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昭和23年04月13日 衆議院 本会議
[007]
日本社会党(社会民主党) 川合彰武
さきに芦田総理大臣は、施政演説におきまして、国内治安が斬次改善しつつあることを強調されたのでありますが、今回の浜松事件は、国内の治安事件としましては、実にわれわれは重視せざるを得ない大きな問題であります。まず私は、事件の経過を述べつつ、かかる問題に対する政府当局の所信を伺いたいと思う次第であります。
すなわち本月の4日、浜松地方におけるところの旧小野組と称する一つの封建的な組織、この旧封建的組織の頭領と目される小野晴義君、静岡県の県会議員であり、同時にまた県議会議員であり、同時にまた県議会の警察委員長をされておるその小野晴義君の宅に、午後4時ごろ10数名の暴漢が闖入した。それから間もなく、その日の7時ごろに、朝鮮人によつて経営されておる国際マーケツトに対しまして、旧小野組の一団が襲撃し、そして戸障子を破壊し、あまつさえピストルが乱射されて、若干の死傷者を出した。
ところが、またその翌る日も同じようなことが各所に繰返されまして、浜松市は、そのために中央部は灯火管制を布いた。そして市民はまつたく通行を禁止して、戦々競々として不安な生活を送つた。その翌る日の6日にも若干の事件が繰返されたのでありますが、ときたまたま岐阜のアメリカ第8軍の24連隊よりは、ジープ10台並びに特別列車によりまして175名のアメリカ軍隊の出動を見、さらに第24連隊長は飛行機によつて浜松市に急遽来飛されたというような事件であります。
これに対しまして、当初浜松市の警察署は全力をあげてこの時件の解決に当つたのであります。200名近くの人員ではとうてい解決が困難なために、公安委員の勧告に基きまして、そうして静岡県下の国家地方警察署並びに自治体警察の協力を仰いで、どうにか一応事件は落着を見ておるのであります。私は昨日まで浜松におつたのでありますが、その情報によりまするならば、依然として事件は未解決のまま、表面は平常化の状態にあるけれども、実際は相当に底流にまだ動いておるというような情報であります。
私は、日本人並びに朝鮮人の民族的な対立によつて、かかる不祥事が起きたとは思いません。しかしながら、旧小野組という一つの、いわゆる暴力団的な機構が存在し、しかも、その有力な分子の号令一下、遠くは三重県あるいはまた愛知県から応援者が来るというようなことは、すなわちまだ旧封建的な組織あるいはまた集団的な組織が存在しておるということである。政府は、かかることに対しまして、従来より徹底的な取締りということに対しまして非常な努力を払われておるけれども、依然としてまだこういうような組織が現存しておるということはいかがなものであろうか。かかる問題に対して、政府はどういうような方針を持つて今後臨むかどういかという点を、まず第1点としてお聴きしたいのであります。
第2点といたしましては、凶器の取締りということに対しては、特に連合軍の関係もありますので、政府におかれましても、この取締りは厳重なる方針をもつて臨まれておるとは思うのでありまするが、とにかく今回の事件によりまして、ピストルによる死傷者、あるいはまた猟銃による死傷者が数多く出ておる。すなわち死者が3名、重傷者が11名、軽傷者が多数出ておるというような事実、しかも警察の押収した物件の中には、ピストルが数挺、猟銃が数挺、あるいは日本刀がたくさんあつたというようなことから見ますならば、凶器の取締りにまだ不十分な点があるのではないかという点に関して、今後政府は凶器の取締りについてどういうような方針をもつて臨まれるか。
(中略)
それと同時に、現在の制度のもとにおいては、殊に新憲法下におきましては、現行犯でなければ、裁判官の令状が発行されない以上は犯人を逮捕することができないというようなことからいたしまして、事件を未然に防ぐということができないのであります。従いまして私は、今後相当に治安維持の観点からいたしまして、事件が発生するとか、あるいはまた拡大するとかいうような見透しが得られる場合においては、これを未然に防止するような方法、すなわち、たとえばそういうような暴徒が、あるいは集団が集合して、対峙の状態にあるというようなときに対しては、あらかじめこれに対して解散を命ずるとかいうことができないものだろうか。また政府はそういうようなことを考えていないかどうか。
