岡山大学事件 1/2

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昭和44年04月15日 参議院 文教委員会
[076]
自由民主党 中村喜四郎
私は、岡山大学の警察官の殉職事件については、そのことの内容を十分聞いた上で文部大臣にお聞きしたいのでございますけれども、文部大臣の時間の関係上、私は大臣にまずお尋ねしたいと思うのでございます。

今度の有本さんが学生の投石によって痛ましくも殉職されたと、こういう事件は非常にショッキングな事件でございます。大臣はこういう警察官の、大学の問題で、しかも岡山大学の赤木五郎学長が告発して、そして学生課長あるいは坂手教養学部長事務取扱の暴行事件に関連して警察が捜査に当たった問題で殉職したわけでございます。

この殉職に対して大臣はどのようなことを考えておられるか、というのは、私は国民に対しても十分陳謝をしなくちゃならないし、また全国の学生諸君にもこの事件を訴える必要があるというふうに感ずるわけでございますが、文部大臣いかがでしょうか。

[077]
文部大臣・科学技術庁長官事務代理 坂田道太
今度の岡山大学の紛争に際しまして、有本巡査がなくなられたということに対しまして、私は非常なショックを受けておるわけでございます。当の御本人に対しましても哀悼の意を表するとともに、事が大学の紛争で起きたという、そしてまたこの岡山大学におきましては、かつて入学試験を実施いたしまするときに、一部の法学部の教授の中においては、警察官に守られてやるようなそういう入学試験には協力しないというような意味の声明までも出して、そして学校に出てこなかったというようなことも伝えられておるわけでございまして、そういうようないわば学内体制と申しますか、学校側の体制というものに対しまして、非常に私は遺憾なことであるし、同時に、そういうような学校管理に対する責任、あるいは国民に対する責任、あるいはまたほんとうに入学をしようとして来ておる人たちに対して、もうどうでもしても入学試験を実施しなければならないという、そういう責任というものを一体教官たちはどのように考えておるだろうかというふうに私は思うわけでございます。

したがいまして、大学というものが学問の自由あるいは大学の自治ということを叫ばれる以上は、学内におけるところの暴力の横行というものは絶対に許すべからざるものだという意識がまず第一に、全教官になければならないというふうに私は思うのでございます。そういうこの意識の欠如というもの、あるいは教官の統一したものの考え方ということがないところに今日むしろ学生の横行を許しておるところの原因があるのではないか。もう少し大学、学長をはじめとして評議会、教授会もき然たる態度で、むしろ学問の自由を守るために、大学自治を守るために大学の先生方の教育、研究及び学生の学ばんとする自由を守るためにこそ自分たちが力を持たない場合においては警察にお願いをして御協力を願ってこういうような暴力学生を排除すべきものであるというふうに思います。

また教育の正常化のために協力して当たらなければならない。犯罪の事実があった場合は、学内は治外法権の場ではないわけでございますから、これに対して、捜査当局に対して協力をするということは私は十分やっていただかなければならない。そういうようなことがはたして岡山大学において行なわれておったかどうかということについて、反省をし、また私の指導と助言の足りなかったことについて、あるいはこういうような不祥事を招いたのではないかということに対して非常な責任を私は感じておるものでございます。

日曜日でございましたけれども、私テレビ、ラジオ等でそのことを知りまして、直ちに文部省の学生課長を岡山にやりまして、そして有本巡査に対する哀悼の気持ちを表明をいたし、お通夜にも参列をさせました。また同時に、大学の学長にも会ってもらって、病院に入院しておったそうでございますが、そこに学部長に寄っていただいて今後の措置についての検討あるいは指導というものをやってまいったわけでございます。そういうわけでございまして、ほんとうに私はこういうことが二度と再び起こってはならないというふうに思います。

昨年、日大の紛争の最中においても警察官の方がなくなられたわけでございますが、あの際にも、もうこういうことはこれ限りでという気持ちであったわけでございます。その際に国立大学においてこのような事態が起きましたことに対して、ほんとうに私は哀悼の意を表しますとともに、こういうことを未然に防がなければならないと思います。そのために大学当局並びに学生諸君に対してもう少し良識的な、あるいは理性的な行動をとってもらいたいと思います。暴力、ゲバ、そういうようなことは学内においては一切やるべきじゃないというき然たる態度を大学当局がお持ちになると同時に、学生たちもゲバを捨てて理性ある話し合いによって自分の主義、主張というものを表明をするというふうに変わってもらわなければ、もう大学としての意味がなくなるのではないかというふうに思っておるわけであります。

たまたま私は1月の18、19日、機動隊を導入していただきまして、数カ月にわたりましたあの安田講堂というものの暴力学生が排除されました翌日、総理大臣と一緒に東大に参りまして、いろいろ話を聞きました。そのときの警察官あるいは機動隊の方々がいかに周到な注意を払いながら、自分たちの傷を受けることは覚悟の上で、学生たちを守りながら、そして荒れ狂う学生をおんぶしていくその姿、そういうものも聞かされました。また、警視総監からも直接私は伺ったのでございますが、こういうような警察官の気持ちというものを踏みにじるようなことというものは、自由社会において許されるべきことではないというふうに考えるわけでございます。

