エラそうな乞食

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昭和56年09月02日 衆議院 外務委員会
[096]
日本社会党(社会民主党) 土井たか子
過去の経緯から考えまして、経済援助の問題に対してこのような出し方をしたことは恐らく私は異例中の異例だろうということは、これは外務大臣も首を振っていらっしゃるとおりだと思うのです。

それで、外務大臣はその席上、伝えられるところによりますと、苦しい日本の財政事情からこれに応ずることは困難である、そしてさらに、名目が安全保障ということでの援助は不可能であるということを非常にきっぱりと言われているということが報じられております。

ところが、一方、韓国側にとってみますと、これはびた一文まからないというような非常に強硬な姿勢とも言われています。

そこで、大臣にこのことはお尋ねをしなければならないのですが、この60億ドルの具体的な根拠というのはどういうことに相なるのですか。

[097]
外務大臣 園田直
経済協力または援助の問題で総枠を言われたというのは、今度が初めてであります。

第1に、日本の経済協力というのは、御承知のとおりに総枠で決めるべきものではありません。かつまた、日本は、私が勝手にやるわけじゃなくて国民の税金を使わしてもらうわけでありますから、これは年度ごとに閣議の決定と国会の承認が要るわけであります。したがいまして、5カ年計画というものをまとめて相談に乗るということは、日本の制度上からいって不可能でございます。かつまた、それを分割したとしても、日本の経済協力、援助というのは、御承知のとおりに具体的な問題が出てきて、そしてそれに対して両方からミッション等を派遣してお互いに調査して、理解した上で金額が決まる、これの積み上げたものが総額になるわけで、積み上げ方式以外には日本は総枠でお金の相談に乗ることができない、これが1つでございます。

それからもう1つは、これは来年の予算でございますから国会の承認を得なければそういうことは言えないわけでございますが、見通しとして申し上げまして、日本は経済的にはやや豊富かもわかりませんが、国家財政は正直言って破綻であります。これだけの赤字財政を出しているということは、国の財政としては破綻であります。したがいまして、いまのような騒動が起こっているわけでありまして、しかし、その中でも日本の役割りを考えると、経済的な協力だけは減らしてもらわないようにということで鈴木総理が発言をされて、過去にやった5年間の協力を向こう5カ年間で倍増するという方針を立てられておるわけで、これを仮に国会でそのまま承認いただいた場合に、総額からすれば214億ドルになるわけであります。

そうすると、その214億ドルというものは、国際機関だとかあるいは国際的な難民の問題とか、いろいろ協力の問題とか出す費用がありまして、7割が二国間協力に使えるわけであります。その7割のうちの7割がアジアに振り向けられる枠であります。そうしますと、仮に私がいま考えている予算を皆さん方が承認された場合に、1年間に何とかやりくりのできるお金は最大限21億ドルでございます。それから考えると、韓国のおっしゃることはとてもとても私ごとき分際で相談に乗れる額じゃない、これが1つ。

しかし、韓国の日本との特別な関係あるいは苦しい事情もわかるからできるだけ努力はしなければなりませんけれども、とてもそれはそのままでは、第1は額、第2は手続の問題等でできない、困難である。

それからもう1つは、これは韓国の方に御理解願わなければならないのは、日本は憲法といろいろな諸規定、それから慣例等によって、軍事援助またはこれに振り向けられる経済協力は一切してはならぬ。国会ではさらに進んで、人道的その他はいいけれども、政治的配慮で経済協力をやってはならぬとまで私はきめつけられているわけでありますから、これは困難じゃなくて不可能なのであります。そういう2つは私は申し上げておったわけでございます。

[098]
日本社会党(社会民主党) 土井たか子
いま大臣おっしゃったとおり、日本は単年度予算で、しかもつかみ金的に前もって約束することはできないという制度になっておりますし、それからこの点は、つかみ金でしかも総額をぽんと出すようなことが日本の制度上認められるはずがないという認識を向こうが持ってこの会談に臨んだのでしょうか、どうなんでしょうか。向こうはこの点を理解していると考えていらっしゃいますか。もし理解が不足ならば、大臣としてはその点について具体的に理解できるような説明をその場所でされたと存じますが、いかがなんですか。

[099]
外務大臣 園田直
いま申し上げたことは数回繰り返して、不可能な面と困難な面と、それから制度上できない面とは分けて何回も繰り返して申し上げてございます。丁寧に、しかも下手から詳しく説明しているわけでありますが、来られるのに日本の実情を知っておられるのかな、黙って聞いておると、自分の方の都合はこうであるから、こういうことが重点のようでありまして、いまおっしゃいましたけれども、びた一銭まかりならぬということをおっしゃっているようですが、私の常識から言えば、金を借りる方がびた一銭まかりならぬというようなことは日本の常識ではなかなか通用しないことでありまして、ほとほと困っておるところでございます。



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