昭和27年02月06日 衆議院 法務委員会
[002]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
本日国警の部長さん並びに法務府の関係長官、局長の御出席を得ておるのでございます。最近治安に関連いたしまして、警察官に対する暴行傷害等の事件が続出いたしております。この現状にかんがみまして、この真相をお尋ねいたし、これに基いて、国会といたしましても、これらに対する対策を立てようといたすものであります。
昨年の12月を契機といたしまして、いろいろ全国的に警察官に対する暴行傷害事件が続出いたしておるのでありますが、これらの行為を、今まで国警に入りましたおわかりになつておる範囲においてお答えを願いたいと思います。
なおこれらの件は、新聞紙上の報道によりますと、いずれも背後に関係を持つ団体がある。この団体の名前といたしまして、日共というような言葉がちらほら出るのであります。これはまことに共産党に対しても御迷惑なことでございますので、この点をはつきりいたしておきますことは、われわれ国会にとりましても、公党として認められている共産党のためにも、私は必要なことだと考えるのであります。どうか詳しく御説明を願いたいと思います。
[003]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
田嶋委員の御質問に対してお答えを申し上げます。警察官に対しまする暴行事件についてのお尋ねでありますが、昨年の12月中におきましては、自由労務者関係において集団暴行事件として約10件ほど起つた事実がございます。1月に入りまして以来は、現在のところ札幌に起りました白鳥警備課長射殺事件、その後帯広におきまする巡査に対する暴行事件、また最近長野県の南佐久郡で起りました暴行傷害事件、この程度でございます。
これにつきましてただいまお尋ねの日本共産党との関係につきまして、新聞紙上にとかく大きく取上げられておりまするが、その背後の団体として日本共産党がはたしてそれらをあやつつてやつておるかどうかということにつきましては、現在までのところ確証を得ておらない次第であります。
ただ日本共産党の非合法機関誌と考えられまする「球根栽培法」という雑誌の中に、軍事活動の方針、軍事組織の基本問題を取上げておるという事実がございますが、これは日本共産党の機関誌であるというふうに現在確認をいたすところまで至つておるわけではございません。
なお白鳥事件の直後におきまして、日本共産党札幌地区委員会の名前におきまして、あの白鳥警備課長射殺事件を是認するごとき文書がまかれたことは、これまた事実でございます。以上お答えを申し上げます。
[004]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
そこで今度は今年起りましたこれらの3件の警官に対する暴行傷害事件の内容について、少しつつ込んでお聞きをいたしたいのであります。
白鳥事件に対しましては、衆議院よりも現在調査団が派遣されておりまするので、いずれその結果は国会において発表せられることと思うのでありますが、この委員会はわが法務委員会とは多少目的を異にした委員会でございますので、法務委員会として一言白鳥事件についてなおお尋ねいたしておきたいと思います。
この白鳥事件は、白鳥警備課長射殺後、そうしたビラがまかれたということだけのお答えでございますが、新聞紙上では、捜査の線につきまして、日本共産党の党員であるという人たち、これを対象にして捜査が行われているようでございますが、この捜査の点について、秘密にわたる点はもちろんこれはお答え願うことはできないのでございますが、明らかに願える範囲で、ひとつもう少し現在の捜査段階、捜査の方向等についてお答え願いたいと思います。
[005]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
先ほどお答えのうちで、ちよつと字句の間違いがございましたので、訂正さしていただきます。札幌地区委員会と申し上げましたが、これは札幌委員会でございます。
ただいまの白鳥事件の捜査の過程につきましては、現在鋭意捜査中でございまして、詳細申し上げる段階に至つておりませんが、この犯人が党員であるかどうかということにつきましても、まだ明確にはいたされておらないのであります。およそ捜査にあたりましては、あらゆる角度から考えられまする問題をすべて追究いたしまして、合理的に、科学的にこれを判断する必要があると思うのでありまして、非常に容疑の濃いというものにつきましてのみ捜査を進めるということは、やはり捜査の堅実な道ではない。もちろん現在の段階において、共産党員であるということが断言できないと同時に、これでないということも断言できないような状況でございます。
[006]
自由党(自由民主党) 田嶋好文
先ほどお答えの中で「球根栽培法」、これは共産党の機関誌ではないということを言われました。私たちは「球根栽培法」というのは「アカハタ」発刊停止後の共産党の機関誌の一部だと見ておるのでございますが、その「球根栽培法」によりますと、警察工作の立遅れを克服せよ、悪質な警察官は徹底的にマークしてたたけというようなことが「球根栽培法」に書かれてあり、これを各地区細胞にまわした形跡すらあるということなんでございますが、これらをもつていたしますと、私たちは、昨年12月を契機として起りました一連の警察官に対する暴行事件、傷害事件というものは、やはりこうした背後関係につながるものである、こう考えるのでありますが、これに対していかようにお考えになつておりましようか。この点、警備部長にお答えいただくと同時に、特審局長がお見えのようでございますから、お二人からひとつお答えを願いたいのであります。
[007]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
「球根栽培法」についてのお尋ねでございますが、先ほど私がお答え申しましたのは、日本共産党の非合法機関誌と目せられるということを申し上げましたので、そういう疑いは多分にあるという意味で申し上げたのでありまするが、現段階においてこれが確実にそうである、平たく申しますれば、裁判上の問題として、そうであるということをわれわれが主張し得るまでの証拠を持つていないという程度のものであります。
11月14日に発刊停止処分になりました「内外評論」というものと通巻番号によりまして、11月1日から「球根栽培法」第30号として出されておるわけでありまして、ただいままで、私の聞いておる範囲では、33号くらいまで出ておるようであります。この中におきまして、ただいま御指摘のように、32号の中でありまするが、第1に予備隊工作の当面の重点、第2に警察工作の立遅れを克服するために、というような論文が掲載されておりまして、この中に対警工作として、警察のフアツシヨ化工作の誤りと当面の重点というような2項目をあげておるのであります。
そこで内容的には、警察官をして国民大衆の包囲の中にさらし、監視下に置かなければならない、いかなる小さな弾圧にも徹底的に攻撃し、攻撃闘争を執拗に加えるとともに、敵を実際に撃破するために行動を準備しなければならない、さらに守勢に立つていることは、専任工作隊の独自的工作活動が軽視され、いまだにその編成さえできていないということからも指摘できる点である、また悪質売国分子に対する徹底的な攻撃を組織して行くことがきわめて重要であり、欠くことのできないものになつている等の内容が載せられておりまして、これによりましても、警察に対する実力的攻撃を強調しているものと見られるのであります。
[008]
政府委員(検事(法務府特別審査局長)) 吉河光貞
ただいま国警の柏村警備部長から大体詳細お答えしたので、私の方からさらにこれを蛇足する必要がないのではなかろうかと考えるのでありますが、なお簡単に一言申し上げます。
ただいま柏村部長がお述べになつた「球根栽培法」というのは、ただいまここに持参しました写真の通りの文書であります。これは32号となつておりまして、その内容につきまして柏村部長から一端を御披露したのでありますが、なお私から蛇足して申し上げますと、こういう記事が書いてあります。
だがそれをさらに前進させ、徹底化するためには、警官の一人々々を居住地において各個に撃破して行くことである。
平和を守り、自由を要求する国民の統一戦線の前進の中で、家庭における警官を包囲し、彼らをして番犬であることにいたたまれなきまでに追い込んで行く意識的、計画的、大衆的工作が重要である。
売国悪質警官を居住地で攻撃し成功している例は多い。東京王子署滝刑事に対する攻撃は、彼がもはやそこでは活動できないまでに追究しているのである。滝追究のビラは居住地周辺を埋め尽し、朝鮮人少年のかけ足デモは、連日早朝繰返され、売国奴滝の名が連呼されたのである。
専任工作隊の活動もこの中から開拓されている。無差別なビラ、新聞の手渡しや交番工作は、労多くして功少く、いたずらに犠牲を生むだけである。
東京某区では選挙人名簿から警官の住居をつきとめている。われわれがもし居住地における攻撃を怠れば、彼はその重点を攻撃に転化し、国民をフアシストに売り渡すスパイ活動の部隊として活用し、彼らのよい休憩場所にするだけである。われわれは瞬時といえども彼らをして現在の地位に安んじさせてはならないのであり、攻撃に次ぐ攻撃でなければならないのである。言うまでもなく、それがわれわれと対峙する敵の武装力の手先であるからである。
第2に、いかなる小さな弾圧にも徹底的に攻撃し、抗議闘争を執拗に加えるとともに、敵を実際に撃破するために、行動を準備しなければならぬのである。
こういうような、きわめて暴力主義的な、破壊的煽動、宣伝の文書が載つておるのであります。
