軍事アナリスト 小川和久 2

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平成11年04月07日 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会
[091]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御紹介いただきました小川でございます。この場で私の考え方について述べる機会を与えてくださいましたことに感謝申し上げます。

私は、最初に申し上げますと、日米安保体制を堅持するという立場でございます。ただ、同時に申し上げなきゃいけないのは、日米安保体制を、日本の国益のために、そして日本が世界の平和を確立するために役割を果たすべく、その方向に維持していく、運営していく、運用していくということを前提に、今のお話をしたわけでございます。

そういう中で、私が専門としております外交、安全保障あるいは危機管理といったようなものは、一たびそこで危機と規定されているものが出来をいたしますと、国が滅びるかどうかという事態に立ち至る。ですから、その外交、安全保障、危機管理に関する答案あるいは処方せんと呼ばれるものは、やはり、世界のどこに行っても通用するものでなければ、すべて不合格であるということを前提に考えなければいけない。ですから、やはり、その辺を意識しない議論というものがまかり通るとなりますと、かえって国益を損ねかねないという問題も、同時に議論しなければならないだろうと思います。

そこから考えますと、私自身は、日米安保体制を選んだということは、日本の国益を追求する上で1つの有力な選択肢であり、今岡本参考人がおっしゃったとおり、2つの選択肢のうちの1つである。それを戦後日本国民の過半が受け入れてきたということを前提に考えますと、非同盟中立といったようなもう1つの選択肢よりも、かなり現実性のあるものだと思います。

だから、これをより日本の国益のために生かすべく、どのように我々はかかわっていくべきかということが、恐らく、このガイドラインあるいは関連法案に関する審議で一番求められる部分ではないかと思うわけであります。しかしながら、そこで考えますと、やはり、思想と呼ばなければいけない部分というものが、残念ながら欠落をしているのではないか、宿題になっておるのではないかということを申し上げざるを得ないわけでございます。

とにかく、日本は世界の平和を確立するためにどのような役割を果たしていこうとしているのか、どのようにしてそれをなそうとしているのか、そして、日米安保体制をどのようにしてそこに向けて機能させようとしているのかということが全く不明確でございます。そういうことになりますと、やはり、1つの独立国家として世界の信頼をかち取る上では、かえって疑いを持たれかねないという問題を生起するのではないか。その辺を大変懸念するわけでございます。

私は、話を早く進めようということで、お手元に1枚のレジュメを配りました。これをもとに駆け足でお話をいたしまして、あとは質疑の中で、足りません部分は補っていきたいと思います。

タイトルに「防衛指針論議と日本政治」ということをあえて掲げましたのは、やはり、大変失礼ながら、政治が不在である、あるいは不在に近い、その辺のことを指摘せずにはいられないからでございます。Aのところで、「「日本の国益」が欠落した日米安保ガイドラインの論議」と、あえて決めつけるような言い方をいたしました。大変失礼かと思いますが、その辺のことを真剣に議論していただきたいと思うがゆえでございます。

現在、「米軍への便宜供与」というふうに書いておりますけれども、とにかく、日本の国益のためにアメリカをどのように機能させていくのか、それをどうサポートするのかということで議論が行われている。これは、それなりに1つの筋道を通した議論であろうかと思います。もちろん技術的な問題点というのは、後で必要があればお話しいたしますが、かなり点数が低いものもいっぱいございます。ただ、それはみんなで議論していけばいい。

しかし、もう1つ、アメリカを支援するということをここで議論しても、やはり、日本とアメリカの国益はおのずから違うところがたくさんございます。アメリカが右に行こうと言っても、日本は左に行かなきゃいけない場合もある。それは、国家意思の表明という作業でございます。

国家意思の表明はだれがするのか。官僚がするのか。とんでもない。そんなことでやっているから、官僚主導国家になってしまうんです。それは政治がやらなきゃいけない。国民の代表たる国会の仕事でございます。

とにかく、国家意思の表明を明確にする中で、イエスはイエス、ノーはノーということが明らかになり、アメリカからもあるいは周辺諸国からも、日本に対する信頼と期待と評価が生まれてくるといったような問題であろうかと思います。

ところが、現在の議論は、ややもいたしますと、事務レベルが主体として進めている対米便宜供与の技術的な部分のみが先行し、あたかも、場合によっては、それがガイドラインの議論のすべてであるかのように受けとめられている。これは大変不幸なことでございます。ですから、事務レベルの議論を進めると同時に、国家意思の表明を明確にし、日本の国益を追求するための政治レベルの議論があって、初めて車の両輪、あるいは航空機でいいますところの片肺飛行にならないような形が実現するのではないかと思うわけでございます。

これにつきましては、このレジュメにもありますように、最初のガイドライン、78年のガイドラインでございますけれども、これの中で、前文の中に、既に事務レベルは、自分たちの手に負えないテーマとして、研究・協議の対象としないという3点を挙げております。これは、実は政治レベルで議論くださいといったような問いかけでもあるわけでございます。

それは何か。ここにありますように、事前協議に関する諸問題、それから日本の憲法上の制約に関する諸問題、それから非核三原則でございます。これを、我々はきちんと宿題として議論してきたのだろうか。そして、現在のガイドラインに関する議論に、この話を整合性を持って付与するような形で話を進めているのだろうか。その辺が極めて厳しく問われるのではないかと思います。

とにかく、この辺のことを明確にする中で、米国が何事も日本に相談するような状況が生まれてまいります。そして、日本の利益に関連いたします周辺事態の拡大解釈に歯どめをかけることも可能になります。そういう中で、日本人が最も恐れる、いわゆる戦争に巻き込まれる事態を防止することもできるようになる。そのあたりの問題をぜひ御議論いただきたい。

私は、このレジュメに沿ってお話をいたしますと、Bのところの「「政治レベル」で米国と協議すべき事項」としては、78年ガイドラインの前文がうたいました研究・協議の対象とはしないとした3点について、日本なりの見解を打ち出し、それをたたき台として、米国との協議を進めていくことが重要ではないかと思います。

例えば、事前協議を明確にしていく、これは政党によっては活性化といったような言葉を使っておりますが、このことによって、必要とあらば独立国家としての拒否力を、同盟国アメリカに対しても発揮することができるようになるわけでございます。これを明確にする中で、日本が、アメリカにとっての都合のいい存在であるだけでなく、やはりれっきとした独立国であり、周辺諸国の期待にこたえて平和を実現するような国である、そういった評価が初めて生まれてまいります。これは、日本の外交を進める上で、極めて有効なあり方ではないかと思います。

ですから、そういう中では、日本の平和主義に照らして、同意できる場合は米軍を支援するけれども、不同意の場合は共同行動を拒否する、また施設や基地の提供も認めない、そういう方向を明らかにすることが重要でしょう。そこまでいって、初めて周辺諸国が、米軍の軍事行動を阻止する役割を日本に期待する道を開くわけでございます。

昨年の6月24日でございますが、朝鮮労働党のあるエリートと立ち話をすることがありましたけれども、彼の本音の部分と私の認識とは非常に似ておる。どういうことか。

日朝間の懸案事項であろうとも、日本と協議する必要は実はない。それは何か。苦労して日本との間で約束をしても、アメリカにその約束をほごにするような方向を示唆された場合、日本はアメリカの言うとおり動くではないか。そんな国と約束ができるか。そうであるなら、日朝間の懸案であろうとも、アメリカと直接に話をした方がいいだろう。

これは北朝鮮の本音でありますが、やはりそういう客観的な認識は我々が持ち、その辺の部分を克服していく中で、初めて北朝鮮側からも、日朝国交正常化に向けての積極的な姿勢を引き出すことができるのではないかと思うわけでございます。とにかく、こういった問題は、我が国の安全を高めるのみならず、経済立国の基盤を確固たるものにする極めて重要な要件でございます。

この辺の部分は、もう先生方、既に勉強なさったと思いますが、一昨年の春に新潮社から文庫本で翻訳、出版されました、ベーカー元アメリカ国務長官の回顧録「シャトル外交」という本を参考にすれば明らかでございます。

