椿事件 ~ テレビ朝日 元取締役報道局長 椿貞良

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平成05年10月18日 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会
[102]
自由民主党 自見庄三郎
さて、日本民間放送連盟、一般的には民放連と言われておりますが、その放送番組調査会で、テレビ朝日の取締役であります、当時は報道局長でもございました椿局長が政治とテレビについて発言をいたしております。その内容が新聞に大きく取り上げられ、テレビ報道のあり方について論議を呼んでおります。

新聞報道によりますと、椿局長はこういうふうに述べております。ちょっと紹介をさしていただきますと、非自民政権が生まれるように報道せよと指示した、また、小沢一郎氏のけじめを棚上げにしても非自民政権が生まれるように報道するように指示したとか、またこういう発言も新聞報道によるとしておられます。幸い自民党の梶山静六幹事長、それから佐藤孝行総務会長は悪人顔をしておる、2人をツーショットで撮り、報道するだけで、視聴者に悪だくみをする悪代官という印象を与え、自民党守旧派のイメージダウンになったと、非自民路線の具体的な映像まで説明をいたしております。しかも、55年体制を崩壊する役割をわれわれは果たした、こう自負もしておりますし、さらにこう述べております。公正であることをタブーとして、積極的に挑戦する、公正な報道には必ずしもこだわる必要はない、こういうふうに椿報道局長は言い切っておられるわけでございます。

さて、もしこの新聞報道が事実だとしますと、私は、テレビ朝日の報道番組の最高責任者、それに取締役でございますこの椿発言は、私は民主主義にとって極めて重大なことであるというふうに思うわけでございます。なぜならば、今総理も、まさにジャーナリズム出身の先輩として、公平、公正な報道は大事である、同時に憲法に保障された言論の自由も大事である、こう言われました。

その中で、まず、この民放連が、ジャーナリストでございますから、自主的にまず規則を自分たちで自律のために決めておられるわけでございますけれども、その民放連が自主的に定めた放送基準の2章にこうあります。これは自主的に決められた放送基準でございます。「政治に関しては、公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する。」こう書いてあるわけでございますから、まあジャーナリストとしてもこれから大きく逸脱し、私は、職業的倫理上からも絶対に許される話じゃない、こういうふうに思うわけでございます。

また、テレビ局は新聞、雑誌などと違いまして、これはもう、言論と、こう言いますが、テレビは、御存じのように、新聞などと異なり放送法で表現の自由を保障いたしています。その一方、当然不偏不党、あるいは政治的公平、真実の報道、そして、意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする、こういうことを法律上義務づけてあるわけでございます。なぜかといえば、それはもう御存じのように、これは国民の共通の財産でございます公共財の電波を使いますから、これは当然の責務である、こういうふうに思うわけでございます。そういった中で、椿局長の発言は放送法に違反する疑いが私は濃厚である、こういうふうに思うわけでございます。

また、公選法、公職選挙法でございます、に規定しております「表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。」にも抵触するおそれがありますし、できるだけ多様な意見や物の見方を視聴者に提供するということは、やはり私は報道の最高責任者の、ジャーナリストとしても、また今さっき言いました放送法上は公平性の確保ということがきちっとうたわれているわけでございますから、そういった意味でも私は大変重大な問題である、こういうふうに思うわけでございます。

時間がございませんから、郵政大臣に、イエスかノーかだけでお答えいただきたいと思うわけでございますけれども、新聞報道あるいは前の本会議の御答弁によりましても、この産経新聞に報道されて以来、政治的公平を規定した放送法に違反する疑いがあるとのことで、テレビ朝日の取締役である椿前報道局長から郵政省としては事情聴取を行って、調査中だということがわかっておりますが、これは事実でしょうか、事実でないでしょうか、その点だけでよろしゅうございます。

[103]
郵政大臣 神崎武法
テレビ朝日の前報道局長に対しまして、新聞報道された事柄がそのとおりか否か、説明を求めていることは事実であります。

[104]
自由民主党 自見庄三郎
さらにまた、今月号の、11月号の中央公論でございますけれども、田原総一朗氏が語られております。これを読みまして、私も選挙報道の公平、公正さが著しく損なわれているんじゃないかというふうに驚いたわけでございますけれども、その座談会によりますと、こう書いてあります。

田原さんが幾つかのワイドショーをごらんになって、テレビが特定の候補者だけを追いかけているので驚かれたそうでございます。その選挙区にはほかの候補者がいる、当然中選挙区でございますからね、今は。ほかの候補者がいるのに無視同様な扱いで、テレビ局の関係者に、こんなことをやっていいのかとただしたところ、テレビ局の方はこう言ったというんですよ。桜田淳子や山崎浩子だって一人だけを追っかけているじゃないですかという返事が返ってきたというんですよ。田原さんは、選挙期間中に候補者をどう扱えばよいかという、公職選挙法の何たるか、基礎的なことも知らないというふうに、そう書いてあります。

また、今言いましたテレビ朝日の椿前報道局長は、新聞報道によりますと、複数の特定候補を選挙中積極的に報道し、バックアップした、この人たちの当選は我々テレビのおかげであると考える、こう発言されたと報道されておるわけでございます。田原さんの話とくしくも符合するわけでございます。

まさに、一方に偏向した、中立性を欠く報道であり、公選法あるいは放送法の基本的精神を踏みにじっておると言わざるを得ない、甚だ遺憾なことであるというふうに私は思うわけでございます。

それにつきまして、これは民主主義の基本に、根幹に関することでございますから、現在の法制度では、今郵政省がいろいろ調査中だという話があったわけでございますけれども、もし放送法違反があっても、十分に証明されない可能性もあります。しかも、椿前報道局長が意図的な報道を否定しておられ、真相は今やみの中と言っても過言ではない。しかし、どうもこの椿発言もいろいろちょっと少しニュアンスが変わってきておるようでございまして、きょうの新聞によると、取締役をやめたい。その前は、報道局長を既に更迭になった、あるいはこういった発言をした後編成局長から注意を受けた、社長からも厳重注意を受けた、こういったことを新聞報道によりますと書いてあるわけでございまして、やはりこの辺の発言を私はきちっと明らかにすることが、まさに民主主義の根幹に触れ、国民に偏った政治意識を植えつけ、選挙の公正さを失わせる可能性があるわけでございますから、ひいてはその国民に誤った情報が行けば国の進路が誤るわけでございますから、私は、これは極めて重要な民主主義に対する発言である、こう思うわけでございますから、この際、限界のある調査や圧力、誤解を避けるためにも、公開の原則に最も開かれたのがこの国会でございますから、国会の場で椿前局長を証人喚問する必要があるというふうに考えるわけでございます。

議会証言法に基づき、テレビ朝日の取締役前報道局長椿貞良氏を証人として喚問することを委員長に要求をいたします。また、椿局長が発言された9月21日の放送番組調査会の発言を記録した速記録、テープあるいはメモを証拠として提出されるように要求いたします。

[105]
委員長 石井一
先ほどの熱心な政治改革の議論の中にもございましたように、当委員会の審議はかなり遅延いたしております。そして、我々はようやくきょう第1日に入っておる。(発言する者あり)

静粛に願います。そういう状況でございますから、当委員会でこれを取り上げるかどうかこの問題をも含めて、理事会で協議をすることといたします。

[106]
自由民主党 自見庄三郎
正式にこの証人問題について委員会の理事会で協議をするという委員長のお言葉でございますから、引き続き質問を続けさせていただきます。

ところで、テレビ局は、先ほど申し上げましたように国民共通の財産でございます。公共財の電波を使っておりますから、電波法の適用も受けているわけでございます。

電波法には無線局の免許、テレビ局もこの無線局に該当するわけでございますけれども、免許の申請を受けた郵政大臣は遅滞なく適合条件に合っているかどうかを審査せねばならない、こういうふうになっているわけでございます。この適合の免許を受けた後、再申請、再免許を出すということにいろいろな条件があるわけでございますけれども、その条件の中の一つに、放送法と同じ趣旨でございます、電波は公共のものでございますから、不偏不党あるいは政治の公正、公平性をきちっと確保しているわけでございますから、そういった意味で放送法と同じ趣旨の、政治的に公平であること、報道は真実を曲げないこと、あるいは意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることなどが挙げられております。