ことに、このたびの有本巡査は大学を出ておられますけれども、一般の方々は多くは高等学校を出た方々である。そうしておいて、大学生のほうが秩序を無視し、あるいははでな行動をやるというような、この風潮というものはなくなさなければ、もはや私は大学というものは存立をしないというような気持ちさえ感じておるわけでございます。そういう気持ちを持ちまして、微力ではございますけれども、今日の大学の問題とも取り組んでまいりたいと思います。直接問題の起こりました岡山大学に対しましては、今後とも強い指導を行なってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。

[078]
自由民主党 楠正俊
ちょっと関連。いま文部大臣が深く遺憾の意を表されたのでありますが、例の「マスコミQ」で、1月13日に九大の井上教授が、警察官は敵だ、こういう非常に無責任な発言をテレビでやり、また週刊誌でございましたか、そこでも警察官は敵だというようなことを発言しておるのでございますが、敵であるからには殺すというような意識を学生に植えつけるというようなことで油を注いだということは、いくら井上教授が弁明なさっても、私はそういったことがあるということを考えるのでございます。

必ずしも、警察官が敵だと言ったことが、岡山大学で警察官を殺した、殺人事件が起きたという因果関係があるとは思わないけれども、先ほど申しましたとおり、そういったような警察官との対決意識に油を注いだということは確かであるというように私は考えておるわけでございます。

したがって、こういった事件を契機にして、京都大学の井上教授にしても、あの暴力学生をあおり、また九大の教授が警察官は敵だと言った、それから何日もたたないうちに、敵であると彼らが見ておる警察官を殺したという事件があるわけですから、この際、ああいった暴力学生をあおり、暴力学生に対して教唆、扇動をするような教授に対しては、文部大臣としてはりりしい態度で、きびしい態度で臨んでいただきたい、こう思うわけでございます。これは質問ではございませんが、私の考えをここで述べさせていただきました。

[079]
自由民主党 中村喜四郎
私は大臣の悲壮な気持ちもよくわかる。しかし、次から次に学生の暴力行為がエスカレートしてくる。しかも大学内部ではこれをとめる道がない。警察官が出て、しかも警察官がけがをし、死ぬ。いままで、羽田事件以来で1万名以上の人が負傷し、350数名の人がいまだに入院している。こういう状況が各所にある。私はゆゆしき問題だと思う。

そこで大臣がいまの考え方を国民の皆さん方にも、全大学の皆さん方にも訴える必要があると思う。かつて哲学者フィヒテが、レーデン。アン・ディ・ドイツチェ・ナッィオーン、「ドイツ国民に告ぐ」と言って、若い学生たちに訴えた。その心境は別ですけれども、私は、文部大臣はその考え方を国民に訴え、学生諸君に訴える必要があると思う、何かの方法を通じて。そういう方法をぜひやってもらいたいと思う。大臣は忙しいですから、もし私のいまのことに対してお答えがあれば、お答えしていただいて、退席していただいてけっこうです。

[080]
文部大臣・科学技術庁長官事務代理 坂田道太
中村さんの御意見に対しまして、十分私考えまして対処いたしたいと思っております。

[081]
自由民主党 中村喜四郎
じゃ大臣けっこうですから。

では、大学学術局長に。岡山大学では、こういう事件が起きて、現場でなくなったりけがした学生の姿を教授も見ておったはずです。そういう状況で岡山大学側としては何か反省する、これに対処する考え等がにじみ出ておるかどうか、それをお伺いしたい。

[082]
政府委員(文部省大学学術局長) 村山松雄
岡山大学側の直接な意思表示といたしましては、赤木学長が、有本巡査の死亡直後に、病床から声明を発しまして、次のように述べておられます。これは4月12日の午後9時10分に声明を発せられたわけでございますが、「私どもの大学が、紛争のために何物にも代え難い人命が失われたということは、今更申上げる言葉もなく、まことに痛恨のきわみであります。私は、大学の責任者として、深くその責任を痛感しております。有本さんならびに御家族の方々に対して衷心からお詑び申上げるとともに、故人の御冥福を心からお祈りしております。私は、この尊い犠牲を無にしないよう覚悟を新にして全学の反省を求めるとともに、大学の正常化のために一層の献身的努力を払うつもりであります。」これが学長の意思表示であります。

で、こういう学長の決意のもとに岡山大学では13日並びに昨14日大学の評議会を開きまして、対策を練っております。事柄が直接の事件は大学が告発した容疑者の捜査にからむことでありますので、この捜査に大学として一そう協力の態勢をとるという方向がひとつあるわけでありますし、それからまた、こういう事件の根底となりますものは、それ以前から存在する岡山大学の紛争問題でありますので、この紛争問題の解決にも一そう新たな決意のもとに取り組むという態勢で現在進んでおるわけでございます。