これらの文書につきましては、ただいま柏村警備部長からもお話になりました通り、昨年11月14日、「内外評論」を「アカハタ」の同類紙として発刊停止の処分をいたしました。なお引続き私どもといたしましては、これらの文書の発行、配布関係という方面につきましても、さらに調査を進めておるわけであります。これがただいま申し上げました通り、「アカハタ」の同類紙という認定のもとにいたしましたが、私どもはそれが日本共産党といかなる関連に立つかということについては、いまだ結論に達しておりません。鋭意調査中であります。最近にいたりまして、一部破壊分子の手によつて、暗々裡にきわめて破壊的な暴力主義的行動を煽動するような文書が配布せられておるのでありまして、これはまさにその一例であります。これらの点につきましては、関係機関と緊密な連絡のもとに、鋭意調査を進めておるような状況であります。
[038]
自由党(自由民主党) 押谷富三
これは北海道における共産党の破壊活動と関連を持つものでありますが、北海道におきましては、共産党員が経営をし、従業員が共産党員である鉱山、炭鉱などがあるのでありますが、この炭鉱に配給される火薬、ダイナマイトといつたようなものが、政府からどんどん出されておる。しかもそれは監督もなければ警戒もされておらない状況において、ダイナマイト、火薬が配給されておることを非常に危険視されておるのでありますが、これに対しどういうお考えをもつておられるか、お伺いしたいと思います。
[039]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
ただいまお尋ねの点は、むしろちよつと警察の関係外の面が多いのではないかと思いますが、単に共産党員の経営するということで、現在の段階において、そういう配給を――これは私どもの所管ではございませんが、配給をしないということもならぬかと思います。ただそういう危険な薬品等が不法に使われるというようなおそれがある場合、またそうした事実の容疑があるような場合におきまして、初めて警察としてこれに対して手を打つ必要があるのではないかというふうに考えております。
[040]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この鉱山等に使われる火薬、ダイナマイトにつきましては、配給関係はもちろん警察ではございませんが、そのものが破壊工作に使われるとなれば、治安上ゆゆしき問題でありまして、これは警察にも重大な関係を持つておるといわなければならぬと思うのであります。これがどういう方面に流れるかということによつて、破壊工作などがたいへんな結果を生むことになるのでありますから、特に御注意を願いたいと思います。
最後にひとつお尋ねいたしたいのは、白鳥事件、あるいは長野の事件、その他全国各地において警察官に対するいろいろな暴行あるいは脅迫などがあるということは、すでに私どもも承知をし、御当局においても十分お知りのことでありますが、こういうような幾つかの事件は、何か一貫した関連性があるかないか、この点についての御意見を承りたいと思います。
[041]
政府委員(国家地方警察本部警視長(警備部長)) 柏村信雄
現在までのところ、個々のこうした事案についての関連性は確認いたしておりません。
但し先ほど申しましたような「球根栽培法」に掲げられておりまするような事項が、ある組織的な活動の一環として行われるとすれば、将来多発するおそれも十分にあり得ることであろうと考えるわけであります。
[042]
日本共産党 加藤充
時間がありませんから、遠慮して簡単に2、3点だけの関連質問をいたします。
平和を求めて、戦争には反対だというような言動や運動が、すべてあれは赤だ、あれは共産党だと言われて弾圧されている実情でありまするから、お調べは自由でありましようが、何でも共産党だというようなことに押しつけられることは、これは明らかなことで、常識であります。それこそ天下公知の事実である。
田嶋君、鍛冶君、押谷君が日共と結びつけて、何らかの結論を結びつけようと努力しておつても、それは特に目新しい事実ではないのである。
ですから重々お調べ相なつてしかるべきだと思うのですが、偏見を持ち、しかもその間違つた偏見のもとに捜査方針を立てられて、人的動員、財的な出費を重ねて行つて、ほんとうに赤い舌を出されているというような結論にならざるを得ぬことは、これは大きな意味での汚職の部類に属すべきであつて、そういう方針をめつたやたらに立てられまして、さつき申し上げましたように、人的動員をやり、国費を濫費する者の責任は、事の結果が明らかになつたときに、ひとしく国民と憲法に対して責任をとるべきであるという、明確な責任感のもとにおいて発言をしてもらいたいと思います。
昭和27年02月12日 衆議院 法務委員会
[018]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
次に承りたいのは、一昨日、10日の富山から発行しております北日本新聞、これにはたいへん重大なことが載つておるのでありますが、見出しはこういう大きな特号で「日共実力行使を指令」、「県国警へ警戒通達」、「大阪、非常態勢に入る」かような見出しであります。
そしてその内容は日共大阪府委員会の署名入りで「2月10日の日共に対する弾圧を実力をもつてはね返せ」という表題で宣伝ビラ及び壁新聞等を市中にはりまわして、非常な不穏なる形勢が現われた。そこで国警大阪本部では大阪警視庁と連絡の上非常態勢をしいた。さらにこれが東海、北陸2府10県にも同様の危険性があるからというので、国警隊長宛に日共の動きに対して万全の警備態勢をとるように緊急指令をして来て、そのような手配をとつた、こういう記事が載つておるのであります。これが事実であるかどうか、また事実であつたとすれば、どのような動きであつたのか、まずその点から承りたいと思います。
[019]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
2月10日に共産党を大弾圧するだろうというようなデマ情報がどこから出たのか知りませんが、共産党内部に伝えられたものと見えます。たとえば2月の9日お昼過ぎに大阪の警視庁管下の数警察署及び大阪の豊中の市警とか吹田の市警に対して4、5名ないし20名前後のものが参りまして、2月10日に共産党に対する大弾圧をやるとのことであるが、そういうような弾圧はやめろというような抗議をした事実があります。
それからその前の8日には青森の市警、それから国警の青森県本部に共産党の青森の県委員長及び朝鮮人を交えた10数名が参りまして同様の趣旨の抗議をした事実があるのであります。
これらを見ますると、そういうような、警察が2月10日に共産党に対して大弾圧をやるだろうというようなデマ情報を発したところがあるのだろうと考えます。われわれのところにおきましてはそういう事実は全然ないのであります。そこで今デマ情報を前提にして、こういう抗議が各所になされておるという情報の交換は、お互い警察同士いたしたであろうと思います。しかしそれに応じまして別段警察において非常態勢をとつたというようなことはございません。こういうデマ情報に基いて互いに抗議に来ておるということは警察に知らせて、警察におきましてはそれぞれその心構えでおつただろうと思います。しかし外見的な非常態勢をとつたということはございません。
[020]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
情報の交換でもよろしいが、私の一番聞きたいのは、いわゆる実力行使をやる憂えがある、こういうことを認められるかどうか。また実力行使とはどういうことを指しておるのか。
これらの点は常にあなたたちが実力行使をやるであろうと考えておられるのか。これは私は最も重大なことだと思いますので、かようなことに対する国警としての考え方を承りたいと思います。
[021]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
共産党が実力行使をやるかどうか、それについてどう思つているかというお尋ねであると思います。実力行使と申しましても、これにはいろいろな行使の形があるわけでありまして、たとえば警察官に対して暴行を加えるというのも実力行使であり、こういう面においては現にときどき起つているわけでありますが、しかし何と申しますか、共産革命の段階に入るような、そういう実力行使をするというようなことは、私の方はただいまのところは迫つているとは考えておりません。
[022]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
さらにこの新聞に出ておりますし、またほかの情報からもわれわれは知つておるのでありますが、かようなことが出ております。「当局が8日京浜地帯某所で入手した日共秘密文書は「血には血を!死には死を!」の見出しで、民族解放中核自衛隊の結成宣誓文を掲載している」。
そうしてこれは日共機関紙の「解放の旗」の後継紙に明らかにこの点が載つている。1月31日号で「国民は無数の抵抗自衛闘争をもつて吉田の暴力支配にこたえ、実力によつて民族の解放をかちとろうとする愛国者が次々と生れている」、こういう前置きをして、某所で行つた若い中核自衛隊〇〇名の結成宣誓文を掲げておつた、かようなことまで載つておるのでありまするが、かような事実はあなた方の方へ知れておるのでありますか、いかがでありますか。
[023]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
