昭和30年12月14日 参議院 予算委員会
[074]
自由民主党 小滝彬
それでは少し具体的な問題に入りまして、これは非常に留守家族などでも心配しておる問題であり、例として申し上げますならば、私どもの選挙区でも30人以上の者がもう韓国で刑期を終えたにもかかわらず、依然として釜山に抑留せられておる。毎日のようにこの問題を早く解決してもらいたいという要求がありますが、この問題は、大村収容所におるところの1945年9月1日以前に日本に滞在しておった者でそうして刑に処せられた者、そして日本の出入国管理令の立場からいうならば、向うに送還しなければならない者が依然としてそこにつながれておる。これを釈放してもらえれば、すでに韓国において、韓国側のいういわゆる刑期を済ました者は返してやろうという話し合いが、大体外務省と韓国側との話がついておるということでありますが、ところがどうも、聞き及んでおるところでは、依然として法務省側にこれに対して異論もあるということであります。
これは外務省でなしに一つ法務大臣の方にお伺いいたしたいと思いましたが、法務大臣急用で行かれたようでありますから、法務省の係官からこの取扱いはどうするつもりであるか、外務省ともいろいろ話し合いがあったようでありまするが、これをどう持っていくか、いかに早く解決しようとしているか、またその方針は最終的にどうなっておるかということを説明願いたいと思います。
[075]
外務大臣・内閣総理大臣臨時代理 重光葵
この問題について、法務大臣がおられませんけれども、交渉に関係することでありますから、私からもお答えをいたしたいと思います。
この漁民の救済ということはほんとうに急務でございます。今小瀧委員の選挙区から云々というお話がございました。私の選挙区からも同様な状態、(笑声)九州でございまして、同様な状態でございます。私は選挙区の問題以上に、国家の問題として私はどうしても救済したい、日本国民がそういう状態におるんだからどうしても救済したい、そういう見地に立って私は交渉いたしております。今日まで思う通りにはかどらぬことはまことに遺憾でございます。どうもやり方が悪いからそうだ、こういう御非難をこうむるならば、これもやむを得ません。しかし私はこの交渉を一日も早く実らせたいと、こう考えております。
それについて大村の収容所の問題が関係のあることも、これまた事実でございます。そうして大村収容所の問題は、これは法規の手続を経て法務省の管轄でやっておることでございます。それを収容されておる韓国人を釈放するということが、これが何と申しますか、対象になるわけでございます。そうでありますから、法務省の当局としてこの交渉を実らせるために、それに関連する手続を、何と申しますか、簡略にするとか、また政治的にこれを考慮して取り扱うということは、法務省の係の人にとってはずいぶん異存のあることだろうと私は思います。さような困難をも排除して、そうしてこの問題を解決しなければならぬと、こう思っておるわけでございます。
そこでさような無理は、ある場合においては大きな利益のために国家的に考えてやむを得ないとこう考えておるので、その点を法務大臣とよく相談をして、法務大臣と私と同様な意見で、この問題を早く解決したいと思ってやっておるわけでございます。
それを、それならばすぐそういうわけで問題が解決するかというと、また韓国側には韓国側のいろいろまた何がございますので、その今調整を進めておるわけでございます。日本側の国内のいろいろ手続が、何があります。それをやってそうして韓国側によくそれを納得してもらって目的を達したい、こういうことで進めておるわけでございます。私はこれはそう遠くないうちにこの問題は解決すると、こういう見通しをつけて進んでおることを申し上げたいと思います。
[076]
自由民主党 小滝彬
私はまず結論的に言えば、こういう交渉のきっかけができたということは非常にけっこうなことであって、ぜひその方向に法務省を引っぱっていってもらいたいと思っておるのであります。
もうすでに8月から、私自身も韓国代表部へ出かけていきまして、向うの意向をサウンドしたのでありますが、大体こういう抑留者については話し合いがつくのではないかという見込みがありましたので、外務省の方に申し入れ、外務省の方も8月来努力を続けて、そうしてしかも過般第2次鳩山内閣のときでありますが、金公使と花村大臣も会ったようでありまするし、また閣議のあとで外務大臣からも法務大臣の方へ申し入れをされたというような情報も聞いておりまして、もうこの問題は片づくであろうと思っておりましたところ、なかなか、法務省の方でいろいろの意見が出て、それが長引いてきたということになってまあ8月ごろからもうそろそろ何とかなるのじゃないかと思っておったのが、年末を控えてまたもう一つ年を釜山で越さなければならないというようなことになっておることは非常に遺憾でありまして、この点は法務大臣が見えておったら法務大臣に直接お伺いしたいと思っておったのですが、入国管理局長が来ておるようでありますから、入国管理局長でもけっこうでありますから、御答弁を願いたいと思います。
それはきわめて、最近の新聞でも、ぜひこれは強制的に退去させなければならぬ、退去の保証がなければならぬ、こういうことを相当強く依然として固執されておるということでありますが、これは事実でありますか、入国管理局長にお伺いいたします。
[077]
政府委員(法務省入国管理局長) 内田藤雄
お答え申し上げます。われわれ法務省の立場をちょっと簡単でございますが御説明させていただきたいと存じます。
今、大村に入っております者の数は大体1685ぐらいになっておりますが、その中で大多数は、1300名は密入国でございます。
当面問題になっております戦前からの犯罪者の数は約370でございますが、これらの人々はわれわれの方で手続を、国内法の手続はもちろんでございますが、しぼりにしぼってそういう数字になっております。大体前科1犯ないし2犯で入れております者は殺人とか強盗、あるいは麻薬の密輸、大量のブローカーあるいはヒロポンの大量の製造者といったようなものでございまして、あと前科3犯以上、これがほとんどその大半を占めるのでございますが、3犯から12犯までの人々の大体は窃盗、臓物故買、詐欺横領というようなことの常習者でございます。
従いましてわれわれの立場から申しますと、こういう悪質外国人は当然国外に退去できる、これは国内法の根拠ばかりでなく、国際的な慣行としても当然そうであると信じてやっているのでございまして、これらの人々を正当の理由なくして国内に釈放いたしまして、そのために善良なる日本国民が不当の被害をこうむるというようなことがあってはこれはまことに嘆かわしいことであるというのが第1の理由でございます。
それからもう1つは、将来のことを考えました場合には、現在刑務所に入っております人の約1割は朝鮮人でございます。毎月々々われわれの手元に退去強制の該当理由で送られて参ります者は約100名ほどでございまして、その中からただいま申し上げましたようなよくよくな悪質者を選んでわれわれは退去に付しておるのでございますが、そのパーセントは大体1割5分ないし2割でございます。今後この種の人々は毎月々々ふえて参るわけでございますので、これらの問題につきましても、将来何らかの保証を得たいというのが法務省としての切なる希望でございます。
それからもう1つ、われわれの非常に重要に考えておりますことは、重要と申しますか、外務省にぜひお願いしておるのでございますが、従来の李政権のやり方を見ますと、要するに人質を取って、それを種に彼らの政治的要求を一つ一つ要求して参るというようなきらいがございますので、この点につきまして、現在李ラインの問題、根本的な解決はこれはなかなかできないかもしれませんが、その解決できないならできない状態のもとにおいて今後どういうふうに措置していただくのか、それとの関連においてやはりわれわれの方のことも考えたい、そういたしませんと、今後ただ向うの人質を、人質と申しちゃ悪いかもしれませんが、漁民を返すためにわれわれはここで1つの譲歩をいたす、やり方によってはますますこれは漁民をつかまえた方がいい、つかまえていけばまた日本はへこむ、こういうことになっては大へんではないかという懸念から、できる限り外交交渉におきまして、将来に対する何らかの保証をとっていただけないだろうか、こういうことが法務省の希望として持っている点でございます。
[078]
自由民主党 小滝彬
今申されました数字のようなものは、与党におきましても今、日韓対策特別委員会なるものを設けておりまして、私ども始終聞き及んでおるところであります。私はこの委員会での意向も反映して今質問しておるのでありますが、たとえば国内釈放を行なったならば治安に影響がある、まことにその通りで、こういうことはやりたくないということは私どももよく知っております。しかしもう少し大きな見地からこの人道問題に対処しなければならぬ、そしてまたこれがいいきっかけになるかもしれないということを考えているものでありまして、その見地から言えば、釈放するのはなるほど残念でしょうけれども、日本にだって前科2犯以上10犯、20犯の者もおるわけであります。そしてまたそれに対する保護措置、監視の措置も全然とれないというわけでもなかろうと思う。こういう特殊の場合でございますから出入国管理令のたしか52条の第6項というものを見まするというと、放免することもできる、すなわち法律上できないというわけでもない。法律を改正しなければならぬというわけでもないので、この際はこういう措置をとるということは必要である、外交上から見てどうしても必要だということになれば、それに応じたところの国内措置も考えられて、ぜひそれに沿う措置が法務省としてとらるべきものであるというのが私どもの見解であります。
また、人質を取っておいて勝手なことをするかもしれない、だからうっかり出せぬということでありますが、なるほどそういう心配もありまするが、しかしこれは外へ出してしまうというのでなしに、国内に釈放せられておる以上、またつかまえようと思えばつかまえられる。私はこの公開の席上においてそういう込み入ったことを長々申したくはないのでありまするが、とにかくこれは一つのテスト・ケースである。そうしてもし今後においてそれがうまくいかないようなことになれば、その前科の韓国人というものは日本国内におるからして、それに対する措置はとれないわけはないと、こういうように私は信じております。
また、外務省にお願いしたいという今のお言葉、なるほど法務省という一つの小さなセクションから考えればそうかもしれませんが、私はこれを外務省に強く要求するということには多少無理がありはしないか、これもこの席であまり長く論ずるということはあるいは新聞などにキャリーされるかもしれませんから好ましくないのでありますが、ぜひ法務省の係官の方でもこの点は考えてもらいたい。と申しまするのは、韓国人の従来長く日本におった、1945年9月1日以前におりました韓国人については、国籍、処遇問題というものは、この日韓会談でもなかなか論じられておる、この根本問題の解決なしに、直ちにそれを引き取るというような確約を取るように努力しろといっても、ますます時間が長引くだけであります。
外務省は、今重光大臣が言われた通り一生懸命やっているかもしれませんが、やはり外交というものは相手のあることであって、これに対してそれを直ちに何かのアシュアランスがなければ釈放はできないのだというようなことを言っておれば、先ほど申しますようにこの年末も向うで暮さなければならぬ、またそれからごてごてしたら半年かかるかもしらぬ、1年かかるかもしらぬので、この点についてはぜひ法務大臣に大英断を用いてもらいたい。これが決意という言葉が悪ければ、ぜひともそういう気持で外交交渉で進めていこうというなら、そういう気持に重光大臣のみならず、他の大臣もなっていただくように、これは重光大臣からも一つ法務省に強く働きかけていただきたい、こういうふうに私強く要望いたすものでございますが、大臣いかがでございましょうか。
[079]
外務大臣・内閣総理大臣臨時代理 重光葵
全く私はその方向に動いております。むろん人質云云ということは、これは一体何と申しますか、外交の問題で考えなければならぬ問題であります。また政策的に考えなければならぬ問題であります。それは政府が決定をいたします。そうして法務大臣と協議して進めていきたいと、こう考えております。
[080]
自由民主党 小滝彬
非常に重光大臣のお話を聞きまして意を強くいたしましたが、ぜひこの際外務省が強力に内地の関心を引っぱっていただきたい。
今の入国管理局長のお話は私は納得できない。それは困難なことはあろうけれども、この際そういう六法全書を引いたような議論でなしに、ほんとうにこれを解決しよう、一歩ずつ進めていこうというなら、これが一つのきっかけになるというようなことは、新聞などにも出ておりますし、私もそういうふうに感じております。
あるいはこれがうまくいかなければ、そのあとで方法を変えることがあるかもしれませんが、ぜひそういうふうに取り計らっていただきたい。しかもそれを早急に取り計らっていただきたいということを強く外務大臣に要望いたしておきます。
昭和30年12月16日 衆議院 外務委員会
[069]
自由民主党 並木芳雄
最後に中川アジア局長に日韓問題について伺いたい。これは国連問題で日韓問題のその後の決着というものが影を薄くしておりますが、どうなっておりますか。日韓問題の李ライン交渉については、久保田発言を取り消すべし、財産権の請求権を放棄すべし、大村収容所の韓国人を釈放すべし、この3つの条件を出しておりますが、これに対する政府の態度ははっきりきまったのですか、どうですか。
[070]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
日韓問題の早期解決につきましては、先般国会の決議もございまして、あの趣旨に基きまして、政府としてはできるだけ早くこれの解決をはかりたいということで、目下いろいろ苦心してやっております。これにつきましては、韓国と直接交渉することはもちろんでありますが、なお双方にとりましていわば共通の友邦であるアメリカにも、強力にこれの協力を要請いたしまして、いろいろな方法をもちましてこれの解決をはかりたいということで努力いたしております。
