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昭和21年08月17日 衆議院 本会議
[012]
日本進歩党 椎熊三郎
最近に至りましては一たび帰国したる彼等、特に朝鮮人の如きは、更に集団的に或る種の組織力を以て、再び日本に密航潜入せんとする者が、日を逐うて其の数を増加し、九州、山陰方面に於きましては、其の数実に数万に及ぶと聞き及んで居るのであります、而も彼等は日本警察力の微弱に乗じて、兇器を携え、徒党を組み、驚くべき兇悪性を発揮して、当該住民の生活を脅かすこと実に言語に絶するものがあると聞いて居ります(拍手)
而も尚ほ恐るべきは是のみに止まりませぬ、彼等の中には「コレラ」、「チフス」、赤痢等の保菌者が多数あって、是が内地に伝播されて、今や内地に於きましては各所に夥しき罹病者を出して居る事実があります、
[013]
内務大臣 大村清一
最近西日本の鳥取、島根、山口、福岡、佐賀、長崎の各県沿岸に亘りまして、終戦後帰鮮致しました者等の中で、密かに機帆船等に便乗致しまして、分散的に若しくは集団的に本邦内に潜入を企てる者が少くないのであります、本年4月には其の数500余人でありましたものが、5月、6月と漸増致しまして、7月に至りましては実に8900余人に及ぶと云う有様であります、関係地方官民の努力に依リ、凡そ其の8割は検挙致して居りますが、其の2割は逃走を致して居ると云う状況であります、尚ほ他に密かに潜入を致し、統計の数字に上らぬ者もある見込でありまして、それ等の者は本邦各地に分散して、不堅実なる闇の生活を営み、治安攪乱の禍因となる虞が多大であります、
加之(しかのみならず)是等密航朝鮮人の中には、「コレラ」を持って入って来ると云う危険が昨今頗(すこぶ)る大きいのでありまして、現に発見致しましたものだけでも、6月以降に於きまして真性「コレラ」が50人、疑似其の他のものが10人、合計60人と云う状況でありまして、保健衛生上より見ましても、国民に多大の脅威を与えて居る次第であります、
[014]
厚生大臣 河合良成
朝鮮からの密航者の持って参りまする病毒は、「チフス」、赤痢等も多少ありますけれども、問題の中心は「コレラ」なんであります、
それで上海からの復員の時に浦賀へ来ました「コレラ」の病毒に付きましては、是はもう全防疫員の献身的努力に依りまして、御承知の通りに全く終熄致しました、聯合国側の視察者からも特別な賞辞を贈られて居るようなことであります、
所が今度は南鮮に非常に「コレラ」が猖獗(しょうけつ)して居ります、それで只今までの結果に依りますと、病毒の齎(もたら)された件数が59件、患者数が295名であります、是は浦賀の場合と違いまして、中々密航者が捕まらない、直接上陸して参るような人員が多いので、非常に防疫に骨が折れる実情であります、それで密航者を捕えたものは、舞鶴、仙崎、佐世保の3検疫所へ持って行って直ちに検疫致しますし、又上陸した密航者は、其の発見地附近に留置場を作りまして、其処で検疫致して居る次第でありまして、全防疫陣を挙げて涙ぐましい献身的努力を致して居る次第であります、併し問題は上陸者の範囲が広汎に亘りますので、非常に骨が折れるのであります、
昭和21年09月05日 貴族院 予算委員会
[041]
内務大臣 大村清一
朝鮮人に付きましては、在住者に付ては只今申上げる次第でありますが、近時の情勢と致しまして、誠に困った問題は、朝鮮内の状況から起りますることと思いまするが、嘗て内地に在住致したような経験を持って居りまする者は、我が国に於ける生活が偲ばれるものと見えまして、殆ど生命を賭して朝鮮から脱出し、日本に密入国をしようと云う数が、夥しいものに上って居るのであります、
7、8月の交になりますれば、7月に於きましての統計に依りますと、凡そ8000人の密入国者があったと云うことになって居ります、併し是は密入国のことでありまするから、統計に上らざる数字も可なりあるものと想像しなければならぬのであります、そこで7、8月の交になりますると、月々1万人内外の密入国者があったのであります、
