海上保安庁巡視船事件簿 3/3 ~ へくら銃撃、さど銃撃連行、のしろ銃撃船長連行、ちくご連行

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昭和38年06月14日 衆議院 外務委員会
[094]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣がおいでになりますので、ごく簡単に1、2点お伺いをしたいと思います。

最近韓国が日本の漁船を盛んに拿捕しているわけでございます。そしてまた、それだけでなしに、聞くところによりますと、巡視船がつい最近韓国の警備艇によって威嚇されたということも聞いているわけでございます。

そこでまず第1にお伺いしたいのは、日韓会談が始まってから一体どの程度の日本漁船が拿捕されたか、そして、つかまった人員がどのぐらいいて、そういう方々が一体どういう状態になっているのかということをこの際明らかにしていただきたいと思います。

[095]
説明員(外務事務官(アジア局北東アジア課長)) 前田利一
北東アジア課長の前田でございます。かわって御説明申し上げます。

現在まで韓国に拿捕されました漁船の総数は305隻、うち折衝の結果帰還してまいった船を除きまして、いまだ拿捕されたままの船が183隻、その間抑留されました船員の総数は3697名にのぼっております。

これは実は4月末の現状でございまして、最後に抑留されておりました抑留船員も5月16日の記念日に全員釈放になりまして、先月末帰ってまいったわけで、韓国には抑留漁夫は1名もいない、こういう事態になったわけでございます。

ところが、遺憾ながら、この6月に入りまして、御承知のとおり、6月の1日に1隻、それから10日に2隻、さらに11日に1隻と、続けて4隻の船が拿捕されておりまして、その乗組員は全員で31名にのぼっておる、このように考えております。

[096]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
そうしますと、その31名の拿捕された人はまだ抑留中なのですか。

[097]
説明員(外務事務官(アジア局北東アジア課長)) 前田利一
ただいまのお尋ねのとおり、抑留中でございます。

[098]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣、いま北東アジア課長が御説明になりましたように、一応5月の16日で、拿捕された船それから抑留中の人が帰されたにもかかわらず、6月になってから、きょうまだ6月14日ですから、2週間の間に4隻も捕えられて、31人も向こうに抑留されているという状態です。これで日韓会談の折衝はお続けになっていらっしゃるのですか。

[099]
外務大臣 大平正芳
私の考えは、日韓折衝はずっと続けておりまするし、日韓の間の長い間に積もり積もった誤解と申しますか、理解の足らない点、そういう点が解きほぐされてまいりまして、いま御指摘のようなトラブルが起こり得ないような環境、そういうものは、国交があるないにかかわりませず、そういう状態を醸成してまいらねばいかぬということで、鋭意その方向に努力を重ねてまいったのでございまして、ようやく先月に至りまして抑留された漁業者が1人もないということになって、ほっと愁眉を開いておったやさきに、今月に入りましてそのような事態が起こりましたことをたいへん残念に思っておりますが、こういうことで本来の日韓の間の関係を改善していこうという努力においてひるむところがあってはいかぬと思うのでございまして、このこと自体につきましては厳重な抗議を通じまして先方の善処を求めなければなりませんが、それと並行いたしまして、従前どおり日韓間の関係の改善に努力をしてまいるつもりでございます。

[100]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
日本と韓国との間でお互いに交渉しているその最中に、しかも半月の間に4隻も船を捕まえていくというような国を相手に一体日韓間の関係を改善していくというようなことはあり得るでしょうか。国民としてはそういうことは考えられないと思うのです。

話し合いをしている最中にどんどん漁船を拿捕して、そうして抑留者をつくっていく。そういうふうなことをしているのに、日本の外務大臣が、日本と韓国との間を何とかよくしたいと言ったって、国民はとてもそんなことには賛成できないと思うのです。

一体韓国は何のつもりでこういうことをされているのでしょうか。外務大臣、正式に抗議を申し入れなさったのでしょうか。もし申し込まれたならば、どういう形でいつ申し込まれて、そしてその返答は何であったか、向こうの意図するととろはどういうところにあったかということをお示し願いたいと思います。

[101]
外務大臣 大平正芳
日韓の間の問題というのは、戸叶さんも御案内のように、なかなか積年の関係でございまして、いろんなトラブルが過去において起こったということ、この当否は別といたしまして、事実であったわけでございます。それほど日韓の間というのはむずかしい関係にあると思うのでございまして、したがいまして、言うところの日韓交渉も10年以上の歳月をけみしていまなお解決に至らぬということ、それほどむずかしい問題であるということは、あなたも御指摘のとおり、私もよく承知いたしているわけでございます。さればこそ私どもは忍耐強くこの改善に努力していかなければならぬのでございまして、こういう事件が起こったからそういう交渉をやるべきじゃないとか、あるいはそういう事件を起こすような相手であるから相手にすべきじゃないじゃないかという御議論には私は賛成しないのです。私は、そういうトラブルがあればあるほど、勇気を鼓して、関係改善に、きわめて困難でございますけれども、鋭意努力していくのが私の任務であると思っております。

それから、御指摘の、6月に入りましての拿捕事件につきましては、そのつど、先方の代表部を招致いたしまして抗議し、先方の政府に善処方を求めておるわけでございます。最近では、きのうの午後、代表部の責任者においでいただきまして、厳重に善処方を求めておる次第でございます。したがいまして、この事件の全貌、原因、その他一体どうしてこういうことが起こったか、起こったときの状況、天候その他の詳報を受けまして、なお先方に善処を求め続けてまいらなければならぬと思っております。

[102]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣のお考えは、こういうふうな拿捕なり抑留なりすればするほど、こっちのほうから誠意を尽くして改善をするということでございますけれども、そういうふうなことをされてもなおかつ交渉の相手としてやろうというような意図が私どもにはとうてい理解できないわけです。国民としても、何も話し合いをしている間にやたらに船をつかまえたり人を連れていったりしないでもいいじゃないか、こういう感情が非常に強くなっております。そういうことを考えまして、いま向こうの意図するところぐらい何かお考えになったりお話し合いになったのかと思ってお聞きしましたら、それはまだわからないし、天候の問題、いろいろあるということでございました。

このような問題が起きたときには、私は、日本の外務大臣として、こういうことをするのだったらもう交渉はやめるぞというくらいの強い態度をぜひ見せていただきたい。そうでなければ、一体どういうことをやってくるかわからないと思うのです。やはり相手を見て外交交渉というものはやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。

そこで、第2の問題としてお伺いしたいのですが、12日に何か巡視船が威嚇されたとかいうことを漏れ聞いているだけで、私どもははっきりした情報がわかりませんので、この辺のことを詳しく説明していただきたいと思うのです。

何か、巡視船「のしろ」が、領海外、李承晩ラインの外にあったにもかかわらず、船長が連れていかれたとかということを聞いたのですが、この間の情勢について詳しく御報告を願いたいと思います。

[103]
説明員(外務事務官(アジア局北東アジア課長)) 前田利一
御説明申し上げます。

私ども12日の夕刻になりまして海上保安庁を通じまして聞くに至りました状況を、要点について御説明申し上げます。

御承知のとおり、拿捕を防止し安全操業を確保するという趣旨から、海上保安庁の巡視船の「のしろ」が、12日の15時、午後3時に、韓国の釜山の沖合いにございます牧之島の灯台から5.3マイルの地点、これは緯度・経度について申し上げますとこまかくなりますが、北緯35度02.9分、東経129度1.2分、――先ほど先生の御質問の中に領海外であるとかあるいは李承晩ラインの外であるというお話がございましたですが、そういうことはいずれにいたしましても、5.3マイル、明らかに公海上の問題でございます。この5.3マイルの地点において業務を遂行中、急に釜山の港のほうから高速度の水上警察艇が接近してまいりました。先方が急速度に「のしろ」に向かってまいりましたので「のしろ」のほうでは、一応その業務遂行中の地点からさらに東のほうに移動しました。

15時25分に至りまして、先ほども申しました牧之島灯台から8.4マイルの地点においてわがほうの巡視船「のしろ」に先方の船が接舷してまいって、「のしろ」の船長に対して、いろいろ話し合うことがあるので韓国側の船に乗り移るように、こういうお話でございました。そこで、船長と先方の水上警察艇との間に、最初日本側の巡視船が業務遂行をしておった地点が領海の中でであるかどうか、こういうようなことについて話し合いが行なわれましたが、結局、先方は、言うなれば、領海侵犯ではないか、こういう考え方からこちらの行動を見ておったわけでございます。これに対しまして、「のしろ」の船長のほうでは、種々の計器を使って測定いたしました地点、先ほどの業務遂行中の地点が明らかに公海上である、こういうことで反駁いたしまして、その話し合いがつかない。そこで、結局もの別れということで、話し合いの続いている間に船も動いたわけでございますが、16時30分現在の位置をはかった結果、やはり韓国の海雲台というところから約5.5マイル、これも公海上にある、こういうことを双方確認いたしまして、署名して、17時5分に至りまして先方の警察艇が巡視船から離れて行った。こういうのが先生お尋ねの12日の事件の概略でございます。

[104]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣、いまお聞きになったようなことなんですけれども、この巡視船が領海外にあって、そしてそれははかってみなくてもそのくらいのことはわかるはずですね。ところが、それにもかかわらず、韓国警察艇が船長に対していろいろな尋問をして、そして話し合いをしてごたごたしたあげく帰したわけでございますけれども、巡視船といえば日本の国の公船ですね。この間も議論になりました国の公船ですね。この公船に対して、言わば、あなたは領海内にあるというような、いやがらせといいますか、何かそういった言いがかりをつけてきた、こういう形になったわけでございます。

