戦後最大の巨大詐欺産業 1/2 ~ 新聞広告料の水増し請求

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昭和31年02月14日 衆議院 商工委員会
[010]
政府委員(公正取引委員会委員長) 横田正俊
それから最近の公正取引委員会の仕事のかなり多くの部分を占めておると思われまするものに、いわゆる不公正な取引方法の取締りという問題があるわけでございます。これは御承知のように独占禁止法に根拠を置きまして、公正取引委員会が不公正な取引方法といたしまして指定するもの、その指定がやはり公取の仕事になっておりますが、その指定しましたものに基きまして、業界におけるおもしろくない、そういう取引方法を取り締って参るという面にかなりの仕事のウエイトが最近では置かれておるのでございまするが、その中で2、3申し士げますと、ます第1に新聞における不公正な取引方法の問題でございます。

これは日常御承知のことと存じまするが、新聞業界におきましていろいろないわゆる販売戦がだんだんいき過ぎて参りまして、景品、招待つきの販売であるとかあるいは新聞社が販売店に対しましていわゆる押し紙をするとかその他おもしろくない方法が相当とられておりますので、これは昭和28年に公正取引会員会が業界等からの申し出もございまして、いろいろ調べました結果おもしろくないと思われるものにつきまして不公正な取引方法の指定をいたそうとしたのでございまするが、この際は、有力な新聞社からそういう問題は業界にまかせてくれ、あまり役所の方で手を入れないでくれといって、いわゆる自粛態勢をとるからというお話がございましたので、28年には警告を出した程度にとどまったのでございます。

業界におきましては、その後いろいろな手段を講じて自粛自戒に努めておったようでございまするが、やはりそこにどうしても自粛だけでは守り切れないものがございまして、特に最近、昨年の暮れでございまするが、御承知の大阪読売新聞は2億円の抽せん券、景品をつけまして抽せんをするというような、かなりとっぴな手段まで用いるというようなことが出て参りましたので、やはりこの際不公正な取引方法の指定をすることが適当であるという――これはむしろ業界の方からそういう要求が出て参りまして、かねがね委員会の方でも考えておったことでございますので、昨年の暮れに公聴会を開きまして指定をいたした次第でございます。

これはもちろん新聞の中味そのものに対してわれわれがとやこう言うわけではございませんので、いわゆる不正な不当な売り方という、販売方法そのものに対しまして若干の公けの規制を加えようという趣旨でございます。幸いにその後業界におきましては、ますます自粛態勢も整備せられまして、まだ若干問題は残っておりまするが、ある意味において非常に新聞業界がきれいになっております。しかしこれはやはり今後の問題としまして、指定も最近のことでございまするので、今後もこの方面に相当注意を払って参りたいと考えております。





昭和39年04月02日 衆議院 大蔵委員会
[043]
民主社会党(民社党) 春日一幸
井上さんも東さんも、金融機関の公共性の高さにかんがみて特殊指定を受けることが何か不名誉処分の刻印を押される、こういう感じがするので避けたいという御意見のようでありまするが、私はこんなものはそのような感情で受けられることは不適当ではないかと思うのであります。

御承知のとおり公共性は非常に高い新聞なんかに対しましても、その不公正な取引とおぼしき押し紙等についてはこれは禁止する、これこれは不公正な取引であるといって新聞業務に対してもそういう特殊指定を厳然と行なうことによってそういう不公正な取引を禁止しておるのでございます。

天下何ものをもおそれない無冠の帝王といわれる新聞社に対しても、公正取引委員会は、国の公正な経済秩序というものが何よりも大切なのである、新聞社よりも金融機関よりも何よりも大切なのである、こういう立場からそういう特殊指定を行なっておるこの事例は、十分これを判断される必要があろうと思うのであります。





昭和40年02月05日 衆議院 商工委員会
[011]
政府委員(公正取引委員会委員長) 渡邊喜久造
不公正な取引方法の指定に関する業務といたしましては、従来から指定されていた新聞業に関する指定のうち、景品の提供に関する事項を不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく告示に切りかえ、差別対価、押し紙等の禁止を内容とする指定を新たに行ないました。





昭和40年02月09日 参議院 商工委員会
[090]
政府委員(公正取引委員会委員長) 渡邊喜久造
不公正な取引方法の指定に関する業務といたしましては、従来から指定されていた新聞業に関する指定のうち景品の提供に関する事項を不当景品数及び不当表示防止法の規定に基づく告示に切りかえ、差別対価、押し紙等の禁止を内容とする指定を新たに行ないました。





昭和42年06月01日 参議院 商工委員会
[018]
日本社会党(社会民主党) 竹田現照
それじゃ新聞についてお聞きいたしますけれども、これは38、9年ごろ、新聞の値上げについてだいぶ世論がわき上がったときに、一つのあれが出ましたけれども、新聞の特定の不公正な取引方法というものが、公取にも届けられて認められているわけですけれども、たとえば新聞を売る場合に金銭、物品、あるいは供応、抽せん券、その他に類する経済の利益を供与し、または供与することを申し出るということはいけない。あるいはまた無代紙、または見本紙を配付することはいけない。こういうことになっているのですけれども、現実は新聞の拡販に伴って、これはもう三大紙をはじめ東京なんかはどうかわかりませんですけれども、私もこの間自分の家におりましたら、ある新聞の拡販員がきまして、いろいろ言っていました。そうしていろいろなものを持ってきまして、そしてやっている。これは明らかに39年だったですか、取引方法に関して書かれていることに違反をしている。

特に新聞なんというのは世論を形成するものですから、国会議員ばかりたたかれますけれども、新聞をただで読ませて、それは要領のいいのは半年ただで読むわけですね。1ヵ月ただですから、それで1ヵ月ただで取ってしまう。次の1ヵ月は金を払う。1年のうち半分金を出せば、半分ただで見れるわけです。これは実際問題としていま行なわれているわけですね。

ところが、新聞というのは無冠の帝王で、非常に力があるのかどうか知りませんけれども、自分に都合の悪いことは新聞は書きませんから。こういうことについては、もう少しきちっとした規制を新聞関係者とも十分打ち合わせをしながら、これはただでものを読むとか、ただで何とかというのは最もよろしくないですよ。そういう教育を新聞社が形の上で行なっているということは。

ですからそういうことをやはり公取というものはもう少しはっきりした手立てを具体的に示してほしい、示すべきである。こういうことを私は思うのです。それができないと、やはり新聞のような力のあるものには弱い、弱いものには強い、こういうようなことを言わざるを得ない結果を招くと思うのですよ。これは現実に行なわれているのですから、どんなものですか。

[019]
政府委員(公正取引委員会委員長) 北島武雄
新聞における景品の提供につきましては、不当景品類及び不当表示防止法に基づきまして、新聞業界の中において公正競争規約がございます。景品類は一切提供してはならないという規定で、非常にこまかい緻密な規定がございます。これは自主規制でございます。その上に乗っかりまして、公取といたしましては、39年10月の告示をもちまして、新聞業における景品類の提供に関する事項の制限ということで、景品を提供してはならないということを言っております。若干例外はありますが……。ただいまの無代紙というのは、禁じられているところの景品に入るわけであります。自主規制でも、もちろんこういうことはしてはならないことになっております。

ところが往々にして、こういった無代紙とか、さらにまたポリバケツの提供とか、あるいはプロ野球を見せに連れていく、こういったことが行なわれております。ことに昨年の秋ごろ千葉県の銚子地方におきまして、そういうことが2つの新聞であった。1つは無代紙の提供を始める、専売店が。そうすると、それに対抗しまして、他の1つの新聞がポリバケツの提供を始めるということで、最近泥試合になっておりましたのを私ども調べまして、最近これは新聞の公正取引協議会会長によりまして、これは自主規制でやるべきであるから、これは十分に県下でひとつ自分たちの中で取り締まれという警告を発しております。