[083]
自由民主党 中村喜四郎
なくなった有本さんは、3年前までは香川大学の学生であった、卒業生であった。しかも警察官としてすばらしい成績で、中国管区で第一等の成績で出た警察官、26歳でなくなった。しかもそれは教授や学生の見ている前で傷ついて、そうして死んでいったんだ。

私は、大学側の赤木学長がまことに遺憾である、責任を痛感するというそのことばはわかりますけれども、何かもう少し大学側で、先生側で反省があってしかるべきであり、なおかつこれに所属した全共闘会議の諸君も、人を殺したんだ、石を投げればけがをするということはわかっている、死ぬということはわかっている、それをあえてする。なくなった、こういうことに対して学生諸君も反省の色が見えていると思うんですが、大学側からのいろいろ報告ではいかがですか。

[084]
政府委員(文部省大学学術局長) 村山松雄
大学側の態勢はいま御説明したとおりであります。

それから、学生側の反応といたしましては、岡山大学では現在まで授業が始まっておりませんので、一般学生は大学にはあらわれておりませんので、大学にあらわれておりますのは、この紛争を起こしておる全学共闘会議のいわゆる過激派学生でございます。そういう関係もありまして、現在までのところ過激派学生がこの事件によって反省をし、態度を改めるんではないかという傾向はまだ感得されておりません。それからまた一般学生の反応については、まだ盛り上がりを大学側もキャッチするところまでいっておりません。

[085]
自由民主党 中村喜四郎
赤木学長が告発して、そしてその事件――学生課長が軟禁、暴行され、また教養学部長がつるし上げられて頭にけがしたという、こういう告発事件に関連して問題が起きたわけでございますけれども、この12日の日に、午前3時ごろに警察側が入る際に、事件を大学側、学生側でキャッチして防備態勢を整えたというように新聞には出ておりますが、警備局長、警備状況はわかりませんか。

[086]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
ただいまの御質疑に関連してでございますけれども、岡山大学の今回の場合におきましては、確かに新聞が報じておりまするように早朝から学生が集まってまいったことは事実でございます。元来、前日までの私のほうの判断では、籠城中のものは大体50~60名であろうというふうに判断をしておったわけでございます。

しかしながら、他の大学の例にもございまするように、相当数の部隊を、今回の場合800人でございますが、この部隊を招集をして部隊編成を組むわけでございますので、県下各署からそれぞれ臨時編成をいたしますものですから、そういう意味合いでは事前にその動向が外部に漏れるということはこれは当然あり得ることでございます。

したがって、今回の場合、まだ詳細に、どのような経路でこれが外部に事前に察知されたかいま検討中でございますけれども、結果論から申しますれば、事前にこれが外部に漏れておったことは明らかであろう、こう判断をいたしておる次第でございます。

[087]
自由民主党 中村喜四郎
局長に、頭に入れるために事件の概要と警察官の負傷者状況を簡単にひとつ……。

[088]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
先ほど中村委員のお尋ねの中にもございましたように、この岡山大学の今回の捜査に関しましては、実は本年の2月の15日、学生課長の部屋に過激派の学生が乱入いたしまして学生課長をつるし上げをする、なぐるけるという暴行があり、さらにまた部屋の内部の器物等につきましてもかなり手荒な損害を行なった。この事案は2月15日に発生をしております。同時にまた、学生課員がその日の午後にやはり同様につるし上げを受け、さらに暴行を加えられた、こういう事案。引き続いて3月25日に、教養学部長事務取扱をしておる坂手さんに対しまして、これまたかなり激しい暴行傷害を与えておる、こういう事案が実は2月、3月に起こっておるわけでございます。

これにつきましては、かねて警察も独自で捜査を進めてまいった経緯がございますけれども、3月30日に赤木学長からの告発がございました。4月10日にそれぞれ必要があれば逮捕令状を用意する、それから押収、捜索、検証令状等の発付を受けまして、そこで4月12日の早朝に800名の警察官を動員をいたしまして執行をいたしたわけでございます。その間、先ほどお話し申しましたように、本来、内部におりましたのは50~60名でございまするが、早朝からどんどん集まってまいりまして、おおむね150名から170名程度の学生、これが東門と西門の二手に分かれまして、その門前に机、いす等によりますバリケードの強固なものを築き上げる、こういう事態に進展をいたしました。

そこで警察側といたしましては、押収、検証のためにそれぞれのバリケードを撤去をまずいたしまして、それから、逐次、学生課長の立ち会いを求めて一切の措置を終わったわけでございますけれども、たまたま5時40分過ぎでございますけれども、東門のバリケード撤去のために出動しておりました二中隊、四中隊、そのうちの有本警部補は二中隊の二小隊の隊長の伝令兼記録係ということで小隊の標識灯を左手に持ち、右手に携帯無線機を携行いたしまして、それで非常に激しい投石が東門の正面から行なわれましたので、これを防石網及び大だてでもって防ぎながらバリケードの撤去をはかっておったわけでございますが、大だてに石がぼんぼん当たるものでございますので、携帯無線機で送受話をやっておったわけですが、なかなか難聴でございましたので、やむなく有本警部補は右のヘルメットを若干上に上げましてそうして通話を終わったその直後に、有本警部補から見ればちょうど右側でございますけれども、死角のほうから飛んできました大きな石が耳のちょうど上の頭のところへ直撃をいたしまして、その衝撃でヘルメットが全部飛んでしまいまして、その場に一たん転倒したのでございますけれども、また地上に立ち上がりました。読売新聞の一面に報道されたのは立ち上がった直後の写真でございます。立ったまま原隊に、前のほうへ、小隊のほうへ歩いていったのですが、出血が多量でございましたので、同僚にとめられて救急車で市内の川崎病院に収容した。

