小泉純也「在日は韓国なんかに帰りたくない」

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昭和30年06月18日 衆議院 法務委員会
[006]
日本社会党(社会民主党) 神近市子
出入国の関係の問題は、前国会からもしばしば問題になっているのでございます。ただいま大臣であられる花村氏が出入国管理の小委員会の委員長をなさっていらっしゃって、この問題ではしばしばお話し合いをいたしたことがあるのでございますけれども、この密入国の緩和ということでは非常に御熱心にお考えになっていた。

今の事態は歴史にも珍らしい韓国人の民族的不幸だというふうに考えまして、私どもも、既往日本人であったという立場から、その扱いにはもう少し人道的なものがなくてはならないという考え方から、入国管理局にいろいろ申し入れをしたり、あるいはいろいろお願いに上るということを始終してきたのですけれども、この問題は幸いにして花村氏が法務大臣になっておられますので、その在野時代の感覚をもって考えていただきたいと私どもは熱望しているわけでございます。

それで私は少し素朴かもしれませんけれども、今60万の朝鮮の方々がいる。そしてその方々が日本の失業状態のあおりを食って、なかなか仕事が得られない。仕事が得られないために犯罪をたくさん犯す。これは私憎みたくないけれども、いろいろの新聞その他に出ております犯罪にとても朝鮮の人が多い。

それから私どもが視察して参りました基地の周辺におけるあってほしくないいろいろの事柄にも全部あの人たちが出ていて、ちょっと私どもが近寄るのが危険なくらいに感ぜられる。一体そういう状態にほうっておいていいか。私ども日本人としても困るし、あの方々も、自分の民族の間に帰ればあれだけ思い切った犯罪はないと私は信じております。というのは自分たちの婦人と自分たちの子供には非常に親切で、そして絶対に手をつけない。異民族である日本人にこれが襲いかかっているという傾向が明らかなのです。

ですから私は非常に素朴な考え方かもしれませんが、帰りたい人を早く帰して、そうしてどうしても日本に来なければ父親とか両親とかに会えない。そして夫に会えない、扶養者に会えないという人たちには緩和していただきたいというのが私の根本的な考えでございます。

それでいろいろお尋ねするのでございますが、一応北鮮の問題を後まわしにして南鮮との話し合いを進めたいというのが当局のお考え方であったのでございます。今日そういう動きに対して、幾らかでも進展する情勢があるのでしょうか。あるいはこれは絶望的なものでしょうか。大臣でなくてちょっとお気の毒ですけれども、あなたが御存じの程度で伺わせていただきたいと思います。

[007]
法務政務次官 小泉純也
韓国人が、日本に生活をしたい、また戦争中疎開いたしまして、子供が日本に在留しておられる両親のもとで生活をしたいと申して、その手段方法を選ばず日本に入ってくるというようなことは、ただいま神近先生がおっしゃいましたように、人道的な問題といたしましては、夫婦を一緒に生活させ、親子を一緒に生活をさせたいということは、管理局の取り扱われる方々も常にその苦衷を訴えておられるのでございます。

私どもも最初、両親が日本にいて子供が日本に入ってくる、かわいそうじゃないかというような考えを持っておったのでございますが、いろいろと実態に触れて研究をして参りますと、人道的、人情的には非常に忍びないものがございますけれども、それがあまりにも数が多い。最近においては、子供だけ30人くらいの団体を連れて密航をして、大人だけは完全に逃げてしまっている、がんぜない子供だけがつかまっておるというような事実もありまして、この取扱いには非常に係の者も苦慮いたしておるようでございます。

神近先生がおっしゃいましたように、日本に住まいたい者を住まわせて、韓国に帰りたい者は返す、こういうふうに参りますと事は最も簡単で、いろいろの難問題が漸次解決をするのでありますが、問題はそう簡単でなく、極端かもしれませんけれども、60万と推計をせられる朝鮮人のうち、日本から母国に帰りたいという者は一人もいないといっても大した言い過ぎではない。一方向うからは、入れれば、それこそ手段方法を選ばず、命がけでも密航をして、方法さえつけば怒濤のごとくどんどん入ってくる。そしてこちらから強制送還をしようといたしましても、韓国の政府がこれを容易に受け付けないというところに、人道問題だけでは解決しない大きな国と国との外交問題と申しますか、もう入国管理局だけでは手に負えない大きな外交問題となってここに横たわっておるのは、私が申し上げるまでもなく、御理解をいただいておると思うのであります。

ですから、要するに、こちらは国際的ないわゆる紳士としての態度をもって韓国に接しましても、韓国の方は、紳士的でないとは申しませんが、御承知の通り李承晩ライン、その他漁船の拿捕の問題、こちらから、密航した者を密航したという確証をあげて韓国に申し入れましても、その送還を容易に受け付けない、こちらは向うから出てきた者を受け入れっぱなし、不法入国であろうが何であろうが、返すことができないで、大村収容所にはますます人員がふえていく、それをみな国費で、国民の血税で養ってやらなければならない、その取扱いについても、きわめて懇切丁寧にしなければ、人権じゅうりんというような問題まで起きてくる。これを大まかに考えますと、一体日本のためにやらなければならないのか、日本国民の血税の犠牲において、韓国人をまず第一義として大事にしてあげなければならないかというようなところまで、考え方によっては行く問題であると私は思うのであります。



