軍事アナリスト 小川和久 1

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平成09年03月25日 衆議院 安全保障委員会
[008]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
小川でございます。

このような重要な場で意見を述べさせていただくことを大変光栄に存じます。

国際情勢に関しましては、これまで佐久間参考人、渡邉参考人の方から極めて適切なお話がございました。私はやはり岡崎参考人と同じ日米安保、とりわけ沖縄の米軍基地問題に関して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。

この委員会のテーマ設定からまいりまして、東アジアにおける我が国の安全保障問題ということになっておりますので、まず、お手元のレジュメにありますように、Aについてはその第1項目、アメリカから眺めた日米安保ということを若干踏まえまして、Bにあります沖縄米軍基地問題の解決ということでお話を進めさせていただきたいと思います。

私自身、この問題に触れます問題意識といたしましては、とにかく日米安保体制を、日本なりの平和主義でもよろしいのですが、それに沿って健全化することによって国際平和を実現すること、そして沖縄の米軍基地問題に関してはやはり解決の方向に大きく前進すること、それをも問題意識とさせていただきたいと思うわけであります。

そこにおいて、レジュメのAにございます東アジアの安定における日米安保体制の役割ということで若干のお話を申し上げたい。岡崎参考人の方からもお話がございましたけれども、アメリカから眺めた日米安保ということで議論を整理してまいりたいと思うわけであります。

とにかく、同盟関係と申すものは、その国の国益にかなっているというところから選択されるものであります。ですから、日米安保というものは日本の国益にとっても極めて重要である、そのような立場というのは当然あるのだと思います。

しかし、アメリカから眺めた場合、お情けで日本と同盟関係を結んでいるのか、さにあらず、アメリカの国益にとって極めて重要であればこそ日米安保を維持しているのだというところは、私どもは認識をもう一度改めてみる必要があるのではないか、そのような感じがするわけであります。

私自身は、13年前に、アメリカ政府の正式な許可を得て、北は三沢基地から南は嘉手納基地まで、実際に米軍基地を歩き、基地司令官に聞き取り調査を行い、また、アメリカ側から資料の提供を受け、また、ブリーフィングを受けたわけであります。

その中で、私自身のささやかな分析を報告書の形で公にしたわけでございますけれども、その結果を申し上げますと、それまでの俗論でありますところの、在日米軍基地などは韓国にある米軍基地の数10分の1の位置づけしかない、あるいは当時フィリピンにあったスビックの海軍基地と比べて日本の基地などは50分の1以下の重要性しかないといったものに比べて、逆であります。

例えば朝鮮半島にある在韓米軍基地というのは、朝鮮半島の戦争にのみ備える格好で展開をしてきた。

それに対して、在日米軍基地は、アメリカ第7艦隊の任務区域であります西経160度、これはハワイでございます、それから東経17度、これはアフリカ最南端の喜望峰でございますが、つまり、地球の半分で行動する米軍を支えるような機能を担っているということが明らかになったわけでございます。

つまり、軍事基地の性格として、韓国にある米軍基地、あるいは当時フィリピンにあった米軍基地が第一線の野戦基地であったのに比べ、在日米軍基地はアメリカが世界のリーダーであり続けるための戦略的根拠地である、そのような位置づけにある。

それを日本国民が認識をし、みずからの税金で維持をしているという自覚のもとにアメリカとの同盟関係を健全に維持することが極めて重要ではないかという思いを持つに至ったわけであります。

いかに日本がアメリカとの同盟関係において重要な役割を果たしているか、これは日本国民の国民性からいいますと、アメリカ側の議論に振り回される傾向がありますので、アメリカ政府の要職にかかわった方の発言を御紹介する中で若干の御説明を申し上げたいと思います。

昨年の11月15日のことでありますが、東京で沖縄問題に関する研究会が開かれました。これは霞が関ビルであったのですが、主催をしたのは東海大学の平和戦略国際研究所であります。司会をしてくださったのは自民党の参議院議員武見敬三さんです。アメリカ側のスピーカーは、アメリカ国防総省の前のジャパンデスクであったポール・ジアラ氏、そして、その横にアメリカ国防総省の国防分析研究所の研究員でありますマイケル・グリーン氏が同席をする。日本側のスピーカーがたまたま私であったわけであります。

私は日本側の出席者の方に聞いていただきたいということがありまして、ポール・ジアラ氏に確認を求めた、これは当時の記録にちゃんと書いてあります。「日米安保抜きにアメリカは世界のリーダーでいられますか。」まさしくこれは、シンガポールが陥落した後、山下奉文将軍がパーシバル中将に対してイエスかノーかと迫ったような雰囲気で私は聞いたわけであります。そうしたら、すぐさまアメリカ側は答えた、リーダーではいられませんと。アメリカにとってもそれだけ重要であるということなのです。

その話の流れの中で、ポール・ジアラ氏は、とにかく湾岸戦争のときの日本の貢献というものも、お金を拠出する以前に、軍事力の出撃拠点として極めて重要な役割を果たした、最大の貢献をしたということを向こうが言ったわけであります。私は、私のこれまでの調査でありますし、持論でございますけれども、とにかくその56万余りの米軍を湾岸において支えたのは戦略的根拠地である日本列島であり、特に、燃料と弾薬の8割以上は日本から運ばれたものであるというような御説明を申し上げたとあります。

とにかく日本は、アメリカの同盟国の中で、もちろん軍事力の提供ということにおいては大きな制約を抱えておりますけれども、極めて大きな役割分担をしている、その自覚が極めて重要であろう。

このレジュメのBの一番下にeの⑧とありますが、片務性という議論が日本ではしばしば日米安保に関する議論を屈折させている原因になっていると私は考えますので、若干の考えをお聞きいただきたいと思います。

とにかく日本はアメリカから守っていただいているのだ、だから、アメリカに何か物を申すとアメリカを怒らせてしまうのじゃないか、アメリカを怒らせるとアメリカが日米安保を切ってしまうのじゃないか、そうすると、日本は裸同然になってとにかく大変なことになるのじゃないか、だから、ひたすらアメリカの言うことを聞くのだというような議論が戦後一貫して日本の中にかなり大きなものとして存在してきたわけであります

ただ、同盟関係の常識ということを前提にこの片務性の問題を考えたとき、戦後51年間を眺めましても、アメリカの同盟国の中で、果たして軍事的に見てどの国がアメリカと対等であったことがあるのでしょうか。

さまざまなかかわり方をしておりますが、軍事面で見たとき、アメリカの同盟国はやはりアメリカの軍事的リーダーシップのもとにあるわけでありまして、アメリカから見ると、すべてが片務条約であります。中には、アメリカから軍事的に丸抱えになっている国もございます。そこにはアメリカ国民の税金が使われ、場合によってはアメリカの若者の血が流されるかもしれない。それが片務条約であるがゆえにアメリカにとってむだだということになりましたら、アメリカ国民がそれを許すはずはありません。

