第三朝日丸事件 ~ 朝連と共産党

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昭和26年03月28日 衆議院 行政監察特別委員会
[310]
自由党(自由民主党) 篠田弘作
その次に第三朝日丸事件というのがあるそうですがそれはどうですか。

[311]
証人(国家地方警察本部警備部長) 柏村信雄
第三朝日丸事件と申しますのは、これに関係いたします、おもなる人間といたしまして崔武甲というものがおります。

この崔武甲というものが北鮮との連絡のために、第三朝日丸という船を買い受けまして、昭和25年の4月30日に北海道の松前港を出帆いたし、5月5日に北鮮の元山に到着し、元山におきましてドラムかん12本、うにのたる詰170箇を積載いたしまして、朝鮮人3~4名を便乗させて5月26日に元山を出港いたし、山形県の酒田港を経まして秋田県の土崎港に到着したわけであります。そこで密輸品を陸揚げいたしました後に、本人はここに上陸いたしまして荷物を東京に発送して、みずから上京してその荷を受取ろうとする際に検挙をしたわけであります。一方第三朝日丸は5月30日に土崎港を出帆いたしまして、翌31日に北海道の函館港に入港したところを検挙されたものであります。

本件の首謀者であります崔武甲と船主の長谷四郎、船長の才門勒四路、これらはいずれも日共の党員でありまして、特に崔武甲というのは朝連の岡山県本部の副委員長とか書記長を歴任した男であります。今回の事件におきまして、出港前に準備金として長谷に対して40万円を手渡しておるということがいわれております。また元山に碇泊中におきましても、北鮮の政治局員と称するものの来船もしばしばあった模様であります。なおこの船はウラジオストックの方にもおもむいたということを、取調べのうちに漏らしておるものがありますが、崔武甲とか長谷の両人はこれを否認いたしております。なおこの船には、朝連の中央総本部の中央委員でありますところの朴龍鏑というものが家族とともに便乗して、元山に行って下船しておるということがいわれておるわけであります。

これらの処分の状況でありますが、昭和25年8月29日に函館地方裁判所におきまして、崔武甲は懲役3年、長谷四郎は懲役1年、才門勒四路は懲役1年、同船者の高田繁一、金澤某というのは懲役10箇月ということになっております。別に追徴金として1万4794円を各人に供料し、船舶は没収されたわけであります。これに対しまして、長谷を除きます4名は8月31日に札幌高等裁判所函館支部に控訴手続をとりました。その後これを取下げて、現在札幌刑務所において服役中であります。長谷四郎は9月4日に札幌高裁に控訴いたしましたが、12月18日に棄却され、同月の26日に最高裁判所に対しまして上告して現在に至っている状況であります。



[351]
委員長代理 佐々木秀世
それではあと二点ばかり私の方からお伺いして終りとしますが、先ほどの第三朝日丸のことにつきまして、その船長である才門という人は北海道の道南地区と申しますか、道南の共産党海上オルグの責任者として、第三路線を利用する党輸送物資の任に当っていたということが判明したと言われておるのですが、これは事実でありますか、お答え願います。

[352]
証人(国家地方警察本部警備部長) 柏村信雄
これらのものを取調べておる過程におきまして、そういうことが判明したということは事実でございます。