とにかく、ベーカー国務長官が在任した4年弱の間、世界は激動いたしました。その中で、アメリカの国益をかけて、ベーカーは世界の首脳とトップ外交をやっていく。湾岸危機、湾岸戦争においても、資金の提供と兵力の供給というものを求めます。ただ、日本以外の同盟国は、すべてノーから始まるわけでございます。そのノーと言う相手を説き伏せて、兵力の供給、それから資金の提供を実現していく。それがドラマになっていればこそ、この回顧録は大変おもしろい。

私は、ベーカーの補佐官に、なぜ日本がこの回顧録に出てこないのかと聞きましたら、いや、それはドラマにならないからですよ、アメリカが考えているような外交というのをやっていないからだと、はっきりしたお答えが返ってきたわけでございます。その辺のことは、我々が肝に銘ずべきことであろうかと思います。

それから、憲法解釈の問題に関連いたしましては、日本国憲法をなし崩し的に侵犯することは、これは日本の国益を損ねる問題につながります。ですから、憲法というものは、正々堂々、国民が正面から改正の議論を進めるべき性格のものでございます。ですから、憲法侵犯への歯どめとして、そのような意味を込めまして、集団的自衛権、これは日本モデルというもので結構でございますけれども、そういった可能性を追求するということは、1つ有効なあり方ではないかと思います。

とにかく、日本の選択肢としては、日米同盟を健全に維持することと同時に周辺諸国との信頼関係を確立すること、その2つの問題を同時にクリアすることが求められているわけでございます。

しかし、周辺諸国は、日本がアメリカに対する一定の拒否力を備えることを期待する一方、日本の軍事的自立に対しては大変な警戒感を持っているわけでございます。それに対して、日本としては、とにかく集団的自衛権の行使について日本独自のあり方を示すことが1つの有効なあり方ではないか。そこにおいては、日本国憲法と日米安保条約、そして国連憲章の3者の整合性において、読み込み、また日本モデルを示すことが可能ではないかと私は思うわけでございます。

どういうことかといいますと、日本国憲法は、国連への加盟を否定しておりません。当然ながら、国連憲章のどの条文をも否定していない。その一方、日米安保条約の第1条には、これは国連憲章のもとの条約であるという意味合いのことが書かれております。それに対置される国連憲章の第103条には、そういった条約に対して国連憲章が優越するということが書かれている。

この3者を読み込みますならば、国連憲章の51条にある、国際の平和のために国連の安保理事会が機能するまでといったようなことに対して、日本の集団的自衛権の行使というものを1つのモデルとして提示することはできるのではないか。安保理が機能した時点というのを、1つのテーマが提案をされ、それに対してどこかの常任理事国が拒否権を発動した時点といったような定義もすることができるわけでございます。そこまでは集団的自衛権を行使しながら、安保理が機能したという時点に達したならば、直ちに軍事的行動をとめる、対米協力もこれは撤回をしていくといったような方向というのが、1つの独立国家のあり方として考えられるのではないかと思います。

いま1つ、日本の選択肢の1つでございます非核政策あるいは核政策の明確化でございますが、はっきり言いまして、日本の非核三原則というのはうそっぱちでございます。言葉は悪いんですが。アメリカの方が正直でございます。つまり、本格的な持ち込みであるイントロダクションはしない、しかし、航空機、艦船に積み込む形での一時寄港、これはトランジットと呼んでおりますが、これはやると言っている。だから、そこまで日本は認めるという格好はあり得るわけでございます。

とにかく、日本には核兵器の本格的な持ち込みは今はないかもしれない。しかし、在日米軍基地に張りめぐらされた通信のシステム、あるいはコンピューターのネットワークなしにアメリカの核戦略は機能しないわけでございます。その意味でいいますと、私どもは、核の傘に守られているなんてばかな話ではなくて、核の傘を差している当事者でございます。

ですから、その立場に立ちますと、やはり核保有国から核攻撃を受けるリスクをもアメリカと分担をしてきた、そういったことまで自覚をする必要がある。これは、一昨年6月の、エリツィン大統領によるロシアの核ミサイルの照準外しの宣言で明らかであろうかと思います。こういったことを考える中で、初めて、とにかく後方地域支援などというまやかしの官僚用語が空理空論であるということは明らかになると思います。

とにかく、日本は、アメリカが世界のリーダーでいるために唯一ほかにはない戦略的根拠地を提供しております。日本に置かれた戦力は、とにかく米軍の地球の半分における行動を支えている。ですから、核保有国が日本を核攻撃するという選択を持つということは明らかでございます。そういったことを明確にしながら、我々は日米安保を日本の国益に機能させるべく議論をしていかなければいけない。

その中で、最後に1点申し上げなければいけないのは、レジュメのAの2でございますが、日米同盟の対称性、非対称性に関する議論が極めて不明確である。とにかく日本ほどアメリカと対称的な同盟国はない。これはアメリカ側に証言をさせた速記録も私はございます。こちらが知らなければ向こうはうそをついてくる、そして唯一アメリカが世界のリーダーであるための戦略的根拠地を提供している、そのことを明確に認識しながら、アメリカと良好かつ健全また堅固な同盟関係を堅持していくことが求められている。それが、独立国家としての日本が世界の平和に資する前提条件になるのではないかなと思います。

昨今議論になっております国会の関与などの問題につきましては、ここに書いてあることをもとに、また質疑の中でお答えをさせていただきたいと思います。

御清聴ありがとうございました。(拍手)



[098]
自由民主党 田村憲久
さて、我が国を取り巻くいろいろな環境というものは、冷戦崩壊後、非常に厳しくなりつつあるんであろうな、そんなふうに認識をさせていただいておるわけでありますが、特に、昨今では、北朝鮮からの不審船籍の問題もついこの間ございました。その前にはテポドンが日本の上空を飛んでいくというような事件もあったわけでありまして、このガイドラインに対する国民的な理解というものはある程度高まってきておるのじゃないのかな、そんなふうに思うわけであります。

考えてみますと、旧ガイドラインの中において、もちろん、極東における平和と安全の部分に関しても言及はされておるわけでありますが、お話にもありましたとおり、どちらかといいますと、主に日本の有事に関しての議論が中心になっておる。それから、今回の新ガイドラインに関しましては、周辺事態というものに大変重きを置いてきておるわけであります。

旧ガイドラインから今回の新ガイドラインがつくられ、そして今この関連法案というものの整備をこの国会でしておるわけでありますが、この関連法案が整備されてきますと、以前とどういうふうな形で、米軍と日本の自衛隊との関与といいますか、変わってくるのか。もっと具体的に言えば、どういうふうに日本の平和と安全が保たれるのか。なかなかここら辺というものは、国民にとってはわかったようでわからない部分だと思うのですね。この違いというものをぜひともお聞かせをいただきたい。

岡本参考人、それから小川参考人からお願いいたしたいと思います。

[100]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございます。

私は、新ガイドラインで、例えば40項目の対米支援ということが詰められていく中で、確かにアメリカの立場で見ますと、日本の自衛隊をあるいは日本の国家というものを機能させるということにおいては、かなりメリットが生まれたという評価をしてくるだろうと思っております。

ただ、私が先ほど御指摘申し上げましたように、国家意思の表明をするための政治レベルの議論、これは事前協議の明確化を初めとするものでありますが、それをはっきりしない中では、アメリカの従属国になるという色彩がつきまとうわけでございます。これはアメリカから見て、ういやつというだけでは困るわけでございますね。だから、その部分を明らかにしない限り、日本の外交力に陰りが出てくる問題になるだろう。

だから、新ガイドラインの議論が現在のままである限り、差し引きマイナスになる可能性というものは我々が覚悟をして、それをどう克服するかという議論を同時に始めなければいけないのではないかと思います。

どうも御質問ありがとうございました。

[101]
自由民主党 田村憲久
今お話しいただいたわけでありますけれども、一方ではこれが、今小川参考人の方からはマイナスになる部分もあるという話があったわけでありますが、とりあえず周辺事態というものに対して我が国がどう関与していくのか。そういう意味からしますと、できないといいますか、できたのでしょうけれども、法的ないろいろな根拠の中でなかなか大手を振ってできなかった部分が整理がついてくる、そういう意味では重要な意味がある今回の関連法案なのかな、そんなふうにも思うわけであります。