ところで、テレビ朝日の免許は10月末まででございます。5年に一遍免許の切りかえでございまして、この10月末までが免許の期間だというふうにお聞きをいたしております。それまでに審査をして、電波法に適合しているかどうかの結論を出さねばならない、こういうふうに思うわけでございます。





平成05年10月19日 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会
[038]
自由民主党 逢沢一郎
そこで、改めて郵政大臣にお伺いをするわけでありますけれども、この椿発言というのはどういう席で出たのか、何の会議での発言であるのか。それは新聞、テレビによって民放連の何かの場であったというふうにお伺いいたしておりますけれども、それは民放連にとって公式な、いわばオフィシャルな、正式の場であったのかどうか、改めて郵政大臣にお伺いをいたします。

[039]
郵政大臣 神崎武法
テレビ朝日椿前報道局長の発言は、平成5年9月21日に開催されました社団法人日本民間放送連盟、民放連の放送番組調査会第6回会合においてなされたものでございます。同氏は、この放送番組調査会の委員ではございませんが、特剔出席者として、一連の報道に携わった立場で、第6回会合のテーマでありました「政治とテレビ」に関する報告を行ったものと承知をいたしております。

この放送番組調査会は、有識者であります外部委員5名と内部委員、民放事業者7名で構成され、見識ある第三者の公正な意見と放送番組の直接の責任者の発言によって民放番組についての真剣な審議が期待されているところであります。平成4年11月18日に第1回会合を開催し、その後約2カ月に1回開催され、今回が6回目の開催となったものであります。

なお、当日は外部委員5人及び内部委員7人、これは代理出席3名を含みますけれども、計12名の参加を得て開催されたと承知をいたしております。

そして、この会合がオフィシャルなものだったのかどうかという点でございますが、放送番組調査会は、いわゆるやらせ問題など放送番組への批判の高まりにこたえるべく設置されたものでございます。その目的は、放送番組に対する視聴者の意見を収集し検討を行うことを通じて放送番組のあり方について審議を行うものであり、その結果を番組向上の参考に資することといたしております。

本調査会は、平成4年10月、民放連理事会の決定に基づき、民放連の定款上の機関である放送基準審議会の常設機関として設置されたものでございます。したがいまして、民放連から見ますとオフィシャルなもの、このように考えられます。





平成05年10月25日 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会
[021]
自由民主党 谷垣禎一
自由民主党の谷垣禎一でございます。

椿証人に、きょうは衆議院としての調査に御協力をいただきまして、まず心から御礼を申し上げたいと思います。

今回のこの椿さんに証人で来ていただきましたのは、今も委員長からいろいろお話がございましたけれども、過日の椿さんの御発言等から、公職選挙法あるいは放送法、私どもが理解しております点から見ますと、いろいろこれは調査すべき問題があるのではないか、こういうことで、全会一致の結論によりまして、おいでをいただいたものでございます。

この問題は非常にデリケートな問題でございまして、この数日のいろいろな報道を見ておりましても、いろんなお考えがおありであることは、私どももよく承知をいたしております。私も、報道の自由の侵害にわならないように、自重自戒をして質問をいたしたいと思っておりますので、どうぞ椿さん、リラックスして御質問にお答えいただきたいと思うのです。

椿さんは、議院証言法についてはいろいろな御見解をお持ちである、よく御承知であるというふうに私ども理解をいたしております。ですから、今さら私が申し上げる必要はないと思いますが、この質問は椿さんを糾弾したり、あるいは追及したり、こういうつもりで行うものではございません。椿さんが報道人として御経験になったことを伺いたい、こういうつもりで私は質問をさせていただきたいと思っております。

ただ、私が残念に思っておりますのは、この問題は非常に多面的な複雑な問題でございますので、私どもにおきましても、一面的な扱いではなくて多面的な掘り下げが要する問題でございます。そういう意味合いからいたしますと、今回質問するのは、今委員長質問がございましたけれども、私ども自民党と共産党だけ、野党だけが御質問をするということになっておりますが、できれば与党各党にもお出をいただいて、多面的な分析をしていただきたかった。その点では残念だと思っているわけでございます。

前置きはそのぐらいにいたしまして、椿さんに対する御質問に入らせていただきますが、椿さんの、今委員長から御質問いただいたほかに、今のテレビ朝日、正式には全国朝日放送と、こう言うのだと思いますが、御入社時は日本教育テレビという名前だったと理解をしておりますが、御入社以来の簡単な御経歴、それから最近の従事なさった職名と申しますか、そういうものをおっしゃっていただきたいと思います。

[022]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私は、当時は日本教育テレビと申しておりましたが、昭和35年に入社いたしました。それで、ごくほんの一部の期間を除きまして、ほとんど報道の現場で仕事をしてまいりました。

国会の記者もやりましたし、それから沖縄返還のときにはワシントン特派貝として向こうで仕事もいたしました。帰ってまいりまして、報道、外報のデスク、副部長、その他をやりまして、北京の支局長で3年8カ月向こうにおりまして、帰ってまいりまして、報道局次長それから報道局長でございます。

報道局長になりましたのは平成元年の6月でございます。それで、昨年の秋から報道局それから国際局の分担というのを命ぜられまして、報道局長のままでそういう仕事をいたしました。それで、今月の19日にテレビ朝日の取締役を辞任したわけでございます。

以上です。

[023]
自由民主党 谷垣禎一
そうしますと、椿さん、ほとんど報道の分野を担当されてこられた。平成5年からは報道局長におなりになり、それから取締役としても平成5年から国際局、報道局の担当であった、こういうふうに理解してよろしいわけですね。

[024]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
平成元年の6月に報道局長になりました。それで、取締役になりましたのは平成5年の6月でございます。ただ、去年の平成4年の秋から報道局長のままで報道局及び国際局の分担を仰せつかっております。そういうことでございます。

[025]
自由民主党 谷垣禎一
そこで、報道局長としてのどういう分野の仕事を、報道局長の職掌というものをごく簡単に御説明いただけますか。

[026]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
報道局長の職制といいますのは、私どもの会社の規則によりますと、行政的には、報道局員を指揮命令して、報道番組をつくっていく、その責任を持つという形になっております。

[027]
自由民主党 谷垣禎一
報道局で所管しておられる番組、これはたくさんあると思うのですが、あの議事録を読みますと、特に「ニュースステーション」、久米さんとかあるいは田原さんのお名前が出ますが、そのあたり、どういう番組が報道局の主要な番組であるのか、お答えいただきたいと思います。

[028]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
報道局が持っております番組は、日常的なニュース、もちろん「ニュースステーション」もそれはニュースでございますから、報道局の所管の番組でございます。

それから、例えば今度の選挙放送に際しまして、私ども「選挙ステーション」という番組をつくったわけですが、それは報道局所管の番組でございます。

それからもう一つ、月1回やっております田原総一朗さんが司会をやります「朝まで生テレビ」という番組は、報道局の番組でございます。

ただ、田原さんがよく、非常に今問題になっております、田原さんが司会をやっております「サンデープロジェクト」という日曜日の番組は、報道局の番組ではなく、情報局の番組でございます。

[029]
自由民主党 谷垣禎一
そういうニュース、あるいは「ニュースステーション」、報道局所管の番組でいろいろキャスターとかコメンテーターがおられますが、そういうのを選択するのは、報道局の中ではどういう段階で選択されるのでしょうか。

[030]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
報道局の日常のルーチンといいますか、毎日いろいろな放送を出していく、番組をつくっていくというのは、報道局長の下に報道センター長がおりまして、その下に編集担当の部長がおりまして、それから各種のデスク、それから番組の担当プロデューサー、そういう者がおります。日常的には、すべてそこで行われるわけであります。

[031]
自由民主党 谷垣禎一
そういう選択、まあ日常的にはいろいろなレベルのところで決められるのでしょうが、決裁というと、椿さん、報道局長のところで最終的な決裁ということになるのでしょうか。

