徴兵制 10 ~ 中曽根康弘内閣(1806日)

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昭和58年02月21日 衆議院 予算委員会
[114]
社会民主連合 楢崎弥之助
いよいよ総括も最後になったわけであります。大体世論の示すところは、いま程度の自衛隊は必要ではなかろうかという世論が7、8割ある。一方においては、憲法は守るべきであるという世論も同じように7、8割ある。これは一見矛盾するように見えますけれども、国民の1つの知恵だと思うわけですね。そこで、現在の自衛隊と護憲というこの2つの問題をどう調和させるかというのが国会議員としてのわれわれの1つの大きな課題であろうと思うわけです。

そこで、自衛隊が専守防衛という枠内であって、しかも憲法の歯どめあるいは軍事大国化しないようにいろいろな歯どめがある。その歯どめだけはきちんとしてもらいたいというのが、私は国民のおおよそのコンセンサスではなかろうかと思うのであります。私は、憲法上の歯どめあるいは軍事大国にならないための歯どめ、この座標軸と申しますか、メルクマールについて8つばかり挙げてみたいと思うのであります。これはいままでの長い国会の論争の中でも浮かび上がった問題でありましょう。

まず1つは、徴兵制度は違憲である。海外派兵は禁止をされておる。3番目に、非核三原則。4番目に、武器禁輸三原則。5番目に、費用の面から歯どめをかけるGNP1%の問題。そして、戦略的には集団自衛権はだめですよ、専守防衛の枠内ですよ、これが6番目。7番目には、やはり国際的な軍縮は大いに進めなければならない。そして8番目には、シビリアンコントロールを十分きかすべきである。私は大体こういう座標軸を考えておるのですが、その点は総理とコンセンサスができましょうか。

[115]
内閣総理大臣 中曽根康弘
同じであると思っております。

ただ、武器の問題につきましては、先般来いろいろ御議論がございますような次第でございます。





昭和58年05月12日 衆議院 安全保障特別委員会
[103]
日本社会党(社会民主党) 前川旦
しかしそれにしても、実は57年の7月19日の朝日の朝刊に、全日本海員組合組合長の土井一清さんが投書しておられます。そして、船員の戦時の被害がこの前の第二次世界大戦では、陸軍軍人の20%、海軍軍人の16%に比べ、2倍以上に当たる43%という高率であったということを指摘されて、船員には戦争の悪夢が消えていないのだ、戦争が終わった後でも、いまなお海上航行の危険は絶えない、中東アラブとかベトナム戦争とかそういう場合には海上航行の危険は絶えなかった、これらの海域に就航する船員はその都度戦火の危険にさらされ、船舶には戦争保険が掛けられるという状態が頻発してきたんだという指摘をされて、とてもじゃない、シーレーンなんということはもう考えないでもらいたい、もう一遍船員が危険に落とされるようなことは考えないでもらいたい、外交による国際紛争の解決にこそ力を注いでもらいたいという要望が出ています。

これを受けまして今度は、戦没船員遺族会の常任理事の泉谷迪さんという人が58年1月24日の朝日新聞「論壇」に投書されまして、「日本の海運界はおしなべて、有事の際に危険な海域へ船員が動員されることに、強い反発を示す。かりに船を徴用する体制が出来ても、船員が乗ってくれなければ何にもならない。」ということを指摘されています。幾らシーレーンに力を入れても、いざとなったら船が動かないということになればこれは何にもなりませんね。

そこで、ここで心配しているのは、だから船員に対する強制徴用ということが考えられているのではないだろうか。「徴兵制は憲法との関連で軽々に手を下せないとしても、船員徴用制度は、国民の目に触れないところで、徴兵制に先行し進められているのではないか。」という危惧の念を強く書いておられるのです。

これは有事立法との関連ですが、従事命令というのがありますが、それとの関連でそういうことをいま考えていらっしゃるのか、準備があるのか、一切そういうことは考えていないのか、大変これは心配しておられますが、いかがですか。

[104]
政府委員(防衛庁長官官房長) 佐々淳行
お答え申し上げます。

船員の徴用という制度は現在ございません。御指摘のように、自衛隊法103条第2項で都道府県知事の仕事になっておりますが、総理大臣がその2項地域、すなわち戦闘地域以外の地域であるというふうに布告をした地域において医療関係、輸送関係、土木建築関係の3業種に限りまして業務従事命令というのが出せるような制度がございます。