ただいま具体的にあげられましたことと、そつくりの情報は私はまだ握つておりませんが、いわゆる中核自衛隊というものは共産党で今後つくつて行こうという方針であることは、大体私らの方では間違いない、かように考えております。従いましてただいまおあげになりましたようなものと類似の情報はよく耳にし、手に入れるところであります。
ただそれが実行の方法になりますと、実力行使と申しましても、いわゆる法に触れるようなものと、触れないものといろいろ段階もあり、ただいま申しましたように最後の目標に到達するための手段としていろいろ各段階がある行為を徐々に現わして来るものと、かように考えております。
[024]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
国警の中における情報は今承りましたが、特審局でも同様の情報を得ておられるだろうと思いますが、その点はいかがでございますか。
[025]
説明員(検事(法務府特別審査局次長)) 吉橋敏雄
ただいまお読み聞けのことと大体内容が同じような文書は、情報としては入手しております。しかしながらその確度並びにその出所等については、いまだ未確認でありまして、内容について目下調査中であります。
[026]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
さような情報があるとすれば、これはまことにゆゆしきことと言わざるを得ません。これが共産党から出ておるいわゆる日共機関紙の後継紙から出ておる。かようにして、今また確実でないと言われまするが、それは確かに共産党の出したものであるということになりますると、いわゆる団体等規正令に言う、暴力行為を煽動する一つの団体であると認定せざるを得ない重大事だと思います。かような大きなことでありまするがゆえに、今後はこの点について特段の捜査及び調査をせられ、それに対する国家としての対策おも断固として考えていただくことを希望いたしまして、この点に対する質問を終ります。
次に承りたいのは、先日お尋ねしておいたのですが、富山における暴行脅迫事件、これは自由労働者の運動から出たのでありまして、県の職員が非常に脅迫せられまして、ついに発狂いたしました。それが暴行脅迫であるというので、確か1月の10日か11日だつたと思いますが、10数名の者が検挙せられた事実を知つておりますが、その後その事件がどうなつておるか。また私が知つておつた範囲では、それらの客疑者はほとんど全部共産党員であつたと心得ておりますが、どういう者がさようなことをやつた容疑者になつておるか、この点をひとつ詳細に御報告願いたいと思います。
[027]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
御指摘の富山県の事件は、私の方に報告が参つております分で5件ございます。その概略を申し上げますと、大体昨年の年末から今年1月の2日までの事件でございますけれども、最初は県知事の部屋に乱入した事件がございます。これは12月12日午前10時過ぎころ、県庁の本庁舎内の知事部屋に、多数の自由労務者が越冬資金の要求のために参りまして、知事が不在だつたので、かぎのかかつた正面の扉をけつて、これを壊して中の方に入つて行つた。知事がおらないので、そのまま知事には何のことなしに、退去いたしました。この事件は、うち1名暴力行為の所為に出た者が暴力行為並びに住居侵入として、12月29日起訴になつております。目下公判中であります。
次は12月の12日、富山市の県の総合運動場建設事務所の事務室に、木原という県の土木技師が勤めておつたのでございますが、この部屋に暖房用のまきの支給等の要求をひつさげまして、30数名の労務者が無断で侵入いたしました。出入口を閉鎖して内外の交通の遮断した上、すわり込みを続行した。そうして木原という事務所主任に対しまして、先ほどの要求を、強硬かつ執拗に要求し、土下座をしろ、きさまら1人くらい殺しても平気だということを言いまして、多数の威力によつて脅迫した。この事件につきましては、首謀者たる者4名が住居侵入並びに暴力行為等処罰に関する法律で起訴されております。2月3日起訴されまして、目下公判中でございます。うち2名は共産党員で、他の2名はシンパというふうに相なつております。なお御参考までに申し上げますと、木原技師はその後1月9日に発狂いたしまして、ついに脳病院に入るというふうなことに相なつておるのでございます。
次は12月30日、富山市の復興都市計画事務所失業対策係事務室に10数名の自由労務者が賃金支払いの件その他で参りまして、結局話がつかずに、係の者から退去の要求を受けて、退去せず、ネクタイをつかんでつるし上げる等の暴行をして、多数の威力をもつて脅迫した。この事実につきまして3名検挙され、住居侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反で3名とも2月2日起訴されております。うち2名が共産党員であり、1名はシンパということになつております。
次は集団暴行といいますとちよつと語弊があるかもしれませんが、県の成田副知事、佐藤経済部長、山崎職安課長らに対しまして、1月の年賀状に事寄せまして、殺すぞ、あるいはお前の子供から先に殺す、あるいは奥さんをなぶり殺し、その次はお前が殺されるだろう、というような黒わくつきのはがきを出し、あるいはしやれこうべを描いて、年賀状にしたというふうな脅迫の事実がございます。目下捜査中でございます。
次は1月2日に、10数名の自由労務者が県の経済部長あるいは職安課長の居宅に押しかけまして、それぞれ細君に対しまして、今年はお前の命をもらうことになつているから、そのつもりでおれ、というふうなことを言つて、みんなでおどかしたという事実が、暴力行為等処罰に関する法律違反ということで、11名検挙されまして、ただいまのところ1月25日までに2名起訴されております、うち1名は共産党員ということになつております。
[028]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
私が聞いているところでは、22日だつたと思いますが、県庁の煙突に上つて、いわゆる煙突男をやつた者があります。それは自由労働者にあらざる共産党員であつたというのです。かようなことから見ますと、自由労働者がみずから進んでやつたものではなくて、自由労働者にあらざる共産党員がこれを煽動している事実が明らかであります。しこうしてこれらが日本の各地において一斉に行われていることから見ますと、その党員の属しておる共産党の指令であると、われわれは常識上判断せざるを得ないのであります。これらに対してどのように見ておられるか、これをお聞きしたい。
[029]
政府委員(検事(法務府検務局長)) 岡原昌男
ただいまの点につきましては、ほかの事件についてもそうでございますが、一応さような見方もあるかとも存じますけれども、私どもといたしましては、さような点を証拠上明らかにするという段階には至つておりませんので、先ほど申し上げました通りの理由で起訴いたした次第でございます。
[030]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
私はこれで質問を打切りますが、調査中ということでありますが、もちろん調査はやらなければなりませんが、かようなことは日本の民心に及ぼす影響すこぶる重大なものがありますがゆえに、これは特段の力を注がれて、これを明白にし、この根源を断つように、ぜひともこの際やられんことを希望いたしておきます。
昭和27年02月15日 参議院 地方行政委員会
[011]
委員長 西郷吉之助
それでは予定では次に木村、大橋両国務大臣から治安機構改革その他一般治安問題について説明を求める予定でございまするが、まだ見えませんので、それをあとに廻しまして、斎籐国警長官より、先般発生しました北海道並びに長野県に起きました問題を中心といたしまして、一般治安状況について説明を求めます。
[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
いわゆる白鳥事件につきましては、只今鋭意捜査中でございまするが、この事件の発生は、今年の1月21日午後7時40分頃でありまして、その場所は札幌市の南六条西17丁目の道路上でございます。被害者は札幌市の中央警察署勤務の警備課長白鳥一雄であります。同人が自転車で帰宅の途中、只今申上げました場所に差しかかつた際にあとから同じく自転車で追尾して来た何者かに突然拳銃で狙撃されまして、左胸部に盲貫銃創を負つて現場で死亡をいたしたのでございます。中央警察署におきましては、事件発生に際しまして直ちに署員の非常招集を行いますると共に、国家地方警察の札幌方面本部に対しまして援助要請をいたしましたので、国警、自警合同の捜査本部を設けまして、以後鋭意捜査を進めて現在に至つておるのであります。
その経過の詳細につきましては只今捜査の過程にありまするので、具体的に申上げますることは差し控えたいと存じまするが、そして又この事件が共産党関係者が敢行した犯罪であるかどうかという点につきましても、只今予断を以て臨むことができないと考えておるのであります。併しながらこの事件後日本共産党札幌委員会の署名入で、この種の暴力行為を是認するような宣伝活動が行われておることは事実なのであります。その一例を挙げますと、御承知のように1月22日附に「見よ天誅遂に下る、自由の凶敵、白鳥市警課長の醜い末路こそ全フアシスト官憲共の落ゆく運命である。」云々というような表題の宣伝ビラを相当撒いたのでございます。その内容の一部を申上げますと「全警察官及その上級者と高田市長よ、諸君の生命とその家族の幸福のために今後一切の民主運動に対する弾圧を即時中止せよ。そして占領軍と反動政府の命令を拒否し日本人のために、市民のために良心ある役人となられよ。決して第二の白鳥となるような行為をするなかれ、白鳥課長のむごい末路を夢にも他人事と思うなかれ。1952年1月22日日本共産党札幌委員会」というような署名入のビラを相当撒いたのであります。