ただ一方で、周辺事態というもの、これは我々が委員会中いろいろな議論の中でもしょっちゅう出てくるわけでありますが、この周辺事態というものの、地理的範囲というものはさておいて、事態というものが一体何なのか。これが拡大解釈をされていきますと、それこそよく言われますとおり、日本が米軍に引っ張られて、何ら関係のないとは言いませんけれども、平和と安全に余り影響がない部分でも参戦、参戦といいますか、軍事的にある意味では関与していくような、そういう影響が出てくるのではないのかな。これはまさに、ある意味では日本国憲法に反するのではないのか、こういう議論があるわけなんです。

この周辺事態というものの定義、一体何なんですかというのは何遍もこの国会の中でも議論されているのですが、与党の私が聞いておりましても、ある程度わかるのですが漠然としておりまして、多分それは、そのときそのときの事態、規模にもよりますし、その様態にもよるのでありましょうけれども、そのときに米軍と事前に調整をしていく中で決定していくということになるのだろうと思うのです。

問題なのは、日本の平和と安全に重大な影響が及ぼされる事態と言うのですが、この日本の平和と安全に重大な影響というのは、何がどこまでいけば重大な影響なのか、どこまでは重大じゃなくて普通の影響なのか、そこの区切りというのが非常にわかりづらい。国民の皆様方が一番不安なのはそこだと思うのですよ。

そこの部分を、これは政府に聞いてもなかなかちゃんとした答えが出てこないと思いますし、出すこと自体がまた、これは軍事的な部分でマイナスになるという部分もあるのだろうと思うのですが、岡本参考人と小川参考人に、私見で結構でございますので、どういう事態が大体こういう事態に当てはまるのだろうなというのをお聞かせいただきたいのです。

[103]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
周辺事態なる言葉は、これは大変優秀な官僚の悪知恵の産物であると私は思っております。これを考えた人については私は高く評価をしております。ただ、周辺事態なる言葉を使わなければいけなかった日本国のあり方というものは、やはり同時に議論されるべきであろう。

これは、例えば戦後処理というものについて、別に謝罪外交を繰り返す必要はないわけでありますが、やはり310万の戦争犠牲者の霊が浮かばれる形で、周辺諸国の信頼を確立すべく我々は処理を進めなきゃいけない。それが一定の水準にまで到達していれば、例えば、最近中国側が私に対して明らかにしたのは、ドイツの戦後処理と同じレベルであるかどうかをこれからは問うていくということを言っています。

そういったことになっておりますと、自衛隊の行動を通じて世界の平和を実現するために日本が行動するということになりますと、周辺といったようなことを断る必要があっただろうかという問題が出てくるわけでございます。ですから、これはやはり日本側の問題としては、日本国の思想が問われる問題であろう。

アメリカ側からしますと、先ほど御説明申し上げましたように、日本列島という戦略的根拠地は、アメリカ海軍第7艦隊と第3海兵遠征軍の任務区域とぴったり重なるわけでございます。これはハワイから喜望峰まで、地球の半分でございます。この地球の半分を視野に入れながら日米安保を機能させていくというのがアメリカの立場でございます。このアメリカの立場からしますと、日本の立場が極東の範囲といったようなことでとどまるのではなく、より広く日米共同の行動ができるようにしていきたい、それは当然のことではあります。

そういったアメリカ側の気持ちと、日米安保のアメリカから見た現実と一歩近づいたというのが、96年4月の日米安保共同宣言であっただろう。その中で、やはり日本国民が、日本の周りで北朝鮮がきな臭い動きを見せたり台湾海峡の問題というものも話題になる中で、一定の理解を示すだろうということで周辺事態という言葉は出てきたのだと思うのです。

ただ、我々はやはり、そういった根本にある問題というものを視野に入れながら、同時に、日本の国益にかかわる事態に対してどう我々が対処できるかという議論をしなきゃいけない。

北朝鮮の問題については、例えば、先ほど伊豆見参考人のお話にもありましたように、北朝鮮がミサイルを撃ってくる可能性、可能性の問題として1%でもあれば、専門家である我々は備えます。ただ、大きいか小さいかというと、そう大きいものではない。ただ、そういう中で、北朝鮮を中心に世界が回っているような議論はやめろと。序二段と言ったら大変語弊がありますが、相撲でいうと序二段のレベルにある北朝鮮に対して、横綱、大関の相撲をとることを問われている日本がヒステリックになって走り回る必要はない。

そういったこともきちんと押さえて朝鮮半島の有事に対処する、また、台湾海峡の安定にどれぐらい外交力を発揮するか、それがガイドラインの議論の中に含まれてくることが求められているのじゃないかと思います。

どうもありがとうございました。

[104]
自由民主党 田村憲久
周辺事態という認定は非常に難しいのでありましょうけれども、今お話をお聞かせいただいて、整理まではいかないのですが、大体私が考えさせていただいていることと同じ御認識をお持ちいただいたのかなと思います。

この周辺事態というもの自体、私が思いますには、日本国憲法第9条がもしなければ日本が個別に自国の国益のために行うべき行動、それを米軍にやってもらう、その後方支援等々をやる、こういうことなのかな。でありますから、決して、米軍の国家戦略といいますか、そういうものに引っ張られて日本がすべてにおいて関与していくというべきものじゃないだろうな。あくまでも自国の平和と安全ということは国益でありますから、もし日本に9条がなければやっておることであるというものに関しての事態であるのだろうな、そんなふうに認識をさせていただいております。

さて、話は変わりますけれども、実は、後方地域支援が、この中において武器使用を認めていないといいますか、もちろん個別的自衛権がございますから、攻撃されれば、これに対して攻撃をし返すことはいいのであろうといいますか、当然の権利であろうということになるわけでありますが、そのほかに関しましても、それぞれの、例えば後方地域における捜索救助活動でありますとか、またいろいろな部分、邦人なんかの国外からの退去、輸送、こういうものに関してもそうであるのでありましょうけれども、武器の使用は、こういうものは認められておるわけでありますが、これに関しても最低限の武器使用であるということがここの国会においても議論をされておりまして、これで事足りるのか。

特に、後方地域支援に関しましては、もし標的にされれば、当然そこはもう安全な地域じゃございませんから、そこから移動をして待機するなりして、また別の行動に向かっての準備をするというような話であるわけでありますが、やめるわけじゃないのですよね、やめるわけじゃない。その地域から一応離脱して待機をするというような話でありますから、そういうことを考えると、軍事上からいきまして、相手の補給をたたけというのは当然でありますから、帰ってしまうものならば、武力的な威嚇行為なりをして帰らせたら、もうそれで事足りるわけでありますが、どこかで待機していたら、また来るわけですよね。これはもうたたいてしまえ、そういう可能性が出てくるんじゃないのかな。

そのとき、基本的な、自然的な権利といいますか、やられたらやり返すという権利はあるのであろうと言うのですけれども、あくまでも今回の法案を見る中においては、明確な武器の使用というものが認められているわけでもありませんし、これではちょっと危ないんじゃないのかなというような気がして仕方がないのです。

お2人ばかりで申しわけないのですが、この点に関してどのようにお考えになっておられるのか、世界のいろいろな今までの事例から見て、今の日本のこの法律で十分に安全が保たれるのかどうか、御見解を聞かせていただきたいのです。

[106]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございます。

後方地域支援ということについても、これは悪知恵的な用語ではないかと私は解釈しております。

というのは、先ほど来お話を申し上げましたように、日本列島そのものがアメリカのリーダーシップを左右する戦略的根拠地である限り、アメリカと敵対している核兵器保有国が日本に核ミサイルの照準を合わせるというのは当たり前でございます。

過去にそうであったということは、おととし6月のデンバー・サミットにおいてエリツィン大統領が明らかにし、照準を外してくれた。中国の核ミサイルはまだ日本に向けられていると考えるのが常識でございますし、ことしになりまして中国の軍のトップと話したときにも、いつ照準を外すんだいと聞きましたら、いつねらっていると言いましたかととぼけておりましたが、そういう話でございます。

ですから、前方も後方もないというのはこれまでの国会で議論をいただいたとおりでございます。

ただ、そういう中で、例えば、PKO活動の中のPKF、国連平和維持軍に自衛隊を出す場合においても、やはり部隊編成の常識ということを頭に置いておきますと、PKFという軍事組織を使った警察活動においては現行憲法の中でも自衛隊は出せるだろうというのが私の立場でございます。