午前中、大体6時過ぎまして10分ほどまでは痛い痛いということで意識はあったのございますが、20分程度から意識が不明になりまして、そこで8時半から2時間にわたって、非常に慎重な和田医師の執刀で手術をしたわけでございます。われわれさっそく報告を受けまして案じておったわけでございますけれども、午後になりまして、大体容態は手術もたいへん順調にいったし生命には心配あるまいという実は報告を受けて安堵しておったわけでございますけれども、夕方になりましてから急に呼吸困難を訴えまして容態が悪化して、午後8時40分についに殉職をいたした、こういうふうな経緯でございます。

昨年の9月の日大事件におきます西条警部の死に続いて2人目の殉職でございまして、私といたしましてもまことに遺憾に存じ、また責任を感じておる次第でございます。

概要でございますが、以上のような経緯でございます。

[089]
自由民主党 中村喜四郎
そういう暴力行為から結局殺人行為になったわけですけれども、今後の捜査方針等について簡単にひとつ……。

[090]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
有本警部補が殉職をいたしました同日の午後10時に、岡山県警には特別捜査本部を設置いたしまして52名の専従員をもっていま懸命に捜査をしておる次第でございます。現在までのところ捜査の状況でございますが、一応有本警部補が倒れました場所付近を、東門の門前でございますが、おおむね門の、投石しておりました学生の集団から約8メーター程度のところで倒れたのでございますけれども、その付近からいわゆるコンクリートの敷石それから土木工事に使います石その他27個を領置しました。そのうちの16に血痕が付着しております。目下これを鑑定中でございます。

[091]
自由民主党 中村喜四郎
局長さん、おそれ入りますが、時間がないので、大学の教授陣やその他がこれに、捜査に協力しているかどうかということをお聞きしたいのです。

[092]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
これにつきましては、学校当局からもいま協力を得つつある次第でございます、目撃者もございますので。

[093]
自由民主党 中村喜四郎
この有本という殉職警官の遺族、あるいは補償、こういうことについての対策はどうですか。

[094]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
有本警部補の補償の問題でございますが、いま試算をいたしておりますけれども、直ちに今回警察庁長官から警察官勲功章、これは最高の栄誉でございますが、これをまず贈られる、それから賞じゅつ金200万円、これはすでにお届けをいたしております。見舞い金5万円、総理大臣から特別報償費150万円、さらに県の条例に基づきますところの賞じゅつ金が約400万程度、まだこれは予定でございますけれども、そのほか退職金その他一切を含めまして一応私のほうでいま試算をいたしましたところでは、おおむね1200万程度、それから遺族年金が12万円というようなことになっております。もちろんこれで十分ではございませんので、さらにまた一そう努力してまいりたい、こう考えておる次第でございます。

[095]
自由民主党 中村喜四郎
もう一つ問題は、中央大学が学生の管理になっている。ここで火炎びん、あるいは硫酸、あるいはその他の凶器類が数多く押収された。これはどうですか。

[096]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
3月14日に中央大学の学生会館の押収捜索をいたしたわけでございますが、その場合に押収しましたおもなるものは、火炎びんが92本、それから塩酸――びんに入ったものでございますが、これが14本、角材180本、シンナーでございますが、これが1かん、その他ハンマー、あるいはヘルメットその他の類が相当数ございまして、全体で約700点という程度の押収をいたしておる次第でございます。

元来、まあいまお話しございましたように、中央大学の学生会館は完全に――日にち間違えました、4月10日でございました。学生の武器庫といわれておった場所でございますので、現在学校側のほうでもこれを閉鎖をするというふうなことで、教授にはかっておる、そういうふうに聞いておる次第でございます。

[097]
自由民主党 中村喜四郎
学生の武器がどんどんエスカレートしていくわけでございますが、これに対する今後の警察庁の対処策はどんなふうにしていますか。

[098]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
新聞等でも御案内でございまするように、一昨々年の羽田事件以来、次第に彼らの使いますところのいわゆる凶器というものの質、量ともにエスカレートしてまいっておりますことは、御承知のとおりでございます。中でも1月の東大事件、1月18、19の東大事件にはっきり出てまいりましたように、最近では火炎びんを使いますのが一般化しておるというふうな情勢でございます。ある学生の派閥の一部の出版物には、銃砲をも使うというようなことを広言をしておる。そういうふうなこともこれありまして、彼らの使いますところの凶器は、いま申し上げましたようなことで、次第に激しさを加えていくであろう、こういうふうに予想しなければならぬと考えておるところであります。