一体こういうことが日本の国として許しておいてもいいものでしょうか。このことに対して、外務大臣として外交上どういうふうにお考えになりますか。

これがもし日本でなくてほかの国の場合でこういうふうな立場に公船が置かれていた場合には、やはりそこで、宣戦布告とまでいかなくても、そういうふうな形になったり、あるいはまた自衛権の行使というようなことになったり、法律的に言えばとんでもないことになるのじゃないかと思うのです。こういうふうなことを黙っていていいのですか。

日本の公船がそういうふうに連れていかれて話をされて、そして帰されたというような侮辱を受けてもなお黙っていてもいいものかどうか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。

[105]
外務大臣 大平正芳
御指摘のように、事公船でもございますし、私どもといたしましては、事態を詳細に究明してまいりまして、その事件の全貌をはっきりつかまえた上で、日本政府として処置すべきことを処置いたしたいと考えております。

[106]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
事件が起きたのは、いま御説明のありました12日ですね。そして13日が過ぎてきょうは14日ですね。それまでまだ何にも外務省として全貌はつかめないのですか。きょうまでつかめないというのは少しおかしいじゃないでしょうか。12日にそういう事件が起きて、13日1日あって、きょうもまた半日たっているのですけれども、全然全貌がつかめていないのですか。どういう形でいま事件の調査を進めておられるのですか。

[107]
外務大臣 大平正芳
事実の究明は日本側でやることでございます。きのうの午後韓国のほうに事態の究明方を依頼してありますので、先方からも、いろいろ、その当時どういう事情で、どういう状況で、どういう意図でこういうことが行なわれたかという返答があると思うのでございまして、私ども、そういった事実を十分究明した上で処置いたしたいと考えております。

[108]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
いま北東アジア課長が説明されたことが事実であるとすれば、それ自体で私は大きな問題になると思うのですけれども、それ以外にまだ調査すべきことがあるのですか。どういうふうなことについて調査をされているわけですか。領海外において向こうの船がやってきて、そして船長をおろしていろいろと領海外であるかどうかを確かめる、領海外にあったにもかかわらず、領海外であるかどうかを確かめるというようなことをして、1時間近くも尋問をされて日本の船が帰された。こういうこと自体でも、先ほど外務大臣が日本の公船であるから重大であるとおっしゃったとおり、重大な問題だと思うのです。にもかかわらず、なおさらにどうなっているかを調査するというのは、どういうことを調査しようとされておるのですか。

[109]
外務大臣 大平正芳
韓国の警備艇が接舷してきた、それがどういう天候のもとでどういう視界のもとで公海内であるのか公海外であるのか判明しなかったのか、そのあたりの事情をよく究明していただいておるわけでございまして、そういった関係を正確に周到に踏まえた上で適切な処置をとりたいと、思っておるわけです。

[116]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
私はもうこれ以上言いませんけれども、問題は、先ほども説明がありましたように、6月になってから4隻も拿捕されて、31名の人がまだ抑留されている。そのときにまた今度は日本の巡視船という公船がこういうふうな目にあって、なおかつ一方においては予備交渉か何かを続けているということは、どう考えても国民が納得できないと私は思います。こういうことをするから韓国が結局ますます強気になって、漁船を拿捕すれば巡視船もかまわない、公船もどうだというような強気になって出てくると思う。

したがって、私は、この際この問題をはっきりさせ、厳重に抗議を申し入れ、拿捕された船を返してもらうようにし、抑留された人を一日も早く帰してもらう、そうして、この巡視船の問題については何らかの措置をとる、こういうことが行なわれるまでは絶対に交渉を進めるべきではない、こういうふうに考えますので、この点についてよろしく御考慮を願いたい。私は国民の一人としてこのことを強く要望をしておきたいと思います。





昭和38年07月05日 衆議院 外務委員会
[028]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
そこで、この前ですけれども、日本の巡視船が一応不当尋問を受けたということをこの委員会で伺いましたときに、外務省のほうの御答弁といたしましては、事情がよくわからないからよく調べたい、そして、外務大臣も、あれは公船なんだから黙ってそのままにしておくわけにはいかないのだ、相当厳重な注意を喚起させておいたということでしたが、その後のことについては何ら御報告がございませんので、その後どうなっているのか、伺っておきたいと思います。

[029]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
あの事件につきましては、最初わがほうの公船が韓国側の領海の中にいたのか外にいたのかということが一つの争点でございまして、先方は最初あの船が韓国の領海を侵犯したという根拠のもとに、先方のほうから領海侵犯の抗議が参りましたわけです。

それに対しまして、こちらのほうは、コンパスその他で科学的によく方位を測定いたしました根拠に基づきまして、絶対に領海の中に入っていなかった、公海におったにかかわらず、こちらの巡視艇の船長が向こうへ半ば強制的に連れていかれて尋問を受けた、こういうことははなはだ遺憾であるということで、同時に厳重な抗議をこちらのほうからもいたしまして、いまその両方の抗議が行き合ったというかっこうになっておる段階であります。

[030]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
そうしますと、領海の侵犯であったかどうかということも、まだ意見の一致を見ていないのですか。

[031]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
そうでございます。向こうは領海の中に入っておったと申しておりまして、3海里をちょっと入りましたところの海里数を具体的に言っておるのですが、こちらは、やはり、こちらのほうの機器で測定いたしました結果絶対に入っていなかったということを主張して、その点も意見が一致していないわけでございます。

[032]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
先方の領海の幅はどのくらいに考えているのですか。

[033]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
領海につきましては、先方も3海里説をとっております。

[034]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
そうしますと日本の政府も、先ごろ日本の公船である巡視船「のしろ」が威嚇され不当尋問されたことに対しては、その判断がうまくつかないために、お互いにそのままにしてある、こういうふうに了解していいわけでございますか。

[035]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
その領海の中に日本船が入っていたかどうかとはかかわりなく、たとえそういうことがあったとしましても、日本の公船に対して、その公船の船長を連れていって尋問するというようなことは国際慣行上不当でございますので、その問題とは別に、やはり抗議をこちらのほうから書面で厳重に出してございます。

[036]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
書面での抗議に対して、何ら向こうは誠意を示しておらないのですか。それはどうなっておりますか。

[037]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
現在までのところ、まだ回答を得ておりません。

[038]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
いままでの例で、公船が不当尋問を受けて、そしてそのままになったというような例が一体世界にあるかどうか、この点を念のためにお聞きしておきたいと思います。

[039]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
世界の例は、私も詳しく存じません。しかし、公船等でありますれば、たとえ万一よその領海に入りましても、それを力によって押えて尋問する、あるいは船長を自分のところへ連れていくようなことは、やはり国際法上許されないところであると考えます。したがって、やはり韓国の警備艇のとりました行為は不当な行為である、かように考えております。

[040]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
不当な行為であり、しかも公船がそういうふうな目にあったという事実があるにもかかわらず、その問題の解決をも待たずにどんどん日韓会談を進める、たとえば漁業問題にいたしましても進めていくということが一体許されていいものか。そのことだけでも私は重大な問題じゃないかと思いますが、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。

[041]
外務大臣 大平正芳
この前の本委員会でも、楢崎委員でございましたかの質問に対して、私の心境を申し上げたのでございますが、日韓の間の問題というのは、容易ならぬ問題だと思うのでございます。さればこそ、10年交渉で、いままで結実を見ずにいるわけでございまして、この問題は、国際法の準則で割り切るとかいうことで片づくものであれば、とうに片づいているはずでありますが、この問題は、幅の厚い、いろいろむずかしい問題をかかえている日韓の間の関係でございます。

しかし、わが国といたしましても、また韓国も同様だと思うのでございますが、こういう不安定な、不自然なことがいつまでも続いていいものかというと、私はそう思わないのでございまして、朝鮮海峡でいろいろな拿捕事件が頻発するというようなことは、どなたが考えてみても不幸なことでございます。

したがって、政治の問題といたしまして、こういったトラブルが起こらない状態、朝鮮海峡が平穏に返るという状態を庶幾いたしまして努力してまいることは、政治の責任として当然だと私は思うのでございまして、こういうような問題を根本からただしていくには、何といいましても、両国の間の尊敬というか、信頼というか、友情と申しますか、そういうものが打ち立てられなければならぬと思うのでございます。したがって、そういうところに焦点を合わせて私どもは日韓の問題を考えておるわけでございます。

公船取り調べ事件というもの、これはいま事務当局からもお話がございましたように、国際慣例上許されないことでありまして、それはそれとして処置しなければなりませんが、同時に、日韓の間にこのような不自然な状態をいつまでも続けて、それでいいのだという理屈には私は賛同いたしかねるわけでございまして、忍耐をもちまして、日韓の間の信頼の回復という点に、どういう事件があろうとも、事件があればあるほど私は勇気を鼓してやってまいって、この不幸な状態を早く是正してまいる必要があろうに存念いたしておる次第です。

[042]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
外務大臣が日韓の関係を正常化したいというふうな非常な切なるもののおありになることは、たびたび委員会でその御意見を述べられておりますからわかりますけれども、しかし、私どもがいま考えましたときに、そういうふうな正常な関係にしていくその段階において、外務大臣の立場としてそうお考えになりましても、何とかうまくやっていこうというときに漁船を拿捕したかと思うと、今度は国際法上許されないようなことをされて、それでもなおかつ、その問題を片づけないで日韓会談を進めていくということは、これは私は国民が納得できないことだと思うのです。

いやしくも、先ほど来言われておりますように、巡視船は公船です。そして、よその国でもこういうことが起きたら、私は大衝突になると思います。ところが、そういうふうなことが行なわれても、なおかつ、それを忍耐しながら、何をされても忍耐をしながら、日韓の間をうまくするためにはというような行き方では、国民は納得できないと思うのです。