しかしながら、かかる事前防止に関する措置は、労働運輸の弾圧とかいうような方向に向かわれるということは、もちろん避けねばならぬのであります。どこまでも国内の治安を維持するという建前のもとにおいてこの制度ができ、また運用されねばならぬことは、申すまでもないのであります。そういう観点から、事前に防止するような立法的措置を政府は考えているかどうかということを、私は特に政府にお聴きしたいと思うのであります。
私は、冒頭に申し上げましたように、7000万の国民の非常な関心を集めておるところの帝銀事件が未解決の間に、まだぼやの中に、浜松市において市街戦さながらの発砲事件が起り、そうして当事者以外に善良なる市民にも死者を出しておるというような事件の性質に鑑みて、政府は責任を痛感し、同時にまた今後におけるところの国内治安の維持のために、どういうような立法的な、あるいはまた行政的な措置を考えておるかということに関しまして、関係大臣の明快なる答弁を要求する次第であります。
[009]
民主党(自由民主党) 安東義良
ただいま川合君より、浜松事件につきまして、治安問題に対する関心を表明せられたのでありまするが、私も、本件について同様なる関心をもつものであります。単に4月4、5日の両日に行われたこの浜松事件のみならず、4月8日には愛知県の犬山におきまして、花見の最中に200余名の鮮人が乱闘騒ぎをやつておるのであります。
私どもが田舎に参りますと、地方民はしばしば私どもに訴える。われわれは鮮人に対して何ら反感を持つていないにもかかわらず、彼らに対しては、課税の方面においても、経済事犯の点においても、はたまた暴力行為に対しても、警察権の発動はきわめて緩漫であつて、その間に大なる差別があることを認めざるを得ない、これは今日の日本において許すべきことであるかどうか、こういう質問を受けるのであります。かくの如き不祥事が今なお跡を絶たないということは、まことに遺憾千万であります。
今日の日本は、昔日の帝国主義的日本ではありません。平和と自由と正義とを理想として、暴力を排して進みつつあるのであります。浜松事件が単なる偶発事件でありますならば、それまででありまするが、その奥底に、あるいは戦後日本人、朝鮮人の間にわだかまつておる一部の悪感情が爆発したものではなかろうかということを、私はひそかに憂うるのであります。かかるがゆえに、私は本件の真相について政府当局の明瞭なる御説明を承りたいのであります。私どもは、もしこの両事件の裏にかくのごとき悪感情があり、またその悪感情を誘致すべき原因があるといたしましたならば、かくのごとき悪感情を除去し、またかくのごとき悪感情を誘発する原因を根本的に除くように努力いたさなければならないのであります。
元来在留朝鮮人は、マツカーサー元帥の指令にもある通り、日本の課税権、警察権、司法権のもとに服することになつておるのであります。現に多数の善良なる朝鮮人は、この精神において日本人の法権に服し、日本人と共に平和にその生業を営んでおるのであります。しかるに、不幸にして一部鮮人がこの点を弁えずして、ときに集団的な行動に出て警察を脅かし、また良民を脅かすがごとき事態が起るということは、まことに新日本の恥辱であります。(拍手)このゆえに私は、今回の事件を契機として、再びかくのごときことが繰返されないように、特に政府並びに日本国民にも要望すると同時に、われわれとしても、その責任を果したいと思うのであります。つきましては、この際政府において、一部鮮人の非行等に対する、殊に暴力行為に対する取締りの徹底について、いかなる方策を持つておられるのであるかということをお伺いいたしたいのであります。
私の申し上げんとするところは、きわめて簡単でありまするけれども、これをもつて質問の要旨といたします。(拍手)
昭和23年04月26日 参議院 治安及び地方制度委員会
[011]
委員長 吉川末次郎