大村収容所の問題は、これらの根本的な問題とは切り離しまして、ぜひ早期に解決し、これによって韓国に不法抑留されておる日本人漁夫の早期帰国をはかりたい。これも努力いたしております。
いずれもまだ具体的結果を見る段階には至りませんが、そのうち早期解決を要するような人道上の問題につきましては、とにかくできるだけ早く実現したいということで進んでおります。
昭和31年01月30日 衆議院 本会議
[005]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
韓国との国交が今日なお調整せられていないことは、東亜の全局より見ても遺憾しごくでありますから、わが国としては、すみやかに懸案を解決し国交調整の目的を達せんことを企図しているのでありまして、これがためには、サンフランシスコ条約の立案者である米国の公正なるあっせんをも期待している次第でございます。
緊急に処理を要するものは抑留漁夫の帰還問題でありますが、いまだにその解決を見ず、関係者に対して真に同情にたえないのであります。
この問題は、韓国側より大村収容所にある韓国人の釈放が引きかえに要求されているので、これに対しても、わが方は、実際的調整案を提出し、すみやかに妥結するよう努力しておる次第であります。
昭和31年01月30日 参議院 本会議
[007]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
次に、韓国との国交が今日なお調整せられていないことは、東亜の全局から見ても遺憾しごくでありますから、わが国としては、すみやかに懸案を解決し、国交調整の目的を達せんことを企図しておるのでございますが、これがためには、サンフランシスコ条約の立案者である米国の公正なるあっせんをも期待しておる次第でございます。
緊急に処理を要するものは、抑留漁夫の帰還問題でありますが、いまだにその解決を見ず、関係者に対して真に同情にたえないのでございます。
この問題は、韓国側より大村収容所にある韓国人の釈放が引きかえに要求せられておるので、これに対しても、わが方は実際的調整案を提出して、すみやかに妥結し得るよう極力努力しておる次第でございます。
昭和31年02月03日 衆議院 外務委員会
[105]
自由民主党 山本利壽
先ほど大村収容所におる者の釈放のことで御答弁がございましたが、この問題は日本の漁民が李承晩ラインにひっかかって、たくさん向うで抑留されておる、それをなかなか帰さない、だから一つのそれの条件として大村におる韓国人を釈放したら漁民を帰そうといったような情報があったようでありますが、先ほどの御答弁によると、釈放したあとですぐ韓国が受け取るならば釈放するけれども、また内地におるならこれは困るから釈放しない、この意味においては、それでは日本の漁民の韓国に抑留されておる者との取引関係という点については交渉は決裂ということになりますか。その関連においての法務大臣のお考えをちょっと承わりたいと思います。
そうして時間を節約しますためにもう一つ伺っておきますが、一体大村収容所におるところの韓国人というものは、あるいは北鮮人もおるかもしれませんが、その犯罪者で単なる密入国者というものは次から次に韓国が受け取っておるのかどうか。それから密入国者でなしに、日本に相当長期間滞在しておって犯罪を犯した者をそこへ収容してある、ただその数がどういう関係にあるか。
それからある人々からいえば日本の漁民が抑留されておるということは、これは非常に不合理のことであるから、これをぜひ帰してもらいたいという意味で、場合によってはその数の関係がありますけれども、犯罪人であっても一応外へ出して、それには一人々々に刑事をしばらくつけて監視させるくらいの手数をとっても、それと引きかえに韓国におる日本の漁民を帰してもらいたいという意向もある一部には相当強いけれども、そういうことはとうてい不可能なことであるかどうか。
一応釈放してそのままそういう韓国人が罪を犯さないならば、日本の国家、社会としては何ら障害はないはずである。もし重ねて犯罪を犯す場合には、これはもう一度つかまえて放り込んだって一向差しつかえないことであるが、そこらの関係がずいぶんデリケートでありますが、法務省においてはここいらの点をどういうふうに考えておられるか、そうしてまた朝鮮人の犯罪人の中には北鮮系の者はいないのか、もしおった場合には北鮮の方では韓国と違って日本から帰りたいという者は相当受け入れる用意があるということをしばしばわれわれは聞いておる。それだから北鮮に向って大村収容所におる者の中で自分は北鮮に帰りたいのだという者がいれば、その方は帰してもよいと思うのですが、そこいらの数の割合とか、あるかないか、北鮮に向って帰す意思があるかどうかというような点を承わりたい。まだ承わりたいことがありますが、あまり一ぺんに言いますと混雑しますから、一応御答弁を伺います。
[106]
法務大臣 牧野良三
お答えをいたします。むずかしい理屈は私は全然言っておりません。必ず李承晩のところで抑留している日本人を帰すためにはどんなことでもいたしたいと思っております。どんな譲歩でもして、私はこっちを釈放して、向うは交換するなら交換する、それはやるつもりです。
ただけじめだけはやっておきませんと、帰すでしょう、すぐひっつかまるのです。そして、とっつかまえておいて、またあの交渉を始めるのですね。簡単にひっつかむですね。だからけじめをちゃんとして、そうして外務省とも交渉して、心配のないように、もう九州から山口県の沿岸のお方に不安のないようなことをやりたいと思っております。
ただ北鮮の人なんかはきらうのですよ。(山本(利)委員「帰すことをですか」と呼ぶ)いいえ、李承晩が、隣で敵を増すのでしょう、だからいやなんですよ。そこにあそこらの返事をしない微妙なところがあるのですよ。
あのずるい態度はいかぬですよ。そこでずるさは認めて、けじめだけつける。
そこで昨日現在の報告を申しましょう。不法入国者は1212名、そのうち北鮮へ帰国希望者が50名ございます。それから受刑者は391名、北鮮に帰国希望者が20名あります。この発表を知っているのですね。そして日本では国会議員諸君が私に、すべてこういう人たちは希望するところに帰せ、こうおっしゃるのです。それがあるのですよ。だからこれは希望でしょう。そうするとすぐ70名が帰るというので、それをこわがっているのですよ。南鮮の人は、李承晩の方は、こんなことをこわがってはいかぬですよ。
だから私どもの方は、りっぱな態度で、北鮮に行く人は北鮮にやる、そういうことではっきりしたい。だからそういうことは認めて、李承晩も認めるし、そしてよその国も敵国を利するような態度で日本はやるのじゃないのだということさえはっきりしてくれれば、やろうじゃありませんか。
[123]
自由民主党 並木芳雄
それでは次に日韓会談の問題ですが、先ほど大村収容所との抑留者の交換のお話が出ましたが、あれは日韓会談の再開の第一歩であるというふうに理解してよろしいでしょうかどうか。
先般韓国の方から久保田発言の取消し、財産請求権の放棄というようなものを日本が認めるならば、再び会談を開き、通商を開いてもよろしいというような申し出が重ねてありましたけれども、これについては政府としてはどういう態度で臨むおつもりでございますか、一時非常に問題になった李承晩ラインの砲撃警告事件、これもどうやら大きな事故が起らずに済んでよかったと思っているのでありますけれども、それらの点と関連して政府としては今後円滑に日韓会談が再開されるめどを持っておられるかどうか、この辺の事情について言明していただきたいと思います。
[124]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
日韓の国交を樹立するためにあらゆる努力をしなければならぬということは、何度も繰り返し方針として申し上げている通りであります。不幸にしていまだにまだ実を結びません。そこでこれはどうしても両方のいわば空気をよくすることが先決問題でございます。そこへ持ってきて今砲撃問題などがどんどん起ってきたら、これは大へんなことになります。それに対してはこちらが抗議を申し込む、抗議は抗議として実際的に撃ち合いなどの起らないような態度をとらなければならぬ、忍耐をしてこの事態の収拾に当らなければいかぬ、こう思って処理したことは御承知の通りであります。さようにして砲撃問題は、ともかくも今日解決とまではいきませんまでも、これはしのいで参りました。そうして空気はその点において害せられることのないところまで来ております。
さらに進んで一番解決を私どもがあせっている問題は、日本の漁夫を帰してもらいたい。これができれば、こちらもあらゆる譲歩をしなければならぬと思っておりますが、今大村収容所の問題については先ほどからのお話の通りでございます。
そこでまだこの問題は解決をいたしませんが、これらを解決することが、害せられている空気をよくすることになりますから、一つの前進になります。さような方法で実際的に進めていって、そうして今度は大きな問題は日韓の関係の根本問題になります。それには財産権の問題もあります、それからまた李承晩ラインの問題もあります。これらの問題について解決するように進めていきたい、かように思っておるのであります。そういう問題については、日韓の間に、東京の韓国の代表者と連絡をして、十分この糸口はつけつつあるつもりでございますが、まだ交渉を一々具体的に取り上げて先に進むという程度には参っておりません。そこで私が外交演説にも申した通りに、これは米国が最も利害関係を持っておりますから、米国にも十分その解決方法等について考えてもらいたいということで接触をしておるということをつけ加えておきます。
昭和31年02月10日 衆議院 予算委員会
[060]
日本社会党(社会民主党) 古屋貞雄
そこで、一番私どもが承わりたかったのは、南鮮といかに交渉が進められておるかということは、ただいまお説の不当不正に勾留されておりまする日本の同胞の問題をいかに解決をするかということであります。これは、政府といたしましては、すみやかに解決をして、いっときも早く家族に安心をしていただかなければならぬと私は思うのであります。
のみならず、あの方面に出漁して、これを生業として生活の保障を得ております漁民に対して、明るい気持も与えなくてはならぬのでございますから、私はいつごろまでに解決をする見込みがあるかということを御質問申し上げたのですが、ただ大臣は、誠意ある方法を講じておる、こういうことの御答弁ですが、それではやはり国民は納得いかぬと思う。やはり具体的に、かようしかじかに進めておる、――私は何らさような面においては秘密を要する問題ではないと思う。
こういう面についてやはりもっと具体的に、南鮮との問題についてはかようしかじかに交渉を進められておる、ことに一番問題となっております不当不正に勾留されておる漁民の問題については、かようにして早くこちらに帰すような方法を講じておるという、もっと国民が納得する御説明を私は承わりたいと思うのですが、いかがでしょう。
[061]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
先ほどのお話は、日韓関係の全面的のお話のようでございましたので、そのつもりでお答えをいたしたわけでございます。
抑留漁夫の送還の問題は、具体的には大村における収容韓国人の釈放ということが条件になっておるのでございます。そこで、大村収容所における韓国人の釈放ということをやりたいと思っております。そのやることについて、全部一度にこれを釈放するということについては、治安関係等いろいろ考えなければならぬことがございます。
そこで、実際的の方法で一つ韓国側に交渉をして納得をしてもらいたいということで、いろいろ話し合いをしておるのでございますが、その方法について今日までどうしても納得が得られないのでございます。しかし、これについては、さらにいろいろな角度から韓国側と協議をして、双方の納得するような点でこれをまとめたい、こう思っております。従いまして、この問題が片づけば、漁夫の送還という問題も片づくのでございます。そこで、ぜひこれはやりたい。それはそう遠くはないと私は思って進めておるわけでございます。抑留漁夫の送還の問題はさような状況に今日なっておることを御了承願います。
昭和31年03月08日 衆議院 大蔵委員会
[062]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
一番の問題は韓国との関係でございますが、韓国は、御承知のような李承晩ラインというものを設定いたしまして、ここに入る日本の漁船を拿捕いたしております。また日本の漁夫もこれを抑留いたしまして、刑に処した上、さらに刑を終えた者まで最近は返さない状況が続いておるのであります。この事態はまことに遺憾千万でありまして、政府はあらゆる努力を傾注してこの事態の改善是正に努めてきておるのであります。
李ラインの問題は、これは韓国側としても相当強い主張をしておるのでありまして、結局いわゆる日韓会談の大きな題目になっておるのであります。従って日本側は、この李ラインの問題だけは取りはずして単独に交渉、解決しようということで、何回となく申し入れておるのでありますが、先方は、これは他の日韓間の諸懸案――そのうちの一番大きなものは財産の問題でありますが、他の諸懸案と一緒でなければ会談には応じないという態度を固執しておりまして、そのために漁業の解決は、結局日韓会談自体の解決をはからなければ促進し得ないというのが、遺憾ではありますが現実の状態であります。