この問題をなぜ先にお片づけにならないのですか。この問題をなぜはっきりさせないのですか。そうじゃなくてどんどん前向きに進んでいくなんということでは、私は将来が思いやられると思うのです。この問題はもっと何らかの形で措置をしていただきたいと思いますけれども、これに対してもう一度外務大臣の御所見を伺いたい。

そういうことも忍耐して、がまんして、そうして、それはまあいつの日か何とか向こうが反省するだろうくらいに甘く考えて、どんどん漁業協定なり何なりを進められようとするのか。そうなったら、私はあとでまたどういうことが起こるかわからないと思いますけれども、そういう点をもう一度念のために外務大臣に伺いたいと思います。

[043]
外務大臣 大平正芳
冒頭にも申しましたように、日韓の間の問題というのは、条理で割り切るということができれば簡単なんですけれども、容易ならぬ問題なんでございます。したがって、問題はそういう重い問題であるということを頭に置いてやらぬと、なかなかこれは理屈どおりに片づくというようなものではないということは、私が先ほどあなたに申し上げたとおりなんでございます。それはおわかり願えるだろうと思うのであります。

しかし、戸叶さんのおっしゃる、この問題をうやむやにせずにきちんとしてということ、せっかく正常化の交渉が行なわれているときにこういうことをやるのだから、これはちゃんと始末してというその気持ちもよくわかります。正常化の交渉がある間にもそういう問題がたびたび起こっておるという事実、これは私は日韓関係の特殊なむずかしさを示しておると思うのでございます。したがって、あなたが言われるように、この問題をうやむやにしておこうなんて毛頭思っておりません。こういう問題をきちんと片づけなければなりませんし、また、それをきちんと片づけるためにも、相互の間に、もっとフランクな態度、フランクな精神が芽ばえてこないといかぬわけでございまして、外交の問題としてそういうこともあわせてやりながら解きほぐしていこうと思っておるわけでございます。

これをあいまいにしていこうなんという横着な気持ちは毛頭ないのでございます。事柄自体が非常にむずかしいのだということをお考えいただきまして、それには相当しんぼうも要るのだということで御理解をいただくよりほかになかろうと思っております。





昭和39年05月14日 参議院 逓信委員会
[065]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
これはちょっと問題からはずれますけれども、時事問題ですから海上保安庁に聞いておきますが、あなたのほうの持っている船は、これは公的な船で、その公的な船が、またこれは新聞記事では、おかしいのですが、たった30何トンかの警備艇に270トンの船が、「ちくご」というのが韓国に連れ去られておるわけなんでありますけれども、実際上、これは業務と関係して、どうなんでしょうか、もっと自衛手段なんというものはないものなんでしょうか。

それからもう一つ非常にふしぎに思うのは、こういう場合の通信連絡はどうやってくるのか。たとえば毎日の記事を見ると、7時間、朝日を見ると、9時間、日経を見ると、10時間、読売も、9時間でありますけれども、抑留された時間がまちまちなんですね。これから見ると、一体、巡視船というのはどういう通信機材を持って行動されているのか。

第1の問題は、他の委員会でもいいですけれども、第2は、さしあたっての問題ですからお聞きいたします。

[066]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
御質問の点お答え申し上げます。御承知のように、私のほうの巡視船は、いわゆる国際法上は公船でございまして、片や韓国側の、小なりといえども、これまた公船であることは間違いないと思う次第でございます。

いかにも現象的に見まして、何だか例としては非常に変でございますが、今朝来もいろいろお話がございまして、軍艦「武蔵」が何かどっかのモーター・ボートにパクられたのじゃないかという話がありましたのですが、まさに現象的にはそういう感がいたしまするが、しかし問題は、御承知のように、李ラインというものの存在に関する両国間におきます焦点が非常な問題でございまして、それをめぐってのお互いの公船としてのやりとりであるということでございまして、単なる物理的な船の大小ということではないと思います。もちろん実力行使するという点につきましては、まさに、先ほど申し上げましたように、軍艦「武蔵」とモーター・ボートというような例もあるいは合う問題であるかもしれませんが、実力行使するということにつきましては、先生方も御推測だと思いますが、それから起きます連鎖反応的な相当重大化する問題を考えますと、とうていそういうことは考えられませんし、私たちは、そういうことは厳に漁船保護に従事しております巡視船の船長に戒めておる次第でございます。その点は十分了承していただきたいと思います。

それからもう1点は、通信連絡が新聞紙上でまちまちではないか。まちまちであっても、とにかく長くかかっているではないかということでございますが、通信連絡は決して長くはかかっておりません。詳しく、私、手元にその資料を持っておりますので、御説明申し上げますと、無線といたしましては、長くかかっているかもしれませんが、時間的に申しますと、大体事件の起きました地点から1時間以内で、大体50分くらいで本庁に到達している次第でございます。無線としては、まあ技術的には少し時間がかかると思われます、私たちも思っているのでございますが、これを察しまするに、そのやりとりの関係とか、あるいは、御承知のように、お互いにこういう問題は、相手国もそうでございますが、私たちも、ある程度の通信秘匿の関係上、暗号等に翻訳するということもございますので、おのずと時間が普通の通信よりも余分に消費されるということは想像がつく次第でございます。

ただ、新聞記者が言っておりますように、自分たちが入手した時間が非常にかかったということではないかと思う次第でございます。釈放されるに至ります間の時間は、12時55分に事件が起こりまして、釈放が晩の10時40分でございますから、約10時間でございますか、10時間ぐらい釈放までにはかかっていることでございますが、通信等について、そんなにはかかっていないことをお答え申し上げたいと思います。

[067]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
公船というのは、資格からいくと、たとえば外交官のビザを持って海外を旅行した場合に身分の保障をされるように、公船の場合には、海上でもそういう保障というのはあるのじゃないのでしょうか。

これは何か国際航海条約か何かの中に、公船の場合の航行については、何と何とかはいかぬのである、何と何とはいいというので、こういうふうに相当よいほうの範囲というのは広いのじゃないのでしょうか、どうですか。

[068]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
国際法上、または国際慣習上、公海におきます公船に対するあれは一種の治外法権的な、治外法権とは申しませんが、治外法権的な大体形で従来やりとりをされている次第でございます。

[069]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
これは、何といいますかね、自衛というのじゃなくて、こちらに正当な理由があって、こちらに力があったら、向こうの小さいのを引っぱってくるぐらいなことは、引っぱってきても紛争として心配をするということではなしに、何か特別にどうも朝鮮海峡というのは遠慮しているのじゃないでしょうか。

あなたのほうの警備体制は普通ですか。

[070]
説明員(海上保安庁警備救難部長) 猪口猛夫
これは先ほどもちょっと申し上げましたが、実力を行使するという問題以外にはまあ問題はないと思いますが、先ほど申しましたように、実力行使をすることが日韓関係においてどういう結果を来たすかということは、重大なまあ国策上の問題だと思われます。

実力を行使する段階に至りますれば、その相手国の船の大小いかんにかかわらず、向こうの公船に対して実力を行使したということから起こりますその結果の重大性をある程度まで判断し、それに対する態度をきめてからやるべきではないかと私たちは考えておる次第でございますが、それはとにかくといたしまして、とにかく私たちの立場といたしましては、日韓間に不必要な摩擦を起こしたくない。過去にも約20件ばかり追跡とか、あるいは銃砲撃とか、あるいは臨検とか拿捕もありましたが、20件くらいそういう機会があったわけでございます。

それを耐えしのんで現在まで来ておるのでございまして、御承知のように、日韓交渉もまた再開されようというときに、ここに相手船が小型であるからというようなことで、簡単にと申しますか、とにかく実力を行使するというようなことはとうてい考えられない立場にある次第でございます。

[071]
日本社会党(社会民主党) 横川正市
割り切れませんが、ここはその委員会じゃありませんから、その問題はまた別のところで審議してもらうとして、先ほど運輸省から答弁のありました点は、ぜひひとつ改正に踏み切っていただくように御努力をいただきたいと思います。





昭和39年05月14日 参議院 内閣委員会
[083]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
本法案の内容それ自体について、まず大臣にお伺いしたいと思いますが、たまたま昨日の午後、韓国側による例の巡視船の「ちくご」のいわゆる捕獲事件がございましたので、これは緊急性がございますので、まずもってこの点から2、3お伺いしたいと思います。

新聞の報道によりますと、昨日の午後特別警戒中の巡視船「ちくご」、これは270トンくらいだそうですが、領海侵犯の理由で韓国警察警備艇、これは20トンくらいだそうですが、これに強制連行された。強制連行ですから、捕獲と同様であろうと思います。まあ、この問題はきわめて重大な問題であると考えられますので、まずもって、この問題についての真相を御説明いただきたいと思います。

[084]
外務大臣 大平正芳
5月13日の午後3時ごろ、海上保安庁より外務省に対しまして、同日午後0時55分ごろ、御指摘の「ちくご」が大黒山島東方の公海上におきまして、韓国警察警備艇「ハンサン号」の横づけを受けて、大黒山島方面への連行を求められている旨の報告がありました。

そこで外務省より韓国代表部に対しまして、本件に関する事情調査を要請いたしますとともに、日本国の公船たる「ちくご」に対し、もしも強制運行のごとき措置がとられることとならば、重大なる結果を招くおそれがあると、とりあえず警告をいたしました。

同日夕刻に至りまして、海上保安庁より、その後「ちくご」――が「ちくご」自体から入った報告によれば、午後3時40分「ちくご」は韓国側の要請により、大黒山島の鎮里という港に入港し、「ちくご」には韓国武装警官2名が乗船している模様であるとの通報を受けましたので、再度韓国代表部に対しまして外務省から、その後の報告によれば、「ちくご」は鎮里港に強制的に連行された模様であるが、これが事実とすれば、「ちくご」が主張しているように、領海3海里の外にいたのであればもちろん、たとえ韓国側が主張いたしておりますように3海里の中にいたとかりに仮定しても、日本国公船に対する重大なる国際法の違反行為であり、そのもたらすべき影響は深刻であると指摘いたしまして、韓国代表部より直ちに本国政府に連絡して、今夜中に釈放する措置をとられたいと申し入れました。その後、アジア局長よりも代表部に対しまして同趣旨の申し入れを行なうとともに、「ちくご」が今夜中に釈放されないようなことになれば、事態は非常に重大になるという同様の警告を発したのでございます。