アメリカの国益にとって重要であればこそ、丸抱えの片務条約でもアメリカは維持しているわけであります。ですから、片務的だということだけで肩身の狭い思いをするというのは、国際常識に欠ける議論であろうということをまず申し上げたい。

ただ、同時に片務条約をそのまま放置していいのかという問題もございます。とにかく外交は対等が前提であります。ですから、軍事面では対等になれないにしても、同盟国は、例えば重要な基地の提供あるいは資金の提供などによって対等な関係、つまり双務性を高めることが極めて重要でございます。

その面から日本を見た場合、例えば戦略的根拠地である在日米軍基地を提供している、これは金銭に換算できないほどの重要な役割分担であります。また、金銭面でも、このレジュメの3枚目、データの5にございますけれども、平成8年度で見た場合の在日米軍経費は総額6389億円であります。同時にまた、我が自衛隊の役割分担というものをアメリカから見た場合は極めて重要である。自衛隊は日本の国を守るために存在しているわけでありますが、私どもの防衛費で維持されている自衛隊は、アメリカが世界のリーダーであり続けるために必要不可欠な戦略的根拠地である日本列島を守る戦力として認識をされている。

ですから、年間5兆円余りの資金的分担も行っているという議論を基本的には行わなければいけないわけであります。

私自身のささやかな体験で言いますと、このような議論をアメリカ側とこれまでやってきて、一度も反論などを受けたことはございません。そのとおりだというような認識でございます。ですから、これはやはり民主主義国である日本側としても、納税者にこたえるために明確にしていくべき問題であろうかと思います。

とにかく、先ほど岡崎参考人のお話にもありましたように、国際情勢に対する分析等は同時に重要でございますけれども、私はここで申し上げたいのは、日米安保を、日本なりにでよいのでありますけれども、健全に維持することの中でアジアの安定が相当進むのだ、それが確保されるのだということを申し上げておきたい。

我々がそういう自覚を持ち、日米安保を健全に維持しようとしているかどうかの試金石が、このレジュメのBにあります沖縄米軍基地問題の解決であろう。

そこで、若干のお話を申し上げたいわけでございます。このレジュメのBのa、b、c、dというところで若干お話を進めたい。

とにかく沖縄の人々に大変重い、しかも偏った差別的な米軍基地の重みが加えられてきたということに対して、私どもが戦後一貫して無自覚な状態にあったということは、大きく反省し、改善に向けて努力をしなければいけない。これは、現在、国を挙げて進められていることであろうと信じたいと思います。ただ、その場合に、やはり議論を進める前にさまざま整理をしなければいけないポイントがあるだろう、そこをここに述べたわけでございます。レジュメのBのaにありますように、白紙的に見た場合の沖縄米軍基地問題の解決における選択肢は、大ざっぱに言って3つあると思います。

つまり、米軍基地問題全体をなくしてしまおうと思ったら、日本から日米安保をやめてしまえばなくなるのです。こういう選択も白紙的にはあるでしょう。ただ、私は、それは日本の国益にとつて望ましいことではないと思いますし、日本国民の恐らく半分以上は、日米安保の解消というものは望ましくないと選択するでありましょう。ですから、これは、ここでは私は消させていただきます。

結果的に言いますと、この③にあります米軍基地の再配置、縮小などを図る中で、沖縄に加えられている過重な米軍基地の負担というものはなくしていくという方向に行きたいわけでありますが、もし日本国民を挙げてそのようなことに取り組む姿勢が生まれてこなければ、沖縄としてはみずからその問題を解決せざるを得なくなる。それが、この2番目にあります沖縄独立という選択肢であります。

これはリスクは伴いますが、沖縄が例えばシンガポール並みの通商国家として生きていく将来を保証するものかもしれません。ただ、日本全体から眺めた場合、国内問題にすぎない沖縄米軍基地問題を良好な形で解決できないとなりますと、国際的な信用を失います。これも国益の問題から見て甚だ好ましくない。ですから、ここでは消去法で消させていただく。

3番目の再配置、縮小ということを前提に、このレジュメのBのbの問題に入ってまいります。沖縄米軍基地問題を基地の再配置や縮小などによって解決していくためには、この①から③までの条件を同時にクリアしていくことが必要になると私は思います。

1つは、米軍基地の再配置、縮小であります。この中には、沖縄における戦後処理という問題がまず第1になければいけないと思います。

とにかく沖縄戦が終結した後、米軍が上陸をし、そこに居座る形で現在の米軍基地は存在しております。これは、沖縄の主要な部分を占め続け、沖縄の自立というものを阻んできた。これは、沖縄復帰後も、その根本的な部分においてはいささかも変わることはなかったわけであります。とにかく沖縄の復興、繁栄というものを考えるとき、沖縄県内においてまず基地をどこかに移すという作業は、正面から取り組まなければいけないだろうということであります。同時に、これはやはり日本本土にも分散しなければならないし、アメリカと交渉する中で、縮小するあるいは整理統合するという作業を進めなければいけないと思います。

これと同時に、アメリカとの交渉を行う中で、2番目の沖縄の経済的自立を可能とする抜本的振興策というものを本来的に望ましい形で描くことが重要であろう。

しかしながら、この3番目にありますように、これを可能とする条件は、アメリカの軍事的プレゼンスを維持してやるということであります。とにかく軍事的プレゼンスが維持されているとアメリカが認める限り、日本の要求をアメリカは相当受け入れると私は乏しい体験の中で感触を得ております。しかし、そのための条件を整え、日本なりのカードを備えない限り、これは無理であります。ですから、議論を最初から整理していくことが極めて重要になるだろうと思っております。

そういう条件を前提として、このレジュメのBのcでございますが、日米両国が沖縄の米軍基地問題の解決のために目指すべき到達点というものを明らかにし、そこへ向けての歩みを始めることが重要であろうと思います。これも私は3点ここに書きました。当面の目標としては1番目と2番目であります。そして、3番目が継続的目標となってまいります。

1番目は、沖縄振興策の主な柱として、アメリカ空軍嘉手納基地をアジアのハブ空港にしていくという問題でございます。

とにかく日米安保をどのような形にしろ続けるということになりますと、アメリカが嘉手納基地を返還するということは通常では考えられません。ほうっておきますと、沖縄の中心部を占めるあの基地が、軍事的にのみ使われるわけであります。これは沖縄にとって大変不幸なことであります。しかし、日米安保を日本の努力によって健全に維持する中で、アジアの平和が保たれている限りあるいは世界の平和が保たれている限り、嘉手納基地は民間用に使用することは可能になってまいります。ですから、とにかく条件をきちんと整理をし、嘉手納基地をハブ空港にしていく、これが沖縄振興策の極めて重要なポイントになると思います。