又事件発生前に、特に昨年12月27日の自由労働者の検挙事件の発生以来、被害者の自宅宛に107通の脅迫状が送達をされております。又12月30日には白鳥課長自宅玄関口の障子に封印をするように「家族を皆殺しにする」という旨の脅迫状が貼られた。その他自宅周囲には多数の脅迫文書が貼られておるのであります。この事前の脅迫状は被害者宛のもののほかに、高田札幌市長の自宅宛に60通、それから塩谷検事、これは札幌の地検の公安係の検事でありますが、自宅宛に90通出されておるのであります。
なお本件の捜査の過程におきまして、昨年12月19日発生の自由労働者の公務執行妨害並びに傷害事件の被疑者でありまする尾谷豊というのを2月4日札幌市におきまして又本事件発生後の先ほど申しましたアジ・ビラの配布者でありまする吉田哲、これも自由労働者でありますが、これも同じく札幌において暴力行為等処罰に関する法律並びに団体等規正令違反として2月8日検挙せられ取調中であるのであります。
このほかに事件発生後、北海道の検察官憲その他に対しまして相当数の脅迫状めいたものを発送をせられておるのであります。警察官17人、検事4人、その他の者7人に対して脅迫文書或いはビラというようなものが配布せられておるような状況であります。併しながらこういう脅迫状を受けた関係者は何ら意気沮喪することなく、極めて士気旺盛でありまする状況を、私が実際に出張して見て参つて心強く思つているのであります。
先ほども申しましたごとく、この事件はまだ捜査の過程でありまするので、被疑者は果して何者であるか判明をいたしておりません。又捜査過程において浮かび上つております各種いろいろな線がございますけれども、これらは非常にデリケートな関係を持ちまするので、御質問によりましては差支えのない範囲で申上げることができるかと思いますけれども、できるだけ事件の捜査に直接関係いたしまするものは、御説明は差し控えさして頂きたいと思つておるのであります。
それから長野県下の田口村事件につきましては、これは2月3日の夜午後11時頃に南佐久地区署員4名が無灯火の自転車で通行中の1名を職務質問いたしましたところ、警察官に抵抗をいたしましたのでこれを逮捕したのでありまするが、その際に他の参集者等が警察官に対しまして集団暴行傷害を加えた事件であります。
本事件につきましては爾後捜査の結果、2月4日正午までに前述の1名の被疑者のほかに被疑者7名、うち4名は団体等規正令による届出のある日本共産党員でありまするが、これを逮捕いたしました。7名のうち2名は釈放をいたしておるのであります。この事件も捜査中でございまするが、当日これらの暴行を加えました被疑者等は、或る種の会合を開催をいたし、その帰り途に職務質問を受けて、かような暴行を働いたものと考えておるのであります。
国内における共産主義運動関係者が武力革命の問題を、本格的な実践課題として取上げたように考えられますのは、おおむね一昨年、即ち昭和25年の秋以来のことであります。
それは昨年12月14日、共産党中央機関紙「アカハタ」の同類紙と認定の上発行停止処分を受けました「内外評論」の第4号、これは1950年の10月12日附でありますが、「共産主義者と愛国者の新しい任務」の内容からも推定することができると考えるのであります。
その後この方向への準備工作は、非合法のうちに逐次進められつつあるものと考えられます。
例えば重要工場、事業場、占領軍の基地、電気、通信、運輸の諸施設に対する調査活動、非合法的なゲリラ集会、各種のアジ・プロ活動、中核自衛隊の結成等の情報乃至は捜査資料としてこれらが現われておるのであります。又この種の武装闘争に対する基本的な非合法資料といたしまして「内外評論」第15号、1951年の3月15日附でありますが、「内外評論」15号の「軍事方針について」及び「球根栽培法」第31号、1951年の11月15日附「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」など、これらも共産主義運動関係者に対する家宅捜索等から発見されておるのであります。
最近の傾向といたしまして注意しなければならないと考えまする点は、一つはいわゆる民族解放、民主統一戦線工作が労農、市民、青年、学生、文化運動等、政治、経済、社会運動の全面に亘りまして、いよいよ本格的且つ具体的に実践されようとしておる点でありまするが、それと共に他面には警察その他治安担当機関に対する牽制的な意味での実力行使がいよいよ積極且つ露骨に現われつつある点でございます。
前者につきましては「球根栽培法」第33号、これは1951年12月20日附になつておりまするが、それの「当面の戦術と組織問題について」及び同第34号、これは1月8日附、「全国組織会議の決定を実行するために」等の内容につきましてもよく窺い知ることができるのでありまするが、いわゆる抵抗自衛闘争の大衆組織を結成強化いたしまして各種運動のヘゲモニーを社会民主主義系の指導者から奪取しつつ、吉田内閣の打倒を通じて占領制度の撤廃、革命の実現を図らんとする戦術、工作が極めて詳細且つ具体的に組織の内部で討議されつつあるように見受けらつれるのであります。
対警察工作につきましては、「球根栽培法」の第32号、「警察工作立遅れを克服するために」という内容によりましても、従来の守勢の域を脱しまして、攻勢に転じつつあるもののように見受けられるのであります。葉書、ビラ、投石などを以ていたしまする恫喝乃至脅迫的な機構は、本年1月以来続発いたしつつあるように見受けられるのであります。昨年1年間における全国の警察官に対するこの種の脅迫的事犯は、これは昨年でありまするが、国警本部に報告のありました分、東京警視庁の分は不明でありますが、それを除きましても381件でございます。うち自治体警察に関するものが277件ということに相成つておるのであります。
これらの傾向は、取締機関たる警察の構成員を各個撃破しつつ内部動揺を招来せしめ、警察の独自の強味である第一線組織を、麻痺させ、そうしてこの種の取締に打撃を与えようとするものであろうと考えられる点は明瞭に看取できるのであります。併し先ほども申上げまする通り、これらによつて取締官憲が或いは牽制をされたり、意気を沮喪したり、そういうような傾向は全然見受けられない点は心強い次第だと考えておるのであります。以上漠といたしておりますが、最近の治安の情勢を併わせまして両事件の報告を終りたいと思います。御質問ございますれば……。
[013]
委員長 西郷吉之助
ちよつと申上げておきますが、本日の理事会で今日は説明を全部終りましてから、時間があつたら今日御質問をいたしますが、時間がなければ月曜から質問をすることにいたします。次に吉河審査局長から一般治安問題について説明を聴取いたします。
[014]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
御指名によりまして、簡単に御説明申上げます。只今斎藤国警長官から、詳細に治安の状況について御説明がございましたので、私といたしましては、すでに附け加えて申上げるような格別顕著なものはないのでございまするが、なお簡単に申上げることにいたします。
現下の我が国内における治安の状況は皆様御承知の通り全体としては一応平静に維持されておると存ずるのでありまするが、その裏面におきまして一部国民の間にはいろいろな不安、動揺が見受けられると共に、最近極く少数の破壊分子の間におきまして日本国憲法並びにその下に成立した政府を、武装反乱或いは武力闘争によつて破壊顛覆するということを主張したような印刷物を広汎に発行、配布しておるというような事実があつたのであります。で、今斎藤国警長官からも御説明がありましたように、昨年11月14日発刊停止処分に付しました日本共産党の機関紙「アカハタ」の同類誌「内外評論」などはその一例であります。
又一部過激分子の間におきましては、口に平和と自由を唱えながら、その半面国民の権利と自由を濫用いたしまして、ややもすれば公共の安全保持に当る警察職員等に対しましても、暴行脅迫に出でるというような不祥事件が各地に起きておるのであります。
講和条約発効後において、内外情勢の推移によりましては極めて重大なる事態の発生もその可能性が予想されるような状態でございます。かような武装反乱によつて、日本国憲法並びにその下に成立した政府を顛覆、破壊するというような主張が現実の問題として取上げられましたのは、斎藤国警長官からも御説明がありました通り、一昨年9月頃からであります。
非合法機関紙として発行配布されております「平和と独立」の一昨年9月30日附には「高まる波の権力獲得の革命闘争へ」と題しまして、只今申上げたような破壊的な記事が出ております。次に同年10月7日附には、「暴力には力でたたかえ、共産主義者と愛国者の新らしい任務」というような記事が、同じような趣旨で出ております。次に同年10月14日附には「権力奪取への労働者の課題、農民の闘争を組織し指導せよ」。次に同年11月4日附には「権力獲得の武力革命のために党をボルシエヴイキ化せよ」というような記事が出ております。次に同年11月11日附には「権力獲得のための革命的指導を」、次に同年12月2日附には「権力獲得への計画的指導」、同じく同年12月9日附には「祖国日本を世界の放火とアジア侵略の足場にするな」というような題で同趣旨の記事が出ております。更に同年12月23日附には「独立と平和のため朝鮮における帝国主義者の侵略を失敗させよ、実力闘争は人民の自由と統一を拡大する手段である、武力革命と機械的に同一視するな」というような記事が出ておるのであります。