したがって、これに対するわがほうの基本的な考え方でございますが、あくまでも警察官の受傷の防止をするという観点から、ヘルメットなり、あるいは防護衣なり、その品物については極力装備の充実につとめてまいっておる経緯でございますけれども、しかしながら、ヘルメットにいたしましても、あるいはいま申しましたような個人装備を、いかにこれを完全に着装いたしたといたしましても、完全に安全であるというふうなことは、とうていこれはもう言い得ないのでございまして、現場におきまして、いま申しましたような、事前における学校側の、管理者側のそれぞれの措置というものにも大きく期待をいたさなければなりませんことは、いまの中央大学の学生会館の例に徴しましても明らかであろうと考えます。もちろん、われわれが使います装備というものは、あくまでも防護的なものだけでございますから、今後さらにまた量におきましても、質におきましても、研究開発を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。

[099]
自由民主党 中村喜四郎
そうだと思います。幾ら防護施設をしても、次から次にしていく。私は大学学術局長に、全国至るところで、次から次にこういう問題が起きておる。入学試験の妨害だけでも、文部省に入っているのではおそらく14~15の大学ではそういう問題が起きていると思います。今後、こういうエスカレートしようとする紛争問題、これに対しては学術局長もしっかりひとつ性根を据えた対策を大臣に進言してもらって、二度と再びこのような警察官の殉職事件が起きないように、文部省でも対策を立てていただきたいと思います。

なお、警備局長のほうには、今日まで羽田事件以来の負傷者、警察官の負傷者の数、あるいは入院している者、むち打ち症等の後遺症の残っている者、それらの家族の状況、こういう問題につきまして資料を後刻いただきたいと存じます。

以上が警備局長への私の資料要求です。

[100]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
ただいまの資料は、さっそくにつくりましてお届けいたしたいと思います。

[101]
自由民主党 楠正俊
関連。日本大学の経済学部に古田を殺せというのがずいぶん書いてあった、大きく。それはいま消えておるようですが、それから学校の先生を養成する教育大学の門を入っていきますと、正面に官憲を殺せと書いてある。殺せ、殺せといったことが各所に書かれておる。そういった状況下にあって、学生の武器はますます、先ほどお話しのようにエスカレートしていく。



[104]
政府委員(文部省大学学術局長) 村山松雄
いわゆる過激運動をやっております学生につきましては、その初期はともかくといたしまして、活動に専念するに至りますと教室にも出てまいりませんし、大学の補導更生の範囲内に入ってこない。もっぱらかれらのセクトの間でことをやっておる。大学にあらわれるときはいわゆる過激活動といったような形で出てくる、そういうことでありますし、また、負傷等の事実がありましても、これは事実はあるようでありますが、いかなる者がどういう負傷をしたかというようなことにつきましても大学側の調査に応ずるような態度でございませんものですから、遺憾ながら文部省並びに当該大学においても過激派学生の負傷状況等についての実態はつまびらかにしておらないのが実情でございます。

[105]
政府委員(警察庁警備局長) 川島広守
ただいま学術局長がお答え申したのと同じでございますが、実はなかなか本人からの申告等もございませんものでございますから、正確なけが人の数が把握できないのが実情でございます。ただ、1月の18、19の東大事件のような場合には、私のほうでも、消防署関係、病院等にせっかく御協力を得ました上で、あの18、19の両日にわたりました事件では、学生のけが146名、これは東大病院、警察病院、関係病院全部当たったわけでございますが、その中には、いまお話しのございました失明という者は、幸いにして、目に当たった学生もおりましたけれども失明はとりとめております。その場合、警察側のけがは653名でございまして、大きな事件等について、極力私どものほうでも、学生側の負傷についても取り調べ、努力はいたしておりますけれども、正確な数をこれは把握いたしかねている次第でございます。そのように御理解をいただきます。





昭和44年04月17日 衆議院 本会議
[020]
自由民主党 田村良平
ただいま議題となりました案件につきまして、緊急質問をいたします。

警察官が殺された。しかも、公務執行中に学生が警察官を殺した。何というおそるべき事件でありましょう。また、何という悲惨な事件でありましょう。

私は、自由民主党を代表いたしまして、去る4月12日、岡山大学構内における捜索検証令状の執行にあたり、過激派学生の無謀なる投石のため、有本巡査の殉職というまことに不幸な、痛ましい事件の発生に関連し、総理並びに関係大臣に対し、教育の本質と治安について、その所信と対策をたださんとするものであります。(拍手)

なお、私は、これに先立ちまして、このたびの過激派学生の投石によりとうとい生命を奪われました有本警部補のみたまに対し、つつしんで哀悼の意を表するとともに、御遺族に対しまして深甚なる弔意とお見舞いを申し上げる次第でございます。(拍手)

さて、大学紛争をめぐり警察官が殺されました事件は、昨年9月4日、神田日大におきまする強制執行の際、警視庁第五機動隊の西条警部が同じく投石により死亡いたしております。有本警部補で2人目の警察官の犠牲者を出したのであります。学園の紛争、この暴力は、もはや断じて許すべきではありません。(拍手)