ただ、同じ国連の平和活動といっても、例えば平和執行部隊あるいは多国籍軍あるいは国連軍といったような形になりますと、軍事組織の編成上、完全に武力行使といった格好になりますし、例えば湾岸において多国籍軍を編成しておる、あるいは国連軍を編成しておるという事態を考えた場合、日本はそこに自衛隊の医官やそれから衛生部隊を中心として後方支援をするということでかかわっても、その部隊が敵からねらわれるという場合はある。そこに攻撃を受けた場合、反撃を担うのはアメリカでありイギリスであり、あるいはフランスであったりイタリアであったりするわけでございます。当然ながら、敵から見れば一つの部隊編成の中での後方支援部隊であり、そこに日本がいるというだけなのですね。

だから、日本としては、そこにおいて問われるのは、国家としてのそういう事態に当たっての覚悟の問題とそれから現状認識の問題であろうかと思います。

例えば、米軍を日米安保において反撃能力として位置づけるのかどうか。これは、朝鮮半島有事においては、別にそこまで議論するまでもなくはっきり反撃能力としてあるわけでございます。

というのは、朝鮮戦争において、国連決議が行われ、国連憲章第7章の手続を全部踏まえたわけではないけれども国連軍が16カ国によって編成され、現在8カ国で維持されておる。国連軍司令部は韓国にあり、後方司令部は神奈川県のキャンプ座間にある。そういう中で、日本国と8カ国の間では国連軍地位協定が結ばれているわけでありますね。

だから、国連決議に基づいて国連軍の主力をなす米軍が北朝鮮に対して反撃をする事態が生じる、これは例えば1発でも日本や韓国にミサイルを撃ち込んだ場合でございます。その場合においては、例えば横須賀を母港とするアメリカ海軍の艦船のうち、トマホーク巡航ミサイルを標準装備した8隻が、標準装備されたトマホーク巡航ミサイル300発を現在でも発射できる体制にある。これはもう反撃できる格好になっておるわけでございます。

では、台湾海峡の有事の場合はどうか。その辺が全然詰められていない。そこにおいて米軍の戦力を反撃能力として我々は位置づける議論ができるのか、また覚悟があるのかということが問われているだろうと思います。

どうもありがとうございました。

[107]
自由民主党 田村憲久
ありがとうございました。

先ほど小川参考人の方からお話があったと思うのですが、どちらかといいますと集団的自衛権というものを限定的に認めるべきではないか、実はそれの方がこれから日本が将来米軍と作戦行動等をしていく中で変に米軍に引っ張られることもないのではないのかな、そういうような御意見であったと思うのです。

確かに、おっしゃられますとおり、周辺事態というものが事実発生したといたしまして、米軍が武力行使に入る、突入する、日本が後方地域支援をやる。ところが、本当にもう間近に日本の有事に近いような、重大も重大で重大過ぎるぐらいの平和と安全に影響を及ぼすような場合には、米軍の兵士がそこで命を落としていくのに、日本はなるべくその戦火に入らないような形で、周辺でただ単に後方地域支援だけをやる、それだけをやるということになりますから、米軍の方から、またアメリカ国民の方から大変なる非難というものが出てくると思うのですね。

当然のごとく、その後、これはもう後方地域支援だけじゃ日本はだめですよ、もう少し実体的な部分にまで入ってきてくださいよ、もちろんそれは国外にまで日本が直接攻撃に出るかどうかは別にいたしましての話でありますけれども、もう少し兵たんといいますか、各国がやっておる兵たんにもっともっと近づいた部分までやってくださいよという議論になってくるかもわからない。

そういうことを考えますと、集団的自衛権というものを限定的に認めた方がいいんじゃないのかなというような、私も同意見なんです。どうか、そこら辺のところをもう少し詳しく、それじゃどこら辺までは集団的自衛権の中で日本が関与できるか、ここから以上はだめですよという部分があればお聞かせいただきたいと思うのです。

[109]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私は、集団的自衛権の日本モデルのようなものを示しながら、もちろんたたき台でございますが、やはり国際的な非難をかわすだけではなくて、日本としての責務をはっきり明らかにしていくことが重要だろうということでさっきお話をいたしました。

なぜそういうことに考えが至ったのかといいますと、日米安保の現状というものが、例えば後方地域支援などというたわ言から見て、余りにもレベルが違い過ぎるという問題があるからなのです。

例えば、湾岸危機、湾岸戦争の7カ月間、日本と中東を往復した軍艦以外のアメリカの艦船は、私のコンピューターに入っているものだけで延べで113隻でございます。この大部分は燃料と弾薬を積んでおった。57万人近い米軍の兵力の使った燃料と弾薬の8割以上は日本から持っていっているのですね。だから、日本列島というのはアメリカ本土と同じ位置づけなんです。だから、テポドンの後も、アメリカ側がはっきり北朝鮮に言ったのは、アメリカ本土に対する攻撃と同様にみなす、その場合は核で反撃をするということを言っているぐらいでございます。

例えば、そこに置かれている燃料や弾薬の能力でも、これはちゃんと公表されているのに我が政府は持っていなかったから、これは職務怠慢のそしりを免れないわけでございますけれども、燃料は、米軍が使う燃料貯蔵施設の中で2番目の規模のものと3番目の規模のものが日本にあるんですよ。鶴見が2番目で570万バレル、長崎県の佐世保が3番目で530万バレル、あと八戸に7万バレルあって、1107万バレル。世界で最大最強の第7艦隊という部隊を10回満タンにして6カ月戦闘行動をさせられる。

だから持っていくんです。当時のフィリピンのスビックなんというのは、長崎県の佐世保の半分以下の240万バレルの能力しかなかった。それを我々は調べてなかったから、これは国民を挙げて反省しなければいけない問題だというわけであります。

それから、弾薬。考えてください、皆さんは江畑謙介さんのピンポイントの解説を、ああといって口をあけて見たでしょう、テレビで。でも、あれは、やはり我々の能力によって支えられた部分なんですね。例えば、弾薬の貯蔵能力で一番象徴的なのは、広島県内にあるアメリカ陸軍の3カ所の弾薬庫ですが、トータルの弾薬貯蔵能力11万9000トン。皆さん方は御記憶にあるでしょう、先月この国会において、今陸海空の自衛隊が持っている弾薬、トータルで幾らかというデータが出たでしょう、政府から。11万5000トンだったでしょう。それを上回る貯蔵能力が陸軍のものだけであるんですよ。

これは、後方地域とかいうたわ言がいかに空論かということを我々に突きつけている。

だから、やはり集団的自衛権についても、我々は真剣に議論をして、1つのモデルを提示する中で、やはり国連憲章51条に基づき、例えば国連安保理が国際の平和の維持のために機能した段階というものを明確に定義しながら、そこまではやるということが極めて問われるのではないかと思います。

ありがとうございました。

[110]
自由民主党 田村憲久
ありがとうございます。

最後に、地方公共団体の協力に関して少しばかり御質問をしたいのですけれども、今回、法案の中におきましては、協力義務といいますか、罰則規定がない。協力してもらわなきゃ困るというような、そういう発想であると思うのですが、あくまでも強制権はない。

実際問題、空港、港湾の使用、また公立の病院等々、米軍の傷病兵が来た場合にどう対応するのか、これは、実はその時々の状況によって変わってくるだろうと思います。そこの首長さんが理解のある人かない人か、それによっても違うでありましょうし、国会での承認というものはない、ないといいますか、今ないということで一応法案は来ているわけでありますが、そういう場合には余計に、僕は、かえって地方の首長さんに断る口実を与えてしまうんじゃないのか、実はそんな危惧さえ持っているんです。

でありますから、事後承認でもいいですから、こんなことを言うと自民党に怒られてしまうかもわからないですけれども、事後承認でもいいですから、そういうものをした場合には、強制的に、地方公共団体はこれはもう義務として協力をしなきゃいけないというふうにした方がよっぽど有効性があるんじゃないのかな、これは私の私見なんですけれども、そう思っておるのですが、その点、最後にお聞かせいただきたいと思います。お2人、お願いいたします。

[112]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私は、レジュメのCのところにもちょっと項目だけ書いてありますが、自治体や民間の協力については、事後告発権というものを明らかにすべきだと思います。その中で、やはり一定の協力義務というものを明確にし、ただ、間違った形でそれが機能した場合には、事の後ででありますけれども、厳しいペナルティーが科せられるということが条件になってまいると思います。