[010]
日本社会党(社会民主党) 神近市子
その御努力をなさるうちに月がたって年がたつというのが今までの状態で、8年も9年も問題は解決していないのです。ですからほんとうに一つのアイデアをお持ちであるならば、もう少し張り切ってそれを推し進めていただきたい。

それからさっき一人も韓国に帰りたい希望者がないというようなことをおっしゃった。それは韓国に帰る希望者はないかもしれません。しかし北鮮に故郷を持っている人たちの中で帰りたいという要望は、この3、4年強く出てきておる。

私は大村に1300人もかかえて国費を年間1億何1000万も使っておるということがもったいないくてしようがない。それでその人たちが仕合せであるかどうかというと、これはまことに悲惨な状態にある。そういうことを3年も4年も5年も見過ごしにできないというのが国民一般の考え方だろうと思うのです。それで一人も帰りたい人のいない韓国のことは一応暫定的に国交の再開を待つといたしましても、少くとも3000人余りの学生とそれから技術者だけでも帰してもらいたいということは要望がきておるはずであります。

北鮮から40何人とかごく少数でございましたけれども、これは受け取らなければならないはずであって、それを受け取る場合に、自分たちの受け取ることだけ考えないで向うに返すということも同時的に考えることはできないかということでございます。これは国際的な問題ですから韓国の感情というようなことも考慮すべきではございましょう。ですけれども、どうしても韓国が話に乗らないと申しますか、ほとんど今日のように頑強にこれを否定しているとすれば、どういう方法か考えて、個人的に帰国を許すとかなんとかいうような方法で帰す方法はないかということを、私は非常に素朴でございますから、この問題はもっと素朴に考えてもいいと思うのです。国連憲章やあるいはその他のことを考えれば、国内的なごく一部の人たちが問題を押えておいて、そうしてそれを広く客観的に考える余裕を失っておるという状態は非常に困ると考えます。

この間アジア平和会議に行った人たちが北鮮に行ったが、向うでは学生や技術者――これは要望が行き届いていたかどうかと思いますけれども、ともかく受け入れる、いつでも帰ってきてもらいたい、学生はただで教育してやろうというようなことがやはり新聞に出ておりましたけれども、そういうことを考えれば、これはどちらも国交がないということでは同じですから、どちらを選ぶということの意思表示は要らない。ともかく人道的な問題からだけでも帰りたい人たちを送ってやるということは、こちらで受け取ると同時に考えていいのではないかと考えるのであります。その点はどういうふうにお感じになっていらっしゃるか、あるいは今後の努力をその方面にお向けいただけることができるかどうか、それも何か大きな障害があってできないのか、それを承わりたいと思います。

[011]
法務政務次官 小泉純也
先ほど韓国人でこちらにおる者で韓国の方へ帰りたいという者は一人もないと申しましたのは、一人もないといっていいくらいにほとんどない、こういう意味を申し上げたのでありまして、確実に全然一人もないということでなくて、一人もないといっていいくらいにほとんどが向うに帰りたがらないのだということを申し上げたわけでございますから、この点は特に念のために申し添えておきます。

また北鮮の問題につきまして、技術者その他一部の者が帰りたいということである、そういう者はできるだけ本人の希望に沿うように帰してやり、また向うから入ってきたい者は入れてやるというようなお考え方は、私どももそういうふうにできることを最も望ましいこととして希望しているのでございます。

ただ今も北鮮の一部の者が帰りたいということはまだ全然具体化しておりませんで、在日北鮮の団体の一部の人々がそういうことを最近希望的に言い出しておるという程度でございまして、これがまだ北鮮の政府とこちらの方とも具体的には進展をしておらないのでございます。また向うの方も、新聞等の情報では、帰ってくるならば受け入れるというような記事もあったかに記憶いたしまするが、これも具体的に日本の外務省と北鮮の正式機関との間に、日本から帰すものをば受け入れるというようなところまで具体的に話が進んでおりませんので、こういう点をもっと推進をして具体化していきたいと考えておるのでございますが、これは御承知の通り、外務関係をば含むところのきわめて重大な問題でもございますので、十分慎重に取り扱っていかなければならないと考えておるのでございます。

要は先ほど来申します通り、こちらから帰すものをば向うが気持よく受け取ってくれる、こういう関係ができ上らないところにこの問題の難点がございまして、まさか荷物か何かみたいに勝手に向うの波打ちぎわに置いてくるというようなことはとうていできないのでありまして、やはり向うとすっかり話がつきましてこちらからは帰す、向うはちゃんとそれを受け入れるというようなことが文字通り確実に話がまとまらなければ行動に出られない点をば御了承をいただきたいと思います。今神近先生が仰せられますることは当然そうあるべきことである、当局としてもぜひそういうふうにあらしめたいということを熱願をいたしておって、具体的にそうあらしめるべく双方の間の関係を今後とも十分熱意を持って推進をいたしたいと考えます。