[032]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
行政的には、報道局長が報道局員を指揮監督していくわけでございますから、行政的といいますか、建前といいますか、そういうものは今谷垣委員がおっしゃったとおりでございます。ただ、そういうものを、そういう際に報道局長が口を入れるとか、そういうことは、私4年余り局長をやっておりますが、記憶にございません。ほとんどございません。

[033]
自由民主党 谷垣禎一
ただ、職員の上ではあなたが責任者というふうに理解してよろしいですね。

[034]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
報道番組を指揮命令してつくらしていくわけでございますから、そういうことでいいと思います。

[035]
自由民主党 谷垣禎一
あなたのおつくりになっている、所管している番組には、いろいろ人気番組があるわけですが、責任者として自分の番組、これはかなりごらんになっていると思いますが、大体どのぐらいごらんになっていますか。

[036]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
報道局の番組は、もちろん時間的な関係で生で見ることができないことはありますが、ビデオを含めて、私が所管をしている番組は全部見ております。

[037]
自由民主党 谷垣禎一
ちょっと先ほど所管の番組で聞き忘れたのですが、いろいろ特番というのを組むと思うのですね、いろんな、何というか、イベントがあったり事件がありますときは。例えばこの間の総選挙の際には、局長のもとで何か特別番組、特別企画みたいなものはございましたか。

[038]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
選挙放送期間中の特別番組といいますのは、開票当日の午後6時からスタートしました「選挙ステーション」、それから翌日のたしか夕方の7時半からだと思いますが、田原総一朗、激論、日本の政治はどうなるかという、たしかあれは2時間半の特別番組だったと思いますが、その2つは選挙期間中、報道局が制作した番組であります。

[039]
自由民主党 谷垣禎一
あなたは、9月21日の放送番組調査会にお出になった。先ほど、この放送番組調査会の性格については委員長の御質問のお答えになって、民放主要局が集まって、自由な立場で議論する会だと。個人の考えで自分の考えを発表する場で、外部に公示されないというふうに理解しておられる、こういうことでしたね。

私は、これはあなたと議論する場ではないので余りあれですが、私の認識とは非常に違うんです。私は、この民放の番組調査会というのは、やらせ問題を契機にして、民間放送連盟でやはりきちっと自浄作用をしなきゃいけない、こういうことでおつくりになった、そういう委員会だと理解しております。民放各社が、編成責任者がお集まりになって、外部委員も入って、そしてこれはテープも入って、録音して、きちっとやっておられたわけでしょう。それで、その結論を私どものところにもお送りいただいておりますが、いつも放送番組調査会月報というものにまとめて、私たちのところにお送りいただいているわけですね。

そういたしますと、民放連の立場としては、私は、この会はきちっと中で民放の自律的な作用としてやっているんだ、その中身は、決して内部での議論というようなものではなくて、民放連としてきちっとこれだけの議論をして外にも示すという、そういうオフィシャルな性格のものだと、こういうふうに理解をしておるんですが、もう一回お伺いいたします。

[040]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
民放連の番組調査会ができました経緯は、今谷垣委員がおっしゃられたとおりだと私も記憶しております。

ただ、私の認識では、調査会はあくまでも内部の勉強会でございまして、そこで自由に意見を出し、自由に討議し、また自由に提言して、放送番組の向上に資すると、そういう目的であるというふうに私は理解をしておりました。理解をしております。

もちろん、今谷垣委員がおっしゃいましたように、番組調査会の要録というのが出ておりまして、それは私拝見しております。

[041]
自由民主党 谷垣禎一
認識の違いをこれ、押し問答しても仕方がないと思いますが、ここで申し上げておきたいことは、先日、当委員会におきまして、郵政大臣の御答弁も、民放連としてはきちっと決議をしたオフィシャルなものだという御答弁がございましたので、これは申し上げておきます。

そこで、御発言になったことは議事録に出ているとおりだと、こういうことでございましたね。

それで、一つ伺いますが、これ、最初は記録があるのかどうかというようなことが随分議論になったように承知をしております。椿さんがこの会議でのテープ、記録というものがあるということをお知りになったのはいつですか。

[042]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
テープがあるということは、私は知りませんでした。それから、それは当然、調査会でございますから、何か記録をおつくりになるというのは、それは当然でございまして、そういう意味で記録があるだろうということはもちろん知っております。

[043]
自由民主党 谷垣禎一
私は、このテープがあるなしの議論というのは、これは報道等で承知をしているだけですので、自分がみずから体験したわけではありませんが、これは椿さんに申し上げることではないかもしれませんが、非常に遺憾に思っております。初めはないとおっしゃった。それで、民放連の大会で、ある、こう御発言された方があって、出てくることになった。その民放連ではどうおっしゃっているかというと、これは報道の自由に反するおそれがあるから出さないうそをついたのだ、こういうことでありますが、私は、言論人であるならば、報道の自由に関係があるから出せない、こういうふうにはっきりおっしゃればいいのだと思うのですね。それをやはり言論人でありながら、ないとうそをつく、このような対応というのは私は甚だ遺憾だと思っております。これは椿さんに申し上げることではありませんが、一言申し上げさせていただきたいと思います。

そこで、椿さんの御発言、いろんなことをおっしゃっておるのです。さっきは、いささかまあ逸脱したという御発言があるのですけれども、中身に即してまず御質問したいと思うのですが、例えばこういうことをおっしゃっているのですね。

それにしましても、その自民党の守旧派という方々のズレと言いますか、バカさ加減というのはあきれ返るほど嬉しかったことは事実なんです。

例えば、梶山幹事長と佐藤孝行総務会長が並んで座っていまして、何かヒソヒソと額を寄せて話しているとか薄笑いを浮かべている映像を見ていますと、まだ、あの時代劇の悪徳代官と、それを操っている腹黒い商人そのままなんですね。そういうものをやはりわれわれは家庭に送り出すことが出来たし、茶の間一般の受け取る視聴者はそれをはっきりと見てきたわけなんです。

こういうふうにおっしゃっているのですね。

それから、もう少し先の方になりますが、やっぱり我が党の梶山さん、佐藤孝行さんを取り上げまして、こう言っておられるのですね。

それは皆さまもご覧になっていてそういう印象を持たれたと思うんですが、例えば、細川さんもお殿様みたいに駘蕩と悠然たる風格があるし、羽田さんは政治改革一本やりできわめて誠実で真面目な印象があるし、武村さんはムーミンパパで、どれも明るくて、なんか弱々しいけれどもウソはつかないし、きわめてフェーバブルな好ましい印象をみんなが持ったと思うんです。

ところが、自民党の梶山静六および佐藤孝行に代表される連中のイメージというのは、それは料亭であり、カネであり、なれ合いであり、談合であり、恫喝だったと僕は思うんです。で、どちらがいいか、どちらに軍配を上げるかは僕はやはり自明ではなかったかというふうに判断しています。

こうおっしゃっているのですけれども、私は、これはなかなか相当な御発言なさっていると思うのですよ。

そこで、椿さん、個人的に佐藤孝行さんなり梶山静六さんなりにお会いになったことあるのかどうか、御存じかどうか伺いたいと思います。

[044]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
梶山さん、佐藤孝行さんに、例えば記者会見の場とか、それから国会でとか、そういう場でお会いしたことはございます。

[045]
自由民主党 谷垣禎一
そういうときにお会いになって、やっぱり悪徳代官面とか悪代官風というふうに御認識だったでしょうか。

[046]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
まあ、梶山さんそれから佐藤孝行さんに関する私の発言といいますか、私の受け取った気持ちといいますか、それは公党の最高首脳の方々に対しては極めて不用意な、不注意な考え方だと、そういうように思います。

[047]
自由民主党 谷垣禎一
不用意かどうか伺っているのではなしに、そういう認識を持っておられるかどうかということを聞いているのです、私は。お答えください。

[048]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
そういう認識は持ってはおりません。ただ、選挙期間中に、私どもではなしに、ほかのすべてのテレビ局がいろいろな映像を出しているわけなんですが、その映像を見て、そういうような印象を持ったということを私はあの調査会で申し上げたことは、それは記録にあるとおりでございます。