更に只今斎藤国警長官からもお話がございましたが、「内外評論」という秘密出版物には、一昨年9月27日、「日本における米帝国主義の農村支配と農民の革命闘争」、同年10月12日の特別号には「共産主義者と愛国者の新らしい任務、力には力を以てたたかえ」、同年11月7日附には、「なぜ武力革命は問題にならなかつたか」、次に同年10月26日及び11月7日附には「ゲリラ基地の確立について」、それから同年11月22日附には「工場自衛団、町村人民自衛団をつくれ」、同年12月20日附には「革命の思想的強化と正しい闘争路線」、次に昨年4月5日附には「自己批判」と題しまして同じく同趣旨の記事が掲載されておるのであります。
特に只今斎藤国警長官からもお話がございましたが、我々は「武装の準備と行動を開始しなければならない」というような「内外評論」の記事に引続きまして、極く最近には「中核自衛隊の組織と戦術」と題しました非合法文書が配布されつつあるような状況でありましてこの文書の内容を検討いたしますと、中核自衛隊は小隊、中隊、大隊のような組織を持つというような組織の方針などが述べられております。極めて破壊的な文書であります。
私どもといたしましては、かような一部破壊的な分子の宣伝、煽動の活動の実態につきまして目下調査中でございます。又かような宣伝、煽動に照応いたしまして、具体的な組織活動乃至さような動向の有無につきましても同じく調査を続行しておるような次第でございます。
極く簡単に申上げました。
昭和27年02月23日 衆議院 法務委員会
[003]
自由党(自由民主党) 押谷富三
まず第一点について、去る21日に東京都内の各所において日共があばれました関係でありますが、この関係でお尋ねいたしますが、日本共産党の尖鋭分子で反植民地デーといつたような催しを各所に行いまして、その際の参加団体がいろいろ各所において集団的な暴行を働いたのでありますが、その関係は背後に日共からの指令があつてなされたものであるかどうか。この点をまず第一にお伺いをいたしたいと存じます。
[004]
参考人(警視総監) 田中榮一
ただいまの点につきまして私からお答え申し上げます。
去る21日全国的に行われました反植民地デーのデモの実際の様相をいろいろ検討いたしてみますると、日本共産党において秘密文書として発行しております「球根栽培法」というものがあるのであります。この「球根栽培法」の第36号の内容を拝見してみますと、われわれは武装の準備と行動を開始しなければならないということが前提になつておりまして、全国の中核自衛隊がいわゆる軍事行動の一環といたしましてこの反植民地デーを利用いたしまして、随所に行動を起しまして相当不法な示威行進、集団示威運動等を開催したように考えられるのであります。
しかしながら私どもはその現象から見ておることでありまして、はたしてこれが確実に日本共産党が指示したものであるかどうかというような証拠等は今のところまだ見出し得ないのでありますが、現在のその結果から見た点から申しますると、まさに「球根栽培法」に指示しておるところの、われわれは行動を開始しなければならない、武装して行動を開始しなけばならないというようなその根本方針に準じて、しかもその遊撃作戦並びにその戦術等におきましても、これの原理をそのままに履行しておるようにも考えられるのであります。
[005]
自由党(自由民主党) 押谷富三
21日の騒乱の関係はことごとく対象を警察官あるいは交番、警察署に置いておるのでありますが、こういう警察を対象とした一つの騒乱は、その以前にかつて行われました北海道の白鳥事件あるいは長野における警察の集団暴行事件、あるいは練馬の巡査殺し事件等に一つの関連を持つておると思うのでありますが、こういう関係について警視総監はどうお考えになつておりますか。
[006]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。
現在の階段におきまして北海道の白鳥警部殺害事件並びに印藤巡査の殺害事件等は、私どもは明らかにこれは思想的背景を持つた犯罪であるということが考えられるのであります。
それから今回21日に集団不法行為が行われたのでありますが、この「球根栽培法」の中にもすでに労働者はいろいろな形で敵の武器を持ち出しており、大衆闘争の中でこれを意識的に計画すれば必ずとれることが明らかとなつておる、また札つきの反動警察官等を襲い武器を奪うこともできる、われわれはこれを行わなければならない、こういうことをはつきり言つておるのであります。そうしてその使用する武器につきましては必ずしも近代的なものでなくともよろしい、大衆の持つている刀や工作道具、農具も武器となり得るし、また竹やりや簡単につくることもできる武器も使用することができる。特に敵を襲撃するために必要な――敵というのは、これはおそらく警察官を指しておるものと考えられるのでありますが、敵を襲撃するために必要な輸送、軍用自動車のパンク針、手榴弾、爆発物等のような簡単なものはただちに製作することが必要である。かように「球根栽培法」にはいつておるのでありますが、今回の集団暴行事件はこれを地のままに行つておりまして、明らかに国家権力に対する一つの反抗であるというようにその行動の様相から見てはつきり言えるのであります。
何にも罪のない警察官が忠実に警邏をしておる。その1人の若い警察官が警邏さしておる者を、数100名の者が取囲んで打つ、なぐる、あまつさえ武器まで――拳銃まで取上げるということは、これは明らかに権力に対する一つの反抗であると「球根栽培法」にいつておるところの方針をそのままに行つたのではないかというように私は考えるのであります。
[007]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この21日の集団暴行に参加をいたしました人たちの組織あるいはその組合の種類等がおわかりでありましたら承りたいと思うのであります。
[008]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。大体におきまして、今回集団暴行に関与いたしました人々の属する組合は、あるいは電業社、日本鉛並びに日本機器株式会社等の労組が中心になりまして、あるいはそのほかの外郭団体、また一部朝鮮人も参加しているやにも聞いておるのであります。それからこれらの人々は、いずれも私は共産党の言つている軍事行動の一環としての中核自衛隊の組織の一員であるのではないかということも考えられるのであります。
[009]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この「球根栽培法」に書かれてあります指令そのものを実行したごとく見受けられる今回のこの集団暴行につきまして、最も参考となるべきは、当時この暴徒において用いました武器だと考えますが、その武器はどういうようなものであつたか承りたいと思うのであります。
[010]
参考人(警視総監) 田中榮一
先ほど申し述べましたごとく、今回の暴徒の使用いたしました武器というものは、必ずしも近代的なものではないのでありまして、いわゆる大衆のつくり得る、また大衆が利用し得るものを適宜利用しておるということであります。
この中に特に敵を襲撃するために必要な輸送車用のパンク針、手榴弾、爆破装置等のような簡単なものとなつておりますが、きわめて簡単なものを使用しておつたのであります。
[011]
自由党(自由民主党) 押谷富三
警視総監、今お手元にお持ちのものがありましたら参考のために拝見したいと思います。
[012]
参考人(警視総監) 田中榮一
ただいま御要請がございましたのでここに2、3御参考までに持つて参つたのでありますが、これがいわゆるパンク針というものでありまして、小さな板にくぎを打ちまして、そうしてこれを路上に置きますと、たとえば警察官を輸送して参りまする際、途中において輸送用の自動車がパンクする、あるいは場合によつてはこれを踏んで足に刺してけがをするというようなものであります。21日の日にこれを多数ばらまきまして、中にはこれを警察官にぶつけておるのであります。これは多数警察の方に押収しております。
それからいま一つは「球根栽培法」に手榴弾というようなものを書いてありまするが、当時暴徒は原爆ということを言つておつたそうでありますが、これはとうがらしでありまして、これを破けやすい袋に入れて、取締りの警察官にまつこうからぶつけまして、そうして目つぶしを食わせるということになるのであります。それからいま一つは卵のからでありますが、この中にとうがらしを入れまして、この入口をふさいで、そしてこれを警察官の顔面に向つてたたきつける、こういうものであります。
それから成増の付近におきまして一部暴徒が起りまして、無許可の集団示威運動をなさんといたした際に、これはただちに取締りの警察官が参りまして、警告を発し、これを解散させ、東上電車で池袋に引返させたのでありまするが、その際に小びんの中に液体が入つておりまして、これを上から投げますと、警察官にすぐ発見されるものでありますから、みんなの下から投げたというような一つの戦術をとりまして、これは催涙ガスでありまして、これをまきますと一種の白い煙が出まして、これによつて少くとも10メートルくらい離れておる者が涙が出て、まともにものを見ることができないというような、いわゆる催涙弾ではございませんが、催涙液体のようなものを使用いたしておりまして、これはただいま警視庁の鑑識課において科学的な分析をいたしまして、近くその液体の名称等も明瞭に公表できる時期があるであろうと考えております。