しかしながら、これは徴用制度とは本質的に性格を異にするものでございまして、これに対する罰則であるとか、従わなかった場合の何とかというのはございません。

物と人とに分けて考えてみますと、物につきましては災害救助法等がございまして、適正な補償を行うという条件で、かなり公共の福祉といいますか、国家の安全のためにこれを収用して使うということは十分あり得ると思いますが、人については生命の安全にかかわる問題でございますので慎重に臨むということで、現時点、有事法制の研究対象の中に船員を徴用するというような考え方での研究は行われておりません。

御承知のように、有事法制の進捗状況は、現在与えられております法制でもっていざというときに自衛隊が十分活動できるかどうか、法的な不備な点はないかどうかという研究を進めている段階で、まだ立法の段階でもございませんし、さらに国全体の、国民生活維持のための措置はどうするのか、これはまさに総合安全保障政策の課題でございまして、防衛庁だけではとても処理できる問題ではない、政府全体でお考えいただく問題であろうかと考えております。





昭和58年05月24日 衆議院 本会議
[006]
日本社会党(社会民主党) 飛鳥田一雄
私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました中曽根内閣不信任案について、提案の趣旨を申し上げます。(拍手)

(中略)

また、2月には、秦野法務大臣が、スパイ防止法を検討すべきだと発言して、言論や報道の自由を抑圧する違憲の法案制定の態度を示しました。さらに、角田法制局長官は、徴兵制度は別として、徴用や徴発は違憲でないと表明して、有事体制への道を具体的に進めるなど、憲法が保障する民主主義や基本的人権を侵害する姿勢を一段と強められているのであります。





昭和58年05月25日 参議院 本会議
[008]
日本共産党 市川正一
私は、日本共産党を代表し、また、平和、民主、生活安定を願う広範な国民世論にこたえ、ただいま議題になりました内閣総理大臣中曽根康弘君問責決議案に賛成の討論を行うものであります。

(中略)

中曽根総理自身、みずからを改憲論者だと明言し、わが党の追及によって取り消しはいたしましたけれども、かつては徴兵制の導入などを含む改憲案を公表している人物であります。しかも、中曽根総理はアメリカにおいて、「日本の国会では言わない」が、「改憲の時間表を持っている」などと公言しているのであります。





昭和59年03月21日 参議院 予算委員会
[400]
政府委員(防衛庁長官官房長) 佐々淳行
お答えいたします。

第二分類の回答がまだ残念ながら全部来ておりません。現在、この種の防衛出動下令後のいわゆる有事法制、これは決して御承知のように徴兵令をやろうとか軍事法廷をつくろうとか戒厳令をやろうとか、こういうものでは全くございませんで、現行の憲法、法令の枠内におきまして自衛隊が自衛隊法に定められたその任務を完遂するのに必要な法的な状況を整備しておこうと、備えあれば憂いなしということで平時のうちからそういう問題はできるだけ片づけておこうという趣旨でやっておりますので、私どもといたしましては、かなり時間も経過いたしましたので、まとめていきたいと考えております。





昭和59年04月16日 参議院 決算委員会
[202]
政府委員(防衛庁長官官房長) 佐々淳行
お答えいたします。

実は52年に、シビリアンコントロールのもと、当時の三原防衛庁長官の御指示によりまして、平時のうちから、自衛隊が万が一の場合に行動する際に関連する諸法令について、現行の法令で問題はないかどうか、不備がないかどうか、研究をしておこうと、こういうことで始まったわけでございます。

しかしながら、初期の段階におきまして、非常に不幸なことだったんでありますが、これは戒厳令だとか、徴兵制度の検討だとか、何かそういう恐ろしいことをやるんではないだろうかというような誤解が一部にございまして、その結果、国会に対しましてこの統一見解をお示しをしたような経緯もございます。

当時、そういう思わざる反響が起こった時点におきましては、確かに先生御指摘のように、ちゅうちょされる関係方面もあったと思うんでございますが、その後、理解が深まりまして、各省庁におきましてはこの問題について前向きの御協力がちょうだいできるようになり、最近におきましてはかなり積極的にこういう問題を御理解をいただきまして御協力をいただいておると、こういう状況でございます。