しかるところ、午後10時半過ぎ、韓国代表部より外務省に対しまして、「ちくご」が釈放されることになった旨通報があり、また、「ちくご」からは海上保安庁に対して、午後10時40分釈放されたとの報告がございました。「ちくご」は15日の朝門司港に帰港の予定でございます。

経過は、以上申し上げたとおりでございます。

[085]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
そこで、2、3順次お伺いしたいと思いますが、事実領海侵犯であったのか、それとも公海上であったのか、事実からひとつお聞きしたいのですが。

[086]
外務大臣 大平正芳
「ちくご」はまだ門司に帰っておりませんし、われわれのほうから韓国側に依頼いたしました事情調査が届いておりませんので、そこははっきりいたさないわけでございますけれども、領海侵犯について双方にやりとりがあったらしい様子でございます。これは、いずれ「ちくご」自体からの報告を聞き、韓国側の調査も聴取して確かめたいと思っております。

[087]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
まだその点は明確でないということでございますけれども、その拿捕された際に、「ちくご」としては領海3海里を主張されたということ、この点韓国側は李ライン内は領海であるという主張を続けたこと、両者の対立はどこまでも並行してお互いに譲らなかった、こういうような意味の新聞報道であるのです。

そこで、公海上であったかどうかということは、「ちくご」自体はこれは明確にわかるはずだと思うのですが、こういう点はどうなんですか。どうもその点があいまいであったということですが、「ちくご」自体は、いま公海上にあるのか、それとも3海里以内に入っているかということは明確にわかるのではなかろうかと思うのですが、その点はどうですか。

[088]
外務大臣 大平正芳
私は、「ちくご」自体がその時点においてどこに位しておったかということはよくわかっているはずだと思うのでございます。それは門司に帰港次第聴取したいと思っております。

[089]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
これは「ちくご」は言うまでもなく巡視船ですから、これは漁船とは明確に区別せられる。一目瞭然わかるであろうと思うのですが一目瞭然わかる情勢にあったにもかかわらず、なおあえてこれを強制連行した。

これは何と考えても国際法上の違反になる問題だと思うんですが、この点はどうなんですか。

[090]
外務大臣 大平正芳
領海3海里侵犯の事実があったかどうかということよりも、問題は公船であるということが重大だと思うのでございます。公船は国際条約上特別な地位を持っておりまするし、国際慣列上も特別の取り扱いを受けておるわけでございますので、この点は公船を強制連行するということは、これは穏やかでないことでございまして、私どもといたしましては、十分の事情調査はもちろんいたしますけれども、公船であるということ、そのことに対して先方がとった措置に対しまして、適正な日本の政府としての措置をとらなければならぬと考えております。

[091]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
この事件に対して外務省はさっそく韓国側に抗議を申し入れたということについての大臣からの御説明、ただいまお聞きしたわけですが、ただ、今朝の新聞報道によると、5月14日に、きょう予定されている日韓非公式会談の席上で、杉首席代表から裵韓国大使に、今後はこのようなことを起こさないように要望することにしておるとの報道があったわけですけれども、この点はどうなんですか。

[092]
説明員(外務省アジア局北東アジア課長) 前田利一
御説明申し上げます。

本日、午後2時に予定されておりまする日本側の日韓会談首席代表杉首席代表と韓国側の首席代表のペ義煥大使、このお2人の間に大体1週間に1度非公式会談ということで会合が持たれておりますので、ただいま大臣から御説明のありましたような実情の認識の上に立ちまして、ちょうどいい機会でございますので、杉首席代表からもこの点について遺憾の意を表明し、今後こういう不祥事態の起こることのないようにということを華首席代表に申し入れるこういうことになっておりまして、ただいま3時からその会合が開かれております。

[093]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
そこで私はお伺いしたいのは、そういう手段は当然のことだと思うのですが、ただ新聞報道によると、「要望することになっておる」というような意味の報道であります。それで、大臣の先ほどの御説明では、抗議を申し入れた。同じ事柄のようで、うっかり聞いているとわかりませんが、これは厳重に区別されなければならぬ。このような大事件でございますから、要望どころの騒ぎでなく、厳重な抗議を申し入れてしかるべきだと思うのですが、おそらくそういうことであったと思うのです。まずこのことは大事な点であるので、大臣からいま一度この点はどうであったのか、要望の程度であったのか、それとも、厳重な抗議であったのか、おそらく後者であろうとは思いますが、念のためお伺いしておきます。

[094]
外務大臣 大平正芳
ただいままでは、起こりました事態の収捨で、早く釈放の措置をとるようにということでございましたが、私が申し上げておりますことは、実情の正確な調査ができますと、私どもといたしましては、今度の不法連行事件に対しましては、所定の手続をとって、いま仰せのように、厳重な抗議をしなければならぬと私は考えております。

[095]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
外務省の見解と――これは新聞報道によるわけですが、特にいま大臣から御説明があったように、たとえその地点が領海侵犯の域に入る問題であっても、公船である場合は、国際法上抗議されることはあっても、立ち入り検査や捕獲されるようなことはない、こういう意味の御説明であったわけです。

このことについては、「ちくご」自体が公海上であったということを主張しておるのですから、これは当然公海上であったろうと思うのです。しかも、かつ、公船である、巡視船というりっぱな公船であるわけです。そういうことから考えて、これを捕獲したというようなことは、あまり前例もないであろうと思うのです、前に。これは後ほど伺いますが、新潟の海上保安本部ですか、1回あったようですが、これは絶えてなかった問題のようですが、そういう意味合いからも重大な問題だと思うのですが、この点についてひとつ御説明いただきたいと思います。

[096]
政府委員(外務省条約局長) 藤崎萬里
国際法上の観点から申しますと、公船、特に非商業的な目的に使われる公船は、特別のステータスを持っておるものだと、そういうところから、公海におる場合には他国の管轄権から全面的に免除される、旗国以外の管轄権には服さないということが、ジュネーヴで海洋法会議というのがございまして、そこでいろいろな条約ができましたが、その公海に関する条約の中にも明記してございます。

領海内の取り扱いにつきましてはいろいろ実は意見が分れておりましたために、この領海に関する条約には規定はございませんが、国際慣例としましては、やはりこの種の公船に対しては手出しをしないというのですか、強制力を行使しないのが一般の慣行であると言って差しつかえないだろうと思います。

[097]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
そこで、重ねてお伺いしますが、立ち入り検査や捕獲はしないことになっておる、国際慣例上。ところが、そのいわゆる立ち入り検査、その域を脱して、これを強制連行したというようなことに大きな問題があろうと思うのです。

かりに臨検であっても、これは問題は、そういう御説明に基づくと、問題が残るわけですけれども、この点で問題の重要性はあろうかと思うのですが、この点はいかがですか。

[098]
政府委員(外務省条約局長) 藤崎萬里
御指摘のとおり、先方の官憲が行使した権力の重さに従って、それだけわがほうの権利の侵害の程度も大きいわけでございます。連行というようなことは、最も重大なことであると思います。

[099]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
そこで、時間の関係もございますから、重点的にお伺いするわけですが、そこで大臣に特にお伺いしたいのは、韓国側がこのような不法行為をあえて強行したその理由は那辺にあるかということをお考えですか。何か目的がなければ、無意味にそういうことはやらぬと思う。きわめて意図的です、巡視船であるということをはっきり確認できるわけですから。これは、漁船を公海上で云々の問題でも問題は残るわけですけれども、ましてや、国際法上認められておる公船を、そういう不法に捕獲する。何かそこに意図かなければならぬと思うのですが、これはむろん、いまのところまだその集約的ななにはないから判断できぬと言えばそれまでですが、大臣としては、どうお考えですか。

[100]
外務大臣 大平正芳
どういう意図でそういうことになったのかということにつきましては、実は私も解しかねるところでございます。先方かどのように説明してまいりますか、伺った上で判断したいと思っておりますが、いまの段階では、私には、全然解しかねておる状況です。

[101]
日本社会党(社会民主党) 伊藤顕道
せっかくお伺いしましたけれども、大臣わかっておるのでしょうけれども、まだ国際法上の問題だから慎重を期してということで、それもわかりますので、また機会を見てあらためてお伺いすることにして、そこで、この問題については最後に1点だけお伺いしておきますが、いままでの捕獲事件は一体どうであったか。

私が記憶しておるのは、29年であったと思いますが、新潟の海上保安部の巡視船の「さど」が済州島付近で韓国警備艇から捕獲された事件があったと思うのですが、これは、今回よりさらに悪質であったと思うのは、銃撃後に捕獲されている。

今度は、発砲は、どの記事からも見当たらなかったのですが、そういう事実があったとかないとかということも合わせてお答えいただきたいのですが、このほかに、いま指摘した新潟海上保安部の「さど」以外にもあったのかどうか、そういうことをひとつお聞かせいただきたいんです。

[102]
説明員(外務省アジア局北東アジア課長) 前田利一
ただいま先生御指摘のとおり、最も今回の事件に類似しました、あるいはそれ以上の程度にひどかった事件といたしましては、29年の2月に海上保安庁の巡視船「さど」が、先方から銃撃を受けた後に連行されて、相当長時間でございましたが、たしか済州島に連行されました後に釈放されたという事件がございまして、それ以外に、李承晩ラインの問題に関連しまして、日本漁船の保護、指導に当たっております海上保安庁の巡視船に、威嚇射撃を加えたり、あるいは停船を強制したりという不祥事件が、これまでに、私の記憶によりますと、今度の事件を加えて8件くらい生じていたように記憶しております。