いま1つ条件として我々が押さえなければいけないのは、政府の説明責任でございます。

例えば、高知の橋本大二郎知事が寄港艦船の核搭載の有無について問題提起をした。あれは明らかに神戸方式とは違うんですね。私は理にかなったやり方の1つだろうと思っています。ただ、政府としては、困ったものだなというところがあると思うんですね。

ただ、橋本さんは、私が橋本知事の立場だったら同じことをやると思うんですが、県民の不安がある、それに対して知事として、政府に答えてくださいよと言ったわけですから、神戸方式のように外国の艦船に対してダイレクトに問うといった、外交権に触れるような格好は避けているんですよ。それに対しては、政府はそれなりの説明をする責任がある。

そういう中で初めて、有事における民間や自治体の協力についても一定の義務条項を設けることができるだろうし、それをまた保障するものとして事後告発権というものを明示するということが、考え方としてはあり得るんじゃないかと思います。

どうもありがとうございました。



[116]
民主党(民進党) 玄葉光一郎
事前協議の話の中には、今申し上げた中では広い意味での政策協議は入っていなかったんですが、でも、岡本参考人がおっしゃったように、広い意味での政策協議も残念ながら不足しているという認識は全く一緒でございます。

さて、その事前協議ですけれども、まさに今お話に出たように、普通事前協議というと、6条の交換公文の話で、3項目あるわけであります。特に問題になるのが直接戦闘作戦行動というところで、今まさにお話があったように、これまで一度も事前協議がなかったのはまさに事例がなかったからだ、政府はそう言うわけであります。つまり、直接の戦闘作戦行動ではないんだから、実際に直接の戦闘作戦行動があったらばそれは当然相談があるんです、そうおっしゃるわけでありますけれども、小川参考人は、こういう政府の考え方というか表明についてはどのようにお答えになられますか。

[117]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私自身、結論を先に申し上げますと、日米安保条約に伴う事前協議制については、これこそ日本から問題提起をして、随時できるように双務性を持たせることを要求すべきだと思っております。

事前協議につきましては、はっきり申しまして、湾岸危機、湾岸戦争においても外務省の中で大激論になったことを私知っております。アメリカは事前協議を破ったと、これは岡本さんの後の北米一課長の時代でございますが、大変激論が闘わされたことを私知っております。ただ、やはり政府としてそれを表明することは避けたという問題なんですね。

アメリカのほかの同盟国とアメリカの関係において、事前協議あるいはそれにたぐいするものがどのような格好で処理されてきたかということで申し上げますと、例えば、アメリカと最も密接な関係にあるイギリスとの関係がございます。

例えば、中東戦争のさなか、スエズ運河の上空からの偵察に当たり、アメリカは、イギリスの基地に展開しているSR71戦略偵察機、これはマッハ3で飛ぶものでございますが、これの出動をしたいということをイギリス政府に申し入れた。イギリスは、米英同盟の重要性もさることながら、アラブ諸国との関係を悪化させかねないということでこれを拒否したわけでございます。これは労働党政権だったということもありますが、明らかに国防省が拒否という姿勢を示している。これによってアメリカは、アメリカ本土から多数の空中給油機を空中に展開する中でスエズ運河の偵察を行った。

しかるに、日本の場合はどうかというと、このSR71は3機体制で沖縄の嘉手納基地にずっと展開してきたわけですね、今は本国に撤収しましたが。

これはまず、沖縄が日本に返還される以前の段階では事前協議の対象にはならないんですが、どのように運用されたかということを言いますと、毎日、北ベトナム、ハノイ上空を偵察いたしました、直接出ていって。そして、途中に空中給油機を5機展開しながら、タイのウタパオ基地で1回着陸をして帰ってくるということを繰り返しておる。

それから、これは沖縄返還後でありますが、私がたまたま対馬の一番北にある航空自衛隊の海栗島のレーダーサイトで基地司令と飯を食っているときに、警報が鳴ったんですね。何だということになりましたら、これは昭和56年の8月の末でありますが、北朝鮮上空を嘉手納から出撃をしたSR71が、これはしょっちゅう飛んでいたんですが、横切った。それに対して北朝鮮がSA2型という対空ミサイルを2発発射した。もちろんその上を飛んでいったので当たらなかったんですが、それはもう私がはっきり覚えている事例でございます。

また、イラン・イラク戦争の最中、これは沖縄返還後でありますが、これもかなり時を選びながらではありますが、ホルムズ海峡の偵察のために嘉手納基地からSR71を出撃させている。

これはどこに出ているかといったら、SR71を開発した人間の実録の中に出ているわけでございます。これはちゃんと市販されている本に出ているんです。

そういったことに対して国会で議員さんが質問をいたしますと、政府の答弁としては、偵察機だから出撃には当たらない、愚か者という話でございますね。作戦用航空機の中に偵察機や戦術偵察機を入れるでしょう。ましてやSR71は戦略偵察機ですよ。訓練のために離陸して、途中から任務を与えられるなんというのはあり得ないんです。むちゃくちゃ燃料を食うわけですよ。大変危険な行為なんです。だから、初めから出撃なんです。それに対してすら明確な意思表示をできない日本政府については、いささか私は失望を覚えております。

ありがとうございました。

[118]
民主党(民進党) 玄葉光一郎
こういう話を6条の交換公文でしていくと、直接戦闘作戦行動の定義の話になって大体袋小路に入っちゃうというのが率直なところだと思っているんです。

私が最近自分の検討材料だなと思っているのは、新たな取り決めを結んだらどうかと思っているんです。つまり、今ある6条の交換公文の世界の直接戦闘作戦行動は、これはこれで置いておいて、そのかわり、ペルシャ湾に出ていく、これはこれで安保条約は排除していません、確かに。日米安保条約上、排除はしていません。ただ、日米安保条約上の目的の枠内か枠外かと言われれば、目的の枠外ですね。ですから、条約目的外の基地の使用についてきちっと相談をしてねという取り決めを今後結ぶということを検討していくことも一つの方法ではないか。結構日米関係はきついと思いますけれども、私自身は今そういうことを一生懸命研究をし始めているということでございます。

次に、北朝鮮の問題、特に対北朝鮮外交の問題についてお三方にお尋ねをしたいと思っています。

伊豆見参考人がまさに御専門でいらっしゃるわけでありますけれども、最後に、政府の今の北朝鮮外交について、抑止と対話、抑止はガイドラインとTMDということだと思いますけれども、その対話の部分について、基本的に賛成だ、その上で、さらに一歩を進めるべきだというようなニュアンスの発言がございました。その点についてより具体的にお触れいただければありがたいし、今話題になっている超党派の、村山訪朝団なんと言われている訪朝団、これもまだ中身が定かじゃありませんからそれについて聞かれても答えようがないかもしれませんけれども、そのことについてどのようにお考えになられるか。これは後で岡本参考人にも小川参考人にも実はお尋ねしたいと思っております。よろしくお願いします。

[122]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
北朝鮮政策につきましては、私自身は、北朝鮮という国は、日本という国が外交、安全保障の面を中心に世界に通用する立ち居振る舞いをできているかどうかを忠実に映し出してくれているありがたい鏡だと思って眺めております。

つまり、日本が例えばアメリカから一目も二目も置かれるようなアメリカの同盟国になっている、アメリカが何でも相談するような同盟国になっていれば、北朝鮮は、日本が拉致問題と言った瞬間に、その下手人は既に旧体制のもとで逮捕をし、既に処刑をしております、拉致をされた皆様方については、手厚くおわびを申し上げながら帰還していただきますといったような態度に180度変わってくるような問題なんですね。

ところが、例えば現在の日米関係を見ますと、北朝鮮から見た日本というのは、先ほど申し上げましたように、対話する相手ではない、外交交渉をするような相手ではない、アメリカと話した方が早いといったような位置づけに見られている。これは、客観的に見るとそうだと思います。

ということになりますと、やはり抑止と対話ということについても、日本は韓国、アメリカと協調体制をとりながらやっている。これは大変高度な外交でございますし、もっと進めるべきでありますが、おのずと日本だけが限界を持ち、ブレーキになってしまう可能性すらある。だから、とにかく日米安保を中心としながら、世界の信頼をかち取るだけの外交、安全保障政策をさまざまな面から進める。そのことによって、北朝鮮が日本に対する積極的な姿勢を示す格好をつくることが大事ではないかと思っております。