それでは、日韓会談の見通しはどうかということになるのでありますが、これは、韓国側としては財産請求権につきまして、日本側がかつて朝鮮に持っておりました財産に対する請求権を放棄せよ、これが前提である、そういう意向を表明すれば、会談再開に応ずるという態度を従来まで固執し続けてきておるのであります。日本側としては、そういう問題は会談の過程において論議さるべき問題であって、交渉の初めにまず日本側が権利を放棄するとかなんとか、そういうことには応じられないということで、これまた行き詰まっておるのでありますが、しかしながら日本側といたしましては、道理のあるところを、単に韓国側のみならず、広く世界にこれを訴えまして、また日韓双方について非常な関心を持っております、また双方非常に友好関係にありますアメリカというものが中にありますので、このアメリカをもまた動かして、これによって韓国側の態度の反省を求めて、何とか日韓会談をできるだけ近い機会に再開いたしまして、抜本的にこの漁業問題も片づけたいという考えを持っておるのであります。この会談に当りましては、日本側としても相当の柔軟性を持って当りたい、問題を解決するという方向に向って努力したいという考えでありますので、会談再開の機が熟せば、根本的解決は必ずしも困難ではない、かように見ておるのであります。
一方日本の漁船が拿捕されますと同時に、その乗員も抑留されておるのであります。その韓国側に不法抑留されております漁民の方々の数が、すでに600名をこえておるのでありまして、これらの方々につきましては、この根本的な漁業問題の解決を待たず、これだけは切り離して、人道上の問題として解決しようじゃないかということを申し入れておるのであります。この根本的な扱い方については、先方も異存はないのでありまして、漁業問題は片づけたいということは、先方も了承しております、しかしながらその片づける条件として、日本側で大村収容所に入れております韓国籍である強制退去者、この人たちを日本側が同時に国内で釈放せよというのが先方の全部ではありませんが、終戦前からおりました人たちについては、これを釈放せよというのが先方の主張であります。
従って、その主張と、今の日本漁民の方々を返すという問題とが、いわば交換条件の形に先方の態度としてなっておるのでありまして、この点につきまして日本側としては、これまた柔軟性をもってこの交渉に当りたいという気持で交渉は行なっておるのでありますが、先方の態度がいかにも頑強でありまして、従って今交渉は必ずしも円満に進んではおりませんけれども、これまた人道上の問題として広く世界の世論に訴え、かつ日韓双方の共同の利害を持っております米国の協力も求めて、この漁夫問題も何とか近いうちに解決したいと考えて努力しておるわけでございます。要するに、日韓問題の打開ということは必ずしも不可能ではない、何とかこれを打開するべく、かつ実現すべく努力を続けたいというのが政府の考え方でございます。
昭和31年03月20日 参議院 予算委員会第四分科会
[018]
自由民主党 吉田萬次
私は朝鮮、韓国の問題について質問したいと思うのですが、終戦当時あの混乱しておるときに、朝鮮人がいわゆる外国人という名前のもとに、非常にあらゆる方面において活動し、しかも善良な活動ならいいけれども、相当国家的に見て損害のあるような活動をしておりました。その習慣が現在まで続いておるように感ぜられるのでありまして、いわゆる密造酒であるとか、あるいは麻薬であるとか、あるいは密入国であるとかいうようなふうのものの大半は、私はこの朝鮮半島の諸君であると思うのであります。
従ってまたその入国者というものも、居留しておる者も、非常に朝鮮人はたくさんおると思う。しかしながら国家的の立場から考えまして、一般外国人と違って非常な国家の経済から考えましても、芳ばしからぬ私は結果を見るのであります。従ってこの外国人としての朝鮮、あるいは外国人というものに対する方策というものは、私は相当深甚なる注意を払って、そうして将来のために考究しなければならぬたくさんな問題があると思うのです。
かような点から考えまして法務省としてどんな方針のもとに、またどんな考えをもってこれに対して一定の方針といいますか方策といいますか、そういうものをもって臨んでおられるか、また続いてこれに付帯して大村収容所におけるところのこの人たちの犯罪の種別というふうなものをお尋ねいたしたい。
[019]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
これは率直に申して非常にむずかしい問題で、今日本の、ことに法務行政のうちの最も悩みきっている問題の一つでございますことは御承知の通りであります。
従来日本人であったのでありますが、それが終戦によって国籍が非常に不明になっておる。帰化しきっている者としない者がいるわけでございまして、まことにむずかしい問題だと思う。それが今日大村収容所の中におる重い罪を犯した数100名の人たち、強制送還をやろうとしても受け取らないという現実であります。一方には密入国者が毎日ふえてきておる。最近には激増というのではありませんけれども、1000数百名が大村に、これは密入国者として当然帰さなければならないし、受け取ってもらわなければならぬ人間が検束せられておるのであります。この解決は何と申しましても朝鮮と日本との間における国交の正常化ができない限りにはどうにもこうにもならない。
一方には日本の漁夫が向うで抑留されている。これまた当然帰さなければならぬ者が理由なくして抑留せられている、こういうことで刑期が満ちておりながら抑留されているというようなわけでございまして、この関係が打開せられることを私は非常に祈ってやまないのでありますが、こまかな数字及び経緯等につきましては入国管理局長がここにおられますから、内田政府委員からお答えさせていただきたいと思います。
[020]
政府委員(法務省入国管理局長) 内田藤雄
現在日本に在留しております外国人の登録に現われました数字は、全体で約64万でございますが、そのうち朝鮮人が57万6750、中国が4万3967ということになっておりますので、大体60余万のほとんど95%くらいが朝鮮人と中国人でございます。われわれの方の仕事は、新しい外国人の出入国の問題、また現にそれで出入りしている外国人の数も少々ございますが、そのほかにただいまおっしゃいましたように戦前から日本に在留しておりまして、終戦までは日本人であったというこの特殊な人々、この問題が実は非常に厄介な問題になっているわけでございます。
それで確かに戦後のあの特殊な状況におきまして、いわゆる第三国人という名のもとに、中国も多少ございましたが、数におきましては確かに朝鮮人が非常にいろいろ暴れもいたしましたし、一時あたかも戦勝国民のような気持で非常に生活状態が急に上ったわけでございます。ところがその後社会情勢が落ちつくにつれまして、いわゆるやみとかそういうことでは生活ができなくなりました結果、しかもその間に正常な勤労精神を失ってしまっておるというようなことから、大量にこの人々が犯罪者の群に移って行ったということは大体申し得るのではないかと存じます。
その結果これは矯正局の方の数字を伺いますと、現在約6万人くらいの刑務所に入っております者のうち、その1割近い人が朝鮮人であるように聞いております。そういたしますと、人口との関係を考えますと、約8000万でその数字5万なにがしであるにもかかわらず、片一方では60万そこそこで4000幾らということでございますから、犯罪の比率から申しますと10倍を越しておるくらいの比率になっておるわけでございます。で犯罪の内容は先ほどおっしゃいましたように、われわれの方に現われて参ります限りでも、ヒロポンとかああいう関係の犯罪、それから密造そういった専売法規と申しますかああいうふうの関係の違反者、そのほかにはやはり量から申しますと何といっても窃盗が非常に多いのでございます。
そうしてそういう人々の中からわれわれといたしましては入管令に基きまして懲役1年以上の刑を受けました者は当然退去を強制できるということになっております。これは日本の出入国管理令がそうであるばかりでなく、国際慣習といたしましても、外国に在留しておる外国人が犯罪をいたしたような場合には、ある限度を越えた者を退去にいたすということは、これはもう国際的にも認められておるところでございますので、われわれとしてもその入管令を基礎とし、またこの国際慣習に基きまして悪質の外国人は退去にいたしておるわけでございます。
しかし先ほども申し上げましたように、戦前から日本に長く住んでおりまして、生活の本拠が日本にあるような者を、ただ外国から渡航して一時日本におる外国人と全然同等に扱うということは、また必ずしも正当と申せませんので、われわれといたしましては戦前からおりますような朝鮮人の場合には、ただ1回犯罪を犯して懲役1年以上の刑を受けたというようなことだけでは退去にいたしておりません。大体の現状を申し上げますならば、前科、もっともその内容にもよりますが、たとえば窃盗等の普通の犯罪の場合でございますと、前科3犯以上くらいでないと退去にいたしておりません。われわれが記録を見まして大体その者の生活が犯罪に依存しておる、犯罪の上に生活しておるのではないかと考えられるような者のみを退去にいたしておるのでございますが、それが毎月刑務所の方から出所いたしまして、われわれの方に送られて参ります200ないし250、月によりましては300くらいのときもございますが、そういう者の中から、大体1割5分見当くらいの、これは結果においてそうなるのでございまして、1割5分というように限っておるのではございませんが、大体において1割5分ないし2割程度の者を退去強制にいたしまして、大村に送っておるわけでございます。
それが、ところが先ほど政務次官のお話にもございましたように、現在の日韓関係が正常でないというばかりでなく、韓国側の全く政略的な意図と申しますか、日本において戦前からおる朝鮮人については日本に在留資格があるのであって日本側にはこれを退去強制いたすような権利がないのだと言わぬばかりの態度でこれらの悪質なる朝鮮人の国内釈放を要求しておるというのが現状でございます。
そうしてそれに引っかけまして、御承知のごとく李ラインを越えたという理由でつかまえました日本人の漁夫を人質にいたしまして、その日本への送還を拒否しつつこれらの悪質なる朝鮮人を国内で釈放しろと、こういうことを要求しておるというのが現在の状況でございます。
そのために、理論上密入国を引き取らぬということは一回も申しておりませんが、実際上密入国者の引き取りも拒否いたしております。
密入国者の数の方は、これは新しい密入国者というのは、大体戦後の趨勢を申し上げますと減って参っております。と申しますのは、なぜ密入国をして参るかといいますと、その一番大きな原因は、戦争で疎開などさせられまして、家族の一部の者が朝鮮と日本に分れてしまった、それをまたもとの家族の者の所へ復帰したいというようなのがまあ一番多い例なのでございます。それで戦後10年もたちましたので、そういった種類の密入国というものが漸次まあ片がついたと申しますか、それが大きな理由だと思いますが、漸次減って参っております。ことに朝鮮動乱の直後におきまして、向うで家を焼かれたとか、食うに困ったという者が大量に密入国して参りました昭和26~27年ころに比べますと、最近はよほど減って参っております。そういう傾向にはございますが、しかしなおかつ現在すでにもぐって、潜在している密入国者の数というものは、これは相当大きいものと考えております。従いまして新しい密入国は、現場でつかまえます者以外に、今までもぐっておりました密入国者が何らかの事情によりまして密入国者として発見されまして、それでわれわれが退去強制にする者が、これがまた相当ございます。
そういった関係で、大村が一番多い状況のときには、昨年末約1350くらいですか、それから先ほど申しました犯罪等の理由によりまして退去強制いたしました者が約350、両方合せまして約1700という状況になったときがございます。そのほかに浜松に分室を設けておりまして、これは横浜収容所の分室でございますが、ここに中国関係が現在約150くらいおると思いますが、それから大村が一ぱいでありますために、現在浜松に送っております朝鮮人がそのほか現在すでに100くらいに達しておるかと思います。そのほかほんとうに収容施設が十分でありましたならば、当然収容しなければならぬ者の数は数100あると考えます。
で、この問題は目下外務省とも協力いたしましてせっかく日韓の間に交渉をいたしておるわけでございますが、われわれといたしましては先ほど申しましたような人質外交にひっかかって、悪質不良な外国人を日本から退去いたさす権限をこういうところで傷つけると申しますか、その将来に暗影を投ずるようなことは断じていたしたくない、そのためにはあくまで大村の収容施設が一ぱいになったり、いろいろなことで苦労はいたしておりますが、がんばっていきたい、こう考えておる次第であります。
昭和31年03月23日 参議院 予算委員会
[009]
無所属 中山福藏
第四分科会におきまする審査の経過を御報告いたします。
(中略)
次に法務省関係におきましては、少年院の収容状況とその教化方針はどう省所管の教護院とは一貫したものにする考えはないか、また在留外人、ことに朝鮮人の犯罪が多いようだが、外国人の登録ないし密入国者の取締りをどうやっているのか。歳入予算の増額5億8000万円の中で罰金及び没収金が2億9000万円となっているが、多額の罰金を収入に見込むのはどうかと思うという質問がありまして、これに対しましては、法務省並びに厚生省の担当から次のような答弁がございました。
現在少年院には、昨年11月末の統計で1万240名ほど収容されており、そのうち精神状態の平常な君28.7%、準平常な者が38.5%で、精神に障害ある者が32.8%となっているが、いずれも犯罪を犯し、またはその疑いある者として家庭裁判所から送られてきた者で、幼少からの環境によって不良化し、精神的にもひどく片寄っているから強力な矯正が必要である。厚生省児童局所管の教護院は8割の国庫補助で都道府県がやっているが、この方の収容対象は15才から20才までの少年で、ここで直らぬ者が少年院に送られることになっている。現在教護院に収容されている者は4800名だが、収容を要する者はその数倍にも達する見込みで、なるたけ少年院の厄介になる者を少くするよう教育補導には苦心している。少年院とても、少年刑務所と違い、教育機関であるから、この点教護院と十分連絡の必要があり、両者の一体化という点は今後検討したいと思う。