[049]
自由民主党 谷垣禎一
こういう御発言はなさっているわけですね。

それで、今は持っていないとおっしゃるけれども、それではちょっと聞き方を変えます。

椿さんが御指摘になっている佐藤さんと梶山さんが顔を寄せて話し合っているツーショットというのは、お二人は何を話しておられる映像ですか。

[050]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
どのような場面を指して言っているのかとか、そういうようなことは今定かには覚えておりませんが、例えば、選挙の開票速報をやっておりまして、自民党本部で幹事長と総務会長が座っていらっしゃる、それから、選挙が終わりました後の自民党の両院議員総会で壇上に梶山さんと佐藤さんが座っていらっしゃる、そういうような映像はテレビで何度も出たわけでございますから、その映像を頭に置いて私は申し上げたのだと思います。

[051]
自由民主党 谷垣禎一
そうしますと、あなたのおっしゃっていることは、具体的に梶山さんと佐藤さんがどういうことを話しておられる、その場でどういうことをやっておられるということと切り離して、要するに、無関係に一つのイメージを伝えるために映像を使った、こうおっしゃっているのですか。

[052]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私がそういう映像を意図して使えとか、そういうことを指示したことはありません。

はっきり申しまして、私が今申し上げておりますのは、そういう映像を、私の局テレビ朝日だけではなしに、NHKも含めまして、すべての放送局があの時期テレビの画面ではんばんばんばん出たわけでございますが、その映像を見て、私はそういうふうな印象を持った、そういうふうに感じた、そういうことをあの調査会で申し上げたわけでございます。

[053]
自由民主党 谷垣禎一
私は、今の御認識は少し違うのじゃないかと思うのですよ。まず、私たちはそういう映像を送り出すことができたということを随所に言っておられる。あなたのこの委員会の発言のポイントは、あなたのテレビ朝日がそういう映像を送り出し、そうして政治を変えていった、そのことが誇らしい、だからそれが田原政権と言われ、あるいは久米連立政権だと言われて、あなたは誇りに思うとおっしゃっているというのは、すべてのテレビ局がなんということで責任転嫁をしないでいただきたいと思うのですよ、私は。

私は一番危惧をいたしますのは、今のあなたの御発言でもはっきりいたしておりますように、具体的な事実と関係なくイメージを送って、あるメッセージなり情報を有権者に伝えていく、私はそこに基本的な考え違いがあるのじゃないかという考えを捨て切れないのですね。どうしてもそれは基本的に違うと思うのです。やはり報道というのは、これは長い間報道に携わられたあなたには、これは申し上げるのはもう僭越ですけれども、報道というのは事実を伝えることなんじゃないでしょうか。しかし、あなたのお話を伺うと、イメージを国民に伝えるのが放送だと思っておられるんじゃないでしょうか。私、そこを伺いたいと思います。

[054]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
テレビ朝日だけがあの時期ああいう映像をすぐれて出したとは私は思いません。何度も申し上げますように、ああいう映像を私どもやはりテレビに乗せて、それは今谷垣委員がおっしゃいますように、それが意図的なメッセージになったとかメッセージを意図したとか、そういうことは全くございません。ただ、現実起こっておりますそういう事象をテレビのカメラが撮りまして、それを視聴者に提供したということでございます。そこにテレビ局の意図的な考え方とか意図的な操作とか、そういうものは全くございません。

[055]
自由民主党 谷垣禎一
まあ、そのあたりをこう押し問答しても仕方がありませんが、私が指摘をしておきたいのは、やはり事実の報道と離れたイメージを国民に伝えることによっていろいろな情報操作をしようとされたこと、私は、そういうのを情報操作と世間では言うんだと思うんですね。このことだけは指摘しておきたいと思います。

次に移りましょう。

次に、こういうことを言っておられるんですね。

そういう意味で私どもは、はっきり言いまして私、――「私と」と言ったほうがいいかもわからないんですが、――「今度の選挙は、やっぱし梶山幹事長が率いる自民党を敗北させないとこれはいけませんな」ということを、ほんとに冗談なしで局内で話し合ったというのがあるんです。もちろんこういうことは編成局長には申し上げてはありません。これは放送の公正さをきわめて逸脱する行為でございまして。(笑い)

こうなっているんですね。

その後にこう言っております。

ただ、私どもがすべてのニュースとか選挙放送を通じて、やっぱしその55年体制というものを今度は絶対突き崩さないとだめなんだというまなじりを決して今度の選挙報道に当たつたことは確かなことなんです。

こうおっしゃっています。これは事実ですね。こうおっしゃったんですね。

[056]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
議事録に書かれておるわけでございますから、私はそのように発言したのだと思います。ただ、先ほどから何度も申し上げておりますように、私の真意はそれとは違うということを申しました。

[057]
自由民主党 谷垣禎一
いや、こういう発言をされたかどうかを伺っているんで、それは発言されたと今御答弁がありましたから、それで結構です。

そこで、この中で「編成局長には申し上げてはありません。」と御発言されておりますね。これは、そういう御発言があったということですが、編成局長には申し上げてないということの意味をおっしゃってください。

[058]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
編成局長に申し上げていないと申しました真意は、私の発言が余りにも荒唐無稽な暴言でございますから、そんなことでテレビ朝日が行われているわけじゃございませんから、そういう意味で、全く恥ずかしい話で、編成局長には申し上げていなかったというふうにその場で発言をしたのだと思います。

[059]
自由民主党 谷垣禎一
御自分で荒唐無稽と、こうおっしゃられると、本当は話の接ぎ穂がなくなるんですよ。私は、もう少しこういう責任ある場でおっしゃったことを荒唐無稽とおっしゃることは私どうしても納得いかないんです。そこまでおのれをむなしゅうされることは私はないと思うんですよ。まあ、まあいいでしょう。

じゃ、その編成局に、荒唐無稽だから編成局長におっしゃらなかったと申しますが、なぜそこで編成局長のお名前が出てくるんでしょうか。編成局長というのはどういうことをおやりになるんでしょうか。

[060]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
編成局長は、私どもの社の職務分掌によりますと、テレビ朝日全体の放送を編成し、放送を実際に行う責任者だと、そういうふうに書いてあります。

[061]
自由民主党 谷垣禎一
編成局長は、放送基準に当たること、これは編成局長の役割ですね。

[062]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私の認識では、報道局長というのは現場の長でございまして、はっきり言いますと、工場の工場長みたいなものでございます。そういうものをまとめてテレビ朝日の全体の放送ができていくわけですが、それの責任者が編成局長だというふうに理解しております。

もちろん、報道番組をつくる場合に、それは編成局長からこの番組は報道でつくるのであるという委嘱といいますか、そういうものを受けて実際の作業が行われるわけでございます。

[063]
自由民主党 谷垣禎一
まあ、あなたに荒唐無稽だと言われちゃうと困るんですが、「「梶山幹事長が率いる自民党を敗北させないとこれはいけませんな」ということを、ほんとに冗談なしで局内で話し合った」、この局内というのはどういう意味でしょうか。

[064]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私どもの報道局、まあ215人いるわけで、それで、選挙のあの期間、例えば選挙情勢がどうなっているかとか世論調査はどうだろうかとか、それから一般の有権者の動きはどんなふうになっているだろうか、そういうような意見交換といいますか、議論というのは当然行われております。それは、同僚とそういうものを行うことはもう当然でございまして、特に報道局長なんというのは情報源に余り近いところにいないわけで、むしろ局員の同僚の諸君と話をしながら、こちらがいろいろと情報を得たり、教えてもらったり、それから、ざっくばらんに今の政治情勢に対する認識を話し合ったということはございます。私がその場で発言しましたのは、そういう趣旨の発言を申し上げたことでございます。