昭和39年05月15日 衆議院 運輸委員会
[002]
政府委員(運輸政務次官) 田邉國男
韓国警察艇による巡視船「ちくご」連行の事件につきまして御説明を申し上げたいと思います。

新聞、テレビ等ですでに御承知のことと思いますが、13日の午後李ライン海域において発生いたしました韓国警察艇による海上保安庁巡視船「ちくご」連行事件について、ただいまお手元に資料を間もなく配付いたすわけでございますが、要約いたしまして御報告をいたします。

13日午後0時55分ごろ、李ラインの漁船保護の業務で韓国警備艇の動静把握のために七発島灯台、これは韓国西岸の大浦西方にある七発島という小さな島に設けられた灯台でありますが、その西方5海里付近におきまして漂泊中の巡視船「ちくご」に、韓国木浦警察署所属の警察艇ハンサン号、20トン――通常漁船拿捕等を行なう海洋警察隊の警備艇と異ります。――が、機銃2門を向けながら高速で接近接舷、おりから警察艇に同乗中の全羅南道警察局警備課長が巡視船に乗り移ってきまして、「ちくご」は領海侵犯をしていると言いましたので、「ちくご」船長は、七発島から5海里の海上だから公海上であると主張しましたが、同課長は、一応話し合いのため、大黒山島へ入港するよう要請しました。

「ちくご」船長がこれを拒否しましたところが、大黒山島沖合いまで同行するよう要請を受けました。そこで、「ちくご」船長はこれを了承いたしまして、大黒山島沖まで同行、14時45分大黒山島北東1マイルの地点に到着しましたところ、15時30分NP605号が接舷をいたしまして、「ちくご」に乗船中の警備課長が下船、かわって武装警官2名が移乗してきたのであります。

その後話し合いを続行するために鎮里へ入港するよう重ねて要請がありました。16時45分やむなく鎮里へ入港いたしました。

双方の主張の対立点は、韓国側は、警備課長は李ライン内を領海だと言い、わが方の巡視船は、当然のことながら、領海は3海里だと主張した点にあったわけであります。韓国側は鎮里入港後、上部機関と善後措置を協議したようであります。

海上保安庁は事態を重視しまして、直ちに外務省に厳重措置を依頼いたしました。同省は2度にわたって代表部に抗議をしたわけでありますが、その後午後10時30分警備課長と鎮里警察署長が巡視船の船長のところにやってまいりまして、本件については地元警察にまかせられ、現地で解決せよとのことです、平和ラインは韓国領海であります、日韓会談で問題になっているところで、一日も早く解決されるよう希望します、今後はこのように近寄らないようにしてもらいたい、こういうことでありました。これに対しまして、船長は、巡視船は漁船保護が目的でありまして、今後もこの方面に行動することがあるが、領海3海里を侵犯したりその他不法なことはしない、こう述べて会談を終わりました。10時45分鎮里を出港、門司に帰港したわけでございます。

会談にあたっての韓国側の態度は終始非常に丁寧であったということです。

なお、韓国警察艇には、さきに申しました全羅南道警察局警備課長のほか、同局の局長、州地方検察庁検事長及び新聞記者4名が乗船、大黒山島付近の視察途上であったということであります。

以上、概要を御報告申し上げました。

[003]
委員長 川野芳滿
質疑の通告がありますので、これを許します。久保三郎君。

[004]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
一昨日の佐世保の海上保安部巡視船の連行事件といいますか、その報告がありましたが、どうもふに落ちない点が2、3ございますので、時間もたくさん取っておりませんから要約してお尋ねをするわけですが、1つは、いまの報告では、1回は巡視船の船長は移動することを拒否したという話であります。まず問題のとらえ方として、公海と認めておるわけであります。しかもこちらは公船でありますから、そういう観点からするならば、1回拒否したが、2回目に同行というか、そういうふうに移動すること自体が私はおかしいと思う。そういう指示のしかたをしているのかどうか。これはどうなんです。

[005]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
私どもといたしましては、李ラインにおける漁船保護の基本的な考え方といたしまして、でき得る限り国際紛争を惹起しないというたてまえで、巡視船に対しては慎重に行動するように指示いたしております。

[006]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
李ラインと言うが、李ラインは日本政府は認めておるのですか。しかも、国際紛争と言うが、一方的に宣言したものに対して、公海上に宣言したものに対して、それを認めているから紛争云々ということばが出るのであります。紛争でも何でもないと私は思う。これはいかがですか。

[007]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
私どもとして李ラインというものを認めておるというふうな点につきましては考えておりませんが、しかしながら実際問題といたしまして、私どもの基本的な立場というものは、やはり現実にいろいろな国際紛争を惹起しないで有効に漁船保護をするという立場に立っておるわけであります。

[008]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
それならばその地点において、向こうの船が接舷したのでありましょうから、接舷するかどうかは別にして、その船同士のその地点においての話し合いを続行すべきであって、そういうふうに話し合いというものは持っていくのが当然じゃないですか。紛争を解決するなら、向こうの主張とこちらの主張があるならば、そこで解決して話し合いがわかったということでなくちゃならぬと思う。そういうことはどうなんです。

[009]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
先生のおっしゃるとおりだと思いますが、しかしながら私どもがわかっておる当時の状況からいたしまして、高速艇が武装しておって、洋上で、しかも巡視船の中において話し合いをいたしたわけでございますが、なかなか話し合いがつかないという状況で、おそらく船長としては自己の最良の判断というものによって一応同行を承諾したのではないかというふうに考えられます。

現在「ちくご」は門司に向けて――本日の朝入港したはずでございますが、私どもとしては船長から当時の状況を十分聞いた上でさらに今後十分検討していきたい、かように考える次第であります。

[010]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
巡視船に――しかも巡視船でありますから、そこに他の国の公務員が乗船してくること自体がおかしいじゃないですか。その点はどうなのです。それは巡視船の船長がどうぞお乗りくださいとでも言ったのですか。どうなのです。

[011]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
当時の状況は必ずしも私どもはっきりいたしておりませんが、おそらく強制的に接舷して乗船してまいったものだろうと思います。したがいまして、その乗船を拒否するというためには、おそらく実力を行使するということであったのではないかというふうに感じられます。

従来もそういうふうなケースが全然絶無ではないのでございまして、巡視船が追跡を受ける、あるいはまた向こうの警備艇により銃砲撃を加えられる、あるいは臨検を受けるというふうなケースも、従来昭和27年以降38年までの間に約20件ございます。その際にもわれわれとしてはでき得る限り現地で国際的にいろいろな紛争を起こさないというたてまえにおいて現実に処理をして、今日まで漁船保護の目的を達してきておるわけであります。

[012]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまの御説明だと、日本の巡視船が昭和27年以来数多く臨検を受けたというのですが、臨検を受けることは国際慣例なり国際法上、これは合法的ですか。妥当なんですか。

[013]
外務大臣 大平正芳
ただいまの海洋法、それから成立した国際慣例から申しますと、非商業的な活動だけに従事する公船は、公海におきましては旗国以外の管轄権は全然及ばないということになっておりますし、まかり間違って領海の中におきましても、その指揮官の承諾がなければ、臨検その他の実力行使ができない、ただできることは、領海外に待避してもらいたいという要請をすることが沿岸国の官憲ができること、そうようにわれわれは解釈いたしております。

[014]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまの外務大臣のお話、そのとおりだと私は思うのですが、そういう昭和27年以来何回もあったといういまのお話と、先ほどの政務次官の報告で類推すれば、あなたの御報告では非常に丁寧に扱われたといわれるが、ちっとも丁寧じゃないのですね。これはしかも27年以来たくさんあった。

ところが、いま新聞報道その他政府の動きもそうでありますが、日韓会談は中断いたしましたが、ごく最近これは再開ということで、韓国の新政権というか新内閣もできたというような話です。近く向こうの無任所の長官か何かが来て閣僚級の会談に入ろうというさ中ですね。ちっとも丁寧じゃないです。しかも船長に脅迫――丁寧なんだから脅迫をしたのじゃないと思うのですね、そういうことばを使うならば。だからその巡視船の船長がどういう態度をとったか、まだよくわからぬというお話ですが、丁寧ならば、少なくともそういう公船に乗り込ませること自体もおかしいのですね。断わる、こう言ったらいいのです。そこで話がつくかつかないか、つかない限りは本国に訓令なり何を求めて、そこでやる、筋を通す、そういうしつけというか、訓令というか、そういう指示が与えられていないことも一つじゃないですか。それはどうなんです。

[015]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
その当時の状況の詳しい実際の雰囲気というものを私どもとしても船長から直接聞いた上で今後の措置を検討したいと思っておりますが、その当時の状況下において、どういうふうな雰囲気のもとにおいて、船長がそういう決意をしたかという点については、船長から当時の現実の模様を十分聞いた上で対策を立てていきたいと思います。

[016]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
政務次官にお尋ねしますが、いまの保安庁長官のお話ではまだ船長から詳細に聞いてないということです。その丁寧ということだけは聞いたのですか。いかがですか。

[017]
政府委員(運輸政務次官) 田邉國男
私の表現がもし不穏当であれば取り消しますけれども、ただ従来のこの李ラインにおけるいろいろの漁船拿捕の経過を見ますと、韓国側の警察、警視艇と申しますか、そういう立場の人たちの行動というものは非常に挑戦的であり、非常に挑発的である、そういうことから比較いたしますと今回の場合にはいともいんぎん、丁重にやったということでございまして、ただその比較論で申し上げておる、さようなことでございます。