いま1つ、当面の目標としては、海兵隊地上部隊をアメリカの領域に動かすという問題なんです。

ただ、後ほど申し上げますけれども、現在、与野党を挙げてあるいはマスコミを挙げて行われております削減とか撤退という言葉は、定義を明確にしない限りアメリカとの交渉の場には出せないのです。ですから、私は、新しい概念として、即応後方配備ということを出しております。即応性の高い形で海兵隊の能力を維持し、そして沖縄県民が望んでやまない海兵隊地上部隊のアメリカ領域への駐留というものを実現していくという話であります。

同時に、この3番目の継続目標としては、日米安保による国際的軍縮を実現しつつ、アメリカと協議をしながら軍事基地を縮小していく、それを追求していくことであろうということであります。

この到達点を実現するためのステップ、つまり、日本側で申しますと、日本が備えるべきカードというものは、このBのdの①、②、③であろうと思います。

とにかく普天間基地の返還が決まった後、代替航空施設につきましては海上ヘリポート案が去年の9月に浮上し、それをめぐって決着がつかない状況が続いております。しかし、昨年4月2日の段階まで、アメリカ政府は普天間基地を返すということは言っておりませんでした。4月2日の段階で、政治的な決着をつけようということを橋本総理が決断をされまして、とにかく普天間基地は返還という方向に動いたわけであります。

ただ、その中で条件になったのは、普天間基地と同等の能力を持つ陸上基地を沖縄県内につくるというステップ、それを踏まえるということであった。これは密約とかそういう話ではありませんが、そういうことを前提にして、初めてアメリカは普天間基地を返すということに同意をしたわけであります。

これは、県内移設ということに反対しておられる沖縄県民の気持ちはわかりますけれども、1つのステップとして考えた場合、海兵隊地上部隊の即応後方配備を実現するためにも必要な段階ではないかなと思っているわけであります。海上ヘリポート案では、とにかくフル編成した海兵隊航空部隊を有事に受け入れるためには不十分過ぎます。つまり、アメリカと交渉するカードにはならないということであります。

2番目の軍民共用空港の新設と那覇空港の閉鎖、これは嘉手納基地の空軍部隊をとにかくほかの基地に分散をし、ハブ空港として使うための対案でございます。沖縄県内に軍民共用の空港を建設する、そこに嘉手納の戦闘機部隊と那覇空港の自衛隊航空部隊を収容する、また、嘉手納基地の大型機の部隊は北海道千歳基地に移駐をさせるということであります。そういう中で、初めてアメリカ側は海兵隊地上部隊の即応後方配備を受けとめるであろうという感触を私は受けております。

そのような議論をしていくことが沖縄の基地問題を解決の方向に動かしていく上で極めて重要なことになってまいりますが、あと1分でお話を申し上げたいのは、レジュメの一番下、従来の議論の問題点のうち、1番目と2番目でございます。

とにかく定義が不在であるという問題をもう一度整理しよう。削減という言葉を使いますと、兵力構成全体を変更するという問題になりますから、アメリカは受けません。撤退ということになりますと、軍事基地の撤去という問題が本来的に入ってまいりますから、日米安保を解消しようとするのかということになりますので、受けません。これは違う定義をしなければいけない。日米安保を解消するということを前提にしないというのであれば、やはり県内移設というステップを踏まえるという議論も、いま一度沖縄県民の皆様としていくことが重要ではないかと思います。

御清聴ありがとうございました。(拍手)



[016]
自由民主党 中谷元
渡邉参考人の問題提起の中に、アジア・太平洋の特徴として中国の動向がかぎを握るということで、中国は脅威なのかパートナーなのかという問題があるのですが、日米安保体制の中で我々も物事を考えていかなければなりませんが、尖閣列島の問題一つにしても、明確に言うべきことを日本人は言っていないわけですね。中国は大局的に判断する国ですから、何か言えば聞き入れる国民だと聞いていますけれども、そういう中国に対しても日本は言うべきことを言っていないのは、いざこざを起こしたくないという国民性があるのではないかと思います。

その冷戦後の中国とのつきあい方は、今までのように対米重視べったりの感じでいくのか、それとも独自カラーでつき合っていくのか、アメリカの言いっぷりの範疇でしか言わないのか、範疇の外でも物事を言うべきなのか。中国に対してのそういう日本独自の戦略というかカラーについて御意見を聞きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。渡邉参考人から。

[019]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
中国を脅威にするかどうかという問題が一つここでは重要だと思います。脅威は敵の意思と能力だと決まり切ったことを申し上げるつもりはありませんけれども、やはり中国という国が経済的に成功してくれて、しかも日本経済にとって望ましい国になってくれること、これは日本にとっては一つ重要なポイントであります。

しかし、巨大な経済力を身につけた中国が巨大な軍事力を備え、それが日本に対する脅威となっては困る、それがまた日本が目指すべきところでございます。そこにおいて、中国とどのようにかかわっていくかということでは、やはりアメリカの積極関与政策というのは日本の外交政策を考える上で極めて参考になるのではないかと私は思います。

アメリカの考え方というのは、例えば中国が経済的に成功するためには、中国なりの尺度で結構なのですが、国内の体制を近代化し、民主化を遂げなければならない。民主化できないと経済的に成功できない。民主化を遂げた中国は、大きな経済力を持ってもその軍事力をむやみに振り回す国にはなりにくい。だから、民主化を遂げさせることがアメリカにとって都合のいい中国をつくることだ、そういう認識のもとにさまざまな角度から口出しをしていると思うのですね。

その考え方については、例えばアメリカのエール大学の国際政治学の教授であるブルース・ラセットさんの持論の中に、民主主義国家同士は戦争しないのだというのがあるのです。極めて似通った認識をアメリカは示して中国にかかわっております。

ですから、とにかくアメリカの積極関与政策というのを参考にしながら対中政策というのを一つ定める。同時にその極めて重要な柱として、岡崎参考人の方からもお話がございましたけれども、日米同盟をどのように日本の平和主義に即して運用し、それを中国に対して外交のカードとして機能させるか、その辺を考えていくべきだと私は思っております。

以上です。



[022]
新進党 平田米男
既に集団的自衛権の話がありましたが、具体的には、目の前の話はガイドラインをどうしていくかということが大きなテーマかと思います。政府はこれまでの憲法解釈のもとでということを言っておりまして、そのままだと余り大きな成果は得られないという意見が強いわけでありますが、どうも集団的自衛権の議論を始めますと神学論争みたいなことになってしまうので、私は、日本の国益を考えたら、何をやるのか、またどこまで踏み込むのか、こういう具体的なところを議論をしていかなければいけないのではないかというふうに思うわけであります。

まだ政府は中間報告も出しておりませんが、今の時点で具体的にどこまで踏み込むべきである、これが日米安保のためなんだ、またアジア・太平洋の安定のためなんだという視点から、各参考人で具体的にもし御発言をされる用意がありましたら御指摘をいただきたいと思います。これは、4人の参考人に順次していただければと思います。

