軍令33号 サンフランシスコ講和条約 日韓請求権協定

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昭和20年12月06日
 軍令33号「朝鮮内にある日本人財産取得に関する件」

昭和23年09月11日 署名
 アメリカ合衆国政府と大韓民国政府との間の財政及び財産に関する最初の取決

昭和26年09月08日 署名
昭和27年04月28日 効力発生
 日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)

昭和32年12月31日
 アメリカ政府見解口上書(覚書)
 抑留者相互釈放及び第四次日韓会談開催に関する取りきめ(対韓請求権放棄)

昭和40年06月022日 署名
昭和40年12月18日 効力発生
 日韓基本条約
 日韓請求権協定





昭和27年05月14日 衆議院 外務委員会
[007]
外務大臣 岡崎勝男
そこで、本年の2月15日から日韓会談を正式に開始いたしまして、財産の問題あるいは請求権の処理の問題、漁業の問題、それから国交の基本を確立するいわゆる基本条約の問題等を議題の中心として、話合いを進めて参りました。

その中の、第一の財産及び請求権の問題といいますのはサンフランシスコにおける平和条約第4条の(a)項によりまして、両国間で特別のとりきめをして解決することになっておるのであります。同時に、やはりこの第4条の(b)項によりますと、わが国は、朝鮮においてわが国及び国民が持っていた財産に対して米軍政府がとった処分の効力を承認することになっております。

そこで問題は、この処分の効力を承認するという「承認」が、どういう意味であるかということになるのでありますが、この点では日韓双方の意見が食い違っておりまして、話がまとまらないのであります。韓国側では日本の朝鮮領有を不法であったというふうに初めから前提をいたしておりまして、かかる不法な領有の上に蓄積された日本の財産は、ことごとく非合法的性質を帯びたものである、従って米軍政府の命令第33号、いわゆるヴェスティング・オーダーと申すものでありますが、及び米韓協定によって一切韓国のものとこの財産はされたのである、日本はもはや何も権利を持っていない、むしろ韓国側は連合国並に日本に対して賠償に近いある種の要求をし得えるものであるというような見解さえ表明して来たのであります。

これに対してわが方は、韓国側のこのような主張は国際法上も歴史的にも問題とならぬのだという点を説明しておりました。現にサンフランシスコの平和条約におきましても、日本の朝鮮にある財産の処理については明文の規定がありまして、両国間で協議をするということになっております。また問題となっております平和条約第4条(b)項、すなわち日本が財産処分の効力を承認するという意味も、その条文並びに一般国際法の原則、通則によって解決せらるべきものであって朝鮮の米軍政府が占領軍としての資格において、日本の私有財産について敵産管理的の処分を行った場合においても、その財産に対する元の所有権は消滅しない、たとえば売却行為が行われたときに、その売却代金に対しては日本側の所有者が請求権を持っておる。つまり売却の処分をしたというその処分は承認するけれども、その財産の元の権利はあるのであるから、売却によって生じた代金は、われわれの方で請求できるのであるという主張をいたしておったのであります。



[017]
改進党 並木芳雄
それから財産請求権の問題でありますが、これは先ほどの大臣の説明で、日本政府の見解というものははっきりいたしました。実はこの点非常に不安であったのでございます。そういう疑問の残るような平和条約を締結して来たのではないかという不安が残っておりましたが、その点ははっきりしたのです。しかしどういうわけでアメリカの国務省あたりが、談話を発表したり覚書を発表したりして、日本に在韓財産権なしというような意思表示をしたのであるか、この点はなはだ疑問になるのであります。

ただいま大臣の説明の中に、米韓協定というようなものをつくったということがございました。米韓協定というものをつくって、日本の在韓財産を朝鮮の政府に引渡すというような協定が実際に結ばれたのですかどうか、またどういうわけでアメリカの方では、はっきりしておる平和条約第4条の(b)項についてこういう解釈をとったのであるかどうか。私どもこれはおそらく誤解か何かだろうと思うのです。もし外電の報ずるようにこういうことが行われたとすれば、これは明らかにアメリカ政府が日本の内政に干渉するか、あるいは平和条約の解釈を曲解しておるものと思わざるを得ない。しかしこの解釈は、当時の審議の際の議事録を見ましても、政府の説明にも、またわれわれからの質問にも触れられておらない、ことほどさように明瞭であったのです。ですからおそらく何らかの誤解であろうと思うのですけれども、こういうことが発表された以上は、日本政府としては当然確かめて、その誤解を解くべきであろうと思いますが、どういう処置をされたか、その結果についてお聞きしたいと思います。

[018]
外務大臣 岡崎勝男
これはただちにアメリカ側にそういう事実の有無を確かめましたところが、そんな発表をしたことはないし、声明も出したことはない。全然アメリカの国務省の関係のないことであるということがはっきりいたしました。でありますからその点は御心配の必要はこうもないと思います。

それからアメリカと韓国との協定と申しますものは、要するに米軍司令官のとりました措置をそのまま韓国側に譲りまして、韓国側でそれを引継いで管理するというのが趣旨と考えます。従って在韓米軍政府がヴェスティング・オーダーによって財産の処分をしたので、その処分はわれわれも認めるけれども、その処分の結果、たとえば家が売られてしまったら、その売られた代金については、家を持っている日本人にまだ請求権がある。家を処分した、売ったという事実は承認する。こういう議論はこの米韓協定がありましても依然としてかわらない、同じことだと考えております。





昭和33年02月17日 衆議院 外務委員会
[114]
日本共産党 川上貫一
私は、時間も十分にありませんので、外務大臣に対して2、3の質問をいたしたいのでありますが、まず第1点は、日韓交渉の問題でありますが、この問題では、われわれ国民の間にまだなかなか割り切れない問題があります。その中で2つ、3つの点をお聞きしたいと思います。しかし政治論的なことは申しませんので、具体的な事実をお聞きしたいと思いますので、簡単でけっこうでありますから、外務大臣からお答えを願いたい。

日韓の共同覚書によりますと、合衆国政府の見解を基礎として云々という文句があるのでありますが、その基礎となった合衆国政府の見解、これはどういうものであるのか、お答えを願います。

[115]
外務大臣 藤山愛一郎
アジア局長から……。

[116]
日本共産党 川上貫一
外務大臣にお聞きいたしておる。

[117]
外務大臣 藤山愛一郎
アメリカの解釈というものは、日本が請求権を放棄したそのことを十分念頭に置いて韓国側が問題を考える、こういうことでございます、一口に言えば。

[118]
日本共産党 川上貫一
それはわかっておりますが、その見解を基礎としてという見解、それは文書なのでありますか、アメリカからの日本あるいは韓国に対する忠告なんでありますか、あるいはアメリカの声明なんでありますか、それを聞いておるのであります。

[119]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
昨年の末に締結されました予備協定におきまして、いわゆるアメリカの覚書の内容は発表しないことに日韓双方で打ち合せておりますから、内容は申し上げられませんが、経緯を申し上げますと、日本の対韓請求権を放棄するかいなかにつきましては、法理的に従来疑いがあったのでありますが、その後日本側でも研究をいたしまして、たまたま平和条約に主役を演じましたアメリカ側との解釈も一致いたしましたので、その解釈の基礎のもとに対韓請求権を放棄するということに決定を見たわけでございまして、その参考といたしまして、アメリカ側の解釈なるものが文書になってできておるわけでございます。

[120]
日本共産党 川上貫一
その文書というのは、請求権解釈の米国見解として日本の印刷出版物に紹介されておるあれと心得てよろしゅうございますか。外務大臣にお願いいたします。

[121]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
これは外部に発表しないことになっておりますが、たまたまある通信の資料に出たことは事実でございますが、この内容が同一のものであるかどうかにつきましては、申し上げることはできません。

[122]
日本共産党 川上貫一
申し上げることができぬとおっしゃるのは、申し上げにくいのでしょうか。あそこに出ておる。具体的に言うてもよろしい。共同通信社の「世界資料」2月、これに出ておる。これが日本の請求権に対するアメリカの見解、こう心得て間違いありませんかということを聞いておる。

[123]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
某通信資料に出ましたものは少し古いものでありまして、私どもが12月の末に協定を結んだときにアメリカ側から提出されたものとは違っております。

[124]
日本共産党 川上貫一
日本と韓国との交渉あるいは会談、それの共同声明の共同覚書の中にちゃんとある。アメリカの政府の見解によりとある。その見解を国民に知らせることができないという。これは了解ができない。日韓共同声明の中に、アメリカ合衆国政府の見解云々と書いてあるのです。ところがその見解というものは国民には知らさぬ。これはどうも通り一ぺんのことでないと思うんですが、外務大臣はこれは奇妙なことだとお考えになりませんか。

[125]
外務大臣 藤山愛一郎
両者の話し合いは、適当の時期に公表することになっております。

[126]
日本共産党 川上貫一
適当の時期に公表ができるものを、なぜ今公表ができないのか、これをお聞きいたします。

[127]
外務大臣 藤山愛一郎
日韓間の交渉というものは非常にデリケートな段階にありますので、私どもは一日も早く抑留漁夫が帰ってくることを願っております。またそのためにベストを尽したいと考えておるわけでありまして、そういう意味からいって、会談がスムーズにいきますようにできるだけ考えて、すべての問題を処置したいと思います。

[128]
日本共産党 川上貫一
スムーズにいくように外務大臣がお考えになっておるということはよくわかります。これは了解できますけれども、これを発表するようなことをしたら、どうしてスムーズにいかなくなるのですか。

[129]
外務大臣 藤山愛一郎
日韓間の話し合いの上から、私は適当の時期まで公表しない方がスムーズにいくと考えております。

[130]
日本共産党 川上貫一
外務大臣はスムーズにいくとお考えになっておるのでありましょうが、国民はどうもそれでは割り切れない。これを発表してはならぬという何か条約上、話し合い上の根拠がありますか。

[131]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
内容の上からいいまして、特に発表してならぬという理由はないわけでありますが、昨年の末、韓国側の強い希望で、しばらく発表を見合してほしいという申し出があり、これに対しまして日本側が承諾をいたしましたので、しばらく発表をしないというだけの理由でございます。

[132]
日本共産党 川上貫一
その点ははっきりわかりました。韓国側の方から、発表してくれるなということがあったので、それを日本政府は受けて、発表しないことにしたという。

そうすると、昨年末に韓国と日本との間に2つか3つの覚書を交換しているはずだと思う。その中にこのものは発表しないということがある。それからそれ秘密の覚書、秘密という言葉が適当かどうか知りませんが、覚書の中に、1910年から45年までの間に朝鮮半島から持ち去った美術品を返還する約束、それから、韓国の日本に対する財産請求権を本会議で討議するということ、それからアメリカの今問題にしております見解のテキストの交換、こういうことが行われたはずだと思いますが、そういう事実がありますか。

[133]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
ただいまの米国の覚書を当分発表しないという約束は、別に書きもので12月31日の当日行なったわけで、初めからそういう書きものがあったわけではございません。それから文化財の引き渡しにつきましては書面上の約束はございません。従いましてそれ以外に不発表の書類はないわけでございますが、ただ従来の交渉の経過を摘記いたしました議事録がございます。従来ともこういうものは発表しない慣例になっておりますので、これは発表されておらない。こういう関係があるだけでございます。

それからもう一つ、対日請求権の問題について全面会談の議題にするということは議事録にはございますが、これは前々から全面会談を開くにつきまして、従来の全面会談で討議になった議題を議題とするという話し合いの結果、そういうものを議題にするということが議事録にうたわれているわけでございます。

[134]
日本共産党 川上貫一
藤山外相に聞きますが、そうすると韓国が日本に請求しようとしておる財産請求権というものは、日本は韓国に対する請求権を放棄したようでありますが、韓国の分、韓国の日本に対する請求権はどうするつもりでありますか。

[135]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 板垣修
先ほど申し上げましたように、平和条約の解釈から日本の対韓請求権はなくなりましたが、韓国の対日請求権は理論上あるわけでございます。しかしながらこれに対してどういう処理をするかは、これこそ全面会談の中心討議になる次第でございます。