浜松事件、犬山町事件、兵庫県、大阪等の事件は単なる局所的な地方問題でなくして、全国的に共通の問題であり、又日本の治安の維持という見地からいたしますると、日本に在留いたしておりまする朝鮮人がいろいろな点におきまして日本の治安を今日撹乱いたしておりますことは事実でありますので、本委員会におきましても、先般来朝鮮人問題についていろいろ御研究を願つておるような次第でありますが、尚先程の報告に附加えて申上げることをお許しを願いたいと思いますことは、これは私見でありますが、調査の結果考えましたことといたしまして、大体において日本人も朝鮮人も、この終戦後、朝鮮人が日本人と同様の、刑事裁判権の行使について取扱いを受けるものであるということが、一昨年の2月28日附、司法省刑事局長の通牒で、その筋の意を受けて、地方の当局に発せられておるのでありますけれども、その趣旨が警察側にも、亦民間に一般市民の間にも十分に徹底しておらん、朝鮮人の間にも徹底しておらんということが、他に幾多の原因がありますが、一つの重要な原因をなしておるかと思うのでありまして、これは我々の委員会といたしまして慎重に対策を考えなければならない問題であると考えておるわけであります。
或いはこの機会に芦田内閣総理大臣から国会を通じて、例えば本会議において、どなたからでもこの問題について政府当局の朝鮮人問題に対するところの、主として治安の見地からする朝鮮人の問題に対しての政府の意思を質問して頂きたいと思います。そうして政府の意思、声明を、国会を通じて国民及び朝鮮人にこの際して貰うというようなことが必要であるのじやないかというように、これは私見でありますが、そういうことをも、一つお含みを願つた立場で、いろいろこの問題についての本委員会の対策をどうしたらいいかというようなことについて、この際御意見、御質問等がありましたらお述べを願えれば結構であります。
[019]
無所属 小野哲
大体今溝淵さんのお話で概要を理解することができたのでありますが、先程委員長の浜松事件の御報告の中にありました、在留朝鮮人の取扱についての明確なる認識が欠けておつたということも、民族的な感情の闘争から起つたようにも考えるので、この点も十分取上げて行かなければならんと思いますが、同時にこういう事件が各所に勃発しておる。大体時期を同じうして起つておるというところに大きな問題があるのじやないかと、かように思うのであります。それについては、只今の政府委員のお答えでは、まだ内容的に問題は検討されてないというお話でありますので、これは今日御答弁を頂かなくてもよいと思いますが、こういうふうな日本の現状下において、而も時期的に大体同じような時に起つたということから考えまして、その背後関係を相当お調べを願つて、適当な機会に御説明が願いたいことと、もう一つは今回の新らしい警察制度ができて、とかく情報の蒐集、連絡というものが不円滑ではないかという懸念も多分に持つのであります。
昭和23年04月27日 衆議院 本会議
[009]
民主党(自由民主党) 後藤悦治
私は、この機会に、全国的に一大センセーシヨンを起しました今回の神戸並びに大阪におきまする朝鮮人騒擾事件に対する政府の所信を伺いたいと思うのであります。
今回は、終戦後初めて進駐軍司令部から非常事態の宣言をされるというような、まことに日鮮両民族のために悲しむべき事態を惹起したのでございますが、これは私がいまさら申し上げるまでもなく、すでに皆様方は、新聞に渉外局発表が出ておりまするから、あらましは御存じであろうと存じますから、それの重複を避けたいと存じます。ただこの機会に、その実情にいささか言及いたしまして、私が政府の所信を質したい要点の2、3に触れてみたいと思うのであります。
御承知のごとく兵庫県知事は、この朝鮮人学校に対するところの閉鎖命令を出したのであります。また神戸市長は、学校校舎からの立退きを要求したのであります。また市丸神戸地検検事正は、この問題に対しまするところの煽動者を検挙しておつたのでありまするが、これが24日の騒擾において、これらの知事、市長並びに検事正という現地のそれぞれの担当官が、一たび断行した措置を飜して、一応それらの要求を受けざるを得なかつた。これはどういう実情であつたか。この当日の兵庫県庁におきまする場面を、この際一言申し述べてみたいと存ずるのであります。
