは不穏当である。

そういうことが重なって、海上衝突予防法によって、韓国のフリゲート艦が日本の漁船をよけて航行しなければならないものを、日本の漁船が悪いのだという理由にもならないことを理由にして、しかも船尾の方から2回も御丁寧に突っかけて、そうして21名が死んで、船も沈没した。いろいろ連絡の不備から、午後10時のできごとが、翌日の早朝になって死体捜索その他をやったために、かわいそうに遺族の諸君は自分の子供なり、主人なりの死骸にもお目にかかれないという状態になっている。

こういうことは全部韓国政府のやり方が、まるで日本の政府を無視しておるやり方から出発してきておる。こういう点も願わくは十分にお話し合いを願って、外務大臣から厳重な抗議をしてもらいたい。それは海上における不可抗力でもって衝突して犠牲者が出たという場合は、やむを得ず出たわけですから弔慰金の金額で片づくでしょうけれども、大体韓国所有のフリゲート艦が日本の佐世保の港に無断でやってくる、そういうことを平気でやることがこういう珍事を引き起した、海上遭難事件を起したということをよく念頭に置いていただいて、外務大臣にこういう点については厳重に先方と交渉してもらいたいと思う。

私がこの前の運輸委員会でも申しましたように、大体一定の標準もきまっておりますけれども、埼玉県の金子村に雪の降ったときに、爆弾を相当積んでおったB29が13人の乗組員とともに高圧線にひっかかって墜落した、そういうようなときにやはり日本人はどういうような待遇を受けたか、弔慰金の金額はどうかというと、ほうっておくと一番最初は一度限り見舞金6万5000円くらいで片づける。それが漸次厚生省規程というものを準用されておったので、私どもが調べまして、30万円、50万円、とうとう最後には、日本人が飛行機の墜落とか、軍用トラックにひかれて死んだというようなときには100万円という標準まで大体持っていったのです。それが標準になって、日本のもく星号が伊豆の大島にひっかけてこっぱみじんになって、搭乗者も全部死んだというときの大体100万円の弔慰金というものは、そこから計算が出てきておって、葬式費用が10万円、香典が20万円、合計130万円出した。久保山愛吉さんの場合はやはり相当の金額になっている。

私はこの際、21名の遭難者が出て、気の毒にも死亡したのですから、遺族のためには、少くとも原水爆実験によってとうとうなくなられたビキニ患者の久保山さんに、アメリカから補償してくれた程度のところに目標を置いてもらいたい。遺族の諸君は自分の子供や主人の死骸が上らぬために会うこともできずに、実際言うと、今路頭に迷うているのです。これは直接私の選挙区に関係したことじゃないけれども、黙認できませんから、運輸大臣から外務大臣に御交渉願いたい。そういう点に重点を置いて厳重に韓国政府に向って外交上の折衝をして、そうして遺族の諸君が納得のできる程度の弔慰金を取ってもらう。

それと同時に、日本政府の承認なしに日本の領海、特に港あたりには勝手に出入りすることをとにかく厳重に禁止してしまう、外交上の折衝を通じて、無断で日本に来ることを許さないというような、もっと力強い外交上の方針を打ち立てて、韓国政府に反省を促してもらいたい。こういう点も十分お考えの上に、この次あたりには適当な機会に大体具体的な折衝の経過を御報告願いたい。そういうことは遺族の諸君は首を長くして実は待っているので、この点も重ねてお願い申し上げておきます。





昭和31年06月02日 衆議院 運輸委員会
[037]
日本社会党(社会民主党) 青野武一
本会議の予鈴も鳴ったようでありまするので、ほかの諸君の御発言もあろうと思いますが、もう一つ重ねてお尋ねしておきます。御承知の通り日本の国内法には海上衝突予防法というものがあります。韓国のフリゲート艦はこれはアメリカからもらった軍艦でありまするが、とにかく漁船がそばを通っておるのに、わざわざうしろから来て2回も突っかけて、沈没さして、そして日本の外交交渉が始まると、その海上衝突予防法などは韓国としては認めるわけにはいかない。日本の第六あけぼの丸の方が悪いのではないかという。これでは外交交渉もなかなか骨が折れるのではないか。

たとえばアメリカの外交官であるとかイギリスの外交官であるというものを相手にしての交渉であれば、人間の言うことは人間の耳にわかるのですが、この李承晩に対してはなかなかそう簡単にいかないと思いますから、相当の年数がかかると思います。結局豪州のアラフラ海における真珠問題のように、最後はオランダのヘーグ国際司法裁判所にまでかりに持っていくことになりますと、これまた10年では解決がつかないと思う。

そこで今申しましたように21世帯の遺族の方が生活に非常にお困りになるような場合は、ほかの救済の方法がないとすれば、やはりこれは閣議で御決定になって、見舞金の額をつり上げる以外に方法がないと思いますけれども、そういう点についてはまた運輸委員会の日をあらためて、そして担当大臣からお答えを願いたいと思いますが、問題は、外交交渉がすでに始められているか、一体どういう形でどこで交渉が始まって、どの程度まで進んでいるのか。

相手は海上衝突予防法などを認めない、日本の漁船が悪いのだ、韓国に責任がないのだでは、交渉の糸口がないと思いますけれども、事実問題として日本人の船員が21名死んでいる。大体向うの船がしりからぶつけてきて衝突したので、向うの失態であるということは明瞭なはずであります。それが話にもならないようなわからぬことを言っているのですから、交渉はもちろんやりにくいと思いますが、主張すべき点はあくまでも主張していただく。

横須賀の方には年に7回とか韓国の軍艦が、日本政府の許可なしに無断で入ってくる。アメリカと国際的にどういう協定を結んでいるか、それは日本の知ったことでないのに、日本の領海に公然と、アメリカとの軍事関係の打ち合せであるとか、あるいは弾薬を積んでくるとか、もらって帰るとかいうことで、横須賀は年に7回くらいかわかりませんけれども、佐世保の方は20回をこえているのです。

無断で日本の領海にやってきて、日本の漁船をしりからぶつけて沈没さして21名殺しておいて、そして日本の法律は認めない、韓国は何らあやまちを犯したのではないというようなことでは、これは国際法というものはまるきり頭から無視されている。無断で日本にやってくることがすでに誤まっている。

こういう点についても、おそらく話がつかなければただいま申しましたようにオランダのヘーグにある国際司法裁判所に持ち出す以外には方法がない。それでも話がまとまらなければ、結局戦争で李承晩の首をパチンとはねてやる以外に方法がない。そういうような状態に押し込まれてくるのです。

むちゃな法律を出しておるから乱闘事件が参議院で起るのと同じことです。乱闘以上のむちゃをやるからこういう問題が起る。李承晩を相手に話をするということは、気違いに刃物を持たして、自分はからだを縛られたままけんかするようなものだ。

一筋なわのことではいかぬと思いますけれども、21名の死んだ船員の遺族のことを考えて、ほんとうにあたたかい気持で運輸省が中心になって、外務省とも緊密な連絡をとって、たゆまざる交渉を続けていただく。これらの諸君が、ああよかった、だれがしてもこれより以上のことはしてくれなかった、ありがたいことだと、遺族の諸君が喜ぶような結論を目的にして、一つこの上ながらの御努力を、私はそういう遺族の方々にかわって心から希望しておきます。

また適当な機会に担当大臣に対して、それぞれ新しくできて参りました事態に基いて質問することといたしまして、一応第六あけぼの丸の沈没事件についてはこれでもって質問を打ち切ります。