昭和36年02月04日 衆議院 予算委員会
[097]
日本社会党(社会民主党) 田中織之進
そこで韓国側が請求権を持ち出してくることは金額は別として必然的なことでありまするが、その場合に、日本としてこれに対してどういう態度で臨みますか。もっと具体的に伺いますと、昭和32年の12月31日に、日韓会談が途絶していたものを再開するということについて日韓双方で共同声明を出しました。その共同声明で、この財産請求権の問題について日本側の請求権の放棄をうたって、会談再開への合意に達したことが共同声明に出ておりますが、この線を出発点として会談に臨まれるのかどうか、こういう意味です。

[098]
外務大臣 小坂善太郎
おおむねさようなことでございますが、念のため申し上げますと、平和条約の第4条(b)項におきまして「合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」という項がございます。なお同条約の(a)においてこれは考慮さるべきであるとの米側の解釈があるのでございます。そうした基本的な態度で臨むわけであります。

[099]
日本社会党(社会民主党) 田中織之進
外務大臣きわめて事もなげに言われるのでありまするが、私は1957年12月31日の共同発表というものは非常に重要な問題を含んでおると思うのです。いわゆる久保田発言を撤回して日本の財産請求権を放棄したということなんでありますが、その根拠は一体何に基づいておりますか。

[100]
外務大臣 小坂善太郎
ただいま申し上げましたように平和条約第4条(b)項でございます。ただ念のため申し上げておきますると、今申し上げましたようにそれはするが、一方において放棄したという事実は考慮するべきである。アメリカ軍政府によってこれは放棄したということをこちらは認めたわけだけれども、その放棄したという事実は考慮されるべきである、こういうこともまた一方にあるわけであります。

[101]
日本社会党(社会民主党) 田中織之進
そういたしますると、この共同声明に従いまして、韓国、少なくとも38度線以南にあった日本人の在韓資産というものに対しての請求権の放棄はもう確定しているわけですね。

[102]
外務大臣 小坂善太郎
これは最終的には御承認を得なければならぬ。同様条約を作れば国会の御承認を得なければならぬ問題ですが、一応今確定したものとする方針のもとに交渉するわけであります。しかし繰り返して申しますと、放棄を確定しても、放棄したという事実は考慮に入れて交渉をする、こういうことであります。





昭和36年02月13日 衆議院 予算委員会
[075]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
先般外務大臣の言として新聞で拝見いたしましたが、日韓交渉の妥結、両国の国交の正常化がことしの前半に目ざしておる最大の懸案だというような趣旨のことをあなたが言われたということを新聞で拝見しました。同時に同じ個所で、この日韓交渉が第二の安保になるかもしれないというような記事も私は見たのであります。そこで日韓交渉の妥結という問題、国交の正常化という問題が非常に重大な懸案として、国民もこの成り行きを見詰めておる。

この交渉の内容についていろいろ伝えられるところによれば、李ラインの問題あるいは国籍、法的地位の問題、対日財産請求権の問題、こういったようなものがいろいろと会議の議題になっておるのでございますが、私どもが日本人としてこの会談の中でなぜ日本人があそこに置いてきた私有財産の問題、いわゆる日本人が韓国に対して有する財産請求権の問題――韓国が日本に財産請求権を持っておることはこれは当然でしょう。若干ありましょう。ありましょうが、日本が韓国に請求しなければならぬ財産請求はおそらく膨大な、韓国が日本に請求するものとはけた違いに大きなものでなければならぬ。あそこに100万近くの同胞が30有余年間にわたって汗水流して置いてきた財産あるいは莫大な会社あるいは産業施設、こういったようなものを価格で算定してみますと、あとで大蔵大臣にどれくらいの額かお聞きしたいと思いますが、何兆億、何十兆億の私有財産だろうと思う。その私有財産は当然韓国に対して、戦時法規に基づいて、国際法の正面の規定に基づいて、われわれは請求できる権利を留保してあるわけだと思う。

それが一つも日韓会談の議題にならない。なぜならないのか。一方、韓国の方は重大な問題として議題にしておる。日本側がそれに対して何らの提案もしておらない。あるいはこれについて請求権を放棄したのだということもいわれております。それは私あとから聞きますが、これが議題になっていないということが、100万の引揚者のみならず、一般国民がどうしても納得がいかない点なんです。この点についてなぜ韓国に対する日本の法人もしくは個人の私有財産を韓国から返還を求めることが議題にならないのか、また将来も全然なるべき問題じゃないのか、その点を一つ詳細に大臣からお答え願いたい。

[076]
外務大臣 小坂善太郎
最初に、日韓会談がこの春の最大の課題だと私が語ったということでありますが、他にもいろいろ問題がございます。特に私は最大というふうにも言うたわけはないのでありますが、最大のものの一つだろうというふうに新聞社の方が御判断になったかと思うのであります。しかし、この日韓間の問題というものは、木原委員御承知のように、非常に変則な形であるわけです。たとえば韓国の代表部というものが日本にあって、これは通称公使という形で現在おるわけでありますが、当然日本の方の代表も先方におっていい。これは国交が正常化すれば大使の交換ということになるわけでありますが、双互の関係にあっていいと思う。

それから李承晩ラインというものを公海上に設けて排他的な権利を一方的に行使する、これも非常に妙な形でありますけれども、これに関連いたしまして、終戦以来常に同胞があそこでつかまったとか、返せとかいう話だけやっておる。非常に近い国としてそういう関係だけにあるということは望ましくないことでございますから、それを正常化したい、これが私の日韓会談に対する基本的な考え方であります。これに関して両国民の間に存在する非常な相互理解不足というものを解消する。ことに韓国人の側においても、今若干お触れになりましたが、日本の統治時代にありましたころのことについて非常に激しい感情の残滓もある。こういうものはやはり近い国同士の間に氷解ずることが国際的に必要でないか、こういうことであるわけでございます。

そこで後段のお問い合わせの問題でございますが、これは御承知のように1945年に軍令によりまして、韓国にありましたわが方の財産については取得し所有するということに、米軍がいたしておるわけであります。48年にこれが韓国へ引き渡されておるのであります。1951年に平和条約ができまして、その4条(b)項におきまして、引き渡されておるという現状を認めたのであります。

そこで1952年に日韓の交渉が最初に行なわれましたときに、ただいま木原さんが言われたような趣旨をもって、わが方から、占領軍は戦時国際公法に認めたことしか行なえないのであるから、これは私有財産には及ばない、従って45年の軍令においては、これは管理したにすぎないから、管理権の移転というものはあったけれども、それを認めたにすぎないのだという主張をしたわけでありますが、これがもとになりまして、これはいたく韓国側を刺激いたしまして、先方が激高して、それ以来交渉がとだえた、こういうのであります。

そこで、この解釈についていろいろその後も研究いたしました結果、1957年、いわゆるアメリカの解釈というものがあるわけでありますが、そのアメリカの解釈というものに対して、日本は、この解釈は妥当なものである、かように認めておるわけであります。この点は先般田中織之進委員に対してもお答えしたことでありまして在韓の日本財産というものはさように先方に譲り渡したのであるけれども、そうした事実は頭に置いて請求権の交渉の際には考えるようにする、かようなことになっておるわけであります。

そこで、そうした解釈でございますが、従来一度そういうことを主張したのに、なぜ57年にさようなふうなことを認めたかという問題でありますが、今次の戦争におきまして、従来の国際法で認められなかったような異例の措置が連合国によってとられまして、その結果が平和条約によって承認されたことは、他にもそうした例があるわけでございます。たとえば連合国内にあります日本国民の財産は、私有財産であるにかかわらず没収されております。これは平和条約の第14条によってでありますが、また中立国にあります日本財産も、赤十字国際委員会に引き渡されるものとされておるのであります。これは平和条約の第16条であります。さようなこともございますし、平和条約第4条(b)項による解釈というものは、こういう解釈をするのがすなおな解釈である、こういうことになりまして、1957年にさようなことは日本も認めておるわけなのであります。

ただ繰り返して申し上げますが、在韓の日本の財産はそのときに先方の所有になったということを認めるということは、その認めるという事実を頭に入れて、次の財産請求権の交渉があります際には考慮をするという建前になっておるわけであります。

[077]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
連合国が占領中に日本人の私有財産を没収したということなんですが、そう解釈されるのだということでありますが、まだ戦争状態が終結していないときに、占領地において個人の敵産を占領軍が没収するというようなことが、一体国際法上認められたことであるかどうか。私どもは国際法を若干読んだものでございますが、占領軍が敵産を管理するということは、法上これは当然なことなんです。しかし占領軍が占領したその敵産を没収するというようなことは、これは戦時国際法の違反であって、こういうようなことを前提として交渉を始められるというところに私は問題があろうかと思うのです。この点についてどうです。

[078]
外務大臣 小坂善太郎
お説のような議論は、私もあろうかと思うのでありますが、しかしそうした議論をいたしました結果、先ほど申し上げたように、平和条約の第14条、第16条でさような異例の、従来の国際法と違った措置を日本が承認をいたしておる、かような関係になっておるのであります。なお条約問題でございますから、条約局長から詳しく御答弁いたさせます。

[079]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
ただいま御指摘のありました通り、普通の戦時国際法の原則によれば、占領地におきまして私有財産の没収ということはないわけでございますが、今次戦争の跡始末の態様といたしましては、そのような異例の措置を平和条約で日本が承認したという格好になっておるのであります。

同じようなことは、大臣が先ほど申されたように、14条関係の旧敵国における財産、16条関係の中立国における財産というようなことにおきましても、普通ではあり得ない措置を平和条約の結果として日本は認めておるのでありまして、やはりこれと同じような性質の措置であろう、かように考えております。

[080]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
平和条約によって認めておるのだと言われますが、この点についてはあとであなたにお伺いしますが、大体アメリカの法律で戦時中に――これはアメリカの大統領の命令がアメリカ軍の占領地における行動の基準になるわけなんです。アメリカの法律、アメリカの大統領の命令の中でも、占領地の個人財産、敵産を没収するという規定は何もないじゃないですか。アメリカにそういう法律がないものを、軍司令官がどうして没収することができるのですか、その点どうです。

[081]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
本問題の一番もとになりますのは、1945年12月6日に在朝鮮の米軍司令官の出しました軍令第33号でございますが、この33号には、御承知のように在朝鮮日本財産は米軍によりヴェストされ、オウンされるというふうに書いておるのでございます。従ってヴェストされ、オウンされるというのはどういう意味かということになるのでありますが、これはいろいろの論もありましたけれども、その周囲の状況その他から考えまして、やはり最終的に所有権が移転するという解釈でこの軍令が出され、またそのような解釈で米軍からこれが韓国側に移譲され、また平和条約におきましては、この4条(b)項というのは、わざわざ韓国側の注文によって入った条項であるという経緯があるのでありますから、このような経緯から見ましても、これはそのような意図のもとに作られた条項であると見るのが、やはり妥当な解釈であると考えざるを得ないのでありまして、従って政府はこの解釈によって日韓問題を処理したいと考えておる次第でございます。

[082]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
私の聞いているところでは、アメリカの法律の中には占領地の敵産を、私有財産を没収することができるという規定は、全然ないということを聞いておる。そういう大統領の命令かあるいはアメリカの法律がありますかどうか、お伺いしたい。

[083]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
アメリカの法律あるいは大統領の命令がどのようなものであるかということは問題ではなくて、その軍令の解釈の問題でございます。従って軍令の解釈としてこのような解釈がとられるということでありますので、これは日本としてもいたし方ない。この解釈による以外はないところでございます。いろいろの議論もあり得たわけでありますが、しかし平和条約の規定によりまして、これを最終的に承認しているということは曲げることはできないものであると考えております。

[084]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
アメリカの法律によってアメリカの占領軍が行動をするのでしょう。アメリカの法律にないことを、私有財産を没収するという規定もないのに、軍司令官が、勝手に敵産である日本人の私有財産を、どうして没収することができますか。私どもが言うのはそこのところなんです。だからこれは敵産管理、アメリカの法律により、あるいは国際法によれば、これは当然占領軍が占領をした地域における敵国人の個有財産を管理する。占領軍司令官が管理をするということになっているのでございますから、この範囲を越えて軍司令官が勝手に敵国人の財産を没収するというようなことはできるはずがない。アメリカの法律によってもできないし、あるいは国際法によってもできない。できないことをあえて軍司令官がやったということになれば、これは軍司令官の国際法の違反であって、こういうものは効力がないじゃないか、こういうものをどうしてあなた方は認められて、その前提に立って日韓交渉を妥結されようとされるのか、その点が私にはわからない。