[018]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
この巡視船は、最初に船長が、いわゆる大黒山島へ入港する要請に対し、これは断わったのですね。ところが再びそういう要請があったので、こう書いてあるが、この文面どおりだとするならば、これはどうかしていると思うのです。船長がね、これは丁寧ではなくて、これは武力によって脅迫されたかどうかという問題ですね。それでしかたなくでしょう、このとおり私が善意に解釈すれば。それで大黒山島沖合いまで行った。そうしたならばNP605号が接舷してきて、さらに今度は鎮里へ入港する、こういうふうに引き回されているんですね。ちっとも丁寧ではない。

そこでこれは外務大臣にお尋ねしますが、先ほどの御答弁のとおり、公海において、しかも公船が他国の官憲から臨検を受けたり、あるいは強制的に乗船されたり、強制的に連行されたりするということは、これは国際法上、国際慣例上、異例なことだろうと思いますが、そうでしょうね。

[019]
外務大臣 大平正芳
仰せのとおりでございます。

[020]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
そこで、この異例なことに対して外務省というか、日本国政府としてはいかなる措置をおとりになりましたか。

[021]
外務大臣 大平正芳
とりあえずの措置といたしましては、「ちくご」が早く釈放されることを求めなければなりませんので、一昨晩2回にわたって要請いたしました結果、ともかく10時40分釈放されたのでございますが、きのうの日韓会談におきまして、当方から、この段階でこういうことが行なわれたということの韓国政府側の意図は一体何かということを尋ねましたところ、先方の答えは、韓国本土に接近した海域に日本漁船の集団漁労が目に余るものがあります、したがって現地の官憲としてはこのような措置をとらざるを得なかったものと想像します、という答えでございました。

われわれといたしましては、久保さんが御指摘のように異例なことでございまするし、明らかに国際法、国際慣例にまっこうから違反しておる穏やかでない事件でございますので、いま海上保安庁長官から申し上げましたように、「ちくご」が帰りまして、船長以下から十分の正確なデータをちょうだいし、一面代表部を通じて韓国側の事情の調査を依頼してございますから、これらを取り寄せてから政府としてこの事件についての態度をきめて韓国側に申し出るつもりでございます。

[022]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いまのお話だと、韓国側の言い分は、韓国沿岸近辺に日本漁船がたくさん来ているので、そういうことからやったんだろう、こういうようなきのうの言い分だそうでありますが、これは漁船じゃなくて巡視船であります。巡視船は漁船ではないのでありますから、そういう言い分は通らぬと思うんですね。

それが1つと、もう1つは韓国側の事情も調べてもらって、当方の事情も調べると、こうおっしゃるけれども、事実行為としてはもう実際に起こっておるわけですね。いかなる事情であるかもしれぬが、公海上で公船が他国によって侵犯されたということでありますから、これはもう何ら詳細なことをお調べになる必要はないほど明々白々なる事実だと思うんですね。こういう事実行為がありながら、一ぺんも抗議の申し入れはされておらないようですね。いかがです。

[023]
外務大臣 大平正芳
抗議は一昨晩以来続けてやっておるわけでございますが、あなたが御指摘のようにこれは非常に異例な事件で、考えようによっては非常に重大な事件なんです。したがって私どもはこれを処理する場合に、単なる情報によってそれを基礎にしてやるということは軽率だと思うのでございまして、巡視船が帰りまして責任者から十分の事情を調査究明し、韓国側の事情も十分究明した上で適正な措置を講ずるというのが、私は正しい態度だといま考えております。

[024]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
詳細に、銃を向けられたか、あるいは発砲があったかなかったか、そういうようなことはこの報告には出ておりません。しかしこれは、政府としてこの国会にいま報告になった点でありますから、これは事実だと思うのですね。新聞や何かの問題ではなくて、政府自体がこの国会に向かって御報告なさったんですから。この事実に対してどう思うかというんです。

先ほど来のお話だと、公海でこういう公船がやられたのだということでありますから、これは国際法も国際慣例も無視されたものだということなら、その理由に基づいて適切な措置をてきぱきととるのが当然ではなかろうかと思うのです。その過程については詳細に取り調べをしなければわからぬ、そうでなければ手配ができないという問題もあるかもわかりませんね。損害があったとすればその損害はどうするかという問題がありますね。しかしそれはあとの問題です。

大綱としては、公海において公船が侵犯されたという事実に対して、それは即刻措置をとるのがほんとうじゃないでしょうか。国民感情からいってもおかしいじゃないかと思うのですが、どうです。

[025]
外務大臣 大平正芳
それは、御指摘を待つまでもなく、私どものほうは口頭で再三抗議をしてまいっておるわけでございます。私の申し上げるのは、正式の文書で、口上書をもって処理いたしますにつきましては、精細に事態を究明し、確かめた上でやりたいと考えておることであります。

[026]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
口上書をもって正式に措置をするというお話ですが、もちろん正式には口上書をもって申し述べるということでありましょう。これはこれでいいと思うのです。しかしその態度について申し上げたいんですが、かかる事件はいままでも20件あったそうであります。過去においてそれぞれ措置をとられたと思うのでありますが、いま非常に大事な時期だと思うのですね。いわゆる日韓会談にしても引き続きやるということでありますから、そういうさ中において、少なくとも国際法、国際慣例から見ても不当なことをやられて、はたして友好裏に会談が進められるかどうかの問題が一つあります。

でありますから、まず第一に、それじゃ口上書をもって抗議なり何なりをするのでありましょうが、いままでかかる事件に対しては、国際慣例上どういう方法がありますか。陳謝を求めるとか、いろいろありますね。そういう方法は、どういう方法をおとりになりますか、これが事実だとすれば。

[027]
外務大臣 大平正芳
いま申しましたように、事態を精細に究明の上、どのような口上書にいたしますか、そして先方に対してどういう態度を求めますか、これを慎重に考え中であります。

[028]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
時間がありませんから、外務大臣は外務委員会のほうで約束の時間で呼びに来ていますから、もう一つだけあなたにお伺いしたいと思います。

かような事件を起こしながらも、日韓会談というのは進められるんですか。国民感情としては、少なくともかかる事件の結末がつかない限りは、納得しない限りは、日韓交渉がコースとしていいか悪いかは別として、進めるべきでないというのが大半の国民の考えだと思うのですが、いかがでしょう。

[029]
外務大臣 大平正芳
日韓交渉が微妙な段階にあるときに起こりました事件として、非常に私は不幸だと思うのでございます。仰せのように、われわれが日韓会談を進めてまいる場合に、こういう事件が出来してまいるということは、全く戸惑わざるを得ないわけでございます。先ほど申しましたように、精細に事態を究明いたしまして、いま御指摘のようなもろもろの点も十分考慮に入れまして、日本政府といたしまして適正な措置をとってまいるつもりでございます。

そして、日韓交渉は、仰せのようにこういった問題でもやもやしておるということではいけませんので、事態をはっきりさせておかなければいけないものと思っております。

[030]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
続けて、この報告をお聞きになったと思うのでありますが、向こうの警察署長でありますか、わかりませんが、最後に言ったことばですね。船長に言ったことばは、日韓会談中でもあり、今後はなるべく彼らが言うところの領海内に立ち入らないように希望する、こういう話でありますね。日韓会談中であるから、微妙な段階であるからと、あなたもそうおっしゃっていますし、向こうもそう言っているんですね。

そうすると、これはやはり新聞報道などで一応推測しているように、彼らは、平和ラインというか、李ラインそのものの中に、将来にわたって自分たちの領海だということで主張しようという魂胆がありはしないか。あるいはそういうことによって韓国内のいわゆる国民感情というか、そういうものもひとつ考えていやしないか。こういうことが前提で日韓会談を進めるということについては、私はこれはたいへんなことだと思うのです。向こうの署長が出先の官憲として、日韓会談中でもあるから、今後はなるべく入ってきちゃ困る、こういうふうに希望しているんです。こういうことも十分考えていかなければならぬと思うのですがね。あなたはどうお考えですか。

[031]
外務大臣 大平正芳
平和ラインといい、李ラインというものは、われわれは認めていないわけでございます。われわれが関心を持ち、日韓間でやり遂げなければならぬ仕事だと思っておりますのは、あの海域における漁業の安全操業を確保するということでございまして、これが長きにわたって両国の漁業関係者が最大限の利得を安定して得られるような環境をどのようにつくるか、安心して操業ができる環境をどのようにして整備するかということを鋭意究明いたしておるわけでございまして、李ラインとか平和ラインとかいうことに全く関係なく考えておるわけでございます。そういうものはできないということでございますれば、漁業協定というのはわれわれが考えておるようなことができないわけなんでございます。あなたが言われるように土台がくずれるわけでございまして、私はまさかそんなことはあるまいと考えております。

[032]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
いま外務大臣がおっしゃるように、これは大体土台が、くずれておりますよ。こういうものを向こうとしても、李ライン内に入らないようにというようなことをやっているのは、向こうの政情にしてもたいへんな問題があると私は思う。だからこの辺で日韓会談はおやめになって、静かに20件に及ぶところのこういう事件を片づけて、静かに向こうの政情を見て進めるべきだと私は思うのです。時間がありませんからそれだけにいたします。

[033]
日本社会党(社会民主党) 矢尾喜三郎
関連して1点だけ。――いま久保委員からるる質問がございましたが、1点だけお伺いしたいと思うのです。

きょう、「海上保安の現況」というものを海上保安庁から配付されましたが、その報告書の中に、昨年の6月に釜山の港外の公海上において「のしろ」という巡視船が、このときには機銃あるいは小銃で威嚇を受けて停船を命じられ、臨検まがいの尋問を受けた、そのときに日本政府は、これらの不法な拿捕、臨検に厳重に抗議するとともに、それが日韓会談の円満な進展をはかる上で重大な障害となることを重ねて警告した、こういう報告になっておりますが、この警告に対して韓国から日本政府に対して何か回答めいたものがあったか。