当日、ちようど兵庫県庁におきまして、兵庫県知事並びに神戸市長、検事正あるいは教育部長、これらの、今回の事件に関係を有しまするそれぞれの責任者が、本問題に関してたまたま協議をいたしておつたのであります。その県庁に、約1000名ばかりの朝鮮人が押し寄せました。現在兵庫県庁は、元の兵庫県立第一高等女学校を、戦災後仮庁舎として使用をいたしておるのでありまするが、これが教室を知事室に充てておりまするために、知事副室は一方口になつておりまして、知事室と知事副室は、仮の壁が設けてあるにすぎないのでございます。たまたまこれらが大挙して押し寄せましたので、知事室に闖入を防ぎますために、官房に関係をいたします県吏員が、内部からこれを阻止せんといたしておつたのであります。この仮ドアを多数の暴力によつてまず破壊して闖入をいたしました。次に、副室から知事室にはいりまするところのこの仮障壁を、壁ぐるみ破壊をしたのであります。こうして闖入いたしました多数の暴力的な行為者は、ただちに知事の卓上にありました電話器を床上に投げつけて破壊をいたし、通信を遮断いたし、その机の上に飛び上りまして、その辺のガラスは散乱をする。あらゆるいす類はことごとく破壊せざるはなし、こうして一つの威圧を加えまして、これらの関係者に、ただいま前田議員が読み上げられたごとき要求の応諾を迫つたのであります。かかる際において、この急を聞いてかけつけました少数のM・Pが、何とかこれを阻止せんといたしたのでありまするけれども、これらの闖入者は、撃つなら撃てと婦人も交えて押し迫つて、このM・Pの阻止に応じなかつたのであります。こういう状態が、遂に強行的にそれぞれ知事、市長、検事正に対して要求事項を承認せしめた。こういう経過をたどつておる次第であります。
私は、一たびこれらの責任者が断行いたしました措置を、こういうような事態によつて撤回をいたすということについては、いかに暴力を背景とした脅迫的行為といわなければならぬといたしましても、断固一身を挺して社会秩序と法を守るべきであつたと存じます。しかし、かような事態のもとにこれらの措置がとられましたことは、まことに遺憾にたえないのでございますが、本日の新聞に報じておりますところによりますと、政府は昨日の閣議において、これらの知事に対するところの罷免要求をいたしまする弾劾訴追、もしくは検事正に対する罷免等を取上げられておらるる模様であります。私は、これら各責任者が、一身をささげて法の擁護と治安維持に挺身し得ざることは、まことに遺憾であつたとは存じまするけれども、現地のこれら責任者のそれぞれの処分によつて、政府の本件に対するところの責任は断じて解除されるべきものではないと考えておるのであります。
私は、さきに本院におきまして、浜松事件を取上げて緊急質問をいたし、政府に警告を発しておるのでございます。この責任は、むしろ政府が負うべきであると存ずるのであります。当面のこの責任に対しまして、私は政府に二つにわけてその所信を質したいと思います。その一は、当面の措置として政府はいかなる処置を講ぜんとするか、いま一つは、将来の対策として政府はいかなろ所信を有しておるのであろうか、この二つに大別をして聴いてみたいと思うのであります。
ただいま申し上げましたごとく、これら知事、市長、検事正等現地責任者の責任はその従たるものでございまして、政府の責任といたしまして、今日の朝鮮人が自己の自由意思によつて日本に在留いたしておるのでございまするからして、この朝鮮人が日本に留まりまする限り、どこまでも日本の法律に従わなければならないことは周知の事実であります。まず、この朝鮮人の内地在住のあり方について明らかにしておかねばならなかつたと思うのであります。
(中略)
教育に対しましての具体的措置といたしましても、もとより日本の学校教育の基準法によりまして、日本人と同等の教育を受けますることは問題はないのでありますけれども、少くとも朝鮮民族が、それぞれ自己民族のために特殊の教育を行わんといたします意欲に対しましては、これは現在の法規が許す範囲内において、やはり一つの私学的便法を講ずることが当然だろうと思うのであります。これは善隣民族のよしみとして、円満なる協調の基盤の上に立つて解決をしなければならぬと考えておるのであります。