[020]
日本社会党(社会民主党) 竹田現照
これは警告をお出しになったケースもあるようですが、現実にそのことがあとを断たないわけですね。新聞のこの問題というのは言われてから久しいのですよ。それでなおかつできないというのは、これは世の中の常識の1つでなければならぬと思うのですが、それがやらないということはどうも公取はなめられているのじゃないか。警告の出しっぱなしで、やり得だ、やっぱりばらまいて新聞を拡販したほうが結果的に新聞経営的な面から考えるとそれはいいのだ、そういうことになっているわけで、これはどうしても規制のしようがないのですか。きのうきょう起こったことでないのです。久しきにわたっているわけですから、これはいまの公取の力量ではいかんともしがたい、なすがままだというふうに言わざるを得ないわけです。





昭和50年06月28日 参議院 公職選挙法改正に関する特別委員会公聴会
[022]
公述人(マスコミ関連産業労組共闘会議事務局長) 隅井孝雄
御存じのように、新聞では拡張販売のために無料の見本紙を使うことがよくあります。特に、最近では新聞社の競争が激化していますから、見本紙とか、宣伝紙の数もふえているわけですね。

まあ、新聞各社は秘中の秘ということで公表しておりませんけれども、私どもの責任を持った調査では、非常に控え目に見ても、この種の、新聞社が出している宣伝のための、無償で配る無代紙が、発行部数の3%を下回ることはないというふうな調査結果が出ています。

いまの新聞発行部数が、1日大体4000万部というふうに言われていますから、少なくとも1日に全国で100万部を超える新聞、発行部数のうちの100万部を超える新聞が、無償というふうなことのために使われるということを前提にして、印刷をされているという事実があることを知っていただきたいと思います。





昭和55年03月05日 衆議院 予算委員会第四分科会
[624]
日本共産党 瀬崎博義
時間がほとんどないのでありますが、新聞の拡張販売の行き過ぎ問題について一言触れておきたいと思います。これもすでに公正取引委員会の方にはいろいろな資料とともに当事者が出向いて質問をしているわけですね。

1つは無代紙の行き過ぎなんですが、朝日新聞の場合ですと、すでに読者台帳をコンピューター化しておって、販売店とそれから新聞社と直結しているわけです。これを見ましても、ずっと月別に購読状況が載っているのですが、Sという印があるのです。これがいわゆるサービスで、大体3分の1以上Sが入っていますね。ひどいのになりますと1年まるまるSというのもあるし、どうしてそうなのかわかりませんが3カ月ごととか6カ月ごとにまたS、Sが出てくるというふうな無代紙状況があります。

それから毎日とか読売なんかの購読申込書を見ましても、最低でも大体3カ月はサ、サ。つまりサービスになるのですね。ひどいのになりますと6カ月サービスもある。

こういう無代紙が結局は新聞販売店の経営を圧迫し、かつまたそこの労働者を世間の常識では考えられない非常にひどい労働条件に追い込むということになっている。

いま1つ言われているのは拡材、拡張用の資材の問題で、いろいろと公取の方の手入れや行政指導もあるものですから、だんだん姿を変えまして、ある新聞社が何というか子会社みたいな商事会社をつくっておいて、その商事会社が新聞販売店に見本のカタログを送る、この中から何かいい景品を選んでください、その景品に対して今度は新聞社が何がしか補助するというふうな仕組みをとっておるというふうな場合も例として出されているわけですね。

こういう問題について公取が調査に入っているのか入っていないのか、調査されているとすれば、法律のどの部分に触れるものとして調査されているのか、簡単に伺いたいと思います。

[625]
説明員(公正取引委員会事務局取引部景品表示監視課長) 加藤中武
お答えいたします。

お尋ねのような事実がございますれば、景品表示法の第3条に違反することになるわけでございますが、新聞業のように公正競争規約が設定されている業界にありましては、そういった違反行為が行われた場合には、まず会員が行った場合にはその運営機関である公正取引協議会が問題の解決に当たるように従来から指導してきております。

たとえば滋賀県の大津地区の無代紙に関しましても、当該地区の協議会から処理結果について報告等を求めてきております。しかしながら、協議会の報告の内容と当委員会に寄せられている情報の内容とに一部食い違う面もございますので、現在これにつきまして事情聴取を行っているところでございます。





昭和55年11月11日 参議院 商工委員会
[149]
日本共産党 市川正一
私は、最近暴力事件まで引き起こし、あるいは裁判ざたにもなるなど、大きな社会問題になっておりますいわゆる新聞の拡販問題について質問いたします。

社会常識を超えて異常とまでさえ言えるさまざまな新聞の拡販競争の結果、景品表示法に違反する無代紙の横行、これによって一般販売店の経営が非常に圧迫されているという問題が、去る3月衆議院の予算委員会の分科会でわが党の瀬崎議員もこれを取り上げました。私はそれを踏まえつつさらに新たな幾つかの問題について取り上げたいと思うのであります。

まず、公正取引委員会に伺います。公取委員会はことしの6月23日付で販売店主に対して新聞の取引実態調査を行い、調査票はすでに回収され、現在集計中だと聞いておりますけれども、この調査の目的について簡単にお聞かせ願いたい。

[150]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
公正取引委員会が現在行っております新聞販売店を対象といたしました調査は、日刊新聞の取引につきまして押し紙、拡材、無代紙といったものの提供行為等が、全国的にどういうような実態になっているかということを把握いたしまして、これらの不公正取引の是正措置を検討するための基礎資料を収集することを目的として実施しているものでございます。

[151]
日本共産党 市川正一
それについて後でさらにお伺いしますけれども、これまで公取は新聞業界に対しては昭和49年の景品表示法違反での排除命令あるいはやはり拡材問題での厳重警告、こういうふうにたびたび行ってきた経過があります。ところが一向に改善されておりません。

今回の全国的な調査でも調査票によりますと、「不公正取引の是正措置を検討する基礎資料とするため」と、いまおっしゃいましたが、その目的が明記されております。したがって、この調査によって依然として景品表示法違反あるいは独禁法違反に該当する実態がもし明らかになるとするならば、当然厳重警告あるいは追加調査などによって違法行為の排除措置をとることになると私は思うのでありますが、公取の見解を重ねて伺います。

[152]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
ただいま調査をいたしておりますのは、新聞販売店を対象としておりますが、これにつきまして独禁法上または景品表示法上の措置をとりますためには、新聞販売店だけのアンケート調査でございますが、それだけでは不十分かと思いますので、場合によりましては必要に応じまして新聞発行本社からの報告を求めるとか、それからヒアリング調査と申しますか、面接の上での調査を行うというようなことで詳細に正確な実態を把握いたしまして、さらには関係者の意見等も十分聴取いたした上で、必要な改善指導措置をとってまいりたいというふうに考えております。

[153]
日本共産党 市川正一
いま公取もおっしゃったように、今度の実態調査は私は3つのポイントがあると思う。1つは押し紙、2つは拡材問題、3つは発行本社と販売店の契約問題、これがいずれも新聞販売の正常化を図る上で非常に重要なポイントだと思う。

そこでまず、押し紙の問題から伺いたいのでありますが、押し紙が独禁法2条9項の「不公正な取引方法」に当たることは、同条項に基づいて公取委員会が昭和39年の10月9日告示された「新聞業における特定の不公正な取引方法」において「新聞の発行を業とする者が、新聞の販売を業とする者に対し、その注文部数をこえて、新聞を供給すること。」というふうに明記していることからも明らかであります。