とにかく、今回の不審船の問題、後ほど御質問があるかもしれませんが、これについても、なぜ海上自衛隊は撃沈しないのかといったような議論も一部ではございました。ただ、国民全体としては、よく抑制された行動をとった、その点についての理解があったということは、私は若干ほっとしているんです。

なぜかといいますと、北朝鮮という国に対して軍事的メッセージを明確にしてこの国が暴走しないようにしていくこと以上に重要なのは、日本が世界の先頭を走る先進国として、相撲でいいますと横綱、大関の相撲をとれるかどうかということ、それを世界から採点されているということなんですね。そちらの方が、個別北朝鮮に対する日本の外交問題よりもなお日本の国益に与える影響は大きい。だから、そういったことを視野に入れながら、対北朝鮮外交についてももう一回再編成する必要に迫られているのではないかと思います。

ありがとうございます。

[123]
民主党(民進党) 玄葉光一郎
北朝鮮問題の3人の方の御意見、非常に参考になりました。

もう1つ、中国をどう見るかということもガイドラインの審議には非常に大きな影響を及ぼすと思っております。

私は、先般、五百旗頭先生のある小論を読んで、自分の見方が賛成というか、同じ見方だったので少し紹介をさせていただくと、20年、30年の発展によって日本を圧倒し、米国に並び立つほどの総合国力、これは括弧して経済力と軍事力の双方を築くことが長期的な国家戦略として妥当性があるんだ、中国が圧倒的な勢力を東アジアで持つに至れば、武力行使せずとも台湾はおりるであろう。したがって、つまりじっとしているというのが中国だという見方をされておられました。

私は賛成でありますが、これは岡本参考人と小川参考人に、中国をどう見て、その中国の将来と日本がどう向き合っていくかという問題についてどのようにお考えになっておられるか、お聞かせをいただきたい。最後の質問になろうかと思います。よろしくお願いします。

[125]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
実は、中国という存在は、日本の安全と繁栄にとって、これはもう米国と並ぶ重要なテーマでございます。

その中国に対して我々はどのようにかかわっていくかということでいいますと、非常に結論的に申し上げますと、友好国としての姿勢を崩すことなくかかわっていくことが大前提になるだろうと思うのですね。

ガイドラインの周辺事態の周辺の概念に台湾海峡を含めるかどうかという問題も、これは日本が戦後処理できているかどうかという問題はさっき申し上げましたが、それと同時に、中国側とトラック2で、つまり軍のシンクタンクのトップと本音で話し合ったときの向こう側の反応などを申し上げますと、私は聞いたのですね。周辺という概念を使わなきゃいけないという日本の事情もあって、いろいろこれは日本側で検討しなきゃいけないけれども、もう1つある、日本を敵対国として扱うような議論をやめろと言ったのです。

日本は友好国である。敵対国なのか。友好国であり、1つの中国を認めている国である。その日本が、台湾問題の解決についても、話し合いによる解決を前提として、努力を惜しまないと言っている。ただ、残念ながら、与那国島を代表例として、海上において国境線を接している。不幸にして台湾の問題が火を噴いた場合、日本に火の粉が降りかかってくるという事態は考えなきゃいけない。それは日本の国防の問題であり、主権の問題である。そこにおいて日米安保を発動する場合もあるということを言っている。しかし、友好国である日本が話し合いによる解決で努力を惜しまないと言っているのだから、君たち、それはわかってくれるかと言ったら、前提条件を明らかにすべきだということを向こうは言いましたね。日本はそこまで言ってきただろうかという話、何となく友好国だと思われているだろうということなんですが、繰り返し言わなきゃいけない。

ただ、そういう中で明らかになったのは、向こうの価値観と我々の価値観が若干まだ話し合う余地があるということなんですよ。それは何かというと、例えば、日本の立場に中国が立って、周辺といった場合、沖縄を領有するといったらあなた方は怒るでしょうと向こうは言ったのですね。ところが、日本は台湾を領有するなんて考えはこれっぽっちも持っていない、国防上の問題、主権の問題として、そのエリアというイメージなんですね。その辺においては完全に価値観が食い違っている。これは本当にトラック2から積み上げて議論はしなきゃいけないだろうと思います。

ただ、そういった議論が必要だということを中国側が認識をし、トラック2をもっとちゃんとやっていこうということを言ってくれているというのは大変明るい展望ではないかと思う。

ただ、そういう中で、日本が参考にすべきなのは、やはりアメリカが中国に対して行っている建設的関与でございます。これは中国から見れば反発すべき部分はいっぱいありますし、現に反発もしておりますが、それでもなお中国が必要とする援助をアメリカは惜しみなく与えている。だから、俗な例えで言いますと、中国はアメリカなしには生きていけない体にされている人間のような状態であります。

そういう中で、中国の経済的発展のためにも必要なのは国内の制度の近代化であり、それが進めば一定の民主化が進むであろう。これは中国内の価値基準であっても、一定の民主化が進んで経済力を身につけた中国は民主主義国家とみなせるだろう。そういう民主主義の国である中国がむやみやたらと軍事力を振り回すだろうか、いや、そうではないだろうという、例えばイエール大学のブルース・ラセット教授の理論のような考え方をアメリカは持って、中国と建設的関与という格好で向き合っている。

やはり日本なりに、中国の国益も視野に入れながら、日本の国益を実現すべくきちんとしたかかわりをやっていくことが、これから大いに問われるだろう。その前提は、友好国であるということをやはり崩すことなくやっていくことではないかと思います。

どうも御質問ありがとうございました。



[136]
公明党 赤松正雄
小川参考人にもお聞きしたかったのですけれども、一言だけ、1点だけ簡単にお願いしたいのです。

周辺事態安全確保法案が成立しなくても朝鮮半島に大きな混乱はないという発言をなさっておりますけれども、その点に関して手短に。

[137]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私、大変乱暴な言い方をいたしましたので、誤解を招かないように、御質問いただいて大変ありがたいと思っております。

と申しますのは、実は、ガイドライン関連法案というのは、当然ながら、アメリカを支援しながら日本の国益のために生かしていくという精神でやらなきゃいけない。だから、朝鮮半島においても、それは必要でないという言い方はいたしません。ただ、少なくとも朝鮮半島の有事においては、これは先ほどちょっと触れました国連軍の存在というものが一貫してあり、それから、国連憲章と日米安保条約の関係というものがある。

その中で、日本の議論がまだそこまでいっていない部分はありますが、日米安保条約の5条事態と6条事態が同時に、日本有事の問題にかかわる中で朝鮮半島有事というものを迎える事態というのは想定されるわけでございます。だが、そこにおいては、やはり我々は、朝鮮半島有事のためにガイドラインをやっていくといったような、政治的なばねにしていくような議論というのは極力避けるべきであろう。ストレートに台湾海峡の問題を議題にした方がまだ正直だという感じがいたします。

これに関連して申し上げますと、北朝鮮に対しして日米安保が抑止効果を持っているかどうかという問題でございますけれども、これもやはり国連憲章と日米安保条約の関係で、北朝鮮は、例えば、日本にテポドンやノドンといったミサイルを1発でも撃てば、国連軍である米軍の行動を阻止できる安保理の常任理事国は存在しなくなる。しかし、みずから軍事行動を起こさない限りは、逆に、国連軍の帽子をかぶっている米軍は動けないわけですから、国連に守られているという立場を北朝鮮は認識すべきであろう。その辺をお互いに現実認識、共通認識として持ちながら朝鮮半島の安定の議論をしていこう、そういう立場で北朝鮮とも私は若干かかわってまいりました。

ですから、ガイドライン関連法案、これは審議を進めるというのは大事なことでありますが、朝鮮半島有事ということでは、そんなものはとっくに我が防衛庁においても頭の中にあるわけでございます。なかったらこれは職務怠慢でございますので、これがすべてであるかのような議論は若干整理する必要があるだろうと思います。

御質問ありがとうございました。



[140]
自由党 西村眞悟
冒頭、岡本参考人は、我が国会に、日本を守るためにはすべてやるという議論がないんだ、だから国民の関心が意外に薄いというふうにおっしゃいました。私、そのとおりだと思います。