言うまでもなく、教育は真善美、世界全人類の福祉に貢献すべき真理を探求し、幅広い科学の研究に精励するものであるにもかかわらず、しかも、その最高の学府たる大学の現状は、はたしていかがでありましょうや。東大においては、4億を上回る破壊がなされたというのに、一体だれがどのような責任をとられましたか。このたびは、岡山大学において公務執行中の有本宏巡査が殺されたのであります。いまや大学は、角材と敷石、破壊と殺人、組織された暴力集団の革命演習場となり果てたのであります。(拍手)このことは、もはや警察以前、治安以前の問題ともいうべきでありましょう。すなわち、かかる事態については、まずもってその大学当局自身が、大学教育それ自体の正常化についての責任ある処置が具体的になさるべきであります。学長がつるし上げられ、教授が監禁され、教室が占拠され、入学試験ができない、卒業式ができない、ヘルメットにほおかぶり、まさか、これが大学の制服ではありますまい。土木工事の作業員でもないのに、一体何で大学生の勉強に角材やヘルメットが必要でありましょう。(拍手)このときすでに、事実は集団暴力破壊活動が計画されているのではありませんでしょうか。もはや、これでは学校ではございません。大学に通う今日のわが子を見るとき、来年には大学に進まんとするきょうだいを思うとき、国民に対して、はたしてかかる暴力大学が許さるべきものでありましょうか。もはや大学ではありません。総理並びに文部大臣の御見解をまずもって承りたいものであります。

次いで、特に国家公安委員長並びに文部大臣に次の点をお尋ねいたしたいと思います。

今回の岡山大学の事件は、昨年9月17日、大学構内の公道でデモの整理中の警察官を殴打した学生2名が逮捕されたのが紛争の始まりといわれております。いわゆる学園の自治、学問の自由とはおよそ無関係なところに端を発しておるのであります。

その後、岡山大学学長の告発に基づいて行なわれました捜索検証令状の執行に対して学生が投石し、有本巡査が殺されたのであります。42年の10月からことしのただいま現在まで、1万をこす警察官がこれら学園紛争のために負傷いたしております。なおまた、400人近い入院警察官をかかえておる状態であります。

このたびの事件について、警察当局は、これら過激派学生の今後の警備について、一体どのような方針をもって臨まれんとするのか、国家公安委員長の所見を問うものであります。

一般通行人が道路の敷石をたたき割って警察官目がけて投げつけたら、一体どういうことになりましょうか。いな、その敷石をはがしたそれ自体のみでも、すでに許されないことであります。それが学生なら許される、集団暴力であるがゆえに放置されるならば、一体法治国家の権威、はたしていずこにありましょうや。(拍手)

今回有本巡査に石を投げ、有本巡査を殺した学生は、ただいまもなお学生証を所持し、しかも、大学当局からは何の処分も受けることなく、依然として大学生としてまかり通っておるのであります。これで学園の真の自治、また、学問の自由が一体保たれるでありましょうか。一日もすみやかに厳正な処置がなさるべきであると考えますが、具体的にその御所見を承りたいのであります。

国民の血税による大切な教育の殿堂、国立大学が暴力団に占拠され、新入進学者は受験すら不可能な今日の荒れ果てた大学の姿、文部大臣、大臣が何人就任いたしましょうとも、一体日本の教育ははたしていずこに向かうのでありましょうか。

民族の繁栄と国家の興亡の岐路は、実に教育にあるのでございます。小学校からの道徳教育こそ、勇断もってわが国教育の基本としなくてはなりません。(拍手)かのソ連においても、中国においても、小学生、中学生の義務教育の基本対策は、実は日本のかつて歩いてまいりました倫理教育の精神と全く同じものでございます。(拍手)大学が政権闘争、思想闘争、さらには70年安保闘争のとりでと化すことは、まことに憂慮にたえません。一日も早く正常な学園に返り、真に学問の自由と権威ある教育の殿堂として、国民から信頼と尊敬に足る最高学府としての面目を一新されんことをこいねがいつつ、私の質問を終わる次第であります。(拍手)

[021]
内閣総理大臣 佐藤榮作
まず、有本警部補の殉職に対して心から哀悼の意を表し、つつしんで弔意とお見舞いを申し上げるものであります。

さて、ただいま田村君から御指摘がありましたように、有本警部補の殉職事件は、もはや学園の自治の限界をはるかに越えたものであり、まことに憂慮すべき事態であります。同時に、学生運動自体が学生運動の範囲を越えて、誤った方向に走りつつあることを示すものであります。今日、学生運動は世界先進国の共通の悩みといわれますが、特に、わが国の場合、あらゆる既成秩序を否定する破壊主義、暴力主義が横行し、単なる教育問題にとどまらず、大きな社会問題、政治問題となっているのであります。私は、戦争経験を経た世代と、戦後に育った若い時代との間には、いわゆる意識的または感覚的な断絶があるという事実はよく認識しております。しかしながら、日本民族が長い歴史ときびしい試練の末つかみ取った民主主義体制こそは、あらゆる年代の差を乗り越えて、国民全部で守り抜かねばならないものであると確信いたしております。(拍手)