さらに、昭和39年6月5日付の公取事務局長から新聞協会新聞公正取引協議委員会委員長あての注文部数についての解釈通達では、これも御承知だと思いますけれども、

「注文部数」とは、新聞販売業者が新聞社に注文する部数であって新聞講読部数(有代)に地区新聞公正取引協議会で定めた予備紙有代)を加えたものをいう。

新聞社は、新聞販売業者に対し、その「注文部数」を越えて新聞を供給してはならない。

新聞販売業者は、新聞社に対し、「注文部数」を越えて注文しないものとする。

といたしております。つまり、若干の予備紙等を除いては発行本社は有代での新聞購買者数以上に供給してはならない。販売店も注文してはならないということになっております。したがって、これが守られるならば押し紙の問題なんというのは本来あり得ないことであります。ところが、この公取文書にある予備紙等というのは、これは一体どの程度というふうにまずお考えなのか、重ねて伺いたい。

[154]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
予備紙等につきましては、地区の新聞公正取引協議会におきまして具体的に決めております。

地区によって若干異なるわけでございますが、たとえば東京地区の新聞公正取引協議会で決めておりますところでは、予備紙等という中に3種類ばかりございますが、予約紙というのは月末の2日間限りとか、おどり紙というのは月初めの3日間、予備紙というのは原則的には100部について2部といったような決まりがございます。

[155]
日本共産党 市川正一
100部に2部ということは2%ということになりますね。2%という数字がいま出されましたけれども、しかし本来言うところの予備紙というのは実際もっと少なくて済むわけです。

たとえば、私ここにある有力地方紙の販売店の資料を持っておりますけれども、この販売店の実配数が約6800部に対して、予備紙等の欄を見ると20部ぐらいから30部ぐらいです。つまり0.4%程度であります。実際にはこの程度で十分に、たとえば輸送時のあるいは雨天による破損などのヤレ、あるいはまた配達間違いによる補償等々、これで賄えるわけです。ところが、実態は問答無用で大量の押し紙が横行しております。

今回の公取全国調査でも、調査票はすでに回収されておるわけでありますが、その傾向を公取は十分つかんでおると思いますが、この押し紙についてどういう趨勢にあるのか、現在の掌握された状況を伺いたいんであります。

[156]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
押し紙の実態につきましては、現在調査中の段階でございますので確たることを申し上げられないのでございますけれども、先生御指摘になりました特殊指定が十分遵守されているとは言いがたい状況にあるというふうに思います。

[157]
日本共産党 市川正一
非常にわかりにくいというか間接的表現だけれども、要するに守られていないと。この調査票は7月に回収されたわけでしょう。もういまは11月です。ですからまさに7、8、9、10と4カ月たってまだまとまっていないというのでは、率直に言ってこれは怠慢としか私、言いようないと思うんです。そういう状況だからなかなか改善が進まないということも、私あえて率直に指摘しなければならぬ。

しかし、問題を前へ進めますと、たとえば日本新聞販売協会、俗に日販協と申しますが、この日販協が去る52年にも独自の調査を行ったところ、平均して約8.3%、トータルで290万部の押し紙があったということを公表いたしております。こういうことが公表されているんだけれども、公取はまだ何も手を打っておられない。しかも、私の調査ではこの時点よりも押し紙はさらにいわばひどくなってきている、そういう傾向を生んでおります。

私ここに1つのデータを持ってまいりましたけれども、これは新聞社の名前を言うといろいろその販売店にも迷惑がかかりますから私あえて申しませんけれども、ある全国有力紙、その大阪における事例であります。この文書はことし10月に各販売店にあてられたものですが、「本紙奨励金制度更改及び新設について」と題する文書で、この販売店の場合は10月の実配数は、実の配数は約1000部です。ところがこの文書によりますと、「貴店計画数」という欄がございますけれども、11月、12月合わせてこれを1000部を約1200にしろと、来年の1月、2月は約1300にしろ、3月、4月は約1400にしろというふうに明記されている。この「貴店計画数」というのは実は計画でも何でもないんです。これだけのものが販売店に有無を言わさず送られてくる、そういう数字であります。

そうしますと、約300部、購入部数、実配達部数の2割以上の押し紙になるわけであります。これが全国的な押し紙の実態であります。

もう1つ、私ここに具体的な書類を持ってまいりましたけれども、これであります。これはある有力な地方紙であります。これは公取の今度の調査の対象にもなっているところであります。ここには、「定価改定による特別拡張依頼の件」と題する発行本社の文書がございますが、やり方は先ほどの有力全国紙とほぼ同じであります。ここでも6700部の実配数に対して200数十部の押し紙をはっきり明記しています。それだけではなしに、この新聞社の場合には本社の担当員が販売店に対して、これは押し紙であると明言しておる。その名前もその日付もはっきりしております。こういった押し紙が新聞業における特定の不公正な取引方法に違反するというふうに私は明白に思うんでありますが、公取委員会としての見解を伺いたいんであります。

[158]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
新聞の特殊指定の2項に実は、「新聞の発行を業とする者が、新聞の販売を業とする者に対し、その注文部数をこえて新聞を供給すること。」ということを不公正な取引方法として指定しておるわけでございまして、これは先生御指摘のとおりでございます。

ただいま御指摘のような事実がありますといたしますれば、この指定事項に該当し、独禁法第19条の規定に違反する疑いがあるのではないかというふうに考えられます。

[159]
日本共産党 市川正一
だとすると、いまおっしゃったようにこれは結論として排除措置をとるということにいわばつながると、こう理解してよろしゅうございますか。

[160]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
個別の事案といたしまして、法律に基づきます手続に従いまして処理をいたすことになろうかと思います。

[161]
日本共産党 市川正一
そうすると、その個別的ケース、私一つ一つは申しませんけれども、いまおっしゃったようなことになると排除措置ということにも法的には相なるわけでありますね。

[162]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
具体的な実態を十分こちらでお聞かせいただいた上で判断すべき問題であろうかと思います。

[163]
日本共産党 市川正一
その判断の1つとして排除措置も含まれるということですね。

[164]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
独占禁止法に基づきます措置がとられるということでございます、必要に応じまして。

[165]
日本共産党 市川正一
わかりました。したがって、当然その独禁法の措置の中に入っているということですね。

私、次の問題をこれと関連してお伺いしたいんでありますが、こういう押し紙方式ということによってどういう事態が起こっているかという問題であります。

それは第1に、前回瀬崎議員も指摘いたしましたように、明白に景品表示法に違反する行き過ぎた拡販競争をもたらしております。景品、いわゆる拡材を使った拡販競争については、これはすでに昭和48年に公取が九州地区での拡材を使用した拡販競争に対して朝日、毎日、読売、西日本、こういう各発行本社に景品表示法違反で排除命令を出したり、あるいはその後昭和51年には各発行本社に対して厳重警告もされております。ところが、その後も一層これがエスカレートする方向に進んでいる。たとえば排除命令を出したこともある九州地区を見ますと、ここに新聞労連が調査した資料がございますが、一々その全国紙の名前は言いません。しかし、たとえばディジタル時計だとか、あるいはまた電気毛布、絵皿時計あるいはこたつかは、トランジスタラジオ、こういうものと加えて無代紙と、すさまじくやっぱり横行しているわけです。念のために伺いますけれども、まずこういうような行為というのは景品表示法に違反すると思うんですが、いかがでしょうか。