私どもは、文化的平和日本を建設してまいりまする上からは、隣邦朝鮮とは永遠に友好的な将来を保持しなければならぬと存じておるのであります。少くともこれは、今日現段階より速やかに出発すべきであると考えておる次第であります。少くとも事件解決は、この見地から政府がしてもらいたいと思うのであります。しかし、この円満協調、善隣友好の基礎の上に立つといえども、さきに申し上げましたごとく、断固として、日本に在住する限りにおきましては、法治国日本の秩序保持ということに、また日本政府としての権限を保持せればならぬと考えております。
かように考えてまいりまするときに、最も遺憾に存じますのは、神戸事件におきましては、共産党の党員であります神戸市会議員の堀川一知君が、これの煽動者として検挙されておるのであります。そのほか8名の共産党員が検挙されております。少くとも善隣友好、円満協調の上に立つてまいらねぼならない際に、これら日本人であるところの共産党員諸君が、民族離間をも来しかねまじきところの煽動的行為をいたし、今日の不祥事件を起しましたことは、日本民族として、愛国的見地よりまことに遺憾至極にたえないと思う次第であります。
昭和23年04月27日 参議院 治安及び地方制度委員会
[011]
無所属 岡本愛祐
芦田総理大臣にお尋ねいたしますが、只今委員長の質問に対しまする御答弁で、今後の治安の維持については従来の方針を堅持して当るというお話でございました。我々はこの現在の新警察法案をこの委員会で審議いたします際に、日本が敗戦後新憲法によりまして軍備を廃した。そうして治安の維持に当りますのはどうしても警察力に頼るより仕方がない。然るにこの新警察案によりますと、自治体警察主議を採られまして、横の連絡、縦の連結ということは非常に弱化して来たのであります。こんなことでは到底完全な治安の維持はできないではないか。
殊に第三国人に対して非常に警察力が弱化をするのじやないか。それで本委員会におきましては政府に要求いたしまして、22年度における第三国人の不法行為、密入国、そういうものの調査といたしまして、朝鮮人の不法行為におきましては、昭和22年に1万5610何件ございます。集団強盗及び窃盗が3553人、件数にいたしまして1884件、それから集団恐喝及び詐欺は、件数にして348件、人数にして593人、その他実に件数にして全部併せまして5682件、人数が1万5610人、こういうことになつております。この他に表に現われないこういう不法行為、密入国の関係もありますが、こういうものは非常に多いのだろうと思つております。然るに最近になりまして段々それがひどくなりまして、毎日のように新聞紙上に現われる集団強盗の大部分は朝鮮人である。家庭を襲い、工場や倉庫を襲い、自動車を奪い遂には列車内で傍若無人の強盗をやつておるのは大部分朝鮮人であります。遂に浜松事件となり、犬山事件となり、神戸大阪の大事件となつて参りました。
これは私が考えますのに、浜松事件、犬山事件のごときは不良朝鮮人が自治体警察を甘く見まして、こういう事件が起りましたのと、日本人が自治体警察は信用しない、自分の力で何とかしてこれに対抗しなければならんというので起つた事件であろうと思います。又神戸事件、大阪事件のごときは一部不良の日本人の煽動もあつたでありましようが、これが朝鮮人がやはり自治体警察を甘く見て起つた事件、こうふうに思うのであります。
日本人は今までは敗戦国民ということを自覚いたしましてその贖罪として、又戦争を放棄して外国人と争わず、文化国家を建設する途上にある慎しみとして忍耐し、隠忍しておつたのでありますが、こういう大事件が続出いたしまするようでは到底辛抱がし切れない。隠忍ということも程度問題であるというふうに皆が考えて来つつあるのであります。
我々は、日本に望んで在留しておる朝鮮人57万人のうち、善良な大部分の人には、今後とも何ら日本人と区別待遇しないで、相携えて共存共栄をし、親善関係を増進して世界の文化に貢献せんことを希望するものであります。併し一部不良の朝鮮人に対しては、不良日本人と同樣に、断乎としてこれを取締つて頂きたい。そうして一日も早く治安の維持をせられて、そうして国民をして安んじて文化国家の建設に邁進するようにして頂きたい。こう思うのであります。
