阪神教育事件(戦後唯一の非常事態宣言)と神戸事件

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昭和23年04月27日 衆議院 治安及び地方制度委員会
[012]
政府委員(国家地方警察本部長官) 斎藤昇
そこで神戸地区司令官は、その日の午後10時ごろ、非常事態を宣言いたしまして、警察は憲兵司令官の指揮のもとに関係朝鮮人の検挙に当ることに相なつたのであります。ただいままで受けております報告によりますと、朝鮮人の関係者約1200人ほど、すでに逮捕したという報告を受けているような次第であります。詳細はただいま溝淵次長が出張いたしまして取調べている次第でありますが、一応われわれの報告を得ておりますのは、ただいま申し上げたような状況でございます。





昭和23年04月27日 衆議院 本会議
[009]
民主党(自由民主党) 後藤悦治
今回は、終戦後初めて進駐軍司令部から非常事態の宣言をされるというような、まことに日鮮両民族のために悲しむべき事態を惹起したのでございますが、これは私がいまさら申し上げるまでもなく、すでに皆様方は、新聞に渉外局発表が出ておりまするから、あらましは御存じであろうと存じますから、それの重複を避けたいと存じます。ただこの機会に、その実情にいささか言及いたしまして、私が政府の所信を質したい要点の2、3に触れてみたいと思うのであります。





昭和23年04月27日 参議院 治安及び地方制度委員会
日本共産党 細川嘉六
大阪神戸の問題は、地方当局と朝鮮人との間において片が附いたかに私は思うのである。それが再び蒸び返されて今日の騒ぎとなつて来ておる。それで連合軍側の干渉が起るようになつておるのであるが、この場合に、連合軍が神戸において、非常事態宣言を発するに至つたことについては、地方当局或いは政府との間に何かの話があつたのか、なかつたのか。私らは思うにこんな問題は日本国内の問題であつて解決される問題だと考えております。如何に教育、警察制度が今日できたてであるにしても、道理と努力を以てすればここまで行かない筈だ。





昭和23年04月30日 衆議院 治安及び地方制度委員会
国家地方警察本部長官 斎藤昇
連絡その他につきまして、私から補足をいたします。24日の午前10時過ぎから朝鮮人関係の者が押しかけてまいつたのでありますが、私の方にそういつた連絡がありましたのは、同日の午後3、4時ごろであつたと考えております。従つて通信関係を申し上げますと、神戸には直通の警察電話がありませんので、神戸から大阪に連絡をし、大阪からこちらに直通電話で連絡をすることになつております。当時の現地の状況を処理しております関係から申しまして、殊に市の警察当局の首脳部は、中に監禁されてしまつております。県の警察長は外に出ましたが、指揮をしている関係から、報告がそのくらいの程度にいくことは、現在の通信施設としては、まずやむを得ないことであろうと考えております。そのときの私どもの判断といたしましては、先ほど公安委員長から御説明申し上げました通り、中には約300名、外部には800名という報告であります。警察官は1500名動員をしているということでありますが、事柄は県庁及びその周囲の事態であります。従いまして神戸市の警察、兵庫県の自治体警察、国家地方警察が協力をして鎮圧のできるものと考えていたのであります。先ほど次長から説明をいたしましたように、1時過ぎには内部で妥協ができたということが外部に伝えられ、そして4時過ぎには全部交渉が終つて、暴徒は全部引揚げたのであります。

従いまして、さような状況といたしまして非常事態の宣言をする必要はないものと判断をいたしておつたのであります。さらに夜11時、基地司令官の一発せられたる特別措置は、その中に私は報告を受けましたが、これはすでに暴徒が退散した後の検挙の指示であります。かような検挙のあれにつきましても、非常事態を宣言をするような必要は毛頭ないと私は確信をいたしておりましたので、翌朝知事と市長にはその旨連絡をいたしたのであります。私の職責といたしましては、非常事態宣言を要請する必要があるのではないかというような考えがいたしました場合には、ただちに公安委員に申し上げる必要があると思うのでありますが、このような状態のもとにおきましては、さような必要はないものと考えているのであります。警察法の非常事態の宣言は、これは一自治体警察または国家警察だけで鎮圧のできない、国家警察と個々の自治体警察を一つの指揮系統の中に入れてやらなければならぬというような、国家非常事態の場合でなければ発効すべきものではないだろうと考えているのであります。現在の制度の連用によつて鎮圧ができると考えます際には、私は非常事態の宣言を要請すべきではないと考えているのであります。