其の中、是は関係府県の警察が全力を尽しまして、密入国者の防止に努めて居ります、今迄の成績に依りますると、7割乃至8割は逮捕致しまして、進駐軍に引渡して強制送還を致して居ります、併し1割、1000、2000人の者が密入国を致すのでありまして、密入国者は勢い総て闇の生活でなければ、生活出来ぬことは当然のことであります、是が為に我が国の社会治安を紊す虞が極めて多いのでありまして、此の点に付ては警察上非常に憂慮を致して居る次第であります、
現に関東地方に於きまして、兇暴なる強盗団、之を捕えて見ますると、結局密入国を致しました朝鮮人の「グールプ」であると云うような事件も、色々起って居るのであります、此の一例が雄弁に証明して居ります、
此の問題は誠に容易ならぬことと考えて居ります、そこで関係地方の警察を督励致しまして、警察官だけでは人が足りませぬから補助警察官をも増員致し、其の他有らゆる手段を講じまして、密入国を防止することに懸命の努力を致して居ります、併し之に付きましては更に海上哨戒をやる、或は優秀艦艇に依る密入国船の拿捕、或は之を撃沈をすると云うような処置を致しませぬと、あの滔々たる密入国者を阻止することは出来ないのであります、又飛行機に依る哨戒をやり、尚進みましては聨合軍の好意に依りまして、朝鮮から密出航をする者を取締ると云うような色々の問題に付きまして、手を打たなければならぬ点が残って居ると考えらるるのでございまするが、此の点に付きましては、只今折角、色々計画も致し、関係方面とも打合せを遂げて居るのでありまして、そう云う確乎たる自信ある防遏策が打立て得ると云うように考えて居る次第であります、
尚申添えて置きますが、此の密入国者は単に闇の生活をして犯罪の原因になると云うこと以外に、誠に困った問題でありまするが、朝鮮の内地に於きまして、「コレラ」が蔓延致して居りまして、密入国者が「コレラ」菌を持って参ります、そうしてそれが日本内地に於ける「コレラ」の蔓延の原因にもなる、
是は厚生省との間に於きまして数字が一致して居ないのでありますが、内務省の調に依りますと、70~80人の「コレラ」患者が出たことになって居る、厚生省の言う所に依りますと、それよりもずっと多いことになって居ります、何に致せ、100人位は「コレラ」患者があったと云うことは明かなのでございます、此の点は、誠に時節柄憂慮に堪えざる所であります、
而して又「コレラ」の蔓延の原因が密入国者にあると云うようなことに付きましては、進駐軍の安全にも関係の多いことでありまして、日本国と致しましては、進駐軍の安全を保持する上に於きましても、密入国を徹底的に防遏すると云うことに致さなければならぬと考えて居る次第であります、
昭和21年09月12日 衆議院 臨時物資需給調整法案委員会
[163]
日本社会党(社会民主党) 田村定一
私は時間の関係上内務大臣に率直に質問致しますから御答弁を御願ひ致したいと思ひます、是は食糧問題と関連があるのでありまして、総理大臣が御出席がありませぬから、簡単に内務大臣に御尋ねして見たいことは、最近終戦と共に朝鮮人は相当帰国したかの如く見えたのでありますが、私は山口県に住んで居る関係上、山口県或は又北九州方面に逆入して来る鮮人が、日に日に増加して居るのを見るのであります、
随(したがっ)て是等の朝鮮人は一定の仕事もなく、又一定の食糧の配給と云うようなことも無論ないのであります、随て是等何万と云う数字に上るであろう朝鮮人が食糧を買漁ると云うようなこと、或は又闇「ブローカー」と云うことの中心になって居る、
今日主食の増配が叫ばれ、東京方面でも相当食糧の価格が下って居る今日、高円寺辺りでは60円なら闇屋で十分米が買えると云うような、大都市ですら其の位の価格に下って居るのに、山口県或は北九州方面、例えば福岡県では4~5日前のことでありますが、1升120~130円して居る、山口県で80円ばかりして居ると云うような事態を我々が考えますと、今日日本の食糧対策、或は又色々な点に於て相当な支障を来すのではないかと云うことを見受けるのであります、
[164]
内務大臣 大村清一
唯御話の如く、最近に於きまして密入国者が激増する傾向であります、7月の調査に依りますと、凡そ長崎から敦賀まで位の沿岸各地に対しまして、極めて熾烈なる密入国が展開致して居るのであります、其の数は統計に上りましたものが月に凡そ8000人であります、其の内の1割乃至2割程度のものは結局逮捕するに至って居りませぬ、8~9割の者は之を逮捕致しまして、進駐軍に引渡し、進駐軍の手に依りまして本国に強制送還を致して居るのであります、