また平和条約によって日本は承認したということをおっしゃいますが、平和条約の第4条の(a)(b)を見てみますと、日本人の私有財産については、その処理はこの平和条約ではやってないじゃありませんか。将来の特別取りきめ、韓国と日本との取りきめによるのだという趣旨に、第4条の(a)(b)両項を通読してみると、解釈しなければならぬ。またそれが妥当な解釈だと私どもは思っている。だからあなた方の言われる、アメリカの軍司令官が日本人の私有財産を没収してそれを韓国にやったのだから、移転したのだから、トランスファーしたのだから、もはや日本に私有財産の請求権がなくなったのだというようなことは、これは許されません。国際法上も筋が通らないし、またそれでは日本人の立場が一体どうなりますか。30何年朝鮮外地で営々として営んできたその財産を、何にも持たぬで、たった1000円もらって引き揚げてきて、そうしてその財産はアメリカ軍が管理してくれているのだから、当然後日日本に帰ってから、戦争が済んで平和条約ができた上は、アメリカの管理権がなくなってくれば当然こっちに返るか、あるいは賠償との引きかえになるかもしれぬが、そのときはいずれも無償で没収をされることはないというかたい確信を持って、日本人は引き揚げてきている。いまだに返還を期待しているのです。それをあなた方のように、アメリカが軍司令官の軍命令で財産を没収して、そして韓国にこれをトランスファーしたのだから、もう日本としてはどうすることもできない、そういったような国際法を無視し、国際慣例を無視したようなことをどうした基礎にしてあなた方は日韓交渉をやられるのか。もしそういうようなことで日韓交渉をあなた方が妥結するということになれば、これは先ほど言ったように第二の安保問題ですよ。これはゆゆしい大事がここから起こってきますよ。私はこの質問をするために財産の帰属関係について、平和条約なんかも見てきました。見てきましたが、将来の取りきめに待っておるので、平和条約では財産の帰属関係については一言も触れちゃおらぬじゃないですか。ただ日本が承認したのは、この4条(a)項、(b)項にある通り、そういったアメリカの敵産管理によって処理したことを承認しておるのであって、財産を没収したことを日本は承認してはいないのです。また、承認するといっても、個人の私有財産を放棄してしまうこと、国家が勝手に、国民に相談なしに、議会に相談なしに、そういうような勝手な措置をすることができますか。これは国家の越権ですよ。国の財産を国が放棄するというのだったら、これは話はわかる。自国の国民の個人財産、私有財産を国が勝手に、もう要りません、返還してもらわぬでもいい、要りませんというようなことをどうして言えますか。あなた方の態度はどうもおかしいと思う。いま一回御説明願いたい。

[085]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
ただいま御指摘になりました平和条約4条の解釈でございますが、これは(a)項、(b)項両方ともあるわけでございまして、その(a)・(b)両方を一緒に考えなければならないわけでございます。(a)項によれば、別個の取りきめを結ぶということがございますけれども、同時に(b)項におきまして、それらの地域におきまして米軍司令官のとった日本財産に対する措置は承認する、その効力を承認するという規定があるのであります。

従って韓国につきましては、いわゆる軍令第33号の効果、効力を日本は承認しておるのであります。その軍令第33号というものがやはり日本財産の没収である、日本財産を、最終的に所有権を奪ったものであるというふうに解釈せざるを得ないのでありまして、従って平和条約によってこれはすでにきまったところであるということでございまして、平和条約以外にあらためて日本人の財産を放棄するという問題ではないのでございます。

[086]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
アメリカの軍政府による財産処理の効力は、なるほど承認したことになっているかもしれぬ。しかしそれは財産処理の効力を承認しているので、財産の没収とかあるいは所有権の移転とかいうようなものの承認の意味じゃないのであります。それを承認したというのだったら、第4条(a)項は――いささか法律論議になりますが、(a)項は全く意味がなくなるじゃありませんか。そしてまた大体アメリカが戦時法規を無視して――他人の財産を、たといそれが敵国人の私有財産といえども、これを没収することができないというのは世界の原則なんです。その原則をアメリカが破って没収したというようなことは、私どもは考えられないし、また考えたくないのです。

これは敵産の管理の効力を日本が承認したということになろうかと思うのです。だから私どもは、財産請求権について、まだ両国の取りきめが未定のままになっているというふうに考えるのでありますが、この点、将来どうなりますか。

[087]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
第4条(a)項は、朝鮮ばかりでなく、広くいろいろな地域に、日本から離れましたいろいろな地域に適用があるわけであります。(b)項は、別に朝鮮ということは特に限定はしておりませんけれども、アメリカ軍司令官が日本財産について何かある措置をとったということになっておる。それが具体的に当てはまるのは朝鮮であります。従って(b)項があるから(a)項が要らない、有名無実になるということにはならないのでありまして、従って(b)項は朝鮮についてのいわば例外的な規定であると見ても差しつかえないと思うのであります。

またこういう普通の戦時国際法で認められないような措置を日本は認めるべきではないという御意見、まことにごもっともな御意見ではありますが、これはやはり平和条約でこのような異例な措置を認めておるのでありまして、ほかにも、たとえばアメリカやイギリスその他の旧敵国にありました財産、これも私有財産でありますから当然本人に返るべきでありますが、平和条約でこれも没収されておるのであります。まして中立国にある私有財産まで、これは国際赤十字に渡せということになっておりまして、そのような異例な措置が平和条約の結果、戦勝国と戦敗国との間にきめられるという事例は、必ずしも例がほかにないでもないということを御了承願いたいと思うのであります。

[088]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
これは条約局長、あなたのだいぶ言い過ぎですよ。そんな、アメリカが国際条約を無視して――戦時国際法では、私有財産は絶対没収をしないというのが大原則です。また過去において私有財産を没収した例はないじゃありませんか。第一次の世界大戦のときに、あのドイツ及びイタリアの終戦処理の状況によりましても、ドイツからポーランドが独立をした。領土を割譲されて独立をした。しかしあのポーランドにあったドイツ人の個人財産、私有財産、この私有財産は没収されることなく、補償を受けて、きれいにドイツ人に返されておる。イタリアにおいても同様のことがなされておる。今日まで、敗戦国の国民の私有財産が没収されるというような例は一つだってない。

現に日本の国内では――朝鮮では私有財産を平和条約によって没収したとあなたはおっしゃいますけれども、日本の内地では、一応接収はしたけれども、米軍は講和条約ができると、その接収したものを日本の政府に返しておるじゃありませんか、貴金属なんか。あなた御存じでしょう。金とか白金とかこういったようなものを接収した。接収したが、講和条約ができたらこれを返しておる。朝鮮だけ没収したんだ。内地は没収したんじゃない、管理だ。内地だけは管理だが、朝鮮は没収だ、こういう解釈がどうしてできますか。朝鮮にあった日本人の私有財産と日本にあった日本人の私有財産との取り扱いを、どうして区別されますか。

[089]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
御指摘の通り、日本の国内におきましては、日本の私有財産をアメリカ占領軍が没収したということはないのであります。またそういうことをする必要も実はなかったと思うのでありますが、朝鮮におきましては、遺憾ながら日本の私有財産は全部没収するという措置をとったのであります。どういう理由でということにつきましては、アメリカ側にもいろいろ聞いてみたこともあるわけでありますが、それは結局、朝鮮というものが日本から離れてあらためて一つの独立国になる、そういう際に財産関係をきれいさっぱりにしておくべきだという考えから、このような異例の措置をとったということであるのであります。

[090]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
何度も同じことを繰り返すようですが、そういうようなことはありません。第一、そんなことを容認するということになれば、アメリカは世界の敵じゃありませんか。戦時国際法を無視して、個人の財産を占領地で没収するというようなことは、これはアメリカにとって大きな不名誉ですよ。そういうことをやってははいけない。いけないことをアメリカが、一番国際法を重視することを建前としておるアメリカが、そういうことをやるはずはないし、またアメリカの法律の中にも、敵産を没収するというような規定はないじゃありませんか。(「歯舞、色丹はどうなんだ」と呼ぶ者あり)歯舞、色丹はあとからやるから、待て。――没収することができないという明らかなことをアメリカがやるはずはない。だから、それをアメリカがやったのだといって、この膨大な日本人の私有財産を放棄して、そうしてその放棄したという上に立って今後の日韓交渉をやられるということについて非常に国民は不満を持っている。だからその点をあなた方にここで善処してもらわなければならない。

[091]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
何回も同じお答えをするようでございますが、異例な措置ではございますが、平和条約でその効力を承認しておるのでありまして、またアメリカの軍司令官のとりました措置が、アメリカ政府あるいはアメリカの陸海軍の総司令官である大統領の命令に基づいたものであることは間違いないのでありまして、なお前々から大臣から御説明いたしましたように、この財産はアメリカに没収され韓国に渡ったのでありますが、同時に日韓間で財産関係の協議をいたします際に、その事実は当然考慮に入れるということになっておる次第でございます。

[092]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
われわれはこれは没収されたものではない、あくまでも敵産管理を承認した、アメリカの占領軍が行なった敵産管理に対する承認を与えておったものであって、将来これは韓国と日本との間の取りきめによって、いわゆる日韓会談の過程で解決をされる問題だというふうに主張するのでございますが、時間もだいぶ経過しますし、あと継続することができませんから、ただその点だけをあなたに、政府に強く主張を申し上げて、今後とも善処することを要望いたします。

そうすると今大臣はアメリカが没収したということを考慮に入れるのだということをおっしゃった。それは具体的な意味は何なのですか。どういう考慮になるわけなのですか。

[093]
外務大臣 小坂善太郎
今までお答え申し上げたように、4条(b)項によって放棄した、しかし(a)項によって新たに取りきめる、こういうことになっておるわけでございますから、その放棄したという事実、それが相当に膨大なものを放棄した、こういう事実を頭に入れて(a)項の取りきめのときの交渉の際に考える、かようなことでございます。

[094]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
そうすると、放棄したということを考慮に入れるということになりますが、その点については韓国側も考慮に入れることを了解しておるのですか。

[095]
外務大臣 小坂善太郎
これは先ほど申し上げたように、今木原委員のおっしゃる戦時国際法からするところの管理権にすぎないという主張などがあった経過から見て、1957年にアメリカ解釈というものに日本は同意して、これを日本の解釈としょうということにして、今も先ほどからお話ししたような経緯になっておるわけでございますが、そういうことで考慮に入れるということになっているのがアメリカ解釈であり、日本が同意した解釈である、この点については韓国側もさようなことを了承しておる、こういうわけでございます。

[096]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
日韓会談の一番のガンは李承晩ライン、平和ラインと、それからこの財産請求権の問題だということを聞いておるわけです。考慮に入れる、日本が莫大な個人財産を放棄したということを考慮に入れるということになれば、外交のしろうとのわれわれとしましても、しろうと考えですが、そうすれば、その日本が放棄した財産のほんの何分の1かにすぎない韓国の財産請求権を、この日韓会談の中で執拗に韓国が要求してくるという態度を、あなた方の会談の外側に私どもがおってこれを見る場合に、どうも納得できない。

韓国の財産請求権といったって、これは未払い賃金だとか、恩給だとかいったようなものでしょう。そういったようなものは、日本が放棄した財産から比ぶれば、その価格から比ぶれば、これはとうていものの数ではないと私は思う。そうすれば、それを放棄したことを考慮に入れるということになれば、当然そういう財産請求権を韓国が主張して、会談をデッド・ロックに今日まで乗り上げてきたということについてはどうも納得がいかない。

だから私どもしろうとが推察するのに、日本とアメリカとの間にはそういったことを考慮に入れるということが了解できておるが、一方韓国にはその了解ができていないのではないかというふうに考えるわけなんです。この点どうなんですか。

[097]
外務大臣 小坂善太郎
考慮に入れるということは、結局プラスとマイナスがあって、それを考慮に入れていくわけでございますから、場合に上ればプラスだと思っておったものがマイナスだということもあり得るわけであります。ところが、そういう点について非常に膨大な期待権を持っておって、それが交渉の障害になるという場合もあり得ると思うのであります。

最近いろいろと先方の新聞等にも出ていることなども見ますと、漸次この問題が了解されつつあるやに見えるのでございます。そのことだけでも交渉の効果というものはあろうかと私はひそかに思うのであります。