[026]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございます。

私は、集団的自衛権というのはもともと独立国家固有の権利であるという前提でお話をするのですが、日本での議論というのはまだまだ未整理の部分が多い、この問題についても若干整理をする作業が必要だろうという立場でお話を申し上げます。

私は、この場合、1つのたたき台として、日本国憲法と国連憲章と日米安保条約という3つの関係においてこれを考えていくということが1つの日本モデルとも言うべきものを導き出す上で重要ではないかなという立場をとります。

日本国憲法は国連加盟を否定しておりません。当然ながら、国連憲章のどの条文についても日本国憲法は否定していないわけであります。同時に、日米安保条約は、第1条、第7条、第10条を見ればわかるように、国連憲章のもとでの条約であるということが明記されております。

そこで考えていきますと、とにかく日本周辺の有事に当たって日本の基地や施設を使う、その場合、日米安保条約第6条が適用される場合にも日本側の姿勢いかんによっては米軍の行動は国連憲章の枠内に制約されるという考えもとり得るわけであります。逆に考えますと、とにかく集団的自衛権について日本が国連憲章の1つの枠組みの中で行動するということはあるいは可能になるのではないかなと思っております。

例えば国連憲章の第51条には、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、」という文言がございます。この条件をまた日本側で厳密に定義をした上で、安保理事会が機能した時点で集団的自衛権の行使を例えば日本は停止し、派遣された自衛隊に撤収を命じたり、あるいは米軍への支援を制限する、そういった線を引くことは、これは暫定的なものであるかもしれませんが、可能ではないかと思っています。

ですから、日本国憲法、国連憲章、日米安保条約の3者の関係において一度枠組みを考えてみることが重要ではないかと思います。

どうもありがとうございました。

[027]
新進党 平田米男
次に、今沖縄の基地の問題が大きなテーマになっているわけでございますが、私も去年の7月から4回ほど沖縄に行っておりまして、その都度沖縄の状況についての認識はどんどん変わってきてはおるのです。

この2月に沖縄に行って、基地を抱えております市長さん、町長さんと懇談をいたしましたが、その際に、政府が考えております特別措置法をもし政府が強行するならば、テロさえ起きかねませんという危惧の表明がございました。

私どもこの問題を考えるに当たって、楚辺のような法律違反状態というふうに指摘されるような事態を回避したい、法治国家としてはこれは当然だ、形式的に法律に合致しているという物の考え方、これは当然一理ありますが、もう1つは、統治者として、国を預かる者としての責任としては、社会の安定というのも考えなければならない。すなわち、実質的な合法性、社会の安定ということも考えていかなければならないのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味では、沖縄の状況の中で、特別措置法の強行によってどのような結果を招来するのか、この辺の見通しが極めて重要なのではないか。

要するに、3000名の反戦地主の皆さんの土地を違法状態で占拠している。しかし、そこには反戦地主の皆さんは実際上は法律上は入れないわけであります、通行権がないわけですから。他人の土地を通って自分の土地に入るという権限、囲繞地通行権がなければ入れないわけでありまして、そういう楚辺のような状態でも事実上の安定があり得る、実際上あり得るのではないか、そういうことも考えますと、どちらがとるべき選択肢なんだろうか。

要するに、特措法の強行によって反米軍基地闘争が大変盛り上がってしまったということになりますと、基地の運用そのものに支障を来す事態も招来する。これは日米安保の信頼関係を大きく傷つけることになるわけでありまして、日米安保を守らなければならないという基本的な考え方にも実質反してしまう。

こういう事態も考えますと、特措法の強行によってどのような事態を招来するかという見通しが一番重要なのではないかというふうに私は思いますが、その点について4名の参考人の方々の御意見を承りたいというふうに思います。

[031]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私は、特別措置法の強行の中身によってかなり議論は変わってこざるを得ないと思っております。沖縄の県民の方々の神経をまるっきり逆なでするような格好というのは、現在の政府の姿勢の中からは見てとることはできません。ですから、必要な手だてを講じながら特別措置法の議論をしていく中では、一定のところに落ちつき、そのテロ云々という話にはつながらないのではないかなと思います。

ただ、その場合、やはり沖縄県民の方々とさらに議論を深める必要があると思いますのは、沖縄県民の方々のどのぐらいの部分が日米安保をやめようと考えているのかという話なんです。

日米安保を続けながら基地問題を解決しようと考えている限り、特別措置法に関しては一定の理解が存在するものだと思いますし、それに対して、政府としてはとにかく、先ほど私が意見を述べます中で申し上げましたように、基地問題解決のための一定の到達点といったようなものを示しながら、そこへ歩みをともにしていくことが重要だと思います。

テロといったようなことを地元の首長さんがおっしゃったというお話でございますけれども、テロをやるぐらいだったら独立しなさいよと私は申し上げたい。その方が建設的だと思います。

ありがとうございます。



[035]
民主党(民進党) 前原誠司
4人の方それぞれに幾つかお伺いしたいところでございますが、日米安保についての将来像というものをまずお伺いしたいと思います。

確かに日米関係というのは非常に重要でありますし、日米の友好ということについては、これは未来永劫続けていかなくてはいけないということについては私も何ら異論がありません。ただ、何100年、何1000年の歴史というものをひもといてきたときに、今はある条約というものが、果たしてそれがまた未来永劫続くのかどうかといえば、歴史の繰り返しの中でドライに見ていくと、それはあり得ないということはあるわけですね。ですから、いつまでも日米安保重視ということを言い続けるということについて、どういう情勢になるのかわからないし、また、そういう完全な双務的な関係はあり得ないということを小川参考人の方からも言っていただきましたけれども、どういう日米関係というものを今後つくり出していくかといったことは、私は大変ポイントになると思うわけです。

そこで、幾つかの点でお伺いしたいと思いますが、先ほど渡邉参考人の方から、当面の課題と将来的な課題ということで分けてお話がございました。当面は日米安保重視ということで、将来的には地域的な安全保障体制というお話がARFなんかを例にとって挙げられておりました。しかし、これも漠とした話でして、先ほど岡崎参考人がおっしゃったように、戦前の日英同盟を破棄して何ら実体のないワシントン条約に移ってしまって、ある意味で日本は裸になった部分があるわけです。

したがって、日米安保からARFを中心とする地域安全保障体制というのは、夢としてはいいし、方向性としてはいいかもしれないけれども、そのときに、日米安保というものは実際残してそれに移行するのかどうか。また、ARFが広がって、実際問題、信頼醸成機関となったときに、それがNATOのようないわゆる強制力を内部で伴って、お互いが軍事力を出して、兵隊を出し合って、そしてお互いの地域紛争に対処するようなものになるのか、あるいはただ単に条約として結ぶだけのものになるのか、その点で随分違いが出てくると私は思うのです。