また在留外人については、64万人のうち朝鮮、韓国人が57万人、中国人が4万3000人となっており、犯罪については現在刑務所にいる者6万人のうち、1割近くが朝鮮人である。つまり犯罪の比率からすれば朝鮮人は日本人の10倍以上になっているわけで、窃盗とヒロポンなどの密造が犯罪のおもなるものである。出入国管理令により犯罪者の国内退去を命ずることは、国際慣習からもそうなっているが、韓国側が引き取りを拒否しているので、やむなく悪質者を大村収容所に送っているが、この中には密入国が多いのに強制送還もできないので、この処置には困っている。
外国人の登録については一時登録証のやみ相場が10倍にもなったことがあるが、外人登録法の改正によって指紋をとるということになって以来、よほど厳重になった。
昭和31年04月06日 衆議院 法務委員会
[018]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
それから、私どもも、刑罰法令に違反したような者を、日本の漁師と引きかえに引き取るというのならわかるけれども、国内で釈放せいということは、どうも筋道が立たぬと思われるのです。それについては向うはどういう理由でそういう筋道の立たぬような主張をしているのであるか。
日本の漁師と不法入国した者と取りかえるということすらおかしいと思うのでありますけれども、それは、向うは向うとして、李ラインを越えたのだから不法入国者だという主張はあるかもしれませんが、日本の刑罰法令に違反したために強制送還になるような者を内地で釈放せよという、その根拠はどういうことからきておるのでありましょうか。法務省で承わっておる理由を聞かしていただきたい。
[019]
政府委員(入国管理局長) 内田藤雄
これは実際私ども不可解としているところでございますので、どういう根拠かということは想像で申し上げるよりほかないのでございます。
私どもがまた聞きあるいは向うの人々と話しているときの片言隻句などから想像いたしますと、先ほどもちょっと申し上げましたように、日本へ居住することになった事情などから見まして、今度日本側がそれを一方的に退去させるというようなことは根拠がないというようなことを向うにおいては申しております。それからまた、一つは国籍の問題とからめてでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、前の主張ではそういうことは何ら言っていなかったのでございますが、最近になりましてそういうことをちらほら申すようになったのでございまして、これはやはり、引き取りを拒むための言いがかりと申しますか、口実として言い出したのではないかと思うのでありますが、まだ日韓の間には基本条約ができていないから、その条約ができるまではある意味で不確定なんだ、こういうようなことを理由にしておるようでございます。
[050]
自由民主党 高瀬傳
釜山におります漁夫の、朝鮮から言うと刑期を終った人たち、これらの人と大村の収容所におる戦前から日本に在住した刑余者の人たちとを相互的に交換するという話が重光さんと金君の間であったという新聞記事があった。もちろん、その問題については、外務省の情報文化局長の田中君も発表しておるようでありますから、これは単なる新聞記事でないことは事実だと思います。それから、先ほどの松原法務政務次官のお話によっても、そういう会談が進行しつつあるということが事実であることは間違いないのでありますが、私は、その会談に関連いたしまして、大付収容所に収容されております朝鮮人の実情あるいは南北の別、収容の原因、前科のいろいろな態様、悪質な罪名の件数、これらの点について実は最初に伺いたいと思いましたが、それは、ここに配付されております大村収容所被収容韓国人関係概況というので全貌がわかりましたから、省略いたします。
ただ、私が問題にしたいことは、われわれ日本人として、朝鮮に不法に抑留されておりますところの漁夫の人々が一刻も早く日本に帰ってくるということは、国民感情としてもちろん異議もありませんし熱望するところでありますが、新聞に伝えられるようなところ、あるいは先ほど松原政務次官が言われましたように、これらの漁夫と大村収容所に収容されております刑余者とを相互的に交換することは、国民感情から言ってここに非常に割り切れないものがあるわけでありまして、これらの相互釈放に関しまして法務大臣は一体どういう見解を持っておられるか、これを私は一つはっきりと伺っておきたいと思うのであります。
これはいずれ外務当局にもたださなければならない重要問題でありますが、少くとも事務当局は相互釈放ということについて非常に反対の所見を持っておられることは事実のようでありますけれども、一体法務当局は、これらの相互釈放というものについて、事前に重光大臣から牧野法務大臣に話があって、それはよろしいということで賛成されたのか、また、それらに対して法務大臣としては一体いかなる所見を持っておるのか、この点をまず私は伺っておきたいと思うのであります。
[051]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
お答え申し上げます。かねてこの問題が閣議においてたびたび出たと、私は法務大臣から聞いております。そうして、できるだけ一日も早く解決して、両国間の国交を調整したい、それで、それにはわれわれも精一ぱい協力しよう、こういうお話を法務大臣から聞いておりますので、今回の韓国代表からの外務省への交渉を、私どもはやっぱり喜んで受けたいと思っておるものでございます。従って、私は、法務大臣にも会いまして、両省でこの解決のためには最善を尽しますから、どうぞおまかせ願いますということで、今までのところでは、私がおまかせをいただいて処理いたしておるようなわけでございます。
相互に釈放するということは、これはそこまで話がくれば大へんけっこうで、向うの罪刑が果して適当であるかないかはとにかくとして、釈放して日本に帰す、同時に大村に収容しておる者を朝鮮に帰す、これなら何でもないのであります。その通りにあってほしいのであります。
ただ、条件が、終戦前の在留者に対して疑義があるというようなことを聞いております。終戦前から日本に居住しておった者については疑義があるが、この際に国交を調整するために一応大村に収容しておる400何人の人々を先方の要求の若干を入れて処理するということにつきましては、私どももそれを承認いたしたのであります。ただし条件をつけての承認であります。
というのは、従来からもやっておる例でございますが、これは治安維持の上からも非常に重大な問題がありますので、保護団体等ができて、そうして責任を持って引き取ってくれる場合においては、従来からも釈放いたしております。そういう保証のつく限りにおいて、徐々に安心のできる程度においての釈放ならば、私は差しつかえないと今日も思っております。
[052]
自由民主党 高瀬傳
ただいまの御答弁でありますが、戦争前からおって刑余者として収容されておる者は、国際法上から見ましても、出入国管理令によりましても、当然朝鮮の方に引き取らるべき筋合いの人であります。それを、単なる相互釈放というような話し合いから、一体国内的に解決し得るものであるかどうか、この点に私は非常に問題があるだろうと思うのであります。
第一、韓国側においては、これらの人が国籍が不明であるから引き取らないのだというようなことを言っているようでありますが、もし引き取らないというならば、これは当然わが国の国内法によって処置すべきものでありまして、この点について、単に外交上の相互釈放とか取引だけで解決するのには、あまりに重大な問題であると思うのであります。
そこで、法務当局に伺いたいのは、一体、これらの人たちに対して、向うが受け取らないから、外交交渉の結果そういう了解ができたから、やむを得ずこれを国内に釈放するのであるかどうか、それからまた、釈放する場合には一体どういう法的根拠によってそれを行うのであるか、こういう点についてはっきりした法務当局の見解を伺っておきたいと思うのであります。
[053]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
それは、従来も釈放した例があるのでございまして、必ずしも前例がないとは限りません。
大村収容所の収容力は限りがあります。あとからあとからたまれば、そんなに理屈通りに全部を収容するわけにも参りません。それぞれの方法を具して、治安の維持上危険のない程度において釈放いたして、保護団体等に預ける等の方法がございます。
今回も、そういう点につきましては、委員をあげて処理して、十二分に納得のいく線においてこれをば一時釈放するということにして、なるべく日韓間の国交を調整したいという希望を持って進んでいるということを御了解願います。
[054]
自由民主党 高瀬傳
この前も釈放したというお話でありますが、今回釈放するその犯人の内容、それは政務次官も御存じでありましょうが、前科9犯ないし12犯の者が13人、6犯ないし8犯の者が80人、3犯ないし5犯の者が240人、こんな犯罪者が含まれているわけであります。ですから、この前釈放したから今回もよろしいということは、非常に問題であろうと私は考える一人なんであります。
従って、この前釈放したというのは、私は一向前例にはならないと考えている一人でありますがゆえに、この問題を重視しているわけであります。
しかも、これが朝鮮に抑留されているわが国の漁民の一部釈放と関連性を持っているところに、非常に重大性があるのでありまして、それは、もちろん、朝鮮におられる漁夫の家族から言えば、一刻も早くこれらの人が日本に帰還することを望むその気持は、私どもは日本人として大いに共感を禁じ得ない一人でありますけれども、日本の国内法といわゆる外交的取引の調整、こういう問題についてさっぱりはっきりした見解がなっていない。私は、この点外務当局にはっきりした見解を聞きたいと思って、先ほどから出席を要求しているわけでありますが、関連性を持ってそういうふうな問題を取り扱うことが、果して、日本の法律をはっきりと守っていく法務大臣の立場として、一体国民に納得されるのかどうか、これらの点は、どうしてもわれわれは釈然としないところがあるのであります。
ですから、関連性を持っているがゆえに、向うで引き取らないから、やむを得ないから日本で無条件に釈放するということは、一体いかなる法的根拠であるのか、私はさっぱりわからないわけでありまして、その点は一つ松原政務次官のみならず事務当局の岸本次官にもとくと伺っておきたいと思うのであります。
[055]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
こまかなことは事務当局からお答えさせていただきますが、収容していることそのものは法務省の所管でありますが、治安の維持に対しましては、警察方面、治安関係の方に非常な責任もあれば発言権もあるのでありまして、この問題が起りましたときに、治安関係の方から出ました要望があるのであります。
それには、これに応ずるとするならば、相当の方法を具して少数ずつの者を保護団体等によって保護し、責任を負う等の処理をしなければならぬ、それに対しては費用もいる、そういうことが備わった場合においては、これは必ずしもできないものではないということが、治安関係から表明せられております。
それで、釈放して外に出た後の処理につきましては、それは私は日本政府の責任だと思う。日本政府が責任を持って、これに対して国民に危険な思いをさせないようにしなければならぬ。高瀬さんのおっしゃる通りに私どもも心配するものでございます。その処理の仕方等がこれからの相談の上で決定するものと心得ておりますが、法的関係その他こまかなことにつきましては、私もよく承知いたしませんので、事務当局からお答えをさせていただきます。
[056]
説明員(事務次官) 岸本義廣
事務当局の責任者の一人といたしましてお答えいたしたいと思います。
実は、日本の漁夫と大村収容所に収容している朝鮮人とを交換的に釈放するということは全く筋が通らないのでありまして、これは、先方は無法の主張であり、日本は法規、法令に基いて収容しているのでありますから、理論的に考えますと全く筋の通らない話なんであります。
しかしながら、法務当局といたしましては昨年夏以来この問題に行き悩んで参ったのであります。外務省に対しましても、法務省から、この朝鮮側の無法な主張をしりぞけていただいて、法務省の意見をいれてもらうよう再三要求もいたして参ったのであります。
しかしながら、先ほど政務次官がお答えいたしましたように、大村収容所の施設にも限度がございます。つまり、入れものが詰まって参ったのであります。昨年のたしか11月か12月の現状を申しますと、まさに超飽和状態というような報告が参っておりまして、警察上から見ましても、この状況では治安状況がはなはだ危険であるといったようなSOSを発して参ったような次第であります。
こういうような状況下にありまして、一方日本の漁夫に対する釈放運動が内外を通じて非常に猛烈になって参りました。外務省及び法務省のわれわれのところにも盛んに陳情団が参るような次第であります。また、われわれの見解をもっていたしましても、一日も早くこの釜山に収容されておる漁夫を帰してやりたいという念願で一ぱいだったのでございます。そこで、相矛盾する2つの条件が対立いたしまして、これをどう調整すべきかということが法務省の頭痛の種だった次第でございます。
そこで、先ほど政務次官から申し上げましたように、本件の場合とは事情は違いますけれども、かつて大村収容所に収容している朝鮮人を仮放免の形式で引取人を定め保証金をとって釈放したという事例がございますので、その例にかんがみまして、もし日本の漁夫を釈放して日本に送還することができるならばというのが1つの原因でありますが、最近になりましてたまたま朝鮮側から外務省に対して会談の申込みがありました関係が発生いたしまして、事務当局といたしましては、この調整をどうするかという点に関連し、1つの前提を考えているのであります。