[098]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
これは先般そういう事実はないというので外務大臣は否定されましたが、この日韓会談の財産請求権の問題にからんで、日本が金額まであげて、6億ドルの対韓援助資金を出すというようなことが韓国側の新聞から報道をされました。これは先般田中委員の質問の中で外務大臣は否定されましたが、そういったようなことで、いわゆる対韓請求権というものとのマイナスが、それが形を変えて経済援助という方向に変わって、それが具体化してくるというようなことはありませんかどうか、その点伺います。

[099]
外務大臣 小坂善太郎
結論から申し上げますとございません。さような6億ドルなんということは毛頭考えたこともございません。





昭和36年02月24日 参議院 本会議
[031]
外務大臣 小坂善太郎
総理からお答えがありましたので、私からお答えすべき問題は、主として在韓日本人財産返還の問題かと思います。

御承知のように、韓国にある旧日本人財産に対する請求権は、サンフランシスコ条約の第4条(b)項によって消滅いたしたものであります。しかし、この(b)項において在鮮米軍政府のとった日本財産に対する処理の効力を承認するというこの規定があるわけでありますが、韓国側においては、在鮮米軍司令官の出した軍令第33号によって、在朝鮮日本財産の所有権の移転がなされて、これがあとで韓国に引き渡されたものでございます。

昭和32年末、日韓間に抑留者相互釈放及び第四次日韓会談開催に関する取りきめが成立いたしましたる際、サンフランシスコ平和条約第4条(b)項の処理の当事者である米国政府が、この項の解釈に対する覚書を示しました。その覚書の要旨は、在韓日本財産に対する請求権は、平和条約第4条(b)項によって消滅したけれども、この日本の請求権が消滅したという事実は、日韓間において、平和条約第4条(a)項に基づく請求権問題に関する特別取りきめをいたしまする際に、その交渉が行なわれまする際に、考慮に入れらるべきである、こういうことであります。すなわち、この覚書を日韓双方とも確認いたしたのでありますから、日本政府としては、今回の会談において、この解釈を基礎として請求権問題を処理していく方針であります。

ヘーグの陸戦法規のお話がございましたが、これに関係いたしまして、結局サンフランシスコ平和条約第4条(b)項でこの処理を承認しておるのであります。こうした私有財産権はあくまで管理権が移るのであって、所有権は移るものでないという解釈は、へーグの陸戦法規によるところのものでありますけれども、そうしたことはすでにドイツに対しても行なわれておりますし、また他に平和条約第14条並びに第16条において、旧敵国並びに中立国におけるものまでも、さような規定がございまして、日本政府としてこれを承認しておりますので、この問題は平和条約とともに解決された問題である、こういうことを言わざるを得ないのであります。

以上をもってお答えといたします。(拍手)





昭和36年03月01日 衆議院 外務委員会
[099]
日本共産党 川上貫一
私は外務大臣に対して2、3の質問をしたいのでありますが、具体的に御質問いたしますから、解釈論はいたしませんから、時間も貴重なのでありますから、簡単にお答え願いたいと思います。

まず第一に、外務大臣は韓国に対する請求権の問題、これは平和条約の第4条の(b)項によって消滅した、こういうように答弁なさっておられまするが、これはこの政府の解釈はいつごろからそういうことになっておりますか、これをお伺いしたい。

[100]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
大臣にかわりまして御答弁申し上げますが、この解釈は昭和32年、1957年の12月31日からさような解釈をとっておるのでございます。

[101]
日本共産党 川上貫一
そうすると、外務大臣はこの請求権の放棄をしたのは覚書によったのじゃない。覚書という言葉であったかどうか、とにかくアメリカの日本の在韓財産に対する(b)項の返還についての覚書、これによったものじゃないのだ、(b)項によって消滅したのだ、こう言うておるのでして、これは法制局長官じゃない、外務大臣にお答えを願いたい。

[102]
外務大臣 小坂善太郎
1951年平和条約ができました際に、4条(b)項で認めたわけです。その(a)項であらためて協議するという問題について1957年12月31日の解釈、アメリカ側が出しておる解釈を日韓双方で認めた、こういうことでございます。

[103]
日本共産党 川上貫一
そうすれば、平和条約調印の時分にもう日本政府は認めたのですか。

[104]
外務大臣 小坂善太郎
理論的にはそういうことでありますが、問題は戦時国際法で私有財産権は失わないということがあるので、いろいろその後においていきさつがあったわけですが、どうにもしょうがないということになったのが1957年の解釈ということになっております。

[105]
日本共産党 川上貫一
それはどうしてなったのですか、初めそうでなかったのが32年の12月になったというのでしょうが、どうしてそうなったのですか。

[106]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
これは平和条約に調印いたしまして、すぐ日韓間の交渉が始まったわけでございます。この日韓間で財産請求問題というものがある意味で非常に大きな問題だったわけでございますが、交渉にあたりまして日本側は交渉の関係上、今と違った解釈を実は交渉において主張したのでありまして、それでずっときたわけでありました解釈というのは、やはり平和条約の解釈としてどうも必ずしも適当でないというふうに考えまして、日本政府がはっきり今から3年前にこの解釈はやはり不適当であったから、こういう解釈にするということで、従来の解釈を撤回いたしまして、新しい解釈を提示したわけでございます。従って現在から申しますれば、初めから平和条約の解釈はそういう解釈であるべきであったという考えを日本政府はとっておるわけでございます。

[107]
日本共産党 川上貫一
考えてみたら、間違うておったから直したというのですか。

[108]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
それは日韓間に相当困難な交渉をしております。交渉の際は、初めは自分の方に都合のいいいろいろな議論をするのは普通人の間の交渉でも同じことでございまして、交渉がある段階に進みますと、おのずからそこに歩み寄りというのが行なわれるのでございます。交渉上そういう一種の戦術をとっておった、かようなことでございます。

[109]
日本共産党 川上貫一
あまり長く聞きませんが、そうすれば、この覚書で放棄したということをちゃんと方々に言うておる。日本が考えたんじゃない。アメリカの覚書で放棄したのだ、こう言うておる。たとえば韓国に対する通告にしても、日本は、大韓民国に対して日本政府が昭和28年10月15日に久保田貫一郎首席代表が行なった発言を撤回する。かつ昭和32年12月31日付アメリカ合衆国政府の見解の表明をもとにして請求権を放棄する、こう言うておるのです。これをはっきり聞きたいのです。覚書で変えたのだと政府は言わぬ。日本の政府がいろいろ考えて考えたと言う。何ではっきり覚書によって変えたと言えない。外務大臣に聞きたい。

[110]
外務大臣 小坂善太郎
覚書というものが出て、日本政府もこれはもっともじゃということできめたわけです。

[111]
日本共産党 川上貫一
そういうことを言うなら、覚書と同じものはもっと前に出ておる。ここには中川さんが来ておる。中川さんは覚えがあるだろうと思うのですが、これは5年も前です。アルプス・シリーズ35号に御本人が執筆なさった。それには、アメリカの国務省は昭和27年の3月25日付の在来韓国大使館のアメリカ政府あての書簡への返事の形でアメリカ政府は4月29日付で、日本との平和条約第4条(b)項に対する米政府の見解を明らかにしている。この内容は、日本との平和条約第4条(b)項の規定の結果とし、在韓日本財産は請求権が消滅している。こう言うてきておるのだ。その同じ内容のものを在米日本大使館に対して同年の5月の15日に通報しておるということを、当時の中川アジア局長が執筆しておられるのです。これはどういうことになりますか。

[112]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
川上委員御指摘の通りでございます。このアメリカの解釈というのは相当前から提示されていたのでございまして、その解釈について日本政府も十分検討したのであります。その結果が32年の終わりのあの声明になって出たのでございまして、その点は少しも間違いはないと思います。

[113]
日本共産党 川上貫一
間違いがあるのです。その時分に来たアメリカの大使館に出されたものと、あとで来たものとが同じものじゃということをあなたは言うておる。執筆しておる。それならなぜ在米日本大使館に来ても――その後に岡崎外務大臣は、ここに速記録がありますけれども、非常にはっきりと請求権があるということを言うておる。これは少し考えてみたらどうも工合が悪かったからというような問題じゃありません。国会において外務大臣はこう言うておるのです。これは27年の5月14日でありますが、平和条約の4条(b)項、すなわち日本が財産処分の効力を承認するという意味は一般国際法の原則、通則によって解決せらるべきものであって、朝鮮の米軍政府が占領軍として敵産管理の処分を行なったとしても、その財産に対するものとの所有権は消滅しない。つまり処分を承認したけれども、もとの権利、請求権はあるのである。さらにはっきりと、ヘーグの法規によりましても、占領軍が私有財産を没収することはできない、これは当然であります。日本には請求権はありますと外務大臣が答えておる。この外務大臣は平和条約に調印した吉田内閣の外務大臣です。平和条約の担当者なんです。これが、はっきり、ないと言うているのです。

そこでいろいろ考えましたけれども岡崎外務大臣は考えなかったのか。そうじゃなくて、32年の12月31日にアメリカが覚書を出してきた、この覚書を出してこられて、仕方なしにとは言いませんが、政府は放棄したのであるということが、なぜはっきり言えないかということです。事情は明らかなのに、日本で考えてやったんでありますというようなことをなぜ言わなければならぬか。アメリカの覚書によって改めました、こうどうして言えませんかということを聞いているのです。

[114]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
従来の経緯でございますので私から御答弁申し上げますが、日本政府はアメリカの解釈が、ずいぶん前でありますが、初めて示されたときにすぐにそれに同意したのでも何でもないのであります。アメリカの解釈を四囲の状況を考えながら十分検討したのであります。非常に長く検討の時間がかかったのでありますが、32年末に至りましてこの解釈を採用するのがよろしい、この際この解釈を採用するのが一番適当である、こういう見地に立ちましてその解釈をとったのであります。アメリカの解釈が32年の末に出たから、すぐそれに応じたという次第ではないのであります。

[115]
日本共産党 川上貫一
そういうことを聞いているのではないのです。アメリカのそれが出なかったら変えやせぬのでしょう。アメリカの覚書という表現がよいか悪いか別として、これが出たから変えたんでしょう。このことを聞いているのです。なぜ正直に言えないか。

[116]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
アメリカの覚書が出たから変えたのではないのでありまして、アメリカの覚書に書いてある解釈が適当であると考えて変えたのであります。

[117]
日本共産党 川上貫一
アメリカの覚書が適当であると考えたというような答弁をしているのですが、そのアメリカの覚書というものはどういうことを書いてあるのですか。これをここで明らかにしていただきたい。それを政府が適当だと思うたということが適当であるかないかここで判断しなければならない。だからその覚書の全文をこの委員会に出してもらいたい。そうでなければこれを基礎にして考えましたと言うても、それが何のことやらさっぱりわれわれにはわからない。

[118]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
アメリカの解釈を発表するようにという要請は前からございまして、これは韓国との間でお互いに発表しないということを当時申し合わせておりましたので、一方的に発表もいたしかねますので、目下相談いたしております。きわめて近い将来に発表しようということになっております。ですからその解釈の内容として詳しいことは今のところ韓国に対する関係上申すことはできませんけれども、大体の考え方は韓国における日本の財産が全部韓国政府の手に渡ったというこの事実は、第4条(a)項の特別取りきめを行なう際に当然考慮さるべきだ、いわば一種の相殺思想というものがうたわれているわけであります。

[119]
日本共産党 川上貫一
アメリカの没収という言葉を使いますが、没収した財産が全部韓国に渡った、これは重大な発言だと思いますから、この点についてはあとで克明に質問します。

その前に、政府のお考えによると、アメリカが言うたから変えたのではなくて、日本の政府が考えて変えたということになれば、日本の政府は軍令33号とヘーグの法規の46条は抵触しないと考えておりますか。アメリカの軍政庁の法令33号はへーグの法規以上の効力があるものである、こう考えて政府はこの解釈をとっておりますか。

[120]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
アメリカが朝鮮で出しましたいわゆる軍令33号というものは、へーグの陸戦法規46条にきめてあるものを越えた措置であると考えております。

[121]
日本共産党 川上貫一
越えた処置であることを認めたのですか。日本政府は33号はへーグの法規を越えたものであると認めた、こう解釈していいのですか。

[122]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
へーグ陸戦法規の規定を越えたアメリカの軍令33号の効力を平和条約第4条(b)項で日本は承認しておる、こういう解釈でございます。