昭和23年05月06日 衆議院 治安及び地方制度委員会
[021]
委員長 坂東幸太郎
その調査に崎川書記が一緒に参つておりましたから、崎川書記より代つて報告の朗読をいたさせます。
〔書記朗読〕
浜松事件の調査報告をいたします。
終戦後の顕著な動向として敗戦の結果、いわば国家全体が一つのわくの中に置かれ、さらに民主化の進行とともに国家の統制力が弱まり、かくて国家による法的統制の裏側を行く諸集団すなはちテキヤ博徒団体、不良青少年団等々の横行跋扈を見るに至つたことは周知の通りであります。しかしてその集約的事例が先般浜松に発生せる日鮮人間の騒擾事件でありまして、浜松事件は、一部日本人対一部朝鮮人の単純なる私闘にあらずして、日本の社会秩序を正しく健全に組み立て直す上において、その根本にかかわる重大問題であります。さらに、本騒擾事件は警察法施行後における大規模な集団闘争事犯として国家、自治両警察間の連絡共助その他両警察の運用上幾多の課題と貴重な示唆を与えられるところ多かりしものであります。
ここに、本委員会は、事の重大性に基き、調査団派遣の決議をなしたのであります、坂東委員長、門司理事、千賀委員は崎川書記を帯同し20日現地に到着、翌21日午前、午後にわたり、新警察法の運営状況を中心として詳細なる調査を試みました。20日は簡単なる予備的懇談に終り、21日は午前から午後2時にかけて坂田浜松市長、市公安委員長廣田氏ほか公安委員、齋藤浜松市警察署長ほか関係各位15名と隔意なき懇談を遂げ、同2時半、要請により調査団は在日朝鮮人連盟静岡県本部委員長李季白氏ほか2名と会見し続いて元小野組々長県議小野近義氏ほか1名と会見し事情を聴取しました。さらに在浜松新聞記者団の要望に基き、県加藤警察長をまじえ、本事件に対する記者団各位の忌憚なき所見を聴取しました。
さて以上の調査を通じて得られた事件の外貌並びに警察措置は次のごとくであります。
事件発生の原因でありますが、まず遠因について述べますと、かねてより浜松市内においては、いわゆる暴力団と目さるる元小野組に対し一部朝鮮人の勢力、急激に増加し、相対立していた模様で、その間にあつて元小野組親分小野近義氏は、数回にわたり朝鮮人対日本人のけんかの仲裁をなしたが、これが結果はいずれも朝鮮人側の不満を買つておりました。また一般市民においては、終戦後とみに激増せる一部朝鮮人の横暴に対しては、恐怖の念を抱く者、あるいは復讐の念を企つる者があり、結局両者の勢力争いに基因して本事件は惹起したものと認められます。
近因といたしましては、4月4日朝鮮人主催により開催したダンス・パテイに、元小野組子分たりし楽士が欠勤し、ためにパーテイは流会のやむなきに至つたのでありますが、朝鮮人側はこれを小野組親分小野近義氏の妨害によるものと誤解し、激興の結果、同日午後5時ごろ市内鍛治町141番地小野興業社社長県議小野近義氏方に朝鮮人新村隆夫外数名が乱入し、同店舗ウインド・ガラスその他家屋内器物を損壊するの暴挙により本事件が発生したもであります。
事件の概要は、第1回、当日4月4日、前記小野方を引き揚げた朝鮮人側は、浜松市旭町国際マーケツト(責任者 呉判述)附近に集結し、午後10時ごろ同市大工町元小野組輩下香具師本宮末吉方へ朝鮮人金彰石ほか6名が拳銃を擬して、乱入、同家及びその器物を破壊するに至り、小野組子分も猟銃をもつてこれに対抗し、双方次第に人員を増進し、遂におのおの約50名くらいが市内田町、鍛治町、傳馬町の各中心街において相互に発砲乱闘するに至つたものであります。この事件において、朝鮮人側は1名の被害者を出しております。
第2回目は、第1回乱闘事件は警察官の出動により4月4日午後10時45分ごろ一応鎮静に帰したのでありますが、翌5日午後5時ごろ、双方とも各地より応援者来浜し、再び不穏の状態に立ち至り、午後7時20分ごろ、朝鮮人側数名が小野近義氏方に至り拳銃を発射したため、これを契機に双方おのおの約200名くらいが同市内千歳町、旭町、鍛治町、田町その他市内中心街各所において発砲撃ち合いをなすとともに、建造物、器物等を破壊するに至つたのであります。