[166]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
新聞業界の景品の問題につきましては、「新聞業における景品類の提供に関する事項の制限」という景表法3条に基づきます告示が出てございます。それに従いまして景品が制限されるわけでございますが、その中身といたしましては、かなり制限的に規定されておりまして、災害の見舞いとか新聞類似の付録とか、そういったようなものだけに景品は限定されるように規定されております。

[167]
日本共産党 市川正一
いま私が申しましたたとえばディジタル電気時計とか、あるいは電気毛布だとか、そういうものはどうですか。

[168]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
この告示に規定いたします景品には該当しない。つまり告示違反になると思います。

[169]
日本共産党 市川正一
告示違反になる、わかりました。

そこで、私続けて伺いますが、発行本社によって構成されている日本新聞協会は、52年の7月1日に共同宣言を発表しております。その共同宣言の中に、独禁法特殊指定を厳守励行する。また景品表示法違反の不公正な販売方法を根絶する。こういうふうに内外に宣言いたしております。

ところが実態を見ますと、全くこれは世間を欺くものという結果になっておるんです。なぜなら、こういう行き過ぎた拡販競争というのは、直接的には販売店やあるいは拡張団と言われるものがやっているのでありますが、そうせざるを得ないようにしているのは実は発行本社による押し紙であります。また、片務契約と言われておる販売店に対する不当な経営支配あるいは拡張活動の押しつけであるからであります。

たとえば20%を超すような押し紙が来ますと、これも有代でありますから、有料ですから、ですから無代紙として使うだけではなしに拡材をつけてどうしても拡販に走らざるを得ぬのであります。また現にそうさしているのであります。

しかも、その拡材はと言うと、私ここに持ってきましたけれども、これはある有力全国紙の場合でありますけれども、その本社内に特別の拡材専門の会社までつくる。そこから拡材のカタログをこのように葉書つきで各販売店に送るんです。そして販売店の成績いかんによってこの拡材費は100%販売店持ち、場合によっては五分五分にしてやるというような、各販売店をこういう形でコントロールする、そういう支配が現に行われております。

そして、私ここに各発行本社ごとの、大臣も見てください。拡材の現物を持ってきました。これはある全国有力紙のいわゆるこういう形での拡材であります。これはヘルスメーターと言うんですね。それから先ほど来私言っておりますこれが電気時計です。これがこういう食器であります。そのほかビールとかあるいはしょうゆ、こういうもののギフト券なんですね。使われておる。

また、これは別の全国紙の拡材です。これは「味の素」とサラダオイルのセットですね。これはシーツ。これはシャンプー。こういうものが続々使われておる。こういう形でいわば拡販競争に追いやられている。

公取に伺いますが、これが発行本社による景品表示法違反行為であるということは明らかであると思いますが、いかがですか。

[170]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
「日刊新聞の発行又は販売を業とする者は、新聞を購読するものに対し、景品類を提供してはならない。ただし、次の各号に掲げるものは、この限りでない。」ということで、災害見舞いとか新聞類似の付録等が決められているわけでございまして、ただいまお示しされましたような物品が新聞の購読の勧誘のために提供されているということでありますると、この告示に違反するおそれがあるというふうに思います。

[171]
日本共産党 市川正一
おそれがあるというんじゃなしに、違反しているということじゃないんですか。こんなあんた、新聞販売とこのディジタル時計とどんな関係おまんのや。おそれがあるんじゃなく、違反しているんじゃないですか。

[172]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
それらの物品が新聞の講読の勧誘のために提供されたということになりますと、具体的に調査をいたしてみませんとわかりませんけれども、非常に濃厚に告示に違反するということになろうかと思います。

[173]
日本共産党 市川正一
濃厚って、あんた、パーフェクトにいっとるがな。

田中大臣、こういう実態なんですが、こういう姿というのは好ましい正常な姿というふうに通産大臣お考えでしょうか。

[174]
通商産業大臣 田中六助
余り正常な姿とは思いません。

[175]
日本共産党 市川正一
正常でないばかりか非常にこれはやはり異常な姿であります。

そこで私引き続いて議論を進めますが、もっと社会的にも異常なといいますか、容認されないようなことが現に行われております。これは別のまた全国紙のケースでありますが、拡材の中にこういう文書が入っているんです。たとえばこういうものの中へ、これがそのコピーでありますけれども、「御苦労さまです。〇〇新聞は〇月〇日で休ましてください。以後配達されても代金はお支払いいたしません。」というのが、こう入っているんです。言いかえれば、自分の競争相手の新聞、これを断らせる文書もこの中に入れて配っている。こういうものは独禁法に違反するのではないでしょうか。

[176]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
不公正な取引方法の中に12ございますけれども、いまお示しの行為そのものがストレートに該当する行為というのはちょっと見当たらないかとも思います。

[177]
日本共産党 市川正一
独禁法の19条に該当するんじゃないですか。

[178]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
19条の不公正な取引方法につきまして、独禁法の2条9項で規定がございます。その2条9項を受けまして公取の告示が出ておりまして、その告示で不公正な取引方法というのを1から12まで規定しております。ただいま先生が御指摘になりました、何といいますか、チラシといいますか、中に入っている紙だけではこの不公正な取引方法に該当する、ストレートに該当するところがないのではないかというふうに申し上げたわけでございます。

[179]
日本共産党 市川正一
これ明白に19条に違反するというふうに私ども考えます。

時間がないので進めます、きょうは持ち越しますけれども。

さらにこういうことも私、拡販の資料として示したいんでありますが、これはある全国紙の拡販団である小堀セールス企業、これは最近週刊誌でも盛んに問題になっておりますけれども、そこの、グループが販売店に引き継いだ引き継ぎ書の現物であります。この中に明白に「有材」と、こうなっている。拡材によってこれはふやしたいわば読者であるということを明記して、そして引き継いでいる。こういうふうなことがいわば横行しておるんであります。

そこで公取に伺いますが、共同宣言やあるいはその他の態度表明があるにもかかわらずこういう押し紙、拡材による拡販競争がかえって横行しているというのは、なぜそうなるのかという点についてどう見ておられるのか、その点をお伺いしたいんであります。

[180]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
公正取引委員会といたしましても、再三にわたりまして排除命令とか警告等の措置を講じまして、それからこれに対応いたしまして業界におきましては販売正常化に関します共同宣言等の措置も講じておるわけでございますが、それにもかかわらず、御指摘のように、販売正常化が実現していないのではないか、販売正常化が実現していないとすれば、どこに具体的な問題があるのか、これがまさに実は私ども公正取引委員会が今回の調査を開始するに至った問題意識でございます。したがいまして、どこに問題があるかという点は調査の過程で十分解明すべき事項と心得ておりまして、調査の進展に応じましてそれらの問題を解明してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。

[181]
日本共産党 市川正一
私はそういう立場から先ほど来いろいろの材料を出して、あなた方がやはり早く手を打たなければならないということで問題をここで追及しているわけでありますが、その一助として若干また角度を変えて問題を伺いたいのでありますが、こういう押し紙拡材による過当な拡販競争というものが販売店の経営者、そしてその家族、さらには販売店に働く労働者に非常に大きな犠牲を強いているということであります。

公正取引委員会に伺いますが、押し紙がどの程度販売店の経営を圧迫しているか御存じですか。

[182]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
押し紙の影響といいますか、販売店に対する影響につきましても調査の中身といたしまして調べておりますので、その分析を待ちたいというふうに考えております。

[183]
日本共産党 市川正一
私その実情の一端をここで明らかにしたいのでありますが、たとえば押し紙によって結局販売店は自腹を事実上切らされるわけでありますから、販売店の実質マージンは、たとえば20%の押し紙があると押し紙のない場合の約40%しかならない。いわば半分以下にマージンが減ってしまうんです。そこへ持ってきて拡材の費用でしょう、これですよ、こういうものを押しつけで買わされるわけですよ、押し紙と一緒に。そして無代紙の費用でしょう、これもいわば自分で立てかえなければならない。こうなってきますと、この販売店の経営というのはもう非常な負担であり、危機であります。だからこそ、販売店の転廃業は1年間で大体5%から10%という高さで転廃業せざるを得ない。