[123]
日本共産党 川上貫一
へーグの法規を越えるようなものをどうして承認できる。そうすれば33号というのはへーグの法規以上の権威があるのですか。日本政府はどういう見解で33号がへーグの法規以上のものであるということをきめたのですか。

[124]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
先般もこの委員会で御質問があったのでありますが、今度の戦争におきましては、従来の国際法の観念を逸脱した行為が非常にたくさん行なわれておるのでございまして、必ずしもこの軍令33号ばかりではございません。日本人の海外にある私有財産が平和条約によって補償なしにすっかり接収されてしまったという事態もございます。日本ばかりではございません。これはドイツの海外財産、あらゆる私有財産が結局連合国によって没収されておるのであります。

さようなことが、結局平和条約によりまして敗戦国が承認するということによって、いわば最終的に決定するのでありまして、この4条(b)項の措置も結局そのような規定の一つである、かように考えます。

[125]
日本共産党 川上貫一
日本の財産がほかのところでも没収されたという問題は、この韓国の問題には適用できません。これは別です。それからドイツの問題を今出されましたが、これは違います。ドイツの条件というのは、連合軍が入っていって、デーニッツ将軍が降伏をしてすぐ逮捕されて、直ちに没収されてしまっております。日本はそうじゃない。日本はポツダム宣言を受諾して、日本の政府に日本の一定の統治を託させて、その上で占領軍が来ておった。従ってドイツの例は日本には全然適用できません。ドイツの例のごときは国際法の前例となるべきものじゃない、こういう解釈をしなくちゃだめなのです。それから日本がよそのところで没収されたと言いますがこれは朝鮮の放棄の問題には関係ありません。つまり(b)項によってこれを認めたということは、朝鮮で行なった軍政庁の33号がへーグの法規に違反しておるのだという前提のもとで日本政府が認めた、こうなるのでしょう。

[126]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
平和条約4条(b)項の規定は、アメリカ軍司令官がとった日本財産に対する措置の効力を承認しておるのであります。従ってとった措置である。いわゆる軍令33号が何であるかという問題がいわば実体をきめることになるのでありますが、軍令33号のすなおな解釈として、これは要するに最終的に所有権を取ったものである、接収したものである、かように解釈せざるを得ないというのがただいまの政府の考え方であります。

[127]
日本共産党 川上貫一
この問題で長くかかるのは、時間の関係上私は好みませんが、そういう解釈じゃだめですよ。(b)項では処分を承認しておる。それだから、処分は承認したけれども原権は残っておるのだという解釈を、調印をした当事者、吉田内閣の外務大臣が国会で主張しておるのです。どこまでも請求権はあるのだ。(b)項で認めたのは処分を認めたのであって、原権は放棄しておらぬと言うておる。あなたは初めから認めたようなことを言うておる。そうじゃないのでしょう。覚書が出たものだから、ここで考え方を改めざるを得なかったのでしょう。そういう言い回しをしないで、これをなぜはっきり言えないかというのです。私はこの問題でいつまでも時間をとろうと思っておりませんけれども、これをはっきりしたければあとの問題が出てきますが、これは工合が悪いですよ。

[128]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
先ほどと同じお答えになりますが、覚書が出たから日本の解釈を変えたということは事実でないのでありまして、覚書と同じようなことは、すでに川上委員御指摘の通り、相当前にも提示されたことがあるのであります。日本政府が、日韓交渉等の関係を十分考慮した上で、従来の解釈が適当でないということで解釈を変えたのであります。

[129]
日本共産党 川上貫一
覚書が出たから変えたんじゃない。そうではないので、前にも覚書は在日アメリカ大使館には書面の格好で来ているのです。来ておるが、この時分にはなお岡崎外務大臣は請求権はあると言うておる。ところが覚書が出てきて、これで32年12月31日に変えた。覚書が出てきてから考えて変えたんじゃない。放棄しておるのは同じ日付じゃないですか。覚書が出てきてから何時間考えるのか。そういう妙な言い回しをしないで、覚書が出てきましたから改めましたとなぜ言えないかと言っておる。覚書が出たのは32年12月31日です。ところが政府がアメリカに通告したのも32年12月31日です。同じ日です。何時間一体考える。

[130]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
覚書と実質的に同様なことはすでに数年前からわれわれ知っておるのであります。アメリカがこういう解釈をとっておるということは知っておるのでありしまて、考える期間と言えばむしろ数年間考えたわけでございます。決して覚書と同時に変えたというのではないのであります。

[131]
日本共産党 川上貫一
そうすれば大臣に質問しますが、それを知っておって岡崎外務大臣はなぜあんなに突っぱったのですか。岡崎外務大臣の解釈が間違っておるのですか。国会で二へんも三べんも答弁しておる。これは外務大臣にお聞きします。

[132]
外務大臣 小坂善太郎
軍令33号は1945年に出ておりますが、その中に、そうした財産を取得し所有しという言葉がある。平和条約第4条(b)項には、「日本国は、第2条及び第3条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」こうありますので、先ほどから平和条約の4条(b)項の解釈として日本の韓国における財産権は放棄されたものと考えざるを得ないということを言っておるわけであります。

しかしながらわれわれとしては、できる限りわれわれの同胞の多年苦心経営いたしましたるところのものを守りたいという気持はもちろんあるわけでございます。その考え方に基づいて、へーグの陸戦法規46条によれば管理権が移転するだけであるという主張をしておったわけであります。これは1952年に日韓交渉を始めてからこの主張をしておった。ただいま御指摘の岡崎外務大臣の言明というものはそれを反映して、さような主張を外部に対してしておるのでありますから、国会でもさようなことを言っておったわけであります。

しかしどうもなかなか日韓双方において話がつかない。一方アメリカの解釈というものが来ておる。そこで結局数年間の考究の結果、やはりこの条約をすなおに読んでみればそういうことになろうかということで、1957年12月31日に、アメリカの解釈というものは承認すべきものだ、すなおに読んでみればこういうことになるということで、それを基礎にして日本政府の考え方を明らかにした。しかしそれと同時に、平和条約第4条(a)項によるところの特殊の取りきめというものは、さっき伊關アジア局長が言ったように、日本がそうした私有財産まで提出しておるという事実を十分考慮に入れるということをまた一方において承認さしておる、こういう関係であろうと存じます。

[133]
日本共産党 川上貫一
考慮に入れるなんということはほんとうは要らぬものなんです。これを考慮に入れなければならぬところにほんとうの問題があるのです。この問題でなお時間をつぶすのは私は困るので、もう長くこの問題は聞きませんが、林法制局長官の解釈は起草者であるアメリカの解釈を尊重して放棄した、そうして32年12月31日に放棄しますということを韓国に言っておるのです。覚書の日付は同じ年の12月31日なんです。考えてもごらんなさい、それが出るまで政府は請求権があると言ってがんばっておるのであります。これははっきり外務大臣は言いませんけれども、岡崎は間違っておったんだということをやはりおっしゃっておるのです。考えてみたらそうじゃなかったというのなら、前の外務大臣は間違っておったから変える――32年12月までは、政府は請求権があると突っぱっておる。ところが32年12月以後は、平然として請求権がないと言い出した。そうして覚書も出さぬと言っておる。率直に、アメリカの覚書によって変えましたとも言わぬのです、これはどういうことなんですか。

そこで、この問題は関連もありそうですからあとで質問することにして長く言いませんけれども、そうするとアメリカは韓国に一体どのようなことをしたのか。韓国が困るとおっしゃるが、韓国は困らぬと言っておる。日本の政府も、うちは困るのだとは言っておらぬ。そうすると、この覚書を出されたらアメリカが困るのじゃないか、どうですか。韓国の外務部次官は、はっきり困らぬと言っておる。これは正式じゃないからとかなんとかいう問題じゃありません。公然と韓国日報に発表され、覚書の全文まで出た。それについて外務部次官は、発表はちっとも韓国は困らぬと言っておる。この一切の連絡を考えてみれば私はわかると思う。岡崎外務大臣が請求権ありと言ったこと、32年12月に覚書が出たこと、その同じ日に韓国に向かって日本政府は放棄をしておること、そしてその覚書は出さぬと言っておること、手のひらを返すごとく政府の見解を変えておる。岡崎が間違っておったのかというと、それもはっきり言えない。間違っておったという内容は言っておるけれども、はっきりと外務大臣は言わない。そうすると、この疑問を解決するのは、アメリカの覚書が出たからこれによって日本は解釈を変えましたという以外には、解釈の仕方がないのです。

ところが先にも言いましたように、その当時の中川アジア局長は、5年も前に出ておるのだということを言っておる。それを政府は突っぱっておる。そうしてみれば、32年12月の覚書が出てのっぴきならぬようになったから放棄したのだと解釈せざるを得ない。それをはっきり言ったらどうかと言っておるのにはっきり言わない。外務大臣は、国会のここの答弁をうまいこと言うのが能じゃない。国の財産権に関する問題並びにへーグの法規に関する問題、アメリカの軍政庁の法令33号に関する問題です。それを適合もしないドイツの例を出してみたり、日本の財産を没収されたと言ってみたり、いろんなことを言って合理化しようとなさる。

これは率直に言って、アメリカが韓国で莫大な資産を略奪しておる、これを合理化する覚書だ。この覚書をなぜ出さないか。それはアメリカが困るのじゃないですか。韓国におけるアメリカ軍の略奪行為を合法化する覚書だ。この放棄の解釈を別項によってやろうとしておる、こう解釈をせざるを得ないことになるから、この点についてはもっとはっきりと答弁するのが外務大臣の仕事ではないのか。委員会でうまく言いのがれしさえすれば、国の政治のすべてのことはうまくいくというものではなかろう。もっと率直にやったらどうかということを聞いておるのです。あらためてお聞きします。

[134]
外務大臣 小坂善太郎
率直にお答えいたしますが、このいわゆるアメリカの解釈を公表するということは、これは伊關局長が答弁しましたように、韓国と打ち合わせた上で発表するということになりましたので、打ち合わせの結果、近い機会に発表することになるだろうということを申しておるわけです。先方からするとやはり先方の事情もあろうかと思いますので、やはりこれは信義の問題でございますから、一度公表しないと約束したものを今度公表するのでありますから、やはり先方の同意を得て公開すべきものだと思います。

それから新聞紙上の金外務部次官ですか、先方の言明がいろいろありましたが、これは私は存じませんことであります。とにかく、先方に問い合わせたら、公表は待ってくれ、こう言うのでありますから、先方はそう言う以上は公表していないと思います。



[139]
日本共産党 川上貫一
次に移る前に、今の問題で一つだけ聞きます。いわゆるアメリカの合衆国の軍政庁の33号はへーグの法規違反であると政府は認めますか、どうですか。

[140]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
先ほど申し上げました通り、へーグの陸戦法規を越えたものであると考えております。

[141]
日本共産党 川上貫一
へーグの法規46条、占領軍は私有財産を没収することができないというのを越えたというのは、違反したということですか。

[142]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
これはいろいろの法律上の理屈はあると思います。つまり陸戦法規というのは一応戦闘の際の行動を律する基準ということであの当時できたものと思います。これはすでに今から50年前にできたものでありますから、現在のような、ことに今度の戦後処理のように長期にわたってある国が占領下に置かれ、そこで占領軍がいわゆる行政を行なうというようなことは、必ずしも予見していなかったというようないろいろな事情があろうと思います。従って、越えたという表現が一番適当な表現じゃないかと思います。

[143]
日本共産党 川上貫一
この問題は、政府の解釈は非常にあいまいであって間違っておると思いますから、留保しておいて、この次の機会に質問します。これは政府の今の答弁では了解できません。

そこで続いて時間の関係上次の質問に移りますが、合衆国の見解の表明、いわゆる覚書というものは、「合衆国軍の管轄内にあった朝鮮の部分における日本の財産は所属を変ぜられて、その後、大韓民国に移転された。」こうなっておると思う。このことをアジア局長もさきに答弁されたと思う。そこで、韓国にあった日本の財産は大韓民国に全部移転されたのであるかどうかを外務大臣にお聞きします。

[144]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
私その点全部であるか大部分であるか、ちょっと今のところはっきりいたしません。多少留保したものがあるかも存じませんが、後ほどよく調べてからお答えいたします。