併し8000人と申しましても、是は数字に上った者でありますから、夜陰密かに入国を企てる者に於きましては、可なりの統計の数字に上らない者もあることを推測されるのでありまして、御話の如く昨今の情勢では月々1万人内外の密入国者があると云うように考えて居る次第であります、
併し之に対しましては御話の如く、其のような密入国者が成功致しまして、日本の社会に潜り込むと云うことは、色々の面に於きまして非常な支障を来すのであります、密入国者は申すまでもなく悉く闇の生活でなければ生きて行かれないのでありまして、食糧の配給も受ける訳に参りませぬ、其の他凡ゆる生活が闇の生活である、闇の生活には不正が伴うと云うことは是は必然でございまして、是が我が国内の治安を乱す禍因になることは、火を賭るよりも明かなことでありますので、関係地方に於きましては、全警察力を尽して、其の密入国の取締に懸命の努力を致して居ります、
尚ほ警察力が密入国の取締の上に十分ならざる所に於きましては、特に民間から警察補助員の応援を受けまして、其の力の足らざる所を補うと云うようなことに付きまして、各府県に於きましてそれぞれの事情に応じまして、出来るだけの措置を講じて居るのであります、尚ほ又一面に於きましては、是は海岸線を警備致しまして、其処で密入国者を待って居って捕えると云うこととは如何にも非能率なのでありまして、出来得まするならば快速艦艇を以ちまして、密航船を拿捕する、若し更に進んで可能でありまするならば、密出国を取締ると云う所まで徹底しなけれは、此の勢いを阻止することは甚だ困難でございますので、是等の点に付きましては、今日の我が国だけの力で之を解決することが困難でございます、故に此の点に付きましても連合国の支援も懇請致して居る次第であります、
尚ほ言い落しましたが、此の朝鮮人の密入国と云う問題は、我が国の社会治安の上に非常に憂慮すべき支障でありまするのみならす、朝鮮内に「コレラ」が蔓延致して居りますので、密入国者が「コレラ」の帯菌者として──他の伝染病も持って参りますが、最も憂慮されるのは「コレラ」でございます、こちらに入国しました者の中で、既に相当真性「コレラ」の発生した者があるのであります、
此のことは国民の衛生の上に於きまして重大問題でありますのみならず、又進駐軍に対しましても甚だ憂慮すべきことがあるのであります、故に此の点に付きましては厚生省に於きましても、懸命の努力を防疫に捧げて居るような次第でございます、併し何れに致せ、密入国を根絶すると云うことに全力を尽さなければならぬのであります、
昭和23年04月02日 衆議院 治安及び地方制度委員会
[005]
政府委員(運輸事務官) 山崎小五郎
先ほどから大臣から御説明ありましたように、海上保安というものは交通の安全と治安という2つの面がございますが、運輸省といたしましては、大体交通安全の立場から仕事をやっております。その仕事の内容を申し上げますと、大体灯台、水路、それから船舶のいろいろな安全検査、船員の職能試験、あるいは港におきまする工場、事務、その他いろいろありますが、そういうものが大体主な仕事であります。それから内務省は水上警察の仕事を海上においてやっておるわけであります。大蔵省は税関の密貿易の取締を海上でもやっておったのであります。それから農林省は漁業監督、密漁の監督というようなことをやっております。あるいはそのほか厚生省の検疫、動植物の検査というようなそれぞれの事務をやるために港に出先機関をもち、しかもそれを執行するために、いろいろ船や通信その他の施設をもっておったわけでありまするが、戦前におきましては、大体海軍という海上におきまする実力機関がありましたために、必要な場合には海軍にS・O・Sを出しますと、大体海軍の協力を得てそれの任務を完全にやっておったわけでありますが、終戦後その海軍がなくなりましたために、海上の治安関係に非常な空白ができてきたわけであります。