そういう中で、4人の方々に伺いたいのは、日米安保というものの将来像を描く中で、もしそういう地域的な安全保障体制を描くのであれば、それが実行力を伴うものなのか、あるいはペーパーのものなのか、あるいは日米安保の変質というものを想定するのか、そこら辺のことをちょっとお伺いをしたいと思います。

[039]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
日米安保の将来像というのは大変難しいテーマでございます。ただ、私は、大変乱暴な言い方を申し上げますと、日本次第であるということを申し上げたい。その場合、2つの条件を順序よく日本がクリアしていくかどうかで将来の日米同盟、日米安保のあり方は相当変わってくるだろうと思っています。

これは皆様方、とっくに御承知の話でございますが、例えば日本の防衛力と呼ばれる軍事力は自立不可能な構造になっております。これは基本的に敗戦国である日本の再軍備に当たってアメリカが望んだものであります。同様な自立不可能な構造の軍事力というものは、ドイツ国家においても存在しております。

その日独に対するアメリカのかかわりというものに対して、日本が自分の国益に沿った形でそれを運用していくためには、まず第1に、外交安全保障構想というものを日本の原理原則に沿った形で打ち立て、少なくとも周辺諸国の信頼をかち取るために提示をし議論を高めていく。そして、周辺諸国の信頼関係というものを明確なものにしたとき、周辺諸国の信頼を外交の力として初めてアメリカと向き合うことができる。そこにおいて初めて日米安保というものをいわゆる平和化という方向に引っ張り、そこにおいて日本の平和に対する役割が実現できるだろうと思います。

そういったことを進めていくためには相当な時間がかかります。ですから、例えば10年といった時間の単位で考えますと、ARFといった地域安保の構想と同時に、これは重層的な重なりとなってまいりますけれども、日米安保というものは存在し続けなければならないだろうと考えております。

以上です。



[044]
日本共産党 中路雅弘
次の問題は4人の参考人の皆さんにお聞きしたいのです。

沖縄の問題で、大田知事も沖縄からの海兵隊の削減、撤去の要求を繰り返しされていますし、沖縄では海兵隊が沖縄駐留米軍の60%を占めていますし、沖縄県の総合的な発展のためにも、この海兵隊の基地の問題が大きな焦点になっているわけですけれども、4人の参考人にお聞きしたいのですが、この海兵隊、正確に言いますと第3海兵遠征軍、これの任務あるいは日本の防衛とのかかわり合い、この点について御意見をお聞きしたいと思います。

[045]
参考人(元統合幕僚会議議長) 佐久間一
申し上げます。

まず、海兵隊の兵力が沖縄に所在する米軍の中で非常に大きなウエートを占めている、これは私は事実だと思いますし、沖縄に過大に基地が集中しているというのも事実だと思います。したがって、その現状を改善するために日米間で協議が行われた結果がSACOの最終報告だと私は思いますし、そのSACOの最終報告に沿って、今後その実現に努力すべきだと思います。

ただ、海兵隊自体について申し上げますと、海兵隊というのは、御承知のとおり、あらゆるレベルの任務に即応するといった使命を持っている、しかも、いわば自己完結型の部隊だ、兵力だというふうに思います。海兵隊というのは、地上部隊だけでなくて航空部隊、さらにそれが移動する場合は海軍部隊と一緒になって立体的な行動ができる部隊であって、しかも、15日あるいは30日、60日といったある程度の一定の行動を自分だけでできるという性格を持っております。したがって、各種の事態と申し上げますのは、単なる軍事紛争ではなくて、例えば災害派遣とか人道援助といったことも含めて、まず動くのは海兵隊、それが海兵隊の特性だろうと思います。それは、規模が大きい場合は、我が国の防衛という事態についてもまず対応できる地上部隊であるというふうに私は考えております。

ただ、沖縄にいる海兵隊が日本の防衛の任務だけに限定されるかということについては、私はそうではないと思います。と申しますのは、そもそも軍事力というのは、この部隊はどういった任務という限定された任務で配備され運用されるというのは、これはアメリカだけでなく、どこでもそういったことは現実にあり得ない。多数のあるいは複数の任務に対応できるように柔軟な配備と運用をやっていく、それがいわば部隊運用の一番基本的な機能でありますので、沖縄にいる部隊が、日本の防衛だけではなく、広くこの地域の平和と安定のために存在しているというのも事実だと思います。ただ、それはまた振り返ってみると、我が国の安全にも寄与しているということになるんだろうというふうに考えております。

よろしゅうございますか。

[048]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
今、佐久間参考人の方から御説明があったというのが、海兵隊については一番模範解答ではないかと思います。

ただ、日本のマスコミ等の論調の中で、例えば日本の防衛には関与していないという書き方がございますので、若干その辺を補足するお話をしたいと思います。

海兵隊というのは、陸海空三軍と並んで四軍と呼ばれたりいたします。予算的には海軍の予算でございますが、本来的には、有機的に機動展開できる部隊であると同時に、米軍の中における特殊な位置づけを持った部隊であります。ですから、アンフィビアスフォース、つまり両用戦部隊であるという言い方と同時に、あいつらは両生類みたいでどっちの味方なんだというような言い方をアメリカの陸海空がするような、おれたちの仲間じゃないという扱いを受けるような特殊な性格を持った部隊です。

この海兵隊の任務というのは、小さいところでは、例えばアメリカの航空母艦に100名ぐらいの海兵隊員が乗っておる、これが弾薬庫を警備している。これは外敵から弾薬庫を守ると同時に、米軍の将兵の反乱から弾薬庫を守るという任務もあるわけであります。

その海兵隊の任務の中には、第一優先順位として根拠地の防衛というものがあります。ですから、私がさっきの意見陳述の中で申し上げましたように、日本列島がアメリカの戦略的根拠地である限り、アメリカ海兵隊の任務の最優先順位として日本の防衛というものが当然含まれてくるものと考えていいと思います。

以上です。



[051]
社会民主党 上原康助
各参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。時間が非常に短いので、まず小川参考人にお尋ねをさせていただいて、また時間がありましたらそれぞれ御見解があればお答え願いたいと思います。

かねがね沖縄の米軍基地の対応について小川さんがいろいろお書きになっているものとか、きょうのお話も参考になる点が多いのでお尋ねするわけですが、若干私は見解の面で異にする面もあります。

そもそも沖縄の米軍基地というのは、日米安保体制、安保条約の枠外のものを復帰の時点で安保、地位協定にはめ込んだ、そこに非常に無理があったと思うのですね、理論構成の面で。そのことはぜひこれから解明というか、もっと本来の安保体制にはめ込むようにというか、そこが縮小の方向だと私は理解をしております。

そこで、そもそもあの小さい沖縄に四軍が一国独立国並みに存在することが私は問題だと思うのですね。それが非常にティピカルに象徴されているのが海兵隊の存在であり、事件事故も多いから海兵隊の削減ということが出てきている。