そしてこういった販売店の立場、これを決定的に弱いものにしているのが片務契約と言われる発行本社、たとえば有力全国紙ですよ、これと販売店の契約であります。たとえば私はここに契約書のコピーを持ってきました。いずれも全国紙であります。この契約書によりますと、ある全国新聞の場合は発行本社が目標部数を設定して、販売店がそれを達成できない場合にはいつでも契約が解除できることになっております。また別の全国新聞の場合は、私一々その条項を読みませんけれども、減紙などがあった場合には、発行本社は地域の変更とか販売店の新設、契約の解除ができるということになっているんです。まさに一方的、片務的です。

公取もこの種の契約書はすでに入手されておると私思うんでありますが、こうした条項はいわゆる優越的地位の乱用に当たるのじゃないですか。

[184]
政府委員(公正取引委員会事務局取引部長) 劔持浩裕
私ども調査の一環といたしまして、新聞販売店が新聞発行本社と締結いたしております契約につきましても調査しております。先生御指摘のような条項がある場合もあるかと思いますけれども、私どもの基本的な考え方といたしましては、その契約書自体だけで優越的地位の乱用という不公正な取引方法に該当するというのはむずかしいのではないかと。契約書の条項と、それからそのほかの不公正な取引方法に該当する、たとえば押し紙とかそういったようなものとの組み合わせがあった場合に、これは独禁法上の問題として処理の対象になるのではないかというふうに考えております。



[191]
日本共産党 市川正一
とにかく労働省御存じだと思うけれども、毎朝午前2時半ごろに起きて、3時までに販売店に出勤して、チラシをセットして、そうして3時半から4時には、もうバイクや自転車に積み込んで配達する。7時ごろにそれを終えて朝食、朝飯を食うて仮眠する。再び拡張や集金に回って、午後3時からもう夕刊作業を開始、夜はナイター集金と拡張で8時ごろまで走り回っている、こういう連続であります。

こういうふうに睡眠時間も十分とれず、また低賃金で、社会保障制度もきわめて不十分、こういう販売店の労働者の実態は、やはり早急に改善の必要が私はあると思う。そのためにも押し紙、過当競争による販売店の経営困難を改善することが不可欠であるということを、私この際、政府にもまた公取にも認識を新たにしていただきたい。

言いかえれば、こういう拡販競争による労働強化を改善する大もとはそこにあるというふうに思うのであります。ところが、ある発行本社は、販売店労働者が労働組合をつくると、販売店に圧力をかけ、その販売店の契約を改廃するというふうな形で、それをつぶそうとするケースまで出てきております。その具体的事例を私は幾つも承知いたしておりますが、したがって労働省としては、販売店主に物を言うだけではなしに――それではまことに片手落ちなんです。発行本社自身も値上げのときには、たとえば私はここにそのコピーを持ってきておりますけれども、こう言っておるのです。所長並びに従業員の皆様の生活と販売店経営を正常な姿に戻すための料金改定と言うておるのです。また、これまでの質疑の中でも明らかにいたしましたように、こういう発行本社に対して、労働条件改善のために努力するような、必要な指導や勧告を労働省としてなさることが根本的解決のいわば道を開くと、こう思うのでありますが、いかがでしょう。

[192]
説明員(労働省労働基準局監督課長) 岡部晃三
新聞販売店で働かれる労働者の労働条件の問題につきましては、基本的にはこれを使用する各新聞販売店の責任であろうかと存ずるのでございますが、しかし、新聞販売店の業務と申しますものは、その性格からいいまして、一定の休刊日を除く連日の宅配業務ということでございまして、特殊な社会的要請にこたえるものでなければならないわけでございます。また、規模は小さいということから、これら労働条件の改善につきましては、新聞を発行する新聞社の側の協力、指導というところに負うところも多いというふうに考えるところでございます。

このため労働省におきましては、従来から各新聞社に対しまして、あるいはまた、それで構成いたしておりますところの日本新聞協会に対しまして、労働条件確保上の問題点につきましていろいろと働きかけを行ってきているところであります。また、この新聞協会におきましては、その活動の一環といたしまして、販売委員会あるいはその中の販売労務専門部会でございますか、そのようなところでいろいろと自主的な活動も高められておられるところでございますが、なお労働省におきましては、一層日本新聞協会等と連携を深めまして、労働条件の維持、改善に遺憾なきを期するようにやってまいりたいと思っております。

[191]
日本共産党 市川正一
大元にメスを入れていただきたい、希望します。





昭和56年03月02日 衆議院 予算委員会第四分科会
[387]
日本共産党 瀬崎博義
まず、公正取引委員会に伺います。

一昨日、公取はようやく新聞業の取引実態調査の結果を発表されたわけであります。この中で、特に注文部数を超えて販売店に本社から送られてくる部数、いわゆる押し紙でありますが、その率、それから拡張販売用の景品いわゆる拡材、それから無代紙の状況、数年間の傾向がどうなっているか、ごく簡単に手短におっしゃっていただきたいと思います。

[388]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
まず、今回の新聞販売店を対象にいたしました実態調査の結果によりますと、先生最初におっしゃいました押し紙でございますが、この調査では残紙無代紙ということで出しておりますが、これをトータルいたしましたものが一応押し紙と見られる、そういうことでございまして、その押し紙率は平均しまして3.4%という数字になっております。

それから、拡材、無代紙の提供の状況でございますが、一般的な実態といたしまして、そういう拡材、無代紙の提供による新聞の購読の勧誘という行為が日常茶飯事になっていると答えた販売店が約60%に達する、そういった傾向がここ4、5年間増加する傾向にあるというふうな回答をした販売店が65%強に達しておる、そういう状況でございまして、全般的に申しまして、かなりこういった拡材、無代紙の提供行為が行われておるという実態でございました。

[389]
日本共産党 瀬崎博義
千葉県では、新聞販売の自主規制機関であります新聞公正取引協議会千葉県支部が中心になって、一般紙全社の販売店会が連名で、無代紙、大型拡材提供をやめる申し合わせをして、そのチラシを出した、これが昨年の11月でありました。

ところが、その直後の12月3日から、読売新聞社の拡張団がバスでこの千葉県下に乗り込んで、従来の拡材には見られなかった高級エアポット、時価約6000円を使って拡販に乗り出した。これがその使ったエアポットです。公取は承知しているはずです。

昨年の11月11日には参議院の商工委員会で、通産大臣も同席のもと市川参議院議員がディジタル時計とか味の素セット、タオルセット等を示しました。大体あのときは数100円から2000円どまりの景品だった。これは6000円。また一段階エスカレートした。これに対抗しようと思うと次は1万円台になってくる。こういう状況であります。そこで、販売店主の方々は私と一緒に12月6日公取に行って、この事実――このときにはこれを持って勧誘に入った家の住所、名前、またはその拡張団のバスの写真というものを添えて公取に是正を要求したのであります。公取としては、私どもの指摘した事実を確認しましたか。

[390]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
お申し入れの案件につきましては、新聞公正取引協議会の方に通告をいたしまして、自主的に規制するということで定めております規約あるいはそれに基づく規則に基づきまして処理するように通告いたしました。

[391]
日本共産党 瀬崎博義
ちゃんと連絡がとれるように、事実が確かめられるように、このエアポットを持ち込んだ家の住所、名前まで言ってあったでしょう。その事実を確認したのかどうか。それを一言答えなさい。