いまさら申し上げるまでもなく、民主主義は一見回りくどく見えますが、いかなる他の急進的手段を用いても、民主主義社会にまさる理想社会を達成することの不可能なことは、歴史の示すとおりであります。(拍手)若い青年や学生諸君は、自己の人生を探求すると同じ熱意を持って取り組んでもらいたい点であります。

以上の観点から、政府は、社会の秩序維持と市民社会を暴力から守るために、万全の措置をとる決意であります。全国の教師、学生諸君は、目前の事象に惑わされたり、おぼれたりすることなく、国民的要請にこたえていただくよう熱望してやみません。

特に、最近の大学紛争の経過を見まするに、長期間にわたりバリケードで封鎖をしたり、暴力事犯が発生したりしているにもかかわらず、御指摘のように、学生の処分はおろか、警察への被害申告すらされておらないという学校当局の消極的態度は、暴力の横行を助長し、その手段も次第に過激なものになってきているものと考えます。

したがって、これらの学生の暴力行為については、まず大学当局が、暴力は絶対に否定されなければならないことを再確認し、勇断をもって学園から暴力を排除するための具体的措置を積極的に講ずることが何より必要であると考えます。

このような態度で臨んでも、なお大学構内で暴力行為等の法律違反の行為があり、大学当局として措置できない場合には、警察当局の手で厳正な取り締まりを行なうよう措置されることが必要であると考えます。

しかし、何より大切なことは、社会の各界各層において、き然たる態度で暴力否定の機運を盛り上げ、関係者それぞれの立場で暴力排除のための具体的な措置が的確にとられることであり、これによって、初めてこの種事件の続発が予防できるものと思います。

今回の有本警部補の殉職事件に開運して、第一線の警察官は、暴力を取り締まる職責の重大さについて自覚を新たにして、士気は十分高揚していると聞いております。また、各方面の方々から、有本警部補の殉職に対し、心からなる丁重な弔意が寄せられ、警察に対して多大の激励が寄せられていると聞いております。むしろ、この事件を契機に、社会の各層において暴力排除の機運が大きく盛り上がることを期待し、かつ、心から切望する次第であります。

以上をもちまして、私のお答えといたします。(拍手)

[022]
文部大臣・科学技術庁長官事務代理 坂田道太
まず、岡山大学におきまして、学生の暴力によりとうとい人命を失うという、まことに不幸な事態を惹起いたしましたことに対し、文部大臣として責任を痛感するとともに、故有本警部補並びに御遺族に対して、心からおわびとお悔やみを申し上げる次第でございます。

このような事態に至りました背景には種々複雑な問題があると思いますが、私は、今日、大学の自治のあり方を誤解し、あたかも大学が治外法権の場であるかのごとき錯覚を持って、みずからの主義、主張を暴力を用いてでも貫徹しようとする行動を一部の学生がとったにもかかわりませず、大学当局が有効適切な措置を講じ得なかった責任は、軽くないと思うのでございます。ことに、岡山大学では、本年の入学試験実施の際に、警官に守られた入学試験には協力できないなど声明を出しまして、そうして不協力な態度を示すなど、国民のわれわれの常識から考えますると、まことにいかがかと思われるような行為をしておるという、こういうような教官のものの考え方あるいは意識というものが、影響がないとは私は申されないと思うのであります。

今日、大学当局や教授が申します、いわゆる大学における学問の自由、あるいは大学の自治というものは、いまや一部学生の暴力によって失われておるのであります。大学に暴力が横行いたしまする限り、良識と理性の府たる大学は、もはや存立できないと私は思うのであります。今日、私は、大学当局及び全教官が、あげてき然たる態度をもって学内から暴力を排除する決意をすべきときであると信ずる次第でございます。文部省といたしましても、紛争解決のため、大学の措置を支援することにつとめてきたところでございます。去る7日には全国の学長会議を開きまして、強い指導と助言を与えたわけでございまするが、十分な実効があがっていない点については責任を痛感しており、今後大学の正常化に一そう努力を続けてまいりたいと考えております。

大学におきまする学生の地位について、最近各方面において種々論ぜられておりますが、少なくとも、学生は本来教育を受ける立場にあることは明らかでございます。大学が教育を行なうに際し、必要があるときは、教育の手段として懲戒処分を行なうべきことは当然でございます。特に、大学の内外を問わず、社会的な秩序を乱す学生に対しては、大学は、その社会的責任からも、当然その学生としての責任を追及して、必要な懲戒処分を行なうべきであると私は考えるのであります。

従来、ややもいたしますると、大学が学生の暴力をおそれるあまり、その処分をちゅうちょし、あるいは適正を欠き、そのことが学内における暴力行為をさらに過激化させる一因ともなっていることにかんがみまして、今後、大学が真に教育的な観点に立って、必要な処分を厳正かつ的確に行なうよう、各大学に対し指導してまいりたいと思います。