こういう状況にありましたところに、わが国から引揚げました朝鮮、支那等の国民が再び日本へやってくる。いわゆる朝鮮人の密航というものが非常に盛んになりました。それに伴いまして密貿易も多く行われるようになり、あるいはコレラ船等もやってまいりまして、九州の沿岸は非常な脅威にさらされたわけであります。
これがため遂にG・H・Qにおきましても、日本政府に対しまして昭和21年の6月12日に、こういう不法入国船舶の取締りをやるように指令が出たわけであります。この指令に基きまして海運総局に、不法入国船舶監視本部ができまして、地方といたしましては、九州の海運局に不法入国船舶監視本部というものができておりまして、現在までその仕事をやっておるわけであります。
昭和23年04月05日 参議院 決算・治安及び地方制度・運輸及び交通連合委員会
[014]
政府委員(運輸事務官(海運総局、不法入国、船舶監視本部副部長)) 山崎小五郎
先程大臣から提案理由に説明いたしましたように、海上保安庁法案が今日出ることになつたのでありますが、もう少し具体的に今までの経過を申上げますと、大体一口に海上保安と申しますと、海上におきます治安の維持、海上の交通安全の保持ということになるのでございます。大体従来運輸省といたしましては、海上交通安全の立場から、灯台局或いは水路部の仕事、或る港におきましては港庁を置きまして開港港則の仕事をやっております。それから船舶の安全検査、或いは船員の海技免状、資格書、こういうふうなことを大体交通安全の立場から行政をやっておったものであります。
大蔵省の税関の立場から、海上でも密貿易の取締をやることになっております。治安維持のために水上警察が、これは沿岸或いは港におきます警察事務をやっておったわけであります。農林省は大体漁業法に基く密漁の取締の仕事、或いは船で入って来る動植物の検査等をやっております。それから厚生省が船で入って来る検疫の仕事を港でやっております。大体これか従来海上におきます各行政庁がやっておった仕事でございます。おのおの現地に機関も持ち、或いは施設も持っておったわけでありますが、従来はこれにプラスしまして海軍がございまして、いざという場合には海上におきましてはいつでも海軍に援助を求めますと、海軍が応援するということになっておったのであります。
ところが終戦によりまして海軍がなくなりまして、そこに大きな穴ができまして、而も従来海軍に依存しておりましたために、おのおの皆貧弱な施設で、到底それでは海上の治安が保てないというような状況でありましたが、時たまたまそのときに終戦になりまして、朝鮮の人たちが一時朝鮮に引揚げたのでございますが、朝鮮の情勢が面白くないというようなことから又どしどし内地に密航を企てたわけであります。そのために密貿易の事件も非常に多くなって参りましたり、或いは又朝鮮にコレラが流行いたしまして、コレラが北九州或いは中国の裏の方に蔓延したというような非常に憂慮すべき状態になって参りました。
遂に連合軍におきましても昭和21年の6月12日に、コレラ船の取締、密貿易の取締を日本政府でやるべしという指令が出ております。このときに各省集まりましていろいろ考えましたが、やはりこれを取締るためには別々の組織と機関を持ってやったんでは非常に不経済不合理でありますので、綜合的にやった方がよろしいということになりまして、運輸省海運総局の中に、不法入国船監視本部というものができたのであります。九州の海運局に不法入国監視部というものができまして、これが取敢えず海運局で持っておりまする船14~15艘而もこれはパフボートで余り外に出る能力はございませんが、応急措置といたしまして、これらの船を動員する外、少し傭船等もやりまして、現在九州の海運局を中心にしまして活動をやっているわけであります。
ところがこれではながく広い海域におきます取締は決して十分ではありません、いろいろ連合軍と相談をいたしました結果、昭和22年の4月22日に向うから再び指令が出まして、今まで第二復員局が持っておりました特務駆潜及び特務掃海艇を38隻この海運総局のため引渡す、これによって今指令をしたコレラ船及び密貿易その他海上における海難の救助、いろいろこういう仕事をやれという指令が来たのであります。勿論これは必要なるときにはいつでも連合軍に引渡すという条件は附いてございますが現実に今まで殆んど私の方で仕事をやっております。