[392]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
御指摘のような事実があったということでございます。

[393]
日本共産党 瀬崎博義
読売の発行本社に対してはどういう措置をとりましたか。

[394]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
即刻そういった行為をやめるように指導いたしました。

[395]
日本共産党 瀬崎博義
それは読売の本社に対してやったということですね。

[396]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
そのとおりでございます。

[397]
日本共産党 瀬崎博義
事実これはとまったのです。先ほどあなたが紹介された実態調査の結果についても、販売店からは、本社派遣の拡張団による違法、強引な拡張は目に余るものがある、これらの行為を中止させ、販売を正常化するため、公取において、業界特に発行本社に対し強力な指導または取り締まりをしてほしい、こういう強い意見が出ておることをあなた方もお認めになっているわけです。やれば効果があることは、この千葉県下の例で1つ示されているのであります。

そこで、あの席上で公取の方から正式に独禁法並びに景表法違反として申告してほしい。販売店側の方々もそのつもりでいらっしゃったのでありますが、実際には正式の申告は出ていないわけです。この読売新聞の違法な、強引な拡販状況を報告に来られた販売店側の発行本社、これは本来読売とは競争相手になる会社なのです。ところが、その発行本社がしばらく申告を見合わすように、こういう説得といいましょうか圧力をかけたと見られる節もあるのです。これは私の感触であります。こうなってまいりますと、報道の自由は民主主義のシンボルであり、断じて守られねばならぬわけでありますし、その報道の自由、民主主義の守護神をもって任ずる新聞発行本社が、一方で不公正な手段を使っての激しい販売合戦を演じる。力の弱い販売店が、何とか法によってこれを是正してもらおう。ところが、そういう営業を守ろうとする自由に対していろいろな圧力がかかる。これでは、片方で民主主義を守ると言いながら片方で民主主義を抑えるのですから矛盾もはなはだしい。大臣、そういうふうにお感じになりませんか。

[398]
通商産業大臣 田中六助
私も実は新聞記者の出身でございまして、そういう点まことに恥ずかしいことだと思いますし、そういう販売合戦は悪循環をしてますます世の中を乱すような糧を与えておるようなもので、本当は社会の木鐸としての活動をしなければならない新聞の精神に大いにもとると思います。

[399]
日本共産党 瀬崎博義
さて、公取のこの実態調査についてでありますが、当初から、販売店の方から実態を正しく書き込んでいいのだろうか、こういう問い合わせとか、発行本社の方からこういうふうに書いておけというふうな指導が来ている、こういう問い合わせというのが来ておったわけです。公取の努力は多としながらも、われわれの心配したとおり、出ておる数字は過小評価になっておるのではないかと思うのです。

たとえば2年前に日販協が集計した調査でも押し紙率は8.3%、約300万部、こう出しているのです。先ほど御報告になったように、公取の結果では3.4%なのです。今回の調査結果が正確な実態を反映したものと見ていらっしゃるのか、これは大分少な目であると見ていらっしゃるのか、改めていかがでしょうか。

[400]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
今回の調査結果は、販売店から出されました数値をそのまま集計した結果でございます。先生御指摘になりましたように、アンケート調査票を発送した直後に、販売店の調査票の記入に対して発行本社の方からいろいろ指導をしているというふうな情報も幾つか入っております。

それから販売店サイドにおきましても、残紙あるいは無代紙、そういった数値について控え目な数字を出すというふうな事実上の心理的なものが働いておるというふうな推測もあるわけでございまして、この数値が現実の姿をそのままあらわしておるかどうかという点につきましては私どもも若干の疑問を持っておる、そういうことでございます。

[401]
日本共産党 瀬崎博義
主査の了解を得て、この写真を大臣に見ていただきたいと思います。――いまお渡し申し上げましたこの写真は、大阪の豊中市螢ケ池にあります樋口新聞店、ここで発生をいたします1日分の残紙の写真なのであります。ビニール袋に包まれたままの姿がくっきり写っているでしょう。この新聞は写真でもはっきりわかりますように日経新聞であります。

この新聞店は毎日新聞約8000部と日経新聞約4800部を扱っているのでありますが、毎日の方の残紙は約400部でありまして残紙率5%、公取の調査よりは多い率ではありますけれども、もちろん業界の常識から見ればこれはきわめて少ない方に属します。日経の方は4800部で、うち1500部が残紙でありますから、残紙率は30%を優に超えるのであります。小さな販売店の扱い総部数ぐらいに匹敵するのですね。

この店の御主人は、本当に解決に努力してもらえるのなら私も勇気を出して事実を報告したい、こうおっしゃって写真を撮ることを許されたわけであります。そして、自分が陰に隠れておったのでは真実味が少ない、証人として写真に入ってもよいとそこに入られたわけであります。なぜ公取がこういう実態をつかめないのか、私は不思議なのですね。公取自身はどうお考えですか。

[402]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 河村穰
今回の調査は全国的、一般的な調査ということで、販売店を対象にした調査を行ったわけでございますが、この調査結果によりまして押し紙といった行為もかなり行われておるというふうにうかがわれますので、こういった点につきましては引き続きまして新聞発行本社、全国の新聞発行社でございますが、それを対象にいたしまして、こういった実態あるいはその背景をなしておると見られる新聞販売店との間の取引契約、そういったものをあわせまして調査を続行する、そういう予定でございます。

[403]
日本共産党 瀬崎博義
ですから、ぜひこの豊中の樋口販売店にも調査に行ってもらいたいと思います。

大体公取に従来余り本当のことを言われないのは、言ってもきちっと処置してくれない、残るのは発行本社の圧力を後で受けるだけ、こうなるからなんですよ。やる以上はきちっとやってもらいたい。

では、この莫大な残紙がどうなるのか。いまお渡ししましたのに伝票の写しがありますね。これは新聞残紙商ウエダというれっきとした企業の残紙回収伝票であります。こういう新聞残紙商という独立した企業が存在するような今日になっているのですね。

これは1週間に2回回収であります。つまり3日ないし4日に1回です。その1回分の伝票、何とほとんどが日経でありますが、残紙470キログラムと記録されているでしょう。これは2月28日ですから直近のものであります。ですから、ざっと1週間で1トンに達する。1月で4トンですよ、トラック1台分。これがたった1つの店で起こっているわけです。

全国に何千、何万と販売店があるのでしょう。恐るべきことだと思いますね。このお店はこれで月に7、80万円の損失になっているとおっしゃっています。

大臣にここで伺いたいのでありますが、通産省の方は省資源・再資源化政策推進費として56年度予算に3億300万円組んでいらっしゃる。御丁寧にその中に古紙対策4200万円をちゃんと組んでいらっしゃるのですね。一体何のためにこんなものを組んでいるのだろう、片一方でこういうものをほっておいて。矛盾を感じます。省エネルギー対策費として2億3000万円組んでいらっしゃる。しかもこれは室を課に昇格させていらっしゃる。

貴重な森林資源を伐採し、莫大なエネルギーと人手をかけてパルプにし、紙にし、そして印刷をし、運搬をして、全く読者の目に触れないまま、またこの残紙回収商によって製紙工場に持っていかれる。ここの御主人がおっしゃいました。これだけ省エネルギー、省資源の叫ばれている中に、政治がこんな大きな浪費を許していていいのだろうかと。本当にそうだと思いますよ。力の弱い庶民が、新聞社の圧力がかかるかもしれない、しかしあえて勇気を出してその事実を訴えていらっしゃるのです。これはもうまさに大臣の所管事項なのです。新聞発行本社のこの大きな浪費をこのまま放置してよいとお考えですか。