[065]
自由民主党 谷垣禎一
今私が引用した御発言と似たようなことをもう1カ所あなたはおっしゃっているんですよね。こうおっしゃっているんです。

これはきわめて、――これはあんまり編成局長には私、申し上げてなかったんですが、――6月の終わりの時点から私どもの報道は、「小沢一郎氏のけじめを殊更に追及する必要はない。今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」というような、――指示ではもちろんないんです、――そういうような考え方を報道部の政経のデスクとか編集担当者とも話をしまして、そういう形で私どもの報道はまとめていたわけなんです。それがいま吹いている“政治の風だ”というふうに私は判断し、テレビ朝日の報道はそういうふうに判断をしたわけなんです。

こう言っておられますね。こうおっしゃいましたか。

[066]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
議事録に書いてあるわけでございますから、そういう趣旨の発言を勉強会である調査会で私は申し上げたのだと思います。

[067]
自由民主党 谷垣禎一
ただいま勉強会であるというまくら言葉をおつけになりましたけれども、それはどういう意味でしょうか。

[068]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
先ほどから、民放連の放送調査会に関して私が感じた事柄、番組調査会に関しまして私が持っていた認識を申し上げたわけでございます。私は、あの番組調査会はあくまでも勉強会であって、自由な立場からいろいろなお話をし、番組向上に資するために行われた会議だ、そういうふうに理解をしております。

[069]
自由民主党 谷垣禎一
今自由な立場とおっしゃいましたけれども、自由な立場で御発言された内容は真実だと考えてよろしいですね。

[070]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私の発言が議事録に出ておるわけですから、その発言そのものについては、私は否定はいたしません。しかし、私が申し上げました、私が持っておりました真意はそれとは違っております。そういう意味で、私は、私のあの調査会での発言が極めて不用意で、不注意であって、レールを外れた暴言であって、そういう意味で極めて恥ずかしいと最初申し上げたわけでございます。(発言する者あり)

[071]
自由民主党 谷垣禎一
普通は……

[072]
委員長 石井一
静粛に願います。

[073]
自由民主党 谷垣禎一
自由な場で御発言されたことは真実をおっしゃる、これが普通の考え方じゃないでしょうか。いろいろ抑圧を受けたり、いろんな立場で物をおっしゃると、真意を曲げる場合もあると思うんですよ。しかし、自由な立場でおっしゃったことが荒唐無稽であるというのは、私はどうにも理解できないんです。

しかし、まあ、さっきからそうやって荒唐無稽だとおっしゃっているから、私、もう少し別な聞き方をいたします。

この中で、「そういうような考え方を報道部の政経のデスクとか編集担当者とも話をしまして、そういう形で私どもの報道はまとめていた」、こうおっしゃっている。「報道部の政経のデスクとか編集担当者」というのはどなたですか。具体的に名前を挙げてください。

[074]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
具体的な名前をこの場で申し上げることは差し控えさせていただきます。

ただ、何度も申し上げましたが、自由な立場で、その当時の政治情勢ですね、例えば、このまま選挙をやれば反自民勢力が自民党よりも数が大きくなるんじゃないか、そういうような政治の状況というものを私どもは話をいたしました。それは、その時期そういうような話は、新聞社の編集局でも、テレビ局の報道局でも、当然行われていた議論だと私は思います。それはテレビ朝日の報道局においても例外ではないということを申し上げたわけでございます。

ただ、私がその当時考えましたことと、それから実際その後起こった結果がぴったりと合ったわけで、そういうことが、私のその成績とか、テレビの成績だとか、そういうふうに錯覚をいたしまして、あのような発言をしたわけであります。

[075]
自由民主党 谷垣禎一
いや、私はそういうあなたの弁解を伺おうとしているんじゃないんです。あなたが局の中でいろいろな、当然、あなただって報道を長い間担当してこられて、報道局長の職員におありになる、取締役という立場にもおありになる。あなたは、それは当然、方針を私はお持ちだと思うんですよ。全く方針がなし、ノーアイデアというわけじゃないと思うんですね。それは報道人としての誇りもおありだろうと思う。そういうものをやっぱり局の中に反映させようと思ったときに、あなたはどなたにまずお話しになるのか。そういうことで私は先ほど伺ったんです。もう一回お答えください。

[076]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
あの当時の政治状況が、実際選挙をやれば、それは自民党が非自民勢力に負けるであろう、ほとんどそういうような政治状況を、やはりほとんどの有権者が私は持っていたと思います。そういうものは、その当時、私はそういう認識は持っておりました。ただ、そういう認識を持っておりましても、それを具体的に、例えば番組に反映しなさいとか、そういうようなことは絶対にございません。(発言する者あり)

それから、日常的に私がお話をしますのは、それは編集担当の部長でもありますし、それから政経部のデスクでもありますし、それから若い局の同僚ともそういうような話はいたします。それは当然、報道局長としての、私は、自身、任務であるというふうに理解をしております。

[077]
自由民主党 谷垣禎一
椿さん、あなた、局の中で、当然上司として指示をお出しになることはあると思うんですよ。そういうときに、どういう形でお出しになりますか。これはおれからの指示だとおっしゃるのですか。それとも、命令書みたいなものをお出しになるのですか。お答えください。

[078]
委員長 石井一
椿証人に申し上げます。

質問に対して、できるだけ直接的にお答えいただきたいと思います。

また、不規則発言は、ひとつぜひとも慎んでいただきたいと存じます。

[079]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
文書で指示を出したことは、私、4年間余りの報道局長をやっている時代には、全くございません。

[080]
自由民主党 谷垣禎一
そうだろうと思うんです。普通、上司が指示を出すときに、命令書を出したり、これは命令だなんていう、日本の組織で普通そういうことはないと思うんですね。やっぱり部下に、ちょっとおれはこう思うぞとか、いろいろ大体こういう判断でいったらどうだとか、ディスカッションしたりして、何となく上司の判断が伝わっていくというのが普通じゃないかと思うんですよ。

だから、私、先ほど指示はしていないと、そういうような意見交換したとおっしゃるけれども、日本の組織ではそういうものを指示というんじゃないかと私は理解しますね。

だから、あなたはやっぱりそういうお考えを、いろんな形で指示していたんじゃないか、私はそういうふうにあなたのお話を聞いて印象を受けました。

一つ例を出しましょう。

そういうのがどういうふうにあなたのつくっている番組に反映されていったのか。これは、やっぱり我々が非常に関心を持っている点なんです。先ほどから指示はしていないとおっしゃっていますが、私たまたま自分が見た番組でございますが、7月13日ですね。7月13日、これは18日の投票日の直前でございます。「ニュースステーション」を私見ておりましたら、投票へ行こうキャンペーンというのがあのときやっておられましたね。

その投票へ行こうというキャンペーン、たしかキャンペーンの中だったと思うんですが、和田さんという朝日新聞の記者、いつも小宮さんの隣に座っておられる方ですが、あの方がこうおっしゃったんですね。政権交代の可能性が少しでも出る方向に行くとよいのですがねとおっしゃったんですね、つぷやくように。それにすぐ畳みかけて、久米さんが、投票へ行きましょうとおっしゃったんです。

これはたまたま私が目にした一つですけれども、ちょっと話を変えまして、この辺について、あなた、どうお考えですか。

[081]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
今谷垣委員がおっしゃいました7月13日の「ニュースステーション」のそのくだりは、私は正確には覚えておりません。記憶がございません。

ただ、はっきり申しまして、「ニュースステーション」の番組に対して私が、その日その日、「ニュースステーション」毎日会議をやっていくわけなんですが、そこに出席したことも一回もないわけであります。

[082]
自由民主党 谷垣禎一
私が今、私もいつも「ニュースステーション」見ているわけではありませんので、たまたま私がそのとき気になってメモしたことを申し上げたわけなんです。くしくもあなたがこの中でおっしゃっているあなたのお考え、あなたはそれは荒唐無稽だとおっしゃっているけれども、それがまあいわば象徴のようにこの和田さんの発言にあらわれているんじゃないかなと、私この議事録を読んで思った。その一つの例としてお話を申し上げたわけなんです。