昭和23年04月30日 衆議院 本会議
[003]
法務総裁 鈴木義男
その後、神戸地区の司令官メノハー代将が帰つてこられまして、この事態を聴きまして、非常に驚かれるとともに憤られまして、第8軍司令部と連絡をとりました結果、非常事態の宣言を行うということを声明せられまして、知事、市長、検事正等を夜の11時ごろ召集せられまして、今日暴行を働き、デモに加わつた朝鮮人並びに日本人は一斉に検挙する、ゆえに助力せよ、こういう命令を受けまして、その晩から検挙に着手したわけであります。





昭和23年05月01日 衆議院 司法委員会
[007]
法務総裁 鈴木義男
そこで引揚げたのが5時ころでありまして、その後1時間ほとしてメノハー准将はお帰りになつた。それでこの経過を聴かれまして、これは容易ならぬことである。地方政権に対する一つのクーデターであるという御見解から、第8軍司令部に連絡せられまして、ただちに非常事態の宣言を行つた。本日この暴行その他に参加いたしました者、全部これを検挙する、こういう方針を決せられまして、夜の11時ころ知事、市長、検事正等を招集せられまして、非常事態を宣言するとともに、これらの検挙について協力すべきことを命ぜられたのであります。





昭和25年11月30日 衆議院 法務委員会
民主自由党 押谷富三
それは今議題に供せられております神戸の朝鮮人騒動でありまするが、この事件は一昨年の4月、わが国で初めて出されました非常事態宣言のありました朝鮮人事件に次ぐ重大な事件でありまして、この事件についての国民の関心はまことに深いものがあります。

この事件は過去において現われておりまする同種の事件とたいへん趣を異にいたしておる、いわゆる特殊性を持つておるのでありまして、ここに集まりました朝鮮人の数におきましてもたいへん多いのであります、その集まり方におきましても、同時に兵庫県における明石、大久保、姫路、相生、飾磨、福崎あるいは神戸市、尼崎市、西宮市、高砂町、こういう各方面からかり出されたものが1000何十名かが集つたのであり、しかも伊丹であるとか、神戸市各所において、同時蜂起の形をとつておるのでありまして、一つの大きな指令のもとになされたごとき特異性を持つておると思います。

あるいはまたかり出されておるこの暴徒の中には、学童でありますとか、あるいはもうほとんど活動力を持つておらないような老婦人などを前線に立たしめておるというような形になつておるのでありまして、かような点におきましてもたいへん違つた点がありますが、とにかくこの朝鮮人の騒動はまことに大きな騒乱でありまして、国民はたいへんな関心を持つておるのでありますが、これはちようど神戸事件だけを考えますと、あたかも氷山が海面に現われた形でありまして、その水面下にはたいへん大きなものがひそんでいると考えます。私はこれからそういう方面について少し御当局の意見を伺いたいのでありますが、まず最初にその表に現われた氷山、この朝鮮人事件の概要を、政府が收集せられております費料によりまして、御説明をいただきたいと存じます。

法務総裁 大橋武夫
押谷君の御質問になりましたる神戸事件について、ただいままで当局において取調べましたる概要を申し上げることにいたします。

兵庫県下におきまする朝鮮人は、本年9月末現在の外国人登録国籍別調査によりますると、5万2868名、このうち元朝連系に属すと認められます者4万5190名、民団系7678名ぐらいということに相なつておりまして、神戸市を中心とし尼崎、明石、姫路の各市に最も多く居住いたしておるようでございます。終戦後最も大きな騒擾事件として取上げられましたる昭和23年4月の朝鮮人学校問題をめぐる、いわゆる神戸事件を惹起いたし、続いて姫路、尼崎等においても事件が発生し、このために治安面においても相当憂慮するものがあつた次第でありますが、昨年9月朝連及び民青の解散によりまして、その間一時活発なる動きをしないようなことになつておつたのであります。しかしながら本年6月25日の朝鮮動乱の勃発前後から、俄然活発な動きを見るようになりまして、ことに動乱勃発後におきましては、全県下にわたつて反戦、反米的な運動を展開いたし、しかも本年8月10日ごろから、朝鮮人秘密工作隊を結成いたし、神戸市内の朝鮮人小学校でひそかに訓練所を設置いたしまして、青年行動隊員の尖鋭分子を訓練し、遂に9月9日、工作隊員の一部を勅令第311号違反容疑で一斉検挙し、その後の動向については厳重に当局といたしましても注意をいたしておつたのでありますが、遂に今回の騒擾事件の発生を見るに至つた次第でございます。