先ほど政務次官が申されましたように、今後法務省において強制退去令書を出すと必ず朝鮮側において引き取るという条件、私どもはこれを将来の保障と申しておりますが、この将来の保障を取りつけ得るならば、今回朝鮮から申し込んで参りました相互釈放の条件を考慮しようというのでございます。
いま1つの条件は、大村収容所に400名内外の刑余の朝鮮人がおりますが、これを釈放いたしましても、おそらくまた何らかの機会に犯罪を犯すであろうと想像されるのでありまして、さような場合には、一般の朝鮮人と同じように、強制退去令書で先方が引き取ってくれというようなことでありまして、これらの条件を前提条件といたしまして、この条件を受け入れてくれるならば相互釈放の要求に応じてもよろしいという態度をとって参ったのでございまして、今後、外務省及び法務省から委員が出て朝鮮側との条件の会談に関する委員会が設けられて、委員会において会談が進められることと思いますが、この会談を通じて法務省側委員からわれわれの要求を申し出るつもりでおるのでございます。
ただいまのところはさような状況であります。
[057]
自由民主党 高瀬傳
いろいろその事情はおありになるでありましょうが、私どもが全く釈然としないのは、不法に入国してきた連中、大村収容所の連中、朝鮮人1434名、これらの密入国者と刑余者をひっくるめて、それと日本の漁夫691名とを、あたかもそれらが一見交換と思われるような条件でこの取りきめが行われようとしておるわけであります。
しかも、日本の漁夫については、われわれは全然李ラインなどは認めておらず、釜山に抑留されておるわれわれの同胞は公海の自由の原則に従って漁業を営んでおった者で、これを刑余者などとは何ら見ておらないのでありますが、韓国から見て、刑を終ったと思われる者だけと交換するという。われわれの方は日本の国法に従って刑余者を収容しておる。
だから、こういうようなことは全然何らの関連性がないのでありまして、法務省としては今後そういうことは外交関係で相互釈放などという問題が起きてきても絶対やらぬとおっしゃいますけれども、そういうことならば、過去において、――これはほんとうのことを言いまして、朝鮮に抑留されておる日本の漁夫とは全然関係のない問題でありまして、独自の立場でこの問題を解決するということについて、法務省としては今まで努力をされたかどうか。それから、将来の政府全体の国策なりあるいは朝鮮に対する日本の国策として、これらの問題はこうすべきだということについて、法務当局はそれらについて何らかの具体策をお持ちになっているかどうか。こういう点は非常にわれわれ関心を持つわけでありますが、過去においてそういう努力をされたかどうか。それから、政府は朝鮮に対しこれらの問題に対する確固不動の国策を将来樹立する熱意があるかどうか。それから、現在行われている釈放はやむを得ないとして、法務当局はそれでがまんして、今後さえしなければいいという御態度かどうか。この点も一つ伺っておきたいと思います。
[058]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
お答え申し上げます。
重光外務大臣からのお話も承わり、私もこの点については数次意見を申し上げております。また、閣議は、今回ばかりじゃない、すでに前からたびたび開かれて、この問題は論議せられているということを、先刻も私は法務大臣から承わったと申し上げたのでありますが、さようなわけで、今回日韓両国の間に国交の調整をはかる糸口をつける、そのためにはこれこれの処理をしたいということで、政府において協議せられて法務省の意見を聞かれましたのが最後でございます。
これにつきましては、先刻申し上げましたように、どうか一日も早く国交を調整して不法抑留されている日本の漁夫を取り返したい、それを取り返すために話の糸口をつける上においての手段として考慮すべき点がありますならば、われわれもできる限りのことは応ずべきだと思いました。というて、それで日本の法律の権威をまげるわけにもいきませんし、日本がもし今日まで抑留しておることが間違いであったならば、これは不法監禁になるのであります。
日本は決して不法監禁はいたしておりません。正当な収容をいたしておるのであって、断じて不法監禁しておるのではない。
ただ、従来の例としても、これを保護団体等が責任を負うて預かる場合においては釈放したり仮放免した事実もあるので、同じようなケースにおいて、保護団体等ができて引き受けるというならば、それは話の糸口をつける上においてもよろしかろう。ただし、これには費用がいります。ただではなかなか釈放ができないのであります。というのは、あの人々は無一文であります。着のみ着のままで、出た日からめしが食えない人たちであります。これを釈放して、この人人の将来を処理するために、また、向うに引き取ってもらうためにも、あるいはその行き先を選ぶためにも――中には、いやもうしばらくここにおると言う人が北鮮側の人にはあるかもしれないという見通しがその当時にはあったのであります。それで、費用もいりますから、その辺についても御考慮願いたいということを申し出てありますし、相当の計算もいたしております。そうして、どうせあそこに抑留しておる以上は1日に75円の食費は出しておるのであります。でありますから、この国交を正常なる軌道に乗せる手段としてのでき得るだけの考慮は払いますが、しかし、その軌道に乗った上においては、今後はすべてスムーズに国際慣行通りに進めることの固い保障を願いたいというのがわれわれの希望でございます。
[059]
自由民主党 高瀬傳
ただいまの御答弁でありますが、国交を軌道に乗せる方便としてとおっしやいますけれども、一体それでは日本の法律というものをいかなる基盤の上でわれわれは権威を持って行うのか。
つまり、外交上の取引のためには日本の法律の権威も一時はよろしくやるというふうにしかわれわれはとれないのでありますが、その点に対する法務当局の御見解を伺いたい。
[060]
政府委員(入国管理局長) 内田藤雄
ちょっと前からのいきさつを簡単に申し上げます。
さかのぼりまして一昨年のことでございますが、鳩山内閣ができましてから、一時日韓の間が少くとも感情的にちょっとやわらいだようなときがございまして、そのとき、先ほど政務次官が先例としておられますごとく、しかしこれは私が先ほどの御答弁で申し上げましたように実は内容が違うのでありますが、ともかくその当時退令に付しておった者の標準から見ますとはるかに軽い人たちが収客されておった事実がございますので、それを仮放免の形で釈放し、他方密入国者の引き取りが開始された。ところが、そのころから向うは漁民を帰さないということが始まりまして、その間にほかのいろいろな事情から、また日韓の関係が5月ごろから悪化して参りました。その当時も、私どもは、やがてこれは向うで、人質のごとく、抑留しておる日本人漁夫と大村の問題をひっかけて参るだろうということを予想いたしましたので、外務省に対しまして、これに乗っては困るということを実は申し入れをいたしたのでございます。
その理由は、もう高瀬委員の御質問で御指摘になっておる通りの、全く同じことを私どもは外務当局に申し入れてあるわけでございます。それで、外務当局はわれわれの申し入れに基きましてどれだけの外交折衝をやってくれましたか、それはちょっと私からははっきり申し上げられないのでございますが、外務当局の説明によりますと、それはいろいろやったんだけれども、韓国側がどうしても言うことを聞かない、だから何とか大村の問題を考えてくれ、こういうようなことで、昨年の夏以来数度にわたり領事館を交えました会議もいたしましたし、また私とアジア局長との会議のようなこともひんばんに行なって参りました。
それで、外務省に対しまして、先ほども申しましたように、ひっかけられるのは困るという申し入れをしたのみならず、現実に韓国側がひっかけて参りました以後におきまして、われわれが外務当局に申し入れをいたしました点は、ただこの問題だけではないのでありまして、一体、今のような韓国のやり方では、自分の主張を通すためには、いつでも日本人漁夫を引っぱっていけば日本側は人質外交にひっかかって言うことを聞く、こういうことを繰り返されたのでは、この問題は一時解決したがごとくに見えても、ちっとも解決にならぬじゃないか、そこで、われわれとしましては、将来こういう刑罰法令違反の悪質不良な外国人をば退去させるようなことは、もうほかの問題にひっかけることなしに必ず引き取るという原則をはっきりしてもらいたいということが1つと、もう1つは、実際問題として、李ラインを越えたというようなことで日本人漁夫が幾らでもまた人質にとられる状態がそのまま続いたのでは困るから、李ラインの問題を解決するか、あるいは、解決できないなら解決できないままで、実際上こういうことが起らないような事態を、何とかして、国内的か何か存じませんが、考える、あるいは、漁夫がつかまっても、今後はそれを人質にして何を言ってきても絶対に受け付けることのないような国策をはっきりしてもらいたい、こういうことをずっと申し入れもいたし、またそういうことで協議をして参ったのでございます。
その点につきましてわれわれの努力が足りなかったかもしれませんが、われわれとしては、こういう事態の繰り返しがないようにということについては、何度も申し入れもし、協議もいたしたつもりでございますが、遺憾ながら、先ほど政務次官からお話がございましたように、ともかく今般こういうことで一応日韓関係の打開のために口火を切るから、法務省の方も協力せいということでございますので、われわれといたしましては、先ほど来政務次官、または次官がおっしゃっておりますように、ぎりぎりの線として、先ほど申しましたようなことでやっておるわけでございます。
法的な根拠とおっしゃいますと、これは入管令にともかく仮放免ができるという規定があるのでございます。それは、第54条に、退去強制令書の発行を受けた者でもある条件のもとに仮放免いたすことができるということになっておりますので、この条文を、これは正当な運用であるかどうかには私ども自身も疑念を持っておりますが、しかし、ともかくこの条文をたてにいたしまして仮放免をいたす、そうして治安上害のないようにということにつきましてはできる限りの手当をいたしたい、そして、先ほどおっしゃいましたように、今後こういうことが繰り返されないように保障をとってもらって、刑罰法令違反者が円滑に送還されるならば、実は、私ども限りの角度から見ましても、法律的に申せばどうか知りませんが、一つの取引としても十分に成り立つ取引ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
[061]
自由民主党 高瀬傳
ただいまの入管令か何かで仮放免ができるということは、いわゆる日本独自の法を運用する、あるいは法を実施する独自の立場においてなし得る一つの事柄でありまして、これは外交的に一種のバーター・システムみたいな形でやらるべき問題では絶対にない、こういうふうに私は思うのであります。
そこで、ともかくも、この相互釈放という問題は国内の治安にも重大な影響がある。それからまた、国民感情にも重大な影響を及ぼします。それから、心ある者は大いにこれで刺激される。世論も沸騰する。それから、李ラインそのものを通して日韓の将来の関係に非常に悪影響を及ぼす重大な問題であると私は思う。法務当局は、引き受ける人間があるし、保証があるから釈放してもいいと言いましても、そうは簡単にいかないのでありまして、これらの問題は、朝鮮に抑留されておる漁夫のことを考えると、言うには忍びないことでありますけれども、私は重大な問題として取り扱わざるを得ないのであります。
そこで本日は外務当局にも出席を要求しておきましたが、いかなる理由か、全然出てこない。私は与党の議員の一人でありますが、この問題は与党とか野党とかいう問題を超越して、日本国民の一人としてはっきりとさせなければならない問題でありますがゆえに私は質問いたしておるのであります。遺憾ながら、外務省の責任者はいかなる理由か出て参りませんから、本日これらの問題についてただすわけにはいきませんけれども、実際問題として、内政と外交との調和の問題について外務大臣などは一体何を考えておるのか、私にはさっぱりわからない。遺憾ながら法務大臣は入院され、外務大臣も何か痔の手術で見えないということになると、まるでのれんに腕押しみたいになって、松原政務次官初め岸本次官にははなはだ申しわけないのでありますが、私は全くふんまんにたえないのです。いずれ日をあらためて、外務当局の責任者に出席を要求しまして、私はこの問題について、ほんとうにとらわれない立場から外務大臣の所見を聞きたいと思いますが、法務省関係の各位のお立場の苦しい点は私も非常によくわかりますから、この程度で私の質問は終りといたします。
[063]
自由民主党 池田清志
朝鮮半島に不法監禁されている日本人を早く帰してほしいという気持からいたしまして、この不法監禁されている日本人と日本で合法的に自由を束縛しております朝鮮半島人との取引というような格好において外交交渉が進められておるという趣旨はわかります。その外交交渉のもとを作るために、外務当局・法務当局がいろいろと御苦労願っておることもよくわかります。私どもといたしましても、日本人が早く帰ってくるということを念願しているものであります。しかしながら、私は国内法的立場において物事を考えたいと思うのであります。先ほど来高瀬君も質問しておりましたが、もう少しお伺いしてみたいところがあるわけです。
これはあるいは幼稚なお尋ねであるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。大村収容所は、監獄と申しますか刑務所と申しますか、その性格は法律上どういうことになるわけでしょうか。
[064]
政府委員(入国管理局長) 内田藤雄