例はまだ幾つかございますが、もう一つ例を挙げますと、これは何日でしたかね、たしか久米さんが、70歳以上のお年寄りには投票権も立候補権も奪ってしまったらいいと、こういう発言をされました。私、これ、大変な発言だなと思って聞いていたんです。そうしましたら、「諸君」の最近の号にやはりどなたかがちょうどそのことを指摘されまして私思い出したんですが、これ、どうしてこういう――その前提に18歳以上に投票権を与えるという御発言だったと思うんです。私もこれ、記憶ですから正確には理解しておりません。だけれども、そういう御発言もやっぱり私、かなり偏った御発言じゃないかと思うんです。

そこで、あとは町村さんにお任せしますが、そういうことと、局の管理体制どうだったか、これはやっぱり相当問題にしなきゃいかぬと私は思うんです。それでまあ、私の時間も、まだまだ伺いたいことがあるんですが、私の時間も参りまして町村さんにお譲りしますが、私、最後に申し上げておきたいことは、今度のこのいろんな一連の議論の中でも報道の自由論争というのはたくさんありました。私は大変傾聴に値する議論、新聞紙上でもいろんなところでも伺ったわけです。

その中で、私、なるほどなと思う議論は、やっぱりこういうのは、椿さんがどうお考えになったかということよりも、結果としてあらわれた放送が偏向しているかどうかということで判断すべきであるという御議論がございました。私、これ、非常に共感するところが多いんです。まあそういう議論でいくといたしますと、私は、これはやっぱりテレビ朝日は相当な、中での実態解明の努力をされなきゃいけないと思います。

なぜかと申しますと、新聞や雑誌ですと、御発言の内容は後々まで我々調べて、こういうことを言ったじゃないかとか、これはおかしいよということが言えるわけであります。ところがテレビですと、今たまたま私がメモした例を申し上げましたけれども、電波は流れてしまう。ビデオを撮って監視している人なんて余りいないんですね。残念ながら、自由民主党、資料を探しましたがほとんどありません。自由民主党はそんな恐ろしい組織じゃありません。「ニュースステーション」の番組を逐一撮って後から問題にしよう、こんな組織は恐らく日本の国家組織にもないと思いますし、まあこういうことをやっている組織があったらこれは極めて私は恐ろしい組織だと思うんです。

それが本当の意味ででき切るのは、こういう問題があって、本当にテレビ朝日の報道が不偏不党である、公正であるということをきちっと立証できるのは、その番組をきちっとしているテレビ朝日しか私はないと思います。外から手を入れないで、内部でやろうと思ったら、それは私はテレビ朝日はきっちりやっていただかなきゃならないと思います。

これはあなた、椿さんに申し上げることではないんですが、要するに、今内部でいろいろ調査会をやっておられる。この間、中間報告をなさった。私は、極めて短い時間で結論を、中間報告も出されていると思うんですね。かって朝日新聞にサンゴ事件というのがございました。私はあのときのことを聞きますと、朝日新聞は非常に努力された、何も朝日新聞にごまするわけじゃありませんが、相当中で厳しい調査をされたというふうに理解しておりまして、それは立派な努力だと思うんです。

私は、マスコミが自浄努力ということをおっしゃるんなら、テレビ朝日もぜひぜひそういうきちっと検討をされまして、外部の者にもこれは公正だったという結論がはっきりわかるような、まあこの結論がどうなるかわかりませんけれども、そういうものをぜひ出していただきたいと御要請をして、私の質問を終わります。

[083]
委員長 石井一
これにて谷垣君の発言は終了いたしました。

次に、町村信孝君。

[084]
自由民主党 町村信孝
椿証人、どうも御苦労さまでございます。私、自由民主党の町村信孝と申します。

ただいま同僚の谷垣委員からいろいろな角度からのお尋ねがありましたから、私はひとつ、報道の公正とは何かという点にある程度絞ってお伺いをしたいと思います。

あなたは先般のこの放送番組調査会で、公正であることをタブーとして挑戦していくと、こう発言をしておられますが、このことをお認めになりますね。

[085]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
議事録に書かれておりますとおりの発言はしているわけでございますが、私、タブーという言葉を間違えて使っていることは、あわせてここで訂正をいたしたいと思います。

[086]
自由民主党 町村信孝
結構です。事実だけお答えください。

放送法、もう釈迦に説法でよく御承知でしょう。第1条には、左に掲げる原則に従って放送を規律し、健全な発展を図る、こう書いてあります。そして、この左に掲げる目的、原則の一つに「放送の不偏不党」ということが書いてあります。次に、放送法第3条の2、国内放送の放送番組の編集、これに当たっては、4つ書いてありまして、そのうちの2番目「政治的に公平であること。」4番目「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」こう書いてありますが、もちろん御承知でしょうね。お答えください。

[087]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
もちろん、よく存じております。

[088]
自由民主党 町村信孝
それではそういう観点に立って、証人はこの議事録をお持ちでないから、私の手元の、これは委員各位全部お持ちであります12ページの、先ほど谷垣委員がお触れになった「今度の選挙は、やっぱし梶山幹事長が率いる自民党を敗北させないといけませんな」、こういう考え方は、この放送法の3条の2に違反すると、こうお考えになりませんか。どうでしょう。

[089]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
そのとおりであれば、それは、そのとおりやれば、それは違反でございます。

[090]
自由民主党 町村信孝
ここは意図と現実の報道がどうであったか、ここは現実の報道がどうであったかは、全部のテレビを我々見るわけにはまいりませんから、あなたの意図について違反性があるかどうかということを問題にしているのであります。

次に、この同じく12ページに、「やっぱしその55年体制というものを今度は絶対突き崩さないとだめなんだという、まなじりを決して今度の選挙報道に当たったことは確かなんです。」この決意、考え方は放送法に違反しませんか。どうでしょうか。

[091]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
まなじりを決して報道制作に当たったということは、公平、中立なる放送をやっている以上、放送法には違反しないと私は考えます。

[092]
自由民主党 町村信孝
まあ、まなじりを決しようが、これはどっちでもいいんです。そうではなくて、55年体制を絶対に突き崩さなければだめなんだ、この考え方はどうですかと伺っております。

[093]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
55年体制を突き崩さなければだめなんだというのは、私が当時考えていたことでございます。それを例えば局員に対してそういうことで放送せよとか、そういうことを指示する、示唆するということは絶対にありませんでした。そういう意味で、私は、私が信念として考えたことは、放送法に言う公正、中立というものには違反しないと、私はそういうふうに考えます。

[094]
自由民主党 町村信孝
それは何と自分で、心のうちで思っているだけならばそれはいいと思うんです。しかし、あなたはさっき谷垣委員の質問に対して、報道局長の立場は報道局全体を指揮命令をする立場だ、監督する立場だとおっしゃった。ということは、あなたがそういう考えで、しかも、話し合った、ディレクターあるいは担当デスクと話し合ったということは、ただ単に心のうちでひそかに思っていたいうことだけではなくて、監督者である、責任者であるあなたの意図がいろいろな話し合いを通じて当然現場にも行くと考えるのは、これは当然のことだろうと私は思いますから、したがって意図において放送法違反ありと私は考えます。

次に、16ページ、これも先ほど谷垣委員おっしゃった。「小沢一郎氏のけじめを殊更に追及する必要はない。今は自民党政権の存続を絶対に阻止して、なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」、このような考え方をいろんな人たちと話をして報道をまとめた。このことはどうですか、放送法に違反しませんか。どうでしょう。

[095]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
当時の政治状況を見て、個人的にそういう考えを椿貞良個人として持っていたことは確かであります。

ただ、先ほどから何度も申し上げますように、私がそういうことを局員に対して指示、示唆したことは全くございません。

それから、テレビ朝日の組織というのは215人のプロの集団でございまして、例えば、もし仮に局長がそういうような不規則な発言をいたしましても、局員全体は公正、中立な放送を行うということを前提に日夜研さんしているわけでございますから、そういうものが通るようなシステムでもございませんし、また局員の心構えとしてもそういうことは絶対にございません。

[096]
自由民主党 町村信孝
あなたは先ほど、自分で指揮命令する立場にあるとおのれの職員をおっしゃったんですよ。いいですか。そのことを忘れないでいただきたい。