今回の騒擾事件発生に至るまでの経緯を申し上げますると、11月20日午前10時ごろ神戸市長田区役所に朝鮮人約300名が押しかけて参りまして、生活保護法を適用してくれという要求を掲げて、不法行為に出ましたので、1名を公務執行妨害に、30名を外国人登録証明書不携帯としてそれぞれ検挙いたしております。

11月24日午前11時ごろには朝鮮人約1000名ぐらい、このうちには朝鮮人中学生約300名ほど含んでおりますが、神戸市長田区役所に押しかけまして、市民税を撤廃せよ、また生活保護法を徹底的に実施せよという要求をいたし、不穏な行動に出んといたしましたので、区役所側からの要請によりまして、所轄長田警察署から警察官が現場に急行いたしまして、群衆に退去を要求したのであります。しかるにかえつて警察官に対し反抗するに至りましたので、うち27名を公務執行妨害並びに住居侵入容疑で検挙をいたしましたので、ようやく解散するに至りました。

ところが同日午後8時ごろ彼らは神戸市所在の西神戸朝鮮人小学校に集合いたしまして、被検挙者の奪還を計画いたし、その後午後9時30分ごろ約200名くらいが長田警察署に押しかけ、代表者7名が署長に面会を求めまして、被検挙者の釈放を要求したのでありますが、拒否せられて、退去いたしたのであります。

同日午後10時ごろ再び西神戸少学校に集まりまして、スクラムを組んで長田警察審に押しかけまして、被検挙者の釈放を迫りましたが、これも拒否せられたのであります。この際におきましても、警察官に反抗いたしたという事案がございまして、首謀者と認められまする川崎製鉄所解雇者でありまする日本共産党員1名を、公務執行妨害罪で検挙いたしたのであります。

なお11月24日は葺合区役所、灘区役所にも同様朝鮮人団体60名ぐらいが押しかけまして、長田区役所同様の要求をいたしており、しかも時間的に見ても午前11時ごろから午後3時ごろまでに解散をいたしたという状況になつております。

さらに11月24日は兵庫県姫路市内三菱電機株式会社姫路工場の被整理者の、レツド・パージ反対をめぐる不法行為者四名を検挙いたしておりますが、これら被検挙者の釈放要求のため、翌25日午後1時ごろ、朝鮮人約100名ぐらいが姫路市警察署に押しかけまして、署長に面会を強要いたし、この間群衆は署内になだれ込んで、机、ガラス等を破壊いたしましたのでうち4名を暴力行為、住居侵入容疑で検挙いたしております。

11月25日には、右のほかに神戸市役所に20名、明石市役所に75名、大久保町役場に90名くらいの朝鮮人が、日本共産党員等に引率されて、それぞれ押しかけて参りまして、越年資金、生活保護法即時適用、食費代等を要求いたしまして、気勢をあげておりましたが、不法行為の発生を見るに至らなかつたのであります。

