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刑事訴訟法 第2編「第一審」 第2章「公訴」
第260条
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について、公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしたときは、速やかにその旨を告訴人、告発人又は請求人に通知しなければならない。公訴を取り消し、又は事件を他の検察庁の検察官に送致したときも、同様である。
第261条
検察官は、告訴、告発又は請求のあつた事件について公訴を提起しない処分をした場合において、告訴人、告発人又は請求人の請求があるときは、速やかに告訴人、告発人又は請求人にその理由を告げなければならない。
平成28年10月25日 参議院 法務委員会
[151]
無所属 山口和之
無所属の山口和之でございます。
金田大臣は所信的挨拶の中で、検察改革のための取組を引き続き実施してまいりますと述べていらっしゃいます。さきの通常国会で成立した刑事司法改革関連法は、大阪地検の証拠改ざん事件や鹿児島や栃木の冤罪事件など検察の不祥事に端を発したもの、それらの再発防止は当然のことと思います。
検察改革の目的は、刑事手続に関する全ての法令が適切に運用されることでなければならないと思っています。そこで、今日は、刑事手続に関する法令の運用に課題があるのではないかという観点から、告訴、告発制度についてお尋ねしたいと思います。
まず初めに、法務省は、告訴、告発が刑事手続においてどのような意義を有しているのか、教えていただきたいと思います。
[152]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
まず、告訴でございますけれども、告訴は、犯罪の被害者、その他の告訴権者が検察官又は司法警察員に対しまして、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示でございまして、また、告発につきましては、犯人又は告訴権者以外の第三者によるやはり同様の意思表示でございます。
いずれも、捜査機関が捜査を開始するためのきっかけ、端緒となるものでございます。また、一部の犯罪においては、告訴又は告発があることが公訴提起の条件とされている場合がございます。
このように、告訴、告発は、一つにおいては捜査の端緒、また一部の犯罪については公訴提起の条件となっている重要な手続でございます。
[153]
無所属 山口和之
刑事訴訟の目的である刑罰法令の適正かつ迅速な適用、実現にとって非常に重要であると、その意義を持つということだと思います。
告訴、告発が受理されず、事件が放置されているケースもあると伺っております。例えば、地元福島県で、住民1300人以上が原発事故に関して東電の会長など33人を業務上過失致死罪で告訴、告発した際、福島地検は約2か月間これを受理しなかった。また、これ以外にも、福島の例ではないんですけれども、弁護士を頼んで告訴状を出したが、受理されなかったという例も聞いております。
法務省は、こうした不受理の実態を把握しているのか。把握しているのであれば具体的な数字を教えていただきたい。
また、不受理とする理由は何なのか。そもそも、告訴、告発の不受理は法律上認められるのか、教えていただきたいと思います。
[154]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
告訴、告発は、捜査機関に対して犯罪を申告して、その犯人の処罰を求める意思表示でありますことから、例えばその内容自体から何ら犯罪を構成しないことが明白である場合、犯罪事実の公訴時効が完成していることが明白である場合、趣旨が全く不明であり、かつ補正が困難と認められる場合など、明らかにその要件を欠く場合には適法な告訴、告発とは言えず、受理しないことも許されると解されております。
このようにして、最終的に受理しないこととされたものの件数については把握しておりませんけれども、検察当局におきましては、告訴状や告発状が提出された後、告訴、告発の要件を点検して、犯罪事実の特定が不十分であるなど不備がある場合には、その補正あるいは再検討を求めるなどした上で、告訴、告発の要件を満たす場合にはこれを受理しておるわけでございまして、提出から一定の期間を要する場合もあるものの、適切に対処しているものと承知しております。
[155]
無所属 山口和之
もう一度確認したいんですけれども、告訴、告発に形式的な不備がある場合、その旨を伝えて、かつ補正のアドバイスも行っているのでしょうか、そこについてちょっとお伺いしたいんですけれども。
[156]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
検察当局におきましては、告訴状又は告発状に形式的な不備がある、こういった理由で直ちには告訴、告発を受理し難いものにつきましては、その補正あるいは再検討を求めることがあるものと承知しております。