[404]
通商産業大臣 田中六助
いいとは思っておりませんけれども、公取関係の人数も少なくて微に入り細にわたっての調査ができないのじゃないかと思いますけれども、販売店と新聞本社との関係は公取の所管事項でございますし、この究明をさらに続けていただきたいと思います。

それから、古紙とかそういうものの対策はそういう新聞関係とは別に、本当にそういうパルプ関係が困っておるのが事実でございますし、だからといってそういうような対策を無視できませんし、そういう点は総合的に始終反省も加えて検討してまいりたいと思います。

[405]
日本共産党 瀬崎博義
最も有効なこの際の省資源、省エネルギー対策は、まさにこういう全く使われないむだ紙をつくらないことですね。それにこしたことはありませんよ。そのために何億という予算を組んでいるのですから有効に使っていただきたいと思います。

こうした押し紙とか拡材が新聞のコスト高、値上げの一要因になっていること、力の弱い販売店の経営を圧迫していること、新聞の発行、制作、運搬、販売に携わっている労働者の労働条件にしわ寄せされていることは紛れもない事実なのですね。こんなひどいことがまかり通るのは、結局発行本社の力が余りにも強過ぎる、販売店の力が余りにも小さ過ぎる、ここに起因するのです。ほっておけば必ずこういうことが起こるのです。押し紙を断わりますとすぐ店舗の改廃のおどしがかかってくる。さらに抵抗を続けると、そういう店舗に対しては紙止めというのまで起こってくるのです。専門用語であります。これはあらかじめ他の店に配達態勢をとらせておいて、そしてその問題の店に対する新聞の発送をある日突如としてとめる手段なのですね。こんなことまで発行本社はやるわけなのですね。



[409]
日本共産党 瀬崎博義
ぜひ一度大臣も販売店の代表の方々といつか時間をとってひざを交えて懇談をする等、お考えいただいたら結構かと思うのです。

いみじくもいま大臣はABC協会に指導したいとおっしゃいましたね。確かにこれは問題なんです。押し紙がふえている原因は、各社の広告収入が押し紙分を含む部数によって決められている、ここから来るのですね。

新聞協会の調査によりますと、新聞業界の総収入に占める広告収入と販売収入の割合を見ますと、昭和52年の上期で販売収入43.3%、広告収入44.7%、これが去年の上期になりますと、販売収入40.7%、広告収入46.3%とますます広告収入にウエートがかかっている傾向がわかるのですね。

この広告収入の算定基礎になるのが販売部数。この販売部数は日本ABC協会という公益法人発表のものが使われるわけなんです。この協会にいま公益法人の認可を与えていらっしゃるのですが、一体どこが公益性なのか、簡単に御説明いただきたいと思います。

[410]
政府委員(通商産業大臣官房審議官) 神谷和男
社団法人でございますので、一定の資格、いわゆる構成員となるための資格は限定されておりますが、基本的にその目的とするところは、広告の媒体となる新聞等の部数等を公正に調査確認するというところにその目的がございまして、それにより広告及び宣伝の合理化を図り、もって国民の文化的生活の向上に資することを目的とする、この目的をもって公益性を認定し、公益法人として認可をしておるところでございます。

[411]
日本共産党 瀬崎博義
一応通産省が認可した公益法人の発表する数字だというのでこれが一定の権威を持ってくるわけなんですよ。だからそういう点での通産省のお墨つきが出ているということがきわめて重大なんですね。

これは大臣、やはりその道の御出身だけに指摘は当たっていると思うのです。私どもも直接ABC協会を調べに行った――調べるといいますか、いろいろ事情を聞きに行きました。あそこには公査員という方がいらっしゃるのですね。新聞の販売部数を公正に調査する意味だと思うのですが、公査員というのがいらっしゃいます。

公査員というのはたったの12人なんです。2人1組で協会に加盟する新聞71紙と雑誌53誌について立入調査をしているわけです。新聞については在京本社は14紙だけ、あとの57紙は日本全国に散っているので、6組くらいのチームではとてもじゃないが全国の新聞社を入念に調査することは初めから不可能である。ましてや販売店へ立入調査するなどということはとうていできない。1紙につき8ないし10店舗の販売店を選んでやっているが、短時間店頭で店主から聞き取りをやるくらいである。

大体同協会の予算を見ましても、3億円の予算があるのですが、公査費というのはたったの1000万円なんです。したがって、予算や人員の関係で実売部数まで考査することはとてもできない。

部数レポートはあくまで押し紙などのない販売正常化の状態を前提に発行本社各社からの報告部数を信頼して、それを発表しているにすぎない、こういうことなんですね。だから実売部数というのは全くこれはうそ偽りになってくるのですよ。こういうものが基本で広告収入が決まるから、各社は押し紙でも何でもいいから、要は発行部数をふやせ、こういうことになってきますね。

そういう点ではひとつ公益法人として認可される以上、必要以上の干渉はする必要はないと思いますが、しかしやはり国民との関係で一定のABCに責任を果たしてもらうべき分野についてはしかるべき通産省の指導があってもいいのではないかと思うのですね。先ほどの大臣の御答弁を少し具体化していただきたいと思うのです。

[412]
政府委員(通商産業大臣官房審議官) 神谷和男
御指摘のように広告関係からこの数字が収集され、取りまとめられておるわけでございますので、御指摘のような意識が出てくるということを私も否定できないと思います。しかし他方、御承知のように公益法人とはいいながら、一定の組織、一定の財政のもとで行いますので、ある程度の限界というものが出てくる。できるだけ小さな組織、小さな予算でも真実に近いものを求めていきたいというつもりで公査というようなこともやっておるのだろうと思いますけれども、やはりそこには到達し得る限界というものもあろうかと思います。

われわれといたしまして承知しておるところでは、やはり販売店と新聞であれば新聞本社との契約に基づいての部数というものを一応原則としておりますし、その契約の中のどの部分が不公正取引に該当するようなものによって構成されておるかどうかという点までこの社団法人に全部解明させるということは非常にむずかしいかと思います。しかし、御指摘のようにせっかく法人も公査ということをやっておるわけでございますから、予算なり人員の許す範囲内で一生懸命やるよう指導してまいりたいと思います。





昭和57年03月08日 衆議院 予算委員会第四分科会
[292]
日本共産党 瀬崎博義
昨年の3月2日の分科会でも私は質問しておりますが、当時の河村取引課長は、実態調査結果の総体的なまとめとして、「全般的に申しまして、かなりこういった拡材、無代紙の提供行為が行われておるという実態でございました。」と断言しておるわけですね。

発行本社にもいろいろ申し入れをしているということなんですが、この公取が公式に存在を認めたかなりの拡材、無代紙の提供行為の原因は、新聞販売店自身に原因があると考えているのか、発行本社側に原因があると考えているのか。

別の言葉で言えば、販売店に責任があると考えているのか、発行本社に責任があると考えているのか、どっちですか。

[293]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
どちらの責任かということでございますけれども、通常の場合、私どもの方は、発行本社の方が自分の紙数を拡大するために景品を出していらっしゃるのじゃないかというような受けとめ方をしておるわけでございます。

[294]
日本共産党 瀬崎博義
ところが、あなたのところの相場取引部長は、ことしの2月12日新橋の航空会館で開かれた日販協の全国代表者会議でこういう発言をしたというのです。「これまで発行本社の話をいろいろ聞いてきたし、調査も行ってきたが、本日改めて」改めてですよ、「新聞販売の実情を知った。しかし一様に不正常販売の起因するところは本社側の部数競争によるもので本社をきびしく取り締まってほしいというが、違反行為を行っているのは販売店であり同罪だ。」「本社の取り締まりもさることながら景品を使ってるのは店側で、この違反を放って置けなくなる。直接の違反行為をしているのは店で、本社だというならその動かぬ証拠を提出してほしい。」こんなことを言っているのですね。