[145]
日本共産党 川上貫一
全部であるかないかわかりもせぬのに交渉できますか。この覚書によると、日本の財産をアメリカが没収して、それを韓国に引き渡した。この文書は全部引き渡したとなっています。しかもそのことを考慮に入れて、韓国の日本に対する請求権が消滅したか、どの程度充足されたかということを両国の取りきめによって決定せいと書いてある。どのくらいやったかわからぬということで、どのようにして交渉するのです。交渉できないでしょう。

[146]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
その後にアメリカが韓国に渡しますときに米韓協定ができております。その原文を今ちょっと持ってきておりませんのではっきりいたしませんが、大部分が渡ったと思っておりますが、ただいかなるものがアメリカ側によって韓国側に渡されたかという点につきましては、請求権の交渉の過程において日本側が資料を出すことを要求いたしております。それに対して韓国がまだ出しておりませんけれども、今後交渉いたします際には当然そういうことも問題にいたします。

[147]
日本共産党 川上貫一
これはあとで聞きますが、韓国に引き渡されたものは有料ですか、無料ですか。

[148]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
原則としてもちろん無料だと思います。

[149]
日本共産党 川上貫一
原則を聞いているのじゃないです。請求権の問題で交渉を今しておるのですから、原則じゃない、事実上有料か無料かということです。しかしこれは責任者である外務大臣が答えなければだめです。しかも、この日韓交渉というものは、今後われわれは質問を続けなければならぬと思うが、非常に重大な問題なんだ。あいまいにしておいてこの請求権の問題はやれぬですよ。そこで、有償か無償かということがはっきりしなければいかぬと思う。これは外務大臣どうなっておるのですか。

[150]
外務大臣 小坂善太郎
今アジア局長のお答えしたことで尽きておると思いますが、要するに米韓協定の内容というものをわれわれ十分に見なければなりません。しかしこの財産請求権の問題の交渉の過程において当然われわれはそれを見て判断するわけでありますから、今その交渉はそこまで入っていないというのが現状でございます。さっきお答えしたように来週早々から入る、そういうことであります。そのとき当然問題になると思います。

[151]
日本共産党 川上貫一
米韓条約は今持っておらぬというが、私の方は持っておりますから必要があれば出しますけれども、それを今持っておらぬということはない。アジア局長なんかちゃんと宙に覚えておるに違いない。しかしそれはこの問題には関係がないことが一つと、いま一つは、日本の外務大臣は日本の財産がどのくらい没収されたのかまだわからぬ、そのうちどれだけ韓国に行ったかわからぬ、しかもその行ったのが有償であるか無償であるかわからぬ、こういう答弁と解釈してけっこうです。

[152]
外務大臣 小坂善太郎
それは交渉に入る前に言うべき事柄でないということです。

[153]
日本共産党 川上貫一
わかっておるけれども言わぬというのですか。アジア局長、わからぬのですか。

[154]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
私が先ほど申し上げましたように、それは無償で行っておりますが、ただ米軍が取得しまして韓国政府に渡すが米軍が使用いたしております、そのときの多少の例外がございますから、その例外の細目がわからないのでありまして、大部分のものが無償で渡されたことははっきりしております。





昭和36年03月17日 衆議院 外務委員会
[176]
日本社会党(社会民主党) 松本七郎
そうすると、ものさしがなくてこれはなかなか困難だということはわかるのですが、少なくとも朝鮮内に置いてきた日本の資産が総額どのくらいあるか、日本側としてはどの程度に考えておられるのですか。

[177]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
完全なものかどうかわかりませんが、日本に引き揚げてきた人たちからの報告を徴しまして、大蔵省でそういう資料を持っております。私はそれが当時の金額で幾らかということは覚えておりませんが、大蔵省で資料は集められるだけ集めております。

[178]
日本社会党(社会民主党) 松本七郎
それは出していただけるのですか。

[179]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
大蔵省とも相談いたしまして出します。

[180]
日本社会党(社会民主党) 松本七郎
しかし軍令33号によって接収した財産は、これは韓国に引き渡したわけでしょう。韓国に引き渡したという証拠は何でしょうか。

[181]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
48年9月何日でございましたか、アメリカと韓国の間の財政並びに財産に関する取りきめというものがございます。これによって渡しております。





昭和36年10月07日 衆議院 予算委員会
[147]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
日本の対韓財産請求権の放棄に関しまして、前回の通常国会で私いろいろと質疑をいたしましたが、その際には、アメリカの覚書というものが公表されてない。私が質疑をいたした後に、3月9日に至って、この日本の韓国に対する財産請求権の問題について、アメリカ側の覚書が発表されたのでございます。そこでその後、私この問題について関心を持っておりましたので、いろいろと調べて見たのですが、同僚の横路君の、この前のガリオア、エロアの質問のときに、法令の引用をされた、そのことを私知らなかったのですが、それを聞いてさらにもう一回だけあなた方に、なぜ日本が韓国に対して財産諸求権を放棄したかということについて、これはもうすでに、あなた方の見解では、講和条約で放棄しているんだと言っておられますが、さらにくどいようですがお聞きいたします。

日本が韓国にある日本人の公有あるいは私有の財産を放棄するようになったのは、朝鮮軍の司令官が軍令33号によって没収をし、そうしてそれを韓国に移譲をしたからだという御説明でありました。私が調べてみますと、こういう日本の財産を軍令33号で没収をするということを発令をしたのは、昭和20年の12月の6日なんだ。ところが、同じ12月の19日に、当時の国連軍の最高司令官であったマッカーサー、そのマッカーサーはもちろん朝鮮の在韓米軍司令官、この33号で日本の財産を没収したその軍命令の上位の人です。マッカーサー元帥の全軍の軍令というのが出ております。それは、日本の財産を没収するということをやった33号が出て2週間ばかりあとに出ておるのでございますが、これによれば、マッカーサー元帥が管下部隊に対する軍令というのを1945年12月19日付で出しておりますが、これによると、占領軍は、国際法及び陸戦法規によって課せられた義務を順守するということを厳粛に宣言をしておるのでございます。

そうなると、マッカーサーの命令によれば、日本人の私有財産を没収することはできない。没収しない。すなわち、ハーグの陸戦法規――国際法及び陸戦法規によって課せられた義務を順守するのだということを言っておる。その2週間前にマッカーサーの指揮下にある朝鮮軍の司令官が没収するということを言って没収している。その効力を日本は講和条約において承認しておる、こういう関係になっておるのでございますが、純粋な法律上の議論をさしていただくならば、この朝鮮にある日本の財産を没収した朝鮮軍の軍令33号というのは、マッカーサーのこの12月19日発した命令によって効力がなくなってしまっておる。従って、日本人の財産は没収されていないというふうに解釈をするのが私は正しい解釈ではないかと思うし、また、これによって、従来岡崎外務大臣以下この日韓交渉に当たった人たちは、この解釈で私は終始してこられたものだと思う。

それをアメリカの覚書が出るや、この覚書を――1957年です。これを承認するというような経過をたどっているのでございますが、その間の経過が、これは当時の関係者がどうしても納得のいかない点なんです。その後、あの質問をいたしましたあとで、朝鮮あるいは満州からの引揚者の方々より、もう数十通の手紙が私のところにも参っておりまして、この点、もう一回外務大臣からはっきりしたいきさつを聞いてくれという要望がありますので、お尋ねしておきます。

[148]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 中川融
平和条約第4条(b)項で認めました韓国にある日本財産についてアメリカ軍当局がした措置を日本が承認する、この字句の解釈につきましては、実は政府としては終戦直後から終始これについて研究を重ねてきたわけでございます。

ただいま御指摘になりましたようなマッカーサー司令官から出しました麾下の軍将卒に対する指令というものも、われわれ知っていたのでございまして、これはもちろん占領軍司令官として当然すべき命令であります。占領軍であります以上、国際法あるいは戦時法規というものに従わなければならないのは当然でございまして、そういう原則があるにかかわらず、一方朝鮮においては、こういう一般国際法に反した措置をとった。しかもそれを平和条約で承認させられたということの法律的意義については、非常に研究して苦心したのでございますが、この一般命令と朝鮮に関しての特別の命令、これはもちろんマッカーサー司令官のみならず、アメリカ大統領との打ち合わせによってマッカーサー司令官、それの命令によって朝鮮軍司令官が出した指令でございますが、日本の財産を接収すべしとするこの軍令33号の効力いかんという問題でございます。しかし、これは結局一般命令と特別命令という関係でございまして、朝鮮につきまして出しました軍令33号というものは、一見一般国際法からは逸脱しておるようだけれども、これは今次戦争に伴う、今次戦争の跡を始末する一つの政治的な決定として行なわれたものである。従って、一般戦時国際法に基づく占領軍のすべき占領軍の権限、そういうものをきめましたものとは性質が違うのである。しこうして、その違うものを特にやはり将来疑義なからしめるために、平和条約4条(b)項ではっきり日本政府に承認させたのである。こういうのがアメリカの一貫した解釈でございまして、日本政府としては、何とかこういう解釈でなくて、在韓財産を救う道がないかといろいろ努力して研究してみたのでございますが、遺憾ながら、法律解釈といたしましては、やはり平和条約がすべてを決定するということが大原則でございますので、たとい国際法を越えた行為でありましても、平和条約できめましたものは、やはりそれによって合法化されるということを認めざるを得なかったのでありまして、政府といたしましては、その解釈を57年以来とっているわけでございます。





昭和37年01月29日 衆議院 予算委員会
[112]
日本社会党(社会民主党) 井手以誠
次に、対日請求権に関連して言わねばなりませんことは、韓国に対する請求権である。30数カ年にわたって日本が営々として韓国に築き上げた財産というものは、おそらく今の金では数兆円に達するでありましょう。国際法によっても、個人の財産まで没収できるものではございません。私は、日本とアメリカ占領軍、韓国とのいきさつについて本日は触れません。後日の機会を持ちたいと思っておりますが、対日請求権について相談をする場合には、当然、あの覚書の相殺条項で相殺するということによって、日本の対韓請求権というものを私は爼上に乗すべきものだと思う。残念なことには、今日まで韓国に対する金額が明示されていない。公表されていないのである。韓国からは、8億ドルくれ、5億ドルくれと盛んに言われておるけれども、日本からは、日本の権利はこれだけあるということは、私どもは聞いていないのである。個人の日本人の財産まで没収されておる。没収するのはけしからぬ、これは国際法違反だというので、後日あの覚書が出ていることを私は承知いたしておるのでありますが、その相殺条項というものを、この対日請求権の場合には、いわゆる対韓請求権として当然交渉の議題にすべきではないですか。外務大臣、やったことがございますか。

[113]
外務大臣 小坂善太郎
これは、御承知のように、終戦直後の軍令33号によって、アメリカが日本財産を没収しまして、米韓協定でこれを韓国に渡した、そして、日本はその事実を平和条約の第4条(b)項によって承認しているという関係でございます。しかしながら、これについて日本側の主張した場合は、御承知のように例の久保田発言があったわけでございますが、その後交渉が杜絶した。そこで、1957年にアメリカ解釈というものが出まして、こういうものを提供したという事実は考慮に入れるということでございますので、そういうことを頭に入れて交渉している、こういうことでございます。

[114]
日本社会党(社会民主党) 井手以誠
頭に入れておるということは、韓国に残した日本人の財産というものはこのくらいあるということを相手に示しましたか。あなたは、この間外務委員会において、考慮に入れることになるのであるが、場合によっては韓国がプラスと思っておったのがマイナスになるということもあり得るとおっしゃっている。これは当然のことだと思う。日本に対して何億ドルかの請求権があると韓国は思っておるでしょうが、日本はそれよりもさらに上回った請求の権利があるという場合には、請求権というものは相殺されてゼロになることが考えられるでしょう。外務大臣は、この韓国における日本人の財産について、向こうが金額をもって交渉するならば、日本も、相殺の思想によって相討ちの思想によって、韓国にその金額、この程度のものはあるということを、当然お話しになるべきだと思う。考慮に入れる、考えておるだけでは、それは済まぬですよ。金額を示しておやりになっておりますか。

[115]
外務大臣 小坂善太郎
先ほどお答えしましたように、8項目について先方から要求が出てきておる。それについて、現段階においては、これの当・不当ということについてこちらでいろいろ話をしている、こういう段階でございます。