[157]
無所属 山口和之
そもそもそのときに不受理の理由についても説明されているのか、もう一度お伺いしたいと思います。
[158]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
告訴状、告発状が提出された段階で、直ちには形式的な不備があるなどの理由で告訴、告発を受理し難いものについては、補正でありますとか再検討を求めることがございます。
その補正、再検討を求める場合におきましては、やはりどの部分が不備であるのかというようなことについては必要に応じた説明を行っているものと承知しております。
[159]
無所属 山口和之
不受理とされる場合もあるということだったんですが、形式上、しっかり丁寧に出ているのであれば、一旦受理をして、罪とならず、嫌疑なし、嫌疑不十分などの終局処分を下すべきではないのかと思いますが、いかがでしょうか。
[160]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
告訴、告発の要件を満たすものについては、当然これは受理すべきものでございまして、検察におきましても、そういった要件を満たすものについては受理しているものと承知しております。
その上で、告訴・告発状のその自体から明らかに何らその記載、告訴・告発状に記載された事実が何ら犯罪を構成しないことが明白であるような場合、これにつきましては、やはり告訴、告発としての要件を欠いておりますので、適法な告訴、告発として受理することは困難であると考えております。
[161]
無所属 山口和之
そこで判断すべきことなのかどうかということを問いたいと思うんですけれど、裁判であれば上訴、行政処分であれば審査請求や行政訴訟、不起訴処分であれば検察審査会による強制起訴等、違法な判断に対してはそれを是正する仕組みがあります。それが適正な制度運用を支えているものだと思います。
告訴、告発の不受理が違法である場合、これを是正する仕組みはあるのかどうか、教えていただきたいと思います。
[162]
政府参考人(法務省刑事局長) 林眞琴
刑事訴訟法上、検察当局が告訴、告発の要件を欠くとして受理しない場合におきまして、これをその告訴状や告発状を提出した者の申立て等によりまして検察当局が告訴、告発の受理を義務付けられるような制度、このような制度については存在しておりません。
もっとも、その告訴、告発が受理されないことに疑義がある場合、これについては、事実上当該検察官に対して再考を求めるということが考えられまして、そのような場合においては、検察当局においてはこの不受理の理由を説明した上で、事案に応じては先ほど申し上げましたような補正あるいは再検討を求めるなど、告訴状、告発の適正な取扱いが図られているものと承知しております。
[163]
無所属 山口和之
やはり形式的に問題がないものは全て受理するのが法の趣旨ではないのかなと思います。
最後に大臣に伺いたいと思いますが、告訴、告発制度が適切に運用されているかをチェックするためには、受理した件数だけでなくて、届出があった件数と不受理の理由についても把握しておく必要があると思います。
それはなぜかといいますと、受理されている場合が余りにも低かったり、地方ごとでばらつきが多かったりすると、刑罰法令の適正かつ迅速な運用、実現にも支障が生じるものではないかと思います。そのようなことをなくすためにも、届出件数と受理件数、すなわち不受理件数、理由の把握を前向きに検討していただきたいと思いますが、大臣の御意見はどうでしょうか。
[164]
法務大臣 金田勝年
委員御指摘のただいまの議論、伺っておりました。
検察当局においては、告訴状や告発状が提出された場合に、ただいまの議論でも明らかなように、告訴、告発としての要件の有無を検討する、その要件を満たしていない場合には受理しない一方で、要件を備えている場合には受理をすることとしているということでございまして、その結果、必要な捜査を遂げた上で適正に処分をしていくということになろうかと思うんですけれども、私としましては、その法律の要件、法律上の要件を備えた告訴、告発が受理されるべきことは当然のことと考えておりまして、今後とも検察当局におきまして適切に対応していくことを望み、かつそのようにしていくものと考えております。
[165]
無所属 山口和之
先ほど事例を、福島県の例とそうでない例をお話ししましたけれども、そうでない理由の中に、どう見ても受け取ってもいいのではないかと思うような内容も見受けられました。
ということは、受け取るところでの判断というものが全て適正なのかどうかということも把握しなければいけないのではないかと。
そう考えると、受理件数、不受理件数、その理由を明確にすることと、地域差あるいはその場所によっての違いがあるのかということもしっかり把握すべきだと思います。
適正な法律を施行するために判断していく材料をしっかりと取っていくことが大事だと思いますので、今後検討していただくことを期待して、終わりたいと思います。