これに対する警察措置について申し上げますと、第1回、所轄浜松市警察署においては第1回4月4日夜の事件発生と同時に甲号非常召集を発令し、全署員を召集し、浜名地区警察署に応援を要請し、武装警察官50名を乱闘現場に急派して拳銃の威嚇発射により事件の鎮圧につとめたのであります。午後10時40分ごろ一応鎮静せしめることを得たのでありますが、同夜は暗夜のため被疑者はいずれも逃走し1名も逮補するに至りませんでした。該事件の銀座及び捜査に出動した警察官は、浜松市警察署員160名、浜名地区警察署長35名であります。
浜松市警察署においては、状況なお険悪化を慮り、朝鮮人連盟浜松支部委員長李季白及び元小野組責任者に対し警告を発し、かつ厳重警戒に努めました。
第2回。翌5日午後5時ごろに至り沼津、熱海、名古屋、豊橋その他各地より双方来援者の集結されつつあるとの情報を得て、再び険悪化したため、浜松市警察署においては全署員を召集し、各要所に急派して拳銃その他戎凶器の検問を開始するとともに、警戒員及び情報収集係を各所に派遣中、再び発砲による乱闘が開始されるに至つたであります。浜松警察署においてはさらに浜名地区警察署に対し、応援方を要請し、これが鎮圧と検挙に努めた結果、午後11時30分ごろに至りようやく鎮静したが、同日より翌6日早朝までの間に6名の容疑表を検挙いたしました。
該事件の鎮圧及び捜査に出動した警察官は、浜松市警察署160名、浜名地区警察署35名、県加藤警察長及び県本部人事装備、捜査、警備各課は、事件の重大性に鑑み、6日午前2時ごろ浜松市警察署に至り、浜松市公安委員会及び浜松市警察署長、浜名地区警察署長等とともにこれが対策を緊急協議の結果、警備警察官応援派遣計画を樹立するとともに、警備取締本部を設置し、国家地方警察静岡県各課を初め、各署より同日午後1時ごろ110名の警察官の派遣をなし、合計約300名の警察官をもつて厳重なる警戒取締りと家宅捜査実施の結果、漸次平静に復帰するに至つたものであります。
この事件に対し連合軍部隊が出動しております、6日午後9時20分には岐阜24連隊カーナー少佐以下172名が来浜、警戒に当りましてたが、事態平穏となつたので、一部35名を残して帰隊いたしました。
さて本事件の発端より終末に至るまでの過程を観察して見まするに、左記の諸点に対する反省と考慮が必要と考えられるのであります。
その第1といたしまし、新警察制度の実施に伴い通報連絡並びに応援要求において自治体相互間に援助要求をなし得る法的の根拠なきため、幾多の困難が発生したこと。
第2に、警察がこの種暴力団、不良徒輩の取締りに対し、十分なる執行力をもち得なかつたこと。そのよつて来るゆえんとしては、警察力が貧困であり、武装化せる暴徒の集団を鎮圧するに足る人と武器その他機動力を有しなかつたこと。
なお参考までに申し上げますと、静岡県におきましては国家警察14、自治体警察61、計75の小警察署にわかれておりまして、一署平均警察官は30数人であります。国家地方警察は、総員744名で、県下14の警察及び本部に分散しておりまして警察力の急速なる統合が非常に困難な状態におかれております。なお武器について申し上げますと、拳銃は412挺でありまして、大体6人に対し1挺の割合でありますけれども、これはただいま申し上げました75の警察署に分散しております。従つて、この事件に対し必要なる武器を僅少なる時間に整備いたしますことは非常に困難な状態にあります。次に静岡県における払下げジープはどうかと言へば10台でありまして、浜松市には国家地方警察浜名地区に1台あるだけであります。
第3に、警察官の新警察法に対する理解の不足に基く取締りに対する消極性。
第4に、国民の新警察法に対する認識の不足による警察への非協力。
第5に、朝鮮人の取締りに際しては、日本の裁判権行使がなし得るにもかかわらず、いわゆる第三国人視してその執行に適切を欠いたこと。
第6に、警察官の執行力の弱体化については待遇その他の問題がありますが、地方財政法の施行が遅れているため、すべてのことが臨時的措置たらざるを得ないこと。
第7に、樺山警備部長の言に反し公安委員会は5日午前9時開会していること。
第8に、都道府県としての非常事態宣言の規定を要望する陳情があつたこと。
以上の諸点であります。
報告を終ります。