発行本社と販売店は同罪だと言わんばかり。少なくとも同列に置いている。違反を取り締まるとするならむしろこの販売店をやらなければいかぬとさえ言っているわけでしょう。あなたのいまの答弁とは全然違うのですね。こういう態度で公取が臨んでいるとしたら事態は改まらないと思うのですが、こういう部長の発言の責任をどうします。

[295]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
先生の御指摘の点でございますけれども、私どもの相場取引部長が新聞販売店と発行本社は同罪だという発言をしたということなんでございますけれども、私その場に直接いたわけではございませんが、取引部長の発言しました趣旨は、発行本社とそれから販売店とが同罪、同罪という言葉を使ったかどうか、使ってなかったというように解しておりますけれども、同罪ということではありませんで、むしろ発行本社が出すということにつきまして、販売店もそれに同調して同じようなことをやると違反行為というものはおさまらない、むしろ販売店の方も、力を入れてそういうようなことをやらないように話し合ってやっていっていただきたいというような趣旨を発言したんだろうと理解しております。

[296]
日本共産党 瀬崎博義
実は、この相場部長が、違反行為をしているのが本社だと言うんならその動かぬ証拠を出してほしい、こう言ったのですね。その動かぬ証拠を全面的に提出した人があるわけですね。

これは昨年の10月19日でありましたが、奈良市で読売の鶴舞販売店の営業をしておった方、この方は約10年間読売の販売店をやっていらっしゃった北田さんでありますが、残念ながら発行本社からの圧力を受け、読売の指示によって営業権を譲渡し、廃業に追い込まれたわけであります。

この方の提出した資料というのは間接的なものではなくて、発行本社と販売店つまり自分との直接取引の実態を示す資料を全面的に提供されたわけでしょう。

すでに半年を経過しているわけでありますが、この調査結果はどういうことになりましたか。

[297]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
いま先生御指摘の北田販売店さんのことでございますけれども、私どもは、申告がありましたものですから、まずそういう資料がどういう内容を持っているのかというのを調査いたしまして、それから新聞発行本社、この場合は大阪読売新聞社でございますけれども、これにつきまして、その取引状態がどうなっているかということを現在鋭意審査している状態でございます。

[298]
日本共産党 瀬崎博義
一体いつ結論が出るのですか。

[299]
説明員(公正取引委員会事務局取引部取引課長) 植木邦之
私どもが現在鋭意審査しておりまして、いろいろな事実を詰めていきたいと思っておりますので、あとしばらく時間をおかし願いたいと思います。

[300]
日本共産党 瀬崎博義
北田さんが提供されたときに私も同行しておりました。呼び出しを受ければ東京へでも出てくるともおっしゃっておりました。確かに電話での連絡は倒産されておってつきませんが、手紙を出せば喜んで来られるという立場にある。ところが、聞けば、きょう初めて公取委から正式に事情聴取に出ていったということじゃありませんか。まさに、きょうこの質問があるから、かっこうつけるために行っておる、こうとしか思えないような態度なんですね。それは手が足りないというなら率直にそう言えばいいけれども、しかし、あれだけの資料が出されて、6カ月たってこの事態、これは怠慢と言われても仕方がないと思うのです。

北田さんが提供した資料というのは、ただいま大臣にお見せしたその資料の3枚目以下をごらんいただいたらいいのですが、先ほど言いましたように、まさに直接、取引の実態を示す資料なんですよ。それはごく一部であります。

若干御紹介しますと、③というのが、いわゆる売れない新聞を押しつけてきている実態であります。本社送り部数は本社のコンピューターで打ち出された内訳書の新聞代請求額明細より拾ってあります。それから実配数は北田販売店の読者一覧表から集計をしたものであります。これで見てわかりますように、51年の1月、本社送り部数791、実際の配っている部数556、残紙235、残紙率29.7%、52年1月送り部数910にふえます。実配数629、残紙数281、残紙率30.9%に上がります。53年1月本社送り部数1030、実配数614、残紙416、残紙率は40.4%になります。54年1月送り部数1095、実配数680、残紙415、残紙率37.9%、途中ちょっと飛ばしますが、55年6月送り部数1100、実配数675、残紙425、残紙率38.6%、平均して大体3割から4割残っていくわけなんです。

そういう状態がずっと続いたものですから、このままではとうてい成り立たないというので北田さんは55年の6月、本社の送り部数を実情に合わせて減らしてほしい、こういう交渉を始めたわけです。確かに減らしてくれたのです。

55年7月には送り部数が720になりました。この時点では実配数676で残紙は44部、わずかに6.1%、この程度ならあるいは常識と言えるかもしれません。ところがすぐまた送り部数がふえてきて、56年の1月には770送ってくる。56年5月には815送ってくる。結局残紙の方も大体200近くなって、残紙率が20%になる。

しかも、こういうふうに送り部数を減らしたということで、先ほど言ったように読売本社から圧力をかけられて廃業に追い込まれた、こういうふうな状況なんです。

こういう残紙のすさまじさは、去年も、大阪豊中市の樋口販売店、これは日経でしたが、そこの残紙状況で説明した。つまり残紙回収業者というものがりっぱな企業として成り立っておるという実態。そのときの残紙商がウエダという会社でした。北田さんの場合もまたウエダが回収に回っておるのです。

④はそのウエダの残紙回収の伝票であります。ごらんください。ものすごいものですね。55年の上半期分だけちょっととってみますと1万8000キロ、1カ月平均3000キロの回収なんです。当時はわりと故紙の高いときだった。10キロ300円前後で、この残紙によって1月9万円の収入が上がっておるのですよ。部数に直しますと450部前後になります。450部といいますと、新聞原価に直しますと当時セットで1290円でしたから、その450部分58万500円になるのです。すなわち新聞社には58万円を納め、しかし実際には売れないものだから残紙商に売ってしまって、ここで約9万円を回収する。差し引き50万近い損になるのですよ、1月につき。

月の販売が700部前後の販売店でこんなことが一体成り立つだろうか。

特に、これは通産大臣の直接所管になることなんですが、相当な予算を組んで省資源、省エネルギーの政策を進めていらっしゃるのでしょう。果たしてこういう事態をそういう省資源の面からも放置しておいていいのだろうか。送られてきたものが、ビニールの包装も解かないでそのまま残紙商にいく。その売り上げだけで、月9万円。大臣、いかがでしょう、こういう点について。これは通産省として去年も何とかしなければならないという話はあったが、具体的に手を打ってない。どうされますか。

[301]
政府委員(通商産業大臣官房審議官) 植田守昭
本件につきましては昨年も御質問をいただいたわけでございますが、その後、昨年の9月でございましたか、要請も関係者の方から受けまして、私どもといたしましてはその後9月18日に、社団法人日本新聞協会、これは文部省の所管でございますが、この協会の責任者を呼びまして陳情の趣旨、要請の趣旨を伝えまして、今後こういった問題につきましては、要望が、私どもの商務・サービス室でございますが、商務・サービス室に出された場合にはこれを新聞協会に伝えていくということを先方にも伝えまして、了承を得たわけでございます。

いま公取の方ではいろいろ公取という立場からお調べいただいているようでございますが、私どもといたしましては、なかなか新聞に対する行政指導は率直に申しましてむずかしい点があるわけでございますが、そういったようなルートを通じましてこの問題を先方にも伝えていくということをやってきているわけでございます。