岡山大学につきましては、このたび警官が死亡される事態が発生しましたことは、さきに申しましたとおり、まことに遺憾なことでございます。それぞれの信ずる主義主張は異なるとも、暴力によってこれを遂行し、あるいは妨害することは絶対に許さるべきことではなく、また人権、人命の尊重が重視さるべきことは言うまでもございません。大学当局としては、暴力否認のき然たる姿勢をいささかもくずすことのないよう、私としては強く指導、助言をいたしてまいりたいと思っております。13日には、直ちに学生課長を派遣いたしまして弔意を表しますと同時に、学長を、病院ではございましたけれどもその室にたずね、教授会あるいは評議会等を開きまして、今後の警察との御協力及び捜査当局に対する協力をお願いいたした次第でございます。

今後われわれは、岡山大学だけではなくて、全国立大学等に対しましても同様な指導、助言をいたしてまいりたいと思う次第であります。(拍手)

[023]
国家公安委員会委員長・行政管理庁長官 荒木萬壽夫
お答え申し上げます。

私も、有本警部補の殉職につきまして、優秀な警察官をゆえなく失いましたことを衷心遺憾に存ずるものであります。これに関しまして、全国的に各界からお寄せいただきました御同情に対し、治安当局を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げる次第であります。(拍手)

すでに総理大臣及び文部大臣からお答えを申し上げておりますので、簡単に私の関係します範囲内においてお答えを申し上げたいと思います。簡単にお答えすればいいようなものの、事の原因を申し上げることも必要かと存じますので、お許しをいただきたいと思います。

岡山大学においては、昨年9月17日より過激派学生によるバリケード封鎖が行なわれておりまして、その後、これらの学生の暴行は次第にエスカレートしていたのであります。そのため、卒業式も中止のやむなきに至ったばかりでなく、本年2月15日には学生課長が、また、3月25日には教養部長事務取扱が、暴力学生によって暴行を受けるという事案まで発生したのであります。したがって、大学当局も、ようやく3月31日に至り、これら教職員に対する暴力事案についての告発を赤木学長名で行ない、岡山県警察では、この告発に基づきまして逮捕状、捜査差し押え令状、検証令状を発付してもらいまして、去る4月12日学内の強制捜査を実施したのでございます。御存じのとおり、有本警部補の殉職事案は、この強制捜査を妨害しようとした暴力学生の投石によって引き起こされたものでございます。

このような事態となりました原因につきましては、いろいろな問題が提起できるとは思いますけれども、特に重要な原因としてこの際指摘さるべきことは、大学の自治や学問の自由とはおよそ何のかかわりもない、しかも、そのために有害であるところの過激派学生の暴力を長期間放任してきた、岡山大学のみならず、全国数多くの大学当局の姿勢であると考えるものであります。(拍手)

すなわち、国立、公立の大学について申し上げれば、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という刑事訴訟法第239条が公務員に課している告発の義務をすら履行せず、国民からその管理を負託された大学施設が暴力学生によって不当不法に占拠されても、それを排除して国民に対する責任を果たそうともせず、さらにまた、警察官等に当たれば死に至るであろうという殺人的な投石その他の暴力行為をあえてした学生の処分すらもこれをやらないで、これらの暴力学生を放任してきたのでございます。このような大学当局の姿勢が、過激派学生の暴力行為をエスカレートさせた最も重要な原因と私は考えるのであります。(拍手)

したがいまして、この種の事件の予防ないし対策としましては、申し上げればいろいろございますことを承知いたしますが、最も必要なことは、先ほど文部大臣からも指摘されましたとおり、総理からも指摘されましたとおり、全国の各大学当局が大学管理者としてなすべきこと、つまり、犯罪の告発、学内における不法占拠等に対する退去命令などの措置、警察活動に対する協力、暴力学生に対する処分等の諸措置を的確に行なうことによって、暴力排除についてのき然たる態度を示すことが、まずもって必要であると存ずるのであります。(拍手)

さらにまた、国民の皆さま方が、民主主義の議会政治の敵であるといわれる暴力をはじめとする不法行為、無法許さじとする信念をあらためて確立されるよう、世論の形成のためにすべての国民が努力していただく。私どもももちろんでありますけれども、そのことが、またあわせて期待される課題だと存ずるのであります。(拍手)

なお、申すまでもなく、毎度申し上げておりますが、警察は、およそ最高学府とは本来無縁のものであります。不幸にして、以上申し上げるような暴力をはじめとする不法行為が学生によって行なわれ、しかも、教職員がこれを放任し、中には、これとぐるになっておる人もあるとうわさされるのでありまして、法の命ずるところに従い、法の範囲内において、平和な国民の生活を保障するために責任を与えられ、権限を与えられている警察当局が、学内であろうと学外でありましょうとも、本来の法治国における民主警察の責任を果たしつつ、国民の御期待に、また大学全体の正しい立場からの御期待にこたえる全努力をすることは、当然のことと心得ておることを申し添えさせていただきます。(拍手)



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