ですから、私は、日本全体への統合分散ということも社会党時代に出して、相当党内からいろいろな異なった意見が出たりしてたたかれましたが、しかし、今日の状況を見て、私が指摘をしたことは必ずしも間違ってはいなかったという一面の自負心も持っております。そういう意味で、この四軍体制ということについて、軍事専門の皆さんあるいは政府がもっと検討したらということを私は申し上げているのですが、なかなかまだそこまでいっておりません。その点についてどうお考えかということと、先ほどの即応後方配備というのは私なりに言うと有事駐留対応というふうにも理解できると思うのですが、その点についてそういうふうに受けとめていいかということをもう少しお聞かせを願いたいと存じます。

今、私が申し上げたことについて小川参考人からまずお答えをいただいて、岡崎参考人は何かこの即応後方配備、いわゆる有事駐留対応については少し否定的な御見解のような感じを受けましたが、それぞれお答えいただければと思います。

[052]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございます。

まず、沖縄の米軍基地の位置づけということで、四軍がそっくりあそこに固まっているというのは尋常ではないというお話でございますが、これは確かにあの狭い面積の中にあれだけの基地を占有しているということがまず異常であるということから認識を持ちたいと思います。

ただ、そういう中で、日本では米軍基地問題が語られる場合、沖縄に基地が特に面積的に集中しているということで、沖縄を中心に日米同盟が回っているかのごとき錯覚した議論があるんです。やはり日本列島全体で眺めて、アメリカの戦略の中の位置づけというものを考え、そこにおいて基地の配分についての議論をしなければいけないと思います。

私の大変乱暴な言い方を許していただければ、人間の体に例えると、沖縄に置かれた米軍は強力な手や足の筋肉であります。ですから、アメリカが軍事力を持ってリーダーシップをとる場合の強力な打撃力であります。どんな強力な筋肉であっても、頭脳や心臓や中枢神経や肝臓がなければ単なる肉の塊であります。その頭脳や心臓や肝臓、中枢神経に当たる機能は、日本の本土に置かれております。これがワンセットで在日米軍基地という戦略的根拠地を形成しているわけであります。

そういう中で、沖縄におけるこの打撃力の部分は余りにも沖縄の面積を食い過ぎている。そういう側面からもアメリカと協議をし、もう少し基地の面積を縮小できないのか、日本本土に移すという問題もありますが、アメリカの同盟国の中で一定の役割分担をしていくことはできないのか、そういった形で議論を進めることが1つは重要ではないかなと思っております。これが1つ目の御質問に対する回答であります。

それからもう1つ、私が先ほどお話の中で、アメリカの海兵隊地上部隊をアメリカの領域、これはハワイとかカリフォルニアとかグアムを意味しますが、そこに即応性の高い状態で後方配備をするということであればアメリカは受けるだろうというふうに受けとめているという話をいたしました。そこにまず当面の目標を置いて進んでいくことが重要だと申しました。

これに関しましては、とにかく訓練を行うに当たっても、アメリカ本土でも装備品は一式要る。沖縄にも1つ置いておかなければいけない。また、有事の兆候が生まれた段階で、24時間以内にアメリカ本土からでも沖縄に戻ってこれるように緊密な有事協定を結ぶ必要がある。また、沖縄に戻った場合、それを受け入れるだけの基地が少なくとも現状のレベルでなければいけない。それを保証するという中でアメリカ側は多分受けるだろうと思っています。

その場合も、アメリカと議論したときの話をしますと、装備品が2セット要るけれどもそれを日本が買ってくれるかという言い方をアメリカがしたものですから、いや、それは場合によったら買ってあげるけれども、場合によったらアメリカの予備役のものを集めてくれ、あそこにこういう装備があるじゃないかと言ったら頭をかいている、そういうレベルであります。

これは日本の交渉能力次第であると私は考えております。

ありがとうございました。



[058]
新進党 神田厚
私は、我が国の安全保障の問題で朝鮮半島の安定が非常に必要だということを思っておりますが、この際、参考人の皆さん方にお聞きをしたいのでありますが、北朝鮮で特に食糧不足が云々されております。そして、日本において援助したらいいだろうというふうな意見がございますが、この問題について端的にお尋ねいたしますが、北朝鮮への援助米の問題について、是か非かあるいはどういう条件が満たされればいいかというふうな問題についてお尋ねをいたしたいと思います。

[061]
参考人(外交評論家) 岡崎久彦
北朝鮮問題についての最大の原則は、日本と韓国との関係を傷つけないこと。ですから、韓国の意向を無視してまでの行動はとってはいけない。ただ、現在、アメリカと韓国は人道援助まで考えておりますれども、日本は例の拉致事件がありまして、そこまでもいけないという状況になっております。

これは人道援助でございますから、人道援助というものは政治的判断から切り離すべきものでありますけれども、人道援助というものはあくまでも善意に基づくものなので、それに対してやはり向こうも最低の善意は示してくれないと人道援助さえもできないだろう、そう思っております。

[062]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私も岡崎参考人の御意見と似たような認識を持っております。

とにかく人道援助というのはすべきことだろう、しなければ悪者扱いされるわけです。

しかし、北朝鮮として日本と外交の道を開こうとどれだけ努力をしてきたのか、日朝交渉についてどれだけ彼らは積極的な姿勢を見せているのか、最終的にはアメリカが自分の方を向いてくれれば安全でいられるという認識のもとに核兵器を開発したではないか、そういう国に対して私たちはおいそれと人道的だからといって援助をする必要はない。

その辺を明確にする中で、北朝鮮と外交関係を結ぶ必要があるのかどうか、それを問いかけることがまず前提条件になるだろうと思います。

以上です。



[073]
民主党(民進党) 藤田幸久
主に小川参考人、それから部分的に岡崎大使にもお答えをいただきたいと思います。

先ほどの上原康助議員の最初の質問の中で、海兵隊の地上部隊のグアム等への即応後方部隊配備という質問がございましたけれども、これは先ほどの2人のお答えから考えますと、在日米軍基地が世界の戦略的拠点としての役割を持っているということを、日本側も知らないだけではなくアジアも知らないということも1つの大きな問題ではないか。

したがって、アジアの諸国に対して、実は在日米軍基地がこういう役割を持っている、さらに、先ほどの小川さんの表現でいえば、沖縄の方が仮に筋肉だとすると、特に本土の部分が頭脳的な役割を持っているんだという認識をアジア側から持っていただくことによって、例えばその筋肉の部分をアメリカ領域に移転をするということが全体的からいって大した意味を持たない、相対的に。したがって、先ほどの岡崎さんの話でいえば、それが政治的にマイナスイメージにならない。