また、それから行なわれておりまする日韓会談等におきましても、そういう不法な行為に対してこちらの出した警告について論議されたようなことがあったがどうかということを1点伺っておきたい。昨年の6月です。巡視船「のしろ」です。このときには、公海上で機銃あるいは小銃で威嚇されて停船を命じられた。そうして尋問を受けている。

[034]
外務大臣 大平正芳
日韓交渉が妥結いたしておりませんし、日韓の国交は正常化いたしておりませんけれども、現に朝鮮海域におきましてはしょっちゅうそういう拿捕事件が起こること、これは両国にとって非常に不幸だと私は思うのでございまして、交渉中といえども、正常化前といえども、できるだけあの海域が平穏であることを希求いたしまして、両国がお互いに理解し合って紛争が起こらないようにこれつとめてまいりました。幸いにいたしまして、去年からことしにかけまして拿捕件数が非常に減ってまいりまして、比較的平穏に推移しておったやさきにこういう事件が起こりましたことを実は非常に心を痛めておる次第でございます。

いま矢尾さんの御質問の事件が起こりまして以来からずっと拿捕がありませんで、ことしの2月の6日でございましたか、1隻ありまして、これもすぐ即日返してもらったと記憶いたしておりますが、先方も非常に自制されておったということは、客観的事実が立証しておると思うのでございます。

今度の事件が、一体これは偶発的な単なるあやまちなのか、それとも意図的なものなのか、それからこれは現地の官憲のちょっと飛びはねた行動であったのか、そのあたりをよく究明してみないとわからぬと思うのでございますけれども、ここしばらく朝鮮海域は幸いに平穏に推移しておったのであります。この状況で、もう紛争を起こそうと思ってもからだが動かぬような状態にありたいものだと思って一生懸命にやってきたわけでございます。幸いにそういう雰囲気がだんだん出てきておったやさきでございます。いまのお答えといたしましては、そのように客観的事実はだんだんとあの海域は平和になってきておるということでおくみとりいただきたいと思います。

[035]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
もう1つ伺っておきたい。

いま外務大臣時間でまいりましたが、矢尾先生のいまの質問で、去年の巡視船の臨検事件というのは政府として韓国から何か回答を受け取って、たとえば陳謝の意を表したとか謝罪をさせたとかいうことはあるのですか。

[036]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
昨年の「のしろ」の事件につきましては現在手元に資料がございますが、韓国側がその当時どういう回答を外務省に出したかという点については現在手元に資料がございません。しかし従来私どもは現在のような韓国の態度と非常に異なった返事があったというふうには記憶いたしておりません。

[037]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
この問題はいずれまた席をあらためてお伺いすることにいたします。いままでの20件に及ぶところの拿捕事件の事後処理、これは外務省と協議の上資料を出していただきたいと思います。





昭和39年05月20日 衆議院 外務委員会
[051]
日本社会党(社会民主党) 松井誠
その1つの事例は、もう御存じかもしれませんが、京郷新聞という新聞の編集局長以下4名が新聞記事の内容のゆえをもって逮捕された。これは新しい内閣ができて間もなくの13日です。このことと、それから、先般問題になりましたけれども、日本の海上保安庁の巡視船の「ちくご」が公船であるにかかわらず拿捕のような形で連れ去られたということ。こういうことは、やはりいままでの内閣とは少し行き方が変わっておるのじゃないか。力で押えようという力の内閣的な性格がここににじみ出ておるのではないか。この拿捕の問題については、運輸委員会で久保委員のほうから質問があった由でありますし、時間の関係がありますから私はお尋ねいたしませんけれども、とにかく、国際法無視がさらにひどくなる、あるいはまた言論を弾圧をするという、少なくともしばらくはなかったことが新しく起きてきておる。





昭和39年05月26日 参議院 運輸委員会
[003]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
ただいまお手元に資料をお配りいたしましたが、5月の13日に起こりました巡視船「ちくご」の韓国警察艇による連行事件の概況につきまして御報告を申し上げたいと思います。なお、「ちくご」は15日の午前10時ごろ門司港に入港いたしてまいりまして、私どものほうも直ちに関係官を派遣して詳細に船長から当時の状況等も聴取してまいっておりますので、そういった面につきましてあわせて概況の中で御説明をいたしたいと思います。

事件が起こりましたのは5月の13日の昼12時55分でございますが、場所は、お手元の資料の次のページにございますように、李ラインの中の、しかも非常に韓国の木浦に近い、島嶼の多い海域でございまして、これにございますように、七発島という島がございます。その島に灯台がございますが、この七発島灯台から約5マイルの沖合いという所でございます。

概況について簡単に御説明しますと、13日の12時55分、巡視船の「ちくご」がこの七発島灯台沖合い約5マイルの点におきまして漁船保護のための行動中に、韓国の警察艇――これは、いつも新聞に出る、わがほうの漁船拿捕に行動いたしております海洋警備隊の警備艇とは全然別のものでございまして、後ほどに出てまいりますが、全羅南道の警察局に所属するところの警察艇でございまして、ハンサン号という約20トンの、スピードは約30ノット出るという高速の警察艇でございます。これが、実弾を装てんした機銃2丁を「ちくご」に向けながら接近してまいりまして、それに同乗中の全羅南道警察局警備課長が「ちくご」に移乗して、「ちくご」が現在韓国の領海内におるということを主張いたしたのでございます。

これに対しまして、「ちくご」船長は、先方が武器をこちらに向けながら接近してまいったというふうな関係もございまして、一応その警備課長の移乗を認めまして、その警備課長に対しまして、われわれの位置は現在七発島灯台西方5マイルの公海上である、したがって何ら領海侵犯をしておるわけではないということを強く主張いたしたのでございます。

警備課長は、とにかく話し合いをするために、大黒山島――これは七発島灯台から西方に少し離れました所で、この地図にも書いてございますが、この大黒山島に基地がございます。この大黒山島まで入港するように要請してまいったのでございますが、「ちくご」船長がその入港を拒否いたしたところ、沖合いまでぜひ同行してほしいということを重ねて要請してまいったのでございます。で、先方から直接聴取したその当時の船長の判断といたしまして、できるだけまず事態を早く解決するためには、大黒山島沖合いまで同行するもやむを得ないというふうな決意をいたしまして、「ちくご」船長が一応これを了承して、大黒山島の沖合いまで同行をいたしたのでございます。それが、これにもございますように、約2時45分、大黒山島の北東1マイルに到着して、話し合いを続行いたしました。

しかしながら、なかなか話し合いがつかないと同時に、先方が、現場付近の潮流が非常に激しいために、接舷して話し合いをするのは非常に危険であるから、ぜひ鎮里へ――鎮里というのは大黒山の基地になっておるわけでございます。その鎮里港に入港するよう重ねて要請があり、船長としても、その潮流の関係その他から判断いたしまして、やむなく鎮星港へ入港いたしたのでございます。その間、警備課長がおりて、かわりに自動小銃をもって武装した警官2名が、「ちくご」の乗員の拒否にかかわらず、強引に船に乗り込んできたということでございます。

で、その後、鎮里港において再び警備課長と「ちくご」船長が話し合いをいろいろいたしたのでございますが、先方は平和ラインつまり旧李ライン内はすべて韓国の領海だというふうな主張をいたしまして、領海は3海里だというふうな「ちくご」船長の主張と全く平行線で、全然話し合いがつかないという状態でしばらくおったわけでございます。その後、この警備課長が上司に連絡をとる必要があるということで一たん下船をいたしまして、それから、これにもございますように、再び同日の21時15分に参りまして、問い合わせ中であるという連絡をいたして、さらにまた上陸いたしてきたわけでございますが、次いで22時30分、これにございますように、上司と連絡したところが、本件解決は地元警察にまかせろということであったということで、日韓会談中でもあるからなるべく領海内には入らないでもらいたいというふうな発言をいたして、もう帰ってもけっこうですということになったわけでございます。

これに対して、船長としては、日本の巡視船は漁船保護の目的で今後もこの方面に行動することがあるということは知ってほしい、しかしながら領海を侵犯したりするというふうなことはわれわれとしてもしないつもりであるということを発言した。それによって一応交渉が終わったわけでございまして、直ちに船長は出港の準備をいたしまして、22時40分に鎮里港を出港いたしまして、翌朝の15日の10時30分に門司に帰港いたしたということになっておるわけでございます。

これに対しましては、鎮里港に同行して「ちくご」と先方との話し合いをしていただく時期におきまして、私どものほうとしては事態を非常に重大視いたしまして、外務省にお願いをいたしまして、外務省から直ちに韓国代表部を呼んで再三の抗議をしていただいたわけでございます。さらにまた、この資料にもございますように、5月の21日に口上書によって非常に強硬な文書を先方に送っていただいております。その内容は、責任者の処罰、それから陳謝、それから再発防止という点について注意を喚起いたしておるわけでございます。

以上が大体の経過でございます。





昭和39年06月12日 衆議院 運輸委員会
[006]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
次に、これも保安庁の所管でありますが、漁船との関係は直接ございませんでしたが、先般の韓国沖合いにおけるところの巡視船に対する国際法違反の問題、この問題はその後どうなったか、さらには、新聞に伝えるところによりますれば、保安庁の巡視艇、艦船は、これに対処するために、その後起きた事件もあるようでありますが、対馬沖の問題、これに対して武装するというふうに報ぜられているが、この点はどういうふうになっておるか、その2点について……。