[116]
日本社会党(社会民主党) 井手以誠
あまり遠慮すべきものではございません。言うべきものは堂々とおっしゃい。それではお伺いいたしますが、日本人の財産を占領軍が没収をした。占領軍が没収をして3年あとに韓国に渡されておる。その韓国に渡したいわゆる日本人の財産のリストは出ておりますか。日本人から日本の財産を没収したすべてのものを占領軍がすべて韓国に渡したとか、話によると3年の間にかなり日本の財産が逸散したともいわれております。アメリカに持ち帰ったともいわれております。その点について先般の予算委員会並びに外務委員会においては、外務省は資料を委員会に提出すると約束をなさっておる。外務委員会に提出されましたか。されておるとすれば、本日一つ資料を提出願いたい。日本人の財産のリストです。

[117]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊關佑二郎
米軍が韓国側に渡しました日本人の公私の財産のリストにつきましては、韓国側並びにアメリカ側に対して請求いたしております。アメリカ側からある程度のリストは参っておりますが、まだ完全なものではございません。それからアメリカ側は全部のものを渡した、こう申しております。ただし渡しました上で買い取りました不動産でございますが、多少ございます。それから渡しますまでに、3年間のこれら財産の維持管理に要する経費を多少引いておるということがいわれておりますが、その金額については、はっきりいたしておりません。

[118]
日本社会党(社会民主党) 井手以誠
伊關局長の話では、その表というのは全部ではないとお話しになっておる。あるいは半分であるか3分の1であるかはわかりません。日本人の大事な財産の目録がわからぬで、いわゆる相殺条項によって請求権を論議するというのはおかしくございませんか。日本として堂々と相手と交渉する、請求をする、その資料がないならば交渉は進められぬじゃございませんか。どうしますかそれは。日本人の財産の目録がなくて交渉ができますか、外務大臣。

[119]
外務大臣 小坂善太郎
平和条約の第4条で日本は韓国に対する請求権には応じなければならぬことにはなっているわけであります。そこでこちらにも請求権があるという論は、先ほども申し上げましたように、結局米軍解釈というもので、これが一応の結末をつけた形になっておるわけございます。従いまして、今後の交渉の過程でどういうことにいたしますか、その過程を見ていろいろ判断すべきだと存じますが、ただいまのところは、そういう段階ではないというふうに思っております。





昭和37年02月12日 衆議院 予算委員会
[189]
民主社会党 田中幾三郎
私のお聞きしたいことは、政府も従来この請求権については、韓国に請求してきたわけであります。いわゆる久保田発言によっても明らかな通り、してきたわけでありますが、その権利を国民の意思に関係なく政府が外国との交渉によってこれを認めて、放棄をしてしまった。もし放棄をしないで――まあ数十億になるか、韓国の日本に対する財産請求権よりもおそらく数倍になることは明らかだと私は思うのでありますが、もしそれを放棄しないで、日本になおかつ在韓財産に対する請求権がありとする主張を継続していきますならば、日韓交渉の過程において、私はもう少し強くこちらの債権はどうだということも主張をいたして、日韓の財産権問題については日本に有利に展開できるのではないかと思うし、また国民に対してもそれだけの主張をして、なおかつ最後的にこうだということを言うならば、あるいはあきらめる人もあるかもしれぬ。しかるにこの32年の日韓声明によってたやすくこれを放棄して、請求しないという態度をとったということについては、私は国民とともに非常な不満であります。この点をどういうふうにお考えになりますか。

[190]
外務大臣 小坂善太郎
先ほど申し上げましたように、この請求権の問題は、だんだん先方も事情がわかって参りまして、現在8項目中われわれとしても問題にする、またせねばならぬと考えておりますものは、韓国人において郵便貯金を持っておった者、あるいは国債を持っておった者、あるいは徴用されておってまだ賃金が未払いである、こういう者は、これは請求権を向こうが持っていいと思うのであります。しかしその他の者については、これはまだ交渉の過程でございまするけれども、私どもはそういった膨大な財産請求権、こういうものはわれわれの交渉の際において、それほど――それによってそれを対象として解決するときは、これはなかなか問題がむずかしくなるということは、両国側においても了解してきておるのではないか、かように考えております。





昭和37年03月24日 衆議院 外務委員会
[032]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
この請求権の基礎になっておる問題ですが、1957年の12月31日付米覚書により日本は韓国に対する財産請求権を放棄した。しこうして、その放棄にあたっては、アメリカの覚書にのっとって、対韓請求権を日本が放棄したという事実は考慮される、すなわち、その考慮されるということを、外務大臣は、これは請求権相互に相殺をされるのだ、対等額において相殺をされるその相殺を意味するのだということをしばしばこの国会で言われてきた。

そこで、私は、前国会当時から、相殺にするというのであれば、相殺の基礎になる日本の対韓請求権の金額あるいはその明細というものを明らかにしなければ請求権の問題の解決にならぬじゃないか、こう主張いたしまして、その当時から、軍令33号によって接収された日本財産の明細、及び1948年米韓協定によってアメリカから韓国に移譲された日本の財産のリストを国会に提出してもらいたい、さらにまた、その没収された日本の財産の総額は幾らかということを明らかにしてもらいたいということを要求しておったのでありますが、もはや相当高度まで日韓会談が煮詰まってきておる段階においてすら、まだ没収された日本の私有財産のリストが国会に出ない、また、金額が幾らだということを政府から明らかにされないのでございますが、この軍令によって没収され、それを韓国に移譲された日本の財産の総額について、ここであらためて政府から明らかにしていただきたいと思う。

[033]
外務大臣 小坂善太郎
アメリカ解釈については、何べんもここで申し上げましたが、そういう請求権の問題をきめるにあたって関連がある、考慮する、こういうことでありますから、これは、韓国側が考えるだけでなくて、日本側もこれを考える、こういうことであろうというのがわれわれの主張であります。そこで、いろいろ日韓会談もやっておりますけれども、どうもここで資料を提出しなければならないというような段階まで日韓会談はそこまでいっていない、こういうことでございます。

[034]
委員長 森下國雄
木原君にちょっと申し上げますが、約束の時間が過ぎております。――よろしゅうございます。それでは継続願います。

[035]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
いずれにしましても、日本の対韓請求権の基礎が、たとい放棄はしたといえども、それが対日請求権のとりきめの際に考慮されるということでございますから、一体幾ばくの日本財産が没収されてそして韓国に移譲されたか、これが明らかにならなければ請求権の問題の交渉には私はならぬと思う。特に、また、アメリカから当時1948年に韓国に譲渡された日本の財産については、米韓移譲協定の付属文にそのリストがついておるはずであります。不明だとは言えぬと思う。そこで、これはいつ国会に出されるか、また、日本の放棄した財産が明らかにならなくとも、あなた方の方で今日の日韓会談においてどんぶり勘定的に請求権の金額を確定されるつもりであるかどうか、その点を明らかにしていただきたい。

[036]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊関佑二郎
ただいまの御質問で、アメリカが韓国に日本の財産を移譲しましたときの米韓協定の付属リストでございますが、これは、移譲しましたときに、アメリカが一時借りましたものと、それから買い取りましたもののリストでございますから、ごく例外的な一部のもののリストでありまして、全体のリストにつきましては今アメカリに要求しておりますが、これは非常に膨大なものでありまして、まだ全部そろっておりません。ごく一部しか参っておりませんが、もう少し時間がたちますとあるいは全部そろいますか、古いことでございますので、完全なものができるかどうかと思っておりますが、渡しました総額につきましてはわが方もよくわかっておりますし、アメリカ側の方でもその総額についてはわが方の数字と同じ数字を言っておりますから、総額については間違いございません。

[037]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
それでは、この没収された日本財産の総額は幾らか、明らかにしていただきたい。

[038]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊関佑二郎
これは、交渉の過程でございまして、今のところ発表しないことにいたしておりますが、先方に対しては十分主張いたしております。

[039]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
それでは、いつかの機会に、アメリカが没収した財産の総額及びアメリカがこれを韓国に譲渡した財産のリストを国会に提出される時期がやってくると思いますが、その際はっきり提出するということをお約束できますか。

[040]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 伊関佑二郎
交渉の過程におきまして、交渉ともにらみ合わさなければならぬと思います。それと、リストがまだごく一部しか参っておりませんので、十分そろいました上で、交渉の過程とにらみ合わせながら、発表できるときになりましたら発表いたしたいと思っております。





昭和38年01月30日 衆議院 予算委員会
[182]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
大臣が長々と私に説教されましたが、その説教の趣旨は、要するに、今度の協定の5億ドルというのは、経済援助という名の賠償だ、名前は経済援助だけれども、実際は賠償だと思うて、国民もあきらめてくれと言わんばかりの泣き言ではありませんか。それならば、国民は、すでに不当に国際法に違反して、朝鮮在住30万の当時の在韓日本人が、終戦後私有財産にして1兆2000億といわれておるこの点について大蔵大臣からまた資料をいただきますが、関係者に言わせれば、10万人の個人財産1兆2000億という財産を、当時アメリカの軍司令官の軍令33号によって没収されてしまった。その没収された上に――これは没収か接収か知りませんが、この点についてもあとで外務省の見解をただしますが、それを1947年に、一方的に不法に国際法に違反して、アメリカが日本人の財産を接収して、そしてそれを米韓協定によって韓国にそっくりそのままただでやっておるのです。そうして先ほども言いましたように、韓国政府に対する財産請求権を、李ラインによって抑留された気の毒な抑留漁民を釈放してもらうそのカタに、岸内閣が当時放棄してしまった、もう取れなくなったというようないきさつがある。このいきさつに加えて、また5億ドルを税金で国民が負担しなければならぬということになれば、これはガリオア・エロア以上の財産を取られた人たちにとっては二重払い――5億ドルとして1800億円、人口1人当たり割り当てても、年寄りから赤ん坊に至るまで1人1000円の負担じゃありませんか。1兆数千億円の財産を不法に取り上げられて、韓国にそれがただで与えられる。その上5億ドル、1人当たり1000円の負担で韓国に経済援助をする。しかも、それが百年の計においてまことに日本民族にとって喜ばしいことというならばまた格別、何回も申し上げましたように、韓国は南北に分裂して、そうして統一という悲願のもとに立っておる。今ここで朴政権にこういうテコ入れがされるということになれば、永久に朝鮮民族の統一ができないというような状態の中で、いわゆる反共の保険料として払うのだというようなことを、自民党はパンフレットでPRしておられるようでございますが、これではあまり国民がかわいそうだと私は思う。しかも、あなたはきのう、こうして取り上げられた在韓日本人の財産は、政府が取り上げたんじゃない、軍令33号によってアメリカが一方的に没収したのだから、その財産の補償をする意思はないということを、はっきり井出委員にもおっしゃっておる。こういう中でこの援助という名の賠償をあえてあなた方がおやりになるということについて、私どもはどうしても納得がいかないわけです。

ついでに、大蔵大臣に資料の要求をいたしますが、アメリカが軍事占領と同時に日本の財産を没収した、その没収した財産は、韓国の対日請求権の支払いの場合に考慮するという覚書があるわけなんです。そのために必要なんですから、一体どういう財産、金額幾らぐらいの財産をアメリカが没収したか、その明細について私は以前から聞いておるのですが、その資料の明細を国会に出していただきたい、これは相殺の対象になる債権なんですからということをあなたに要求しておった。あなたは、それは一部はあるけれども、全部はないという前回の答弁でしたが、すでに合意は5億ドルで成立したという段階ですから、もうここに出し惜しみされる必要はないと思う。幾らの財産を当時米軍が接収をしたのか、その点はっきりしていただくし、あなたの手元にある日本人の没収財産の目録を一つお示し願いたい。

[183]
大蔵大臣 田中角榮
木原さんから、先回の国会だと思いますが、資料を提出する要求があり、私も外務大臣も、できるだけつまびらかになればこれを国会に提出をいたしますということをお答えしてあるわけであります。この在韓財産の明細書というものは一体どこにあるのか、また、これがどこで一番的確なものがつかみ得るのかという問題については、先回も申し上げましたが、韓国政府が一番的確なものを持っておると思いまして、韓国政府側に対してこれが提出を求めておるのでありますが、韓国政府側は日本政府側の要求に応じないわけであります。