[013]
自由党(自由民主党) 押谷富三
それだけですか。
[014]
参考人(警視総監) 田中榮一
なおここに当時のいろいろな惨状の写真もございますので、ごらん願いたいと思います。
[015]
自由党(自由民主党) 押谷富三
この武器の中で一つの特徴をなしますものは、今総監の御説明にありました催涙ガスの液体だと思います。これは昨年末大阪の東成警察を朝鮮人暴徒が襲いました際に用いましたものも、サイダーびんに入れた催涙ガスの液体であつた。それを3箇投げつけて、署内には、いることができないような状況になつたということが、調査の結果明らかになつておりますが、そのときに用いたのは駆虫薬であつて、非常に入手のしやすいものであると聞いておつたのであります。今回用いましたその催涙ガスを発生する液体の性格なり、あるいはその入手径路等、まだ調査中であれば明らかにすることはできませんが、御調査の結果はまた適当な機会にお知らせを願いたいと思います。
それから少し順序はかわりましたが、この暴徒の数とこれに対して当られました動員警察官の数はどうなつておりますか。
[016]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。大体21日に各所で無許可デモが行われたのでありまするが、正確な数字はちよつと申し上げかねるのであります。池袋成増付近に集合した集団は大体200名ぐらいではないかと考えております。
それから本富士警察署に、これは学生でございますが、学生が、2、3回にわたりまして延べ150名ほど押しかけております。
それから渋谷警察署には当日4回ほど波状攻撃の来襲がありまして、これはやはり東大の学生が主体になりまして、付近のやじうまも若干加わつたように聞いておりまするが、約30名ぐらいが2回、60名が1回、それから第4回目のは外部の人もまじつて大体600名くらい警察へ押しかけて来たと考えております。
それから電業社付近に集まりました集団はまず400名以内であろうと考えれば間違いなかろうと考えます。
それから当日これに使用しました警察官は、出たり入つたりいたしておりますので、正確な数字は今ここに資料を持つておりませんのでわからないが、まず1500名くらいではないかと考えております。正確な数字が御必要ならばまた後ほどお示しいたします。
[017]
自由党(自由民主党) 押谷富三
1000数百名の警察官がこれの鎮圧に向われておるのでありますが、こういう警察官が出動しなければならぬような重大な事態を生じたということは、あらかじめ何かの情報で警視庁においては入手しておられたのですか。
[018]
参考人(警視総監) 田中榮一
21日のこの反植民地化デーにおきましては、全国的にもいろいろデモあるいは集会等があるということは常に特審局、国警並びに全国の自警から前々から連絡はとれておりまして、もちろん警視庁からも相当な資料を各方面にも出しまして、相互に警戒をいたしておつたのであります。それからまた警視庁におきましても、それぞれ事前に警視庁予備隊等を最も適当な箇所に配置をいたしまして、事前の警戒に当つておつたのであります。
[019]
自由党(自由民主党) 押谷富三
事前に情報を入手して、かようなこともあるであろうという警戒がなされ、そして1000数百名の警察官が出動しておられたにもかかわらず、当日の都内の状況は、暴徒のために2人の警察官があるいはたたかれたり手錠をかけられたり目隠しをされたり、はなはだしきはピストルをとられたり、あるいは交番をこわされたり電話をこわされたりしたような実害が各所に行われておるのであります。
これは警察の警備の手薄かあるいは手違いか、何かそこに原因がなければならぬと思うのであります。当日の警備の模様からして、こういう結果を見たことは私どもは遺憾だと考えておるのでありますが、総監はこの点についていかがお考えになつておられますか。
[020]
参考人(警視総監) 田中榮一
まことにごもつともな御質問でございます。大体ほかの方のデモの取締りにつきましては、私どもといたしましては何ら事故もなく取締りができたのでありまするが、この電業社付近のデモの取締りにつきましては、現場が非常に込み入つたところでございまして、もちろんその付近には警戒の職員等も十分配置をいたし、それぞれ情勢を察知するに必要なる人員を配置させまして、その行動について監視をしておつたのでありますが、甲斐巡査の襲撃をされたのはまつたく突発的な瞬間的なできごとでありまして、しかもそれからすぐ各方面に集団が二分されて急速に行進いたしましたので、警察といたしましてはこれを追撃するというような態勢で行つたわけであります。
もちろん今回のこの取締りにつきましては、警視庁といたしましては万全を尽したはずであるのでありますが、一部においてかような不祥事を起しましたことはまことに申訳ないことでありまして、今後こういうことにつきましては警察としてもさらに十分に警戒をいたしまして、万遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。
[021]
自由党(自由民主党) 押谷富三
今後十分御注意をいただきまして万全を期せられたいと思うのであります。
そこで当日暴徒のために奪われたピストルでありますが、これはまだ発見をされておらないようであります。今後も今の「球根栽培法」の指示に従つて彼らは警察官の武器をねらうということはあり得るのでありますが、過去において警察官がピストルを奪われたような事実があるか、またあればその数はどれくらいであるかをお聞きかせ願いたいと思います。
[022]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えいたします。従来警察官の拳銃を奪われた数は、今手元に資料を持つておりませんので、正確な数字を申し上げかねるのでありますが、ときに警察官が派出所等において休憩中に、外の何者かに盗まれたようなことが1、2回あるのであります。それからまた寮におきまして1回拳銃を盗まれたというようなことも承知いたしております。しかしこれらの拳銃はいずれも昨年春以前のものでありまして、私の想像としては、これは単なる物取りまたはそうした拳銃を奪取して他へやみで転売して金にかえるというような目的のもとにとつたのではないかとも考えられるのであります。
昨年の12月26日練馬署管内におきまして印藤巡査が多数の暴漢に襲われまして惨殺せられ、しかも拳銃を奪取されたのでありますが、これと今回甲斐巡査が多数の暴徒に取囲まれて拳銃を奪取された、この2件につきましては私は単に物取りのしわざではない、ある一つの目的を持つた犯行である、言葉をかえて申しますならば、いわゆる思想的背景を持つた犯行であろうということを考えざるを得ないのであります。
[055]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
それはその程度にしまして、この「球根栽培法」について承りたいのですが、先ほどあなたのお言葉を聞いておりますると、共産党が発行しておる「球根栽培法」と言われておりますが、これは間違いありませんか。
[056]
参考人(警視総監) 田中榮一
その「球根栽培法」は共産党員の持つておつたものを警視庁が押収令状によつて取上げたものであります。従つてそれは1部でなくして、多数配付の目的を持つておつたものでありますから、これは私は共産党から出た文書であると認定してさしつかえないのではないかと思います。
[057]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
これはまことに重大なものでありまするが、どこで発行をしたかということは、印刷所その他を調べてみればわかるはずでありまするが、わからないですか。もしわからぬとすれば、これは吉河特審局長でもよろしい。こんなことくらいわからぬければたいへんだろうと思いますが、わかつておれば聞かせてもらいたい。わからぬとすれば、それは極力ひとつ、それこそ草の根わけても明らかにしてもらわなければならぬと思います。
[058]
参考人(警視総監) 田中榮一
「球根栽培法」と申すものは、御承知の通り偽装の表題でありまして、何も球根の栽培がその中に書かれているわけではございません。ものによりましては、その裏面に「内外評論」という本来の名前が出ております。
この「内外評論」は、私どもといたしましては、昨年11月下旬、「アカハタ」の同類紙として1回発刊停止の処分をして来たものでありますが、その後も引続き「球根栽培法」として出ております。
現在その印刷、編集、発行、配布網等につきましては鋭意調査中でございます。
[059]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
「アカハタ」の同類紙ということになれば、「アカハタ」はりつぱに共産党の発行物でありますから、共産党の発行したるものと解釈してさしつかえないと思いますが、その点はいかがですか。
[060]
参考人(警視総監) 田中榮一
現在指令の解釈といたしましては、同類紙、後継紙は特定団体の機関紙であることを必要としないという解釈になつておりまして、「球根栽培法」が日本共産党から発行されているという点につきましては、まだ私ども確認いたしておりません。
[061]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
これはまことに重大なことでありまするから、単なる推測ではいかぬと思います。鋭意御研究願いたいと思います。