それから、周りの状況がどうだとか、言ったかというのはどちらでもいいんです、あなたは現にこの議事録でそうおっしゃっている。

それから、じゃ例えば、簗瀬さん初め4人の方々の当選はテレビのおかげです、新党、さきがけ、新生党、3つ合わせて社会党を上回る勢力になったのも、これもテレビ報道の結果だと思います、こうおっしゃっておられる。

これは例えばテレビ朝日のつくっている、あなたの番組のどの番組で、あなたの番組、テレビというのは、これあなたのテレビ朝日も含まれていると思うんですよ。どの番組のおかげだとお考えですか。

[097]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私どものテレビのどの番組のおかげか、それは定かにわかりません。

ただ、はっきりと申し上げましたように、私、この発言をしましたのは、たしか事前に何か雑誌か何かの記事を読んでまして、それが頭に入っていたことを一般的に申し上げた次第であります。

[098]
自由民主党 町村信孝
このことは公職選挙法第151条の3、第151条の5、先ほどあなたはよく知っていると、こうおっしゃいました。テレビによって当選をした、テレビが当選をさせたということになりますと、これはやはり公選法違反のおそれがある。

しかし、あなたはどの番組と特定できないとおっしゃった。しかし、こう発言するからには、彼らの当選はテレビのおかげです、こう自信を持って発言をされる以上は、やはり自分の番組のあそこ、どこそこがということが当然念頭にあってこういう発言をされたのと違うのでしょうか。自分のテレビ局はわからないけれども、よそのテレビ局ならわかるとでもおっしゃるのでしょうか。

[099]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
4人の方々が当選したのは、それはテレビのおかげであると実際議事録に書かれてあるわけですが、それは選挙が終わりまして、いろいろな新聞とかいろいろな雑誌とかそういうものに書かれていた記事が頭にあって私は申し上げたものでございます。

[100]
自由民主党 町村信孝
全部あなたは、御自分のせいではない、よその報道機関が、よそのメディアがと、こうおっしゃって、あなた自身のテレビ朝日でどうこうということを一切おっしゃらないというのは、マスコミの方の、報道局長にもおありになる方の発言ともちょっと私には思えませんね。

もう一つ、これは20ページに出ておりますあなたの発言です。私どもは中立な立場で整合性を求め、発言の機会の公平さを重視する、こういう立場はとりません、この発言は、もう一度戻って、放送法3条の2に違反をすると、こう思いませんか、この考え方そのものはいかがでしょうか。

[101]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私、そのくだりは、これからのテレビの政治報道はどうあるべきかというところで皆様に問題提起の意味で発言をしたものだというふうに記憶しております。

[102]
自由民主党 町村信孝
そのいろいろな審議の後にもう一度あなたは発言をしておられます。これは議事録でいうと45ページです。「今度の一連の選挙運動報道に関する限り、「われわれはやっぱし55年体制を突き崩さないとだめなんだ」というところに視点を置いてものを作っていったわけです」こう書いてあります。報道していったということですね。この考え方、この視点そのものは放送法違反にはならないとお考えですか。いかがでしょう。

[103]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
55年体制を突き崩す方向で報道番組をつくれとか、そういうような指示とか示唆をしたとすれば、それは完全に放送法に違反すると思います。私は、それは示唆しておりません。

[104]
自由民主党 町村信孝
示唆したかしないかなんてことを、私、聞いておりません。こういう視点を置いて物をつくっていったわけです。つくっていったという過去の事実をあなたはここで話しておられるわけです。報道局長という責任ある立場で報道をつくっていったと明確にここで述べておられるわけですね。この、(つくって)いったというこの行動についてあなたは放送法違反だと思いませんか。

[105]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
その発言は、先ほどから何度もここで御説明申し上げておりますように、実に不用意な、不適切な発言だと考えております。

[106]
自由民主党 町村信孝
不適切ではなくて、これはあなたの本当の考えだからそう言われたんでしょう。別に場所柄をわきまえず不適切だったということではない。私は、もっとあなたが本当のことを語っていただきたい、こう要望いたします。

この後に出てまいります、共産党に時間を与えるのはフェアではない、自民党から分かれた特定候補に肩入れをする、これがフェアである、小沢一郎氏のけじめについてやらなくても構わない、何が何でも55年体制を突き崩すよう、そういう報道に視点を置いていこう、これ全部フェアだ、放送法に言う公正だということを、これはあなたがこう言っているのですよ、私どもは報道局の現場でみんなと話をして、だからああいう報道になったんですと。これが放送法違反でなくて一体何でしょうか。

今言われた共産党の問題、あるいは非自民に肩入れをした問題、小沢一郎氏のけじめを棚上げにした問題、55体制を突き崩すようにいこうと言った問題、これらはいずれも放送法違反だと私は思いますが、いかがでしょうか。

[107]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
先ほどから何度も何度も申し上げておりますように、私の今町村議員が指摘をされました発言は全く不用意な、不適切な、レールを外れた発言でございます。そういう意味で、私は、最初から皆様に御迷惑をおかけしたことをおわびしているわけでございます。

[108]
自由民主党 町村信孝
国民に向かってそう言ってあなたは本当にいいんでしょうね。しかし、あなたは、ずっと昔からこういう考え方なんですね。

たまたま私は、NHK総合放送文化研究所、昭和57年3月20発行「テレビ・ジャーナリズムの世界」、あなたが当時テレビ朝日のニュースセンター・チーフプロデューサーのとき、こういう文章を書いておられます。私は、これまで報道したとき、公正であったこと、中立であったことは一度もない、どうしてかというと、公正であり、中立であり、クールであって本当に物事を伝えることができるとはどうしても思えないからである、あなたは自信を持ってこう書いておられる。

今から10年前のこと。どうでしょうか。あなたはこういうお考えを当時から持っていたからこそ、今日この間の番組調査会でもこういう御発言になったのと違いますか。これはあなたの個人的信念なんでしょう。どうぞ信念なら信念だとそうおっしゃっていただきたい。

[109]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
10年前にNHKの本でどのようなことを書いたか、私は記憶はしておりません。

[110]
自由民主党 町村信孝
たまたま私ども発見をいたしました。しかし、今のあなたのこの発言と全く軌を一にしているから、たまたま実例で申し上げたわけであります。

だんだん時間もなくなってまいりましたから、1、2最後に伺います。

一つは、私は、先ほど監督責任する立場にある、こうおっしゃった。そのことと、例えば10月13日テレビ朝日「ニュースステーション」における久米宏キャスターの発言、これはあなたの記者会見後であります。この9年間、私は、テレビ朝日側から私の発言について、圧力、指導、示唆、その他一切の行為は私に対してありませんでした、私の発言は、私が考え、私個人が責任を持ってすべて行っております。大変御立派な発言をしておられます。このことは、監督責任者である椿報道局長、どのように受けとめられますか。テレビ朝日の、言うならばテレビの編成権というものを久米さんは否定しておられるのですが、あなたはどうお考えでしょうか。

[111]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
久米キャスターの「ニュースステーション」における発言というのは、「ニュースステーション」がこういうような報道をしていこうということは、それは報道局の中で枠組みが決まっているわけでございますから、その枠組みから久米キャスターの発言が逸脱することはありません。

[112]
自由民主党 町村信孝
ということは、この久米さんの発言は誤っている、あなたが編成権を持っている、テレビ朝日が編成権を持っている、まあある意味では当然のことだろうと思うのですが、そういうふうに理解していいですね。

[113]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
町村議員の発言の趣旨が若干わからないのでございますが。

[114]
自由民主党 町村信孝
久米さんは、一切私の責任でやっていると、こう言っている。一切指示も何にもない、こう言っている。これに対して、椿さん、あなたは、全部の総責任者だ、監督責任あると、こうおっしゃった。一体どっちが、もし問題が起きたとき、一体これどっちが責任があるんですか。だれの責任でもないというわけにはまいりませんよ。なぜならば、放送事業者は免許事業者だからです。免許事業は会社に対して与えられているのであって、もちろん椿報道局長に与えられているものでも久米宏キャスターに与えられているものでもありません。局が責任を持つ、会社、事業者が責任を持つはずです。したがって、編成権は事業者にあるはずなんですね。この久米さんの発言はおかしいとあなたお思いになりませんか。どうですか。