これは監獄でも刑務所でもないものであると存じております。つまり、たとえば密入国で参りました者が、密入国してきても収容施設がないためにどこへでも自由に動けるということでは、これは国際慣行といたしまして旅券ないしは査証を持って入国しなければならないという原則が全然無視されるわけでありますから、そういう者を当然ある一定の場所に収容することができるいうことは、これは国際慣行として十分に認められているところであると考えます。
それから、先ほど来申し上げておりますように、悪質不良の外国人を国外に追放するという権利は、これまた独立国として当然認められているものと考えている次第でございます。国内法、入管令にその基礎があるばかりでなく、国際慣行としても十分認められております。
そういたしますと、そういう退去を強制いたします場合に、やはりこれらをどこかに収容でもできるのでなければ、逃亡の危険もございますし、結局退去の実をあげることができなくなるわけでございますので、そういう意味において、収容いたす権利というものは、国際的な角度からも当然あらゆる独立国に認められておる。
そういう意味において収容をいたしますので、これは刑罪でもなければ矯正のための施設でもない。あくまで退去強制を確保するための、いわば本来ならば船待ち場であるというのが収容所の性格であろうと考えます。
昭和31年04月12日 参議院 法務委員会
[016]
無所属 中山福藏
この法案に関連いたしまして、一つ法務省の御意見を承わっておきたいと思います。ただいま世間で非常に注目を浴びておりまするところのいわゆる大村収容所の収容者を、韓国に抑留されておりまする日本の漁夫と交換するという問題が起っておりますが、大体外務省と法務省の意見がその点に関してもつれておるように思われ、また対立しておるように感ぜられますが、法務省としては、これから先にあくまでも自己の主張、つまり法律の論拠に基いた主張というものを貫徹するために御努力になるお覚悟でございましょうか。
また、外務省と法務省の意見の対立はどういう点にあるかということを一つ明確にしておいていただきたいと、かように考えておるわけであります。
[017]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
お尋ねの日韓問題の前提をなす大村収容所における韓国人の釈放と、釜山にいる日本漁民の解放とを交換条件にするということに対するお尋ねでございますが、これは厳密なる法理的解釈としまするならば、法務省は同等のものではないという所見を持っておるものです。
季ラインという国際的に認められないものを引いて、これを越えた者を一方的に韓国の方では処分をしております。そして刑期の満ちた者は当然帰すべきであるにかかわらず帰さない。国際慣行から言うても強制退去せしむべき性質のものであります。それがそのまま抑留せられている。
今国内において韓国籍あるいは朝鮮籍を持つと認めらるる人々が400幾十人、不法入国者以外に今大村に収容せられておりますが、この人々は、国際慣行に従って強制退去を命じたのでありまして、韓国が引き取るべきものと思うのであります。
従ってもし釈放を相互一諸にするならば韓国に引き取るというのが筋の立つ釈放の仕方で、国内において釈放しろということに対しては筋が立たないと私は思います。
ただし先般も申し上げましたが、一衣帯水の一番近い隣接国で、しかも長い間一つの国籍を持って参った因縁を持っている日韓の間に、正常なる国交が行われておらぬということは、すべての点に非常に不都合でございまして、一日も早く正常なる国交を回復し、すべての問題が円満に行われますことを希望するのでございまして、今回韓国の側から日本の外務省に向って国交調整の話を進めようというお申し出があった。その申し出の前提として、従来希望しておった点をさらに強く申して参った、そうしてこれから話を始めようというその前提条件として、たびたび外務省の側から聞くのでありますが、その話の糸口を切るために、一応先方の要求をも入れて国内釈放を行うことができるかどうかという話を受けているのであります。
これは先刻も申し上げましたように釈放する理由が非常に不明でありますので、そっくりそのままのむわけには参りませんけれども、しかし事と場合によりましては、今日までも一部は釈放いたしておるのであります。国内に釈放しておる、そういう事実がある。仮放免という法律の条項もございますので、国内において若干期間だけ引受団体等ができて、治安の面においても差しつかえがない、この人々の身柄は引き受けるという引受団体等ができて、それも朝鮮の側からでありますが、預るということの保証がつくならば、これは若干期間引受条件のもとに釈放ということも考えられ得ると考えておるのであります。
しかし国交が回復した結果としては、当然国籍の問題はあくまでも従来通り韓国籍の者であるということであり、さらに今後のかような場合における国外強制退去に対しましては、韓国の側で国際慣行通りに引き受けるということをば条件といたして、私どもは今希望を申し述べておる次第でございます。その点においての御相談ならば応ずるということをば、法務省の方では申しておる次第でございます。
[019]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
なお、朝鮮の李ラインを引いた後に行われたる取扱いにつきましては、これは法律上大へんむずかしい問題と思いますので、私どもはこれを認めませんが、今の実情だけを私の今メモにとりましたのをば御報告申しておきますが、ただいま現在で日本の漁夫が朝鮮に抑留せられております者の数は690名、そのうち刑期が満ちたと称して今回送り帰そうという者の数は340名ないし350名だということになっております。
[028]
無所属 中山福藏
私非常に憂えますることは、今度外務省の意見と法務省の意見が妥協といいますか話し合いがついて、結局漁夫と大村収容所における被抑留者との交換が行われたといたしまする場合に、刑期満了という札つきの人ばかり交換されたら、これはやはり李ラインの承認という問題が影の形に添うごとくやはり一つの認定を伴うものであると私は思う。だからそういうあとに尾を引かないような御処置をお願いしたいと思うと同時に、大村収容所に抑留されておりまする人のうちには相当重罪犯人が多いんじゃないか、いわゆる悪質抑留者が多いんじゃないかと、こう見ているんですが、それを野放しに日本内地で釈放してしまって、あとの責任はなるほど韓国の人々の団体とか、いろんなそういう団体の代表者が保証人ということになるでしょうが、しかしその保証だけで私ども国民というものは安心していいものかどうかということは、非常にこれは疑問だと思う。
それで、大体御承知の通りに、今、朝鮮人に対する扶助料というものは24億万円、それが税金で私どもにかかっているんです。この24億万円の金がわれわれの税金によってまかなわれておるということにつきましては、相当の私は考慮を払わなければならぬ点であると思う。もしそういう悪質犯罪者が釈放されて、やはり要保護者という立場で私どもはこれにまでも扶助料を出すということになれば、ますます私どもの税金というものは高くなるということになる。
だからその悪いことをしないという保証を監視付か何かで、そういうことに団体でも責任を持ってくれれば、これは法律上の根拠のあるなしは別として、国民は非常に安心するわけなんですがね、そういう点についてはお取り調べになっておりますでしょうか、どうでしょうか、一つその点。
[029]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
ごもっともな御心配でございますが、その釈放といいましても私どものは条件付でございまして、話を進める上におけるところの糸口を切ろうというだけの条件付でございますから、そこで十分そのあとのことを考慮しなければなりませんが、国内におけるあとの治安の、直接の責任は警察の方でございますので、これは警察の方から意見が出ております。その意見は、小出しにして、そうして保護団体を作って2カ月ぐらいの間そこで十二分に監視もし責任を負ってもらう、食費もつけて出して手当もする、それでなければ皆もう小づかい銭もなく、その日から生活の困る人々でありますから、そういうふうな条件もつけて治安の維持をはかろうということを警察の側が申しておる、その意見が出ております。この意見は法務省の側と一致いたしておりますので、そういう条件のもとにというのでございます。
なお、今お話がありましたが、念のためにここで……。今朝私は日本の刑務所における受刑者を調べてみたのでありますが、ただいま日本の刑務所では、2月末の調べでありますが、6万8450人の受刑者がおります。そのうちに朝鮮籍の者が4597人、総数8000万の国民に対しまして日本籍の者は1万分の8ぐらいでございますが、朝鮮籍の人々は1000分の8、10倍だけ多いようでございます。
6万8000人の受刑中の人々のうちで、朝鮮籍の人が4500、まあ4600人という事実から申しましても、この人々が確かな生産的生業を持っておらぬ、ここに非常に大きい悩みがある。決して私どもは厄介がるわけではございませんが、長い間同じ国民として暮してきた者でありますから厄介がるわけではありませんけれども、またすぐに送り返そうとは思っておりませんが、せめて国際慣行によって送り返される分だけは徐々に引き取ってもらいたいという謙譲な態度をもって今臨んでおるということを申し上げておきます。
昭和31年04月13日 衆議院 法務委員会
[017]
自由民主党 高瀬傳
そこで、私は、重光大臣並びに金公使の間に取りきめられたこの了解事項について触れて参りたいと思いますが、なぜ私どもが法務委員会においてこの問題を重視するかという点であります。
それは、すなわち、まず第一に、韓国政府は刑期を終了した日本人漁夫を釈放するという点、しかもこの刑期を終了したというところに問題があるのでありまして、わが方から言えば、あの公海自由の原則に従って漁獲に従事しておった善良なるわが国の国民が朝鮮側において犯罪者として扱われて、しかも刑期を終った者、終らざる者という区別をわが方で承認いたしまして、終った者だけを日本に引き取るということであります。
これは、われわれといたしましても、日本人漁夫が一刻も早くその家庭に帰って生業につくことを希望するのは国民として当然でありますけれども、大臣も御承知のように、かつてこの国会におきまして李承晩ラインについて非常に強硬なる決議をいたして、世論に訴え、また韓国側の反省を促したことは御承知であろうと思うのであります。従って、わが方として、犯罪人でない者を朝鮮側が犯罪人として、しかも朝鮮側の法律から見て刑期の終った者だけを釈放するということは、すなわち、とりもなおさず、常識的に見まして、これは李ラインを一部分わが方が承認したような形に相なるわけでありまして、この点はどうしても国民感情が許さぬ点なのであります。
しかも、一方、なお後の方の取りきめを見ますと、日本国政府は終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者を釈放する、こういうことがあります。その前に、密入国者を韓国政府は引き取る、これは当然であります。しかしながら、ただいま読み上げましたところの終戦時以前から日本に在住する韓人にして大村収容所にある者、これは非常な犯罪者であり、日本において犯罪を犯し、刑余者として当然国際法の原則に従って朝鮮に送還せらるべき運命にある連中でありまして、これらがわが方の善良なる漁民と対等の立場において釈放が交換されるという、これはどうしてもやはり公平に見て国民感情を刺激せざるを得ないと思うのであります。
その中で、具体的に言いますれば、大臣も御存じでありましょうが、前科9犯ないし12犯の者が13人、6犯ないし8犯の者が80人、3犯ないし5犯の者が240人、こういうことで、これらの者を釈放いたしますれば、かつても騒擾を起した事件もあり、また、すでに新聞の報道するところによりますと、大村近辺において警官並びに住民が非常に不安の念にかられておるという事実があるわけであります。
つまり、私が問題にするのは、李ラインを一部容認したかごとき感を与えるということと、それから、第一に、わが方から見れば罪人でない者を、明らかに刑余者であり国際法上朝鮮に帰さなければならぬ者と五分の立場で交換するということ、これは非常に問題であろう。
[077]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
それから、私は実は十ばかり外務大臣におただししたいことを用意したのでありますが、これは月曜日に回すことにいたします。ただ、宿題として私どもあげ足をとったり言質をとったりしたくないので、責任ある御答弁をいただきたいと思いますので、宿題を申し上げておきたいのは、韓国の軍隊かどうだか知らぬが、いわゆる李ラインを越したものなりとして日本の漁船を拿捕することは一種の侵略行為じゃなかろうか。国際公法の教えるところによれば、侵略とは国土に対するのみならず国民に対する不法な攻撃も侵略だという定義になっておる。そこで、これが侵略だということになると、これは一体日米安全保障条約の前文に触れることじゃないだろうか。すなわち、アメリカがかような行動は積極的にとめるべき責任があるのじゃなかろうかという点であります。これを一つ御考慮願いたい。
昭和31年04月16日 衆議院 法務委員会
[004]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
そこで、重光外務大臣にお尋ねいたしますが、一体閣議で決定されたということは、要するに、大村収容所の前科者たちをことごとく内地に釈放し、そうして韓国に収容せられておりまする日本の漁夫の刑期の終った者を引き取る、将来かような韓国人にして犯罪を犯したような者は国際慣例に従って韓国が引き取るということ、及び李ラインを越えたような日本の漁師を、しかも韓国の裁判の結果もう服役期間を過ぎているにかかわらずなお引き渡さないというようなことがあるのかないのか、さような将来の保障のようなことが閣議でちゃんとおきまりになったのかどうか、そういう方針が統一されておるのかどうか。どうもこの前の御答弁では明白を欠いておると思うのです。ですから、閣議で決定されたならば、一体その決定はどの程度であるか、法務大臣と外務大臣とが再確認されたとも言うが、それは一体将来の保障まで含んでおることであるかどうか、さようなことについて御説明を承わりたいと思います。