[007]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
第1点の木浦沖合いにおきまする韓国警察艇による巡視船「ちくご」連行事件につきましては、直ちに外務省から口上書によりまして強硬な抗議を向こうに申し出ておる状況でございます。その抗議の内容といたしましては、そういった事件を惹起した者に対する処分をも要求するという強い内容のものでございます。それに対する韓国側の返事が現在来ておるという点につきましては、私どもはまだ確認いたしておりません。

それから第2の点でございますが、これは全く質の違う問題でございまして、5月30日でございますか、対馬の沖合いのわが領海内におきまして、灰色に塗った国籍不明の不審船がおるという情報を得まして、海上第七管区本部といたしましては、何とかこれを捕捉したいということで、実は巡視船で、あるいは巡視艇で近づきますと逃走されるおそれもあるということで、漁船をチャーターし、漁夫のかっこうなしてそれに乗り込んだのでございますが、これに対して突如として自動小銃あるいは短銃等で保安官を威嚇し、乗り組んだ艇長としてはやむを得ずこれを退避せざるを得なかった。これに対して該不審船はいかりを切って高速で逃走したという事件でございます。

少なくともわが国の領海においてこのような悪質な侵犯行為があるということは全く許せない事実でございまして、私どもといたしましてもこれに対する断固とした対応策を立てる必要があるということで、先般運輸省といたしまして対策を決定して閣議に御報告を申し上げた次第でございます。その内容といたしましては、御承知のようにわれわれは、高速巡視艇はきわめて数も乏しいのでございますが、さしあたっては高速巡視艇をでき得る限りそういったおそれのある海域に配置がえをいたしまして、これに対して、万々一の事態に対しても即応できるように小口径の機銃あるいは自動小銃というものを配備すると同時に、巡視艇のそういった船の立ち入り検査に従事する職員につきましても、あるいは防弾チョッキを着用せしむるとかその他身辺の保護に関するでき得る限りの措置を講じまして、悪質な侵犯者に対する海上警察の厳正な執行という面を確保したい、かように考えておる次第でございます。

[008]
日本社会党(社会民主党) 久保三郎
外務省から抗議をしているそうでありますが、その中には、いまの今井長官のお話だというと、関係者の処分も含むというんだが、それはそれでいいと思うのでありますが、それ以外にわが国に対して国際法に反したことをやっているのでありますから、当然のごとく陳謝なり何なりもさせるべきだと思うが、それは入っているのですか。

[009]
政府委員(海上保安庁長官) 今井榮文
おっしゃるとおり入っております。





昭和39年08月26日 衆議院 外務委員会
[042]
自由民主党 鯨岡兵輔
先日、私が福岡にまいりましたときに、現地の者が一番憤慨しておりましたことは、拿捕された船の中にあった魚を日本に輸出してよこしたのです。知らぬこととはいいながら、日本ではお金を出してそれを中央市場に並べてしまったのであります。どろぼうをしておいて、そのとった家にその盗んだ品物を売りに行ったのですから、これは驚くよりほかはありません。これはまるで落語のような話ですけれども、笑いごとじゃないのです。日本国の恥であります。これだけばかにされれば言いようがありません。

そこで、政府にお尋ねいたしますが、宝幸丸事件に関して政府のとった処置、外交的にどういう強硬な手段をとったか、これを明らかにしていただきたい。宝幸丸事件というのは、宝幸丸がつかまったときに、その中に入っていた魚を、魚の箱のまま輸出してよこしたから、そこで問題になったと思いますけれども、箱を違えてやれば、魚にしるしがありませんから、わかりません。

そこで、私が政府にお尋ねしたいのは、箱を入れかえて、今日までもこんなことがあったのではないか。いままでは、われわれの同胞が命がけでつかまえた魚が奪い取られて、その漁師は監獄にほうり込まれて、その上その魚が輸出せられて、われわれがお金を出してそれを買ったというようなばかばかしいことはなかったと外務大臣は断言できますか。もし断言できないとするならば、そんなことでいいというふうにお思いになりますか。

経済協力と言いますけれども、私は、独立後日なお浅い韓国のもろもろの事情は理解もしますし、十分同情もいたします。隣国としてそれは当然のことであるとさえ思いますけれども、しかし、だからといって、こんな仕打ちをがまんしなければならない理由は少しも認めません。この海賊行為を韓国が続けるならば、その間韓国からは魚は買わない、経済援助もいいでしょうけれども、少なくとも漁業に関するところの経済援助というものはしない、それだけの強力な態度が日本の外交になかったならば、ますますばかにされると思うのですが、この点に関する政府の御見解を明らかにせられたいと思うのでであります。

[043]
外務大臣 椎名悦三郎
お話までもなく、就任早々の際に韓国の大使が私のところに他の用事で見えたのでありますが、その際にも、この問題を進める上においてもとにかく拿捕した船舶を返してもらわなければ話が進められないということを実は私から強調をいたしたのでございます。それに対して大使いわく、すでにそういう手配はとってあるはずだけれども、まだ解放されませんかという話があったのであります。冗談じゃない、まだ解放されておらぬということを話しましたところが、さっそく手配をいたしますということでございましたので、安心しておりましたが、いまだに解決が得られないという現状でございまして、これは、私も国民の一人といたしまして、そのあまりに不届きなことに対しては、全く平静な気持ちではもちろんおられないわけでございます。

この魚の問題については、農林大臣が事情を調査した結果、確かに拿捕した船の魚を日本に売っておるのだから、こういうようなことは見のがしてはならぬというようなことで、この問題については農林大臣の直接の話も聞いております。お心のうちは私は同感でございまして、そういったような国民の声を背景にして、今後とも強く韓国との折衝を続けたい、かように考えておる次第でございます。

[044]
自由民主党 鯨岡兵輔
国民の声を背景にして強く交渉するというお話でございますので、これは了承いたしまして、第4番目に、私はきわめて重要だと思われる点についてお尋ねをいたしたいと思います。

先ほど国連の問題のときにもお話を申し上げたとおり、わが国の外交方針は何をおいてもまず国連中心主義だとわが国は国民に約束をいたしておるのであります。国際紛争を解決する手段として武力を用いないと憲法で中外に約束をしているわが国としては、国連中心主義は当然というよりも、それ以外に方法がないのです。

去る5月13日、巡視船「ちくご」が韓国警備艇にカービン銃を突きつけられて連行された事件も、船足のおそい漁船への報復をおそれたこともありましょうけれども、武力を用いて紛争を解決しないという憲法の精神にのっとったとも言えると思うのです。

そういうふうにして15年の長い間海賊行為は続き、拿捕された船が318隻です。船を返してくれなければ話はできないよと大臣が就任早々言われたそうですか、318隻もつかまっているのです。帰ってきたのもそのうちぼろ船だけ帰ってきた。いい船はとられちゃったのです。

不当に抑留された漁民は3817名、これが全部監獄に入れられた。そうして、うち8名は向こうで死んでいるのです。

今日もそれが続いて、あしたもあさっても、9月に予定されている農相会談ごろにはますます不法な海賊行為は激しくなると予想されておるのであります。だから政府は日韓会談を急ぐのだと言われるでしょうけれども、私がふしぎでならないのは、なぜこのことを国連中心主義だというわが国が国連に持ち込まないのかということです。

国連憲章第6章「紛争の平和的解決」第33条の1項には、「いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その当事者は、まず第1に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。」と明示されておるのであります。また、37条には、「33条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。」と書いてある。

33条や37条による手続によって紛争を解決するのが、国連加盟国、国連中心主義の国の義務であるとも言えると思うのであります。当事者の会談によって解決できる見込みがあるならそれでもいいでしょうけれども、過去15年の長い間にわたる不法な海賊行為です。それでも当事者の話し合いにのみこの海賊行為の解決をなぜゆだねるのか。国連中心主義のわが国が、国連加盟国が、その継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれあるこの海賊行為に対して、国連がそうしなければいけないと規定してあるそのことをなぜしないのですか。北方領土の問題だってそうだと思いますが、私は、そんなことでは国連中心主義じゃない、こういうふうに思うのです。

国連の庇護のもとにその存立を全うし得たとさえ思われる韓国に対して、適切妥当な勧告を国連にしてもらうよう、なぜわが国は処置しないのか。この点についてお考えをひとつ明らかにしていただきたい。なぜ国連にこのことを持ち込まないのか、これを明らかにしていただきたいと思うのです。

[045]
外務大臣 椎名悦三郎
国連に加盟するからしないからというのではございませんが、韓国は現在国連にまだ加盟しておらない。のみならず、国連による解決よりも韓国との相対の二国間の交渉のほうがより有効である、さように考えてやっておる次第でございますが、なおこまかい点につきましては、事務当局からお答えを申し上げたいと思います。

[046]
説明員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
李ラインの設定当初におきまして、拿捕の状況等を資料として国連のメンバーに配ったりしたことも実はあるのでございます。しかし、いま大臣が申されましたとおり、わがほうの取り分になる漁業問題につきましては、やはり向こうの取り分になるほかの問題と一緒に日韓会談のワク内で相対ずくで話し合いをするほうが有効だ、どうせ持ち出しても向こうは出てこない、そういうような結果になると思いまして、現在までのところ二国間の話し合いでやっているわけでございます。それのほうが効果的だろう、歩どまりを考えまして、そういうふうに考えたわけであります。

[047]
自由民主党 鯨岡兵輔
歩どまりを考えて、そのほうが有効的だろうとおっしゃいますけれども、15年も長い間やって、3800人もつかまっちゃっているのです。船は318隻もとられたんですよ。それでもまだ有効だというふうにお考えになるのは考え違いじゃないか。

アメリカにひとつ中に入ってくれろと言うてもいいでしょうし、国連に頼んでもいいでしょう。私は、そういうことをやらないのは国連中心主義じゃない、日本のやっていることは違う、こういうふうに思うので、そのことを申し上げたのです。



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基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。



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