そういう条件をクリアした上で、先ほどの、沖縄問題の解決の中でのアメリカ軍の軍事的プレゼンスを維持するということの条件が満たされれば、上原さんが言うところの沖縄におけるいろいろな構成を変えていくことが可能ではないか、そのぎりぎりの問題ではないかと思うのですけれども、であるならば、軍事的プレゼンスを維持するためには、例えば海兵隊の地上部隊に関していえば、グアム等に関していえば可能だとか、あるいは演習場を仮に多少減らした場合にどこまで可能か、例えばアジアに対してあるいは日本に対しても最低そういった在日米軍基地の意味を知らしめた上でどこまで可能かという点についてお2人からお話をいただきたい、それが非常にこの沖縄問題の解決のかぎになるような気がいたしますので。

[074]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございます。

先ほど上原さんの御質問に対するお答えがちょっと舌足らずだったので、岡崎参考人、佐久間参考人から大変御指摘をいただく結果となりました。もう少しその辺のところをお話をしておかなければいけないのだと思います。

私が即応性の高い後方配備という格好で海兵隊地上部隊をアメリカの領域に下げることができるのではないか、それに対してアメリカ側も受け入れる可能性があるという感触を得ているというお話をいたしましたのは、単に戦場近くの基地に装備等を事前集積をしておくいわゆるポンカスというものがありますが、それではないということなんです。

日本はアメリカの戦略的根拠地であり、ポンカスが必要とされるのは第一線の野戦基地である、その違いがございます。ですから、私どもが提案をしておりますのは、やはり戦略的根拠地である日本の現状というのを踏まえて、沖縄の海兵隊基地には装備品は一式置き、それは常に有事即応の態勢でメンテナンスをしておき、適宜第一線の部隊が戻ってきてそれを使うといったようなエクササイズの内容も伴うものであります。

そういったことの中で、例えばアメリカ西海岸に後方配備をする場合でも、アメリカが湾岸戦争のとき見事に実証しましたように、CRAFといいますが、民間の航空機をチャーターする制度を持っております。これで、湾岸危機が発生した1990年8月中旬の段階に、カリフォルニアに駐留しております第4海兵旅団、定員1万5000人でございますが、これをわずか6日間でサウジアラビアに展開した、そういったことがありますので、24時間以内に例えば即応後方配備の部隊が戻ってくることになっているということを明確に示す、それを有事協定として結ぶ、それを周辺諸国には周知徹底しておく、これが誤ったメッセージを伝えないための第1の条件ではないかと思います。

とにかく撤退とか削減とかいう言葉を安易に使わないようにしようというのが先ほどの私の話でございました。これは別な概念で語らなければいけない。だから、アメリカの軍事的プレゼンスは一定のところで維持されるのだ、アメリカ側が了解をするレベルであるということは重要であります。

そういう中では、私の最初の意見陳述にありましたように、一見したところ沖縄の米軍基地の強化につながるようなステップも踏まなければいけない、これが海兵隊の地上部隊を後方配備するためのカードになるだろう、それを日本側が持つ用意があるのかないのかということを沖縄の方々にも投げかけ、もう一回議論をしたいというのが私の立場でございます。

ちょっとお答えになったかどうかわかりませんけれども。



[076]
自由民主党 奥山茂彦
自民党の奥山です。

東アジアにおける軍事的なバランスの問題で岡崎参考人と小川参考人に聞きたいんですけれども、私はよく中国へ行きまして、何回も、またいろいろな機会で向こうの人民解放軍のいろいろな方と交流する機会があったわけです。

それで、最近中国も軍事費が非常に高い勢いで伸びておるということで、将来の東アジアにおける大きな軍事的な脅威になるのではないか、こういう話もよく出てくるわけでありますけれども、基本的には中国の人民解放軍というのは防衛的な組織であって、渡洋攻撃をする、侵攻をするような組織体にはなっておらないように私は理解しておるのですけれども、先生の方から見られまして、将来的に東アジアにおける大きな軍事的な脅威になり得るかどうか、政治的に――経済的には大きな脅威に中国はなってくると思うのですが、その辺についてどうか、お尋ねをしたいのです。

[078]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
中国人民解放軍については、私、専門ではありませんので、非常に大ざっぱなところでしかお話をできないのですが、例えば中国人民解放軍について、中国は大陸国だから陸軍が主体だといったような言い方がよくされます。ただ、それはちょっと認識を変えてみる必要があるだろう。その中で、中国人民解放軍の目指している将来像がどれぐらい現実味を持ったものかということを考えていくという角度も必要ではないかと思います。

中国は大陸国家だから陸軍が主体になっているという言い方では正確ではないと思うんですね。中国の場合は、これは共産党が政権を持っており、共産党における軍事力というのは共産党の権力を守るための暴力装置である、だから、治安任務が主体だから大陸国家であろうと島国であろうと陸軍が中心になる、陸軍が巨大な存在としてあり、それにつけ足される格好で海空軍が加わってくる、そういったような構造であると考えた方がいいと思います。

ですから、そういう中で、過去には陸軍の七大軍区という形で分かれておりましたが、その1つの軍区ぐらいの位置づけしか海軍はなかった、そういう時期もございました。そういう中で、劉華清氏が政治的に登場してくる。そして、空母の建造願望を示すという格好でパワープロジェクションの能力を備えようという方向は見せております。

ただ、中国人民解放軍の基本的な性格が、共産党の政権を維持するための治安任務を主体とする暴力装置である限り、その辺にはおのずと限界が来るだろう。ですから、私どもが注意をしていかなければならないのは、中国が共産党政権とその人民解放軍との関係をどのように変えていくのかいかないのか、その辺の問題が一つ肝要かと思います。

そういう中で、今岡崎参考人の方から、21世紀前半において一定のパワープロジェクション能力を持つ可能性があるというお話がございまして、私もそれは同感でございます。

ただ、そういう場合に、それがどれぐらい可能になるかどうかを左右するかぎは、やはり世界一の海軍国にして世界のリーダーたり得るような軍事力を極東においても展開しているアメリカの動向次第であろう。アメリカとどのように中国が外交関係を結ぶことができるか、それによって中国の軍事力がどの水準に達するか分かれてくると思うんです。

ですから、私どもアメリカの同盟国として、その中国の軍事力がとにかく日本初め周辺諸国の脅威とならないように、中国との良好な関係を日米同盟を基軸に組んでいくことが重要ではないかと思います。

どうもありがとうございました。



[079]
新進党 村井仁
岡崎参考人と小川参考人にお尋ねしたいのでございますけれども、極東といいますか東アジアの情勢の問題で、香港の中国への回復の問題、これはある意味では、世界で最も自由を享受した地域が、ちょっと表現は適当でないかもしれませんが、世界で最も不自由な国に完全に統合される。しかし、一国二制度とかいろいろ言っていますけれども、実際はいわゆる民主派が何となく抑え込まれつつあるような感じもある。このあたりが、近未来といいますか、一種のトラブルのもと、不安定の要素になるのかならないのか、このあたりの見通しが1つでございます。