[005]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
日韓の問題として、日本人漁夫の帰還問題、これに関連して大村における韓人釈放の問題、これについては、前回私が詳細にわたって御説明をいたした通りでございます。それにつけ加えるものはございません。そして、その閣議の決定並びに日韓双方との了解、すなわち意思の合致したことは、すべて発表をいたしておる通りでございます。それによって御了承を願いたいのでございます。
[006]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
私は、ただいま申しましたように、法務省の上層部の人たちの言とあなたの言うことが違っておるから再質問しておるのです。
それでは岸本次官にお尋ねいたします。これは閣議で決定されたと称しますが、法務省は、この大村収容所の、何犯か、中には12犯も犯したような犯罪人がおるが、これを無条件で釈放することに同意されたのであるかどうか。
その点について私どもが承わっておる事情は、そうじゃないと思われる。実は、一昨日も、重光大臣は、法務省の政府委員が答弁しようとするのを、ほとんど押えるような形で、すっと立ち上り、質問者は法務省に質問しておったにかかわらず、外務大臣は立ち上って、閣議で決定して、本日確認したというようなことをおっしゃって、押えてしまったような形跡がある。だから私は再質問しておるのに、この前と同じことだというようなことでは、わかりません。もう一ぺん法務省の側の御意見を承わりたい。あなた方の御答弁によりましては、われわれはだまされておるようなことになる。はっきり答弁していただきたい。
[007]
説明員(事務次官) 岸本義広
お尋ねの件につきましては、外務省から事前の連絡はございません。
[010]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
この大村収容所には3犯から5犯の犯罪人が265人、6犯から8犯の犯罪人が73人、9犯から13犯の犯罪人が18人おるのです。これは治安をつかさどっている法務省としては考えざるを得ないことであろうと思う。
[012]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
そこで私は外務大臣にお尋ねいたします。全く李承晩ラインなるものは不法なものである。しかもこれは多少アメリカと関係がある。マッカーサー・ラインなるものをほかの目的で設定した。それを李承晩が受け継いだような形でありますから多少アメリカとも関係がある。
そこで、この李承晩ラインなるものは全く不法なものであるといたしますならば、ここに日本の漁民が平和に操業をしているのに対して、これを拿捕するということは、日本の民族に対する不法な攻撃、侵略じゃなかろうか。侵略とは国土に上陸することばかりじゃない。国民に不法な侵害を加えることも侵略であります。わが民族に対する侵害行為、不法な侵略、しかも、日本の保安隊なんかが警備するならば向うの海軍が砲撃すると言っている。これは武力の攻撃です。
こういう場合において、私はあなたにお尋ねしたいのですが、一体日米安全保障条約というものは効力はないものであるか。いわんや、台湾海峡その他はアメリカの第七艦隊が警備していることは申すまでもないことです。韓国といえども、ほとんど日本以上にアメリカに依存している国である。日本政府は特別にアメリカの恩寵にあずかっている政府である。
こういう日本民族に対する不法な侵略が行われるということに対して、一体日米安全保障条約は何らの効力がないのかどうか。日米安全保障条約というのは特定の国家だけに向けられたる条約であるかどうか。こういう李承晩ラインなる物が不法なものであるならば、そこに働く日本国民を不法に攻撃して拿捕するということは侵略だと思う。日本国民に対する侵略、日本国家に対する侵略であると思う。日米安全保障条約の前文には、さような場合には日本の安全を保障してくれるとアメリカは言っているはずである。これに対してどういう御所見があるか、承わりたいと思います。
[013]
内閣総理大臣臨時代理・外務大臣 重光葵
李ライン設定並びにこれを越えた場合において日本船舶を拿捕する等の行為が公海の自由の原則に対して国際法上不法であるという見解を日本政府はとっているということは、今条約局長の申し上げた通りであります。従いまして、国際的に不法なことを正すために手段をとっているわけでございます。
しかし、これが直接に日本国家及び国民に対するいわゆる侵略行為であるかということについては、これはまだ法理的には疑問があると思います。そこで、これが直接に安保条約を援用すべき事態が生じたものである、こう断定が法理上、理論上できかねるのでございます。
しかしながら、理論は理論として、外交は理論だけでやっているわけではございません。国家の利益を擁護しなければなりません。そこで、この問題について法理上安保条約を援用してどうするいうわけには参らなくとも、東亜、日本地域の安全保障に対しては、米国としては非常な関心を持っているわけであります。また当然のことでございます。そこで、この問題については、十分わが方の態度、方針について米国に了解をせしめて、いろいろそのあっせんと助力を得ることに努力しているわけでございます。
この問題によって日韓両国民の間に非常に緊張した感情をかもし出したということは、過去において事例があるのであります。しかしながら、今日のわが政府の方針といたしましては、かような問題について、力をもってせず、すべて話し合いによってこれを解決したいという方針を立てておりますから、韓国との間に話し合いをして解決をするために最大の努力を今いたしているのであります。その目的を達するがためにも、米国がこの問題について大きな関心を持っているというその事態を十分に頭に置いて米国側との連絡に当っていることはもちろんでございます。
[014]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
林法制局長官にお尋ねします。今申しましたような、李ラインなる不法なるものを設定し、そこに漁に行っておった日本の漁民を拿捕する、しかもこれを守らんとするなら海軍を出動せしめて砲撃する、これは一体侵略でないのか。
あるいは、竹島なるものを勝手に自分の領土なりと宣言し、そこに砲台を築いて近寄るものを砲撃する、そして韓国の切手には竹島が自分の領土になったという記念としてそういう切手を使っている、そういうようなことは一体日本の国土に対する侵略であるのかないのか。
そういうことは侵略でないとすれば、一体侵略とはどういうことなのか。それを一つ法制的に御説明願いたい。
[015]
政府委員(法制局長官) 林修三
ただいまの李承晩ラインを越えるものの拿捕についての御質問でございますが、現在の状況は要するに李承晩ラインを越えるものを向うが沿岸の警察力をもって拿捕するというようなことの事態だろうと思います。こういう事態が直ちに侵略と言えるかどうかということについては、国際法上いろいろ議論のあることだと思いますので、ただいま外務大臣から御答弁がありましたように、直ちにこれをもっていわゆる日本に対する武力攻撃の意図をもってやったものと言えるかどうかという点についてはまだ問題があるように思います。従いまして、これをもって直ちに日本に対する侵略なりと断定するだけの根拠と言い得るかどうか、これについてはやはり多少の問題があるように考えるのでございます。
竹島については、結局これは、もちろん日本から言えば竹島は日本の領土と考えているわけでございますが、これを韓国がああいう状態において占有しているということについては日本としては不法なことと考えているわけでございますが、これをもって直ちに日本に対する武力攻撃という意図をもってやったものかどうかということについてはなお問題もありますし、やはり平和的に交渉して解決すべきもの、かように考えるのでございます。
[018]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
侵略とは国土に対する侵略のみならず国民に対するものであることは国際法上明らかなことです。何らの悪意のない他国民をいたずらに拿捕して、そうしてこれを裁判にかけて処罰し、その刑が満ちてもこれを釈放しない。片方は自然犯を何犯も犯している人間、それは国際法上引き取るのが当然のことなんです。それと交換にする、こういうむちゃなことが一体今までの外交史上あったろうか。
昭和32年02月27日 衆議院 外務委員会
[051]
自由民主党 山本利壽
関連して先ほど戸叶委員に答えられたことで、ちょっとわかりかねたところがありますのでお尋ねしたいのでありますが、今度日本人漁夫の釈放と交換に、大村収容所におる者を釈放する。そして今度日韓会談が開かれるまでですか、日韓会談によって何かの結論が出るまでですか、そこのところがわからなかったのでありますが、再び大村収容所にはその間は収容しないという点がありましたが、その点、会談が開かれたらもう収容してもいいのか、何らか結論が出てからというのか、そういう意味と、もう一つは、この収容しないというのは、出てきた者が再び犯罪を犯しても収容しないという意味か、そこらの点が少し不明瞭でございましたので、一つ御説明を願いたい。
[052]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
これは御承知の通り、日本におります朝鮮人が犯罪を犯しますと、普通の日本人ともちろん同じ、あるいは第三国人とも同じでありますが、刑法のきめるところに従って罰せられるわけであります。それに従って刑を執行するわけであります。
刑の執行を終えて刑務所から出ました者につきまして、そのうちの約1割程度でございますが、悪質の者について強制退去処分を受けまして――行政処分でありますが、これを受けまして強制退去になるわけであります。
ところが韓国側でそれを引き取らないために、これら強制退去者を一時入れております大村収容所に、もう何年もそこに入れたままになっているというのが実情でございます。
従って、今回しようとしておりますそういった人たちの、一時といいますか、この際国内で釈放するということになるわけであります。
これらの人たちが、あるいはそれ以外の人たちでも、さらに犯罪を犯しますれば、これはまた当然裁判にかかりまして刑の執行を受けるということになるわけであります。
しかし新しく刑務所から出た者を、再び強制退去処分の結果、大村に収容するということはしばらく見合せようというだけのことでございます。
それからいつまで見合すかということでございますが、これはそう長い間見合すということはむずかしいけれども、日韓会談が早期に開かれ、しかもその会談においてまっ先に国籍処遇の問題が討議されるということになりますと、その討議の内容として、どういう類の悪質の朝鮮人を今後韓国が引き取るかということがきまるわけであります。そうしますと、そのきまったところに従って今後当然韓国は引き取るということになりますから、それがそう長い期間でないというならは、それくらいまでの間は、日本側で事実上入れないような措置を考えてもいいということになるわけであります。やはり話がきまることが前提になるわけであります。
[057]
自由民主党 山本利壽
そうすると、韓国に抑留されている日本の漁民を帰すというのも、やはり向うでの刑を終えた者の範囲に限られるわけですか。今回は、とにかく今までのは帳消しとして全部帰るわけですか。もし刑を終えた者だけということになると、その数の割合がどういうことになるか、その点たけ伺っておきます。
[058]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 中川融
遺憾ではありますが、今までの話し合いの内容からいいまして、先方としても刑を終えた者だけしか考えておりませんので、その分について至急帰してもらう、こういうことになるわけであります。
なおその数は、今李ライン侵犯のゆえをもって先方につかまりました漁夫の数は、900名を少しこえているのじゃないかと思いますが、大体900名程度であります。そのうち700名程度がすでに刑を終えて、釜山の外国人収容所に収容されているのでありまして、従って大部分の者はこのたび帰される。しかし残った分は、これは比較的最近つかまった人が多いのでありまして、200名程度の者は依然としてまだ残される。
しかし今度のことが解決いたしますと、少くとも刑を終えた人たちは自動的に帰ってくるという、ことになるわけでありまして、従って今までのように、刑を終えた者も全部ストップされて帰ってこないという事態は救われることになるわけであります。その間、一方また日韓会談を開きまして、根本的に漁業問題の解決をはかろうというのが、ただいまの考え方でございます。
昭和32年11月08日 衆議院 外務委員会
[068]
自由民主党 山本利壽
それではお伺いいたしますが、国際赤十字の代表は、日本の大村の収容所及び釜山の日本漁夫が収容されておる場所をかつて視察し、それに基いての結果報告を日本にもしたことがございますかどうか、承わりたい。
[069]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
私の就任前でありますが、2年ほど前にたしか国際赤十字の者が参りまして、大村及び釜山の収容所を視察したということを聞いております。
[070]
自由民主党 山本利壽
その結果についてはお聞き及びはないのですか。視察したということだけを御存じであって、その結果がどうであったかということは御存じありませんか。