それからアメリカ軍が当時軍令33号によって接収をしたのでありますから、一体これに対してアメリカ軍は適切なものを持っておるということであるならばもらいたいということで、外務省側も調査を進めておるようでありますが、ごく一部のものしかまだこちらへ届いておらないという事実のようであります。

それから第三には、当時韓国から引き揚げてきた方々が自発的に集計をしたようなものもありますが、これに対しては、自分のものを自分で申告をしたということであり、現在の段階でこれにどの程度の信憑性を置けばいいかという問題に対しては、さだかな結論を得ておらないわけであります。なお、日韓の問題については交渉妥結と言われますが、現在の外交上の状態では、この問題に対して資料を提出できるような状態ではないように考えているわけであります。

[184]
日本社会党(社会民主党) 木原津與志
没収日本人財産のリストを、アメリカからか、あるいは韓国政府からとって、これを国会に出してもらわなければ――この財産の金額を韓国の請求権と相殺するということが、アメリカの32年の覚書にはっきり書いてある。日本が財産請求権を放棄したということが、韓国の対日請求権の場合に考慮せらるべきだということになっておるわけなんです。それで、リストの上でどれくらいの財産請求権を当時日本は持っておったかということが明らかにならなければ、相殺するにもしようがないわけなんです。それが明らかになったということにならねば、これは終局において請求権の問題の合意はできるはずがないと私は思う。ところが、今あなたもおっしゃるように、どれだけの財産が没収されたのか明らかにならないということになれば、これは全く今度の5億ドルの合意というのは、これは積算の根拠に困るのじゃないかと私は思う。あなたの方でどうしてもそれが明らかにならないということになれば、せっかくあなたの方に没収したもののリストの一部はあるのでしょう、アメリカからきたリストが、あなたは一部あると言っていた。一部でもいいから、一応この委員会に、もう最後ですから、一つその目録をお出し願いたいと思いますが、お出しになるかどうか、もし出すとすればいつまでに出されるか、その点を承りたい。

[185]
大蔵大臣 田中角榮
お答えいたします。

アメリカ側から日本政府に届いておるものはごく一部でありまして、これも大蔵省にあるのではなくて、外務省に保管をいたしておるのであります。一部でありますから、現在の段階において、これを国会に提出する時期ではないというふうに政府側として考えておるわけであります。





昭和40年10月29日 衆議院 日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会
[143]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
私がこの条約の経済協力及び請求権についての協定を読んでおりましていろいろと過去の歴史を振り返ってみますと、納得のできない点がたくさんあります。たとえば平和条約の第4条の(a)(b)の解釈について、かつて岡崎国務大臣は、昭和27年の5月14日にこういうことを言っておられます。「私は、この機会に、日本と大韓民国政府との間に従来交渉を行って参りましたその経過の概要を御報告したいと思います。」と言われて、「第一の財産及び請求権の問題といいますのは、サンフランシスコにおける平和条約第4条の(a)項によりまして、両国間で特別のとりきめをして解決することになっておるのであります。同時に、やはりこの第4条の(b)項によりますと、わが国は、朝鮮においてわが国及び国民が持っていた財産に対して米軍政府がとった処分の効力を承認することになっております。そこで問題は、この処分の効力を承認するという「承認」が、どういう意味であるかということになるのでありますが、この点では日韓双方の意見が食い違っておりまして、話がまとまらないのであります。韓国側では日本の朝鮮領有を不法であったというふうに初めから前提をいたしておりまして、かかる不法な領有の上に蓄積された日本の財産は、ことごとく非合法的性質を帯びたものである、従って米軍政府の命令第33号、いわゆるヴェスティング・オーダーと申すものでありますが、及び米韓協定によって一切韓国のものとこの財産はされたのである、日本はもはや何も権利を持っていない、むしろ韓国側は連合国並びに日本に対して賠償に近いある種の要求をし得るものであるというような見解さえ表明して来たのであります。これに対してわが方は、韓国側のこのような主張は国際法上も歴史的にも問題とならぬのだという点を説明しておりました。現にサンフランシスコの平和条約におきましても、日本の朝鮮にある財産の処理については明文の規定がありまして、両国間で協議をするということになっております。また問題となっております平和条約第4条の(b)項、すなわち日本が財産処分の効力を承認するという意味も、その条文並びに一般国際法の原則、通則によって解決せらるべきものであって、朝鮮の米軍政府が占領軍としての資格において、日本の私有財産について敵産管理的の処分を行った場合においても、その財産に対する元の所有権は消滅しない、たとえば売却行為が行われたときに、その売却代金に対しては、日本側の所有者が請求権を持っておる。」と、つまり売却されたときでも、もとの所有者はその権利を持っているんだ、日本人の財産というものは失ってはおらないんだということをはっきりここで答弁されているわけでございます。

ところがこの、政府が1957年の12月31日にアメリカ政府の見解を求べた口上書と日韓間の声明書で、突如として前に行なった在韓財産に対する請求権の主張を撤回したわけです。この突然の変化はどこから起きてきたか、日本の解釈を変えた理由は何であるかということを私はまず伺いたい。

[144]
外務大臣 椎名悦三郎
過去のいきさつでございますが、政府当局からお答えいたさせます。

[145]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
この協定は重要な協定であり、国民の権利義務を含んでいるものでございますし、これは当然政府の責任者がお答えになっていただかなければならない問題だと思います。

[146]
外務大臣 椎名悦三郎
大村の抑留朝鮮人、それからまた日本側としては拿捕漁船等がございましたが、これらの問題の解決の際に、従来の解釈を変えて現在のような状況に至ったのでございまして、その間の事情につきましては、なおアジア局長から詳しく申し上げます。

[147]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
いまの外務大臣の御答弁でございましたけれども、それは正確に一体いつからでございますか。抑留者の問題や拿捕漁船の問題等もございまして、その意見を変えましたとおっしゃったわけですけれども、それは一体いつごろから変わってきたのでしょうか。

[148]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
いま大臣から申されました船の問題、抑留者の問題を解決いたしましたのは昭和32年の12月31日でございます。

[149]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
これは32年の12月31日、1957年ですね。そうしますと、1957年12月31日には、アメリカ政府の見解を述べた口上書と、日韓間の声明書で突如として出したわけでしょう。私はなぜ突如として出したか、その間にどういうことがあってここへきたかということを伺ったわけです。そうしたら、いまの御答弁は、抑留者のこと、船の問題があってこうなったのだ、しかもそれは私が口上書を出したというふうに指定した日と同じわけですね。だからその間にどういうことがあってこうなったかということは何も聞かれていないわけです。だから、その間に何か特別の取りきめなり何なりあってここまできたのかどうかということを伺っておるわけです。

[150]
政府委員(外務事務官(条約局長)) 藤崎萬里
第4条(b)項の解釈につきましては、実は平和条約が国会の御承認をいただきますときには、当時の西村条約局長はちょうど米国解釈みたような説明をいたしておったのでございます。しかし日本側といたしましては、韓国側と交渉いたしますときは、若干交渉技術上の考慮も加えまして、その後いろいろな方面の学者の意見も徴しまして、最大限ああいう主張が可能であるならば、まず日本のイニシアルなポジションとしてはああいう態度をとるべきではないかということで、ああいうベースで交渉いたしたわけでございます。したがいまして、弁解になるようでございますが、あの米国解釈に急転直下変わったわけではなくて、もとは、平和条約が締結された当時は、実は日本政府もああいうふうに国会では御説明いたしておったわけでございます。

[151]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
私はそういうことを伺っているのじゃないのです。何かの協定か何かあって、こういうふうになったのかどうか、そういうことを伺っているのです。

[152]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
いま条約局長がお答え申しましたとおりで、その裏に別に何も特別の申し合わせとか了解等ございません。

[153]
日本社会党(社会民主党) 戸叶里子
少なくとも国民の私有財産を放棄するという問題でございますから、そう簡単に、しかも政府がこの瞬間までは個人の財産は守られているんだということを説明してきているのです。そして急にこの段階になって韓国との間でこういう声明を出しているのですから、やはりその背後には何かの取りきめか何かなければこういうことはできないのです。国民の私有財産を放棄していることになるのですから。ですからそこは大事な問題だと思いますから、もう一度よく説明していただきたいと思います。

[154]
政府委員(外務事務官(アジア局長)) 後宮虎郎
御承知のとおり、サンフランシスコ条約の4条の中であの軍令の効果を認められました条項というのは、最後の署名直前に入ってまいりまして、われわれも非常に驚いたわけでございまして、それで、それまではこの請求権問題については、相互放棄とかいろいろな案が考えられておったわけでございますけれども、米側の最初の立場は、こういうことは両者がさしで話し合えばいい、あらためて平和条約できめておく必要はないという立場であって、大体そのラインでサンフランシスコ条約ができるものと予想しておりましたところ、最後のこのサンフランシスコ会議の直前にああいう条項が入ってきて実はわれわれ驚いた次第でございまして、あれ以来いま条約局長が申しましたような考え方にならざるを得ないんじゃないかという立場だったわけでございます。

ただ、韓国側と交渉いたしますときに、向こうは800億を出してくるとかなんとか非常にいろいろな説があったものでございますから、いま条約局長の申しました交渉技術上の考慮も加えまして、いろいろ法理論を検討いたしまして、一応この在韓財産に対するすべての権利を留保するというたてまえで交渉を続けてきたわけでございますが、韓国側がアメリカにも泣きつきまして、結局あの米側の解釈というものが出たわけでございます。結局あの年末に、あのときに問題になっておりました抑留者の引き取り等一括ひとつこの年末にいままでの懸案をすべて洗って、そうして今後の交渉を軌道に乗せるという考慮から、従来交渉上の技術として突っぱっていた立場を一応譲って、日本側もやむを得ないと考えておりましたサンフランシスコ条約のこの当初の解釈に戻ったというのが実情でございます。





平成22年08月04日 参議院 予算委員会
[228]
自由民主党 山本一太
仙谷長官、日韓基本条約について、条約が締結された当時の韓国は軍政下であり、韓国国内の事柄として一切知らないと言えるのかとも述べている。その発言とこれを併せれば、当然、今私が言ったようなことを韓国が考えるのは当たり前なんですよ。官房長官の発言は重いんですよ。

解決済みの問題なんです、これは、日韓の間では。これは1965年の、ここに資料がありますけれども、日韓基本条約で決着済みで、これはもう釈迦に説法ですけれども、韓国は対日請求権を放棄する代わりに総額5億ドルの無償供与と経済協力を受ける、これを約束したと。個人補償は、これは徴用死亡者のみに限定されたんです。同じ時期に結んだ協定でも、これは両国政府と両国民間の請求権は完全かつ最終的に解決されたとなっているんです。

これ、何で今、今更こういうことを言う意味があるんですか。官房長官、もう一回お答えください。この発言の意図、お聞きしたいと思います。政府の方針言ってくださいよ。

[229]
内閣官房長官 仙谷由人
私も日本政府も、ずっと日韓基本条約の法的効力あるいは法的評価については、全く今山本議員がおっしゃられたことと相違はありません。同じであります。





平成24年06月15日 衆議院 法務委員会
[427]
自由民主党 稲田朋美
しかし、ここに至って、非常に危惧されるべきことが起きました。それは、5月24日に韓国の最高裁が、戦時中に徴用された韓国人の元労働者らが三菱重工と新日鉄に対し未払い賃金と損害賠償を求めた訴訟で、個人の請求権は消滅していないという初めての判断を出したんです。この判決について、大臣、受けとめ方はどうですか。

[428]
法務大臣 滝実
今御指摘のように、韓国の大法院がそういう個別の中身に入った判決をしたというような報道は私どもも受けております。ただ……(稲田委員「報道」と呼ぶ)報道でそういうことは私は知っております。しかし、具体的に、大法院がやったことについて、今の段階で法務省としてコメントするようなことではないというふうに思っております。

これからの問題というのはいろいろまた山あり海ありで出てくるかもしれませんけれども、少なくても、この問題については、個人の請求権については決着済みというのが日本政府の一貫した考え方でございますから、そういう意味で、今後も概括的な議論として終始していくというのがやはりこれからの一貫した、これまでのことを考えれば、それが、ベストとは言いませんけれども、ベターだろうと思います。

ただ、今にわかにこういう個別の問題が出てきたことについては、改めて判決文を取り寄せて、あるいは検討するには値するのかもしれませんけれども、まだそういう段階ではないと思っています。





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