昭和59年05月19日 衆議院 内閣委員会
[014]
日本社会党(社会民主党) 角屋堅次郎
注目すべきは、第9条の戦争放棄の条項について、私は、あなた自身はあなた自身の本来の考え方からいけば第9条の改正ということを言われる人だというふうに本来的には思うのでありますけれども、やはり総理になられるという総合的なバランス感覚というのがこの見解の中にも出ておるのかもしれません。ただしかし、この憲法調査会で述べている意見そのものは、これは私どもが見てみてやはり重大な逆問題提起をしておると思うのですけれども、第9条問題についてはあなたは、条文をそのままにして自衛隊の出動、徴兵、海外派兵、さらに核兵器保有の可否、こういう4項目の重要な問題については政府自身が解釈を示して、これを国民投票にかけて、国民がその政府見解の可否を投票を通じてやる。

ここで掲げておる自衛隊の出動、徴兵、海外派兵、さらに核兵器保有の可否、これがその後、憲法問題が議論されるときに、徴兵制は現行平和憲法のもとでは認められない、海外派兵は認められない、また、核兵器保有の可否と言っているけれども、これも非核三原則の堅持あるいは原子力基本法、さらに憲法の理念、こういう点から見てこれも認められない、自衛隊の違憲、合憲の問題は議論の存するところでありますけれども、徴兵制、海外派兵、さらに核兵器の保有の可否という点について政府見解を示して国民投票にかけるという考え方、これ自身が私は問題だと思うのだが、これは、あなたがだんだん政治家として大成されるに従ってここのところはあるいは考えが当時と違ったのかな、こういう感じを持っておるわけです。





昭和60年04月08日 衆議院 安全保障特別委員会
[063]
日本社会党(社会民主党) 天野等
ところで、有事の際における緊急の兵員の充足という観点から、徴兵制の必要性という問題について、防衛庁はいかがでございましょう。

[064]
政府委員(防衛庁長官官房長) 西廣整輝
私どもは、有事といえ平時といえ、徴兵制というものは全く念頭に置かずにもろもろの考え方を進めております。

[065]
日本社会党(社会民主党) 天野等
有事の際でも徴兵制度は必要がないというふうに防衛庁としては共通の見解を持っていらっしゃる、そういうふうにお聞きをしてよろしいわけでございましょうか。

[066]
政府委員(防衛庁防衛局長) 矢崎新二
我が国におきます防衛力整備の基本的な考え方は、御承知のように「防衛計画の大綱」に示されているわけでございますが、その基本的な考え方は、有事におきまして日本が武力攻撃を受けた場合には限定的かつ小規模な侵略には原則として独力で対処し得る防衛力を持とうということにしておるわけでございます。そういたしまして、それを実施するための陸上自衛隊の体制といたしまして、「防衛計画の大綱」の中で18万人という枠組み、それから13個師団等という編成、そういったものを基本的な枠組みとして定めておるわけでございます。

したがいまして、私どもは、有事におきまして限定的かつ小規模な侵略が起こりました場合には、原則としてこういった陸上自衛隊の力でもって対抗すると同時に、独力で対処し得ない場合は米軍の支援を待って侵略を排除していく、こういう基本的な考え方に立っておるわけでございます。そういう基本的な考え方で私どもは防衛力整備をやっておるわけでございまして、御指摘のような徴兵制をとって対処するという考え方はとっていないわけでございます。

[067]
日本社会党(社会民主党) 天野等
徴兵については一応承っておきまして、徴用制、これは非常に幅広い概念だと思いますから、とりあえず自衛隊法103条の従事命令について、これに罰則をつける形で強制力を持たせるという場合に憲法との関係がどういうふうであるかという点で法制局の見解をお伺いいたします。

[068]
政府委員(内閣法制局第一部長) 前田正道
自衛隊法第103条の規定によります従事命令に違反した者に対しまして罰則を設けることとすることの可否につきましては、これまで政府は、要約して申し上げますが、同条第1項の「自衛隊の行動に係る地域」は危険な地域であるから、そのような地域での命令については国民の基本的人権との調整ということは当然問題になる、そういう点については慎重な上にも慎重な検討が必要であろうということ、また罰則を科すべきかどうかということにつきましては、非常に慎重な見解を防衛庁はとっておるというふうに答弁してきておりますが、このような考え方は現在でも変わっておりません。

[069]
日本社会党(社会民主党) 天野等
防衛庁でもこの罰則の問題については、従事命令について、あるいは有事というようなときに罰則で強制をしなければならないような状況では心もとないので、国民の積極的な協力を求めるのだから罰則ということは考えなくてもいいのだというような御答弁もあったように思いますけれども、この点につきましての防衛庁の見解はいかがでございましょうか。