さて11月27日の日は、神戸事件の発生の当日でございまするが、この日は早朝から、何らかの指令によるものと思われるのでありまするが、兵庫県下の朝鮮人が20名ないし30名ぐらい一団となりまして、続々神戸市内に集まり、神戸地検、神戸市役所、生田区役所、灘区役所、長田区役所、兵庫税務署、須磨税務署、伊丹市役所、長田警察署等にそれぞれ10名ないし2、30名ぐらいが押しかけまして、市民税撤廃、警察官動員反対等を陳情要求いたしますとともに、一方におきまして神戸市所在の西神戸朝鮮人小学校に700名ぐらいが集合して気勢をあげていたものであります。これに対して、同日午後0時15分ごろ神戸市警察局長名をもちまして、同校の集会を公案条例違反として集会禁止命令を発したのでありますが、これに応ぜずかえつて警察官に反抗し、さらにアジ演説を行い、石ころ、れんが等を運び、各人はこん棒、割木等を所持して気勢をあげ、警察官の入場を阻止いたしまして、校内デモを行い、遂に午後3時20分ごろ群衆は長田区役所に向つて行進を始め、しかも行進中アジビラを撒布いたしたので、遂に警察側が検挙を開始いたした次第であります。

隊伍のうしろの方から順次検挙を開始いたしたのでありまするが、この際群衆はあらかじめ準備いたしておりましたるこん棒、割木等を振りまわし、あるいは投石し、さらにポケット内に隠匿所持いたしておりましたとうがらしの粉末を投げかけまする等、乱闘となりまして、遂に選拔隊の約200名ぐらいは強硬に長田区役所に殺到いたしてこん棒、石ころなどで窓ガラス数10枚を破壊するの暴挙に出たものでありますが、警察側はこれに対しまして、遂にその181名を検挙いたし、長田署及び市警警察学校に分散留置いたしたものであります。しかしながら当日の検挙に際しまして、警察官の側におきまして31名、朝鮮人側におきまして26名の負傷者を出しております。

さらに翌11月28日、前日の被検挙者の取調べの結果と、その後の捜査の結果、本騒擾事件の首謀者と認められまする者17名が判明いたしましたので、逮捕令状を得て一斉捜索を行い同日中に12名を検挙いたしておるのであります。従いまして今川の検挙におきまして、現行犯として逮捕いたしました者は181名、後に通常手続によつて逮捕いたしました者、12名、合計193名を今日までに逮捕いたしております。この内訳は大人の男が155名、大人の女が15名、子供が23名ということに相なつておるのであります。この子供の中には16歳未満の者15名がおりますので、これは即日釈放をいたしております。また18歳以下の者8名がおりましたが、このうち2名は即日釈放いたしております。また28日中には大人のうち5名だけを釈放いたしておるような次第でございます。

神戸市警察当局といたしましては、11月27日午前11時全署にわたり甲号非常召集を行いまして市内の警戒警備に当り、国警県本部におきましては同日午前10時15分本部員並びに五地区署に対して乙号非常召集を行つて、警戒警備に当つたのであります。

取調べの状況につきましては、いまだ詳報に接しておりませんので判明いたしませんが、一応取調べは終つたような模様に聞いております。なお神戸地検からも次席検事以下3名が現地に出張し取調べに協力いたしており、また11月29日午後1時から10名の判事が出張して拘留尋問を行つております。

次に本事件の特異性といたしましては、第1には婦女子を動員いたしておるという点、第2にはデモ隊は初めから棒――棒と申しますのは、警察官の持つております警棒のごとく計画的にかしでつくつたものであります、その棒であるとか、割木、すなわちたきぎ等を所持し、中には白はち巻をいたします等、十分戦闘態勢を整えて行動をいたしておつたという点、第3には検挙者の大部分は他地区の朝鮮人自由労働者であつて、地元朝鮮人はほとんどいなかつたという点、第4には日本共産党員が背後で煽動いたしておるということは、一応考えられますが、彼らは、われわれは全然この事件には関係はないといつて、逃げを打つている、これらの点が特質として見受けられておるのであります。

現在の状況と今後の見通しといたしましては、再び朝鮮人の一部におきましては、態勢を整えて反撃するという情報もありますので、厳重警戒をいたしてはおりますが、しかしすでに首謀者と認められまする者はほとんど検挙いたしておりますから、今後は大したことはないと、一応私どもとしては、かように考えておるのであります。

なお国家警察におきましては、28日午後4時一応警戒態勢を解除いたしたのでありますが、自治警察当局におきましては、引続き今日も警戒を続行いたしておる、かような情報を受けていることを御報告申し上げます。



前略と後略は省略、旧字は新字に変換、誤字・脱字は修正、適宜改行、
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基本的に抜粋して掲載していますので、全文は元サイトでご確認ください。