それともう1つ、これはちょっとまた別な話でございますけれども、先ほど岡崎参考人から、いわゆる米国の孤立主義的傾向という御指摘がございました。私は、アメリカがグローバルコミットメントをきちんと続けていくということがやはり世界平和の基礎だろうと思っているのでございますが、御指摘のような孤立主義的な傾向というのは、常に恐ろしいといいますか怖いものだと思っています。

一方で、アメリカは何かありますと、例えば人権ですとか民主主義ですとかいう普遍的理念の追求ということで世界じゅうに何でも手を出してくるという傾向もあり、一方では、孤立主義との綱引きがしばしば行われる。ここ5年、10年、フォーシーアブルフューチャー、予見できる未来において、これはどっちの傾向が強まるというふうにお考えになるか。この2点、両参考人からお伺いしたいと思います。

[081]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございました。

香港の問題につきましては、中国側は香港を回収するんだ、回収したんだということを言っております。これは大方の見方と同じように、本当に大きな混乱もなく、多少のテロ事件や何かあるかもしれませんが、落ちついていく問題だと思います。

ただ、日本として1つ気にしなければならないのは、岡崎参考人がおっしゃったこととも重なりますけれども、中国がしゃにむに台湾問題を解決していくためのモデルにしようとするのではないか。しかし、台湾はそれを受け入れるわけがない。そこにおいて軍事的な摩擦が生じる可能性が高まるわけであります。

そこにおいてアメリカはどうかかわるのか、また日本は、アメリカを介してでありますが、どのようにかかわるのか、また中国とダイレクトにどういう外交関係を結びながらそういう事態を避けるのか、その辺については明確な将来像というのが提示されているわけではございませんので、逆に、これからこの安全保障委員会を中心に御議論をいただいた方がいいのではないか、そういう感じがしております。

いま1点、アメリカの孤立主義的傾向ということでございますが、それこそ昔の日本側の認識で、アメリカに何か日米安保について文句を言うと、アメリカが安保を切ってしまって日本は寒い目に遭うよといったような形で、アメリカが一方的に日本を初めとする各国へのコミットメントから手を引くというようなこと、つまり、かつてのモンロー主義のようなことは可能性としては考えられても、実現可能性が高いとは言えないと思います。ただ、冷ややかなまなざしを日本に向けてくる、あるいはドイツに向けるといったようなことは、アメリカ国内の情勢において大いにあるでしょう。

ただ、私どもは、そういう場合に2つのかかわり方を同時にしておくのが普通の独立した国の外交ではないかと思います。

1つは、君たち、余り文句を言うんだったら、アメリカは日本から手を引くよと向こうが露骨に言った場合には、どうぞということを言わなければいけない。日本も困るけれどもおたくも困るでしょう、どうぞと。

もう1つは、常に言わなければいけないことは、アメリカの国民に対して、日米関係がどのようにこれまで良好に維持されてきたか、それによって世界の平和に対して貢献してきたかということ、また、そこにおける日本の役割については常に伝え続ける努力が必要だということなんです。

一昨年の秋、私は、沖縄の米軍基地問題で、少女暴行事件が起きた後、東京のプレスクラブに呼ばれまして2時間半ほどスピーチをいたしました。アメリカ大使館も6人ぐらい来ていました。それを、アメリカのC-SPANという議会の生中継をやるテレビ局が1時間半の番組にしてアメリカへ流してくれた。それを見たアメリカ人から反応があって、今まで日本側からこういう説明を受けたことがないという話なんですね。

だから、これはある意味で日本側の怠慢であっただろう。とにかく外交関係は、お互いに最後は国益でありますから、アメリカほどいい相手国はないんですから、それが壊れないようにするためにはさまざまなかかわり方をすべきだろうということを考えております。

どうもありがとうございました。



[086]
自由民主党 江口一雄
極東の安全、平和について、ただいまはいろいろな議論の中で、特に領土問題については出なかったような気がいたします。ですから、南沙あるいは尖閣あるいは竹島、こういうような領土問題について、この地域に及ぼす安全保障についての危険度とかそういうようないろいろなことがあろうかというふうに思いますが、その辺の見通しなりあるいは解決の方法なり、こういうことがありましたらひとつお教えいただきたい、このように思います。渡邉さん、岡崎さん、小川さん、3人から。

[089]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
簡単に申し上げなければならないのは大変つらいのですが、領土問題を解決していく、あるいは安定化させていくということは、やはり日本の国の安全保障にとっても避けられない問題でございます。その中で私どもが一番力を入れて取り組まなければいけないのは、やはり北方領土問題だと思います。

それで、北方領土問題についても、お金で買い戻すといったような発想が正面に出るというのは外交上大変好ましくない。やはり、日ソ中立条約が6カ月間有効期限が残っているにもかかわらず旧ソ連が満州に侵攻した結果生じた事態である、ですから、国際法の精神を踏みにじるような、条約の精神を踏みにじるような行為であったということで、正面から外交的に交渉して取り返すというのが日本の国益にとっても一番ふさわしいあり方であります。

ただ、そのためには、風が吹けばおけ屋がもうかるといったような議論ではないのですが、一見遠回りのように見えても、やはりアジア諸国との関係を、これは謝罪外交をする必要はないのですが、戦後処理を明確にして、信頼関係を今より以上にかたいものにしていく、そしてアジアの信頼を外交の力としながらアメリカとも大変健全な関係を築く、その日本に対してロシアがやはり北方領土交渉に応じざるを得ない、真剣に応じざるを得ない状況をつくっていく、その中で取り返していくというのが基本だと思います。

そういう中で、中国との間の尖閣の問題についても、中国が余計な口出しをするということはなくなるであろうという感じがいたします。

ただ、非常に厄介なのは、韓国との間の竹島、独島の問題でございます。これに関しましては、やはりお互いに領有権を将来的に主張し続けながら、両国のあるいは国際共同管理に持っていくぐらいのところしかないだろう。

私も韓国の政府の上級職職員に日本の安全保障政策を3年以上教えているわけでございますけれども、そのとき必ず出てくる質問というのはこれなんです。だから、私は彼らに次のことを申し上げております。

日本としては、3つ選択肢がある。1つは、領有権を放棄することだ。問題はなくなる。しかし、日本としてはそんなことは受け入れられない。もう1つは、日本の自衛隊の軍事力というものは、これは海外で展開する能力はないけれども、韓国の海空軍と戦って竹島を実効支配するぐらいの能力はある。しかし、そんなことをしても日本にとっては全然益はないんだ。だから、最終的にはとにかく、日本の提案によってということが望ましいけれども、国際共同管理に持っていくというのがいいだろうということを言う。そうすると、彼らも同じ考えである、ただ韓国側の提案にしていただければという話をするわけであります。

ただ、こういったものを日本が模索する中で、南沙諸島の平和的解決のモデルをつくることはあるいは可能であろう、そういう感じがしております。ちょっとお答えにならないような話をいたしましたけれども。

ありがとうございました。



前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
漢数字は一部アラビア数字に変換、一部括弧と句点を入れ替えています。
基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。