つまり、戦争と平和という抽象的な議論でありましたら、すべての人が平和がいいに決まっておるわけです。しかし、国民、国家のセキュリティーという問題で考えておりましたら、平和の中の国民が死傷することを許すことはできない。したがって、セキュリティーの問題として本件問題を議論するという姿勢がまだまだ欠けておったなと私も思います。

さて、このような議論の欠落はなぜ起こったのか。例えば、本法案においては、有事とは言わずに事態という言葉を使う。兵たんとは言わずに後方支援という言葉を使う。武力行使という言葉を使わずに武器使用という言葉を使う。これは実態と即応しておりません。

なぜこのような状態が起こるのかといえば、周辺事態における有事というものが、我が国が本来固有に持つ自衛権発動の領域で起こっており、かつ、それは講学上、集団的自衛権と言われるものである。しかし、その集団的自衛権はあるけれども行使しないという憲法解釈に縛られてこの法案の作成を行ったがゆえに、字句が実態に即応していないと同時に、議論が我が国自身の自衛権行使の問題であるという次元にはまだ至らないんだろう、このように思うわけですね。

したがって、この際、自由な立場であられる参考人の先生方に、もうぼつぼつ、集団的自衛権はあるんだ、それだけだ、あれば必要なときに行使できるんだ、このように我が国の国防政策、国民のセキュリティーを守るという国家の責務の前提たる政策を転換しなければならないと思いますが、岡本参考人、小川参考人の御意見をお伺いしたいと存じます。

[142]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問ありがとうございました。

集団的自衛権というテーマは、日本なりのモデルをまず示して、それをたたき台としながら国際的に活動をしていくべきであろうというお話はこれまでもさせていただきましたけれども、やはり日本の場合、官僚主導的な議論に終始してきたツケというものをもう一回清算しなきゃいけない時期ではないかと思います。というのは、集団的自衛権というのは日本にもあるんだ、しかし使わないんだといったような議論でやってきている。

でも、国際的に問われているのは、やるかやらないかでございます。あるかないかじゃないんです。

あるんです、どこの国も。

だから、日本の議論のおかしなところを整理しなければいけないというのは、本来あるべき安全保障の形というものはどういうものであるかということをまず目標にして、そこに向けて法律や制度を整備していくという歩みをしなきゃいけないということなのですね。だから、平和主義を実現する、あるいは、平和憲法の理念を実現しながら世界の信頼をかち取る、それでいいわけであります。しかし、そこへ向けて行こうとすれば、例えば憲法にしても、理念と骨格しかない憲法、きちんと憲法の精神を生かすべく、改正という手続を踏みながら肉づけしないと、これはうそを言っていることになってしまう。そういう本来あるべき議論の姿を目標とするような議論をまず国会から起こしていただきたい、そういう考えを持っております。

どうも御質問ありがとうございました。

[143]
自由党 西村眞悟
今のことを角度を変えてお聞きしたいと思います。

我々の国会での法案審議で一番欠けておるのは、国際化といいながら、我々は、国際法がいかにこの領域に関与するのかについての議論が一番欠けております。

自衛隊も、出動いたしましたら、国際法で覊束される、適用されるのは国際法である。しかし、国際法と国内法がそごしておるときにいずれを優先すべきかというのは、憲法98条2項にございます、国際法は尊重すべきである。そのようにした国際法が、国内法化して、いかなる秩序のもとにあるのかといえば、法律より優位するのでございます。この観点からいいますならば、サンフランシスコ条約、国連憲章、日米安保条約、すべて、個別的であれ集団的であれ、両国はそれを有すると記載されておる国際条約に我が国は署名し批准しておるのでございますから、我が国憲法解釈は、この国内法化した国際法の理念に即応する解釈でなければならない。しかし、従来からの我が国憲法解釈は、この憲法98条2項違反ではないか、このように思うわけですね。

さて具体的に、本問題は、部隊の武器使用等々を、例えばけん銃1丁持っているような警察官と同等の規定をしておりますけれども、例えば100年前の、東郷大佐がユニオンジャックを掲げる高陞号を撃沈したときに、伊藤博文は腰を抜かすわけですが、国際法上、彼の行為は正当であるとイギリスで称賛を受けるという事態に遭遇しました。伝統的に、我が国は、国際法上正当な行為をした者が国内で首を切られるという事態に部隊は遭遇し続けておるわけです。

さて、お聞きしたいのは、我が国は、このガイドライン関係法で、いろいろな武器使用等々の要件がある、ありますけれども、国際法に従って武器使用、これは部隊としてですから武力行使ですね、武器使用は個人の行為のことを国際法上は言います。国際法上は部隊としての行動はすべて武力行使です。武力行使を任務遂行のために国際法にのっとってした自衛艦の艦長は、国内法の違反のゆえをもって国内で裁かれるということになるのか否か、そうなってはならぬと思われるのか否か。これも、お2人、岡本参考人と小川参考人に御意見をお伺いしたいと存じます。

[145]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
私は、冒頭に、先ほど申し上げましたように、安全保障、外交、危機管理といったものは、とにかく世界に出ていって通用するものでなければすべて不合格だということを申し上げました。それを意識して国際法と国内法の整合性を議論していくということがまず先進国として問われる問題だと思います。

しかしながら、今回の北朝鮮の工作船の事案では、とにかく海上警備行動が初めて発令をされる、その中で、海上自衛隊の護衛艦それから哨戒機は、これは警告の意味で射撃を行い、爆撃を行ったわけでございますが、あれが例えば命令によって撃沈をするような形をとった場合、それが現状でありますと、恐らく、おかに上がった途端に艦長は国内法の適用によってそれこそ罪人として扱われるだろう。これは今、岡本参考人がおっしゃいましたように、国家としての行為に対してどのように国内法を整理していくのか、それが世界に通用するレベルのものであり、国際法や国際通念にやはりかなうものであるのか、その辺がやはり議論として欠落しているような感じがいたします。

この工作船の問題について申し上げますと、やはり国際通念ということで私は1つの問題提起をしているのでございますが、やはり、かなりの国が国境警備隊と軍隊を両方持っているのはなぜかということなんですね。沿岸警備隊を持っている国は比較的少ないのですが。これは、陸上であると海上であるとを問わず、国境というものは紛争が発生しやすい場所であるということなんです。それで一々軍隊が出ていっていたら国がもたない、戦争になってしまいます。国境警備隊が多少手荒なことをしてでも事を処理する、そして、国境警備隊の事案であるからとにかく戦争しないようにしようという話し合いに持っていく、そのための緩衝装置であり安全装置、そういう人間の知恵として国境警備隊あるいは沿岸警備隊というものが存在している。

そういったことを念頭に置いて我が海上保安庁を我々は整備してきたのだろうか。その延長線上に、極めて的確なタイミングで、これは乱発をすることなく、国家の威信を示すために海上警備行動というものを発令できるような体制がとられてきたのだろうか。その辺をやはり今回の工作船の問題においても深く考えさせられているわけでございます。

とにかく、国際的に通用するかどうか、その辺のところから、国際法や国際通念と国内法の関係をぜひ御議論いただきたいと思います。

どうも御質問ありがとうございました。



[154]
日本共産党 佐々木陸海
最後に、時間がまだ少しありますので、小川参考人にお伺いしたいと思います。

周辺事態ということがどうも概念もはっきりしない、そしてその認定過程も今度の法案ではなかなかはっきりしない。小川参考人は先ほど悪知恵だというふうにコメントをされましたが、日本周辺の地域における日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というふうに言われているんですが、では、小川参考人は、実際にはどういう事態にどう対応するものというふうにお考えなのか、簡潔にお聞かせください。

[155]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
具体的に申し上げますと、これは朝鮮半島の事態と台湾海峡の事態であろう。そこで戦火が起きた場合、日本に対する、難民の問題も出てくるでしょうし、さまざまな軍事組織のかかわり方も出てくるでしょう。それに対して、日本の安全を保つためにいかに米軍を使うかといったようなことが日本側としては大事だと思います。

ただそこで、周辺事態なるものが悪知恵だと申し上げたのは、先ほども御説明いたしましたが、日本の戦後処理の問題についてアジア諸国のコンセンサスが得られていないという問題がやはり影を落としている、それは我々深刻に受けとめなきゃいけないだろう。周辺などという言葉を使う必要があるのか。恐らく、共産党が日本の政権をとられたら、陸海空軍を持たれて、世界の平和のために展開をされるんじゃないかと私は思っておりますので、その前提で申し上げますと、やはり周辺という言葉が使われたということ自体が問題だろうということでございます。