[070]
政府委員(防衛庁長官官房長) 西廣整輝
ただいま先生が申されましたとおり、この罰則を設ける件について、それが直ちに憲法に違反するかどうかということにつきましては、私どもよくわからないわけでありますけれども、そうではないんじゃないかと考えておりますが、いずれにしましても、法制局の方でお答えになったように、国民の権利義務に関係する問題でありますので、慎重の上にも慎重にという考え方であります。

特にこの業務従事命令といいますのは、防衛出動が下令された時点で出されるものでありますので、まさに国家危急存亡のときでありますので、当然国民の御協力がいただけるものと我々考えておりますし、また、罰則がなければ協力をしないというようなことではとても役に立たないと申しますか、困るということもございますので、罰則をつくることがいいのかどうかということについては、私どももいろいろな意見があるわけでございますが、さらに引き続いて検討いたしたいということであります。





昭和60年04月10日 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会安全保障問題小委員会
[033]
参考人(元統合幕僚会議議長) 竹田五郎
次は、国民の防衛意欲でございます。

言うまでもなく、国民の防衛意欲は必要でございますが、この意欲が高まるということは、現在の自衛隊の能力が倍加するということになると思うのです。

自衛隊について実は私もそのときの責任のある者でございますけれども、徴兵制をとらない理由として、憲法13条、18条に抵触するから徴兵はやらないという政府の見解が示されました。私も徴兵には現在行うことは反対でございますけれども、だからといって、これが憲法に抵触する、しかもそれは公共の福祉の場合であるとか、あるいは苦役であり奴隷的待遇であるから、だから徴兵はいけないというような理論づけというのは、これは国民の防衛意欲に少なくとも水を差すものであり、自衛隊の士気に影響すると言ってよろしいかと思います。

どこの国の、どこの国と申しますか、ほとんどの国の憲法では、国を守るということは国民の崇高なる義務であるというふうに言っておるわけでありまして、徴兵をしないというのは憲法違反ではなくて政策の問題ではないかと私は思います。





昭和61年10月28日 衆議院 内閣委員会
[138]
公明党 鈴切康雄
先日栗原防衛庁長官は、私は陸海空三軍の統率最高責任者であるという不用意な発言をされまして、これは取り消されたわけでございますね。

となると、自衛隊は陸海空三軍ではない、だから戦前戦中の徴兵制度ではないという、そういうふうなとらえ方をするとなるとこれはちょっと問題に実はなってくるわけでありまして、徴兵制度とは、軍隊を平時において常設し、これに要する兵を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるため、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度をいうということでありまして、三自衛隊は軍隊と違うのだから、国民の生命、財産、公共の福祉を守るためには憲法18条、13条より優先されるのだという、徴兵制度を歪曲して、自衛のために自衛隊に入隊する義務を国民に負わせることも憲法上はできないということなんでしょうか。その点は明確にしていただきたい。

[139]
政府委員(内閣法制局長官) 味村治
これにつきましては、ただいま申し上げました定義の中では軍隊という言葉を使っておりますが、これは自衛のための組織でございましても同じように解釈をいたしております。つまり軍隊と申しますのは、戦前それから世界各国で使われておる言葉をそのまま、まあ徴兵ということ自体が我が憲法のもとではないわけでございますので、したがいまして、外国とか戦前とか、そういうことを頭に置いて定義をしたわけでございます。

[140]
公明党 鈴切康雄
そうしますと、もう一度確認をしておきますけれども、自衛隊といえども国民に入隊の義務を負わせることは徴兵制度と同じである、憲法の解釈からはできないということであるということをもう一度御答弁を願いたいと思います。

[141]
政府委員(内閣法制局長官) 味村治
先ほど申し上げました定義の中で、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、こう申し上げましたが、軍隊、我が国の場合に自衛隊に要する自衛官を毎年強制的に徴集するということは、このような徴兵制度と見られるようなものは憲法上許されないということでございます。





昭和61年12月09日 参議院 内閣委員会
[197]
日本共産党 内藤功
第6、予備自衛官については、本法案に関連し、いわゆる民間人初め自衛官未経験者から、若年者を中心に20万人ないし30万人の大量採用の方途を検討中なのではないかとの質疑に対し、肯定も否定もせず終始したことは重大であります。1カ月3000円、訓練中は1日4700円の安上がりの兵員、招集命令におくれるならば懲役、禁錮、有事においては第一線への補充という予備自衛官に民間人、自衛隊未経験者の青年の大量採用をすることは、徴兵制に道を開くものとして強く反対するものであります。

以上の理由により、本法案には反対するものであります。



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