[071]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
結果というのはどういうことでございますか。
[072]
自由民主党 山本利壽
その報告書をごらんになったことはないかというのです。私はなぜこういうことを言うかといえば、これは両方の政府の役人がいろいろ交渉しても、わが方は公使も大使も向うで受け入れてくれない。向うは日本へ来ておる。それを相手にして全権を持っておる者として交渉せられ、その人間がこれでよかろうと言って帰っても、またくつがえされてくるようなことであるから、私は向うの国情は知らないけれども、あまり当てにならぬようにわが国民は今思っておる。
そうすると、これは人道的立場に立つところの赤十字であるとか、あるいはその他国連であるとか、一般の世界の世論によって正しいところへ持っていかなければならぬが、その世論をわが方に有利というか、正しい方向に持っていくような努力が、日本の外務省においては着々となされておるかどうか。
たとえたならば、ここに英国の「エコノミスト」という雑誌がございます。これは今年の9月19日付でありますけれども、これに、韓国の情報局の者が――オフィス・オブ・パプリック・インフォーメーションというのですが、そこの者が署名入りで出しておる報告によると、国際赤十字の代表が大村と釜山の収容所を見た結果は、格段に向うの方がいいということを書いておる。さらに日本に抑留されておるところの朝鮮人は、単に朝鮮人であるということだけであそこへほうり込まれて、そして裁判も受けなければ、判決も受けないで置いておかれるというようなことがここに書いてある。こういうことが事実であるかどうか。私は事実でないと考える。
私たちは、この委員会から、釜山に行って、あるいは李承晩とも会い、役人でなしに、政治家同士が手を握って話したら、この問題は解決するかと思って行きたいということを申し出たことがあったけれども、韓国側はこれを受け付けなかった。私どもは大村の収容所は視察したことがあるけれども実際の釜山の収容所は見ていない。ところが釜山の収容所に収容されておるところの日本人漁夫からの手紙によると、まことに言語道断な、あわれな状態のことがよく書きつづられておる。だからわれわれは大村収容所における待遇の方がよいと思っておったのに、こういう世界じゅうの人が読むようなものにちゃんと麗々しく出ておる。
これはやはり向うの宣伝といいましょうか、この世界の世論を引きつけることに対する努力が、韓国の外務省側の方がはるかにすぐれておるのではないか、かように考えるから今の質問を申し上げた次第であります。
[073]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
ただいまの収容所の施設等の問題につきましては、赤十字が両方を視察してみまして公平な報告をしておるわけでございます。私どもとしましてはやはり釜山の収容所もそうよくないという報告を受けております。
ただいま御指摘になりました「エコノミスト」の記事につきましては、これは明らかに事実を曲げるものでございますので、私どもとしましてはさっそく在英日本大使館を通じまして、それに対する反駁文を投書させております。
[074]
自由民主党 山本利壽
さらにこの方面に対しても努力して、世界の世論を有利に導かれるように希望いたします。
昭和33年02月17日 衆議院 予算委員会第一分科会
[047]
日本社会党(社会民主党) 石野久男
この問題は、あとでいま一度触れたいと思っております。ここで一つ外務大臣に聞いておきたいのは、2月15日までに、大村収容所と釜山収容所にいる日韓の抑留された者の交換を、相互釈放するという方針を、昨年の暮れに約束なさった、こういうように聞いておりますが、それは事実ですか。
[048]
外務大臣 藤山愛一郎
事実でございます。
[049]
日本社会党(社会民主党) 石野久男
その後、その約束に従っての仕事は、どういうふうに進んでおりますか。
[050]
外務大臣 藤山愛一郎
アジア局長から説明させます。
[051]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
本年の1月の初めから、この実施につきまして、日韓連絡会議でいろいろと協議をした結果、大村におりまする韓国人の国内釈放につきましては全部完了いたしました。
釜山におります日本人の漁夫の帰還につきましては、御承知のように、第1船で300名が無事日本に帰りました。
なお大村等におりまする不法入国者の韓国送還の問題につきましても、第1次船約200名が20日に出ることになっております。
その後、日本人の漁夫の送還問題につきましては、第2船以下がまだとだえておるわけでありまするが、これにつきましては、不法入国者の送還等に関しまするいろいろな実施上の点で、多少問題が残っておりますので、ただいま韓国側の主席代表でありまする柳公使が本国に帰って打ち合せ中でございますので、これが帰って参りましたら、なお打開が進むものと私どもは期待しております。
[052]
日本社会党(社会民主党) 石野久男
釜山収容所におる日本人の正確な数、それから大村収容所におる者の正確な数、そういうものをこの際明らかにして下さい。
[053]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
釜山におります日本人の漁夫は、全部で952名であります。そのうち29名のまだ刑を了しない者が釜山に残っておりますが、922名が刑を了した者でありまして、これが日本に送還されることになっております。なお残りの29名につきましては、一応昨年末の協定の範囲外でありますので、これも随時刑が終り次第日本に帰るということになっております。
なお大村等におりまする不法入国者等の全員は1260名になっております。
[054]
日本社会党(社会民主党) 石野久男
この1260名と、それから951名ですか、この1951名の中で、今までに相互釈放で帰ったり、あるいは向うの国内釈放した人間を、もう一ぺんはっきり言って下さい。
[055]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
釜山におります日本人漁夫で、帰って参りましたものが300、それから不法入国者で韓国に送還されるべき者の予定が第1次250名の予定で、これは20日に帰る予定でございます。
昭和33年02月18日 衆議院 法務委員会
[004]
自由民主党 長井源
けさの新聞で「17日午後本国送還のため浜松収容所から長崎県大村収容所へ移送中の韓国人206人を乗せた列車が名古屋、大阪、姫路の3つの駅で停車の際騒ぎを起し、どさくさにまぎれて10人が逃走した。」という記事がありますが、この事情を一つ御報告願います。
[005]
政府委員(法務事務官(入国管理局長)) 伊關佑二郎
17日、昨日の12時40分に異常なく浜松を出発いたしておりますが、被護送者は205名であります。これに対しまして、浜松の警備官63名、警察官4名、本局から2名の職員が参り、69名の者がつきまして、特別列車で5両の編成で出発いたしたわけであります。
ところが、名古屋に参りまして、この護送指揮官の方から駅側に連絡いたしまして、売店で酒を売らないようにという連絡をいたしましたところ、この連絡が不十分でありまして、タバコも売らないという事態が発生いたしました。タバコを売らぬのはけしからぬといって騒ぎ出しまして、約40分遅れて名古屋を出発いたしました。そんなことでだいぶ被護送者が興奮しておったものと見えます。
次に、大阪に参りましたところ、約300名くらいの見送り人が来たそうでございます。停車時間が短かいということで騒ぎ始めまして、結局、列車が出ましたときに約10名の者が乗っておらないという事態が発生いたしました。そのうちの5名はすぐに探しまして急行でもって追いかけまして姫路で乗せておりますが、ここで5名が逃亡しております。
それから、神戸、姫路を通じましてあと4名がやはり逃亡いたしました。神戸、姫路あたりは、大阪で騒ぎまして興奮しておりましたが、やはり姫路では見送り人が非常に少いといって騒いでおるようであります。そういうことで、汽車は遅れつつ、かつ9名の逃亡者を出しまして、現在博多の駅についております。電話連絡では、博多駅の見送り人が2名か3名しか来ておらないということでまた騒いでおるというところまで今電話の報告が来ておる状況でございます。
こうした事態を起しましたことはまことに申しわけないと思っております。
[006]
自由民主党 長井源
まことにだらしのない話だと思うのですがね。この韓国人の浜松の収容所は、昨年でしたか、中国人であったか韓国人であったかが係員をなぐったという事件もあり、大村収容所では床の底をくり抜いて脱走を企てたような事件もあったわけでありまして、どれも監督側の方で取締りが不十分であったと思うのでありますが、今度などは、送還されるということがわかっておる人々でありますからして、こういうことが起り得るというようなことはあらかじめわかっておったと言った方がいいので、それにもかかわらずこういう事態を起されまして、こんなことをしておっていいのかどうか、その責任は一体だれが負うのでございますか。法務大臣、どうお思いになりますか。
[007]
法務大臣・文部大臣臨時代理 唐澤俊樹
私も、ただいま局長から経過について御説明申し上げただけの報告を受けておるだけでございますが、まことに遺憾なことができまして……。何分にも大ぜいのことであり、そう普通の犯人護送のようなぎょうぎょうしいこともできかねるような気づかいがあったのかもしれぬと想像いたしますが、いずれにいたしましても、かような事態を引き起しましたことはまことに相すまぬと思います。私どもといたしましては、責任上何とも相すまなく存じておる次第でございます。
[008]
自由民主党 長井源
これはわずかな韓国人の送還の問題ではありますけれども、事外国ということになりますと、日本の国の政治にも大へん影響することだと私は思うのです。こんなことをしておったら、いつまでもなめられてしまいます。それで、これは取締りも何もとうていできるものではないと思うのです。
今度この法案を出して、60日で指紋をとるのを今度はとらないということになったのは、私どもの見るところでは、一つの保護、取締りの方針における緩和だと思うのですが、これを一体局長さんはどうお考えになっておいでになりますか。
[009]
政府委員(法務事務官(入国管理局長)) 伊關佑二郎
一般的な犯罪の取締りという観点に立ちました場合は確かに緩和になると存じますが、また別の観点に立ちまして、いろいろ貿易の面、文化の面その他を考えました際に、多少の取締り上の不便はあっても、一般的なプラスの面を考えまして、こういう措置をとった次第でございます。
昭和50年02月25日 衆議院 予算委員会第一分科会
[109]
公明党 鬼木勝利
それから、最後に大臣に総合的にちょっと私、お願いがあるのですが、これは単に外国人タレントの入国者のみならず、これは正式なビザを持って入国をする方は別でございますが、そういうもぐりの方の問題をきょう私、取り上げたわけですが、これは全体の一般密航者ですが、承るところによりますと、現在推定で10万人ある。これは流動しているのではなくして、現在日本に在留しておる密航者が10万人ぐらいあるのだというお話を承っておる。
私は九州ですが、長崎に大村収容所がございまして、今度新たに建てかわっておりますが、聞くところによりますと300人ばかり収容ができる。そうすると、現在日本に密航在留者が10万人もおるとすると、これはもう暗黙のうちに10万人は定着したようになっているのじゃないか。
何でも年に2回ほど送還の船が出る。年に2回船を出したからといっても、10万人の密航者ということになれば、これをもっと厳しく取り締まって、年に5回も10回も船を出して送還でもするというようなことにしなければならない。しかし、長崎の収容所には300人しか入れられませんから、入れるところがないから、送還をさせないで、そのままに10万人定着させてほったらかしているのか。これを年に5回も10回も手をつければ入れるところがない、船は年に2回しか出していない、そういうことで黙認して、10万人ということがみすみすわかっておりながら、むろん推定でございますけれども、放任してあるのか。
こういうことになりますと、先ほどのはそういうよからぬのがやってきて、バンドマンも困ったというようなことの陳情を私、受けたということを申し上げた。ところが、現在日本に10万人からの密航者があるということになりますと、これは大半労働者と思いますが、そうすると、やはり日本の労働者をこれは非常に圧迫する。
向こうは低賃金でございます。彼らは労働を目的としていますから、体も非常に強いし、仕事もできます。それを低賃金で雇用する。そうすると、やはり日本人の労働者を圧迫する。
これらはおおむね労働者と思います。ほかにもたくさんおると思いますし、いろいろな各種の職業の方がおられると思うが、大体労働者と思う。そうしますと、やはり日本の労働者を非常に圧迫するということになる。
そういう点におきまして、これは大臣にお願いですけれども、何らかの方法でこの密航者はやはり私は整理すべきだ、かように考えますが、その点、大臣のお考えはいかがでございますか、ちょっと承りたい。
[110]
法務大臣 稻葉修
法務大臣就任早々、各局の所管事項の説明を承りました際に、入国管理局長の説明の中にもそういうことがございまして、先生御指摘のとおり、相当な人数の密入国者が在留していることは、労働移民を黙認しているようなものでございまして、わが国労働市場を圧迫することは当然でございますから、鋭意こういう点についての改善を、入国管理当局によく改善策を講ずるように、先生の御指摘のようなことに対応して体制を整えるようにということを申している段階でございます。なるべく早く先生の御指摘のような弊害が除去されるように、一生懸命にやりたいと思っております。