ただ、そういう中で、例えば台湾海峡の問題につきましては戦略的あいまい性ということがかなり言われます。これはアメリカの研究者、私の仲間たちは使っておって、日本はそれを受け売りで言っておる。

確かに戦略的にあいまいにしておくということは意味はあるんです。ただ、それはアメリカにとって極めて大きな意味を持つものであって、日本がそのとおりやって国益に資するものであるかどうかは疑問でございます。

ですから、日本としてはアメリカとの同盟関係を大変重視しつつも、戦略的なあいまい性などという言葉を受け売りで言うことなく、台湾海峡が問題ですよ、朝鮮半島が問題ですよということを言ってもいいのではないかなと思ったりしております。

どうも御質問ありがとうございました。

[156]
日本共産党 佐々木陸海
日本共産党が政権をとってからのことに御言及がありましたが、それはちょっと事実とは違っておりますが、それはきょうそこで論争するつもりはございませんので、そのことだけ指摘をしておきたいと思います。

先ほど後方地域支援についても悪知恵という言葉をお使いになりました。これは、実際にはロジスティックサポートを戦闘している米軍に対してやるものを、後方地域でやるから、これがロジスティックではなくなってリアエリアサポートになってしまうんだという。私どもも、これはトリックだと。実際にはそういうトリックを使って戦闘と一線を画しているとか憲法の問題をクリアできるんだということで、我々は悪知恵であり浅知恵であるというふうに考えているんですが、小川参考人はその点はどういうふうにお考えでしょうか。

[157]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
悪知恵という言い方をとったのは、これは官僚機構の中でみずから悪知恵を出さなきゃしようがないだろうなといったような会話が行われているということを前提にそういう表現をとりました。だから、浅知恵という形でそれを非難しようとは思いません。仮に官僚機構にそのような悪知恵を出すことを期待したのだとすれば、我々が、この国会という国民の代表である機関が、それをきちんと議論するような格好で持っていっているかどうかが大変問われる問題であろう。

とにかく後方地域といったような言葉というのは軍事的には成り立たない。

例えば民間の病院にけがをした米軍の兵士を収容する、それは相手国から見れば戦力の再生以外の何物でもない。またそこでけがが治ったやつは戦場に戻るわけでございます。それは敵対行為そのものですから。やはりその辺は明確にした上できちんとして、私はガイドライン関連法案を成立させるべきだという立場でございます。

どうもありがとうございました。

[158]
日本共産党 佐々木陸海
もう1つ小川参考人にお聞きしたいんですが、日米軍事同盟が非常に双務的なものだ、対称性のあるものだというふうに先ほどおっしゃいましたが、そういう条約のもとで、しかし北朝鮮からも日本と対話しても当てにならないんじゃないかというふうに見られるような、日本の対米従属性というんですか、これは一体どこから生まれているというふうにお考えでしょうか。

[159]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
これは残念ながら、従属性を認めるかどうかという議論については日本国内でも議論が分かれている。これはもともとそうなんです。

ただ、客観的な認識として、例えばアメリカの同盟国、これはいろいろな数え方がありますが、例えば40カ国あるとする、その中で最もアメリカにとって軍事的な役割を果たしてる国がどこなのか。

それは、例えば湾岸戦争においてアメリカの要請によって自衛隊を出すことができるかどうか、それは憲法の制約がある、それはできない。しかし、アメリカの戦略的根拠地を提供し、基地対策費を含めますと1年間で6400億円もの税金を使って在日米軍経費を注入し、また戦略的根拠地を年間4兆9000億円余りの防衛費によって守っている、こんな国というのはないわけでございます。

そういった客観的な認識を持ちながら、アメリカにその認識を認めさせる、あるいは、アメリカに認めさせる必要はなくて、こういったものを示せばアメリカはそれを前提に議論するんですね。

そういったことをきちっと可能にするための例えば議会、国会の調査能力はどうだったのか、政党や議員の調査能力はどうだったのか、あるいはシンクタンクの能力はどうなのか、アカデミズムの能力はどうなのか、ジャーナリズムの能力はどうなのか。民主主義を機能させる要素がすべてこの部分においては非常に低く維持されてきた結果にほかならないだろうと思うんです。

とにかく、私ども議員さんと一緒にアメリカに行きまして、アメリカの専門家や何かと話をする。すると、必ず日本の足元を見て日米安保は双務的じゃないという話を始めるやつがいるわけでございます。私はそこにおいて、では双務的な同盟国はどこにあるんだと聞くんですね。そうすると、大体黙っちゃいますよ。

とにかく、総合的にそれを評価いたしますと、日本ほど対等に近い、双務的な役割を果たしている同盟国はないという評価はできます。

確かに、アメリカと同じ戦列で戦うかどうか、第一線で戦うかどうかの問題は欠落しておりますが、そんな、日本国憲法を改正しようなんて圧力はアメリカはかけないわけですから、やはりそこのところは客観的に押さえながら、アメリカとの共通認識を持ち、北朝鮮にもそれを常に伝えて暴走するなよという歯どめにしなきゃいけない。それは、やはり我々の民主主義のメカニズムが形式に流れてきた面があったツケではないかなと私は思っております。

どうもありがとうございます。



[170]
社会民主党 保坂展人
それでは小川参考人に、時間がないんですが、一言お願いいたしたいと思います。

今、川本参考人から、パイロットという現場の声、幾つか私ども受けとめたわけですけれども、今回の法案審議の中で、例えば自治体に協力を求める、民間に協力を求める、あと、詳しくはどうかというのは全然わからないわけですね。そういう白紙委任というか、成立してからよろしくやりますという方法では、国民の理解あるいは本来の趣旨もねじ曲がったものになるんではないかという御指摘があったと思うんですが、その点について一言お願いしたいと思います。

[171]
参考人(軍事アナリスト) 小川和久
御質問、ありがとうございます。

私は、ガイドライン関連法案、これは審議をどんどん急いでやっていくべきであろうという立場でお話をしてまいりましたし、今の御質問も受けとめたわけでございますが、同時に、御指摘のような点というのは、やはり国民に対して問いかけなければいけない問題でございます。それが、やはり国民の無知をいいことにと言ったら言い過ぎかもしれませんが、そのまま素通りされているというのは、非常に残念でございます。

ただ、例えば民間空港の使用ということも、周辺事態ということになった場合、民間航空路は何%ぐらいまで削減をされるのか。これは、通常、平時のように飛んでいるわけじゃないんですよ。その中での安全性の問題はどうなるのか。その辺の議論はやはりなきゃいけない。ところが、これにさわると完全に危険だということになりかねないから、さわらずに来ているという部分も実は政府の側に感じられるわけでございます。

あるいは、ICAO条約に関して、民間航空に関する条約で、例えばロシアのアエロフロートが軍事使用される場合はどういう扱いになっているのか。あるいは、アメリカの海兵隊が戦地に人員を先に派遣するために、チャーター便で、CRAFという制度を持っている。これは大変迅速に展開できるわけです。湾岸危機のときにも大変有効に働いた。このCRAFの場合は、ICAO条約はどのように適用されるのか。あるいは、民間機と本当にみなすのか、みなさないのか。恐らく敵対している側はみなさないでしょう。

ただ、みなされないということを前提に、恐らくロシアのアエロフロートにしても、あるいはアメリカ海兵隊のCRAFでチャーターされた民間旅客機にしても、護衛戦闘機や何かは全部ついていくと思うんですね。あるいは、飛ぶ航路については、危険なところについては、その下の海面にイージス艦などを配備する場合もある。そういったことが恐らくあり得るであろうという議論が全然ないわけですよ。

だから、とにかく危険な印象を国民に与えたら法律が通らないだろうといったようなところがどうも感じられてならない。

とにかく周辺事態がやはり適用されるような事態にあっては、民間空港の大部分があるいは閉鎖かもしれない。民間航空路なんてほとんど機能していないかもしれない。その中でどれぐらい危険なのか、危険でないのか。そういった議論までしていただきたいなという感じがしております。

どうも御質問、ありがとうございました。



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