それから先ほども見せられた暴徒の使つた武器ですが、これは相当の数であつたと思いますが、これはどこでつくつて、どういうことでやつておつたかという根拠がおわかりになりそうなものですが、まだおわかりになりませんか。
[062]
参考人(警視総監) 田中榮一
今見せましたもののつくつた場所とか使用方法とかいう点でございますが、今のところ、関係者のおも立つた者を検挙いたしまして、目下取調中でありまして、この取調べが進展をいたしましたならば、ああしたものがどこでつくられ、どういうように使われたか。また実際取締りに従事いたしました警察官で、それによつてけがをした者もありますから、これらのことを調査いたしましたならば、逐次明瞭になるだろうと考えております。
[063]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
この「球根栽培法」に中核自衛隊の使用する武器としていろいろなものが書いてありますが、容易に入手できるという前提でそういう武器を使つて実際行動をやれということになるわけです。
[091]
日本共産党 田中堯平
先ほどから自由党の押谷君なり鍛冶君からの質疑、それから田中総監や特審局長吉河氏の答弁をずつと聞いておりますと、何のことはない、要するに今いろいろと騒擾事件があちこちにある。これは共産党が思想的背景をなし、おそらくこれが指導しておるであろうというようなことで、まるでやおちよう質問、やおちよう答弁である。そこで私はたいへんけしからぬという角度からお尋ねをします。
[099]
日本共産党 田中堯平
今現実に日本の治安ということが問題になつているのであるが、現在、治安と言つても、ただ困つた者がわいわい騒ぐということだけを押えるのが治安かと聞いているわけです。あなた方の治安という観念がはつきり一方に偏しているから、それが間違いでないかということを聞いているわけです。しかしそれは論争になるだけで、その点はまたあとで聞くことにしまして、今矢つぎばやにあちこちで騒擾事件が起きておりますが、これを共産党にくつつけようとしている。今警視総監の答弁にもあつたように「球根栽培法」ですか、そういうものがどうも共産党の刊行物であるらしい。しかもその中には、今度の騒擾事件みたいなものを使嗾しているような筋合いが出ているという説明であつた。
そこでお聞きしたい。いやしくも警視総監ともあろう者が、責任をもつての発言を聞きたい。大体「球根栽培法」なるものが、これは共産党の刊行物であり、あるいは指令書、方針書にかわるようなものであるというふうに、あなたは断定をしておられますか。第一問としてまずそれを聞きたい。
[100]
参考人(警視総監) 田中榮一
お答えします。
「球根栽培法」が共産党から発行せられたものかどうかというのは、それを実際にやつておられる今の吉河特審局長のお答えによつておわかりと思うのでありますが、私どもはこの「球根栽培法」の内容を拝見しまして、これが共産党から出たとは申し上げかねるのでありますが、これらの文句を見ますと、こういうことも書いてあります。「わが党は最近新聞綱領および五全協の決定を全党の討議にうつしこれを成功的に闘いぬいた経験をもつている」。
こういうことで、「わが党」とか、そうした文句を書いてありますが、党というのは共産党だけではありませんから、ほかにもあろうと思いますが、しかし五全協というのは、今のところ共産党以外にはたしかなかつたと私は記憶しておるのであります。そういう点から、私はこれは共産党員がつくつたものではないかという疑いを持つているわけであります。
[101]
日本共産党 田中堯平
単なる疑いだと言う。あなたの最初の発言では、共産党の刊行物であると私は認めると、たしかに認めるとかいうような発言であつた。しかもそれに載つていることが今度の騒擾事件に現われているから云々ということであつた。
そこでその次にお尋ねするのは、それならその「球根栽培法」に載つている、あなたがさつき読んだ何とか何とかで中核自衛隊が云々というような問題もあつたが、そういうような文言が今度の騒擾事件に現われたという何か具体的な証拠がありますか。
あなたはさつき、私はそれは共産党の作業であると思うというふうな発言をした。あなたは何か確たる証拠を持つて言つているのか。これは共産党の指令、この「球根栽培法」なら「球根栽培法」なるものの指令に基いてやつたことであるという、一つの証拠なり、あるいは証拠まで行かないにしても、それに近いものをお持ちですか。
[102]
参考人(警視総監) 田中榮一
現在の暴動といいますか、騒擾事件の個々のいろいろな点を考えますると、私はこの「球根栽培法」の指示しているような行動を具体的にやつておるように見えるのであります。
ですから私は「球根栽培法」によつてやつたのではないかということを申し上げたのであります。
[103]
日本共産党 田中堯平
こつちが聞けば、最初は私はそう思うと言つておつたのが、今度は、ではないかと思われるというふうに、次第に言葉じりがかわつて来る。
証拠のない証拠、自信のない証拠であります。そういうふうに証拠もないのに、何でもかんでも共産党がやつたんだ、だから共産党をたたきつけてしまえというので、団規法を今にも上程しようというために、与党自由党の議員と一生懸命やおちよう問答をやつて、何でもかでもこれを近いうちにやらなければならぬということに国民の気持を持つて行かなければならぬというので、まつたく陰謀的な質疑応答が行われている。はなはだ遺憾であります。
昭和27年02月23日 参議院 法務委員会
[060]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
現在我が国におきまして、一部の極端な共産主義者が各種の破壊的な行動に出ておるというような情報は、従来からこれを入手しております。特に暴力或いは武装叛乱を以て、日本国憲法又は憲法下に成立した政府を転覆するというようなことを宣伝、煽動しておるような事実も、情報も、これを得ております。
極く簡単に申上げますると、その情報の内容として、一昨年秋頃から「内外評論」とか、或いは「平和と独立」というような出版物によりまして、かような極めて破壊的な宣伝、煽動が行われておるような状況でありまして、
越えて昨年の2月には、日本共産党第四回全国協議会なるものが開催せられたと称せられまして、その協議会の決議事項として、武力闘争による運動方針が決定されたと、かような文書が更に流布されておる、
次いで昨年8月、やはり日本共産党第二十回中央委員会なるものが開催せられたと称せられまして、新綱領草案なるものが提案されたと、この新綱領草案に附帯いたしまして、「戦術と組織の問題」と題するような文書が印刷物として流布され、その内容は、先ほど申しましたような武力闘争の方針、組織の問題を書いてあつた。
次いで昨年10月には、第五回全国協議会が開催せられたと称せられまして、その第五回全国協議会で決定された決定事項の内容がやはり印刷物として流布されております。これに相関連するやに思われるのでありますが、「我我は武装の準備と行動を開始しなければならない」というような題を持つ極めて破壊的な印刷物も又流布されておるわけであります。
極く最近におきましては、昨年の末に全国組織会議なるものが開催されたと称せられまして、同様一部破壊的な共産分子の「当面の戦術と組織の問題」と題して、いろいろ活動方針が述べられております。
次いで最近に至りましては、只今申上げた、「我々は武装の準備と行動を開始しなければならない」という印刷物を前篇とすれば、その後篇に当るものと見られるようなものとして「中核自衛隊の組織と戦術」と題する印刷物がやはり流布されつつあるような状況であります。
かような一連の極めて破壊的な宣伝啓蒙が一部の共産主義者によつて行われているというふうなことを確認しておりまして、これに基きましてその背後の関係団体又は関係組織の実体につきまして、又かような破壊的な宣伝啓蒙に相照応するような具体的な動向の有無につきまして調査中であります。
[061]
日本社会党(社会民主党) 伊藤修
簡単でありまするからお聞きいたしますが、そういたしますと一昨々日ですか、21日にいわゆる反植民地デーというものが全国各地において行われたようでありますが、これはあとで齋藤さんにお伺いいたしますが、内容については……その現われというものは、今の御説明のような組織活動の一つの現われと認められるのですか、どうですか。
[062]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
目下調査中でありまして具体的な結論は得ておりません。
併しこの一昨々日の集団行動の中に分散的に現われましたような極めて暴力的な行為につきましては、只今申述べました宣伝啓蒙の内容と相照応するような事例が認められるということは言われる物じやないかと考えます。
[063]
日本社会党(社会民主党) 伊藤修
そういたしますと、いわゆる日共において地下工作として行われたところの、指導方針に基くところの一つの現れというふうに考えていると、こういうふうに伺われるのですか……。
[064]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
只今申上げました一連の一部共産主義者の破壊的な行動が現在の日本共産党と如何なる関連にあるやという点につきましては、目下調査中でございまして結論に達しておりません。
[065]
日本社会党(社会民主党) 伊藤修
あとは一番最初のあれに戻りますが、仮にですよ、そういうようなあなたの今までの調査されたような一つの指導方針に基くところの団体ありといたしますれば、具体的に言えば日共ですね、それだけで以て暴力団体として解散を命じますか、或いは個個の現われがそれに繋がつていなければ暴力団体として取扱わないのですか、その点の解釈を一つ……。