[115]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
久米さん、久米キャスターの発言は、テレビ朝日が放送法で言う公正、中立なる報道を行っているわけで、その基本的な枠組みから久米キャスターの発言が外れることは絶対にありません。

[116]
自由民主党 町村信孝
もし外れた発言があったら、どなたが責任を負いますか。

[117]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
先ほどから何度も申し上げておりますように、久米キャスターがテレビ朝日の基本的な考え方の枠組みから外れた発言はないわけであります。ただ、久米さんが個人的な見解であると振って発言をなさることは、それはあると思います。

[118]
自由民主党 町村信孝
個人的見解、どこかの閣僚もそう言っておられましたから、最近のはやりなのかもしれませんけれども、私は、個人的見解なんということはあり得ないですわ。結果は、どこか組織というのは責任を負うわけですよ。私は、やはり当然編成局長なりあるいは報道局長なりが責任を負われるんだ、こう思っておりますから、久米さんも当然、あなたが、言うならば方針として立てておられた非自民政権をつくろうという枠の中で久米さんもしっかりと発言をしていたんだと、こうしか理解ができないわけであります。法制上そうなっているんですから。

なお、余計なことですが、一言申し上げますけれども、日本だけですよ、ニュースキャスターがぺらぺら自分の意見を言うのは。有名なCBSのダン・ラザー氏は、こう言っているのですね。ニュースキャスターとして心がけなければならないことは、情報を正直に、できるだけ正確に公正に伝えることです、そこに個人的な意見を差し挟む余地などありませんし、また、差し挟むべきではありません、できるだけ自分の意見は入れないように心がけているのです、だから自分の意見を――これは法律じゃありませんよ。法律じゃありませんけれども、ニュースキャスタ一というのは本来こういうものなんだという、超有名であり、また社会的にも尊敬を集めているダン・ラザーさん、あるいは私の知っているウォルター・クロンカイトさんなど、皆さんそう言っている。個人的な意見を言ってはいけないという法律はないかもしれませんが、しかし、そのことは私は日本のテレビ放送のちょっとおかしな点じゃないかとこの際あえて申し上げさせていただきます。

それから、もう一点伺いますけれども、例えば今あなたは、非自民というものを応援しようという考えが個人的にはあったとおっしゃった。それでは、消費税なり小選挙区制なりについてあなたはどういうお考えをお持ちで、その方針を局内にお伝えになったりお話し合いになったことがありますか。

[119]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
小選挙区制なり、それから消費税のことにつきまして、私、局内で話をしたことはございません。

[120]
自由民主党 町村信孝
しかし、私どもの印象では、非常に明快に、消費税は反対、小選挙区制反対と、たしか細川政権ができるまでは、半ば私どもから見ると局の方針としてそういう方針のもとに報道しておられた、こう受けとめますが、何か細川政権ができたら大分その辺のニュアンスが変わってきたのでどういうことなのかな、相当内部で議論でもしておられるのかなと、そんな感じもいたしております。

いずれにせよ、こういう重要な課題については、私が申し上げるまでもなく、放送法3条の2の4、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」こういう視点がどうも欠けている。そういう意味での放送法違反もまたあるのではないか、こう思います。

私は、椿さんに、大変釈迦に説法で恐縮でありますけれども、やはり大勢の国民は、テレビというものあるいはマスメディアというものを、公平だ、中立だ、大部分の方は素直ですから、そう思っているわけですね。しかし、現実にはあなたは特定の意図を持って、この場合は非自民を応援するとか55年体制を崩壊をする、こういう意図を、言うならば一切隠したまま、しかし、画面ではそういうものをどんどんどんどんつくっていく、これはまさに世論誘導であり、世論操作以外の何物でもない。映像ファシズムという言葉があるそうですが、私はまさにその危険があるということをこの際指摘をしなければなりませんし、そのことは、この放送番組調査会の外部委員の方も、戦争中のラジオのことを例えに出されまして、こういうことがまさに危険なんだよということを指摘をしておられる。

あなたはそういう世論誘導なり世論操作なりをやろうとしてやった、そしたらうまくいった、そして細川政権ができた、だからこそあなたはここに述べて、14ページに述べておられるように、久米・田原政権と言われることに誇りに思うと。こんなにおれの世論誘導がうまくいったと、だから誇りに思ったのと違いますか。どうでしょう。

[121]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
細川政権が久米・田原連立政権である云々というのは、たしか大前さんが、評論家の大前さんがどこかの雑誌でやゆを込めてお書きになったことだというふうに私は考えております。

私がそのように申しましたのは、私が当時考えておりました政治状況が、選挙の結果そういうものになった、そこで、まるでそれが自分の手柄であるかのように、またテレビの手柄であるかのように錯覚しまして、レールを外れた暴言をしたわけでございます。そういう意味で、私は、私の不用意な発言を心から恥ずかしく思いますし、おわびしたいと思います。

[122]
自由民主党 町村信孝
最後に一つだけ伺います。

小沢氏のけじめ問題を棚上げにすると、こういう御発言が中にありました。あなたは、小沢さんといつごろから交友が始まり、どのくらい親しくおつき合いをしておられますか。

[123]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
私は、小沢一郎さんと交友関係は全くございません。一度も個人的にお話をしたこともございません。

[124]
自由民主党 町村信孝
じゃ、もうちょっと具体的に伺いますが、解散から投票日までの間、それからこの問題が発覚してから本日までの間、小沢さんと会ったことはございませんか。一度もありませんか。

[125]
証人(元全国朝日放送株式会社取締役報道局長) 椿貞良
その期間中、小沢一郎さんと一度も会ったことはございません。

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自由民主党 町村信孝
私どもが知っている限りでは、あなたは確実に複数回会っておられるということだけを私はあえて申し上げさせていただきます。

そして椿さん、私は、この小沢問題を棚上げにしようと言ったのは、あなたの個人的なお考えだけではなくて、これは会社の考えではなかったんだろうか。これは、私は事実は知る由もありませんけれども、金丸さん、小沢さん、いずれも郵政省には影響力がある方だと言われている。その小沢さんと椿さん、そしてあなたの上司であった小田さん、こういう方々が一体となって、テレビ朝日のために、会社のために、この小沢問題を棚上げにしたんではないか、こういう声がマスコミのあちこちから、私が今度質問に立つということになってから、あちこちから実はそういう声が私の耳に達しております。これは真偽のほどは確かめようがありませんのでこれ以上は申し上げませんが、こういう声もあるということだけを指摘をしておきたいと思います。

委員長、私は、この限られた時間の中の質疑ではありますけれども、非常に多くの問題がやはりあったと思います。やはり民放連も、先ほど谷垣委員が指摘されたように、テープはないといううそをつかれたということは、民放連にも反省をしていただきたい。あるけれども出さないというのがやはり私はジャーナリズムのとるべき態度ではなかったかなと。どうしても出したくないのならそう言うべきであったと思います。また、テレビ朝日も会社として、先ほど私が累次申し上げましたように、その意図において、放送法なりあるいは公選法なりに違反をしているという疑いが非常にある、こう私は考えております。

したがいまして、今後私どもは、本件に関する関係者にこの委員会があるいは関連する委員会などでお越しをいただきまして、さらに議論を煮詰めていきたい。そのことが私は、我が国議会制民主主義の中におきます報道と政治の関係、あるいはテレビと政治の関係というものによりよい関係を築くことになる、そしてそのことが翻って我が国の議会制民主主義の健全な発達につながるだろう、こう思っております。

こういう議論の場は何も国会だけに限らないと思います。例えば民放連主催のシンポジウムでもあるというなら、私ども喜んで伺いたい。

そういう形で、今回椿証人が、たまたまではありましょうが、鋭い形で問題提起をされた、このことをきっかけとして、私は大いに我が国の民主主義のあり方の議論の一助になれば幸いだ、こう思っておりますし、しかるがゆえにこの政治改革特別委員会で取り上げる意味があったんだろう、このように理解をしております。

時間が参りましたので、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。



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