[066]
政府委員(法務府特別審査局長) 吉河光貞
現在調査中で、組織の実態その他具体的内容を把握しておりませんので結論を申上げるのは差控えたいと思います。
昭和27年03月06日 衆議院 運輸委員会
[093]
自由党(自由民主党) 山崎岩男
私は北海道におけるところの白鳥警部暗殺事件、あるいはまたこのごろ東京都内にありました印藤巡査の謀殺事件、こういう一連の血なまぐさいところの事件というものは、いわゆる共産党の五全協の指令に基くところの暴力革命の第一歩であると私は考えております。
そこでこれはなまなましい事実である本日の新聞紙上でありますから、総裁も多分お読みになつたと思うのでありますが、蒲田事件の全貌を分解して見ますと、バルチザン的戦術を用いましたところの、日共暴力革命の第一歩であると新聞は報道している。これは本日の新聞紙上でありますから、おそらく総裁もお読みになつたと思うのであります。
日共に軍事組織を持つている、その一つはどうだ。これはここにいる江崎委員はさだめし心の中ではかようかくかくと思つていることであろうと思うのでありますが、まず最高軍事委員会なるものを設けている。その下に地方軍事委員会なるものを置き、地区軍事委員会なるものがその下に配属されておりまして、その下には中核自衛隊というものがある。その中核自衛隊の中には抵抗自衛組織というものがありまして、これがただいまいろいろな問題を起しているところの中核になつているのであります。そうしてその下にはわれわれ8000万同胞をねらい討ちをかけます人民軍というものが置かれている。
このように報道されているのであります。
そこで私は北海道の治安の状況につきまして、先ほど法務総裁に御質問を申し上げましたところが、今度の震災によりまして北海道の治安というものは、別段これという騒擾を発見することがない、まことに平穏無事であるという御答弁を承りましたので、胸をなでおろしたような次第であります。しかしながら日共は北海道にその本部を移すのだというようなことまでも豪語している。そうして徳田球一やなんぞがただいま逃げおおせまして、一体どこに隠れているか。私は北海道こそ最も怪しいところであると考えているのであります。北海道にはあまたの炭鉱がある。その炭鉱にはダイナマイトが多数ある。また室蘭には製鋼所がある。製鋼所を押え、炭鉱から持つて参りましたダイナマイトに鉄片を与えて来たならば、ただちにこれは手榴弾になる。こういうようなものが一体どこをねらうかというと、まず北海道と本州とのつながりである連絡船をねらう。この点に対しまして総裁は、そういうような心配がないと御判断することができるかどうか、その点ひとつ承りたい。
[094]
説明員(日本国有鉄道総裁) 長崎惣之助
そういうことがあるかないかの判断等につきましては、私はきわめてしろうとでございまして、鉄道屋ではございますが、そういう治安の問題ということになると私何も経験ございませんが、その点は先ほど来申しましたように船と汽車とのつなぎ合せというところは、非常に弱い地点でございます。これは輸送上から申しましてもそうでございます。でありますからさような危険のないように十分な注意をいたして参るよう、私はかねがね指令はいたしてございます。
昭和27年03月19日 参議院 予算委員会
[003]
法務総裁 木村篤太郎
お答えいたします。危険分子が相当活躍しておるということは事実であります。只今御指摘になりました白鳥事件におきましても、相当過激な文書が頒布されております。又「内外評論」とか、或いは「パチンコ必勝法」とか、或いは「球根栽培法」とかいうような名の下に雑誌が相当数頒布されております。その内容を見ますると、実に戦慄すべきようなことが書かれておるのであります。その他いろいろな面で宣伝文書が頒布されておるという事実は左藤委員も御承知の通りであります。又実際テロ行為も相当数行われておること、これ又事実であります。
誠に遺憾と存じます。民主平和国家を建設するという途上におきまして、かようなテロ行為が行われるということは、何としても我々はこれに対処して行かなければならない。治安確保の意味から申しましても、これらの行為の絶滅を期しなければならんと考えております。
併しながらこれらの過激な冊子の領布及びテロ行為が果して日本共産党と連絡があり、又その指導の下になされたものであるかということの確証は今挙つておりません。
果してこれがその指導の下に行われておると仮定いたしますると、これは容易ならんことであると私は考えておる。各方面において、これが如何なるものの手において、或いは又如何なる団体の手においてかようなものが頒布され、又テロ行為が指導されておるかということについての実証を掴むべく、当局においては慎重に又果敢にこれをやつておることを申上げたいのであります。併しながら前申上げました通り、只今のところでは確証が挙つておりません。
確証が挙りましたなら、我々は平和民主主義国家建設の途上におきまして、かような行為は許すべからざることでありますから、相当な処置はなさなければならんということの覚悟は持つておる次第であります。
昭和27年03月27日 衆議院 本会議
[005]
改進党 小川半次
私は、最近頻発する派出所あるいは税務署襲撃事件について、法務総裁並びにこれに関係ある各大臣にお尋ねしたいのであります。
北海道では白鳥警部が射殺され、東京では印藤巡査が惨殺され、長野県においては数名の警官が集団暴行を加えられた上に短銃を強奪されたという恐るべき事犯が起つて以来、各地において警察官に対する集団暴行や派出所の襲撃、あるいは鶴見、川崎、横須賀等を初め各地の税務署の破壊等が頻発して、国民の不安をつのらしておるのであります。
すでに伝えられておるごとく、この悪質な破壊的行動を煽動する最も根拠的なものは、日共の非合法機関紙と目されている球根栽培法32号の示すところにあると思うのであります。たとえば、その内容の一部には、警官の一人々々を居住地において各個に撃破して行くことであるとか、あるいは家庭における警察官を包囲し、彼らをして番犬であることにいたたまれなきまでに追い込んで行く意識的、計画的大衆工作が重要であるというような意味で煽動しておるのであります。
われわれの想像するところによりますと、おそらく今日までに発生した事犯は、ほんの初歩的なモデル・ケースにすぎないのであつて、今後はさらに大規模の集団的暴力行為が執拗に繰返されると思うのであります。これがため、警察官を萎縮せしめ、司法権を睡眠せしめ、国家の権力は無視され、やがて無政府状態にまで追い込まれて行くのではないかという恐るべき不安感が国民の間に流れていることを、政府は見のがしてはならぬのであります。
昭和27年04月03日 衆議院 本会議
[011]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつております警察予備隊令の一部を改正する等の法律案について、委員長の報告に賛成の意を表するものであります。
この法律案の骨子は、独立後のわが国の治安情勢に対処するため、警察予備隊警察官3万5000人と、警察官以外の職員976人を増員せんとするものでありまして、その増員の趣意は、あくまでも警察予備隊令第1条に明定されておりまする、「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内」に限られておるものでありますから、今あらためて論議を闘わす余地のないものと信ずるものであります。(拍手)
委員会等における野党各派の御議論を拝聴いたしましても、ただいま改進党代表の御議論を承りましても、共産党と特殊な立場に立つ人々を除いては、その他の諸君もともに、現在国内治安を維持するためには警察力の強化が必要であることを認めておられるのであります。
それにもかかわらず本案に反対せられる理由を探究いたしまするに、改進党代表の御意見によれば、こんなものでは自主的に自衛できるものでない、のみならず、行政協定において緊急事態が起きたら協議するということをきめて、指揮権の所在を不明にしているので、自主的な防衛力を認めがたいという点、第2には、憲法違反の疑いがあるという点、さらに防衛分担金や安全保障諸費のごとき支出をやめて、この金をもつて自主的自衛力を漸増すべきであるという点、さらに第4は、政府の予備隊に対する態度が不明確であるために、国民を混乱と疑惑の念に惑わしめているという諸点にあるようであります。
(中略)
〔発言する者多し〕
[012]
副議長 岩本信行
御静粛に願います。
[013]
自由党(自由民主党) 鍛冶良作
それとも、力のない者は、手出しをしたからとて、とうていかなうものではないから、手をこまねいて、なすがままに見ておれという御議論でございましようか。われわれは、外敵一たび襲い来らば、われらの及ぶ限りの力をもつて、寸土といえどもこれを侵させない。戦争をやる力はないにいたしましても、これは安全保障軍によつて、これを粉砕してもらうほかはないが、安全保障軍の出て来るまでの防衛、ことに外敵がわが国に侵略して来たときに起る国内治安の紊乱を未然に防衛する力だけは、何としても保持しなければならぬと確信いたすものであります。
また、半呑半吐の力だからといつて、これをなくしたらどうでありましよう。すでに共産党は暴力革命遂行の指令を出しておる。着々これに着手しております。
あの「球根栽培法」による中核自衛隊結成の方法、武器弾薬の奪略方法並びにパルチザン攻撃方法等を指令し、これによつて各地にテロ及び暴動が起つている事実は、これを何と見ているのでありますか、これこそ、共産陣営にわが祖国を無条件に呈上する結果を招来するものと断じなければなりません。(拍手)